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【人】 夜明の先へ ニーノ……ぼんやりと夜空を眺めて過ごした夜。 空が白んできた頃にようやく身体を起こした。 本当に仲間だと思ったのか懐かれてしまった子猫を、……悩んでとりあえず抱えて。 さて、しばらくはどうしようか。 『ニーノ』が死ぬとなればスマートフォンは置いてきてしまった。 手持ちにあるのは幾らかの現金と、少しの着替えと、それから入っている金額を聞いたときに耳を疑って笑ったキャッシュカードだけ。 他にはなんにもない、けれど小さなころよりはずっとましだ。 金があれば大体はなんとかなる、誰かも言ってた。 あまり顔を見られないようにとパーカーのフードを深く被り、ついでに黒いマスクもしておく。 不審者っぽいかな?合ってるからいいか……。 会いたい人にはこの足で。 場所がわからないなら連絡先だけメモをした紙はあるから。 「……行くか」 返事をしてくれるみたいに、子猫が腕の中でまた鳴いたのでひとり笑った。 (76) 2023/09/29(Fri) 10:50:22 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ──早朝も早朝。 貴方のスマートフォンに着信が一件入る。 表示される名前は非通知、或いは『公衆電話』。 怪しいそれにあなたがもし出てくれるのなら。 『……あ、ろーにい?』 『…………ですか?あってる?』 聞き慣れた声が届くだろうか。 (=0) 2023/09/29(Fri) 10:51:08 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ「昼に歩いたら目立つね、目立つよ。 でもオレが言いたいのはそうじゃなくてぇ〜……」 鉄格子越しに面会をしたときより、貴方の口振りは普段通りだった。 それでもそんな姿でこんな時間に歩いていることを思えば、だ。 「……どう見たって重体なんだから。 ちゃんと寝ていた方がいいってこと」 じっとするのを苦痛に思う何かがあるとは察せられた。 もう一度突いて唇を尖らせてみたが、ぱ、と話せば溜息ひとつ。 そうしてフードを取り去って笑う。 「会えたからうれしいけれどね。 昼空の下だったらもっとうれしかったけれど」 「オレ、警察官やめたんです。そういうのって聞いてるのかな……。 だからせんぱいにもどうやって会おうかって考えてたところ。 まだ散歩は続けるつもりですか?」 ニーノ・サヴィアは死んだことになったから、実際に署で伝えられるのは訃報だが。 やめたのはやめたで事実だから、口調が砕けているのもそのせいだった。貴方も気にしないのだろうなと甘えて。 多分Uターンさせるべきなんだろうが、Uターンしたくなくてここにいるのだろうなと思う。 なら最後の問いは"話す時間がありますか"と同義だ、肯定が返るのなら場所を変えようと思って。 (-188) 2023/09/29(Fri) 12:49:47 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ『声でけえ〜』 電話口では貴方の大声に何やら笑っているらしい声。 『刑務所出たよ、ついでに家無し子になった』 『いや、今はそれいいんだ、あの、その』 『やっぱり困っちゃって……ええと……』 よくはなかったが、家が無いのは最初に戻っただけなので。 あまり深刻に捉えていなかった、今の一番の問題は別。 無期限、回数無制限、いつでも言っていい。 に、甘える最初がこれなのもどうかと思うが。 『ぁの〜、…………あのさぁ……』 『……よくないとは思うんだけど……』 よくないなあと思っているから声はちいさくなる。 犯罪だよなあ、わかってるんだけど。 『………………こ、』 『…………戸籍って……お金で、買えるかな……?』 身分を証明するものがないと、何をするにしても困る。 まだはっきりと貴方の素性を聞いたわけではないけれど。 想像がついている弟は、よくない頼り方をしているところだ。 (=2) 2023/09/29(Fri) 12:52:08 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ『ぶんせき、しゅうせき、ようしえんぐみ……』 呟きを復唱する声は正直あんまりよくわかっていないのが伝わるだろうか。 