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【人】 灯守り 芒種[ 解くと結び直せない帯を気休め程度に緩め終えても 戻るのが億劫で鏡の前でぼんやり指先を水で濡らしていた。 意味のない水遊び。 常々鬱陶しがっている水の音に今は 気を落ち着かせる意味を求めているのだから可笑しな話だ。 そろそろ戻らなくては。 欠席すれば後々口煩く言われるのは目に見えている。 それだけならいつものことと割り切ってもいいけれど… きっとあの子に心配されてしまう。 >>0:507最初は幻聴でも聞いたかと思った。 けれど呼ぶ声は次第に近くなってきて >>0:508ほら、すぐうしろに。 なんて考え方をしたら怪談みたいだなぁ、と 思ってしまったのが少し可笑しくて、笑顔を作れた。 こんなに慕ってくれる子を嫌う理由はない。 追い掛けてくれなくなれば寂しく感じるくせに 贅沢な話だ、気が重い、だなんて。 ] (61) 2022/01/19(Wed) 15:48:37 |
【人】 灯守り 芒種[ >>0:509飛びついてきた大きく育ったからだを 慌てもせずに振り返り、抱き留める。 受け止めきれずに転ぶには場所がよろしくないので 保険に、洗面台に腰を凭れておいた。 あの頃よりは色素の落ち着いた髪が ふわりと鼻先をくすぐって 今はもう名残もないはずの赤子の甘い香りを 思い出し、無条件に頬が緩む。 きらいでは、ないのだ。 いとおしくおもう。 それだけならいいのに。 それだけでないからややこしい。 ] あら、あら。どうしたの?お転婆さん。 [ 若い女性の、赤子とは違う、甘い肌の匂い。 髪に鼻を埋めてひとつ深い呼吸をして 観念すれば抱き留めた腕でそっと抱きしめ返して 背中をあやすように摩ってやった ] (62) 2022/01/19(Wed) 15:49:32 |
【人】 灯守り 芒種息が弾んでいる。 走ってきたでしょう?いけないこね。 ……探しにきてくれたの? [ これっぽっちも責める気のない甘ったるい猫なで声で 甘やかすように指摘して 抱きしめた腕を緩め、顔を覗き込む。 頬を撫でて、視線を交えて、うっとりと目を細めた。 愛されるべきいとしい子。 大切にしたいだいじな子。 ひさしぶりね、とわたしが向けた笑顔は 彼女の母に教わった慈しみと同じには出来ずとも 似た何かをうまく込められているだろうか。 きらいなわけじゃない。 上手くあいしたいとおもう。 散々冷やした手のひらに汗がにじむ。 わたしは何をやっても不器用で うまく出来ると思えなくて、いつだって怖い。 いっそひと思いに嫌われてしまえば、楽になれるのに。 あなたに幻滅されることが。 嫌われることが、いつも、怖くて、怯えている。 **] (63) 2022/01/19(Wed) 15:50:38 |
(a35) 2022/01/20(Thu) 14:59:36 |
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