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【神】 跼蹐 カナイやはりいつも通り、所在なさげに、不安そうに。 そして何より申し訳無さそうにしていた。 脅威を退け、会議室に戻り、手当だのをしている間もずっと。 もっとやりようがあっただろう。 そう言われればその通りだったからだ。 理不尽な叱責は恐ろしい。けれど当たり前の事を、 当たり前に咎められないというのも、居心地が悪くて。 こと何かを傷付けるという一点に於いて、 この力はあまりにも使い勝手が良く、そして。想定外の相手をも 無差別に傷付けかねない使い勝手の悪さがあった。 それは自分自身も例外ではなく、けれど。 目に見えるあちらこちらに切疵こそあれ、既に血は止まっている。 (G4) 2022/06/06(Mon) 22:19:03 |
【神】 跼蹐 カナイそうして実に気まずそうにしながらも処置を済ませた後。 立て込んでいる間に送られた連絡を確認する事ができたのは 集合の時間を迎える少し前の事だった。 「…………」 幾つかの連絡を見て、また不安は色濃いものになる。 その全ての送り主の元へ行けたらどんなにか良いだろう。 けれど今、自分が真っ先に向かうべき先は。 「……すみません、僕……弓日向さんを迎えに行って来ます」 たった七文字の、けれど切実な願いの主の元へ。 「僕は一人で大丈夫です……一人じゃないと、だめなんです。 その、皆さんは安心できないかもしれませんけど… …でも、……深和さんのこと、お願いしますね」 ここに一人残して行ったとしても、 少なくとも、今にあなたが脅かされる事は無いだろう、と思う。 疲労の色濃いその表情に、一度そろりと視線を向けて。 そうして再び会議室を後にした。 どこか自分と同じ少女との、約束を果たす為に。 (G5) 2022/06/06(Mon) 22:20:24 |
【人】 跼蹐 カナイ──会議室の扉が、そっと後ろ手に閉められた。 消耗こそすれ神経が昂ぶったような感覚が持続し続けているのは いよいよおかしくなりつつあるのか最初からおかしかったのか。 一度深く息を吐いて、注意深く気配を探る。 自身に現れた力が特定の個人を探す事に長けたものではなくとも、 不安定に揺れる気配があれば、すぐに気付く事はできる。 それが多少遠くであっても、大まかな方向程度は。 『おねがいします』。 たったそれだけの文章でも、 何が起きたのかということを察するには十分だった。 だから闇雲に探す必要は無いのだと知っていた。 『ただ二つお願いがあるのです。 聞いてもらえるのです?』 『はい、構わないのです。 1つは、この能力が制御できなくなったら その時は僕を止めて欲しいのです。 叶様や他の人に害をなしたい訳ではないので』 (0) 2022/06/06(Mon) 22:47:34 |
カナイは、無事に、という言葉には、きっと何も言わないまま。 (a1) 2022/06/06(Mon) 22:48:59 |
カナイは、少し眉尻を下げるだけだった。 (a2) 2022/06/06(Mon) 22:49:10 |
【人】 跼蹐 カナイ>>+0 >>+1 弓日向 以前二人で歩いた道程を、今は一人で歩いている。 会議室を後にして、空気の良いとは言えない廊下を少し歩いて 一回、二回、角を曲がって、…… ────三回目の角を曲がった所に、あなたは居た。 その凄絶な姿を見て、 あなたの代わりに悲鳴を上げるように軋む音を聞いて。 ああ、と。 息を吐くようにやるせなさを吐き出した。 ──追想。 ……気味が悪くとも、こうして確かに利益を齎しているのなら。 けれど、益にならないなら?…… ……そしてあなたのそれは、あなたを何処まで、 どういったものにまで変化させ──変異させてしまうのか。…… (2) 2022/06/06(Mon) 23:28:44 |
