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【人】 遊惰 ロク>>7 メイジ 説明を聞き乍ら、手順を想像して。 メスを動かす少年の様子を案じたものの、 兎も角己も手を動かそうと、目の前のそれに刃を向ける。 「――――――、 あ 」 からん。硬質な音。 取り落とした刃物を拾い上げた。 それから、何事も無かったかの様に事は進む。 ツプリと刃を突き立て、ぐ、と力を籠める。 それに合わせて、耳元、黒の十字架が揺れる。 教わり乍ら、真似をし乍ら、 死体をバラバラに――食らう為の“肉”へと変えていく。 元々手先が器用な男だ。飲み込みも悪くは無い。 滞りなく作業は進行されるだろう。 その間、何を考えていたのか、いないのか。 他のものが窺い知ることは難しい。 男は、誰よりも隠す事が得意だったから。 (8) 2021/07/12(Mon) 21:27:13 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「……そうなるなァ、 お前サンがマボロシじゃなけりゃ」 顔を見れたら幾らか言いたい事はあったのだけども、 それらは一旦胸の内に押し留めることにして。 軽い返事をして、常の笑い顔を浮かべる。 カラリとした表情も軽快な口振りも、 友を励ます内に身について、客席を前に磨かれたものだ。 「はいよ、なんだろ。 むずかしいことじゃなけりゃァいいけども」 手招かれ、少し後ろをダラダラと着いていく。 傍目には一人で喋って歩いてる様にでも見えてンのかな、 とチラと浮かんで、まァ今さらかと思った。 辿り着き指差された先、医師を置いて室内に入る。 封筒を手に取り、しげしげと眺めて。 「おれが読んでもいいのかい」 卓袱台の前に佇んだ儘、廊下へ向かって声を投げた。 (-23) 2021/07/12(Mon) 22:47:03 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ「…………」 カサリと音を立てて便箋を捲る。 捲り乍ら、医師の声が耳を通り抜けていく。 ――あァ、なんだ。と男は思った。 やっぱりお前サン、脅してなんかいねェンじゃねェか。 アハ、と思わず洩れた笑い声をあげて。 顔を上げ、頼まれた手伝いとやらを請け負う。 「死んだあとから弄られんじゃ、遺書も形ナシだなァ。 ――わかった、必要がありゃおれが書き換えとく」▼ (-27) 2021/07/13(Tue) 0:02:03 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ まァ、と付け加えて言う事には。 「あんましその必要もねェとは思うが。 ――あのお嬢サンは“なにも知らねェ”ままなンだし。 おれも、もう後のことは考えねェでいいからなァ……」 先が無い事を仄めかし乍ら、続きに目を通している。 時折、読めない字に当たって首を捻りつつ。 尤も、後の事を考える必要が有れども無かれども、 この話に関してはさしたる違いは無いのだろうけれど。 男は、己の責を誰かに負わせるつもりは無かった。 (-28) 2021/07/13(Tue) 0:13:10 |
【人】 遊惰 ロク>>9 >>10 メイジ 少年の声を聞くうち、手が止まる。 内心をチットモ面に浮かべず涼しい顔していた男の、 紫に黒を少し落とした、暗い色した瞳が揺らぐ。 瞬いて、少年の方を向いて、それから下を見て。 いつの間にやら詰めていた息を細く吐き出した。 「――ついでって、ハハ、ひでェひとだなァ。 おれは“ガキども守って死んでくれ”って、 ……たしかに、そう。……、言ったってのに」 真に酷いのは誰か知っている癖、酷い人だと詰って笑う。 きっと、これまでで一等下手くそに。 そうして、最早形を留めていない肉塊。 そこに彼の心は無いと知り乍ら、ボソリと呟きを落とす。 「……そんなのが、うれしかったのか、お前サン。 …………ばかだなァ 」生首の、耳に光る白い石。触れようとして―― 伸ばした手が赤く濡れている事に気がついて、止めた。▼ (11) 2021/07/13(Tue) 11:19:47 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ「もうちっと―― あの子らブジに帰すまでは、気張ってみるがね。 ……終わりがわかってンのはいいモンだなァ」 本音を溢して、ヘラリと笑って。 仕切り直す様に、便箋を掲げて軽く振る。 「坊チャンには頃合いみて渡すとしようか。 知られたくねェってンなら、 ワザワザ言うこたしねェから安心してくれ。 ……アー、お前サンの体弄ったのはまずかったかなァ」 まァ、その辺りは適当に書き足すかどうにかするだろう。 医師なりの子どもの守り方がそれだというのなら、 キッチリやり遂げさせてやりたいと思ったものだから。 それから、便箋を元の通り折り畳み乍ら、 「ほかにやっとくことはあるか」と軽く問う。 (-37) 2021/07/13(Tue) 17:17:12 |