養子縁組ぐらいはぎりぎりわかる、他はわからない。 わからないから感心していた、あ、やっぱり詳しいんだな、と。 で、『Yes』の答えが返れば表情が明るくなる。貴方には見えないものだけれど。 『ほんと!?』 『よかったあ、スマホ無くてさ〜。 新しく契約したかったんだけどそういえばなんもねえ〜と思って……』 『……あはは、ごめん。 困ったの頼り方の一番最初、こんなで。 お金はあるんだ、好きに使って』 もっと兄弟らしい可愛げのあるものだったらよかったのだが。 それでも手放しに頼りたいと思える家族がいることは幸福だと心から思う。 相変わらず包帯で固定された右手で、なんとなしに電話機を撫ぜた。 『今家?二度寝する? 顔見たいな、ろーにいが良い時間に家行きたい』 (=4) 2023/09/29(Fri) 20:48:15 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ>>-224 「大丈夫だよ、キノコが生えてもせんぱいはかっこいい」 敢えてのそれであるとは理解できているから、こちらが返すのも軽口……ではなく普通に本心だった。 今でもやっぱり貴方のことをかっこいいと思っている、本当のこと。 さらっと伝えられた言葉には瞬きを一回、二回。 とはいえその簡潔さもまた敢えて選ばれたのだとしたら、「そっかぁ」と笑った。 「……じゃあ、運命ってことにしよっか」 「運命なので残りの散歩の時間をオレにちょうだい。 せんぱいと話したいです」 あそこ行こう、あそこ、と貴方を連れて行こうとするのは二人で食事をした夜のベンチ。 今の状態で立ち話はさせたくなかった、場所もそう離れていなかったので丁度いい。 そうして歩調は貴方に合わせて、人の少ない夜道を二人で歩いて行く。 直にそこへと辿り着けば先に貴方を座らせたことだろう。 で、ちゃんと座ってくれたのを確認したらこちらも隣に腰掛ける。子猫をパーカーから出すとよいしょと膝の上に載せて、好きなようにさせながら。 「……せんぱい、なんで警察やめたんですか?」 (-233) 2023/09/29(Fri) 21:53:56 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ『ありがと、すっげ〜助かる! 心配はどうだろ、連絡取りたいの職場のせんぱいとちょっと身内ぐらいだからな』 だからそう貴方が不憫に感じる必要はなく、というのは此方が知っていることでもないのだが。 早めに手に入れたい理由は生存報告がしたいそれだけだった。 『高くてもい〜よ』と値段については伝えたものの、安いままでも素直に甘えることだろう。 さっぱり入手経路なんてわからない自分にとっては大層なものだから、何らかの形で恩は返すつもりだが。 『今行く!』 『足ならあるよ、オレの足が。 近場かな、わかんないけど。 場所は覚えてる、のんびり歩いてたらそれぐらいにならないかな』 回答全てがふわふわしているが、道は覚えているのでとりあえず辿り着けそうなことだけ確かだ。 『だからだいじょうぶ、ゆっくり身支度しててよ。 あ、猫アレルギーじゃない? 仲間がいてさ、離れてくんないの』 伝え、切ろうとして、その前に思い出したように最後の確認がひとつ。 猫を家にあげてもいいかなの意。 (=6) 2023/09/29(Fri) 22:19:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ──貴方が初めて人を撃ってから数日後の夜。 其方のスマートフォンに着信がひとつ。 非通知、或いは『公衆電話』と表記されたそれに出てくれるのなら、聞き慣れた弟の声がしたことだろう。 用件としては短い、『今夜どこかで会えないかな』。 承諾してくれたのなら貴方が指定してくれた場所へ。 場所の指定が無ければ昔二人で遊んだことのある公園へ。 昼と比べれば人気のない場で、弟は貴方が来るのを待っている。 黒いパーカーのフードを被り、ぼんやりと月を見上げていた。 (-235) 2023/09/29(Fri) 22:28:02 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ>>=7 気遣いを感じる言葉には『ありがと〜』と嬉しそうな声、もちろん企みにも気が付かないままだ。 