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【赤】 灯守り 芒種[ 自由に外出をすることもなかったから知らなかっただけで。 父の家は驚く程近くにあった。 運動不足のわたしの足で近くまで辿り着けても かろうじて不思議が無い程度には。 父の顔はよく見ていたので、知っていた。 度々気紛れに顔を見に来ては、 気紛れにわたしを可愛がっていたから。 人形、ぬいぐるみ、絵本、玩具 洋服に、アクセサリー いろいろなものを持ってきては なんとか機嫌を取ろうとしたけれど いつもどこか見当はずれで、けれど捨てられなくて 殆どが新品同様のまましまい込まれたままだった。 何もわかっていないころは度々贈り物をくれる相手を 父親だと理解しないまま『あにさま』と呼んで それなりに懐いていたこともあったらしい。 ] (*0) 2022/01/21(Fri) 5:04:21 |
【赤】 灯守り 芒種[ わたしが彼を父だと理解できる歳になっても わたしの境遇について父は一度も謝りはしなかった。 恨む権利はあるとだけ何度も言われた。悪いのは自分だと。 「それで楽になるのはあなただけでしょう?」 その頃にはわたしはもうすっかり弄れていて そんな可愛げのない言葉で無気力に笑いかけるだけだった。 声を上げて泣き叫ぶ気力はもう磨り減った後だったから。 一度でいい、せめて言い訳を聞かせて欲しかった。 嘘でもいいから手放したくなかったと言って欲しかった。 たとえその場限りの子供だましでも いつか一緒に暮らそうと言ってくれるのを待っていた。 それ以外のものなんて、何一つ欲しくはなかった。 ] (*1) 2022/01/21(Fri) 5:05:40 |
【赤】 灯守り 芒種[ 家を出て、拾われて世話になった家には、 暫く疎遠になっていた懐かしい気配がそこかしこにあった。 赤子の横には絶妙に可愛いと言い難いぬいぐるみ 違うとも言えないが女の子用か永遠に悩む玩具のチョイス なぜそれを選んだが思わず問い質したくなるような どうにも残念な柄の男物のおおきな服 そんなもので気付くことは勿論なかったけれど すっかり打ち解けた女性が笑顔で出迎えた相手が 父だったのを理解しても、驚くよりも納得した。 「芒種様ががそろそろ一度顔を見せろとおっしゃっている。」 久し振りに聞く声に気まずそうに「帰れそうか」と問われ 世話になっている間一度も崩さなかった 完璧なよそ行きの態度を忘れ思わず素で 「本当クソだな」とぼやいたせいで暫くの猶予が設けられた。 夫婦は陰で言い合ったようだ。 知ったことではない。 問われなかったので弁明しなかったが。 べつに父に言ったわけではない。 自分の帰る場所はあそこなんだと思い知って溢れただけだ。 咄嗟に『帰りたくない』とは思ったが 『もう帰らない』とは出てこなかったから。 ] (*2) 2022/01/21(Fri) 5:07:57 |
【赤】 灯守り 芒種[ 自分の覚悟が所詮反抗期の家出レベルだったと思い知って 諦めて元いた場所へ帰ると決めた。 計画性が無さ過ぎたので。 靴くらい履くべきだったし、 荷物は持てるだけ持つべきだった。 なにもかもきっと売れば高い。 そのくらいまで考えるべきだった。 生きていたくないだけで、どうせ死ぬ度胸もないのだし。 「ここで一緒に暮らしたい」 とは思えなかったので言わなかった。 父はわたしと暮らしたくはないのだから。 父の帰りを喜んだ母娘に気付いてしまって尚 あの家から父を追い出し続ける訳にはいかない。 ] またあそびにきてもいいですか? [ 迎えという名の見張りに引き渡されながらそう尋ねた。 食い気味で何か即答した父を完全に無視して 女性からの返事をじっと待った。 望んだ笑顔と返事を、望んだくせに恐怖を以て受け取って 怯えながらも出来る限りの丁寧な 礼の言葉を返すくらいは出来たと思う。 ] (*3) 2022/01/21(Fri) 5:13:46 |
