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【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ (-14) 2022/03/08(Tue) 17:43:59 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ『無理ですって』 『人前に出られる見た目じゃないですし』 『渡したいものって言われても、 僕もう触れないんですよ 代わりに行ってきてくれませんか』 『あと叫べば来るってどういうことですか』 いったい何がどうなってそうなったんだ。 返信。 息をしなくていいからこっちの方が楽かもしれない。 今のこの死に損ないにとっては。 (-15) 2022/03/08(Tue) 17:52:02 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ『声が届かないと、君はいかないでしょう』 『見た目ぐらいいじってください VRですよ、ここ』 死人に無茶をいう。 死人だと思っていないのかもしれないが。 『じゃあ声だけでも聞かせてあげたらどうですか 隠れながら、扉越しに あなたと話したいんだと思います』 (-17) 2022/03/08(Tue) 18:00:02 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ『ああ言えばこう言う』 『呼ばれてもないのに行く理由 ないですし』 自分から会いに行く理由はない。 一部を除いて、この場所でやり残した事の無い死人にとっては。 裏を返せば、呼ばれたらまあ、そうなんだけど。 『しょうがないから 応対はしますけど きみのせいで待ちぼうけはかわいそうですから でも』 『体よく追い払おうとしてません?僕のこと』 『なんてね』 (-20) 2022/03/08(Tue) 18:16:42 |
カミクズは、応対するとは言ったけど、その場を動くつもりはない。 (a15) 2022/03/08(Tue) 18:20:00 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユスメガホンでのお呼び出しの後、何件かのメッセージ。 『すみません』 差出人は、普通であれば有り得ないはずの。 『ちょっと今 人前に出られる状態じゃなくて 渡したいもの、も多分受け取れそうにないんですけど』 呼べば来る、という話になった時点で 死に損なっている事は薄々察されているんだろうな、と思って。 その辺りは説明を省くことにした。 『あと、なんか あの人は行きたくないみたいです』 (-21) 2022/03/08(Tue) 18:30:11 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズなんか呼ばれてるんですよ各地で、なんて。 適当な言い訳をあたまにうかべながら、 なぜ二人で会いたくなかったのかを考えた。 カミクズに用があったユスの話に興味がなかった。 ……それだけ、だよな? 『追い払うって』 『何かわからないけれど』 俺は、君の命と身体を手放した。 『君はどこにいても俺のそばにいるよ』 それでも俺は、君を手に入れた。 ずっと、ずっと。 (-22) 2022/03/08(Tue) 18:35:14 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ『目を逸らそうとしていませんか』 何からかはわからないけれど、何となくそんなふうに思った。 どれだけ傍に居たって認識されていなければ無いのと同じ。 どれだけ言葉を投げ掛けたって届かなければ無いのと同じ。 きみが埋めるだとか火葬だとか、そんな事を言った時もそう。 『思えばあの時もただそれがいやだった 僕がきみにとって見たくないものになったようで』 目の前の人が、こちらを見ているのに見ていないような孤独感。 『それでもずっと付き纏うから』 それがどんな形であっても。 『きみの言う通り 目蓋を閉じても、耳を塞いでも、そこに居ますからね』 もう気付いてしまった。 記憶の片隅で、綺麗なまま一人埃を被っていたくはないのだと。 自分がそう思っている事に。 (-23) 2022/03/08(Tue) 19:27:25 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ 『何故本当に応じたんですか?』 あんまりな言い草である。とはいえ傷付けるための発言ではなく、死んだと思っている者から実際に返事が来てしまったが故の驚きから出たものだった。端的に言えば混乱している。 『人前に出られる状態じゃない、受け取れそうにない』 『成る程』 メッセージを送ってからマップを確認する。 やはり、参加者を示すマーカーの数は変わっていない。ヒメノと、誰かが欠けたまま。 きっとそういうこともあるのだろうと、深く考えないことにした。ここは限りなく本物に近くて、けれど決して全てが本物ではない世界だから。電子空間が齎した夢のようなものなのだろう。 『フカワさん、俺と連絡した時もW俺のことは気にせずWなんて言ってましたね。誰か殺したからでしょうか。カミクズさんとか』 感慨もなく物的証拠や状況から安直に出した推測を述べる。きっと、それだけでは無いだろうけど。 『お渡ししたかったのは貴方の帽子です。水族館に残されていましたので。 不要であるならばこちらで処分しておきます。名残、綺麗に片付けておきますよ』 (-27) 2022/03/09(Wed) 16:24:54 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス『え』 『ま』 『まちぼうけはかわいそうだから』 あれ……?これ、返事しない方がよかった……? そんな事を思ってももう遅いのだ。 実際たったそれだけの理由で死人から返事が来るなんて そうそうあってたまるかという話なわけで。 それだけの理由、ではないのだけど。 『ええと』 『お気遣い、ありがとうございます。 でも、自分にはもう必要のないものなので 適当に処分してしまうか、それか』 タイムスタンプに若干の間。可視化された少しの逡巡。 でも、やっぱりあなたは気にしないんだろうな、と思って。 『部屋に置いておいてください』 清掃員の部屋は、今も散らかった部屋のまま。 自分の名残を残すのは、あの場所だけでいいな。 (-35) 2022/03/09(Wed) 19:28:22 |
【独】 の名残 カミクズ──鍵の掛かっていない部屋。 ベッドの上には脱ぎ散らかした衣類が散らばって、 テーブルの上にはいい加減に纏められた郵便物、 それから、下手でも上手くもないような一枚の絵。 床だけは一見何もないようで、 よく見れば隅にはごちゃごちゃとケーブル類が纏められている。 ごみはきちんと処分されているけれど、 とにかくあちこちものが出しっぱなし。 不衛生でこそないけれど、ただただ雑然としている。 そんな、控えめに言っても人を呼べないような部屋。 曲がりなりにも清掃員、のイメージにはそぐわない荒れた部屋。 上葛の自宅である、安アパートの一室が再現された部屋。 それは今もなおそのままだった。 名残を残さないように、迷惑を掛けないように。 現実での自宅は、もう綺麗に片付けてしまったから。 最初から、あの場所にはもう帰るつもりが無かったから。 それでもせめて、ここでくらいはこのままにしたかった。 この場所なら、時が来れば勝手に消えてしまうからな。 (-34) 2022/03/09(Wed) 19:29:42 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『』 入力中。一旦端末から目を離して眉間を数度揉んだ。 青年は死者に特別な感情を持たない。