そうして猫については…… 『え?飼ったの?やだーってしてたのに。 あはは、そっか、でもならよかった。 遊び相手になるかも、なー』 足元で丸まってる白い毛玉に話しかけてから、それなら問題ないかと一安心。 じゃあこいつも連れてくなとそれだけを伝えて、電話を切ることだろう。 まだ人々の活気は遠い街中を伝えた通りにのんびりと歩いていく。 ようやく会えるなあ、とか。どういう心変わりがあったんだろうなあ、とか。 考えながら歩みを進めていれば、目的地までは案外すぐだった。 いつぞやもお泊まりをした貴方の家の扉前。 左の指先を伸ばしチャイムを鳴らす、ピンポーン。 「ろーーにいーーー」 ついでに子供みたいに呼びかけながら。 (=8) 2023/09/30(Sat) 14:56:13 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ以前だったらかっこいいを届けた後はそうだろうと言わんばかりに頷いていた貴方が、少しそわつく様を見ればなんだか微笑んでしまった。 咳払いも誤魔化しだと伝わってしまって、さらに笑みは深まっていたことだろうか。 ベンチ上では大人しく問いの返答に耳を傾けている。 最後までを聞き届けてから、目を細めて見上げる顔はやっぱり微笑んだまま。 「そっか、ならオレとお揃いだ」 「オレもさ、警官やめないといけなくなったんだけど……じゃあ戻りたいかって言われたらそうじゃなかった。 何がしたいも、何がしていきたいもわからない、でも……」 「── 自分の道を、歩いてみたい 」耳にしたばかりの言葉たちは、簡単に自分のものとしても形作ることができる。変な感じだ、だけどそれがうれしい。一人ではないようで。 「……ねえ、オレたちって本当に似ているのかも。引き取られた先に振り回された同士ってやつ、せんぱいもきっとそうでしょう?」 「がんばってきたんだよね、その中でオレにかっこいい姿もたくさん見せてくれてた。 ……だから今もさあ、やっぱりせんぱいってすごいなって思うんだ。せんぱいがそうしてくれていたから、立つための勇気を貰えたオレがここにいる」 「ずっと感謝してる。 ……改めて、ありがとうを伝えたかったんだ」 "大丈夫"を幾度繰り返したことだろう。手渡してもらえたおまじないは絶えず胸の内にある、きっとこの先も。 (-308) 2023/09/30(Sat) 14:57:21 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ名を呼ぶ声を聞けば弾かれたようにそちらへと顔を向けて。 「──ねえさん!」 珍しくこちらから両腕を伸ばし、駆け寄ってきてくれた貴方をぎゅうっと強く抱きしめることだろう。 伝えたいことがある、言いたいことがある。その為に呼んだくせに。 言葉はすぐに出てこなかった、ただ細い肩に顔を埋めて。 「…………フィオねえ……」 その存在を噛み締めるように、そのぬくもりを確かめるように、もう一度呼んだ。 抵抗がなければ少しの間そのままでいて、とはいえその内にはちゃんと顔を上げ貴方を解放することだろう。 「……あはは、話がしたくて呼んだのに、会えたの嬉しくて全部吹き飛びそうになっちゃった。ごめんね」 「ええと……あのさ。 オレ、家を出たんだ。それでその内、街も出ようと思ってる。 色々あって……なんていうか、ニーノは死んだことになって、それで今後はフレッドとして生きていこうと思うんだけど。 死人が歩いてたらマズイからそのへんのね、調整、それから自分探し……?うん、とりあえずそんな感じで」 「だからねえさんともちゃんと落ち着いて会いたかった。 ……急に、いろいろごめん」 ひとまずは随所奇妙なところがあっただろう理由の説明をして、とりあえずの貴方の様子を伺っては表情を覗き見る。 (-309) 2023/09/30(Sat) 14:57:56 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ耳元で落ちる優し気な声は、昔から聞くそれとずっと変わりない。 この声がずっとあったから彼を手放しても自分を思い出せる今がある。 その名を呼び続けてくれた感謝も込めて、抱きしめる腕の力は強かったのだろう。 同じ気持ちを抱いてくれていたと知れば安堵をしながら、指されたベンチに隣同士に座る。 「…………ううん」 「応援してくれたらさ、すっごくうれしいけれど。 