【赤】 灯守り 芒種[ 家に帰ってまず待ち構えていた先代に呼ばれ 碌に向けたこともない目一杯の微笑みを浮かべてやった。 傍で控えていた側用人はその毒々しさに硬直したという。 ……そう、媚びるのは昔から絶望的に向いていなかった。] ねぇ、芒種さま。 どうせ赦すつもりで迎えをよこしたのでしょう? その寛大なお心遣いに感動で胸がはちきれそう。 これからは心を入れ替えて今まで以上に真面目にやるわ。 ……それでね。わたし、考えたの。 ご褒美があると、今のやる気を違えることなく ずっと、ながく、持続できるんじゃないか、って。 そんなに難しい話じゃないのよ。 (*4) 2022/01/21(Fri) 5:18:47 |
【赤】 灯守り 芒種ねぇ……『おじいちゃま』 ………玫瑰、お小遣いが欲しいな。 [ にじり寄って、膝の上を陣取って 腕を絡めて、体を寄せて、擦り寄って、… 目一杯甘ったるい声を出して潤んだ瞳で覗き込む。 子供らしい甘え方なんかちっとも知らなかったので たしかこんな感じだったかしらと 子供の頃から何度か見かけた彼の愛人の真似をした。 結果として要望はあっさり通った。 先代は卒倒して暫く寝込んだけれど。 どこで育て方を間違えたかと随分と魘されたようだ。 知ったことではない。 ] (*5) 2022/01/21(Fri) 5:19:12 |
【赤】 灯守り 芒種[ かくして金に物を言わせた静かな攻防が始まった。 何と何を争うかなんて決まっている。 あのあと一歩なにかがずれた絶妙なセンスの数々と、だ。 父の事は許す許さないのはなしではないが 父のあれだけはどうしても許せなかった。 父を選んだ彼女は彼女自身の選択なのだから何も言わない。 けれどまだ何も自分で選べないあの赤子に 独特の感覚を刷り込むのは どうしても、どうしても耐え難かったから。 なんて。 そんなのきっと、ただの口実のひとつだった。 温かく出迎えてくれることはわかっていても あと一歩勇気が出なかったから。 実際、その後何度も繰り返し もういちどあそびにいく、いい口実として使われた。 ] (*6) 2022/01/21(Fri) 5:20:23 |
【赤】 灯守り 芒種[ 小さな赤子が言葉を覚えるのはあっという間で 自分がどういう立ち位置になるべきかなりたいか 決めるより先に『姉』の役割が与えられた。 『目上の女性』も『ねぇね』なので 否定も訂正もしないままでいたら気付いたときには すっかり彼女に『自分の姉』として認識されていた。 きっと訂正する機会はいくらでもあったのに。 どうなりたいかどうなるべきか 答えがでないのを言い訳に先延ばしにした。 はじめて、わたしと家族でいてくれる相手ができたようで 家族でありたいと願ってくれる相手ができたようで どうしても、手放すことができなかった。 ] (*7) 2022/01/21(Fri) 5:21:51 |
【赤】 灯守り 芒種[ 子供らしい甘え方の正しい解は随分と遅れて知った。 小さな子供と接する機会がなかったから。 自分が子供らしい遊びを知らなかったことも、知った。 ] ええと、……まってね? どうするのが正しいのか考えるから。 ……、……とってもおいしそう!ね? 茉莉ちゃんはお料理が上手ね。 ママに似たのね…… ええと、その……いただき、ます……? たべる?のよね?きっと、 ……え、たべ…る……、……? [ はじめて知る遊びにいつも戸惑ってしまって 子供の遊びすら上手くできないわたしを それでも懲りずに何度も遊びに誘ってくれるのが また失敗するのが怖くて、けれど嬉しくて うれしくて。 最初はへたくそだった絵本の読み聞かせも 後継としての教育以上に熱心に取り組んだ。 自分が贈った絵本を選んでくれた時に機嫌が良くなるの事に 幼い彼女が気付いた上で絵本を選んでいると気付いたときは いろんな感情がごちゃまぜになって どれが正解か悩んで軽く知恵熱をだしたりもした。 ] (*8) 2022/01/21(Fri) 5:25:20 |
