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【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-120 ブレーキランプがまだ乾いている地面を照らす。 まだ新しい黒の車を指定された場所の付近に止めた後、 やや急ぎ気味に降り貴方の姿を探すために周囲を見た。 ちゃり、と鍵に付いた鈴の音。 「ルチアーノさん?」 自分を呼びつけた依頼主の名前を呼ぶ。 貴方は声の届く所にいるだろうか。 #ReFantasma (-137) 2023/09/28(Thu) 23:29:04 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-139 剣呑な賑わいを見せる通りを横目に通り抜けて、 貴方の所へ来ただろうか。 いつもの声が聞こえたのはそちらの方ではなく、 少し外れた路地裏の方で。 「あ」「あ?」 「いや」「………………」 顔を見て安心し、視線を下にずらしてすぐに驚愕したような様子になり。そのままゆっくりと目を細めて怪訝な顔をして、もう一度視線が貴方の顔に戻る頃には片眉を上げつつ苦虫を嚙み潰したような表情だった。器用な表情筋をしている。 「あんたねえ。いや…………」 「乗ってくださーい……」 「あんたの怪我が無いんならまあひとまずはいいです……」 車の方向を指し案内する。その途中にそう零して、 車まで辿り着けば「邪魔なものはないと思うんで好きなとこ乗ってください」と運転席へ乗り込んだ。 車内には物が少なく、精々後部座席の白いクッション程度だ。 カバーのかかっていない座席はそれでも清潔に使われていて物をこぼした形跡もない。足元のフロアマットにも砂や泥は少なく、こまめに掃除はされているのだろう。 シガーソケットにセットされたディフューザーからは、ウッディーノートの香りが仄かにした。 貴方が座れば濡れタオルをぽい、と投げよこす。 「これで手拭いて。服それどうすんすか、それも拭きます? 行き先どこでもいいなら気晴らしになるとこでも行きますか。海に嫌な思い出は? ある? ない?」 #ReFantasma (-145) 2023/09/29(Fri) 0:49:33 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-158 あんたが正直者で助かりましたよ、と苦笑した。 無事ならば何でもいい、……なんて思考は、少々雑だろうか。 「やっぱあの騒ぎはあんたか。 ……その言い方だと逃げられました?」 後でやり返しに来やしないだろうか、なんて思うのは その相手を知らないからだろう。 ──事実、知ったところでその相手についての事はあまりよく知らないのだが。 貴方の気分が悪くなっている理由も知らずに、別ベクトルの心配が始まっている。 「座席の下の引き出しになんか入ってなかったけ…… パーカー畳んで入れてたはずなんで使っていいですよ。 サイズも合うでしょ、きっと」 どこへ行くにもその格好じゃまずいだろうと考えて、そう言えば非常用に一つ上着を用意していたことを思い出す。 汚れたタオルはそこら辺に放っておいてもいい事を伝えながら、エンジンボタンを押してシートベルトを締めた。 「じゃあ見に行きましょう。泳ぎやしませんよ、寒い」 「人も建物も視界に入らない方が思考もスッキリするんじゃないですかね〜。多分ですけど」 自分も海を見たい気分だったし丁度いい。 ハンドルを切り、車を発進させる。 あんまり揺らしちゃ気の毒だとスピードはいつもより少しだけ抑えられていた。 #ReFantasma (-183) 2023/09/29(Fri) 11:31:43 |