いやだなって怒ってくれてもいいんだよ。 止めるのは難しい、んだけど……」 それでも感情に蓋をしていつか煮凝ってしまうのなら、今自分にぶちまけてくれたっていいとも思う。 自分だって寂しいから、隣に座る貴方の指先を左手で撫ぜた。 「……オレも弟だからって。 ねえさんのすること全部に応援はきっとできないから」 そうしてぬくもりを感じながら開いた唇が伝えるのは。 あの日から貴方に話したかったこと、届けたかったもの。 [1/3] (-353) 2023/09/30(Sat) 21:57:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「ねえ、フィオねえはやっぱりさ……マフィア、なんだよね? にいさんとおんなじ」 「あんまり何してるかって詳しくないけれど……誰かの命を奪うことも、あるんだよな。 そういうのが必要なときがあったりとか。 ……何かあったときに、そういう手段が取りやすかったり、とか」 脳裏に過るのは今でも思い出せる一瞬だ。 あの時酷く痛んだ胸がまだ疼く心地がする。 大事な人が、大事な人を撃ったこともそう。 ……それから、もうひとつも。 「でも、オレはさ。 そういうの、あんまりねえさんにしてほしくないって思う。 人生の中で選択に悩んだときに……それが並ぶようになってほしくない」 「オレは、そう思ってる。 ……ねえさんが大事だから、思ってる」 綺麗ごとだけで生きていけないのは知っている。 憎しみや悲しみが簡単に片の付けられる感情ではないことも。 だからこれは貴方の行為を否定したいがために紡ぐのではない。 誰よりも大切に想う貴方の前だからこそ、これ以上を偽ることなどないように。 「だからねえさんのこと、応援できないこともあるんだ」 「…………でもね」 そうしてその先に、一番に伝えたいことを伝えられるように。 [2/3] (-354) 2023/09/30(Sat) 21:58:15 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「もしねえさんがこれから先、何をしたって。 どんな罪を犯すことがあったって──」 ぎゅう、と。 今このひと時だけは、誰よりも近くに自分がいる。 その証明をするみたいに手を強く握った。 「──オレの "だいすき" は変わらないから」 「辛くて苦しいときは、傍に居たいし。 涙だって拭ってあげたい。 世界で誰よりも、ねえさんの一番の味方で居たい」 今までみたいには簡単に会えなくなる。 涙落ちるときに傍にはいられないかもしれない。 だけどもしまた、貴方の心が暗闇に落ちることがあるとき。 今のこの瞬間が微かでも光を届けられたらいいと、願って。 「そう思っている弟がいるってこと。 離れてもずっと……忘れないでいてねって」 「伝えたかったんだ、今日」 そうして笑みを浮かべて、その顔を覗き込んだことだろうか。 受け取ってもらえるかなあ、そんな期待を込めた瞳を細めて。 [3/3] (-356) 2023/09/30(Sat) 22:01:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ「あはは。 尊敬とか感謝は、勝手に手渡されちゃうんだよ。 貰うべきじゃないって思っても……貰って? だってせんぱいがしてきたことの結果なんだ」 例えそれが貴方が本当に見せたい姿じゃなかったとして。 その中で救われた人間がいたことをどうか覚えていてほしかった。 肩に触れられるのを拒んだりしない、あの夜と同じ。 誰かに触れられるのはずっと怖かったけれど、今は目を瞑ることも震えることもない。 時計の針がようやく動いた気がした、だからこちらからも体重を少し返す。 「……うん、ありがとう。 せんぱいの大丈夫のおまじないは、効くからなあ」 「でも大丈夫じゃなくなっても、すぐには来れないかも。 オレ、この街を出ようと思っててさ。 事情は〜……ややこしいんだけど、居ない方がよくって。 顔を知ってる人に色々見られるのが困るっていうか……」 見回りだけは元気に行っていたものだから、警官としてのニーノを知る住人は多い。顔見知りも。 彼等にはニーノは死んだことにしないといけない、提出された死亡診断書が真実となるように。 だから。 「……だからね。 今までみたいに毎日って会えなくても。 