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【人】 遊惰 ロク 嵐が去り雨があがれど、 救助の手が届く迄にはもう少しばかり時間を要する。 それ迄は生きねばならない。 何せ恐らく残っているのは子ども達と己の三人きり。 放り出す事は憚られた。……これ以上、死を見せる事も。 「――残ってても雨でやられちまってるかねェ…… …………アー……ここは入っていいモンかなァ」 ――という訳で、男は今日も生きている。 これからは食事も多少は口にするのだろう。 今はどうやら、探し物をしているらしい。 独り言をぼやきつつ、院内をフラフラ歩き回っている。 (1) 2021/07/12(Mon) 13:41:56 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロクミロクの遺体を運ぶ二人を見た。 メイジが行うならまだ理解できるが、 ロクは心境が変化したのだろうか。 今の自分に手伝える事は何もない。 踵を返し、宿直室へ向かう。 そして卓袱台の上に置かれたままの封筒を見れば、 少し困ったように頬を掻いた。 「んん、どうしましょうかね……」 加担する人間が増えたのならば、遺書も書き変えた方が良いだろう。 死者の言葉が伝われば苦労しないのだが……。 「…………、いや」 ふと、生前の会話を思い出す。 まるで死者と話したかのような言葉。 彼なら、もしかすると。 手術室で処置を待てば良いが、 もしも自分の存在を伝えられてしまえばそれこそ恥だ。 少し考えて、貴方がひとりになるのを待つ事にする。 (-16) 2021/07/12(Mon) 18:18:14 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ 少年と別れ、再び院内を彷徨いている。 行儀悪くポケットに手を突っ込んでフラフラと歩く、 その顔色は余り良くは無い。 ――姿を認めたか声を掛けられたか、足を止めて。 最後の別れ方、そして今は同じ行為に手を染めた後だ。 一瞬だけ歪んですぐに戻された表情、 その一瞬にはアリアリと。『気不味い』と書いてあった。 (-18) 2021/07/12(Mon) 19:49:59 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク「……ああ、本当に見えるんですねえ」 あの時、普段ならば口にしないような本音を吐いてしまった。 こちらにも気不味さはあるが、 どちらかといえば申し訳なさが勝っている。 結局のところ、貴方の善性は守れなかったのだから。 「ね、共犯者さん。少し手伝ってほしい事があるんですよ。 なに、貴方にとっても都合が良い筈です」 生前よく見られた笑顔が、そっくりそのまま浮かぶ。 此れが繕ったものである事は、 ついぞ誰にも知られないままだった。 手招きをすれば、律儀に廊下を歩いて宿直室へ向かう。 室内には入らず、廊下から中を指差した。 ニエカワの目の届く位置にいようとしているらしい。 「あれ、遺書なんですけれど。 ここを出る時に、中身を書き換えて欲しいんです」 室内を覗き込めば、 卓袱台に一通の封筒が置かれているのが見える。 (-20) 2021/07/12(Mon) 20:40:33 |
【人】 遊惰 ロク>>7 メイジ 説明を聞き乍ら、手順を想像して。 メスを動かす少年の様子を案じたものの、 兎も角己も手を動かそうと、目の前のそれに刃を向ける。 「――――――、 あ 」 からん。硬質な音。 取り落とした刃物を拾い上げた。 それから、何事も無かったかの様に事は進む。 ツプリと刃を突き立て、ぐ、と力を籠める。 それに合わせて、耳元、黒の十字架が揺れる。 教わり乍ら、真似をし乍ら、 死体をバラバラに――食らう為の“肉”へと変えていく。 元々手先が器用な男だ。飲み込みも悪くは無い。 滞りなく作業は進行されるだろう。 その間、何を考えていたのか、いないのか。 他のものが窺い知ることは難しい。 男は、誰よりも隠す事が得意だったから。 (8) 2021/07/12(Mon) 21:27:13 |