【鳴】 corposant ロメオ「……ん”ぁ」「ぁに……何?」 早朝のコール音。 寝起きは良からずとも無理やり起きる事には慣れている。 また何か誰かの手伝いの依頼だろうか……とベッドサイドに置いたスマートフォンを手に取り画面を見れば、なかなか見ない表示がそこにあった。 訝しむ一瞬で受話ボタンを押すのが遅れたが、無視するわけにもいかないと通話に応じ、 「あいもしもし…… あ? 」「フレッド!? 何お前ムショ出てたの!?」 ……無事に一気に目が覚めた。 寝転がったまま電話に出たのに、 飛び起きたみたいに上体を起こす。 思わず問う声は早朝に出すにはやや大きかった。 (=1) 2023/09/29(Fri) 11:46:01 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-184 「え。なんすかそれ。いいな」 へー、と面白い物を見せてもらった子供みたいに弾んだ声を出した。 そんな人が居るんだとも思ったし、 それってちょっといいなとも思った。 絶対殺したい人、オレにはいないしなあ。 『脱げば驚く』の言葉に見せられない何かがあるんだな、と雑な察し方をして「そか……」と口を少し曲げてこれまた雑な返事をした。 「あ。モテてる人の台詞だあ。色男は大変すね」 「……え? やですけど……オレそこまで薄情じゃないんで」 「愚痴でもなんでも付き合いますよ。 どーせ今日は暇だったんす」 海が近くなれば運転席の窓を開ける。 こうやって潮風を浴びるのが好きだった。 青空の下であればどこまでも青い風景だったんだろうけど、 海は素直なものだから空の色をそのまま映している。 「あんたと話もしたかったし。何話すんだって感じですけど」 ハハ、といつもの調子で笑った。 あれからもロメオは変わっていなかった。 昔から起こった事を引きずらない方だった。 感情の振れ幅は一定で、今回もどうやらそうらしい。 #ReFantasma (-186) 2023/09/29(Fri) 12:21:34 |
【人】 corposant ロメオ>>77 フィオレ 「……ハハ。それでいい。女の涙は宝石と同じだからな」 下を向けば貴女と自然に目が合う。 口の端を吊り上げて、悪戯小僧みたいな笑い方をした。 「Ottimo lavoro!」 「美味しいもの? いーよ、何買う? つかなんでも買うか……せっかくなんだし奢ってやるよ」 運転席に戻れば、そろそろずらかるかとエンジンボタンを押す。端末には見張りの部下達の『問題無し』との報告が入っていた。そちらにも『お疲れさん』と返して、後部座席を振り返る。 「じゃあ行きますかぁ。問題無い?」 #BlackAndWhiteMovie (78) 2023/09/29(Fri) 18:46:00 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「あ〜……あ!? いたんすかその人!? あんだけ姿見せないで今更ひょっこり? そら……そうもなるか? なってるか……」 その話を聞いて瞼を持ち上げて驚いた。 貴方の落ち込みようを見ていた事もあるし、生きていた事にも驚いた。下っ端の自分にはなんにも知らされないばっかりで、とっくに処分されたものだと思っていたし。 お疲れさまです、とどこに向けてかもわからない労りをした。 「日焼けはオレも嫌いです。泳がねえし……。 浜辺散歩するだけで十分すよねえ」 「そんなカッコのそんな経緯の人を空き地に転がして帰るのは十分薄情でしょうが。いや……オレが心配性すぎるだけなのかもしれねえすけど?」 「怖……そんなんすっげえ恨みじゃないですか。余程すね。 じゃあチャンスがあれば殺すんだ。オレ手伝います?」 そんな事をサラっと言って、それともそんな殺してえなら帰って一人の方がいいすか? とも。 海と雲の間の、白い空を横目で眺めながら「なんでまたって」と。 「いいでしょ、逮捕されたって聞いて寂しかったんだし。 すぐに帰ってこられたからいいけどさ……」 「文句なんかないですよ。オレが心配で行ったんですから。 無理やり文句言うなら買ったティラミスが少し溶けてた事くらいじゃないですかね〜……」 「……ま、あの時よりは元気すね」 適当なスペースを見つけて、緩やかに停車する。浜辺の近くまでやってきたから、ここから歩こうと。 サイドブレーキのレバーを引いて車から降りれば、 ここまで波の音が聞こえた。 #ReFantasma (-211) 2023/09/29(Fri) 19:18:28 |