何も生み出さない肉塊でしかないと、目の前に横たわる事実以外何も見出さない。 死者が思い出の中で生きることも、臓器となって他人の体の中で生きることも、酷く嫌悪し否定する数少ない事柄だった。 ……筈なんですけどお……目の前の死者、ばりばり言葉返すじゃん……生み出しまくってるじゃん、思い出になり得るこの会話とか……。 『……お気遣いありがとうございます。 ではこの帽子は部屋に置いておきますね』 その返信で貴方の存在が色濃く染み付いた個室という名残を綺麗に片付けなくていいのだと理解する。 それならこの置いてけぼりにされた名残もそちらへ戻していいだろう、と青年は彼の部屋を目指し始めた。 ▼ (-61) 2022/03/11(Fri) 5:15:42 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『ところでカミクズさん』 向かいながら端末に入力を続ける。 『まさか本当に俺に言葉を返す為だけに起き上がったわけではありませんよね』 フカワの言葉を振り返る。 『そもそも、返事をしてもらえるかもしれないと教えてくれたのはフカワさんだ。 フカワさんが既に知っているということは、彼には死んでもなお起き上がって会話をしたということでしょうか』 W隣につかれていますWという言葉を思い出した。 『……死者が生き返るなどのオカルト話ではたいてい強い未練や怨念がこの世に死者を留めるアンカーとなっている。 ……貴方はどうですか?フカワさんに関して、或いは他のものにたいして何か未練でも?』 『帽子のあった現場に争った形跡がなかったところを見るに、死を受け入れたように見えます。 そもそもまず貴方はまず自ら死のうともしていた。死ぬのは怖いと思いこそすれ、やめようとしなかった』 『そんな貴方が、人前に出られない姿になってまで起きているのは』 カリ、とボールペンに力が込められる。 『少しの興味と驚きがあります。 カミクズさん、名残は凄く大切にしているように見えますが』 『自分だとか、人の輪に入ろうとすることだとか、そういうのはあまり大切にしていないように見えましたから』 (-62) 2022/03/11(Fri) 5:29:19 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス──死人に口なし。 確かに死者は何も語らない。何かを新たに生み出す事はしない。 生者がそれに対して感じるのはどこまでも生者の感傷でしかない。 けれどそれは果たしてまったく無意味なものなのだろうか? 生者はただ死者の死を認め、弔い、送り出す事だけをすべきか? 葬儀を終えた瞬間、故人の存在性はそこで途切れるのか? であれば墓石とは、何のために存在する? 『生き返る、っていうのは少し 違うのかも』 『これは多分、夢の続き、みたいなもので』 『目が覚めたら 現実へ帰ったら、死者に戻るんです』 『なんとなく、そう思ってるだけですけどね』 死んだ人間から言葉が返るなんてパラダイムシフト。 他人の名残に、死者の痕跡に、過ぎ去っていったものたちに。 決して必要以上の感傷を抱かないあなたなら。 非科学的な、或いはVRのバグとして処理してくれるだろうか。 なんて、話半分に聞いてくれるかな、今はそんな気持ち。 死んでいなかった、なんてことはきっとないのだと思う。 そんな奇跡は存在しない。そんな希望は信じていない。 けれどメッセージログには確かに残されている、死者の言葉。 どこまでも曖昧な死と生の狭間、そんな夢の中よりのもの。 (-63) 2022/03/11(Fri) 7:19:52 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス『そんな少しの夢の続きを選んだのは』 無意味な引き延ばしは毒だと既に知っている。 ただ死への恐怖から惰性で生き続けた結果、後悔をした。 そんな失敗を経てなお自分がそれを選んだのは。 『あの人が、ずっと一人で泣いていたから』 誰が、とは言わずとも、それが誰かは文脈から明白で。 たったそれだけの、それでも十分過ぎる理由。 『あそこで死ぬ事は、事実受け入れていたんです それに 死んだらそこで終わり。死んだ人が遺すのは、名残だけ。 それもここでは本来片付ける必要なんてありません。 だから僕のことなんか放っておいて、 すぐにでも、誰かと、どこへなりと行けばよかったのに』 泣くほど悲しいなら、寂しいなら、辛いなら。 誰かの傍で泣けばいいのに。誰か一緒に泣いてくれるだろうに。 また意地を張っていたのか、そうでないかはわからないけど。 『ずっとすぐ近くで泣かれたら、寝ていられないでしょう』 人からすれば、そんな理由で、と思われてしまいそうな。 どこまでも、ただそれだけの理由が全てだった。 (-64) 2022/03/11(Fri) 7:20:50 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス『自分でも おかしな話だと思うんですけどね』 一度だけ、乾いて濁った呼吸音。 溜息とも、不意に零れた笑みともつかない音。 きっと誰も聞かない、曖昧な死者のノイズ。 『死んでいると、 生きている人には何もしてあげられない もう手が届かないんだな ってそんなわかりきっていたことが、死んで初めて実感になって』 『それが すごくいやだったんです』 だから一緒に死にたいのだとわかってしまった。 『あの人が僕の手の届かない所に行くの、いやでした 僕の手の届かない所で泣くのも、悲しい思いをするのも 一人で居るのも、思ったよりも我慢ならないことでした』 多分、これはよくない感情なのだと思う。 死者から生者に向けるには、あまりにも。 『死んでも傍に居るなんて綺麗事じゃどうにもならなかった。 そんな当たり前のことに、死んで初めて気付いて 今更諦めがたいような未練ができるなんて』 『本当に、おかしな話ですよね』 それでももう、良いも悪いもないじゃないか。 (-65) 2022/03/11(Fri) 7:23:04 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ 電子が見せる仮初の夢。全てが水に溶けて混じりゆくまでの、泡のようなほんのわずかなモラトリアム。 墓石は死者の為に在るわけじゃない。生者の為のもの。 それは、遺された者の整理をつけるためのもの。それは、死者を、死者の残したものを、忘却の彼方に流されないようにするもの。それは──。 『夢の続き。 ……ふむ。それならば、受け入れられます』 夢自体曖昧なものなんて決して何か強く思うところはないけれど。 人間なんて不完全な生き物がはっきりと断定できる物事など、大して多くないのだ。 柔らかな空白が生み出す死者の痕跡を青年は静かに拾い上げていく。紛い物の世界の中でも感情は本物であると知っているから。 ▼ (-72) 2022/03/11(Fri) 16:45:36 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『そうでしたか』 『いいと思います。カミクズさんがそうしたいのなら』 『月並みの言葉ですが、したいことをするのが一番だと思います』 人からすれば、そんな理由で、と思われてしまいそうなもの。 けれどそれでいいのだと青年は思う。あらゆるものの価値は人によってがらりと変わるものだから。 ただ、少し考えて言葉を続ける。 『自分を放っておいてどこかに行けと言いますが』 『貴方を強く想っているから、そう出来なかったんじゃないですか?』 本当のところはどうか分からないけれど。 『だから、何処にも行けず貴方の傍らで泣いていたんじゃないでしょうか。 俺は貴方のこともWあの人Wのことも、何も知らないので安直な予想しか出来ませんが』 ▼ (-73) 2022/03/11(Fri) 16:45:57 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『…………成る程』 『成る程』 噛み締めるような反応。