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【墓】 二年生 小林 友[遠くにひぐらしの声を聞きながら 影と二人、席に着く。 お互い実体があったら二人並んで 放課後の自習……みたいな感じだったのかな。 耳に息を吹き込まれたり、話し掛けられたり そんなことされてるなんて夢にも思わず 俺はペンを走らせていく。 さりさり、ペン先の回る音は一つだけ。 なのに、書きたてのインクが、 触れても無いのに すっとあらぬ方向へ尾を引いた。 相手の呼吸音すら聞こえない距離で 俺は静かにアキナに語り掛けるだろう。] (+12) 2020/10/03(Sat) 23:02:34 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月 あー俺も影なんだ…… まあ俺だけ丸見えでも すっげ恥ずかしいんだけどさ。 あ、俺名前だけじゃなくって キャラも陽キャぶってたから ●菜月の気持ちも、わかるよ。 彼女もいた事ないし、バスケ部でもない。 どう?俺のが嘘つきでしょ。 [下手くそなVサインを書き添えて。 菜月。なつき。 影は俺と同じくらいの背丈か。 女の子らしさを気にするところとか、 そのままで可愛いより、ずっと可愛い。 ……なんて、言えやしないけどさ。] (-90) 2020/10/03(Sat) 23:03:39 |
【墓】 二年生 小林 友[そう、この童話集にはハッピーエンドのが いっそ珍しい部類で。 意匠を凝らした絵本の1ページみたいな 綺麗な風景……人ならざる純粋な生き物が 人の醜さ、強欲に飲み込まれて 失意のまま物語が幕を閉じるのが多い。 人は醜い、汚い。 その世界に没入して、被害者の側に 自分を投影することで、 自分自身の汚さからは目を逸らす。 そんな楽しみ方、作者が聞いたら怒りそう。 ─────ともかく、『金の輪』も ハッピーエンドとは言い難い話。] (+13) 2020/10/03(Sat) 23:04:02 |
【置】 二年生 小林 友太郎はかなたの往来を見ますと、 少年が二つの輪をまわして、走ってきました。 その輪は金色に輝いて見えました。 少年はその往来を過ぎるときに、 こちらを向いて、昨日よりも いっそう懐かしげに、微笑んだのであります。 そして、なにかいいたげたようすをして ちょっとくびをかしげましたが、 ついそのままいってしまいました。 ─────『金の輪』 小川 未明 (L1) 2020/10/03(Sat) 23:04:24 公開: 2020/10/03(Sat) 23:05:00 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月 この話、少し怖いよね。 意味がわかると怖い話、みたいな。 この太郎くん突然死んじゃうし 少年の正体、よく分からないし。 [音もなく、宵闇迫る図書館の中 まるで追いすがるみたいな菜月の言葉に 俺はそっと口角を上げる。 例え本当は興味がなかったとしても 俺が一等好きなこの本を 菜月が愛してくれたなら嬉しいし、 楽しかったのが俺との会話なら、尚更。 俺だって他愛ない会話なんか したこと無かった……菜月と話すまで。 菜月が返事をしてくれなかったら 俺はクラスメイトにすら話しかけられなかった。] (-91) 2020/10/03(Sat) 23:06:07 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月でもね。 怖い話かもしれないけど…… [窓の外から、菜月より大きな 夜の魔王が影を落とす。] 俺、今この話が、なんていうか…… 一番しっくりくる、かな。 (-92) 2020/10/03(Sat) 23:11:55 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月 今姿は見えなくても、菜月と過ごせた時間 俺にはすごく大事なものだった。 菜月のお陰で世界が広がって、 話しかけられなかったクラスメイトにも 自分から話しかけられたり…… ううん、それだけじゃなくて 菜月の書いてくれる感想とか、絵とか 菜月の感性に触れたら、 世界は何処までも広く見えて…… 今隣にいても触れられないのが すごく辛くて、 悲しい。 (-93) 2020/10/03(Sat) 23:19:32 |