【赤】 灯守り 芒種[ いつの間にかあの子がわたしの世界の中心になっていて あの子にはなんでも与えてやりたくなっていた。 例えば、そう。 わたしには与えられなかった『自由』だとか。 ] (*9) 2022/01/21(Fri) 5:25:56 |
【赤】 灯守り 芒種[ 真面目にやったところでわたしの出来は頗る悪く 何をやらせても不器用で、伸び代は早々に尽きて。 それでも父の…祖母の血筋を諦めきれない先代は 『もうひとりの娘』に目をつけた。 まだ諦めきれないわたしに競い合わせようと目論んで わたしにも、わかるように。 是が非でも退場していただこう。 たとえ今のわたしに芒種が務まらなかったとしても 知ったことではない。 そう決めるのに時間はかからず、 そう動き出すことに迷いはなかった。 幸い、芒種を失落させたい味方はたくさんいた。 みんな自分に都合のいい誰かや自分を次の芒種にしたくて その為には、今の芒種は邪魔なひとが沢山いたから…… *] (*10) 2022/01/21(Fri) 5:27:08 |
【人】 灯守り 芒種[ >>1:105いつもわたしを信じきって体重を預けてくる。 この子のことすら微塵も信じられないわたしには 決して真似できないその振る舞いは心にずっしりと重たい。 裏切りたくない、期待されるまま、或いはそれ以上に 彼女の望む立派な姉でありたい。出来もしないくせに。 願望と現実の差なんてもう嫌と言うくらい 理解しきっているはずなのに、 何度でも新たに絶望する。 ] 長い移動だったからお着物が着崩れてしまっていないか 少し鏡を見ていただけよ。 ああ、けれど……ふふっ、今また崩れてしまったかも。 暫く見ない間に、あなたがすっかり大人になっていたら どうしようかと少しだけ期待と…… たくさん心配をしていたのだけれど。 相変わらず茉莉は甘えん坊さんのままね。 (14) 2022/01/21(Fri) 5:30:03 |
【人】 灯守り 芒種[ 無邪気な笑顔は子犬みたいな愛らしさがあって 悩んでいること全部が一瞬なにもかもどうでもよくなる。 守りたいこの笑顔。 可愛さの化身か。かわいいがすぎる。 今日も妹が尊い。もはや世界遺産。 妹しか勝たん。 限界オタクと化し死んだ語彙と情緒を立て直す作業だけは プロ級なので、天使かな?とか余韻で考えつつも 一瞬たりとも表情筋が崩れることはない。 供給過多な脳内麻薬でちょっと逝ってる頭のまま 推しに蕩かされてうっとりと溢す熱っぽい吐息を、 「安心したわ」なんて取って付けた言葉で 安堵の溜息に非常に雑に擬態させておいた。 ] (15) 2022/01/21(Fri) 5:30:31 |
【人】 灯守り 芒種[ 姉の挙動がいつでもだいたいおかしいことには 一切動じることがないくせに ふと、体調ばかりを慮ろうとする心配性の気配を察した。 『助けること』が出来るようになってからは 特に顕著な気がするその癖を矯正してやりたい。 そんな自分勝手な昏い願望を胸の内に押し込めて 確かめるように重ねられた手のひらに指を絡め 指の間の温い体温を此方から奪い取りに行く。 過ぎたものを与えようかと彼女が悩むより先に 必要で充分な分だけを譲り受けるために。 ] あら、冷たかったかしら。 そうね……ここはいつでも少し肌寒いかも。 普段が普段だから、どうしても、ね。 茉莉はいつでも暖かいわね。 幾つまでこのままでいてくれるのかしら。 (16) 2022/01/21(Fri) 5:32:36 |