【人】 跼蹐 カナイ>>+2 弓日向 人体には存在し得ないパーツが床へ近付いていく。 悲鳴じみた音を立てて、ゆっくりと。 その様相を見て胸の内に湧いたものは、恐怖ではなくて。 「…ああ……また僕は」 「死で何かを得た分、死で何かを失うんだ…」 ヒトとは異なる形状の骨。 四足歩行の──凡そイヌ科の特徴を呈するそれは。 唯一の慰めであり、拠り所だった、飼い犬を想起するものだった。 あの子も自身が恐怖から解放されたすぐ後に旅立ってしまった。 「……でも、これは」 「きっと、おれにしかできない事だから」 どうせもう引き返せない自分がやるべき事だ。 それに、あなたの状態は、自身の内にある力で対処する事が。 恐らくあまりにも──適切なものだったから。 そして何より、同じ理不尽を受けた被害者のあなただから。 こんな形でも、その願いの一つくらい、 叶 えたくて。やりたい事だ。だから引き返せない、引き返さない。 (4) 2022/06/07(Tue) 1:12:10 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ>>+2 弓日向 だから逃れる為ではなく、向き合う為に。 その四文字を確かに認識したその直後、 また一つ、二つ、まるであなたの心の軋む音のようなむごい音。 それを聞きながら、叶はやはり逃げなかった。 ──恐怖を呼び起こし、研ぎ澄ます。 殆どあなたの理性による制御を外れた意思が、 どのような行動を取ろうとも、それを回避しようともせず。 恐れるものは、あなたではなくて。 これまで、そしてこれからの自身の行いと、その発覚だ。 この力はある程度対象を目視できなければならないようだった。 だから回避などに感けている余裕など無くて、 何れにしてもあなたに正面から向き合うほかなかった。 (5) 2022/06/07(Tue) 1:13:54 |
カナイは、この力を使う時の感覚が恐ろしくて。 (a4) 2022/06/07(Tue) 1:17:01 |
カナイは、それと同時に、どうしようもなく安心する。 (a5) 2022/06/07(Tue) 1:17:16 |
カナイは、多分、前に力を使った時からあまり時間が経っていない。 (a6) 2022/06/07(Tue) 1:18:24 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ>>+3 >>+4 弓日向 そうして刹那に嵐は過ぎ去って。 再びの静寂と、それから徐々に血臭に満たされ始めた廊下。 ゆっくりと広がっていく血溜まりと、横たわる少女を見た。 能力の起源に紐付いた奇妙な安堵は長続きしない。 だから今この胸の内を満たすものは。 その思いを理解できたばかりの少女を失った事によって齎された 喪失感と、悲しみと、それから人を手に掛けた罪悪感だった。 「………弓日向さん」 ほんの少し軽く、けれど脱力しきって重く。 まだ温かい身体をすぐ近くの仮眠室へ運び込んだ。 野晒しは忍びなく、けれど会議室へ連れて行くには憚られた。 「あなたはあの時自分の事を薄汚い人間と言ったけど、 おれはそうは思いませんでした」 寝台へと寝かせて、瞼や唇が開いたままなら閉じさせて。 その横で殆ど唯一の遺品となるであろう端末に指を滑らせた。 連なる望みと、呪詛と、それから。 そして、あなたの最後の言葉を思い返して目を伏せた。 「おれの方がずっとどうしようもない」 そんな人殺しに感謝するだけでなく、生きろと言うなんて。 いったいこれから何処へ生きて行けと言うのだろう。 (8) 2022/06/07(Tue) 5:05:59 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ>>+3 >>+4 弓日向 だからそんな身勝手はすぐにしまい込んで。 きっとまた少し血に汚れた白衣の裾で目元を乱暴に拭った。 「神様なんて居ないかもしれないけど」 深く息をして、仮眠室を後にするべく立ち上がった。 「居ない方がいいのかもしれない」 だって、もし仮に、そんなものが居たら。 「おれはそれを殺さなきゃ気が済まないから」 たとえばこれが、誰かの描いた筋書きであるのだとしたら。 自分はその誰かを怨まずにはいられないだろう。 そしてきっと、それを殺さない限り。 自分に本当の意味での平穏が訪れる事は無いんだろう。 でなければ、真に恐ろしいものを取り除けはしないのだから。 (10) 2022/06/07(Tue) 5:07:37 |
カナイは、静かに電気を消して、仮眠室を後にした。 (a10) 2022/06/07(Tue) 5:08:01 |
カナイは、また声を聞く。きっと仮眠室を出て少し後の事。 (a11) 2022/06/07(Tue) 5:20:35 |