【墓】 二年生 小林 友[もちろんそんなことはしないけど。 「世界の違う」天国とやらに辿り着いては 全く意味が無いんだ……そこに菜月がいないなら。 自分でも、会ったことの無い人間に ここまで入れ込むなんて滑稽だと思う。 隣の影を覗き込むようにしても 結局その表情は計り知れないし 俺の目頭がじんと熱いのも、 きっと、菜月は知らない。 ─────ああ、夜が来る。]* (+14) 2020/10/03(Sat) 23:35:47 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友そうなの!? 友君どこにいるんだって、バスケ部にそわそわしてたのに! だけど、元カノが居ないのはなんかうれしいな。 (-111) 2020/10/04(Sun) 9:57:39 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友私は名前以外うそついてないぞ! 隠し事はちょっとあるけど。 部活で筋肉つけまくって、気が付けばゴリラ扱いよ! 友君、身長同じぐらいだよね。たぶん体重私の方があるし、 この本借りた時も、「破るなよ」って釘刺された! 子供のころは毎日食べた卵は4ダース、 でも今じゃ60個も食べて筋肉はモリモリ。これはうそ。 [私たちは嘘をついた。 自分の嫌いなところを隠して、 憧れでコーティングしたのは、 友君と喋りたかったから。 友君の世界にも、早乙女菜月はいるだろうか。 うるさいし、前髪ないし、 筋肉モリモリだし、自分って言うし、 思ってたのと違うって、がっかりされるかな。 それでも、「菜月」と書かれる文字が こんなにうれしいなんて。 生身の私のことを伝えて、 結果嫌われてしまったって、仕方がない。 嘘の自分を好かれる辛さは、 友君の書く「アキナ」からたくさん教わった。] (-112) 2020/10/04(Sun) 10:22:36 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友金の輪を分け合うと死んじゃいそうだから、 実際にはできないけど。 友君とは、例えば、 美味しいコーヒーを半分こしたり、 イヤホンを半分こして好きな音楽を共有したり、 手を繋いで体温を分け合いながら 帰ったりしたいって、思うかな。 ああ、それも実際にはできないのか。 ねえ、友君、 [手元がかすんで、うまく見えない。 シャーペンの芯は、夜の暗がりに同化していく。 だけど、あとで、明るいところで見てくれればいい。] (-114) 2020/10/04(Sun) 10:29:22 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友[手元がかすんで、うまく見えない。 シャーペンの芯は、夜の暗がりに同化していく。 だけど、あとで、明るいところで見てくれればいい。] 明日もまた、同じ時間に会おうよ。 (-115) 2020/10/04(Sun) 10:30:22 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友そっか。友君のところはコロナ起こらなかったんだ。 こっちは世界中大パニックでさ、突然、国の偉い人が 「コロナやばいから、来週月曜から学校休みで!」って。 金曜日の夜にだよ!? それが3月ごろの話でさ。 卒業式も無し、入学式も中止! ずっと休み、引きこもって世界を救え! っていうのが、ゴールデンウィークまで続いたよ。 今はちょっとずつ前みたいに戻ってきたけど、 とにかく密集を避けるから、イベントが全部消えた。 体育祭も無し、文化祭も無し、 バスのぎゅうぎゅう遠征禁止! で、今年は林間学校も無いよ。 代わりに近くの広場にお散歩です! 園児かって。 私たちは2年生だからまだいいけど、 今年1年の子とか、受験の3年生とか、 かわいそうだよね…… [誰でも当たり前に知っていることを、友君に伝える。 ああ、同じ日本で、同じ2020年を生きているのに、 本当に別の世界の人なんだなってことを実感して、 しみじみ悲しくなってしまった。 だけど、そこまで進めたのは、 影だけでも友君と会えたからで。] (-116) 2020/10/04(Sun) 10:37:57 |
【墓】 二年生 小林 友[卵60個食べて筋骨隆々になったのは 確か町一番の変わり者に恋した力持ちだっけ? 本ばかり読む変わり者には ぴったりかもしれないけれど、それはさておき。 滑るペン先を見つめる瞳が じっと紙に注がれているのを感じながら 俺はくるりとペンを回す。] 嘘なのかよ。 [聞こえてないだろうけどノリツッコミ。] (+22) 2020/10/04(Sun) 15:21:20 |
【墓】 二年生 小林 友[でも、ほら。 俺なりのプロポーズに 隣の影が大仰に驚いてみせて。 (そういう反応が女の子なんだよ) 心の中で語り掛ける。 しばらく待っていると、 震える黒炭の筆跡が、ゆっくり、ゆっくり 菜月の気持ちを表してくれる。 強くて、背が高くて、女子っぽくない菜月の やわらかくて、繊細な心の中を。] (+23) 2020/10/04(Sun) 15:21:46 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月ちがうよ。 ちがうよ。 [つい、書きながら声に出す。] 俺だって、放課後一緒にアイス食べたり 休みの日にくたくたになるまで一緒に遊んで 帰りのバスでお互い身を預けあって寝たり そんな普通の恋人みたいなことして 結婚して、子供産まれて、 二人してジジババになって…… そうやって死にたい。 [ただただ世を儚むような真似は 結局誰にも救いをもたらさない。 この手で、菜月の手を握りたい。 それだけなのだ。] (-124) 2020/10/04(Sun) 15:22:53 |
