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【人】 枠のなか 卯波「ああ、夏祭りはやっぱり終わるから、 綺麗な思い出になるんだなあ」 幾つかの喧騒が遠くに行ってしまう。 それでもまだ花火は上がるし、 盆踊りの楽器の音は続いているけれど。 確かに、夢が終わりへと近づいている。 ここで撮った写真は、現実に持ち帰れないのかなあ、 なんて思ったりして。 (0) 2021/08/16(Mon) 22:30:52 |
【人】 枠のなか 卯波写真を一枚、一枚と選んでいく。 もし持ち帰れないのならせめて覚えていたくて。 そういえば晶兄に写真見せてもらってないな、 と今更思い出して、たははと笑う。 でもそれは、また会う日までとっておきたいかなと思う。 花火の下、四人で寂しさに揺れている写真、 海で晶兄と二人で飛び込んだ笑ってる写真、 集まったひとりひとりを撮っていった写真、 訪れてまず最初に撮った、田舎の風景写真。 これまでの数日の歩みが全部切り取られて、 お祭りに際して設置された机に並べられる。 「あーあ。これだけあったら、 コンクール受賞とか間違いなしなのに」 皮肉げに笑った。 慈姑婆ちゃんの癖がうつったみたいだ。 (4) 2021/08/17(Tue) 0:02:08 |
【独】 一人 卯波結局のところ、真正面からぶつかったり、 追いついた背中を押したりしているうちに、俺は誰の横にも並び立つことはなかった。 晶兄にはどうしても勝てなかった。 それに誰の一番にもなれなかった。 茜ちゃんの一番は晶兄で、 晶兄と瞬兄はお互い一番で、 ずっと、二番以下の一ノ瀬卯波。 四人でひとつなのに、 四角形の中にはいないんだ。 「だから、女の子らしくなんて、 願っちゃったんだろうなあ……」 時任の兄さんを思い出す。 夢の中でもあの人のように振る舞えたら、また何か違っていたのだろうか。 いや、結局のところ晶兄への嫉妬があった限り、何かが変わったわけじゃあるまい。 (-14) 2021/08/17(Tue) 10:04:21 |
【独】 一人 卯波一ノ瀬卯波がいなくても、 みんなはきっとうまくやっていける。 俺がいない間も、みんなは、 各々の人生を問題なく歩んでいける。 そんな自分の心の声に負けるのが癪だ。 誰かの一番になれなくったって、 俺がみんなを等しく一番に愛したらいい。 みんなの人生の一番綺麗な部分を、 切り取るのはいつだって俺にしたらいい。 “卯波は写真を撮るのが一番上手な子だった” それだけは、誰にも負けない、 確かで大切な事実なのだから。 晶兄との勝負だって、負ける気がしない。 (-15) 2021/08/17(Tue) 10:12:32 |
【独】 あなた達の写真家 卯波愛する友人たちが立ち止まるたびに、 押し寄せる波 ≪かれ/かのじょ≫ 例え呼ばれずとも、鬱陶しがられても、 夕焼け色の瀬 ≪かれ/かのじょ≫ 一ノ瀬卯波の夢はまだ形を得たばかりだ。 皆の人生の何処にでもついていって、 大切な時間の中に、一員として身を滑り込ませる。 茜色の空の下 、嵐の中、 傘を編む人へ 、波は漣漣とする。 それが、一ノ瀬卯波の思う、幸せだ。 (-16) 2021/08/17(Tue) 10:21:29 |
卯波は、皆の写真を撮った夢を、現実にする。 (a5) 2021/08/17(Tue) 10:27:25 |
卯波は、たった一人だけの。 (a6) 2021/08/17(Tue) 10:27:49 |
卯波は、あなた達の写真家だ。 (a7) 2021/08/17(Tue) 10:27:55 |
一人の、あなた達の写真家 卯波は、メモを貼った。 (a8) 2021/08/17(Tue) 10:38:45 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波「もう少し、 カッコつけて言えばいいのに」 いざ、境内に踏み入ってくるならば、 神社の枠の中にそれらを囲うならば、 卯波は、しっかりとその声に応える。 「俺……場違いだと思うんだけどなあ。 いつも遅れて後ろをついていったり、 急に先走ってどっかいっちゃったり。 四人組って枠組みに相応しくないよ。 それでも、俺の名前も呼ぶなんてさ。 情けのつもりなのかは知らないけど」 そうして踏み出し、わずかに微笑んで。 意味がない写真をバラバラに引き裂き、 わーっと、 風に乗せて 遠くに散らした。 (_1) 2021/08/17(Tue) 22:06:11 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波そう。全部意味のないものだ。 それでも撮ってしまったものだから、 こうして、解き放ってあげる。 もう一度、皆を写真に収める日のために、 今、やっと、夢から決別する。 いくつもの写真は、 季節外れの白いカケラに成り果てて。 「でも。やっと気づいてくれたんだ」 そっと、手を差し伸べる。 届く距離にはいないし、ただのポーズだけど。 何度も示してきたから、もう一度。 「手を貸してあげる。 俺だって、あちこち駆け回って、 みんなを探しにいくんだもの。 でも、これは競争ですよ。 俺は、晶兄より先に見つけて見せる」 (_2) 2021/08/17(Tue) 22:11:49 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波「会いにいってあげて。 ここでも。ここから帰っても。 どんなに時間をかけても、絶対」 「その行く末を撮るのは俺なんだから。 絶対、悲しい写真にはしないでください」 手を戻し、背中を向けて。 顔だけ振り向けば、何がおかしいのか、 にやにやとした笑顔を見せて、 「遅いよ、バカ」 と言い残し、走り去っていった。 (_3) 2021/08/17(Tue) 22:18:13 |
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