次のメッセージが送信されるまでに少し時間がかかった。自分の中にある考えをまとめるのに手間取ったからだ。 『俺は今までずっと心中する気持ち、理解できませんでした。 死ねばそこで終わりだと思ったから。死んだら何もない。自分には関係のないことだと』 何もなく、何も感じないのならば、生き続けることになった相手が何をしようと相手の勝手ではないかと。 『……自分のものが自分の手の届かないところで、自分の知らないところで珍しい景色を晒し続けるのは確かに嫌だ』 人間なんて不完全な生き物がはっきりと断定できる物事など、大して多くない。 だから元の世界で死んだ時、今の清掃員のように死者のまま現世に留まる可能性だって否定しきれないのだ。 そんなことになった時を考えると、自分が何より大切にしている者を置いて行った時を考えると…… ……ああ、確かに嫌だな。 あいつの死だって、俺のものにしたい。 ▼ (-74) 2022/03/11(Fri) 16:46:26 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『……ありがとうございます、カミクズさん』 つらつらとお礼の言葉を入力する。 『貴方には何度もお世話になっていますね。頭が上がりません』 『……こう言うのもあれですが』 生前見た姿を脳裏に呼び出しながら、比較する。 『今のカミクズさんの方が、素直に自分のことを話せているようで、晒せているようで』 曖昧な笑み。誤魔化すような、弱々しい笑み。 取り繕うのが決して上手くないくせに、辞められない物病みの仮面。 『俺はそちらの方が、気に入っています』 それよりも、このメッセージだけで綴られた貴方のほうが、 人前に出られない姿になってしまった貴方のほうが、 余程、 『 人らしくて 、ね』 (-75) 2022/03/11(Fri) 16:49:39 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズVR空間からもう時期出なければいけない時間。 奏でられる音楽に耳を傾けて目を閉じたり。 未来を望む会話を思い出したり、ああ、そういえば、と。 埋めも、燃やせもしなかったその死んだヒトを見やる。 居ることを疑っておらず、居ることを信用しきっていない君を。 「……掃守さん。 45メートル以上の高さがある建物 って。どこが思い浮かびますか」 (-80) 2022/03/11(Fri) 19:17:35 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス墓石は、弔いは生者の為のもの。 過ぎ去っていったものが確かに"そこにいた"事を証明する為の碑。 生者が時折遠い情景を懐かしむ為のきっかけとなり得るもの。 時に踏み躙られはすれど、その起源は決して邪なものではなく。 それでも、忘れたいのなら、忘れればいいのだと思う。 生者が目を瞑ってしまえば、死者の存在は存外容易く曖昧になる。 自らの手に余る重荷をその場へ置いていく自由は、 きっと誰にだってあるのだから。 ただ、置いていかないで、と叫ぶ自由もあるというだけで。 『死んでからしたいことができるなんて』 自分がそんな事をしたいだなんて思ってもみなかった。 この場所に来た時、自分にとってやりたい事は一つもなかった。 強いて言うのであれば理想的な形で死ぬ事くらいのものだった。 だというのに、今は蛇足にも等しい時間を自ら望んで繋いでいる。 きれいごとを求める人々にとって、不都合でしかない蛇足を。 『やっぱりおかしな話ですよ』 気付かなければ、"善い人"のまま死ねたんだろうな。 独善と自己満足に満ちた終わりの中、誰にも迷惑を掛けずに死ぬ。 そんなお利口な結末を描けていたのだろうな。 今はそれが、自分にとって 満足の行くものだなんて到底思えやしないけど。 (-93) 2022/03/11(Fri) 21:20:27 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス『死んだらそこで終わり、でも』 死んだらそこで終わり。死んだ人が遺すのは、名残だけ。 それに対して生者が抱くものはどこまでも生者の感傷でしかなく。 『死んだ人の時間は、そこで止まってしまうけれど』 死者ができる事は、思い出として傍らに寄り添う事だけ。 『生きている人は その先を歩き続けるんですよね』 振り返ればいつだってそこに居るけれど、それだけ。 『死んだ人の手の届かない所で、ずっと』 手を伸ばそうとしたって、どちらも一方的にしかならない。 『それでどこにも行けなくなって、一人で泣くくらいなら』 『一緒に来てくれればよかったのに、なんて思うのは 身勝手な結果論だって、わかってるんですけどね』 そんな、すぐ傍に居るのに触れられないあの距離が。 自分は、いやで仕方なかったんだろうな。 (-94) 2022/03/11(Fri) 21:21:00 |
【秘】 の名残 カミクズ → 規律 ユス『僕は』 『ここで人らしくいるつもりなんて、ありませんでした』 どうせ人らしく死ぬ事なんて許されないのだから。 自分という個人の人間性、人生を垣間見せる事に意味なんて無い。 だからこれら全ては本来口を噤み秘すべき事で、それでも。 『でも それできみ達が知らずに後悔をする事が減るなら』 『これでよかった、のかな』 『ねえ、ユスさん』 『この場所は、ここで誰かと過ごした時間は』 『きみにとって少しでも、納得とか、満足の行くものでしたか』 いつか98uの海できみに投げ掛けた言葉を、ふと思い出した。 一人では何の感慨もなくとも、誰かと一緒なら少しは違うはず。 そんな実にささやかな希望的観測。 願わくば、それが単なる願望でなければいいな、と思うし これから先の時間もそうであって欲しいな、と思う。 きっときみにとって限りなく他人に等しい人間からの、 実に一方的で無責任な願い、ではあるのだけど。 (-95) 2022/03/11(Fri) 21:21:44 |
【独】 の名残 カミクズ思えば最初に一緒に死のうと言ったのは何故だっただろう。 ただ一人で死ぬのは寂しかったのかもしれない。 一人でもいいやと諦めてはいたけれど、できたら二人の方が良かったのかも。 或いはただ単純に別々に死ぬのは二度手間と感じただけ、そんな事もある? 今となってはよくわからない事だった。 その次は、確か。 きみを置いていきたくないと思って、これは今とそう変わらない。 一人で苦しんで欲しくはなかった。それから、少しの痛み分け。 互いに互いを失った苦しみを知らないままに死ぬ、そんな対等性。 あの時は多分、そうだ、死というものを分かち合いたかったんだな。 それで、それから、今は。 ただ、きみが自分の手の届かない所に行ってしまうのがいやだった。 自分の手の届かない所で、悲しい思いをして、寂しい思いをして、 辛い思いをして、自分以外の何かに傷付けられていくのが。 ただただひたすらに、我慢ならないな、と思った。 そんな我儘で身勝手でどうしようもない理由だ。 それが間違っているか否か、その分類や定義に大きな意味は無い。 もはや正しさなんかで救われやしないのだから。 出会うのが遅すぎて、出会ったのがこんな場所だった時点で、もう。 きっと僕達の間で重要なのは、互いに満足がいくかどうかだけ。 ねえ、こうも愚かである事は、僕達に責任があるのですか? 誰か教えられるなら教えてください。 ああ、でも、できることなら、もっと早くに教えて欲しかったよ。 (-98) 2022/03/11(Fri) 22:10:29 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「────、……」 ただ静かで安穏としていて、特有の物寂しさに満ちた空気の中。 乾いて、濁った音。 いと深き眠りを拒んだ、夢見る死者が言葉を紡ぐ為の一呼吸。 