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【人】 鬼 紅鉄坊……一体、何処に行ったんだ [ 山は何処までも静まり返っている。 どれ程歩いても、痕跡は見つけられなかった。 同胞が騒いでいないのなら、つまり襲ってはいない。 雪はとうに降り止んでいる、 途中からでも隠されていない足跡がある筈だ。 陽の傾き始めた空を木々の合間から確認し、ふと気づく。 ああ、 そういえば性別も名前も聞いていなかった。 ]* (52) 2021/07/01(Thu) 1:57:19 |
【秘】 鬼の子 千 → 鬼 紅鉄坊俺の命は婆さんのように長くは保たないだろう あんたはいずれまた違う人間を迎えるのだろう その意思に関わらず、古の約束に基づいて 分かっている、分かっているから聞かなかった 優しいあんたを困らせないように いつか来る時に寂しさを誰かが忘れさせてくれるように それでも…… (-128) 2021/07/01(Thu) 2:00:36 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 人の善意を信じる鬼は、何の情報もなく未だ彷徨い続けようとしていた 何処からか怒号のように響き渡る、 育ての父たる男の声がその歩みを漸く止める。 直ぐに同胞が狼狽え囁き合うような気配を、あちこちから感じた。 ] まさか…… [ 鬼は漸く気づく。 山に棲まう妖らにとっても想定外の、非常事態が起きている。 迷子など、何処にもいない。 ] (59) 2021/07/01(Thu) 2:02:28 |
【人】 鬼 紅鉄坊[ 輿入れの季から時は過ぎ、 鬼の知る彼らしい振る舞いをしていた薬屋の店主。 その傷は決して癒えないものだとしても、 裏で何を考えていたのか、思いもしなかった。 体躯に似合わぬ速さの走りが、鬼の焦りをありありと表す。 己を傷付けることなど無い枝や草など押し退け、 道無き道を駆け、最悪の想像を払う為に寺を目指す。 ] (60) 2021/07/01(Thu) 2:02:43 |
【赤】 鬼 紅鉄坊なんだ、この匂いは…… [ 酷く食欲を唆る。濃すぎる血の芳香だ。 門に到達する前から、強く鬼の鼻腔へと届いた。 ほんの一時、指から流れる一筋を舐めただけの 千の血を思い出すことは、流石に無い。 だがこの状況で嗅ぐそれは、不穏を煽るに充分なもの。 ] (*14) 2021/07/01(Thu) 2:03:02 |
【赤】 鬼 紅鉄坊千……ああ、千! 何故、どうしてお前が…… [ 衝撃でぐらついた視界、なんとかよろめきを堪えて戸を潜った。 込み上げる本能への嫌悪で、胃酸がせり上がる。 抱き上げよく見れば、片目から顔に掛けて傷つけられている。 外套の前を開けば、白い着物が無残に色を変えている。 まるで自分と対照にされたような傷の他にも、 酷く虐げられた跡が身体中に存在していた。 刃物を使ったのだろう。同胞の所業ではない。 これはやはり──薬屋の店主からの、村人からの報復だ。 ] (*16) 2021/07/01(Thu) 2:04:56 |
【赤】 鬼 紅鉄坊お前は何も悪くないのに 全て、これからの筈だったのに…… [ かつて同じであった人の子を喰らい続ける同胞と、 彼らを見捨てられず約束を取り付けた自分に罪はあろう。 それでも千は無関係だ。 村で千が何をしていても、鬼子と呼ばれるに相応しい悪人でも 花嫁たちは彼のせいで死んだわけではない。 報いを受けるべきは自分だ。 村人を飼い殺すような契を押し付け、長きに渡り花嫁を送り 今更全て捨てて千と外の世界へ向かおうとしていた鬼だ。 ] (*17) 2021/07/01(Thu) 2:05:20 |
【赤】 鬼 紅鉄坊千、死ぬな…… 私を置いて行かないでくれ…… [ 微かに息があることに気づいても、鬼の声は絶望に震えている。 血が足りない。傷が多すぎる。 収穫した実は全て薬屋に渡した。 対価は後日、寺まで届けられる筈であった。 約束の傷薬も、“これからの為”求めた止血の生薬 ──梔子の薬も此処にはない。 血に塗れた愛しい唯一に、何も出来ない。 命が、消えてゆく。このままでは、千は死ぬ。 ]** (*18) 2021/07/01(Thu) 2:06:01 |
【赤】 鬼 紅鉄坊[ これ程までに声を上げ身に触れても、目一つ開けず反応も無い千 暮らしの中健康的に変わった筈の肌は、また白くなってしまった。 取り戻してしまった記憶が、 目前で大切なものを喪う悲劇が三度目であることを理解させる。 戦慄く唇、震える身体。 かっと見開いた紅の目尻に水が溜まっていた。 喪いたくない、喪いたくない、……喪いたくない。 直ぐ其処にある終わりの前で、 尽くす手も見つからず、それでも諦められない鬼は ──やがて、気づきに至る。 ] (*19) 2021/07/02(Fri) 2:30:57 |