【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ「……そうなるなァ、 お前サンがマボロシじゃなけりゃ」 顔を見れたら幾らか言いたい事はあったのだけども、 それらは一旦胸の内に押し留めることにして。 軽い返事をして、常の笑い顔を浮かべる。 カラリとした表情も軽快な口振りも、 友を励ます内に身について、客席を前に磨かれたものだ。 「はいよ、なんだろ。 むずかしいことじゃなけりゃァいいけども」 手招かれ、少し後ろをダラダラと着いていく。 傍目には一人で喋って歩いてる様にでも見えてンのかな、 とチラと浮かんで、まァ今さらかと思った。 辿り着き指差された先、医師を置いて室内に入る。 封筒を手に取り、しげしげと眺めて。 「おれが読んでもいいのかい」 卓袱台の前に佇んだ儘、廊下へ向かって声を投げた。 (-23) 2021/07/12(Mon) 22:47:03 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク「どうぞ。特定の個人に宛てた物ではありませんので」 封筒には『此手紙を讀んだ方へ』と書かれていた。 封を開ければ、中には数枚の手紙が入っている。 『全て私が脅し關わらせた事です。』 という書き出しから、その遺書は始まる。 (-24) 2021/07/12(Mon) 23:09:56 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク『彼の御父上に金を借りてゐました。』 『出世拂ゐとゐふ話でしたが催促をされ、 返すあてが無ゐのでやむなく殺めました。』 『食糧が足りなゐ中、 私は嘗て彩帆で食べた肉の味を思ひ出しました。 だうしても死ぬ前に再度味わひたゐと思ひ、 明治君を脅したのです。』 『私が殺し、彼に處理を手傳わせました。 つまり彼は壱人も殺してなどゐません。』 『大變申し譯無く思つてをります。 私の命だけでは拭ゑぬ罪とは思ゐますけれども、 明治君は被害者と云へませう。 だうかご容赦くださひ。』 内容に目を通せば、概ね罪の自供と 明治明という少年への恩情を願う物であることがわかるだろう。 (-25) 2021/07/12(Mon) 23:10:46 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク貴方が読んでいる最中であろうと、男は構わず話し続けた。 「貴方も関わってしまったでしょう。 ですから書き換えて、新しい遺書を作って欲しいんです。 他にも都合が悪い事があれば、全て僕が行った事に。 余所者の行いにするよりは、説得力があるでしょう。 ……ああ、家族はいませんのでそこもお気になさらず」 汚名に関して興味が無いのか、それとも慣れているのか。 男は淡々と、己を貶めるようにと告げる。 (-26) 2021/07/12(Mon) 23:12:02 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ「…………」 カサリと音を立てて便箋を捲る。 捲り乍ら、医師の声が耳を通り抜けていく。 ――あァ、なんだ。と男は思った。 やっぱりお前サン、脅してなんかいねェンじゃねェか。 アハ、と思わず洩れた笑い声をあげて。 顔を上げ、頼まれた手伝いとやらを請け負う。 「死んだあとから弄られんじゃ、遺書も形ナシだなァ。 ――わかった、必要がありゃおれが書き換えとく」▼ (-27) 2021/07/13(Tue) 0:02:03 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ まァ、と付け加えて言う事には。 「あんましその必要もねェとは思うが。 ――あのお嬢サンは“なにも知らねェ”ままなンだし。 おれも、もう後のことは考えねェでいいからなァ……」 先が無い事を仄めかし乍ら、続きに目を通している。 時折、読めない字に当たって首を捻りつつ。 尤も、後の事を考える必要が有れども無かれども、 この話に関してはさしたる違いは無いのだろうけれど。 男は、己の責を誰かに負わせるつもりは無かった。 (-28) 2021/07/13(Tue) 0:13:10 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロク男からすれば、貴方も充分に子供である。 生きるべきだと諭そうとして、 「……。まあ、自分の命ですから。 自由にすれば良いと思いますけど」 自分が教わった事を思い出し、やめた。 死ぬべきだとされる事と、生きるべきだとされる事。 その二つに差など無い。 せめて貴方達には自分の意思で決めて欲しい、 男はそう願っている。 「そこに新しい封筒と糊がありますから、 入れて封をしておいてください。 僕がこうして頼んだ事は伏せたまま、 メイジ君に渡して頂けますか? ……僕がここに居る、とは知られたくないもので」 小さく苦笑した。 彼に合わせる顔が無いのだった。 たとえ彼から見えないとしても。 (-29) 2021/07/13(Tue) 0:56:57 |
