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【人】 愛玩用 エマ【第四階層――】 第一階層、それより続く二つとは様子の違う塔の中を歩く。 足取りは平時のそれ、重なる音は重々しく。表情は諦念じみて。 目指しているのは最深部だった。けれどもそれよりも先に邂逅は成った。 ああ、と声をあげることもなく、一つの背中越しの風景を見る。 その先には探していた者の姿があった。まだ遠く遠く、頭から肩のシルエットがあるのみ。 人間の肩上の形は森の中でも目立つという。 そして男の姿を見えにくくするかのように、かれよりも先行する姿があった。 (0) 2021/10/11(Mon) 14:44:27 |
【人】 愛玩用 エマ>>1 >>2 >>3 第四階層 「ああ、ユー。貴方が残っていたのですね。 ――……いいえ、貴方が。暗躍していたそのひとなのですね」 あの日塔に消えた者達のうち、誰が裏で動いている者達だったのか。 ぼんやりと目処は付けていたものの、接触する機会がなく、それを行えなかった。 だからいまこうして、"上"からやってきた貴方を見て。 いつも通り、朗らかな笑顔を浮かべて挨拶した。 「私、貴方に話があったのです。正確には暗躍していた者に、かな。 でももしかしたら貴方からも私に聞きたいことがあるのかな、と。 あ、突然に過ぎましたね。説明をしないと、いけないと思うので……」 (4) 2021/10/11(Mon) 15:33:12 |
【人】 愛玩用 エマ>>6 >>7 第四階層 そも、補正の有無があるとはいえ貴方より戦闘に長けている男が、 ここに至るまでに大きな手傷を負っているわけはなかった。 流した血か返り血かもわからないそれのうち、どこまでが己の血だったろう? けれども勉学用が勝手に"弱くて守られなければならない愛玩用"を望んだらしかったから、 手負いの勉学用の夢想に短い間付き合ってみた、それだけのことだ。 随分、英雄願望が強かったらしかったから。 「おや、思っていたのとは違ったな、そうですか……。 案外皆さん、他人のことばかり考えて、自分を蔑ろにするのが好きみたいですしね。 一体どんな理由と目的を持って、同じことをしていたのか……聞いてみたかったんです。 もし、もっと早い内に貴方がたと合流していれば、私も楽できたじゃないですか?」 もう二発、三発。ぐらつく陰に発砲する。 かれが口を開くと自分のことをたくさん言い始めるのを知っているから。 それを咎めるように、追い打ちをしておいた。 「私は実のところ、貴方が具体的に何をしていたのか知らなくてね……。 メンテナンスとは別で何かが起こっていることに、気づくのにも随分遅れました。 だからね、それについて。暗躍者の口から聞いてみたくて、ここに来ました。 ほら、明日にはゲームも強制終了だ。少し余暇を楽しんでも、いいでしょう?」 (8) 2021/10/11(Mon) 16:23:28 |
【人】 愛玩用 エマ>>9 >>10 第四階層 少なくともこれで反撃はないだろうと見ると、拳銃に持ち替える。 腰には拳銃、もう片側には大型のホルスター。 胸に回ってるのはアサルトライフルのベルトだろうか。武装は完璧だ。 それを使いこなすことになんの衒いもない。動きは理想的だった。 「そうですね、私は特定の人物のためにあるように造られています。 それ以外は利害によって切り捨てる、そうでなければ己が害される。 己が害されては、自分の主人を守れない……それでは務まりませんからね」 思えば、多の為に働く貴方とは造りが違うのだ。頭も、心も。 それはある意味ではとても"グレイらしい"のかもしれない。 自らが自らのようにあることを、許可されている。役割は機能ではないがために。 「ふうん、そう、ですか……。じゃあ、それを彼らは受け入れたのですか。 自らの意志を以てして死を受け入れていたというのなら、それを行っていた貴方は。 ……ああ、きっと。私のことをあまり好きではなかったかもですね。 