「……45メートル…マンション…? ああえっと、10階建て以上の…15階以上?…」 唐突な問い掛けに、寝起きじみてもたくさと答えを返すのは 今や存在を疑う事は難しく、けれど居るとも証明できないもの。 微睡みの中にしか確たる形を保てない、夢の名残のようなもの。 「…もういくんですか?」 自らも問いを一つ投げ返し、死者は緩慢に身体を起こした。 (-99) 2022/03/11(Fri) 22:11:10 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「俺と同じ答え出しますね。 規定通りの建築であればそうらしいです」 「……、マンションの屋上でいいか」 独り言を呟きながら目を閉じて思い浮かべる。 正しく、精密に、部屋のなかは空っぽのまま。 中には誰も存在していない、空虚な建物。 それが目の前にゆっくり建設されていく。 「飽きまし……あー……飽きた? 勝手に待っていたから、謝らないけど。 話しかけてあげなかったのはごめん」 敬語は、他人にはそうするべきと学んだから。 親にも、家族にも、みんなこうで。 ただ自分一人のときは、"仲の好い人"の前では、 崩そうと意識をしようとしていた。 「掃守さんは、俺がこのままログアウトするのを見送ってくれる?」 (-103) 2022/03/11(Fri) 22:49:20 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワきっとこれは、住居としての役目は果たさないのだろうな、と。 がらんどうの建物を、一度見上げて。 「ひどい人」 それから、あなたの方を見て笑った。 物憂げで、陰鬱で、淋しげで、でもそれだけではないような。 「僕がいやだって言っても、きみがログアウトすれば勝ち逃げ。 わかってて言ってるでしょ」 複雑な笑みで、複雑な声色で、でも気心知れた仲のように。 わかっていなかったら、それはなんか、もっとひどいな。 なんとなくそんなふうに思う。 「一人勝ちなんてされたら、僕はきっとがっかりするよ」 「きみがいつか、僕が勝手に死んだら悲しくなるって そう言ったのと、多分だいたい同じ感じの気持ちなのかも」 まったく同一なんて思ってはいないからそんな言い方をする。 自分の気持ちは自分の気持ちで、きみの気持ちはきみの気持ちだ。 本人以外にできるのは、それを最大限汲み取ろうとする努力だけ。 「待っていたのも、きみと一緒に死にたいって言ったのも。 僕が勝手に期待していただけだから、いいけど。 きみが悪いわけじゃないってわかってるけど、でも」 「それでもやっぱり、僕はがっかりするんだよな」 (-105) 2022/03/11(Fri) 23:54:21 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「うん、だから言うよ、身勝手な我儘でも」 不意に、すとん、と重たい笑みは抜け落ちて。 「一人で救われるなんて、羨ましい」 きみにいつか言われた言葉。 そっくりそのままの、意趣返し。 「やめてくれないかな、そういうの」 あるかもしれない未来へと手を引いて行くような。 今よりほんの少しでも明るい明日を夢見させるような。 そんな都合の良い言葉をくれる生者達とは対極の存在。 同じ夢ならば、覚めない夢だっていいでしょう。 「やっとわかったところなんだよ。 僕はただ、きみが自分の手の届かない所へいくのが嫌だった。 僕の手の届かない所で、僕にはどうする事もできないものに これ以上きみが傷付けられるのは我慢ならなかった。 優しくない世界にこれ以上きみをくれてやるのがいやだった。 それは物質的なものじゃなくて、謂わば精神的な意味で」 「だからもう、ここで終わりにしよう」 「一緒に死のう、邦幸さん。 誰の手も届かない所で、今度こそ、一緒に。」 誰にも頁が捲られないなら、幸福にも不幸にもならないでしょう。 (-106) 2022/03/11(Fri) 23:56:35 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「はい、わかってて、言いました」 似つかわしくない笑みを浮かべて建物へと入っていく。 影は一つで、足音も一つ。 少し高級なイメージをしたエレベーターのボタンを押して、 外の景色を眺めながら上がっていく。 「がっかり、か。そっか。 同じ気持ちになってくれた、変な気分だな。 俺は、同じ気持ちになってくれる人……欲しく、なかったし」 「でも今は、……あの時の、閉じ込めたくなった気持ち。 少しでもわかってくれたのかなって、感じて。] 嬉しく、なってる」 「幻滅されてもいい、って思ってる。 こんな口説き文句ありますか……? 覚めない夢をみようだなんて」 (-109) 2022/03/12(Sat) 1:39:47 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ傍 に居るじゃないですか。君は。一緒に居るって言いましたよね。 信じていますよ、信じています。 ――一緒に居たかった? 君が 欲しかった。 君の 命が 欲しかった。君と、 「掃守さん…………」 友情でもない、恋情でもない、家族愛でもない、 他人に言われた、 "仲良く見えた" 、それを本物にしたかった。 全て後になって、自分が何をしたかったのか気付いて。 「俺もやっとわかった。自分のやりたいことが 自分のやりたいことじゃなかったって」 殺したかった気持ち と、傍に居たかった気持ち が溢れて、どうしようもなくなってしまった。 ――その上もう君への気持ち以外でも自分は埋められている。 (-110) 2022/03/12(Sat) 1:42:48 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「それでもやってしまったことを、後悔したくないです。 君の事を好きな気持ちも、君を殺したい気持ちも本物でした」 「君が、もう誰にも届かない場所に居るのが、嬉しいです」 「君が、隣に居ないのは寂しいです」 「幸か不幸か、は、……思うところがあるので、後にするとして」 「今君に手を伸ばそうとしていることが、感じたことが」 「これが、一緒になりたいってこと、だと、思う?」 「それを"理解してくれる"なら、 之からこの物語を一緒に終わりにしに行きましょう」 (-111) 2022/03/12(Sat) 1:50:31 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「意地悪」 抗議の声と共に浮かべた笑みは自然なものだった。 死者は影を落とさない。死者の歩みは響かない。 けれど確かに傍に居て、それでも傍に居る事を証明できない。 ただ、生者にとって都合の良い夢にしては、随分と我儘なもの。 それが今ここにある夢の続きだった。 「…僕も、今はあの時殺しておけばよかったと思ってる。 多分、きみに触れられたらきみと似た事をしていたとも思う。 生かそうとしてるわけじゃないから、同じではないけど… 幻滅されても、ひどいわがままでも、そうしたいような事」 半ば独り言のように言葉を返しながら。 ぼんやりと灯るエレベーターのランプを見上げた。 最上階に辿り着いた時にはきっと、結末は決まっている。 そんな漠然とした予感があった。 「きみに死んで欲しくないのに、きみを殺したくて。 少しでも長く一緒に居たいのに、早く終わらせたくて。 きみと生きていたいのに、きみと死にたくて仕方ない」 二律背反、自己矛盾でいよいよおかしくなりそうだ。 これって死んだ事でおかしくなってしまったのかな。 或いは、案外本当は、自分ってそんな人間だったのかも。 自分でもわからないのだから、何れも定かではないのだけど。 (-115) 2022/03/12(Sat) 4:17:22 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「僕はあの時、手遅れなんかじゃないときみに言って」 滅多に人の言葉を否定しない自分が、否定を叩き付けた時の事。 