【墓】 枠のなか 卯波写真を見ている。 世界の果てみたくハッとするような澄んだ空気の中、 田舎の皆で集まって撮った、何より大切な集合写真。 様々な表情で、様々な姿勢で切り取られた四角形の。 『 』 慈姑婆ちゃんも、時任の さんも、呼子姉も、 この中にはみんないる。何一つ欠けていない。 誰もがあの頃の美しさのまま、そこに写って。 彼が、あの子が作ろうとしている枠の中とは、 決しても似ても似つかない。哀しそうに笑う。 今それをどうしようもなく愛してしまうのは、 やはり矛盾した心の、不自然な気持ちの動き。 「ずるいよ。俺にはないもの。 俺だって、みんなをここに閉じ込めて、誰も前に進まない場所で、背中に追いつきたかった」 警察の兄さんたち。ひとつ年上の人たち。 目を離せば、随分遠くを行く彼らだって、 ここに止まれば等しく『田舎の人間』だ。 ▼ (+6) 2021/08/15(Sun) 5:29:32 |
【墓】 枠のなか 卯波「俺は田舎が大好きで──でも、 それと同じくらい、前に進む皆が好きだから。 ここにみんなでずっと残っていたいし、 ここから出て様々な道を行く皆を見たい。 酷いよ、ほんとに。この先どうなっても、 俺は叶わなかった願いに心を痛めることになる」 十年前の写真。 ここで撮った写真。 それと──十年経つ中で、 己の人生をいくつも切り取った、 晶兄の名を借りたカメラが映し出した写真。 息苦しかったり、嫌なことがあったりの日々から、 美しく、甘く、優しいものだけを切り出したもの。 ここにあるのは人生の歩みだ。 並べて、ただひたすらに並べたら、 一ノ瀬卯波という人間の楽しく思う部分が全部詰まっている。 ここから先はもっとみんなを撮りたいから。 夢に浸りたいと願う人にも、現実に帰りたいと願うにも。俺は逃げたりしない。 (+7) 2021/08/15(Sun) 5:43:34 |
卯波は、誰でもない、一ノ瀬卯波の人生を、誰よりも美しく思っている。 (c7) 2021/08/15(Sun) 5:46:19 |
【墓】 枠のなか 卯波「じーちゃんばーちゃんいってきま〜す!」 紺色の浴衣の上からカーディガンを羽織り、 上機嫌で家屋から、下駄をころころと慣らして出てくる。 首には勿論、大事なインスタントカメラを引っ提げて。 「男前になった?ふふ、お世辞を言っても何もでないよ、おじさん。屋台は……あっちですね?ありがとうございます!」 手持ち花火セットを受け取って、 いざ祭りへ。みんなもう居るかな、と逸る気持ちは、そのまま急ぎ足の歩幅に映っている。 ずっと遊んでばかりだからか、 一日一日過ぎるのが早い気がする。 時を数えるのも、忘れてしまったみたいだ。 (+8) 2021/08/15(Sun) 14:28:05 |
【墓】 枠のなか 卯波「時任の さん、どうかした?」 最初に境内に訪れた時と比べて、 ほんの少し背が伸びて、髪も伸びて。 こころなしか、体格もしっかりしている。 卯波は確かに、田舎でみんなで居られたらどんなにいいことだろうと思っている。 だけどそれはまるで、もっと外へと飛び出そうとする、子どもの、眩しい成長のような── 「勿論、写真は沢山撮りますよ! フィルムはいっくらでもあるから、寧ろみんな俺が撮りすぎてイヤになったりしないか不安だな。 ……ふふ、皆の着物や浴衣、今から凄く楽しみ」 そう笑う顔には、他でもなく卯波少年の面影を色濃く残していていた。 (+10) 2021/08/15(Sun) 16:03:18 |
卯波は、行く道で編笠にも「晶兄〜!」だの声をかけた。 (c8) 2021/08/15(Sun) 16:07:20 |
【墓】 枠のなか 卯波>>14 編笠 「え〜、折角久しぶりのお祭りなのに。 楽しみなのはそりゃ当然として、 さらにテンションあげてきましょうよ」 先輩ら二人が普段着なのは何となく予想がついていた。瞬兄は良くも悪くも変わってないし、晶兄もまわりに流されたりするタイプじゃないように見えたから。 「これじゃあまるで俺だけが望んで……違うな、楽しそうみたいじゃないですか。普通逆ですよ、俺は撮る側」 ほら、とインスタントカメラを掲げてみる。 今なら、空気のなかで弾けるような、賑やかでどこか寂しい笛や太鼓の音までも切り取れそうな気がする。気がするだけだけど。 (+12) 2021/08/15(Sun) 17:55:03 |