【秘】 跼蹐 カナイ → 篝屋に来た カジヤマおそらくは、仮眠室を出て廊下を歩いていたところ。 会議室に戻る前のどこかの事。 「………篝屋さん…?」 聞き覚えのある、けれど印象にあるよりもずっと。 切羽詰まった声が不意に聞こえたような気がして。 音量や距離感の不安定な声の告げる内容は不穏なもの。 「ど、どこですか……?」 あまり大声を出すのも憚られて、おずおずと。 その傍らに、そろり、視線が周囲を見回した。 この声が何処から聞こえているのかわからない。 (-14) 2022/06/07(Tue) 5:26:04 |
【秘】 跼蹐 カナイ → 篝屋に来た カジヤマ「あきちゃん……奈尾、さん?」 ──『奈尾発見 危険 接近×』。 連想ゲームの行き着く先はあなたと、もう一人の少女の連絡。 ぞわ、と言い知れない悪寒がした。 「……俺はー。もしかして超能力があるなら……テレパシー系? それか幽体離脱系かもしれないっす。 寝てる間、どっか行っちゃうらしくって! さっきも何人かに捕まえて貰ってそれで起きたらこの吐き気」 「……幽体離脱、でしたっけ… あれ、でも……奈尾さんの様子を見に行ったんじゃ」 あなたの連絡は、恐らくは奈尾の様子に関するものだった。 そしてそれを今こうして伝えているという事は、 その場から離脱して何処かで寝ているか、それとも──── 「 ──わかりました。 僕は大丈夫です………きっと、あとで探しに行きますから……」 自分が、とは言えなかったけれど。 普段から考えれば異様に落ち着いた声で諒解を示し、 それから、まったくもっていつも通りに。 あなたを気遣う言葉を掛けて、弾かれたようにその場を後にした。 (-23) 2022/06/07(Tue) 7:13:13 |
【赤】 跼蹐 カナイ『篝屋さんからもそう聞きました』 『今すぐ向かいます』 『あの人は銃を持っていて、水で溶かされる?そうです』 『おれが聞いたのはそれだけ』 返るのは簡潔な応答。今は時間が惜しい。 (*2) 2022/06/07(Tue) 7:21:00 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ仮眠室を出て、誰かの声を聞いた後。 弾かれたように廊下を駆け出して、 その傍らに気配を探る。読み取ろうとする。不安定な気配を。 今明確に排除すべき恐ろしいもの──奈尾の気配を。 進行方向がわかるのであれば、その背後に回り込むように。 殺さなければきっと殺される。 真に恐ろしいものから逃れるには、殺すしかない。 自分ならきっとできる。自分がやるしかない。 何れにしても脇目も振らず会議室への道を突っ切っていく。 元はドッグトレーナーを目指していたのだ。 犬と共に駆ける為の日々の名残は、まだ身体に残っている。 (11) 2022/06/07(Tue) 7:35:45 |
カナイは、猟犬じみて廊下を駆けて行く。狩るか狩られるかは、まだわからない。 (a15) 2022/06/07(Tue) 7:36:58 |
【独】 ハリの豺狼 カナイ/* 2回と3回どっちにしよっかな〜まあ3回でいいか なぜなら能力の起源と思想の問題で 能力そのものには殆ど忌避感や抵抗が無いからです…(嫌な感じはする) 能力引っ張り出すのも容易だから制御が結構上手くいってます。 (-25) 2022/06/07(Tue) 7:58:40 |
【置】 ハリの豺狼 カナイ────居た。 遠く、けれど他人事ではない程度に近く。 轟く銃声がそれを確信じみたものにする。 そして『声』がそれを裏付ける。 ああ、でも、これじゃ迂回なんかしてる余裕は──いや、 動きを止めている。 最短距離を選びかけた足は即座に迂回路を選ぶ。 それが足を止めたという事がどういう事かはわかっている。 脅威を取り除く為にそれを直視し向き合う臆病者は、 もう嫌になるほど間近に迫った現実を見ている。 (L4) 2022/06/07(Tue) 13:48:10 公開: 2022/06/07(Tue) 13:50:00 |