「今も確かに何もかもが手遅れではなかったんだと思うんだ」 それがたとえ願望じみたものであったとしても、 ただ願望ばかりというわけでもないのだとは、思っていて。 「でも多分、今にして思えば。 手遅れではなくとも、そこから先がなかったんだろな」 「いつからかはわからないけど、なかったんだ、僕達には」 欲しかったものは拾っても、踏み出す先がなかった。 互いにそれぞれの理由で身動きが取れなくなってしまった。 優しくない世界に引かれた、優しさで舗装された道の先。 行き着いた先、どこまでも優しく残酷な袋小路がこの場所だった。 閉塞感とぬるま湯に満ちた水槽のようだった。 「だから、二人で終わらせに行こう。 また失敗するかもしれないし、それに もしかしたらすごく後悔したくなるかもしれないけど、でも。」 茫とランプを見上げていた視線を隣のきみへと戻して。 触れられずとも手を重ねて、 心よりの笑顔と共に未だ名付けられない想いを贈ろう。 「それでも、そうだとしても僕は、きみと一緒に居たいよ」 (-116) 2022/03/12(Sat) 4:20:37 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「意地悪、……あれ。 俺はなんで、こんなに言い訳をして」 ふ、と、言葉がリフレインして。 よろけるように一歩二歩と、空に近づく景色へと近づいていく。 「俺は、だって、君のことが」 好きならば、じゃあ、つまり? 幸せに、してあげたかったんじゃないのか。 「君が、望んだから俺は一緒に」 彼の幸せを聞けばよかったのに、諦めたのは自分。 だから、もう、これは、全部俺のせいで。 「……なのに、なんで、君にまだ聞いて」 なんで許してくれる? なんで、一緒にまだいてくれるの。 俺と生きて、死んでほしいほど好きだから? どうして、そんなこと、何を言われても理解できなくて。 「……、あ、れ」 自己満足の近道の中、一番欲しかった人。 それなのに、それを手放してたうえで、 その命に首輪をつけたのは自分だった。 だから、こんなに。 (-136) 2022/03/12(Sat) 18:03:46 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ「、」 既に壊れた心は戻らない。 「……たい、な」 同じ気持ちななどなれなくとも、 もう、瞳の色は同じだと思うから。 「……いたい、 たいよ」 もう、 連れていくね 「連れ去ってよ、掃守さん」 エレベーターは、何故か屋上へと直通でたどり着く。 こんなときもご都合主義で、俺たちは非現実を夢を見ている。 「失敗や後悔の先にも、君は傍に居るんだよな。 ずっと。居るんだ、ここに、そう。だから」 試すような真似をしてしまいました。 君がどれ程俺の事をみてくれているのか、好いてくれているのか。 それが聞きたくて、俺は、この問いをもうしゃべるわけもない死人に投げ掛けていたんでしょう。 殺してよかったんだ、俺達は救われている。 死ぬことが正しくて、それが求められた停滞になる。 これが良いことじゃないですか、って。 (-138) 2022/03/12(Sat) 18:23:23 |
【秘】 不運 フカワ → の名残 カミクズ邪魔な障害物を消して、柵も取っ払って。 縁まで来たところでようやく君と目があった。 何度か瞬きをしてから、どうしようもなく涙がこぼれそうになって、触れることのない手を伸ばした。 「君を背負うことから逃げていて、ごめん。 一緒にいようか。これからもずっと。 死んでも、離しません。 何処かにいかせません、君は俺のものです。 そして、……俺も。 ……運が良ければ、いつまでも変わらずに。 君のものに、なるんじゃあないですか」 なんとも、情けない言い方をするのは。 自分はとても不運だと知ってしまっているから。 そんな、死んだあとの君がどこにいくかすら、無駄なことを気にし始めてしまう前に。 深く、深呼吸をした。 (-139) 2022/03/12(Sat) 18:35:22 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『そうですね。おかしな話だ』 自分の知る限りでは、脳や心臓が動かなくなれば人なんてそこで物語の幕が下りるものだから。その先の蛇足なんて誰にも紡げないものであると思っていたから。 『でも、それでもいいと思います』 『カミクズさんが後悔しないのなら』 『ここにはおかしいからやめろなんて、意思を取り上げ押しつぶしてくるような法も人もありませんから』 死者にとっての都合のいい話があってもいいじゃないか。どうせ全てが水泡へ変わっていく夢なのだとしたら。 誰かだって言っていたでしょう? 『W最後に楽しかったなって思って死ねるなら、 それは幸せな事ですからW』 『消えてなくなり本当に死を迎えるまで、それを追い求めてもいいんじゃないでしょうか』 ▼ (-142) 2022/03/12(Sat) 19:25:41 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ 貴方の本心を黙って聞いていた。死んでから自覚した思いを拾い上げていた。 名残が生者に出来ることなど、ほんのささやかなものでしかなくて。手を伸ばしてもすり抜けてしまう。 そんな光景を思い浮かべて、苦い味が胸の中に広がった。 『遺される側は辛いとは時折聞きますけど』 『 その場 に遺される死者も、辛いのでしょうね』▼ (-143) 2022/03/12(Sat) 19:26:01 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『後悔は特にしませんが』 馬鹿正直に前置きを述べた。この青年はもう天秤が一つの存在以外に傾くことなんてないから。躊躇いなく身も蓋もないことを述べてしまう。 『貴方とまた話が聞けてよかったなと思います。俺にとって有意義な時間でした。 もう少し話をじっくり聞きたかったとさえ考えるほどに』 今後の活動の為に聞いた話だけではなくて。 いつも曖昧に笑ってひた隠しにしていた貴方の本心を聞いているこの光景が見れたことも、青年にとっては歓迎すべき利であったのだ。 ▼ (-145) 2022/03/12(Sat) 19:26:21 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズWこの場所は、ここで誰かと過ごした時間はW Wきみにとって少しでも、納得とか、満足の行くものでしたかW 『』 入力中。けれど、それも一瞬のこと。 『いいえ』 『と答えたら、貴方はどうしますか? ……半分はいで、半分いいえと答えるべきでしょうか。』 『俺は最初、命を返しに来たんです。 俺は臓器移植によって助かって、今こうして生き続けることが出来たから。 周りからは救われた命を無駄にするなと言われたから、惰性で生きて批難されるくらいなら提供者として死んで無駄なく命を使おうと思った。 貴方の次に、立候補するつもりでした』 『でも生きる理由そのものに出会いました。 そのせいで俺は欲が出るようになりました。 人と過ごす時間がもっと欲しいと思うようになりました。 足りない。全然足りない。 生き続けるのであれば、この狭い箱庭のちっぽけな時間だけじゃ満足できない』 勢いのままに、ペンを走らせて入力した。力が必要以上に込められる。 『……そう、思うようになりましたよ。 自分が何かをこんなにも強く欲するなんて、思っても見なかった。』 ▼ (-147) 2022/03/12(Sat) 19:29:15 |