【人】 灯守り 芒種[ 彼女には自由を。 彼女のしたいことの邪魔はしない。 今頃立春ではなく芒種になっていたかもしれない未来を 自分が望んで、毟り取った時に決めたことだ。 今更違えるわけには行かない。 自己犠牲なんて一番選んで欲しくない能力だった。 それでも刷り込まれ押し付けられた感性でなく 体験から見つけた望みを選び取った結果なのだから 否定はしたくない。物分りのいい顔をしたい。 理解者であるような、いい顔をしていたい。 彼女のためではなく自分自身のために。 けれどそれが正解なのか、わからなくて。 どうするのが正解なのか、 幾ら悩んでも未だ答えは出ないままだった。 ] (17) 2022/01/21(Fri) 5:33:59 |
【人】 灯守り 芒種あら、もうそんな時間? 呼びにきてくれて助かったわ。 あら……こんなことで良ければ、幾らでも。 もし、誰かになにか言われたら わたしの手が冷たかったから温めていたって言えばいいわ。 本当のことだもの。 [ 時間に死ぬほどルーズな姉を意識せずフォローする 神対応に圧倒的感謝しかない。 顔がいい上に性格もよくて軽率に推せる。 しかも甘え方が可愛くてしんどい。最高オブ最高。 姉の顔は崩さずに頭の中だけで静かに発狂する。 元より離す気のない手をぎゅっと握り締められて 変な呻き声が溢れそうになったがギリギリで喘ぐのは堪えた。 手を引かれるまま歩き出す。 昔は逆だったのに頼もしくな……ったとか言いたいが 何時だって引かれる側だ。 歩幅で勝てるうちに手ぐらい引いて歩けば良かった。 実に惜しいことをした。 そんな阿呆なことを考えているなんて なぜだか妹には特に不思議と伝わらない。 ] (18) 2022/01/21(Fri) 5:34:50 |
【人】 灯守り 芒種いいわね。 一緒にお風呂に入るなんて何時振りかしら。 [ 度々軽率に暴かれ、毎度それを雑に隠すものだから。 帯を解くと家で待っている猫の機嫌を損ねるのだけれど。 推しの裸及び成長の成果を合法的に拝み 推しの浸かったお湯を浴びる魅力の前には その程度の面倒、無力でしかなかった。 「断られるかも」なんて懸念を 妹が抱いているかもしれないと、姉は考えることがない。 彼女はいつだってわたしにならなんでも叶えて貰えると 信じきっているはずだと疑っていなかったし 当たり前にそういう思考になるくらいに いつだってなんでも望まれるまま 叶えられる限り叶えてきたつもりでいたから。 *] (19) 2022/01/21(Fri) 5:37:21 |
【独】 灯守り 芒種/* なんか、めちゃくちゃじかんあったのに…… なんもせんでながめちゃう。 誰がどこで何してるか何も把握できん。 なんもわからん…… 妹ちゃんがかわゆいことしかわからん。 いや、じゅうぶんだな?じゅうぶんだった。 (-34) 2022/01/22(Sat) 6:25:41 |
【独】 灯守り 芒種/* 年齢10以上下か圧倒的に上しかいないので 誰にも話しかけようという気が起きない。 うそです近くてもだいたい起きません。 平常運転です。 天乃くんに絡むかプロローグからなやんでいる。 (-35) 2022/01/22(Sat) 6:31:06 |
【独】 灯守り 芒種/* 姉は「こうしたい」を一切口にせず諦めるくせに 不満だけ一人前に抱く人なので その視点から見た真実と 実際に起こったことはきっとちがうんだぜ。 (-40) 2022/01/22(Sat) 10:34:14 |
【独】 灯守り 芒種/* パッパはご近所住まいでそもそも逃げてないし 生みの母どこいったか知らんが 男手ひとつで苦労させて育てるより 可能なら恵まれた環境をって 良かれと思って芒種に預けてるかもだし 才能がないなら無理をさせるより やり直しが効くうちに他の道を 選ばせててやるべきって考えは間違ってないし 姉が脱落して空いた席に 妹ちゃんをって考えた人はだいたい 芒種になれるのは名誉な事って思ってる。 (-41) 2022/01/22(Sat) 10:49:07 |
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