【置】 ハリの豺狼 カナイ叶 西路は狂人だ。 誰だって当たり前に嫌な事が当たり前に嫌で、 当たり前にそれから掻暮に逃れたくて、 けれど手段を選ばないには当たり前に道徳観と理性があってしまって、 普通じゃない自分の欲求の事も当たり前に普通じゃないと思っていて、 それでも誰も助けてはくれなかった。 それは単なる思い込みで、ただ自分が誰も頼らなかっただけ。 だから自分が恐ろしいものから逃げる為にはそうするしかなくて、 やりたくないのと同じかそれ以上にやらなければならないんだと思ってしまって そう思い込んで当たり前の躊躇いを振り切ってしまった。 叶 西路は狂人だ。 きっと誰しもそう思うような事を切っ掛けとして道を踏み外した、 誰もが他人事ではない、当たり前のいびつさを抱えた狂人だ。 だからやりたくない事はやりたくなくて嫌な事は嫌だし、 だから他人とは言えない間柄の人を脅かすものがあれば他人事ではないし、 だから理由はどうあれ自分を庇ってくれた人を見捨てるのは嫌だし、 だから恐ろしいものは 二度とその暗がりから這い出す事の無いように殺さねばならなくて、 だからその為ならどんなに嫌でも意思は一線を踏み越える。 (L5) 2022/06/07(Tue) 13:49:02 公開: 2022/06/07(Tue) 13:50:00 |
カナイは、逃げない。 (a25) 2022/06/07(Tue) 13:50:17 |
カナイは、逃さない。 (a26) 2022/06/07(Tue) 13:50:21 |
【赤】 ハリの豺狼 カナイ/* めっちゃ"いいやつ"のロールの途中ですごいアレなんですけど 喫煙所(概念)で話してて凶狼気付いちゃったにゃんけど 今日人間二人屠っても明日の朝に焔狼お嬢様がおくたばりあそばせられるので つまり3:3にならずこれまだ決着しませんわね??? つまり人が何人か……ガチ死なさりますのね?おそらくは? (*5) 2022/06/07(Tue) 16:36:28 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ──ひゅ、と風を切る微かな音がして。 ────パンッ!!!! 苦痛による、血を吐くような凄絶な絶叫が響いた後。 銃口より発せられる乾いたものとは異なる破裂音。 脇目も振らず廊下を駆け抜けた先でまず視界に入ったのは、 ナイフを振り被る長身痩躯のその背中。 ひどく焼け爛れ崩れた肉とそれが変質したらしき何か、 その間から時折顔を覗かせる白いもの。 惨憺たる有様となった奈尾の背中、その上部。 ともすれば頸にほど近い箇所で、 ともすれば剥き出しの骨に罅が入り、或いは砕けるような。 無防備な背に飛来した何かを避けられなければ、 奈尾はそんな凄まじい衝撃を感じる事になる。 痛みは無くとも。 音と衝撃の出どころは、 叶が咄嗟に奈尾の背に投げた、掌大のガラス片。 それが忽ち膨張するように体積を増し、炸裂したためだった。 (23) 2022/06/07(Tue) 18:07:17 |
カナイは、その鋭く透明な意思の形は、断ち切る為に。 (a30) 2022/06/07(Tue) 18:07:27 |
カナイは、きっとどうしようもない人間だけど。 (a31) 2022/06/07(Tue) 18:07:32 |
カナイは、誰も幸せにならないこの筋書きを断つ事はできる。 (a32) 2022/06/07(Tue) 18:07:39 |
カナイは、向き合って、終わらせる。自分ではなく、あなたの罪を。 (a33) 2022/06/07(Tue) 18:07:45 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ直撃すれば、ともすれば脊髄を傷付けたかもしれない。 たとえ仮にあなたが痛みによって怯む事は無くとも、 幾らかその部位を損傷してしまえば、恐らくは。 脳が身体に信号を──意思を伝える事が妨げられる。 それは意図した結果ではなく、 完全に奈尾の自由を奪うには狙いは甘かったかもしれないが。 ただひたすらに、咄嗟に投げ、咄嗟に恐怖を掻き集めた。 そんな無茶な行使と短時間での連続使用、 そして不安定な精神では、反動はこれまでよりも強く。 それぞれの意思が交錯する、そんな一瞬の後。 殆ど蹌踉めくように踏み出し、けれど注意深く様子を窺った。 反動によってぐわんと殴打されたように意識が揺れて、 視界がちかちかと明滅しても、動きがあれば見逃さない。 あと二回。 (24) 2022/06/07(Tue) 18:08:24 |
