【人】 行商人 美濃[幾度目か箱を手にしては開けずまま、想いに耽る女に声がかかった。>>11 視線を上げれば昨日の、箱を抱えた男性が猫>>18を連れてやってきたところで。] 今晩は、良い月ね。 いらしてくれて嬉しい。 大事なお猫様の方も。 こゆきちゃん、というのね。 大切にされてるのがわかるお顔をしているわ。 [真っ白な毛並みに印象的な瞳の色。 想像を巡らせた面立ちより幾らか稚いか。 彼の口にした名は成程体を表していると女は思う。 手を伸ばしてみたくはなるが、ひと様の大事な子だ。 それは堪えて商品を見繕う。] そうね、鞠に、毛糸玉。 螺子式の蛙、蜻蛉の玩具なんかは猫じゃらしの代わりにはなるやも。 [薄桃色に赤と白の刺繍が施された小さな鞠に、手芸用の毛糸玉の色は数種類あったか。 螺子を巻くと数寸ほど跳ねて前進する絡繰の蛙は鮮やかな緑色をしている。 猫じゃらしになると思ったのは、細長い棒の先にテグスで繋がれた蜻蛉がぶら下がったもので、振り回して童が遊ぶためのものだ。 お眼鏡にかなうものがあれば良いのだけどと首をかしげ。] (19) 2022/10/01(Sat) 22:54:03 |
【人】 行商人 美濃[それから、女の手にしていた箱のことを尋ねられれば、] ああ、これは私物なの。 私にとっての大事な荷物というやつね。 [雨の中、抱えた箱を指して言われた台詞になぞらえて返す。>>0:49 此方は今しがた昨日の箱の中身を見せてもらったからと、特に尋ねられもしなくとも蓋に手を掛ける。 何故だろうか、一人で悶々としていた時には開けなかった蓋は、存外あっさりと開けられた。 きっと開くきっかけが欲しかったのだろうと女は思う。] 花が咲くのを待っているのよ。 [小ぶりの茶碗に土が詰められたそれを見せる。 土からは芽も出ていなければ、本当にただ土が詰まっただけの碗だ。 女はそれに目を落とし、静かに蓋を閉じた。] (20) 2022/10/01(Sat) 22:56:58 |
【人】 行商人 美濃[箱を横に置けば、すぐにぱっと顔を上げ、尋ねられた硝子細工を掲げて月明かりに透かせる。] これは栞につかったり、 飾って目で楽しんだりかしら。 [押し花みたいなもので、これなら花を萎れさせずとも残せるでしょうと仮面の下で微笑んだ。 実際、実用性はあまりないものだ。 散るさだめのものを永遠に留めたいかどうかは人によりけり。 少々女性寄りの感覚とも思えば、彼の気はひけなかったかもしれないが。]** (21) 2022/10/01(Sat) 23:03:20 |
【人】 行商人 美濃[猫飼いの男性に箱の蓋を開いて見せた時、常と何の変わりもない腕の中を見て、ああ、やはり、と女は思った。 落胆と、まだ頃合ではないだけだという僅かな希望。 それは猫の額どころではなく髭一本分にも満たない細い希望だったが。 ───…一等綺麗な満月の晩だけ、 それは綺麗に咲くのだと、彼の人は言った。 もしその時が来るならば、きっと───… 何処で手に入れたかも知れない、文献を漁ってもそのような花は無く。 戯れだったのかもしれない、否、おそらくただの戯れであった、 まるで御伽噺のようなその言葉を鵜呑みにする齢はとうに過ぎている。 それでも女は、満月が来るたびに箱を開いた。 そしてその間一度とて、腕の中には些末な変化もありはしなかった。 この地でこの晩、月が中天にかかる頃にも叶わぬならば諦めよう。 そうして、一等美しい偃月を見て、団子を食み酒を飲む。 それだけできっと充分だろう。 だって今宵の月はふた目と観ることは叶わないだろう程に綺麗で。 彼の人を思い出すには相応しい。 観月祭の噂を聞き、この砂漠に浮かぶ島へと行くことを決めた時から、女はそう決めていた。]** (32) 2022/10/02(Sun) 14:18:43 |