【赤】 鬼 紅鉄坊[ 血 山の獣の命を啜り得てきた、潤沢な 六尺の身体を動かせる程のそれが! 鬼は笑みを浮かべていた。 それは日常の中、千の隣で時折緩んだ表情とよく似たもの。 抱くのは村人への憎悪ではなく、愛した者を守れる喜び。 常軌を逸した思考に至っても、鬼は花嫁の愛した鬼のままでいる。 ] (*20) 2021/07/02(Fri) 2:31:15 |
【赤】 鬼 紅鉄坊待っていろ、千 [ 上向きに千を横たえ開いた大口は、無論彼に牙を剥きはしない。 持ち上げた自らの逞しい腕の、太く血管が流れる手首へ ──鋭い犬歯を突き立て、一気に噛み切った。 ] ぐ……っ [ 堪らず漏れる呻き声。 躊躇いの無い自傷行為は外敵に与えられるのとは違う痛みを齎す。 それでも、止まることは無い。 顎を持って口を開かせ、押し当てるように傷口を触れさせる。 その喉に鬼の血が流れ込んでゆく。 ] (*21) 2021/07/02(Fri) 2:31:33 |
【赤】 鬼 紅鉄坊生きろ、未だ死んではならない どうか目を開けてくれ……、私の元へ戻ってきてくれ [ 急激な失血とこの場に漂い続けている濃厚な血の芳香 この人間を喰らえと、足りぬものを補えと叫ぶ本能。 その一切を無視し抗いながら、 鬼はひたすらに血を注ぎ、呼び掛け続けた。 ]* (*22) 2021/07/02(Fri) 2:31:47 |
【赤】 鬼 紅鉄坊…………ああ、ああ、嗚呼 [ いつしか降りていた闇の中、全ての変化を捉えることは 視界からも余裕からも叶わなかったが 知性の光が一つ紅に灯る瞬間を、その目は間近で視た。 それは鬼から言葉を奪い取る程の光景。>>*27 あれ程苛み続けていた痛みと食欲が、今は全く感じられない。 ] お前は、助かったんだ 今はそれだけ分かればいい [先程までの姿を想えば、戸惑う千に記憶がないことは察せられる。 しかし今は多くの説明はせず、掌に齎される感触をただ受け入れた。 背にしていた壁に千を抱えたままで寄りかかり、 力を抜いて腰を落ち着かせ、それから。 ] (*31) 2021/07/02(Fri) 2:36:50 |
【秘】 鬼 紅鉄坊 → 吸血鬼 千愛している 全て捨てて、共に旅立とう ────二人で自由になろう [自分を取り戻した日、いつか伝えると決めた言葉を告げた。 予定より早くなったが、今こそその時。 奪われかけた命を、二度と喪わぬ為に。 ]** (-165) 2021/07/02(Fri) 2:37:14 |
【人】 紅鉄坊男が二人、何かを話している。 息を殺し足音を潜め近づき、様子を覗っているが その内容が聞き取れる位置に来ても、意味がよく分からない。 こんな寂れた資料館なんかに、強盗が入ったというのか。 どれ程建物が新しく見えても、金があるわけがないだろう。 大昔は山ばかりだったという、過疎化の進んだ田舎町だが 夜遅くだって、いくらでもコンビニやガソリンスタンドがあるのに。 自分から見て正面に開け放たれた窓、左右に展示物が置かれている 差し込む光により、それを眺める男達の輪郭が浮かび上がる。 一人は黒い短髪の大柄な男、青緑色の上着越しにも筋肉が分かる。 もう一人は脱色したのか白い髪の小柄な男で、やけに着込んでいた。 (106) 2021/07/02(Fri) 23:07:44 |
【人】 紅鉄坊侵入経路は明確だが、窓に鍵を忘れていたのだろうか。 今までそんなことは一度も無かったし、 警報装置が起動していないのも奇妙だ。 だが、凶器の類は見当たらない。 懐にあるとしても、こちらは直ぐに然るべき場所へ連絡が出来る。 何が目的かは未だ検討も付かないが、 その現代社会を舐めた行いをすぐ後悔することになるだろう。 踏み込み、彼らを手持ちのライトで照らしながら叫ぶように言った。 (107) 2021/07/02(Fri) 23:07:57 |
【人】 紅鉄坊驚いたように両者の身体が反応し、こちらへと振り返った。 そして、そして──……これはなんだ? 続ける言葉も思考も足も、何もかもが停止してしまう。 自分は休憩室の机に突っ伏して、居眠りでもしているのか? そう思ってしまう程、信じられないことだった。 (109) 2021/07/02(Fri) 23:08:22 |
【人】 異形 紅鉄坊男達が一瞬で、まるで普通の人と思えない姿に変わったなどと。 奇特なコスプレイヤーという言い訳すら出来ないじゃないか! 勇敢な警備員ぶろうとしていた筈が、腰を抜かして座り込む。 大柄な──より異形が強い方が何か弁明する言葉など、 耳にも入らないどころか、必死に距離を取ろうとしてしまう。 その時、小柄で白い方が動いた。 一歩、一歩。この状況など意に介さないような軽い足取り 目前まで近づいて、屈んでこちらを紅い片目が凝視した。 男達はどちらも片方しか目が開いていなくて、 紅色をしていることも同じらしい。 補い合うように左右対称のそれの意味を考えてしまったのは、 恐ろしさでついに後退ることも出来なくなった現実逃避なのか。 (111) 2021/07/02(Fri) 23:09:03 |
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