【人】 ハリの豺狼 カナイ「────あ、」 だめだ。 揺れる意識の中、眩む視界の中。 蠢くそれを見て、思考はただそれだけが鮮明だった。 牽制程度にしかならないかもしれないとは思っていたけれど、 その変容は、その執念は、想定をゆうに超えていた。 これは、自分でなければできない事だ。 あなたが真に恐ろしいものに成り果ててしまう前に。 あなたがこれ以上の罪を重ねる前に。 自分がこれ以上失わない為に。 信じた人を、助けてくれた人を、傍に居るものを。 僅かでも平穏な時を過ごした、安心できる場所を守る為に。 ──ここで終わりにしなければ。 (28) 2022/06/07(Tue) 22:40:38 |
【人】 西へ行く カナイそれからはあっという間だった。 「この──ッ、 その人から離れろ!!!」 殆ど思考を挟む間も無く、猛犬が喰らい付くように。 深和に覆い被さる異形を尋常ではない力で引き剥がし、 そのままの勢いで殆ど床に叩き付けるように引き倒した。 もはや肉薄する事も反撃を受ける事も厭わず、 ただその動きを止める為に押し倒すように抑え込む。 ──果たして。 この場所は以前に刃の雨がぶち撒けられた地点の近くだろうか。 そうであるならその破片が。 そうでないなら、また一つ、すぐ近くの窓が爆ぜ散って。 あと一回。 床に散乱した破片が、ぴしり、めきめきと耳障りな音を立てた。 その直後、その全てが瞬時に成長し──── 「────う"、あ っ" 」 無機質に冷たく、鋭く、透明な無数の杭となって、 異形と化しつつある奈尾を自分諸共にずたずたに刺し貫いた。 それから一拍遅れて熱く鉄臭い塊が喉の奥から込み上げ、 鉄臭さが口の中いっぱいに広がって溢れ出す。 想像を絶する痛みが身体の中を、神経を、脳髄を灼いた。 お仕舞い。 (29) 2022/06/07(Tue) 22:43:28 |
【人】 西へ行く カナイたとえるなら、そう、針の筵。 ──無間地獄の刀山剣樹。 ねえ、奈尾さん。 自分勝手に、身勝手に、自らの欲求で。 どんな理由があったとしても、確かに人に害を為した。 どこまでも罪深いおれ達に似合いの地獄だと思いませんか。 あなたが悪人かどうかだとか、 どうしてそのような事をするのだとか。 そんな事は論じるにはもう今更な事だ。 どのような理由があれ、あなたは罪を犯した。 どのような理由があれ、自分は罪を犯した。 その罪深さを突きつけられる時が今だった。 おそらくこれはたったそれだけの事だから。 (30) 2022/06/07(Tue) 22:43:53 |
カナイは、それでもまだ生きていて、奈尾を抑え付けようとする。 (a38) 2022/06/07(Tue) 22:45:01 |
カナイは、当たり前に、死にたくなんかなかったけれど。 (a39) 2022/06/07(Tue) 22:45:09 |
カナイは、逃げ場は無くとも、足を止めたくはなかったけれど。 (a40) 2022/06/07(Tue) 22:45:15 |
カナイは、生きてと、そう望んだ少女を裏切ってしまうのは、嫌で仕方なかったけれど。 (a41) 2022/06/07(Tue) 22:45:22 |
カナイは、死ぬ覚悟は、もうできた。 (a42) 2022/06/07(Tue) 22:45:28 |
カナイは、それでも、伝えなければならない事があるから。 (a43) 2022/06/07(Tue) 22:45:34 |
カナイは、この地獄の中で、もう少しだけ生きている。 (a44) 2022/06/07(Tue) 22:45:40 |
【人】 西へ行く カナイ斯くして人と異形の間と化した者はその動きを止めた。 臆病者はそれを見て取って暫くの後、 漸く殆ど硬直したように掴み掛かったままの手を脱力させ、 ────ぱきり、 罅の入るような微かな音がして、 その後に透明な凶器が一斉に砕け、 両者は束の間この現に創られた地獄から解放された。 「い"、ぁ う"ぇ ぇっ、」 砕けた拍子に破片が再び肉や臓腑や神経を傷付けて、 倒れ込んだ事によってそれがまた深くへ潜り込んで、 言葉にならない悲鳴を上げ、血反吐を吐いて嘔吐いた。 これも、あの人にした事が自分に返って来ただけの事。 怖い。 怖い。 怖い。 死ぬのは怖い。 逃げたい。 けれど死からなんて、逃れられるわけがない。 (34) 2022/06/08(Wed) 0:20:03 |
