【独】 XIV『節制』 シトラ/* そう…… 初めて出逢ったはずなのに 遥か遠い昔から知っていたかのような安心感 アリアちゃんはまさか か……(ここで文章は途切れている) アリアちゃん大人気でさすがアリアちゃんだなって思ってるの わたしが自殺してもぜんぜんひとりじゃないのよ アリアちゃんを大切に想う人は他にもいるのよ しかもイケメンなのよ というわけで死にたい気持ちがゆらゆら揺れるわ……(?) フォルスさんもさすが ゆ……(ここで文章は途切れている) (-95) 2022/12/13(Tue) 0:45:38 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ アリアちゃんに連れられて洋館へと向かう道中 わたしはずっと、肩を丸めてきょろきょろしていた。 目に映り耳にするほとんどすべてのものが、 わたしにとっては初めて経験するものだった。 山を下った先にも、 ずっとどこまでも道は続いていて 故郷の村の家々と似た作りの家も まったく違う作りの家も並んでいた。 故郷が遠ざかれば遠ざかるほどに道は整い幅は広がって、 立ち並ぶ家々の数も、すれ違う人の数も増えていく。 軒先ではしゃぐ子どもたちの笑い声。 庭に干された、知らない色の洗濯物。 長い椅子に座って外で食事を楽しむ人たち、 記憶にある小川とは比べ物にならないほど大きな川。 空の色も、村のものとは心なしか違う。 これまで自分の生きてきた世界が、いかに小さかったか カーテンの向こうに広がる世界が、いかに大きかったか そう長くはなかったはずの旅路の間に こんなにも未知の世界が広がっているなら、 もっと北や東の彼方には一体何があるんだろう ] (583) 2022/12/13(Tue) 18:38:32 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ 初めて口にした我儘を叶えてくれた彼女に わたしは、できるだけ迷惑を掛けまいと思っていた。 けれどいざ洋館に辿り着いてみれば どう過ごして良いのか、それすらもわからなかった。 結果、無意識のうちに、あるいは意識的に 気付けばいつもアリアちゃんの後を追っていた。 このひとの傍に居れば何も怖いものはない、 このひとの傍から離れてはいけない、って 魂が訴えかけているみたいだった。 洋館で暮らし始めた最初の頃は、特に 完全にひっつき虫状態だった。 アリアちゃんの隣で過ごせる時間が 一番、ほっとしていられた。 ] できなくても、いい…… [ メイドさんにお世話になってしまう度 先住のみんなに世話を焼かせてしまう度に 心の底から感謝しながらも 申し訳なさでいっぱいになってしまうわたしに、 自分の無力さを思い知って泣いていたわたしに アリアちゃんは、そう言ってくれて>>261 ] (584) 2022/12/13(Tue) 18:39:53 |
【人】 XIV『節制』 シトラ失敗しても、いいの…… ? [ 仕損じれば間違いなく誰かを 困らせたり怒らせたりしてしまうから、と 何かをする前から立ち竦んでしまうわたしの、 背中をそっと押そうとしてくれて ] わたしが、やってみたい、ことを するのが、一番………… [ そんなこと、 そんな風に言ってくれるひとは 今まで、身近には誰もいなかったよ。 与えられる惜しみない優しさに返せるものを、 わたしは何も持ってはいないのに。 それどころか、 ]わたしは、あなたを置いて死へ逃げたのに。 (585) 2022/12/13(Tue) 18:40:07 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ それから一歩ずつ、毎日すこしずつ わたしはわたしの心に耳を傾けて やってみたいことをしてみるようになった。 文字をきちんと学んで、書けるようになりたい。 お菓子を作れるようになって、お礼に渡したい。 お金の使い方が、わかるようになりたい。 洋館に書庫があるなら、本を読んでみたい。 アリアちゃんにばかり頼るのは申し訳なくて 教えてくれそうなひとを見つければ>>36、 希望が叶うか否かは別として すれ違うたびにじっと見つめてしまったり 故郷の近いらしいシャルレーヌさんには どこか懐かしい空気と親近感を勝手に覚えて、 実際に会話が成り立つかどうかは別として お話してみたい、と思うようになるのも早かった。 植物の知識は、アリアちゃんから教わろうとした。 