【鳴】 corposant ロメオ「いや……デカくもなるよ、驚いてんだもん」 「家無し子ォ〜〜? お前家まで追い出されてんのかよ。 や、良くはねえだろ。なんですか」 まだ梳いていない寝起きのままの前髪をかき上げながら、 また仰向けにぼすんと寝転がる。 「……なんだよ。言えよ、何でも」 まごつく様子に、何を言い出すのか待っていれば。 「…………………」 「ああ〜〜……」 納得した。それは確かに貴方には言い辛い話だろうと。 「分籍とか就籍とか養子縁組とかそういう感じじゃない奴ね? あれクッソめんどくさい上に書類でつっかかりそうだもんなぁ……う〜〜〜〜〜ん……まあ逆にそっちの方が……」 しばしの間、そんな風に考える呟きが 通話口に垂れ流された後。 「……できるよ。よそのブローカー頼んのはやめな。 足元見られて適当な仕事されんのやだろ。 やんならオレがやるから……」 つまり質問の答えは『Yes』だった。 良くない兄も居たものだ。 (=3) 2023/09/29(Fri) 19:41:30 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「行方不明の振りもココまで上手くやれるもんなんですね。 そんでまた消えたと。ニンジャかなんかなんですか」 ちゃんとまた現れるといーですねえ、と呑気に一言。 聞いてるこちらも他愛ない話のような感覚で返事をしている。 内容はそんなものではないという事は知っているのだが。 「苛烈だなあ……いーですよぉ。なら手伝います。 オレが手伝えばまたなんか違うでしょ。 そーいうサポートは割と専門なんで」 片手でOKサインを作ってみせる。 ぶっ殺したいほど好きで嫌い、だなんて随分な感情だと思った。愛憎相半ばにするとはよく言ったものだ。 実際の感情の比率は、ロメオが存ずる所ではないのだが。 それにまた、少し羨ましさを覚えたのだった。 ▷ #ReFantasma (-229) 2023/09/29(Fri) 21:32:47 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「そーいう事です。win-winでしょ」 いつぞやみたいな都合の良い言葉。 一緒に居るのはこちらの勝手であることは知っている。 追い払われないから今は一緒に居ていいものだと思っている。 ロメオが「なんでもする」のはそれを許されるからだ。 許されなければ、なんにもしない。 貴方は許してくれる人だと思っている。 「いーですよ。溶けても美味かった」 「あんた、意外と寂しがりだったりします?」 それを揶揄するでも責めるでもない、ただの感想。 思った通りにここは人の気配が無くて、ここには二人しかいなかった。 彩度の低い風景だった。 「オレが言えたことじゃないか。お揃いすね」 そうしてまた、勝手にお揃いにしている。 #ReFantasma (-230) 2023/09/29(Fri) 21:33:44 |
【鳴】 corposant ロメオ「おう、いいよ。なる早でやっとく。 スマホもねえのは不便だろうさ。 お前の事、他に心配してる奴いるんじゃねーの?」 公衆電話だけで知人とやり取りするのは余りに不便だろう。 友人も多いだろう貴方のそういう不自由はやや不憫に感じた。 「なんでもいいよ、頼ってくれんなら。 金は貰う事になるけどそれは勘弁な。安くはしとくよ」 個人的にやったっていいのだが、他の人間と連携を取る以上仕事の客として扱った方が勘ぐられもされずに済むだろうと思っての事だ。自分もだが、相手の立場は守らねばなるまい。 詐欺としてやるなら別だが今回はそうではないので。 「家だよ。いいよ、今来る? なんもねーけど……30分くれない? 身支度とか終わらす」 来てくれるのは純粋に嬉しい。素直に快諾して、話しながらようやっとベッドから起き上がる。 場所ならこの間連れて帰ってきたときに覚えてもらっている筈だ。 「なんなら迎えに行くけど……足あんの? 近場?」 (=5) 2023/09/29(Fri) 21:54:04 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「不安?」 ……足を止めた。 潮風で揺れる前髪が、深みのある翠の瞳を隠しては現す。 「オレは別に……」「いや」 「不安じゃないって言えば嘘ですけど。うん」 うろ、と視線が惑った。考えに迷っている時の癖だった。 自分の心について語るのは苦手だった。 誰にとってもどうでもいいもので在って欲しいから。 不安。欲しいもの。言ってどうなる。けれど問われている。 