卯波は、フラッシュを閃かせた。 (c10) 2021/08/15(Sun) 18:03:15 |
枠のなか 卯波(匿名)は、メモを貼った。 2021/08/15(Sun) 18:10:00 |
枠のなか 卯波(匿名)は、メモを貼った。 2021/08/15(Sun) 18:10:14 |
枠のなか 卯波(匿名)は、メモを貼った。 2021/08/15(Sun) 18:11:37 |
【墓】 枠のなか 卯波傾いた日の、光が当たる地面に立ち、 ほんの少しだけ首を傾げて。 あなたを木陰に残して、 一歩、二歩と早足で歩き、 振り返ると、微笑んでみせる。 「あるよ」 誰かにも見せた。今まで誰にも見せなかった、 恋焦がれるような、悪戯を思いついたような、 ほんのちょっぴりだけ蠱惑さを煮詰めた笑み。 「お祭りが終わった後の日々は、 切なくて、つまらないことばかりだもの。 帰りたくないなって何度思ったことか」 それは変わらないあなたの表情と対照的だ。 違和感は違和感だけでは終わらず、 確かに、何かの変化を齎そうとしている。 ▼ (+14) 2021/08/15(Sun) 18:19:29 |
【墓】 枠のなか 卯波▲ >>18 編笠 「でもね。楽しいからこそ切なくなるんです。 お祭りも、その先の味気ない日常も、 俺は全部ひっくるめて好きで居たい。 ずっと同じ風景ばかりの写真じゃ──飽きるでしょ?」 俺に勝負を吹っかけた晶兄だから分かるでしょうけど、と続けて──また、昨日のように手を伸ばす。 遠くから聞こえてくる彼女の声も、また同じようなシチュエーション。きっと、映るものも似たような四角い枠の中だ。 「ね、はやくいこ? 俺、今日は沢山みんなを撮って、遊んで、楽しむんですから」 夕焼けが後ろ髪に透けて、縁に淡い光を含む。 陰の差す顔の表情は、それでも晴れやかで、あなたを見ている。 (+15) 2021/08/15(Sun) 18:26:32 |
卯波は、目を丸くして── (c12) 2021/08/15(Sun) 18:58:48 |
卯波は、満足げに、あどけない笑みを浮かべた。 (c13) 2021/08/15(Sun) 18:59:39 |
【墓】 枠のなか 卯波>>+17 凪 「ずっとお祭り……ふふ、素敵ですね。 ほんと、そうならどれだけよかったか」 今だって夢見ている。 ひしひしと感じている、迫る現実が全部嘘で、何もかもが嘘になって、夢のままでいられたら、なんて。 夢は、叶わないこそ夢だって、思い知ったのはつい最近のことだ。 「俺は……来年も再来年も、 十年なんて時間を待たず、みんなと遊びたいと思ってますよ。おじさんおばさんになるまでずっと遊んで、撮って。 そうなればいい。そうなるために、これからを」 晶兄の方に向かっていき、 その途中で顔を向け、歯を見せて笑う。 「歩んでいくんです」 (+18) 2021/08/15(Sun) 19:35:27 |
【墓】 枠のなか 卯波「夜は冷えるかなーって思ってね。 流石にまだ暑いけど、きっと役立つはず! ……あと、あんまり身体のラインが出るのちょっと恥ずかしいなあって思って……でも褒めてもらえて嬉しいです」 ユニセックスな浴衣にぶかっとしたカーディガン。一見厚着のようだが、風通しが良いので汗一つかいてないぞ。 (+20) 2021/08/15(Sun) 19:50:46 |
【墓】 枠のなか 卯波「寒いんだったら勿論貸すよ。流石にかき氷の食べ過ぎで鳴るのはやめてほしいですけど」 変わってないなあなどとこぼして、 大方の予想通りの台詞が出てきた。 「やった、茜ちゃんと二人でたこ焼き分けっこだ、なんて。似合ってるよ、馬子だなんてとんでもないよ。 子どもの頃が純粋に色々楽しめたってのはあるかもですね……少しくらいは酸いも甘いも噛み分けられるようになったってところでしょうか」 (+26) 2021/08/15(Sun) 21:06:38 |
