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【人】 鬼 紅鉄坊さあ……着いたぞ ほら、此処から先は山の外だ。初めて見たのではないか? [ どれ程歩いたのか、廃寺のある辺りからは反対側。 優しく下ろしてやり、口を開く。 途切れた木々の並びの先に見える開けた世界は、光に溢れていた。 ] 私も実際に見たわけではないのだが、 真っ直ぐに歩いて行けば、半日程で村に着くらしい 山と比べてずっと歩きやすい、思うよりはきっと辛くないさ そこはお前のことを知らない者達の住む場所だ 誰にも虐げられないところから、新しく始められる 本当はもっと、時間を掛けるつもりだったのだが ……否、きっとこれでいいのだろうな。こうなる定めだったのだ [ 千太郎と暮らし始めてから鬼は少しは饒舌になった。 それでもここまで口を挟ませずに一方的に語ることは無かった、 無論、意図的なものだ。 ] (40) 2021/06/23(Wed) 1:50:34 |
【人】 鬼 紅鉄坊心配するな。千太郎は賢いし、怠け者ではない 髪は戻してやれなかったが……もう身体もあの頃とは違う 少しばかり口に気をつければ、働き先は見つけられるさ お前の母親は、村から出て自由になることが夢だった 彼女の……さとの叶えられなかった夢を、果たしてくれ [ 寺の外に千太郎を置き、勝手に包んで来た荷 持ち込んだ品と共にあの書物も入れておいた。 例え嫌がられても強引にでもしっかり抱えさせ、両肩に触れる。 常のように加減した力は容易に緩み簡単に離れ、鬼は背を向ける。 ] (41) 2021/06/23(Wed) 1:50:50 |
【人】 鬼 紅鉄坊既にあの寺はお前の家ではない 再び山に入れば、私の同胞に殺されると思え [ 低い声を更に低くし、はっきり聞こえるよう脅しを掛ける。 望んでいるのは役目を与えた者に求められること ならば、ただ死にたいわけではない筈だ。 ] お前との日々は、とても幸せなものだった 人間たちと共に暮らし、同じ気持ちを感じてほしい [ 何を見ても何が聞こえても振り返ることなく、 本来の歩幅と歩調で慣れた山の中に消えて行った。 ]* (42) 2021/06/23(Wed) 1:51:10 |
【秘】 鬼の子 千 → 鬼 紅鉄坊[もう一度会いたい。 何かを堪えるように唇を噛み、単純な想いに突き動かされる男の姿は 最早鬼子などではなく ただの人間であった。] (-32) 2021/06/23(Wed) 1:53:18 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 仕方なかった。生きる世界が違った。 最初から理解し目的を定めていた筈なのに、 脳裏に何度も言い訳のような──自分を慰めるような言葉が浮かぶ。 これ以上共に在れば、いつか喰い殺していたかもしれない。 この選択が間違っているわけがない。 今日からまた独りになる廃寺、不要になる品をどうするか考えねば しかし何故か帰る気にはなれなくて、 大木を背に座り込み、色を変えていく空を見上げていた。 ] (53) 2021/06/23(Wed) 1:55:08 |
【赤】 鬼 紅鉄坊[ そういえば、最後にさとに問われた時 何も返すことが出来なかった──── 遠い記憶が蘇るのは、再びの別れがやって来たからか。 ] (*2) 2021/06/23(Wed) 1:55:21 |
【人】 鬼 紅鉄坊なんだ……? [ 風もないのに森がざわめく。 同胞たちの気配の幾つかが、同じ場所に集まっている。 昼間の熱が半端に冷めたような、生暖かい空気の中 鬼は来た道を戻るように、気配の元を辿っていく。 本当は暫く独りになりたかったのだが、 どうしてかとても気になってしまった。 ] (55) 2021/06/23(Wed) 1:56:11 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ どこぞの娘が一人で山に入り込み、 奥まで行ってしまった時も確か──── はっと目を見開いた鬼は歩みを早め、やがて走り出した。 ] (56) 2021/06/23(Wed) 1:56:22 |
【人】 鬼 紅鉄坊「捨テタ!捨テタ!紅鉄坊ガ花嫁ヲ捨テタ!」 「喰ッテモイインダナ!」 「男ハ美味クナイケドナ」 「人間ハ中々喰エナイ、ワシハ男ノ肉デモイイゾォ」 [ 興奮した様子の妖怪らは──より異形を持った鬼たちは 喚くように叫ぶように同胞と言葉を交わし合う。 一番先に会った一体が、転んだ獲物の上に伸し掛かるように乗り 手に比べ長細い指の先の鋭い爪を、その首に向けて振り上げ── ] (57) 2021/06/23(Wed) 1:56:43 |
