【人】 碧き叡智 ヴェレス[燃える、燃え行く、二十余年の記録。 彼は知った、故に物証に意味はなく。 彼は去った、故に発明に意義はない。 炎の立てる音、建材の崩れる音。 灰と化す調度品の数々、過ごした時間、 何度没収されようと密かに組み上げて来た魔道具たち、 幾度となく読み返した書物、擦り切れたペン、 母が編んだ衣服、「兄」と交わした手紙。そして。 取り残された肖像画、その柔らかな瞳が 愛する我が子の罪を見据え、見届け、燃え尽きる迄。] (69) 2022/11/08(Tue) 7:52:50 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[それは奇しくも、若き日のブランドンが 密やかに暮らしていた宝石の魔人の集落を焼き、 最も美しく無知だった女を連れ去った日の光景と 何処までも告示していた。 ────老いた男は溜息を吐く。 それですら少年の仕草とよく似ている。] (70) 2022/11/08(Tue) 7:53:03 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[一片の情も無かったのなら、 初めから人権を与える事もしなかった。 我が子であろうと家畜の様に育てた事だろう。 何処からが過ちだったかなど、遡れど限がない。 唯一分かっている事は、人間のエゴが引き起こしたこと。 魔人達の信仰心を根こそぎ折り砕き、神を殺した。 研究に従わない者は心臓の石を奪い、滅ぼした。 その過程を記し、最後の生き残りを連れ去り、 合の子を産ませた挙句、生殖能力を奪う事で 無知だった女の、世界の全てを掌握した。 己の罪と向き合うのは恐ろしかったが、 それ以上に、我が子が成長する程に 知性、感性、その全てにおいて 想定外の変化を重ねるのが不穏でしかなかった。] (71) 2022/11/08(Tue) 7:53:20 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[見目の変わらぬ母子を別邸に閉じ込め、 新たな妻と血の繋がらぬ子を迎えた。 何年も掛けて世間にカバーストーリーを流布し、 あの恐ろしい母子の存在感はすっかり消えた。 そうまでして漸くこの地位に登り詰めたのだ。 そこまでしたのに『人間』の儘にしておいた事が、] 「 ……矢張り、失態だったろうか。 」 (72) 2022/11/08(Tue) 7:53:36 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[学星院の低階層では混沌が広がり始める。 階級の低い職員達がこの下界へと送り込まれ、 その上で遠隔操作により結界を取り払われた。 とどのつまり、彼等は悪影響を恐れた指導者により 『学星院も被害者である』という名目を作る為の 尊い犠牲となったのである。] 「 明日が来れば、明日が来てしまえば。 どれだけ輝かしい実績を得ようとも、 最早こうなっては追及は避けられぬ 」 [奴等は目的を果たしただろうか。 外部からの介入までどれ程の猶予があるだろうか。 それまでに消しておける火は如何程か。 初めから狂っていた機関は、 既のところで選択を誤らない。] (73) 2022/11/08(Tue) 7:54:09 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[ブランドンの瞳には燃え落ちていく建物が映る。 懐かしくも忌々しき、偽りだらけの家が。 夫人は美しく、柔和で人畜無害な人柄だった。 子息は今日この時まで息を潜めていた。 暴動によって焼かれたと説明するには、 余りにも不可解で、動機が薄すぎる。 何を支払えば、何を犠牲にすれば、 引き続きこの叡智の為の研究を続けられるだろう。 覗いたレンズ越しに既に息子の姿はなく。 階下から響く絶叫や嘆きが狂気の感嘆に変わるまで、 耳を塞いだ。] (74) 2022/11/08(Tue) 7:54:29 |
碧き叡智 ヴェレスは、メモを貼った。 (a19) 2022/11/08(Tue) 23:38:51 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス──── 過ぎし日々;昼下がりの安息 [経験は総ての人にとっての宝である。 そう説いたからこそ、業火を免れた場所もある。 例えば、罪過の象徴たる地下の蔵書の数々だとか。] [少年は道すがら、出力された写真を眺める。 光の取り込みようではない、鮮やかな一枚。 あの鳥は初めから青かったのだろうか?] (108) 2022/11/09(Wed) 23:18:05 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[ほんの少し前にも問題が起きたとは露知らず、 いつも通りくるくると働く女給>>0:30の背を目で追って 何となしに、向かいの席に問い掛けた。] ……して、貴方もさ。 此処に移り住んでからそれなりに経ったでしょう。 同僚や友人とは上手くやれている? [“それだけが今後の心配事なんだよね”なんて笑う。 食後の薬を飲む彼の身分は保証されている。] 不正な移民とも、既に忍び込み息を潜めている 略奪者達とも違って。 だけど、一部の人間に色濃く残る選民思想が 何を引き起こしたのかを我が身で知っている己からすれば 彼の行先を案じずにはいられない。] (111) 2022/11/09(Wed) 23:18:46 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[周囲の人に恵まれているならそれで良い。 だが人々がその本性を解き放った時、 心の奥底に眠っていた差別感情が 彼を害さないとも言い切れなかった。 言えない事が、これからの計画が山程あって。 それを話せばきっと彼は止めようとするだろうから。 どうなるか予測出来た上で、道を分かった。 何も言わずにいつも通り、“またね”と別れた。] (112) 2022/11/09(Wed) 23:18:58 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス(もしこの先、褒められるべきではない理由で 彼の本心を聞くことが叶ったとして。 僕達の間に不可逆的でない友情があると 証明されてしまう事が何よりも恐ろしく、つらい。 どこまでも打算的な自分を受け入れてくれと 打ち明ける事ですら非道に思えて、実行し難い。 貴方は計画に関係ない。関係ないからこそ、 明かす事も守る事も叶わないから。) 立つ瀬がなくなったら、一緒に終わってあげても良いけれど────…… (113) 2022/11/09(Wed) 23:19:17 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[エール酒のボトルを慌ただしく運ぶ様子の給仕に、 “美味しかったです、また来ます”と告げて 騒がしい店内を後にした夕暮れ前のこと。 再び仕事へと戻っていく彼を見送って、 これから訪れる非日常が一体何を壊すのか 改めて一つ一つ計算しながら帰路へ着いた黄昏に 影が暗く長く伸びつつあった。*] (114) 2022/11/09(Wed) 23:19:30 |
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