【墓】 枠のなか 卯波>>45 >>+30 >>+31 いつもの三人 竹村茜の、明るさに滲んだ寂寥や。 青嵐瞬の、優しさから覗く憧憬に、 編笠晶の、どこまでも不器用な夢。 誰もが田舎から離れがたいと思う。 そんな侘しい田舎の後ろのページを── インスタントカメラで、自撮りでもするように撮った。 「ば〜か」 十年コレ使ってきたヤツ舐めんな!そんな気持ちで、 してやったりという笑い方で三人に言う。 卯波は、ずっとこの時間が続けばいいなと思ってるが、 未来に希望を失くしてしまったわけではないから。 「違うでしょ。そうなればいいな、じゃないでしょ。 もしこの田舎にずっといられなかったとしても、 都会に帰ることになったとしても、さ。 俺達が揃って会うことって、 そんなに難しいことなんですか?」 カメラから出て来た写真を、 花火の咲く空の下風に浴びせて、 鮮やかな光のなかで、踊るように。 ▼ (+38) 2021/08/16(Mon) 6:42:04 |
卯波は、この時間が終わってほしくないと思っている。 (c22) 2021/08/16(Mon) 6:42:23 |
卯波は、それでも、この田舎に執着するみんなの背中を、押してあげたい。 (c23) 2021/08/16(Mon) 6:44:12 |
卯波は、ようやく、その背中に追いつけた気がした。 (c24) 2021/08/16(Mon) 6:44:27 |
【墓】 枠のなか 卯波>>45 >>+30 >>+31 いつもの三人 「何だったら俺達で結婚でもする? ……なんてね。冗談半分だけど。 でも俺はさ、鬼走の兄さん、添木兄さん清和の兄さんだって、十年経って大人になってもずっとつるんでるのを見て、そうありたいって思ってたんだ」 彼らの関係を知ってか知らずか、 田舎に帰ってきても仲の良かった彼らを思い浮かべて、 それと比べて自分たちの繋がりはそんなにも、 もろくて、弱くて、不安定なものなのか?と問う。 「寂しいよ、俺は。 田舎から離れることだけじゃない。 田舎から出たら、離れ離れになると思ってる、 皆の考え方が寂しいんです!」 瞬兄みたいな何事も率先して突っ込み、 やりたいことなんだってやってる人が。 茜ちゃんみたいな昔はずっと男勝りで、 いつだって兄二人を振り回してた人が。 晶兄みたいな、俺に無いもの全部持ち、 絶対勝てないって思わされた様な人が。 十年前の写真にはっきりと残る、 俺を追いかけさせ続けたその背中なのに。 (+39) 2021/08/16(Mon) 6:55:36 |
【墓】 枠のなか 卯波「都会に行ったらさよならなんて、 そんなの、おかしいと思わないの?」 「会おうよ。何度だって」 「田舎でも都会でも、ずっと遊ぼう。 どんなときも一緒にいられるわけじゃないけど、 そうなろう!って思って行動してったら、 絶対に、できないことじゃない。そう信じてます」 そう、何度でも笑って見せた。 (+40) 2021/08/16(Mon) 6:57:16 |
卯波は、この田舎の村の歪みやヒビが嫌いだ。 (c25) 2021/08/16(Mon) 6:58:08 |
卯波は、もっと外の考えまで及ばない村の皆に、憤った。 (c26) 2021/08/16(Mon) 6:58:52 |
卯波は、ここにいる人たちと、田舎から出てもこんな時間があったらいいと、心の底から思っている。 (c27) 2021/08/16(Mon) 6:59:21 |
【墓】 枠のなか 卯波男らしくなりきれず、 かといって女らしくはいられず、 どっちつかずな一ノ瀬卯波でも。 十年越しに見えた背中は遠くても、 どこか子供らしいとこがあるのに気づいた。 身体はどれだけ大人になっても、 心まで大人になるかどうかは別の話だ、と。 誰が言うでもなく気付かされたきがする。 時任の さんが言ってたように、 俺はやはり自分から卯波を置いてっていた。 こんなにも努力家で、転んでも起き上がって。どこまでも変わっていく魅力的な被写体は、こんなすぐ傍にあったのに。 「バーカ。 俺はずっと格好よかったんだっての!」 花火の下、言えなかったことばを、 そっと囁くように、夜空へ溶かした。 (L12.5) 2021/08/16(Mon) (+41) 2021/08/16(Mon) 7:25:38 |
【墓】 枠のなか 卯波───時を戻して。 片手には綿あめ、りんご飴、(5)1d6(1)1d6飴を指に挟み、もう片手には金魚と水ヨーヨー。側頭部に狐面をつけた、フルアーマー装備の機体もかくやという状態になった卯波。 所かまわず撮った写真がカーディガンのポケットいっぱいに詰め込まれている。 「盆の最終日、そのお祭りの日。 そんな時にする事と言えばひとつに決まってます」 盆の祭りは、生者と死者がもっとも密接な位置に近付く日。 慈姑婆ちゃんが出迎えてくれたのはそういうことだろうし、 だからもしかしたら呼子姉も着てるのかもね。 りんご飴を当社比大き目な口でかぶり付き、 祭囃子の音へと近づいていく。 (+42) 2021/08/16(Mon) 12:01:08 |
