情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新
【赤】 春分初候 雀始巣―― 幕間:『橙木』 [ わたしが生まれたのは、 春よりは少しばかり肌寒い土地で かつては幾度も灯守りを輩出したという、 いわゆる“由緒正しい家”というやつだった。 そう、かつては。 華やかなるは既に過去のもの、 長き時の流れを経て彼の地の灯守りの役目は家を離れ、 『橙木』の名も今は旧い家系のひとつにすぎない。 はっきり言って斜陽である。 なんなら似たような旧家同士、 存続のため政略結婚によって血を繋いだという話も多く、 この名すらかつて名を馳せたそれではないのかもしれず。 (つまるところ、あの方が只人であった当時は ]その名は『橙木』ではなかったのかもしれない) (*46) 2022/01/22(Sat) 2:06:41 |
【赤】 春分初候 雀始巣[ 当代の春分――緋桜さまとは、 元を辿っていくと同じこの家に繋がるのだという。 血族としてどれほど近しいかは知らないが 今、生きているわたしより きっといくつか前の世代の存在であるそのひとを なお注視し続ける程度には遠からぬものなのだろう。 灯守りは只人と違う時を生きる、なんて それは当たり前に常識だけれど。 初めて顔を合わせた頃から今も、 あの姿で、変わりなくそこに在り続ける御姿は 紛れもなく人智を超えた何かに相違なく、 故にこそ、頑張らなければと焦りを覚える まるで天を仰いでいるような心地にさせられる。 それを利用しようだなんてとんでもない。 血族でありながら人の範疇を外れた存在を、 それが手の届かぬところへ行ってしまわぬよう 近くで目を光らせていること。 ……なんて、名目でしかない気もするが それがわたしの役目。此処にいる、理由。 ] (*47) 2022/01/22(Sat) 2:06:43 |
【赤】 春分初候 雀始巣[ 灯守りの側仕えとして、 灯守りや蛍の面々と関わることが多いと 感覚が麻痺してしまうところがあるが。 能力を持つ人間、というのは 少なくとも世界の多数派ではなくて 故にこそ灯守りや蛍となる者が多いのかもしれない。 かくいうわたしの『凪持』も 生まれながらに持ち合わせた異能であり、 だからこそ、少し厳しく育てられた気はする。 それが普通だったから、よくわからないけれど。 ひどく限定的ながら、 時間という概念に触れる、人の身には余る力。 わたしという存在自体、 きっとあの家にとっては道具のようなもので 道具にするにしては、いささか勝手が悪すぎた。 ] (*48) 2022/01/22(Sat) 2:06:48 |
【赤】 春分初候 雀始巣[ 蛍の代替わりを好機とし 異能の子の社会勉強と謳いながら、 縁ある灯守りのもとへ送られ。 春があたたかいことも、世界は案外優しいことも、 春分域で暮らすようになって、初めて知った。 ただ生きているだけだった世界に色が付いた。 わたしなんかに寛大に、 やさしく接してくれるひとの手で。 **] (*49) 2022/01/22(Sat) 2:06:56 |
(a24) 2022/01/22(Sat) 2:12:17 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新