【墓】 二年生 小林 友[窓の外が暗くなっていく。 星も見えない真っ暗闇が、 図書館の中を満たしていく。 紙が、もう見えない。 シャーペンの軌跡も、ブルーのボールペンも ダサい天使の描かれたピンクの便箋も 全部全部、黒一色に染め上げられて。] (+24) 2020/10/04(Sun) 15:24:08 |
【墓】 二年生 小林 友[その一瞬、隣に座る影の手に 俺は自分の手を重ねた。 結局その手は何にも触れないまま すとん、と木の机に受け止められたけど 心做しか、辺りを包む暗闇は とくり、脈打つような温かさだった。]* (+25) 2020/10/04(Sun) 15:24:27 |
【置】 二年生 小林 友「その子供が、かわいそうじゃないか。 だれか、どうかしてやったらいいに。」 といいました。 「私は、その子が、目をさまさないほどに、 揺り起こしました。 そして、それが夢であることを 知らしてやりました。 それから子供は、やすやすと 平和に眠っています。」 と、やさしい星は答えました。 ─────『ある夜の星たちの話』 小川 未明* (L3) 2020/10/04(Sun) 15:26:53 公開: 2020/10/04(Sun) 15:25:00 |
【人】 二年生 小林 友[気がついた時には暮れなずむ図書館に 一人っきりで机に突っ伏していた。 暖かな影は、もう何処にもなくて 冷たい秋の風がふんわり、頬を撫でていく。 幸せな夢から醒めたら、 色褪せた現実が横たわっている。 ……今ならマッチ売りの少女の気持ちが分かる。 何度も何度も、マッチを擦っては 同じ夢を見たがるの。 残された本と、ボロボロの便箋。 便箋には、菜月からのメッセージが しっかり残されていた。]* (27) 2020/10/04(Sun) 18:25:07 |
【秘】 二年生 小林 友 → 二年生 早乙女 菜月なんか、ハリウッド映画な世界なんだね。 「世界はウイルスにより滅んだ!」みたいな。 俺の世界で今生きている芸能人が そっちの世界じゃ亡くなってたり…… ホントに、信じられない。 菜月自身に降り掛かった災難もさ。 練習を積み重ねた成果が 出し切れずに終わったのは 俺なんか想像もつかないくらい悔しいと思う。 どうか、菜月も身体を大事にね。 (-137) 2020/10/04(Sun) 18:26:07 |
【墓】 二年生 小林 友[「大事にね。」の文字が掠れた。 黒や赤より使わないから、と選んだ青いインクが もうすぐ無くなりそうになっている。 別に違う色のインクを使っても 菜月は何も言わないだろうけれど ─────何となく。] (+27) 2020/10/04(Sun) 18:28:18 |
【人】 二年生 小林 友「……ともちゃん、変わったね」 [ある日、図書館に行こうとした俺に 青柳はそう言った。 振り向くと、青柳はその端正な顔をそっと あらぬ方向へ向けて、笑う。] 「なんか、彼女出来たのかなって。 ……それは喜ばしいことだけど ともちゃん、なんか消えそうで、怖い」 [それぞれが部活や委員会に向かおうとする 騒がしい教室内に、消え入りそうな声を出す。 俺は青柳のそんな顔、初めて見た。 もっと明るく何も考えない奴だと思ってた。 “陽キャ”ってそんな生き物だって。 俺はそんな青柳にそっと笑いかけて 肩を叩いて、言った。] (28) 2020/10/04(Sun) 18:36:15 |
【人】 二年生 小林 友……なんだよ、それ。 別な世界に飛んでいきそうって? そんな方法、どこにも無いよ。 [何処にもない。 影に触れて、体温を分かつ方法も。 俺は知らない。 そう笑うと、俺は踵を返して 図書館へと向かうだろう。 大好きなあの子に逢いに行くために。]* (29) 2020/10/04(Sun) 18:39:17 |
【秘】 二年生 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友[一つだけ書かれた「違うよ」の文字。 首を傾げながらのぞき込むと、 そこに広がっていたのは、 喉から手が出るほど欲しい日常。 日常を重ねた先の、穏やかなエンディング。] プロポーズみたい、じゃなくて、 ……プロポーズじゃん。 友君は告白まで文学的だなぁ…… 私は筋肉バカだからさ、 一緒に遊ぶの、体力いるよー? (-169) 2020/10/05(Mon) 5:58:09 |
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