卯波は、世にも珍しいゴイチ飴を、器用に写真に撮った。 (c28) 2021/08/16(Mon) 12:02:16 |
【墓】 枠のなか 卯波「今では、帰省した人たちの再会の場として、 夏を楽しむお祭り行事にでもなっていますけど。 盆踊りは、帰ってきた霊や、 行き場を失くした魂を、 安らかに踊り出すための舞、って言われてます」 十六夜の暮れ。提灯や覗く月灯り。 賑やかな人の流れ、喧騒に従って、 中心へとどんどん、距離を詰めていく。 近付くにつれ響きを増す、笛や太鼓の音。 飴を食べ切るまでは混じれないが、 それでもぽつぽつと人が踊りに集まって来る。 (+43) 2021/08/16(Mon) 12:11:53 |
【墓】 枠のなか 卯波「貴方も寂しかったんですね、婆ちゃん」 そう、祭囃子の端に佇んでいる 気がする 、皮肉気な笑みが素敵な彼女に声をかける。 孫に情けない姿は見せられなくてね、 なんて素直じゃないことばが聞こえた気がした。 (+44) 2021/08/16(Mon) 12:12:21 |
枠のなか 卯波(匿名)は、メモを貼った。 2021/08/16(Mon) 12:16:43 |
卯波は、彼らと花火を見終えたら、盆踊りに混ざりに行くだろう。 (c31) 2021/08/16(Mon) 12:19:37 |
【墓】 枠のなか 卯波「いつかの未来。 やがて今≠ノなる日。 そこになって、楽しくなくなって、 そこでやっと後悔したら遅いんですよ」 本当にそうだろうか? 編笠晶も、竹村茜も、一ノ瀬卯波も、 そうあることを望んでいるのだろうか。 聞こえてきた言葉に、 面と面を向かって言うでもなく、 遠くを見ながら、声を発している。 「俺は一度諦めた。でも後悔は絶対にしない。 夢が叶わなくても、 それは夢を持っちゃいけない理由になりませんから」 風を受けて色をつけた写真を覗き、 四人が枠に収まってることにうんと頷く。 何度も皆を撮りに行く。 そして、何度でもみんなと遊びたい。 「うかうかしてると、 今度は俺が皆を置いていっちゃいますよ」 そう言って、花火のあがる方へ一歩踏み出し、 嬉しそうに振り返って、笑い続けるのだ。 (+46) 2021/08/16(Mon) 19:02:18 |
【墓】 枠のなか 卯波時は先へ。 飴の食べ切った棒を捨て、 金魚とヨーヨーは暫く預かってもらい、 写真の詰まったカーディガンと、 祭りの淡い光で良く映える紺色の浴衣、 どこか怪し気な狐面を斜めに被って。 待ちに待った盆踊りへ、向かう。 十年前と何も変わらない懐かしい民謡が、 あまりにも懐かしすぎて笑ってしまったりして。 そういえば、失敗しないように、 こっそり練習したりもしたっけと思い出して。 首から揺れるカメラを片手で持ち、 その上から軽く手を叩いて、空へ向ける。 踊るのは久しぶりなのに、 身体が覚えているのもなんだかうれしかった。 (+47) 2021/08/16(Mon) 19:13:35 |
【墓】 枠のなか 卯波「ふふふ、みんながついてきてくれたら、 置いてくこともないですかね〜?」 なんて、意地悪なことも言ってみたり。 「みんなが忙しかったら俺が会いに行きます。 幸い、漸く進路が決まったところで、 全然時間がありますからね。 俺もみんなと会えてよかった。 この田舎で生まれて本当に、よかった」 自分らしくあれるのは、 この田舎の人たちの前だから。 性別とか、そういうしがらみから離れられる。 最後に咲いた花火も、四角形のなかに切り取った。 (+53) 2021/08/16(Mon) 20:52:53 |
卯波は、盆の暮れに、盆踊りをする。 (c33) 2021/08/16(Mon) 20:56:04 |
卯波は、田舎を楽しむための行事が、田舎を終わらせることに繋がることに気付いている。 (c34) 2021/08/16(Mon) 20:56:47 |
卯波は、それでも、この田舎のことを愛していた。それだけだ。 (c35) 2021/08/16(Mon) 20:57:11 |
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