【人】 西へ行く カナイ「──、……深和さん…」 焦点が定まらなくて、前がよく見えない。 血がどんどん流れ出ていって、寒気がする。 全身から力が抜けていって、指先一本動かすのも億劫だ。 ああ、怖くて仕方がない。 「ぶじ、ですか そこにいますか……?」 それでも余計な思考を追い出して、 理性を掻き集めて、唯一正常な思考に意識を集中する。 まだ、伝えなければならない事がある。 (35) 2022/06/08(Wed) 0:20:50 |
【人】 西へ行く カナイ「…仮眠室、に、……弓日向さんが、います」 迎えに行くと行って会議室を後にしたけれど、 その後にこうして駆け付けた叶は少女を伴っていなかった。 そのわけを、自らの罪を、話しておかなければならなかった。 あなた達に無用な不安を与えてしまわないように。 「奈尾さんと、…おなじ、ようになってて」 「どうすることも でき、なくて おれが、やりました」 「……あの子が使ってた端末、 あの部屋に おきっぱなしに、しちゃって」 抱えていた願望、そして呪詛。 叶わなかった望み。 それを与り知らない所で他者に知られるのは嫌だろうから、 大半のテキストファイルにはロックを掛けたけれど。 それでも、唯一の遺品と呼べるものだから。 生きて行く人に託したかった。 (36) 2022/06/08(Wed) 0:22:00 |
【人】 西へ行く カナイ「…あはは……」 「頼まれたこと 全然、できなかっ た」 無事で、と言われたのにこのざまだ。 頼んだと言われたのに、迎えに行った少女の事も救えなかった。 生きてという最後の望みさえ叶えられなかった。 当たり前に頼まれた事を、 当たり前にやってのける事すらできなかった。 ああやっぱり、自分はどうしようもなく不甲斐ない人間だ。 「おこられ、るか なあ……」 それなら、怒られても、仕方ないかな。 (37) 2022/06/08(Wed) 0:23:14 |
カナイは、罪の重さは自身が計るものではなくて。 (a52) 2022/06/08(Wed) 0:28:47 |
カナイは、与えられる罰も自身が決めるものではないと思っている。 (a53) 2022/06/08(Wed) 0:28:58 |
カナイは、それは、罪悪感の有無に関わらず。 (a54) 2022/06/08(Wed) 0:29:19 |
カナイは、だからこれは、なるべくしてそうなっただけの事。 (a55) 2022/06/08(Wed) 0:30:29 |
【人】 西へ行く カナイ「あは、は」 あったかい手だなあ、なんて思って。 自分の手が冷たいだけだと気付いて、おかしくて。 その後に続いた言葉が、なんだかもっとおかしかった。 「おれが、あなたにとって……恐ろしいものじゃ、ないって 保証もないん、だから。喜んだっ て、いいのに…」 零れ落ちる涙が少しだけ手を濡らしたような、ないような。 自分が二人の秘密を暴露する可能性だってあっただろう。 自分があなたに危害を加える可能性だってあっただろう。 不確定要素が減るのは、喜ぶべき事だ。 「でも、」 「よかった」 あなたが無事でよかった。 でなければ今こうして正気は保っていられなかっただろう。 許さないでいてくれてよかった。 平気な顔をしていたら、恐ろしいと思っていたかもしれない。 (44) 2022/06/08(Wed) 3:27:52 |
【人】 西へ行く カナイそう言う深和さんだって、 さっきも今も急に呼び付けてばっかりだったくせに。 そんな子どもじみた反論は、 あなたとは逆に、心の内だけのものとなった。 いよいよ力が入らなくなってきて、 息を吸って、声を出す為に腹部に力を入れる事も難しい。 安堵するにつれ、意識が遠退いていく。 それはきっと、この臆病者を最も強く突き動かす意思が 不安や恐怖から成るものだからなのだろう。 曰く、死の間際、最後に残る感覚は聴覚なのだと言う。 そうは言っても限度はあるもので、 そもそも音として聞こえていたとしても 夥しい量の血を失った脳が意味を理解できたかは定かじゃない。 (45) 2022/06/08(Wed) 3:28:20 |