忘れないでいてほしいし、……見守ってくれてたら嬉しいって、なんというか」 「こ、心で……?」 言葉通りの見守りというよりかは、心持ちというか、こう……言葉が少しふんわりした。 (-357) 2023/09/30(Sat) 22:20:19 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノそわりとこちらも扉が開くまでを待っていたところ、貴方の姿見えたのならわかりやすく瞳が輝いた。 「かっこいいろーにいだ〜」 眼鏡しててもかっこいいけれどね。 謎に付け足しながらありがとうとお邪魔しますを続けて口にし、中へと入っていく。 ちなみに子猫は腕の中ですやすやお昼寝中だった。 「え、今買って来てくれたの?」 気にしなくても良かったのに、を続けようとしたが。 何やらそわそわと貴方が嬉しそうなのが見えて……ああ、と納得する。 喜んでくれているんだなって気が付かないわけがない、だから言わなかった。 「……へへ、ありがと、うれしい。 お腹減ってたんだ、そういえば全然何も食べてなかった」 言葉は感謝へと形を変えて、抱くのはいとおしいなという感情。 ちょうどおんなじ色の……なんなら子猫をおっきくしたかのような白猫が窓際に居たので、そっと並べて隣で寝かせてみる。よし。 好きなところの指定には「どこだったらろーにいの隣に座れる〜?」と尋ねたりして、貴方が嫌がらないのならそれを叶えられるようにしながら。 「にしてもさ、ほんとに戸籍どうにかできちゃうんだね」 などと口にする言外で求めているのは、貴方の口から語ってもらえる本当のことだ。ちら、と顔を見上げた。 (=10) 2023/09/30(Sat) 22:45:00 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ丁度よかったな〜に、うん〜と返して笑う声は陽気なものだ、訪れた平和を享受するみたいに。 飲み物についてはミルクがあればそれをねだり、横並びになれると分かればソファにぽすんと座る。 そうしてマリトッツォにはまだ指先を伸ばさず、返答を待って、待って。 「……そっか」 内容は予期していたものだから驚きはなく、答え合わせが済んだだけに違いない。 でも貴方の口から直接伝えてもらえたことに何よりもの意味がある。 「そりゃ〜中々言えないだろ、オレが同じ立場でもそうだよ。 怖いの気にしてくれてありがとう、隠さず言ってくれたのも」 ふっと目を細めると其方へと少し身体を傾けた。 クッションとソファでは高低差があるだろうからバランスには気を付けつつ、とはいえ身長差を考えれば丁度いいぐらいなのかもしれない。 頬に当たるのはあの日とおんなじ、柔らかなひだまり色。 「……大丈夫、怖くなんかない。 だから安心してね、変わらないから」 ……で。 結局それだけじゃ足りなかったから、両腕を伸ばした。 貴方の頭を抱え込んで、それから左手でやさしく髪を撫でる。 抱いているこの思いがちゃんと真っ直ぐ届くよう。 「きれいじゃなくても、ろーにいがだいすき」 違法頼んだのオレだしな、とも、笑声を傍で揺らしながら。 (=12) 2023/10/01(Sun) 0:24:59 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオどうやら貴方も同じように街を出るつもりらしい。 そんなところまでお揃いなんだなあって不思議な心地に微笑んでいたのだが。 躊躇いがちに何か言葉を続けようとしているの気付けば、なあにとでも言うみたいにその瞳を覗き込む。 なんでも言ってくれて構わない。 なんだって受け止めるつもりだ。 どんな言葉だって、隠さずにおしえて。 そう願い、続きを待っていた……ら。 「────……、……」 刹那、双眸がまあるく見開かれる。 何も言えず、貴方を見つめたまま、固まってしまって。 ……思い出し、過る。 家を出たあの瞬間、どこまでも続く星空に。 途方のない孤独を感じたことを、寂しさを。 それでもおまじないを繰り返し、歩こうとしたことを。 提案が嫌だったわけじゃない。 むしろとてもうれしくて、堪らなくて、だからこそ。 ──『大丈夫』がほどけてゆく。 あの夜みたいに一粒、また涙が落ちていった。 [1/2] (-381) 2023/10/01(Sun) 11:25:18 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ「…………く、らす」 夜空を覆う厚い雲はもうないのに、 ぽたぽたと零れ行くそれは通り雨のよう。 「……せんぱいと、暮らし、たい」 感情が形となり溢れてからようやくに気付く。 本当はずっと、ずっと、苦しくて哀しかったんだ。 「オレ、……オレ、ほんとは、」 おまじないが解けた先にあるのはちっぽけな自分。 誰かの人生をなぞるために置き去りにされた、小さなこども。 そのありのままを隠さずに貴方に見せながら。 「………………ひとり、さみしくて、やだ……」 縋る先をようやくに見つけた指先は、 貴方の服の裾を強く握っていた。 [2/2] (-382) 2023/10/01(Sun) 11:27:01 |
ニーノは、あなたと同じ空を見続けていたい。 (a38) 2023/10/01(Sun) 11:27:22 |
ニーノは、だから、「いっしょにいて」とねだった。 (a39) 2023/10/01(Sun) 11:27:27 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ貴方が見せたいものがあるのならそれだけを見続けているのも良かっただろうか。 だけれどだいすきだと思うからこそ、全部知っていたいとも思ってしまう。 何かあったときも足元を揺らがせることなく、同じ言葉を紡げるように。 弱弱しく名を呼ぶ声に戸惑っているなと感じながら。 それでも嫌がられているわけではないから、抱きしめたままだ。 「……うれし」 貴方を甘やかしたいし、こうすることで自分だって甘えている。 柔らかな髪を幾度も撫でてはここに在る愛情を伝えるように。 「他はぁ……ええっとさ、街出ようと思ってて。 オレ、ニーノって子の代わりしてただけなんだけど、死んだことになったから。 死人歩いてちゃだめでしょ、だからそう……出るんだけど……」 「……それまでの家がないです。 野宿でもしようと思ったんだけど」 お金はたくさんあるとはいえ有限だ。 節約するべきところは節約しようかと考えていたが。 抱きしめていた腕を少し緩めて、そぅと貴方の瞳を見つめた。 「街出る準備できるまで……ろーにいの家に泊まっちゃダメ?」 (=14) 2023/10/01(Sun) 11:49:35 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「……甘えてよ。 恩返しさせて、ねえさんがいたから生きてこられた」 大袈裟に言っているわけでは決してない。 貴方が居ないと本当に、生きてはこられなかっただろう。 早々に命を落としていただろうし、今も自分を見失っていた筈だ。 そんな大切な家族に少しでも返せるものがあるのなら。 躊躇うことなく差し出したいと強く願う。 「…………へへ。 ちゃんと伝えられてよかった。 オレもありがとう、言葉、受け取ってくれて」 「ずっと会えないわけじゃないよ。 たまには帰って来ようって思ってるし…… どこに行くか決めたら、ちゃんと伝えるし!」 まだ決まっていないけれど決まったその時には。 真っ先に貴方に伝えて、手紙を送り合ったりしてもいい。 会いに行ける距離なら遊びに来てもらったり、とか。 今はまだ見えていない先のことを思いながらも。 [1/2] (-385) 2023/10/01(Sun) 12:17:06 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「此処を出る前にはまた挨拶しに行く。 あ、だから今日住んでるところ教えてね」 何を偽ることもなくよかった。 これからも、貴方の前ではずっと本当のままでいられることを安堵して。 圧し掛かっていた重荷が軽くなった心と共に笑い、そっと手を引き立ち上がるだろうか。 「……夜遅くに来てくれてありがとう。 ええっと、送るよ、……ボディガード?うん。 もうちょっと話したいし」 こんな夜道を一人で帰らせるわけにはいかないからと言葉を添える。 にいさんにだって、色々と任されたしなと頭の隅。 近くでずっと支えるのは難しそうだが、自分なりにできることをこれからも貴方へと贈っていきたい。 そんな考えは今は一先ず胸の内に秘め、貴方が了承してくれるのなら仲良く手を繋いだままに歩き始めることだろうか。 輝く月と瞬く星だけが、寄り添う姉弟の暖かな絆を見守っていた。 ──例え、立つ場所がこれから先も違うところにあったとして。 それでも男は家族を、あなたを、愛している。 不変などないのが世の常だとして、 そんなもの関係ないって笑い飛ばせるぐらい。 この感情だけはいつか最期を迎えるそのときまで変わったりしない。 いつの日か貴方という花が教えてくれた愛の強さを胸に抱き。 男はこの先も塞ぐことのない瞳に世界を映し──生きていく。 [2/2] (-386) 2023/10/01(Sun) 12:18:51 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ「……えっ、ぅ……う…………」 貴方の言葉が魔法を解いてしまったから。 涙と嗚咽は堰を切ったように。 溢れてやまない、いろんな感情が。 とうさま、本当は抱きしめて欲しかった。 かあさま、本当はオレを見て欲しかった。 叶うことなら最期まで、ずっと一緒にいたかった。 浮かび上がる多くの言葉は声にはならず。 ただ大きな背に手を回し、肩を震わせるだけ。 不安だよ、不安でしかたないんだ。 これからなにをしたらいいのかな。 探しても本当に、オレはオレの道を見つけられるかな。 誰かに言いたくて、でも誰に言えばいいかもわからなかった。 心配をかけたくなくて、あなたたちを大切に想えば想うほど。 寝台上の笑顔に平気だと笑った、あの癖がずっと抜けなくて。 ひとりになりたくない。 だれかといっしょにいたい。 でも何を返せるかな、オレなんにもないんだ。 後悔しない? ねえ、せんぱい。 やっぱり自信なんて全然持てないんだ、自分に。 だけどもうどうにも、ぬくもりから離れられそうにはなかった。 [1/2] (-392) 2023/10/01(Sun) 15:15:58 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ────ずび。 「………………」 涙が落ち着いた頃、鼻を啜って。 あまりに泣きじゃくりすぎて頭がぼんやりしている。 落ちてくる涙になんだこれとなっていた子猫もまた瞼を落としていて。 その姿をぼんやりと眺めた後、ゆるゆると顔を上げた。 「……いっぱい……泣いちゃって、ごめんなさい……」 とりあえず謝罪と、あと。 「あの……誘ってもらえたの、ほんと、うれしくて。 だから、えっと……一緒、ぜひさせてください」 改めてお願いしてから、あと。 「いろいろ決めることあるよね。 でもとりあえず、せんぱいの身体落ち着いてからかな。 ……あ、しばらくって言ってたけれど、どれくらい?」 先程溢れた感情に引っ張られてできなかった確認をいくつか。 泣いて縋って、いたくなかったかな。 今更のように思えばそっと貴方の腕を撫でたりもしていた。 [2/2] (-393) 2023/10/01(Sun) 15:17:10 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ貴方が嫌がる顔は想像していなかったけれど。 変わらず微笑んでくれていることにはやっぱり安堵してしまった。 だから泣いたばかりの顔は無理に隠したりしないまま。 ひとつひとつ返る答えには頷いたり、相槌を打ったり。 思っているよりも早くその日は来るのかなとか考えたり。 していたところ、最後の期間については少しだけきょとんと瞬いた。 何かの想定があるからの暫く、だったのかと思ったけれど。 そういうわけじゃなかったらしい、なんだ、なるほど。 それからもう少し瞬きを繰り返した後、唐突に。 「……あはは、それじゃあ」 声を揺らし笑えば、腕を撫でる手を止めて。 貴方の瞳をじぃと見つめて、笑って。 [1/2] (-414) 2023/10/01(Sun) 19:34:42 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ「オレが大丈夫じゃないままなら、 ずっと一緒にいてくれるんだ?」 「…………なんて」 なんて。 そんなのきっと困っちゃうだろうな、わかってる。 目を細めてからもう一度、貴方の肩へ額をとんと押し当てた。 「……じょ〜だん」「…………でも、ほんとかも」 「オレって甘えたらしいから、気を付けてね」 勿論貴方が大切な人と共に生きていきたいと、 望むような日が来るなら止めたりはしないのだけれど。 