【秘】 規律 ユス → の名残 カミクズ『生きる理由となった者と過ごす時間以外についても。 考えさせられることが多かった。何も思わない、なんて時間は一つもなかった。あればあるだけ、欲しいとずっと満足しないままかもしれません』 『当然、貴方との時間も』 しっかりと、念を押すように答えた。 貴方がどう考えようと関係ない。 青年にとって、例外なく貴方との時間にも思うことが沢山あった。それだけだ。 (-148) 2022/03/12(Sat) 19:31:23 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ「一つだけ、曲解しないで欲しいのは」 一度重ねた手を引くように差し伸べたまま、 珍しくきみの先を行って、足音もなく屋上へと踏み出して。 澄んだ空気の中、冷たい風が一つ吹き抜けても、 死者の乾いた血に塗れた髪が舞う事はなかった。 「それは全部、僕がそうしたいから勝手にしてるって事」 まっくらな瞳は、今も変わらないままで、でも。 抱え込んだ暗闇は、きっと最初よりずっと重く澱んでいて。 ふと空を見上げて、果たして今日は死ぬには良い日なんだろうか。 そんな益体もない考えを抱いた。 「僕は多分それって、きみもそうなんじゃないかと思ってて」 「死人に口なし、死んだら終わり、それはそう。 生きてる人にわかるのは、今ここにある僕の事だけ 死んだ後の僕の事なんて生きてる人にはわからない ただ、今ここにある夢の続きの終わりが少し変わるだけ」 「だからこれが僕の救いになるだとか、 或いは、きみの救いになるだとか、それが良いか悪いかとか。 そんなふうに思うのは、きっとそれこそが逃げなんだろうな」 「だから── もういいよ。 死ぬなら死にたいってだけの理由で死のう。 あれこれ理由を付けて正当化するのも、もう終わりにしよう」 (-163) 2022/03/13(Sun) 0:23:39 |
【秘】 の名残 カミクズ → 不運 フカワ滔々と穏やかに言葉で最期を綴りながら、 夢のない夢の縁へ、ゆるりと足を進めていく。 足取りは迷いのないものだった。 「今の僕は心から笑えてるんだと思う、それは本当の事。 でも、あの時置いていかれたくないと思って泣いたのも 触れられなくたって、涙も嘘じゃない、本当の事。 きみに誕生日を祝ってもらえて嬉しかった事も、 きみに殺されるなら、それでもいいと思えた事も。 きみと生きていたかったのに、きみの死を願っているのも」 「また失敗しても、後悔したくても後悔したくない事になっても。 それでも一緒に居たいと思うのも、本当の事」 「それくらいきみの事が好きで、大好きで きみじゃないと嫌なのも、本当の事」 「きみにずっと僕のものになって欲しいのも本当で、」 「でも、ここできみと死にたいのは、 ただここできみと死にたいからだ」 そうして今際の縁へと辿り着いて、振り向いた。 そこにあったのは、多分。 きみへの重たい感情だけを残して、全てを投げ出したような。 行き着いてしまった先の、けれど晴れ晴れとした笑みだった。 (-164) 2022/03/13(Sun) 0:24:46 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 不運 フカワ「ずっと考えてたんだ。」 この行き止まりで語るべき事と言えば、あとはそう。 「僕はあの時きみに、 わかりやすい言葉で言うなら、きみの事が好きだと言ったけど 正確にはきみの事をどう思っているんだろうって」 誰の代わりにもならない人。 一緒に生きたかった、一緒に死んで欲しい大好きな人。 これが恋愛なんて、 実にわかりやすく伝わりやすい言葉で言い表せたなら。 どんなにかよかっただろう、とさえ思う。 「──結局はわからなかった。 僕にもわからなかったから、全部あげる事にしようかなって」 「四つの愛も、その中には分類されない愛も、 それからもっと大きな枠組みのものも、愛以外も全部。 僕がきみに抱く、感情のすべて」 「ああ、結局ここでは喧嘩はできなかったけど」 「きみが持っていきたいものだけ、持っていくといいよ」 きみにとってのツバメには、なれなかったかもしれないけど。 それでもせめて、きみのさいごに寄り添うツバメの亡骸に。 なんて願いは、分不相応なものでしょうか。 (-165) 2022/03/13(Sun) 0:25:56 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズ「──そうだ、そういえば。」 「そう、失敗した時の事は、一応考えてて。 だって人生って思い通りにいかないものだし、 確実に死ねる方法なんて、正直他殺くらいしかないから。 だから僕は次善の策になり得るものを 今度はちゃあんと考えておいたんだ。聞いてくれる?」 「あはは…笑わないで聞いてくれるといいな」 「あのね。これで上手にきみが死ねなかったら、その時は」 「──僕、きみの事を殺しに行くよ。」 「記憶転移が僕に味方してくれれば、だけど… どれくらい待たせる事になるかは、わからないけど でも、何となくできる気がしてるんだ。 僕じゃない僕が、きっときみの事を殺しに行くから ここで一緒に死ねなかったら、その時は。」 「待っててね、邦幸さん。」 (L3) 2022/03/13(Sun) 0:26:48 公開: 2022/03/13(Sun) 0:30:00 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズもう幸運も不運も祈らない、ただきみの確かな死を祈ろう。 祈るばかりは癪だけど、死者にできる事はそれだけだから。 全部自分のせい、生きて苦しんで罪悪感を贖うなんて選択肢 僕にはもう選べない選択肢。 それを一人で選んで自分勝手に満足するなんて、 ずるいから、羨ましいから、やめてくれないかなぁ。 そんな綺麗でも何でもない、どこまでも身勝手で我儘な、 それでも、心よりの気持ちで。 ──本当は、罪悪感に耐えられないのは、僕ではなくて。 ──きみの方だったんじゃないかと、今となってはそう思うんだよ。 (L4) 2022/03/13(Sun) 0:27:22 公開: 2022/03/13(Sun) 0:30:00 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 不運 フカワ「じゃあ、いこうか」 ふ、と。 穏やかに笑みを零して。 「先にいくから──ちゃんとついてきてね」 きみに向けて両腕を広げて、後ろへ、さいごの一歩。 「おいで、邦幸。」 ──あ、やっぱりこれはちょっと恥ずかしいかも。 そんなどこまでも場違いな照れ臭さを感じながら。 ぐらり、視界が傾いで、 浮遊感に身を委ねる。 消えた柵の向こう、縁の向こう、広がる空を背に、身を投げ出す。 今度は、自らの意思で。 不思議と、もう怖いとは思わなかった。 死ぬ事よりもずっと怖くていやだと思う事を知ってしまったから。 (-166) 2022/03/13(Sun) 0:27:53 |
カミクズは、きみに手を伸ばして。 (a48) 2022/03/13(Sun) 0:28:00 |
カミクズは、さいごの一歩を踏み出して。 (a49) 2022/03/13(Sun) 0:28:05 |