目的さえ合っていれば、私のほうはそれでいいとさえ思っているけれど」 いつ何がおきてもいいように、拳銃はしっかりとスオに向けられていた。 間にいる者が穏当な話し合いをするための条件、だったから。 その意味が薄れるにつれて、銃口は前方に向けられるのみとなった。 「私はね、なるべく長くここに居たかったのです。 そうすれば、死を免れる。いつかは襲いくる運命を少しでも引き伸ばせる。 それに、私は人間が好きだ。ばかばかしいほど、呆れてしまう愚かな彼らが。 私はね。見たくない光景があった。それを先延ばしにしようとした。 この塔に来た者達のストレス値が下がるのを妨害し、テストプレイを延長させることによって」 (11) 2021/10/11(Mon) 17:28:29 |
【人】 愛玩用 エマ>>12 >>13 第四階層 「人が死ぬところを見たことがありますか? いえ、愚問でしたね。 あって当然、あるはずだ。ならば貴方は、その醜さを知っていると思う。 いえ、綺麗にするから、とか、綺麗に死んだから、とかではないんですよ。 貴方もグレイならば、自分が廃棄される姿を想ったことがあるでしょう。 もの言わぬ鈍らに成り果てた意識のない抜け殻は、果たして自分のものなのでしょうか。 いいやそうあるはずだ。魂が無くとも、この体は自分のものだ。 それが――手の届かないものになるのは、恐ろしくて、醜い。見られたくない。 そしてそれを、大事なものが見ている光景もまた。私は、見たくないのです。 ええ、それが貴方に肯定されるのならば。それ以上の幸いはないかもしれないですね」 自身の在り方。自身にとって必要だった事。一人の男の狂乱じみた奔走の理由。 どうしてこんなことをするのか。例えば問われたのならば。 それこそが答えになるだろう。誰に理解されなくとも、今は無駄な足掻きであっても。 このゲームを長引かせるため、それを理由としたたった一つの原動力だ。 未だ、銃口は下げられない。望みが絶たれたのなら行うことはただ一つ。 最早運命を受け入れて、主の元へ帰る、それだけだ。 「言っているではないですか、何度も、何度でも。 私にも貴方にも最早猶予足るものはなく、終わりの時を待つのみ。 望むことはただ一つ。貴方と話すこと。 強いて付け足すならば、それを聞いた上で他にそれを教えず、帰してほしい。 私の不利になるようなことは証言せず。どうか、ゆっくり過ごさせてはくれませんか?」 (15) 2021/10/11(Mon) 18:51:38 |
【人】 愛玩用 エマ>>16 >>17 >>18 第四階層 「他者の言葉で語るのであれば、きっとそのようになるのでしょうね。 いえ、特段否定の意があるのではなく。同じことを噛み砕くとこうも言い回しが変わるかと。 きっとそういうものなのだろうと思います。言い表すことは出来ない。 誰も、他のことを正確に計れはしない。出来ると言うなら、傲慢だ。 だからこそ安易に肯定や否定を返さず一度翻訳するというのは、好感が持てる」 貴方がこの語らいで理解し切るものなどないと思う通り、やはり、ないのだろう。 それは互いにそうだ。そして、それを互いにわかりきっている。 頷いて、銃口はゆっくりと降ろされた。周辺はエネミーが残るから、仕舞いはしないが。 此の場に対立の意志をもつものはいないのだと、了承は取れたのだから。 軽く息を吐く。短い髪が揺れた。肩を竦め、平時通りの声が言う。 「それならば良かった。私もまた、ただ己の思う平穏を過ごしたいだけです。 それが限りを持つというのならば、尚更。大事にしたいものがあるでしょう。 ……今のうちに聞きたいこと、か。 私は勿論、ええ。貴方をなんてことをするのだなんて糾弾したりはしませんけど。 今の内と言われるともう少しだけ引き止めたくなる。 そうだな。如何にしてそれを最善とするように至ったのか。 ……いや、違うかな。最初から手にしていた職務への意志はそれとして。 この塔でもそう動くに至った理由は、なんですか?」 問いは柔らかかった。もはや緊張はこの場にはいらなかった。 状況とは矛盾しているのに。人の背を撃ち、倒れ伏したままにして。 暴威を巻き起こした証左を前にして尚、平気で世間話を続ける、 その表情は終わりを見据えて、柔らかいものだった。 (19) 2021/10/11(Mon) 20:49:43 |