お薬の調合はさすがにできなくても 素材集めならもしかしたらわたしにも 役立てるんじゃないかって、そう思ったから。] (587) 2022/12/13(Tue) 18:41:19 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ そうした小さな挑戦と失敗、 失敗を重ねた先の成功が積み重なって ほんの少し自信が持てた今があるからこそ 「歌ってみたい」なんて言い出せたのだ。 かつてのわたしなら、とてもじゃないけれど そんな大それたことは言えなかったと思う ] ひぇ……っ そ、そう……です、けど ま、まだ、ぜんぜん 練習中……で でもあの、が…… がんばる、ので………… [ 心底驚いた様子なヒナギクさんの声に>>375 反射的に身体がびくりと強張った。 こちらを二度見する視線から逃げるように アリアちゃんの方へと一歩、後退る。 そ、そんなに……意外だった? 二度見するほど?? とはいえ改めて日頃の己を振り返れば 当然ではある。何せ、 表舞台と称されそうな場には とことん出たがらない自覚は一応あるもので ] (588) 2022/12/13(Tue) 18:42:19 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ けれど何やら感慨深そうな様子の彼女は>>377 わたしが参加しようとしているのを 喜ばしく感じてくれているよう、で。 ] あの、えっと、えと…… [ エーリクさんやプロセラさんや ユグさんやゼロさんが歌ってくれる姿を 一瞬思い浮かべてみてからはっと我に返った。 勝手に想像しちゃうなんて、申し訳ない。 おねがいしたら歌ってくれないかな なんて思うのは、心の内だけに留めて ] (589) 2022/12/13(Tue) 18:42:59 |
【人】 XIV『節制』 シトラ……そ、です ね 歌えるなら、全員で……歌えたら ──素敵、です [ ほんとうに素敵だと思った。案そのものも、 そういう発想が自然と生まれて それを実際に言葉として発することのできる彼女も。 わたしが出逢う前 彼女にも ]笑わなかった時期があったなんて 目に見えるものしか視えないわたしは、想像もしない (590) 2022/12/13(Tue) 18:43:46 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ チェレスタさんが荷物持ちの申し出をやんわり断って 代わりにお茶の準備を頼んでくれたのが>>216 彼女の思慮深さゆえだったとも、気付けない。 わたしより早くすらすらと必要事項を 全部言ってくれるアリアちゃんの言葉に>>427 隣でこくこく頷くのが精一杯だ。 『一緒に歌も見てもらえると心強い』の一言には 特に大きく首を縦に振ってみせた ] まっ、また、あとで……っ [ チェレスタさんにぺこりとお辞儀をして 食堂か売店か、 何処かへと向かうアリアちゃんの後を追う。>>428 振り向きざま、 既に荷物を奪わんとしているヒナギクさんの姿が>>379 ちらりと視界の端に映り込んだ。 ……まったく大丈夫ではなかったのに 『大丈夫』が口癖になっていた母さんの声を、 不意に思い出したのは チェレスタさんたちからすっかり離れてからだった。]* (591) 2022/12/13(Tue) 18:45:29 |
XIV『節制』 シトラは、メモを貼った。 (a88) 2022/12/13(Tue) 19:10:03 |
【人】 XIV『節制』 シトラ ──回想・三年前の誕生日 [ 誕生日を祝う歌は、わたしの村にはなかった。 贈り物をする風習は、一応はあった。 毎年じゃなくて、5歳の誕生日にだけ その歳まで生きられたことを祝って 親から子へと、ぬいぐるみをひとつ贈る風習。 洋館まで持ってきた数少ない手荷物の中 鞄のほとんどを埋めていた白い犬は 5歳のわたしが両親から受け取ったもの。 わたしの村では誕生日は、幸運の訪れる日で その人個人の持つ力が 一年で最も増幅される一日だと信じられていた。 新しく始めたい物事、 どうしても成功させたい挑戦は特に 誕生日に行うのが最良とされていた。 だから、だったのでしょう。 わたしにとって誕生日は一年で一番 村のみんなを不必要に警戒させてしまう日で、 そうと判っていたからこそ 特別なことは一切せずに、 普段と変わらず過ごそうと努める日だった。] (635) 2022/12/13(Tue) 22:23:21 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ だから、洋館に来て驚いたの。 誕生日が毎年当たり前に祝われていたことに。 一年目は、一方的に受け取るばかりで 二年目になって職員さんを頼れるようになり 三年目になって初めて 唯一の特技を生かせるようになった。 