「……欲しいものなんかいっぱいありますよ。 でもオレは弁えてるんだ。 オレは聞き分けのいいゴミでいたい」 「そら使ってほしいのが一番だよ。 オレを使ってくれる人はいっぱい居る。いいことだ。 オレは便利な物か畜生扱いでいい。 利用価値があったら捨てられないでしょ……」 とつとつと、ぼそぼそと、 それでも波音には掻き消されないくらいの声。 内容はいつか貴方に話した、在り方の続きだった。 #ReFantasma (-242) 2023/09/29(Fri) 23:30:54 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「けど……どうせだったらさ」 「やっぱり好きな人に使われたいですよ。役に立ちたい。 オレを求めてくれる人が居たら嬉しい。 オレだって大事なものを大事にさせて欲しい」 「オレはゴミだが悲しいことに心がある。嫌だね。 贔屓 が出来ちゃうから……情があんだよ」「なくなったら嫌なものにしがみついちゃうんだよな」 みっともなくてすみませんね。 眉を下げて、へらりと笑った。 あんまり答えになっていなかった気もするが、 不安と欲求の種はこれなのだ。 「だからオレ、なんでもするんです」 人というには烏滸がましい。 でもゴミにも畜生にもなり切れない。 居場所にさせてくれる人が欲しくて、 型落ちの用済みになるのが不安だった。 #ReFantasma (-243) 2023/09/29(Fri) 23:33:42 |
ロメオは、ひとのかたちをしている。 (a20) 2023/09/29(Fri) 23:35:07 |
【鳴】 corposant ロメオ「おう。用意出来たら出来たって言うわ。 スマホに掛けたら繋がらないのは心配させるだろ、 早く安心させてやらねえとさ」 ついでにスマホも登録しておいてやろうかな、 なんて企みは口には出さないでおこう。 「そ? わかった、徒歩なら気を付けて来いよ。 ──あ。そうだ、猫」 それならこっちも色々用意できるな、とズレかけた思考は、 『猫』という単語ですぐに戻った。 「あのさ。飼ったわ、猫。家に居る」 「貰ったんだよ。白猫……」 だから大丈夫、と一言。 いつぞやは自分では飼わないと言った覚えがあるが、 結果として今、家に一匹いらっしゃるのだった。 (=7) 2023/09/29(Fri) 23:48:35 |
【人】 corposant ロメオ>>84 フィオレ 「アハ、それもいい。 余ったら家に持って帰って食えばいいしな〜」 すっかり機嫌が直った様子にこっちも気を良くして、 今から何を買ってやろうか計画立てて。 自分もキャップを被り直せば、 バックミラーの位置を調節してハンドルを握った。 「OK〜。んじゃ、行くか」 そうして車は走り出し、きっとどこかの店にでも そのまま向かうのだろう。 自分のカローンとしての役目も これで果たされた。 一つの銃声の犯人を連れて、リボン舞う青空からは遠ざかる。 仕事はきっと、これで終わりだ。 #BlackAndWhiteMovie (85) 2023/09/30(Sat) 0:00:19 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「え」 口からぽろっと零れたのは動揺の一音。 「……な」「なんで? 今なんて?」 それから疑問。 見た事無い仕草は、欲しかった言葉に添えられている。 理解が追い付いていない。確かに欲しいものを言った。 何故この場で、貴方からそれが与えられたのか。 これはめいっぱいに目を開いて驚いて、どっと汗をかいた。 嫌ではない。嬉しいはずだ。 与えられた言葉の一言一句は望んでいたものだ。 ただそれを、あまりにも簡単に貰ってしまったものだから。 「んで急に、 は? なんでもしてやるって言った?」 「オレに? いや、冗談なら……」「違、あ」「その」 「本気? マジで言ってる? オレだぞ? いや、あー」 「オレ別に見返りを求めてるわけじゃ……そうじゃない、 分かってる。嬉しいんだけど、嬉しいんだけどさあ、 使ってくれんの……? 欲しいの? オレを?」 誰にも見せた事無いくらい狼狽えた様子で、 それでも落ち着こうとしきりに後頭部をパシパシと叩いて。 ▷ #ReFantasma (-250) 2023/09/30(Sat) 1:02:31 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「……………………あの……」 「……クーリングオフ期間付けますけどお……」 「それ言われるとオレ本気にするんで……マズいから」 丁寧に飲み下して、本当に本気か、とそれでも問う。 言葉の杭が欲しいのは相変わらずだ。 #ReFantasma (-251) 2023/09/30(Sat) 1:03:25 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「や」「う……」「は? ズル……何?」 ぐう、と色々を噛み殺した声。 言葉の合間合間に挟まるのは返事にも満たない、 口の中だけで完結したもごもごとした言葉。 急にそんな事を言うのもずるいし、 あの日を引き合いに出すのもずるい。 あれはあの日の頼み事の通りにしただけで、 あの時だけだと自分に言い聞かせてきたのに。 恋でもない、愛でもない、けれどただ本当に好ましかった。 確かに期待をしたのだ。 所有してくれるかもしれないと思ったのだ。 尊敬していた。信頼があった。心を許していた。 この人の頼みなら本当に何でもできると思っていた。 だけど自分から手を伸ばせない。人畜生にその権利はない。 せめて道の行く末がどうか善きものになるようにと、 自分はずっとその手伝いをしていようと思っていたのに。 「……遠慮ぉ…………?」 喜んでいる筈なのに、 きっと自分は今随分苦しそうな顔をしているんだろう。 ▷ #ReFantasma (-300) 2023/09/30(Sat) 10:41:49 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「そんなの」「そんなの許されるんならしませんよ」 「そんな事もさせませんよ、 あんたが居なくなんのが嫌でこっちは、」「……はあ」 噛みつくみたいにそう言って、深く息を吐く。 都合よく誰かの岸辺にある船のようなものでいたかった。 これからもきっとそう在る事は変わらない。 けれど、錨を降ろすのはここがいい。そうしていいのなら。 心の裏側を焦がされるような後ろめたさは今は無かった。 きっと自分がこのままでいいからだ。 これはあの時とはまた別の『許し』だった。 「……欲しがっていいなら」 「そうします。遠慮なく」 裏切るだなんて、可能性の欠片もこれには元より無い。 波の音がやけに遠く感じた。 #ReFantasma (-301) 2023/09/30(Sat) 10:45:33 |
【鳴】 L’ancora ロメオ>>=8 「いや〜、人間心変わりってするもんだよ。 きっかけさえありゃあ人間なんでもするんだね。 猫用のおやつはあるから分けてやるよ。んじゃな」 ぴ、と電話の切れた音。 さて、とりあえず顔を洗わなければ。 適度に取っ散らかった床も片付けて、それから…… ◇ 「はあい、はいはい、はーい……」 近所のガキみたいだな、なんて思わず笑みが零れる。 早足で玄関まで行けばすぐに扉を開いた。 貴方に会う時はいつも髪を結んでいたけれど今日はそのまま。 勿論眼鏡もかけていなかった。 「入んな〜。飲み物、用意してるから」 扉を開け放ち貴方を家の中へ迎え入れる。 ロメオの家は一階建てのこじんまりとした家で、それほど部屋は多くない。けれど物が少ないから少し広く見えるのだった。ガラスのローテーブルを挟んで一人掛けの白いソファと椅子代わりにもなる大きなクッションが置いてあり、窓際には白猫が丸まって眠っていた。 「近所の店にマリトッツォ売ってたから買ってきたわ。 これ二人で食べよ」 心なしかそわそわと嬉しそうにおやつの用意をしながら、 「好きなとこ座んな」と促した。 (=9) 2023/09/30(Sat) 20:11:42 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「……ズルいでしょ、だって」 「引いて無いよ……オレだって、嬉し、かったし」 いつか貴方に齎した甘言の分が返って来ているような心地。 本当に欲しい言葉を、貴方は全部くれていた。 一歩分の足音に、近付いた距離に、 いつの間にか足元をうろついていた視線を上げる。 