カミクズは、世界を手放した。 (a50) 2022/03/13(Sun) 0:28:09 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス当然ながら覚えのある言葉に、少しの間。 『あはは』 『そうですね 夢でくらいは』 『夢でくらいは、幸せになったって、いいですよね』 眠りから覚めれば消えるような、淡く、脆く、幸せな夢を。 二度と覚めない眠りの中に閉じ込めて、 誰にも話さずそっと抱いて眠るのだ、なんて。 ああ、言葉にするだけなら、随分綺麗な夢物語だな。 (-181) 2022/03/13(Sun) 6:57:30 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス『そうじゃなかったら そうだなあ』 『きみにとってはそうだったんだなって、思うだけ、かも』 少し残念だとは思うかもしれないけど、結局は他者の感傷だ。 あなたのいいえ、の仮定にはそんな答えを返して。 それから、あなたの話に、また少しの間。 『そうですか』 『無駄な命なんて、僕は無いと思いますけど』 『少なくとも、本人以外の誰かが決めることじゃない』 本人が、嗚呼人生は無意味だったと嘆く事は、良いのだけど。 生きる事も死ぬ事もその人の自由で、その舵取りは本人次第。 少なくとも他者が勝手な評価を下して良いものではなくて。 無味乾燥な生はあったとしても、無駄な死は存在しない。 そもそもの話、意味ある死など本来存在し得ないのだと思う。 仮にあらゆる死に意味を見出そうとするならば、 災害、事故、病気、唐突な理不尽に命を奪われた多くの人間は。 ただただ、うつろへ向かって走っていた事になるのだから。 或いは、そうだな。 それに優劣を付ける事そのものが間違い、というよりも。 そもそもの話、全ての命には。 最初から、大した意味なんて無いのかもしれないな。 ただ、その過程に何かを見出す者も居るというだけの話。 (-182) 2022/03/13(Sun) 6:58:22 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス『でも、そっか』 『きみにとって、少しでもなにか得るものがあったなら』 『僕の勝手な感想ですけど、よかったなって思います』 清掃員は、あなたの得たものを知らないけれど。 仮に知ったとしてもきっと、あなたがそれに満足しているのなら。 何を思っても、きっと『よかった』とは言ったんだろう。 何せ今のあなたの気持ちは今のあなたのものなのだから。 あなたがそうだと言うのなら、それは誰にも否定できないものだ。 始まりと終わりそれそのものには、大した意味は無くたって。 その過程に何かを見た事は、決して無価値ではないはずで。 その時の感情は、その時抱いた気持ちは、たとえ遷ろえども。 決してそれが嘘だった事にはならないはずで。 ならきっと、それで良いのだと、そんなふうに思うから。 『これからを生きていくきみ達に、 暫くは手も声も届かなくなってしまうのは悲しいけれど』 『でも きみが振り返れば思い出は変わらずそこにあるから』 『それは、ここでの時間も、それから僕も』 『きみが覚えている限りは、ずっと。』 (-183) 2022/03/13(Sun) 6:59:26 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 怪物 ユス『でも、だから、ユスさん』 『ここで一度、お別れですね』 夢の続きという今の距離は、懐かしむには近すぎるから。 現実を生きていくきみ達は、夢の名残だけを持っていけばいい。 『僕も、その、情けない話ですけど。 きみには何かとお世話になっていましたから。 最初に気を遣ってくれたのもそうですし、 一緒に掃除をした事も、それから今も。だから』 『ありがとう。それから、さようなら。』 『帽子は、テーブルかベッドの上に。』 『僕の部屋の中の事は あまり気にしないでくださいね』 ──雑然とした、ある種の生活感に満ちた部屋。 もう帰る主の居ない、現実には存在しない部屋。 VR内に今この一時のみ再現された、部屋の主の人らしさの縮図。 床に落ちているのは、優しい色使いで描かれた一冊の絵本。 めでたしめでたしで終わる、誰もが知っている物語。 変わった所と言えば、一つだけ。 最後の── 神さまが、天使に貴いものを持って来させる頁。 それ以降が切り取られただけの、 何の変哲もない、未完の絵本。上葛掃守という人間が、最後に遺した憎悪と失望のかけらだった。 (-185) 2022/03/13(Sun) 7:02:28 |
カミクズは、『幸福な王子』の絵本が嫌いだった。 (a56) 2022/03/13(Sun) 7:02:37 |
カミクズは、正しくは、ふたりをそっとしておかなかった神さまが。 (a57) 2022/03/13(Sun) 7:02:42 |
カミクズは、それをうつくしいものと持て囃し吹聴する読者や世間が。 (a58) 2022/03/13(Sun) 7:02:47 |
カミクズは、物語を都合良く脚色する傍観者が、嫌いだったのだと思う。 (a59) 2022/03/13(Sun) 7:03:08 |
【秘】 不運 フカワ → 亡骸のツバメ カミクズ1,2。 「……やりたいから、か、全部。 わかった、そっか、長い夢、だった、なあ……」 もっと、見たかったなあ。 やっぱりずっと、後悔をしながら、ゾクゾクしている。 幸せになると思えた事も全部現実を逃避したもの。 助けられたと思った事も、助かったと思うことも全部事故を満足させるだけ。 それでも逃げたくはないな、向き合うと決めたそれから。 君が許してくれる事が嬉しいから。 34,35。 「生きていたくないって思うことが悪いことだと思い込んでいたのに。 それまで、君は許してくれるんだ」 (-210) 2022/03/13(Sun) 15:49:52 |
【秘】 不運 フカワ → 亡骸のツバメ カミクズ「ああ、死にたくてしかたないな」 「ようやく、一緒に死にたいって気持ちが理解できた」 "運良く"死ねたら、俺は君が手に入って。 "運良く"生きることが出来たら、俺は君の"代わり"を探すんです。 俺がやりたいこと、ですね。 「喧嘩は……へへっ。 少しでも拒まれたら、今なら殺しちゃいそうで。 今みたいに死んでもらわないと、出来ないな」 「持って行くね、全部、こうやって、全部」 死んで居る君だから、生きて居ない君だから。 それが個人を見ているかなんて、今は関係ない。 66,67。 それでも、そう、君は 上葛掃守 だった。誕生日を迎えるはずだった、俺が生まれたことを祝った人間。 其れを忘れることも、覆ることも、上書きされることもない。 (-212) 2022/03/13(Sun) 15:55:06 |
【秘】 『 』の フカワ → 亡骸のツバメ カミクズ格好つけるだとか、特別を意識するだとか。 そんなことはもういらないな。 「――掃守、待ってくださいっ」 浮遊感。風の音。 さいごの一歩を踏み出した。 そして、いつか、追いつく。 80,81。 想像以上に怖くない、落ちる景色も、誰かと一緒なら。 それに、待っている人がいるから、何も 。 (-219) 2022/03/13(Sun) 16:21:09 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 『 』の フカワ結局のところ、許す許さないの話ではなかったんだ。 「──もしも、仮に。 生きていたくないと思うことが、悪いことなのだとしたら」 だって僕はそもそもの話、それを咎める事はできないのだから。 「僕ってとんでもない大罪人だ」 夜明けはいつも憂鬱だった。 けれどきみの隣であれば、憂鬱なばかりでもなくて。 だからきっと、今日は死ぬには良い日、だ。 ──さあ、誰の手も届かない所で死のう。 何処にも行かず、死んでも離れず、ずっと同じ夢を見よう。 他の誰に捲られる事も無い、さいごのページをふたりじめ。 誰にも観測されない物語の結末は、幸福でも不幸でもなくて。 誰に"めでたしめでたし"で締め括られる事もなくて。 エンドロールが流れなければ、 声を潜めて口々に感想を囁き合う観客だって居なくって。 それってきっと、この上なく満足のいくものだ。 (-241) 2022/03/13(Sun) 19:22:53 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズああ、でも。 重力に身を委ねる瞬間の、更にそのほんの僅かな間だけ。 少しだけ、投げ出したものが追い付いて来たらしい。 ──ただ生きたかっただけの少女に本当に必要だったものは、 きっと隣で一緒に考えてくれる人だったのだろうな、とか。 ──僕の事を友人と呼んでくれたきみは、 僕がこんな選択をしても、悲しんでくれるのかな、とか。 ──この場所で死ぬ理由を失い、生きる理由を得たきみは 僕と近"かった"きみのこれからが、少しでも長く続くといいな、とか。 ──ああ、きみのくれた花の事を聞き損ねてしまったな、とか。 ──誰かからきみのことを奪っていく事は、 本当にひどい事で、それだけは確かに僕の罪、なんだよな、とか。 きっと誰もが誰かにとっての生きていて欲しい人だった。 でも、お利口にしていたって、奪われるばかりなんだ。 喜劇のように報われやしない、この優しくない世界では。 一方的に奪われて、報われる事なんて一度もなかった! 嫌だ、嫌だ、嫌だ!どうかさいごくらい、我儘を言わせて! いつまでも僕ばかりが奪われる側なんて、不公平じゃないか── (L7) 2022/03/13(Sun) 19:23:40 公開: 2022/03/13(Sun) 19:30:00 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズそんな後悔の形になりそこなったようなもの、 それから誰に届く事も無い慟哭、悲鳴、言えなかった『助けて』。 それらの後に残ったものは、やっぱりきみの事だった。 仮に僕にはきみしか居なくても、 きみには僕しか居ないわけじゃなくたって。 そんなことはもう関係がなくて。 関係がないとは言っても気にしないわけじゃない、でも。 そんな事はわかった上で、やり方は色々考えているんだよ。 きみがこっちを見てくれるまで付き纏うから、覚悟していて? だって僕は、できそこないでも猟犬だ。そうでしょう? きみが首輪を付けず手放したって、ずっと傍に居るものだ。 愚直なまでに、執念深く、どこまでも。 そんな手に負えない想いを抱えて、今一度は眠りに就こう。 願わくば、このまま二人眠りたいとは、思うけれど。 でも知っているよ、人生って上手くいかないものだって。 だから。 きみとずっと一緒に居る為に、僕は努力を欠かさないよ。 (L8) 2022/03/13(Sun) 19:24:29 公開: 2022/03/13(Sun) 19:30:00 |
【秘】 亡骸のツバメ カミクズ → 『 』の フカワ──ぐちゃぐちゃの肺から空気が押し出される。 既に一度死んでしまったからか、 痛みは夢の中のようにぼんやりとしか感じないけれど。 ほんとうはもう、起き上がるのすら億劫な、惨憺たる有り様だ。 ああ、でも大丈夫だ、まだ息ができる。 まだ息ができる、言葉を吐き出す事ができる。 きみに贈る、さいごの願いを。 「──おやすみ、邦幸」 「ずっと傍に居てくれて、」 「ずっと一緒に居てくれて、ありがとう」 「これからも、ずっと」 「ずっと一緒に居よう」 「だから、死んでね」 「僕達に、夜明けが来る前に、早く……」 「ここで、僕と死んでね」 夢の中のようにぼやけた意識、その視界が涙で滲む。 でもこの涙は悲しみからのものではなくて、後悔でもなくて。 ただただ、どこまでも、安堵と、それから。 今、胸を満たすこの感情は。 ああ、これはきっと、多分。 よくない感情、だ。 (-242) 2022/03/13(Sun) 19:26:34 |
【置】 亡骸のツバメ カミクズ──でも、とうとう自分は死ぬのだとわかりました。 ツバメには、王子の肩までもう一度 飛びあがるだけの力しか残っていませんでした。 ツバメはささやくように言いました。 「さようなら、愛する王子様」 「あなたの手にキスをしてもいいですか」 … … … 「──死の家に行くんです。『死』というのは『眠り』の兄弟、ですよね」 そしてツバメは王子にキスをして、 死んで彼の足元に落ちていきました。 ──さようなら、どうしようもないほどに優しくない世界! さようなら、苦しくなるほどに優しい人達! きみ達が優しい死の家へと行き着く頃か、或いは、それか。 いつか世界がもう少しだけ僕達に優しくなった頃に、 また会えたらいいなとどうか願わせて! ──こんな世界だから、会えたのだとしても。 それでも、こんな世界で会いたくはなかったよ。 そう思ってしまうほどに、 かった。 (L9) 2022/03/13(Sun) 19:28:31 公開: 2022/03/13(Sun) 19:30:00 |
【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ『』 何か悩むように空白が流れ続けた。 『カミクズさんの話をもっと早くに聞いていれば、また何か変わっていたのかもしれない』 そこまで入力して、ゆるりとかぶりを振った。 無駄な命など無いと話を聞いても、きっと自分は選択を変えられなかっただろう。自分は楽な道に逃げたかったのだから。 『……いや、不毛な話ですね。たらればを言ったところで現実が何か変わることなどない。』 『でも、今聞いても決して遅くない。 自分のことは自分で決めていいのだと、より考えが磐石なものになりましたから』 ▼ (-246) 2022/03/13(Sun) 19:54:11 |
【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ『そうですね。 死者は死んだらそれきり。思い出の中で生き続けるなんてことは決してない』 それは生者の思い込みで、エゴでしかない。 それは、過去の動きをなぞっているだけでしかない。 『……でも、たしかにそばに在る。 忘れませんよ。俺に必要なものなので。 貴方が嫌がっても、ね』 ▼ (-247) 2022/03/13(Sun) 19:54:26 |
【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ『はい。ここで 暫しの 別れですね』死者が残した名残は綺麗な片づけられる。この紛い物の世界でも、本物にまみれた世界でも。 けれど各々の記憶の中だけは誰も手が出せない。 夢物語はきちんと読み終わって、その余韻だけを大切に持って帰らなければ。 『ええ、はい。言われたところに置いておきます』 端末を操作して、音声メッセージに切り替える。人は声から忘れていくと言うけれど、貴方ならきっと消えるその時までちゃんと持っていてくれそうだから。 「必ず会いに行きます。待っていてください。 今度はもっと、話をしましょう」 貴方の耳に、かすかな衣擦れの音がする。 青年のお辞儀の音だった。 「ありがとうございました、カミクズさん」 メッセージは、貴方との泡沫の時間は、その言葉で締め括られた。 ▼ (-248) 2022/03/13(Sun) 19:54:47 |
【秘】 ユス → 亡骸のツバメ カミクズ ……これは蛇足である夢の、更に蛇足。 「……。気にするなと言われても気になる程度には汚いな」 部屋に入って一言。やっぱり、馬鹿正直にコメントする。生きている名残がこれでもかと詰め込まれた部屋。初期設定のまま弄ることなく部屋を使用した自分と大違いだ。 テーブルには言われた通りに帽子を。 ベッドには、一輪の名もわからない花を。 それぞれ置いてから床に落ちている絵本に気付く。拾い上げて捲ってみれば、めでたしめでたしがどこにも無い。 「……」 笑みの下に隠された意思に触れたようで、無意識のうちに口元が緩んだ。 これも聞けば話してくれるのだろうか。生者のエゴにまみれた世界から抜け出した先で。 静かに本を閉じて元の位置に戻した。名残を歪めてはならないと教わったから。 そうして、生者は今日も鼓動を止めずに時間を積み重ね続ける。 名残だけを、けれども落とさないように持ちながら。 (-249) 2022/03/13(Sun) 19:55:40 |
カミクズは、きっと待っている。 (a81) 2022/03/13(Sun) 20:03:46 |
カミクズは、優しい死の家で、いつまでも。 (a82) 2022/03/13(Sun) 20:03:58 |
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