【人】 遊惰 ロク>>13 >>14 メイジ 「……はいよ、セキニンは取ろうかねェ」 笑い顔を僅かに歪めて、そんな風に返事をした。 困った様なその顔は、少しだけ幼く見えるだろう。 それから。もう一人を台に寝かせ、刃を入れる。 手順は大凡理解した。 肉を断ち骨を折り、テキパキと進めていく。 こんな時間、早く過ぎ去ってしまう様に。 「――そういやお前サン、こないだ、ここで。 キット質問をはきちがえてたと思うンだよなァ」 事を進め乍ら、合間にふとそんな事を語り掛ける。 続く一言を口にする時だけは手を止めて、 少年の大きな片目を正面からジッと見据えて。 「おれは“この医者の自殺を”手伝ったかってきいたんだ」 スイと視線を外し、再び手を動かしつつ。 それが当然の事のような軽々しさで、一度言葉を締め括る。 「こいつは自殺だろ。 しょ お前サンが殺しただなンて、そう背負いこむ必要はねェさ」 この時の男は医師の死んだ経緯も知らなければ、未だ遺書を目にしてもいない。 只、抵抗の跡が見て取れなかったという事実だけでそう確信していた。 (15) 2021/07/13(Tue) 20:28:31 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク(兄サン、どこいんだろ。 ……呼びゃァ出てくるかねェ) 暫く見かけない姿を探して、院内を彷徨いている。 腕の中には、蓋をしたブリキのバケツが一つ。 (-40) 2021/07/13(Tue) 20:42:01 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ そういうモンか、と畳んだ紙を眺める。 閉じた世界で 虐げられて 然程広くは無い。 「――目を、? ……、」 彼の前で目を閉じる事に、躊躇いを覚えはしたものの。 ――大人の前で無防備を晒す事に、虞を抱きはしたものの。 「はいよ。なんだろ。 ……見られたくねェモンでもあったかねェ」 アッサリと ――そのつもりで、実際のところ恐る恐る―― 言われた通りに瞼を下ろし、 暗くなった視界の中で話し掛け続ける。 沈黙を恐れたのだろう。 (-44) 2021/07/13(Tue) 22:03:54 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ「――、終いかい」 クロスグリが露わになって、瞬く瞼に幾度か隠される。 僅かな時間振りの色彩が少しばかり目に痛かった。 「そンじゃ、まァ、これにて。 なにか用がありゃアまた呼んでくれ。 もうちっとはここにいンだろ、互いにさァ」 今、何を貰ったのか――与えられた事も知らぬ儘の男は、 そんな風に。アッサリとした別れを告げる。 至って平々凡々な挨拶は、だからこそ可笑しな話だった。 (-48) 2021/07/14(Wed) 1:23:15 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 足元に現れた猫を踏んづけぬ様蹴らぬ様、 避けようとしてたたらを踏む。 「――あァ、いいとこに。 お前サンの墓、つくりにいくとこなんだけども。 どこに埋めりゃァいいかねェ」 一人分の首と骨とが収まったそれを抱え直して、 顔を上げた男はそう返事をした。 (-52) 2021/07/14(Wed) 8:54:36 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「聞けンだし、どうせなら好きなとこがよかろ。 ……んー、まァ、おれだけでやってみるかねェ」 時間はかかるだろォが、と言いつつ 拝借したスコップを持って着いていく。 辿り着いた先、最近均されたと思わしき場所が二つ。 それが彼らの墓なのだろう。 バケツを脇に降ろし、静かに手を合わせる。 それから、程近くの地面にスコップの先を突き立てた。 十分な深さへ到達するまで、短くはない時間を要する。 只管に土を堀り返し乍らも、 話し掛けられれば手を止めぬ儘で応えるだろう。 (-56) 2021/07/14(Wed) 10:41:10 |
【人】 遊惰 ロク>>20 >>21 メイジ “会えるんだったら”。そういや見てねェなァ、と思う。 どこぞに隠れてしまったか、もうここにはいないのか。 その答えが分かるのは、きっとこの後直ぐの出来事だ。 “やっぱりやさしいね”。やさしかねェよ、と小さく笑う。 ――生きてたらこの年頃だった、きょうだいの様な友らがいた。 放っておけなかった理由は、只それだけだ。 汚れた手をよくよく洗って、綺麗に拭いて。 座る少年に近寄り「拭くぞ」と一声かけてから、 顔の汚れをグイと拭う。 痛みのない程度に、しかし繊細さの足りない力加減で。 それからそこかしこが赤く染まった包帯を替えてやる。 その儘ではお嬢サンの前にも出づらかろうと。 「――そンじゃこれにて。 おれの方こそ、どうもアリガトウ」 それらを終えれば、ブリキのバケツを一つ手に取って。 蓋したそれを抱えて暇を告げ、少年を残して部屋を出た。 (22) 2021/07/14(Wed) 12:11:24 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「あァ、そういやお前サンもだったか。 ……まァ、ちっとばかしナンギかもなァ」 視界の外で幾人分か、パタパタと走る小さな足音。 