その拍子にころりと一滴だけ、涙の粒が零れた。 泣いたのは久しぶりだった。何年泣いていなかったろうか。 涙の出し方を忘れていたようで、たった今思い出したようでもあった。 「……宝なんて」「初めて言われた」 ぱち。また目を閉じる。また零れる。 白い砂に吸い込まれて、涙の粒は消えていく。 「オレにね、そんな事言っちゃダメですよ。 本当にそうなるんだからさ……」 ゆるりと貴方の右手を掴んだ。 両手で手のひらを持って、強く握るでも握手をするでもない。 緩く握って、指の形を確かめて、手の甲を撫でて。 手のひらを揉んで、それから包んだ。 それから恐る恐る貴方の顔を見て。 「あは、」と蕩けるみたいに笑った。 初めてこんな笑い方をした気がした。 #ReFantasma (-346) 2023/09/30(Sat) 20:36:43 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「はい、かっこいいろーにいです」 かっこいいだろ。はずかしげもなくおふざけの延長でそう言って、 貴方の腕の中の子猫を見れば「かわいっ」と笑った。 「おう。折角だから一緒に何か食べたいだろ」 「オレも朝飯まだだったし……丁度よかったな〜」 朝飯にしては甘いが、見たら食べたくなってしまったのだ。 気付いたら2個買っていた次第だ。 飲み物は何がいいか聞いて、その通りにグラスに注げばマリトッツォと一緒にテーブルへ並べる。 隣に座りたい様子があれば、 クッションをソファの横に持ってきて横並びに。 自分はクッションの方に座ろう。 「まあなー。もちろん違法だけど」 「………………ノッテの人間だからね。慣れてるよ」 これだけ言えばあなたには伝わるだろうと思った。 今回の騒動で仲間が牢屋に入れられたのだと。 自分は運が良かっただけだと。 「ごめん。黙ってて」「怖がらせるかなって……」 (=11) 2023/09/30(Sat) 23:43:55 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「お前の事こっちのゴタゴタに巻き込みたくないし」 「どうせだったら マトモ な部分だけ見て欲しくて……」貴方をそういう世界に触れさせたくはなかった。 無かったけれど、貴方がそうやって許すから、 正直に言おうと思えたのだ。 それでもこれは言い辛そうにしていたけれど。 「え」 ──伸ばされる両腕に、ぽんと抱き寄せられる。 抱えられた頭を、自分よりも小さな手が撫でている。 「あ」「…………」「フ、フレッド」 「オレ、」 これは途端に驚いた顔をして、何回も瞬きをし。 ふと弱弱しく名前を呼んで、貴方の胸に頭を押し付ける。 弟に甘えるなんて思っても無かったけれど。 「……きらわれなくてよかった」「安心した……」 「…………あは。オレもお前の事は好きだよ」 今は抱き締め返すよりも、この時間を享受していたかった。 穏やかに目を閉じて、ぽつりと「よかった」とまた言って。 「お前……これからどーすんの」 「他に手伝う事無いの。オレやるから……」 (=13) 2023/10/01(Sun) 6:30:29 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「へ。なんだそれ、酔ったあんたに褒めちぎられるって? それも面白いかもなぁ……」 今まで生きていた分よりお釣りが出るくらいに、 これからも貴方に言葉を貰うのだろうか。 それもそれでむず痒い話だった。 粒になって転がる涙はすぐに止まって、 自分でも不思議な気持ちになった。 目尻を手で拭って、スン、と鼻を鳴らす。 「や……これ嬉し泣きなんで。オレ泣けたんすね、初めて知った。 俺がゴミなのは……多分元からだし……」 「直せって言われるなら直します。うん」 「あんたが磨いてくれるなら、もうゴミじゃないな」 指先に落ちる口付けを見て、口の端をきゅっと上げて笑む。 気持ちが落ち着けば言葉は素直に受け止められるようになっていた。それでもまだ、不思議な気持ちはあるけれど。 嬉しかった。なんだか自分の今までが、報われてしまった気分だ。 自分は人畜生だけれど、大事にしてくれる人がいるらしい。 それなら一層報いたい。応えたい。 「……ね、ルチアーノさん」 ▷ #ReFantasma (-383) 2023/10/01(Sun) 11:44:56 |