事前に欲しいものが尋ねられていたならそれを、 尋ねられていなかったなら 消耗品やお菓子を小さな箱に詰めて。 拒絶されたり、遠慮されたりしない限りは 誰にでもおずおずと。 誕生日のわからないひとには、年の初めに贈ろうとした。 ──けれど、 あのひとの誕生日だけは あのひとが来た一年目は、お祝いできなかった。 前日まで悩んで、悩んで、悩み続けて 肝心の誕生日当日に、わたしは ひどい高熱を出して寝込んでしまったのだ。] (636) 2022/12/13(Tue) 22:24:21 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ 紙製の品を贈れば 肌を傷つけてしまうかもしれない 筆記具を贈れば 滑り落ちたそれが目を突くかもしれない 毛糸を紡いだ品を贈れば 絡まって首を絞めてしまうかもしれない ぬいぐるみを縫って贈れば 内から針が出てきてしまうかもしれない お茶やお菓子を手作りして贈れば 混入した毒に気付けないかもしれない 植物や動物を贈り物とすれば それが原因で病気に罹ってしまうかもしれない ガラス、陶器? もってのほか。] (637) 2022/12/13(Tue) 22:24:46 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ 何を選んでも、わたしが彼に贈ろうとするものを わたし自身が誰より信用できなくて、 すっかり熱が引いた頃には 渡す機会を完全に見失ってしまった。 初めて彼の姿を見たとき、 わたしを見るその表情に心臓が跳ねた。 わたしが少しでも彼に近付いてしまえば 取り返しのつかない災いが起こる、 そんな怖ろしい予感がした。 ごめんなさい。ごめんなさい。 どれほど謝っても償えるものではない。 たとえ故意ではなく 混乱の中で起こした過失だとしても、 わたしがあなたを この手で殺めたのは 紛うことなき事実なのだから! わたしを見て笑顔を失った彼と時を同じくして わたしも、すっと血の気が引いてゆくのを感じた。] (638) 2022/12/13(Tue) 22:25:12 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ 自己紹介もそこそこにその場から走り去って 得体の知れない恐怖と寒気に襲われること一週間、 漸く落ち着いて部屋を出られるようになったとき わたしの方から彼に近付く勇気はもうなかった。 姿が見えれば、自然と距離を取った。 わたしたち、きっと、離れて暮らした方がいい。 彼が──クロさんがどう思っているかはさておき わたしの方はそう思っていたものだから、 他のみんなに贈られるのと同様 わたしの元へとやってきた羊のぬいぐるみに>>529 わたしは驚きを隠せなかった。 まるくて、白くて、 可愛らしく掌に乗るもふもふのひつじ。 ただただ愛らしさを振りまくそれは純粋に贈り物で、 『誕生日祝い』以上も以下もないのでしょう。 ひょっとすると、 わたしにだけ贈らないわけにもいかなくて やむを得ず贈ってくれたのかもしれない。] (639) 2022/12/13(Tue) 22:25:47 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ けれど、どんな気持ちで彼が贈ってくれたのかも 直に訊くのは怖くて尋ねられなかった。] ぅ、あ……っ、あり、がと……ござい、ます 大切に…………しま……す、ね [ 歓喜と恐怖、驚嘆と自戒 相反する二つの感情が押し寄せて勝手に声が震えた。 やっとのことでお礼を述べて受け取ったその子は 部屋の隅、チェストの上で 今日に至るまでずっと、わたしを見張っている。] (640) 2022/12/13(Tue) 22:27:46 |
【人】 XIV『節制』 シトラ[ 彼が洋館にやってきて二年目の誕生日 わたしは、贈り物に一冊のノートを選んだ。 考え抜いた末、それが一番実用的で かつ安全なように思えたの。 ただ、わたしの手で直接渡すのは やっぱり怖くて、こわくて。 彼の師でもあるフォルスさんに、 わたしの代わりに手渡してもらえるよう お願いさせてもらったのだった。 接客もお茶の用意も、わたしには難しいけれど 棚出しや陳列やお掃除ならきっと、できます ]** (641) 2022/12/13(Tue) 22:28:18 |
(a96) 2022/12/13(Tue) 22:34:14 |
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