【人】 鬼 紅鉄坊やめろ! [ 近付いてきた草を掻き分ける音の正体が、鬼がそれを掴み上げ近くの木に叩きつけたことで阻まれた。] 違う、違う!私は千太郎を捨ててなどいない! 帰れ、お前たちにこの子を喰らう権利はない! ──聞こえないのか、散れ! 私はお前たちを叩き潰す為にあの方に口添えしてもよいのだぞ! [ 口々に上がる不満の声。繰り返される「捨てた」 同胞と千太郎の間に立ち塞がりながら、声を荒げ怒り言い争う。 両者にある隔たり、どちらも互いの言葉を真実と認識している。 その中で同胞が引くことになったのは、 実質的な山の主を引き合いに出したが為に。 ] (58) 2021/06/23(Wed) 1:57:02 |
【人】 鬼 紅鉄坊何故だ、何故帰ってきてしまったのだ…… 私はあれ程言ったではないか [ 漸く静かになった闇の中。 膝をつき抱き起こしながら、鬼は嘆く声を上げる。 夜目の効く紅色が見下ろした顔は、どんな表情をしていたか。 ]** (59) 2021/06/23(Wed) 1:57:17 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 予想外の一言が鬼の思考を停止させ、>>91 昼間の意趣返しの如く口を挟めなくなる。 数多の言葉が山の中、大きな身体に降り注ぐ。 いつか誰かを刺した罵りではない、 小さな人間の中に溜め込まれ吐き出された想い。 鬼が知らず置き去りにしてしまった遣らずの雨。>>92 身を濡らすことはないまま深くに染み渡り、頭を冷ますようだった。 望みを叶えない鬼との生活は、嫌ではなかったというのか。 相手のことを考えていたつもりで、自分勝手になっていたのか。 真にこの若者から自由を奪ったのは、己だというのか。 軽すぎる拳が、何より重い。] (94) 2021/06/24(Thu) 2:00:18 |
【人】 鬼 紅鉄坊そうか、そうか、…… [ 腕に収めていなければ届かない、囁きめいた大きさで 見目に不似合いな幼い響きが落とされた。 頷きあやすように背を撫で、叩き付けられた全てを噛み締める。 ] (95) 2021/06/24(Thu) 2:00:58 |
【人】 鬼 紅鉄坊すまなかった……千 私たちは互いに、言葉が足りていなかったな [ 恐ろしい思いをさせてしまった理由も、呼び名も きっとこれが正しいのだと、すんなり受け止めることが出来た。 両親に愛され真っ直ぐに育った可能性の中の千太郎を想い 親無し子で歪んだ男を哀れむのではなく、あるがままを視る。 此処にいるのは千であることを受け止める。 押し潰さず、添えるだけでもない力加減で抱き締める。 誘われるまま犯しそうになった過ちと近い距離 今は本能はざわめかず、ただただ胸に満ちるものがあるばかり。 他者には捨てたようにしか見えない行為をしながら、 何故あんなにも憂い足を留めてしまったのか、今なら分かる。 ] (96) 2021/06/24(Thu) 2:01:07 |
【人】 鬼 紅鉄坊お前が本当に望んでいるのは、喰われることでは無いな [ 当人に自覚があるのかは怪しいが、 思えば最初から、言葉の節々に表れていた。 人の一生はとても短い。 何も求められず望まれず、ただただ物のように闇に置かれる十年は 役目を担う鬼の百数十年より、長く感じるものなのかもしれない。 ] なら、与えることが出来るのかもしれない 帰ってきてくれ、私の花嫁よ ……あの娘やお前の為ではなく、私が望んでそう願いたい [ 理解していない様子でも教えることはない。 身を離し、しっかりと目を見つめながら代わりに口にするのは、 自分の気持ちで自分の言葉で紡ぐ、千を求める想い。 ] (97) 2021/06/24(Thu) 2:01:55 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 散らばる荷を集め、拒まれなければまた抱き上げて 独りでは見つけられなかった帰り路を、共にしようか。 要らなくなった物は何も無い。 明日も廃寺には変わらない朝が来るだろう。 ]* (98) 2021/06/24(Thu) 2:02:11 |