ロメオは、「オレの事拾ってくれて、ありがと」 (a40) 2023/10/01(Sun) 11:45:18 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「こんな色男に拾われて幸せだよ、オレ」 「首輪でも付ける? アハハ……」 くい、と貴方の手を引いた。 もう少しこの海辺を歩いていたかった。 ロメオはどこか吹っ切れたような、晴れ晴れとした顔をしていた。 この空には不釣り合いに澄んだ気持ちだった。 波の音。遠くに響く鴻鵠の声。 二人分の足跡は、じきに波に攫われ消えるんだろう。 共に結んだ約束だけは、 ずっと消えないように掴んでいようと思った。 いずれ来る最期の日まで。 #ReFantasma (-384) 2023/10/01(Sun) 11:46:28 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「え。街出んの? 近場? てか今そんな事になってんの? 難儀だな……。 遠かったらやだな……会いに行けなくなる」 街を離れる事については、素直に寂しそうな顔をした。 きっとパン屋で会える事も今よりずっと少なくなるかもしれない。 死人が歩いていちゃあいけない理屈は分かっているけれど。 腕が緩まれば距離は少しだけ離れる。 何を言うつもりなのだろうかと見上げればきっと目が合って。 「………………」 「なんだ。オレが断ると思ってんの?」 にま、と笑った。 そういう事ならお安い御用だ。むしろ嬉しくもある。 いつか話していたお泊り会が、 ちょっと長めに開催されるようなもの。 ロメオはそのまま身体を起こして、今度は貴方に手を伸ばす。 叶うならそのまま、むぎゅっと抱きしめて。 「いいよ。泊まりなよ、オレの家は自由に使いな。 鍵も渡しとくかな……あ、落とすなよ。色んな意味で危ない」 「あと夜帰り遅かったりとか……他の人が来ても良いタイプ? 多分たまに来たりすると思うから……」 そうやって撫でくりまわしながら、注意事項の確認。 (=15) 2023/10/01(Sun) 19:04:28 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「……そっか。そっかあ、ならいいや。 オレが会いに行ける所ならどこでも…… あ。治安いい所にしろよ」 オレが言う事じゃねえけど!なんて付け足した。 髪を撫でられている間は、やっぱり目を閉じて嬉しそうに。 せっかく兄弟が出来たってのに、すぐにお別れなんて嫌だったのだ。会いに行けるなら、顔を見に行けるなら、それならいいかな。 包むようなハグはちょっと力が強くて、 それでも苦しくはないくらい。温かい体温は変わらないまま。 「言うよ。相手がお前なら猶更」 「帰ったら猫とお前が居るのか……嬉しいな。 ホントに家族みたいだな。アハハ……」 想像をしたらどうしようもなく嬉しくなった。 貴方が旅立つ時に離れ難くなっていたらどうしようか。 『フレッド』としての新たな再出発を、 自分は笑顔で見送っていたいのだ。 「……うん。こちらこそよろしく、フレッド」 頼みまーす、と笑って返して、背に回した腕を離す。 こうして一緒に居る時間が限られているのなら、 それまではこうやって家族らしくしていよう。 本当の家族じゃないけれど、本当の家族みたいに。 ▷ (=17) 2023/10/01(Sun) 20:28:13 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「……マリトッツォ溶けるわ」 食おうぜ、と促して朝食と称した甘味を手に取る。 まずはゆっくりお互い休もう。 これから文字通りきっと、新しい一日が始まるんだから。 (=18) 2023/10/01(Sun) 20:30:29 |
【独】 L’ancora ロメオ窓から差す朝日を浴びながら、クリームを頬張って。 ひとのかたち は。これを幸せって言うんだろうな、と思った。 (-423) 2023/10/01(Sun) 20:31:10 |
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