バッチリシッカリ とり憑かれている 側に居る。なかなか姿は見ないものの。スコップを差して、掘り起こして、穴の外へ土を盛って。 無心に繰り返す動きが、掛けられた言葉で一瞬澱んだ。 「――おれのやったモンつけてんだ、 十中八九お前サンでちがいねェだろうよ」 (-66) 2021/07/14(Wed) 12:55:31 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「お前サンの話はややこしいンだよなァ……」 流れ落ちる汗をグイと手の甲で拭う。 汚さぬ様に上着は裏口に置いてきていた。 「“商人のミロク”と、そうでないお前サンと。 ……わかんねェなァ。 それってまったくの別モンなのかい」 そう零してから、暫くの間。 傍目には変わらず黙々と腕を動かし―― 不意に、スコップをザクリと縦に突き立てた。▼ (-74) 2021/07/14(Wed) 14:58:33 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 持ち手から手を離し、一つ伸びをして。 チラリと相手に視線を送る。頬に土汚れをつけた儘。 「――お前サン、どうして死んでくれたんだろ。 おれァ商人サンには“ガキども生かすために”って 頼んだつもりなんだけども」 諳んじる様に流れる様に言葉を吐く。 学が無いなり、考えて。用意できた返答がこれだった。 「それだけがお前サンの死んだ訳なら、 お前サン、商人として死んだんだろうさ。 それがチットモ関係ねェなら、 お前サン、商人じゃねェお前サンとして死んだんだろう」 (-75) 2021/07/14(Wed) 15:00:49 |
【秘】 遊惰 ロク → 焦爛 フジノ キョトン、と。差し出された水筒と少女の顔を見比べて。 どこか面映ゆそうに受け取る。 「こいつはどうもアリガトウ。 アハ、ワザワザ用意してくれたのかい」 それなりに渇いていたのだろう、直ぐに蓋を開ける。 喉仏が幾度か上下して、一気に中身を目減りさせたのち。 「おれァ、……どうするかなァ。 ……出てきたとこには戻んねェつもりだけども。 アー、ここだけのハナシ。親から逃げてきてんだ、おれ」 まさか 『おっ死んじまう予定です』などと 馬鹿正直に答える訳にもいくまい。 シカシ咄嗟に上手い嘘も吐けず、そんな風に返事をした。 (-85) 2021/07/14(Wed) 20:19:01 |
【秘】 遊惰 ロク → 被虐 メイジ「お医者サンから、お前サンに」 いつかの時間。そう言い乍ら一枚の封筒を手渡す。 封がされておらず、中には数枚の紙が入っている。 ――少年の手に渡ったと同時、 男は「アッ」とワザとらしい声を上げる。 「封しとけって言われたんだが、忘れちまった。 悪いが坊チャン、しといてくんねェか」 糊は宿直室にあると言って、そンじゃこれにて。 返事も待たずヒラリと手を振り、男はサッサと立ち去った。 死人に口なしとはマサにこの事。中身を見るも見ないも、少年次第だ。 そも、少年を只、大人しく守られているだけの存在と見做さなかったのは、かの医者なのだし。 (-86) 2021/07/14(Wed) 20:27:13 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「……。そうかい」 何かを露わにする程の体力も残っておらず。 ただ相槌を打って、男は再びスコップを握る。 「お前サン、いなかったことにはなんねェだろ。 いなくなって泣く子だっていンだから。 ………………、おれが言えたことじゃねェんだが」 下を向いて作業を続け乍ら、そう言った。 ……本当に、言えた義理ではない。 (-88) 2021/07/14(Wed) 20:35:45 |
【秘】 遊惰 ロク → 焦爛 フジノ「――どうだろ、なァ。 おれァ先のこと、まだ考えてねェからさ」 “まだ”なんて、言葉の上では小さな、 けれども総じて大きな嘘を口にする。 商人がやってくれたのはそういう事だったのか、 と思い乍ら、回りにくさを覚える口を開く。 「……そうだなァ、もし、都会にでるって決めたら、」 それから一度水筒の口に唇をつけて、 その必要もないというのに軽く湿らせる様にして。 「そん時は、もうちっと。 飯をキチント食えてそうなお嬢サンに、会えたらいいなァ」 ヘラリと笑って、 あるかも分からぬ 未来を語った。 (-91) 2021/07/14(Wed) 20:48:36 |
ロクは、死んでいない。まだ、今のところは。 (a14) 2021/07/14(Wed) 20:53:41 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「――お前サン、諦めてなかったのか」 “悲しくなってくれましたか?”。 その問いに答えは返せず、返さず。 青年は只そう言って、困った様な顔して笑った。 (-94) 2021/07/14(Wed) 20:57:34 |
ロクは、一先ず、今日も生きていた。 (a19) 2021/07/14(Wed) 20:57:41 |
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