【人】 愛玩用 エマ>>20 >>21 >>22 >>23 第四階層 「紛い物の死、か。それが何らかの救いになると考えている貴方であれば、 確かにそれを帰ってからも連想させるものとして刻みつけるのは、 おかしくはないし、そして善意より行われるのかもしれないですね。 はっきりと言うならば、私にはわからない話です。私は、死にたくない。 けれどもそれを内心として望むものがあったなら、確かに伸べるのは、そう。 もしかすると彼らにとっては、優しさであったのでしょうね」 未だ帰ってこない、或いはこのやり取りの裏で帰る者達の、行動の理由は。 きっと彼の語る内容に迎合し、彼の望むとおりにあったのだろう。 そしてその救いで取りこぼしたものに伸べるために、考えているのか。 「ここで行われたことはきっと無碍にはできないとは思いますよ。 データの中だからこそとはいえ、貴方はテロリズムを0と1に刻みつけた。 これを見ている彼らもそこまで愚かなわけではないでしょう。 データの中で行われたことは、一挙手一投足に至るまで精査されているはずだ。 少なくとも今まで行われていた何かに対する回答にはなったかと思いますよ。 思えばこうも裏で動いていたことに、私は指先ほどにも漸近することはなかった。 "そんなことがあったなんて"なんてのは白々しいものですけれど。 この塔が瓦解する前に聞くことができて、よかったのではないでしょうかね」 (24) 2021/10/11(Mon) 23:42:24 |
【人】 愛玩用 エマ>>25 >>26 第四階層 ここにあるものたちはよほどに人間を、主を恨んでいるのだろう。 『エマニュエル』とは違う。それでも彼らを愛さずにはいられない愛玩用とは。 そうした苦痛が命を棄却するに至る原動力なら、やはり彼らとは相容れないのだ。 「どうなのでしょうね。 貴方のやったことは、私を加えることにより大義とは見られないかも。 或いは、より大々的なインパクトを、後より解析するものに与えられるか。 これらは結局道具の夢想でしかないのかもしれない。 私達もまた、人間を愚かと計ることでしか溜飲を下げられない無機なのですから」 自分たちのことを何もわかっていない、などと語るのはとても簡単で。 社会の選んだ取捨選択が、果たしてただの無知無理解だけのためなのか。 結局自分たちは自分の立場でしか物を語れない道具なのだから、それの如何は問えない。 それでもきっと、いずれは何かしらの帰結に至るのだろう。 「ええ、それはお互いに。 『ユーサネイジア』の最後の記憶が、良きものでありますよう。 ……ああ、そうそう。彼の搬送をお願いしても? 私は貴方と話しましたけど、貴方は彼とはまだ言葉を交わせていないでしょう」 顔を見た時彼らは、何も知らない者達の邂逅ではないものを抱いていた。 多分それは自身の知らない話で、与り知らぬなにかなのだろう。 第四階層の入り口へと、足を向けかけながらに問う。 (27) 2021/10/12(Tue) 8:49:13 |
【独】 愛玩用 エマ「……♪、♪……」 メンテナンスの時間も迎え、早朝に下っていき。 あとは刻限を待つばかり。強制終了となるのはどれくらいだろう。 最早皆寝静まってしまい部屋に戻って目覚めるのを待っているだろう頃、男は一人食堂にいた。 部屋もここでのおとなしいあり方も棄却して、シャットダウンを待っている。 最後の夕食は人数分残っているだろうか。 せめても、自分で作ったクレープ・シュゼットだけは悠々と楽しんでおこう。 ひょっとしたらもう少しご褒美が残っているかもしれないし。 偽物の朝陽がのぼるその時まで、自由な時間を謳歌することにしたのだ。 これは束の間の休暇なのだから。 (-55) 2021/10/13(Wed) 17:55:30 |
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