【人】 西へ行く カナイ────けれど。 頭の中に直接響くような声に、 心の内にそっと、深く染み込むような安堵に。 能力の行使に必要な触媒は、恐怖の対象。 恐れるものが無ければ、この力は無いのと同じ。 「 」 きっと、ここに来て初めて、やっと。穏やかに笑って。 (46) 2022/06/08(Wed) 3:29:16 |
カナイは、そっと瞼を下ろした。 (a60) 2022/06/08(Wed) 3:29:24 |
カナイは、待っている。 (a61) 2022/06/08(Wed) 3:29:30 |
カナイは、いつか日が昇る事も、いつか日が沈む事も。 (a62) 2022/06/08(Wed) 3:29:36 |
カナイは、静かに眠ったまま、そのどちらをも、待っている。 (a63) 2022/06/08(Wed) 3:29:41 |
西へ行く カナイは、メモを貼った。 (a64) 2022/06/08(Wed) 3:30:04 |
【赤】 西へ行く カナイ/* というわけでわたくし本日吊られ吊られ凶狼ちゃん システム的には襲撃空振っちゃうんだワン!! ってなわけで智狼ちゃんちょっと襲撃先ナオアキさんに設定しておいてくださる!?(余韻ぶち壊し) (*8) 2022/06/08(Wed) 3:34:00 |
【独】 西へ行く カナイ/* ここで一度戦績を振り返ってみよう! (敬称略) 一日目:モブ武装職員(首をザックリ) 二日目:結木(不意打ちから腹部グチャグチャ) 三日目:なし 四日目:神陰間(能力で胸部の結晶をドン) 奈尾(死なば諸共串刺しの刑) 合計4キルですね。 しっかり人を殺すと忙しいという事がわかりました(多忙) 自刃をキル数に含めていいなら5キルで記録更新なんですけど… (-49) 2022/06/08(Wed) 3:44:59 |
西へ行く カナイは、メモを貼った。 (a67) 2022/06/08(Wed) 5:45:47 |
【置】 臆病者 カナイ叶 西路という人間にとって。 ハリは恐ろしいものを元から断ち、その過ちを突き付けるものだった。 臆病者が、心底恐れるものに立ち向かう為の爪牙だった。 立ち向かって、向き合って、乗り越える為の意思だった。 その振るわれ方がすべてまったく正しいものであったとは言えないだろう。 それは度々その切っ先が自らをも傷付けた事が物語っている。 罪悪感や後ろめたさは初めから抱いていた。見ないふりをしていただけで。 どのような理由があろうとも、罪は罪であり、消えて無くなりはしない。 明確な意思でもって他者に害を為したなら、人を殺したなら。 それは地獄に落ちるに十分な罪科足り得るのだ。 それでも、それ以外の事実だって残り続けて、消えはしない。 結木さん。 弓日向さん。 深和さん。 それだけじゃない、きっと、誰だって。 どれだけ怖くても、やりたくなくても。 あそこで終わらせなければ、 もっと恐ろしい事が起きるのであれば。 きっと、同じようなことをしましたよね。 (L8) 2022/06/08(Wed) 16:10:23 公開: 2022/06/08(Wed) 16:15:00 |
【置】 西方より日をのぞむ カナイ斯くして臆病者の爪牙は、 最後にはこの悲劇の筋書きへ向けて振るわれた。 いったい何処から悲劇は始まっていたのだろう。 どうしたらよかったのだろう。 自分達は何処へと進んで行けばよかったのだろう。 ただ必死に逃げ続けた先に何があったというのだろう。 そんな事は、もうどれだけ考えたって手遅れだろうから。 きっと全てはなるべくしてそうなった事だから。 だから今は、残る結果だけが全てなんだろう。 ねえ、まだそこにいますか。 どうしようもない人間でも、誰かを救えましたか。 それでも当たり前に怒られるような事をしたおれの事を、 当たり前に怒ってくれますか。 あの子の引いた弓は、おれの突き立てた爪牙は、みんなの祈りは。 もしも居るのだとしたら、少しでも神様に届くでしょうか。 そうだとしたら、きっと。 (L9) 2022/06/08(Wed) 16:12:32 公開: 2022/06/08(Wed) 16:15:00 |
カナイは、それで満足だ。 (a68) 2022/06/08(Wed) 16:12:39 |
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