【独】 行商人 美濃/* あわー、むらたてさまお大事に、お大事にして。 最近気候もおかしいし。 流行病などでなければよいが…。 ゆっくりやすんでね… (-8) 2022/10/02(Sun) 16:24:23 |
【人】 行商人 美濃─露店のお客様・澤邑 ─ [愛猫を見ての第一印象を伝えれば、猫の主の顔が綻ぶ。>>34 印象とおりに大事にされているのだろう。 常日頃からこの小さき生き物を、目に入れても痛くない程に…、有体にいえば“でれでれ“と、愛でている姿が目に浮かんだ。 呼称が砕けて「ゆきちゃん」と変わるのもそれを裏付けているようで、女は袖を口元にあてて、ふふと笑った。] 童が振り回しても良いようなものだから。 本物の蜻蛉よりは頑丈よ。 まあ、たくさん買っていただけて嬉しいわ。 [蜻蛉は多少傷つこうとも、その小さな爪に引っ掛かれた痕すら微笑ましく見えそうだと笑って。 赤の毛糸玉は白い毛並みに映えそうだ。特殊な素材でもない毛糸はきっと猫にも気にいるだろう。 薄桃の毬も艶やかな毛並みと並べても遜色ない品だ等、猫が遊ぶところを想像しながら頼まれた品を紙の袋に詰めた。] (41) 2022/10/02(Sun) 20:50:00 |
【人】 行商人 美濃─露店のお客様・こゆき─ [猫飼いの男性と露店の品についてやりとりしている間、どうしても抱き抱えられた猫の方をちらちらと見てしまうのは仕様のないことだ。>>45 毛が剃られた後の肌が見えれば、思っていたよりも年嵩なのだと気づく。 面立ちに稚さは残していても、そういった施術が必要な年頃なのだと。 まだ新しい剃り跡に、昨日の雨の中で箱に入れられていた理由を推測すれば一人納得した。 仮面の細い目元から覗く女の瞳と、じいとこちらを見遣る猫の目が合った。 物珍しそうに見つめる瞳に、思わず目を細めるが、仮面の外からはわからないことだろう。 飼い主の腕の中、蜉蝣の玩具にご執心の様子を見れば、小さく笑って] 帰ったらいっぱい遊んでもらってね。 [猫じゃらし代わりに買われたそれを袋に詰める時は、そう声をかけた。]* (51) 2022/10/03(Mon) 0:38:05 |
【人】 行商人 美濃─露店の近くに佇む人・控井─ [女の佇む露店の先の路上、はたと足を止めた男性の姿が視界に映る。>>48 並べた品を眺める表情は穏やかで、誰かへの贈り物を探しているのだろうかと、いくらか空想癖のある女は思う。 彼の視線の先を追えば、男性向けの日用品を並べた方向ではなく、女性向けの装飾や童の喜びそうな玩具の方に見えて。 先程猫飼いの男性が愛猫の玩具を選ぶ様子や、奥様への贈り物を買う優しげな表情を佇む彼の顔に重ねた。 幸せな家庭を持つ人なのだろうという空想は、彼の抱える憂いを読み取ることはなく。 贈り物をあげたい誰かがいる幸せと、相手の喜ぶ顔を思いながら贈り物を見繕ってくれる人がいる誰かの幸せが、長く続けば良いと、勝手に願う。 自分にはもう詮無き願いだからこそと思えば、他者の持つ哀しみや事情には考えが及ばない。 幻想的な非日常に恋をして、夢のような時間ばかりを享受して、少女の頃から空想癖だけを抱えたまま大人になった女は、現実の無情ややるせなさを意識の外に置いたまま、もうずっとあの頃というひとところへと取り残されていた。]** (52) 2022/10/03(Mon) 1:19:52 |
【独】 行商人 美濃/* ねこちゃん、控井さんはありがとうありがとう。 控井さんはせめて存在だけでも知りたいと思っていたので袖触れ合う縁がいただけて嬉しいです。 そして高比良君も体調お大事に… (-13) 2022/10/03(Mon) 1:24:20 |
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