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【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バットノックをすれば、扉の向こうで小さな物音がする。 足音はだんだん近づいて、数日前と同じように扉が少し開いた。 人一人分の隙間から、ひょこ、と見慣れた顔を覗かせる。 「?」 用件はなんだろう、と首を傾げてから あなたの顔と、手に持ったものを交互に見た。 それから黒板にいくつか文字を書いて、裏返す。 『こんにちは』 『お部屋に入りますか?』 『それとも外へ?』 (-9) 2022/05/10(Tue) 8:13:07 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット「!」 心地よい早さののんびりとした声に耳を傾けていたら、手袋の話があがる。 この間の夜に、今度聞かせてほしいとねだった話だ。 折角の誘いを断る理由も見当たらない。 共に過ごす時間は良いものだから。 するりとドアの隙間から身体を出して、ぱたんと閉じる。 青年の袖を掴んで、歩いていく準備は万端だ。 あなたが歩いていく先に自然とついていくのだろう。 (-11) 2022/05/10(Tue) 20:32:06 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット忙しないようでいて、ゆったりと整えられるお茶会の席。 手伝っててきぱき終えてしまうより、この風景を見続けていたくて大人しく待っていた。 大方の準備ができれば『ありがとうございます』と添える。 お茶の香りがふわりと漂うのを感じながら、嗜好について考える。 『嫌いなものは特にありません』 『甘いものは好きです』 はちみつを入れたホットミルクとか。 共有スペースにあるお菓子もよく食べる。 食堂で朝の食事を選ぶ姿を見かけていれば、特段好き嫌いなく過ごしている様子を知っているかもしれない。 『バットくんは好き嫌いがありますか?』 少しの食事だけを取る姿が、なんとなく印象に残っている。 (-14) 2022/05/11(Wed) 9:34:25 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット静かにその手元を見て、赤色が注がれるのを待つ。 歯切れ悪そうな速度で語られる言葉をひとつひとつ拾って飲み込んだ。 その中の気味悪がられる、という表現が引っ掛かる。 『バットくんが話してくれるのなら』 『聞きたいです』 それがこの場所にいる理由の一つなのかもしれないと思う故に、続きを聞きたいと願った。 (-16) 2022/05/11(Wed) 21:43:25 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット自分にとっては普通に食べられるパン。 手袋は脱いで、一つ取ってまじまじと眺めるように持つ。 美味しそうな小麦の匂いがした。 折角差し入れてもらったものだから、一口程度にちぎって口に運ぶ。 訥々と語られていく青年の事情を聞いて、あの夜に見聞きしたことがひと続きに結びつくような感覚に包まれる。 兎のこと。血のついたリボンのこと。 手袋の下に感じる、微かな疼痛。 『だから』 『森に行っていたのですか?』 肉なら大丈夫。 その言葉と、牙を突き立てたあの行動が朧げに重なった。 (-18) 2022/05/12(Thu) 1:31:43 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット指の先で、塞がった傷の跡をつい、となぞる。 かさぶたがその形に合わせて凹凸を伝えた。 あの時、自分はどんな感情になっただろう。 『上手く言えませんが』 『怖くはないかもしれません』 『驚きはしました』 本来は恐怖を覚えるのが正しい防衛反応なのかもしれない。 突然のことに瞠目したのは覚えている。 実際に話を聞いた今も、恐ろしいというよりは。 これはもしかすると同情だとか、苦労を慮るような、そんな気持ちのように感じられた。 『身体が受けつけないものは』 『そういうもの、なのだと思います』 『治したいと考えるかは、また別のことなのでしょう』 克服できればそれに越したことはないのだろうけれど。 全てを否定をされることもないような。 どちらにせよ今の青年を形作る一部なのだと認識した、 (-20) 2022/05/12(Thu) 11:53:34 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット『わからないものは怖いですからね』 『わかるようになれば、怖くなくなるのかも』 浮いては沈む瞳を真っ直ぐに見ていた。 未知への恐怖。 理解できないものへの恐怖。 それがそのままであるかもしれないことへの恐れ。 そういったものも存在しているのだろうか。 吐き出される不安の全てを理解してあげられなくても、理解したいとここに居る自分は確かなものだ。 『可哀想と感じる気持ちがあるなら、 バットくんには心があるのだと思いますよ』 どうしようもなく獣に変じ切っていれば、獲物への憐憫は感じ得ないだろうから。 いつになるかわからないけれど、答えが欲しいのなら、そのいつかを目指して歩まなければならない。 それもまた事実なのだろう。 『私は』 『バットくんと一緒にその答えを考えたいです』 いつか、先生になりたい。 誰かのわからないを助けられる人になりたい。 受け入れられるのなら、そうありたかった。 (-22) 2022/05/12(Thu) 22:58:02 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット『もちろんです』 自分にできる範囲なら、喜んで受け入れよう。 皆どこかが普通ではないこの場所で何かを見つけられたなら良い。 不安を湛えた瞳を見つめ返して、肯定する。 『一緒に迷えば、きっと気持ちも楽になります』 手袋の下から現れた獣毛と爪。 鋭い牙と合わせて、獣を想起させるものであることは間違いなかった。 けれど今の青年の一部であることもまた間違いのない事実で。 それを握ろうと、夜を映した宝石の手が伸ばされる。 無機質なようでいて、血の通った小さな手。 この両手に掴める分くらいは、青年が抱えた何かを預かれると信じていたい。 いつか普通を手に入れるのか。 いつか普通じゃないことを肯定できるようになるのか。 それすらも曖昧だけれど、答えと呼べるものに辿り着くために歩もうと思えた。 (-24) 2022/05/13(Fri) 11:23:47 |
【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット少し前までは微かに引っ掛ける程度であったそれが、今はより確かなものになったことは少女にもきっと伝わっていただろう。 問いかけの答えも、決まってる。 脆いこの身を傷つけないようにとしてくれる青年も、同じように優しさを持っている。 ──ずっと一緒です。 音にならない、吐息と唇の動きがそう紡いだ。 青い光を注ぐ月の下。 花の香りが仄かに漂うテーブルの上。 大きな手と小さな手で、これからを願う約束が交わされた。 (-26) 2022/05/13(Fri) 20:36:34 |
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