そんな言い方をされたら、そんな風に返したくなってしまった。 だってオレ今、一人で歩ける未来なんてうまく想像できないから。 みゃあ、と目を覚ました子猫が鳴く。 ちょっとずるい顔しているのバレたかな、内緒だよ。 そう伝えるみたいにちいさな額を指先で撫ぜて。 「じゃあ、今日はとりあえず帰ろっか。 落ち着いてからじゃないっていっても、ちょっとでも早く身体治して欲しいから」 「家まで送るよ、せんぱい、…… …………リヴィオさん?」 そうしてぱ、と顔を上げた頃、濡れた瞳はそのままに。 変わらず微笑みを浮かべていたことだろう、うれしげに。 (-415) 2023/10/01(Sun) 19:35:32 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ「近場……かなあ。 まだ決めてない、とりあえず知り合いあんまりいないところ〜って……」 貴方があんまりにも素直に寂しそうな顔をしたので。 寂しくさせるのが自分だってわかってるのに、なんだか笑ってしまった。 嬉しかったのだ、そうやって求めてもらえることが。 なのでもう一度、いや二度ぐらい、やさしく髪を撫でてから。 にま、向けられた笑みに更にこちらも笑みを深めていれば……むぎゅっと。 「ゎ」 貴方に抱きしめられると本当にいつもすっぽり収まってしまう。 あの牢の内に居たときからそうしてほしかったと、 望む心が満たされていくのを感じて、しあわせだ、と思った。 「へへ…… ろーにいならいいよって言ってくれると思ってた」 「はぁい、鍵は失くしません、大事にするし」 「帰り遅くなってもいいよ。 オレ寝てておかえり言えないかもだけど……」 「誰か来るのも大丈夫、だめなときは外に居るし。 そうじゃなかったら家の中で大人しくもできます」 注意事項にはきちんと全てに返事を返す。 だって大事なことなんだろう、そして全部大丈夫。 ぎゅっと抱きしめながらも顔だけは上げて、貴方を見上げて。 「……だから、しばらくよろしくね?ろーにい」 無職なので家事はしまーす、と。最後に付け足して笑っていた。 (=16) 2023/10/01(Sun) 19:56:33 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノちょっと力の強いハグは苦しさを教えるものではなくて、 貴方からの愛情を教えてくれるものだ。 兄弟としてのこれからは始まったばっかりだったのに、 すぐに遠くなってしまうことはこちらも寂しいけれども。 「そうだよ、ろーにいが帰ってきたらにゃんことオレがいる。 へへ……競おうかな、この子たちと。 どっちが早く玄関までろーにいを出迎えられるか……」 それでも、それまでの少しの間だけでも。 貴方に家族の温もりを与えられるのなら。 "オレでいいの"、と。 零された小さな声を未だ、覚えているから。 「…………────」 そうして腕が離れた頃。 そっと伝えられる感謝には目を瞠り。 呆けている間にマリトッツォを手に取った貴方を見て、眦を下げる。 すこしだけ、視界が滲むのを感じながら。 「…………それなら、オレだって」 [1/3] (=19) 2023/10/01(Sun) 20:56:27 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ「……溶けるのは、困る〜」 そうしてぐしと少し乱暴に目元を拭ってから、 己もまた同じように甘味を手に取る。 食べ終わったら何をしようか。 夜になっても貴方の隣に居られるのを思いながら。 久々に口に入れた甘味は幸福と呼ぶのが相応しい味がした。 ──『ねえ、戸籍ってろーにいのと同じにできないのかなあ』 そうして食べている最中、そんなことを零していただろう。 難しかったら大丈夫、あんまりよくわかってないから、と添えてもいたが。 ──『そうしたら、ほんとの家族になれるでしょ』 すれば離れたとして、貴方の寂しさも少しは紛れるかなって。 子どものような発想を声に載せて。 ──『そうじゃなくても、ほんとの家族だって思ってるけどね』 貴方の弟は甘えただから、変わらずぎゅっと肩を寄せて笑っていた。 [3/3] (=20) 2023/10/01(Sun) 20:58:24 |
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