【秘】 鬼 紅鉄坊 → 鬼の花嫁 千確かに娶った理由はさとだ。彼女の子を助けてやりたかった 人間の事情に介入せず連れ出す方法は、これしか無かった だが、それから私たちが過ごした時間は 確かにお前とのものだったのだ、……千 (-86) 2021/06/25(Fri) 3:32:00 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ やがて黒い眼が閉ざされても、その場に在り続けた。 いつかは死体と見紛う寝姿に心穏やかではなかったが、 見つめる先に彼が怪我一つない身体で眠っていることが、 行灯の光が色の無い髪に仮初の暖かさを宿す光景が 不思議と気持ちを落ち着かせてくれる。 その内訪れた目の奥が沈むような感覚に身を任せ、 座したままの姿勢で、鬼は花嫁の部屋で夜を明かした。 ] (125) 2021/06/25(Fri) 3:32:14 |
【人】 鬼 紅鉄坊── 後日 ── 小さく軽いものだからな 転んだ時、合間から落ちたのだろう 風に乗ればもう見つけようはあるまい 気にするな。元はと言えば私が強引に事を為そうとしたのが悪い ……新しい村で過ごしても、思い出してくれたらなどと 欲を出したのも、うむ。私の責任だ [ いつか挟んだ花のことを思い出したのはどちらだったか。 荷は全て回収していた為、確認するまでには数日掛かった。 その時点で望みの薄さは分かりきっていた。 あの時千が襲われていた辺りに出向いては見たが、 やはり見つかることは無く。 今一度共に部屋の中を確認し、そう結論付けた。 ] (126) 2021/06/25(Fri) 3:32:48 |
【人】 鬼 紅鉄坊もう簡単に花を摘み取りはしないだろう? なら、あれも無意味だったわけでもないさ それに、全て千が生きていてこそだ [ 本当に、間に合って良かった。 そう言い添えた鬼は、太い指で不器用に白色を撫でた。 幼子を愛でる触れ方とは違う、掬うように慈しむように。 ] ……お前も変わったが、私も以前のままとは言えないな [ ふ、と短く息を吐き。一時逸れた目線は 山の深くへと続く方角へと向いていた。 ] (127) 2021/06/25(Fri) 3:33:05 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 誰かの意味の為に摘み取られた花が この山の何処かで躙られ、潰えてゆく。 それを理解しながら見ないふりをして、 忘れぬよう刻むなどという、救いにもならない贖罪を重ねて 手の中の一輪を、実を結ばない花だけを大切に抱える。 鬼の両腕の届く範囲は、見目よりずっと狭かった。 己を挟む二つの存在のどちらも捨てられず、 選ぶことも出来ずにいた腕が唯一を見つけた。 ]** (128) 2021/06/25(Fri) 3:33:29 |
【秘】 鬼の花嫁 千 → 鬼 紅鉄坊ひひ、笑えるくらい当然のことだな 何で俺達は今更、こんなことを話しているのやら でも、不思議だなァ そんな当たり前も、言葉にしてもらえないと分からなかった きっと俺ァ、あんたが言う程賢くなんてないのさ だから教えてくれて嬉しいぜ、紅鉄様 (-87) 2021/06/25(Fri) 3:34:54 |
【赤】 鬼 紅鉄坊── 幕間 ── 千、そういえばこれは……? 持病があるのか、何故言ってくれなかった [ 部屋の中、荷を再確認し花が無いか探す最中。 示したのは薬らしき小さなもの。 置き去った日も疑問に思ったが、問えるような状況ではなかった。 ] (*12) 2021/06/25(Fri) 9:48:50 |
【赤】 鬼 紅鉄坊な…… [ あまりの内容を、他愛も無いとばかりに軽く語られ絶句する。 教育、とは。 ] 千、まさかお前は村で……? 誰だ。あの時にいた内の一人か? [ 自分が選んだせいで、なのか。今まで思いもしなかった。 両肩を掴む鬼の表情には余裕がない。 ただでさえ迫害されていた花嫁がそんな目に合っていたらと思うと 気が気でなかった。 ] (*14) 2021/06/25(Fri) 9:51:14 |
【赤】 鬼 紅鉄坊…………そう、か [ 掴む手の力が、安堵により抜ける。 それでも、何てことを教えたのかとため息が落ちるが 自分たちのせいで生まれた伝統は、咎められない。 ] 当たり前だ お前が傷つけられるのは、嫌だとも [ 躊躇い無く返す答え、鬼の想いに嘘はない。 背けた顔の理由は別の部分にある。 そうして再び探し物に戻ったのなら、 その落ち着かない心地も、収まってゆく。 ]** (*16) 2021/06/25(Fri) 9:52:56 |
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