【人】 遊惰 ロク>>9 >>10 メイジ 少年の声を聞くうち、手が止まる。 内心をチットモ面に浮かべず涼しい顔していた男の、 紫に黒を少し落とした、暗い色した瞳が揺らぐ。 瞬いて、少年の方を向いて、それから下を見て。 いつの間にやら詰めていた息を細く吐き出した。 「――ついでって、ハハ、ひでェひとだなァ。 おれは“ガキども守って死んでくれ”って、 ……たしかに、そう。……、言ったってのに」 真に酷いのは誰か知っている癖、酷い人だと詰って笑う。 きっと、これまでで一等下手くそに。 そうして、最早形を留めていない肉塊。 そこに彼の心は無いと知り乍ら、ボソリと呟きを落とす。 「……そんなのが、うれしかったのか、お前サン。 …………ばかだなァ 」生首の、耳に光る白い石。触れようとして―― 伸ばした手が赤く濡れている事に気がついて、止めた。▼ (11) 2021/07/13(Tue) 11:19:47 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ「もうちっと―― あの子らブジに帰すまでは、気張ってみるがね。 ……終わりがわかってンのはいいモンだなァ」 本音を溢して、ヘラリと笑って。 仕切り直す様に、便箋を掲げて軽く振る。 「坊チャンには頃合いみて渡すとしようか。 知られたくねェってンなら、 ワザワザ言うこたしねェから安心してくれ。 ……アー、お前サンの体弄ったのはまずかったかなァ」 まァ、その辺りは適当に書き足すかどうにかするだろう。 医師なりの子どもの守り方がそれだというのなら、 キッチリやり遂げさせてやりたいと思ったものだから。 それから、便箋を元の通り折り畳み乍ら、 「ほかにやっとくことはあるか」と軽く問う。 (-37) 2021/07/13(Tue) 17:17:12 |
【人】 遊惰 ロク>>13 >>14 メイジ 「……はいよ、セキニンは取ろうかねェ」 笑い顔を僅かに歪めて、そんな風に返事をした。 困った様なその顔は、少しだけ幼く見えるだろう。 それから。もう一人を台に寝かせ、刃を入れる。 手順は大凡理解した。 肉を断ち骨を折り、テキパキと進めていく。 こんな時間、早く過ぎ去ってしまう様に。 「――そういやお前サン、こないだ、ここで。 キット質問をはきちがえてたと思うンだよなァ」 事を進め乍ら、合間にふとそんな事を語り掛ける。 続く一言を口にする時だけは手を止めて、 少年の大きな片目を正面からジッと見据えて。 「おれは“この医者の自殺を”手伝ったかってきいたんだ」 スイと視線を外し、再び手を動かしつつ。 それが当然の事のような軽々しさで、一度言葉を締め括る。 「こいつは自殺だろ。 しょ お前サンが殺しただなンて、そう背負いこむ必要はねェさ」 この時の男は医師の死んだ経緯も知らなければ、未だ遺書を目にしてもいない。 只、抵抗の跡が見て取れなかったという事実だけでそう確信していた。 (15) 2021/07/13(Tue) 20:28:31 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク(兄サン、どこいんだろ。 ……呼びゃァ出てくるかねェ) 暫く見かけない姿を探して、院内を彷徨いている。 腕の中には、蓋をしたブリキのバケツが一つ。 (-40) 2021/07/13(Tue) 20:42:01 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロク「ま、完全無罪ってのも難しいでしょうから。 特赦さえ得られれば良いですよ。 世間が彼を被害者と扱うのであれば、それでいい」 加害者として生きる事の苦痛は、知っているつもりだ。 被害者として生きる事の苦痛は、知らないのだが。 「他に頼む事はありませんよ。……あ、いや」 会話を終わらせようとして、思い出したように貴方を見る。 “彼方” の共犯者 にはしておいて“此方”にはしない、というのは筋が通らないだろう。 「少しの間だけで良いので、目を閉じてもらえませんか」 (-41) 2021/07/13(Tue) 20:50:47 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ そういうモンか、と畳んだ紙を眺める。 閉じた世界で 虐げられて 然程広くは無い。 「――目を、? ……、」 彼の前で目を閉じる事に、躊躇いを覚えはしたものの。 ――大人の前で無防備を晒す事に、虞を抱きはしたものの。 「はいよ。なんだろ。 ……見られたくねェモンでもあったかねェ」 アッサリと ――そのつもりで、実際のところ恐る恐る―― 言われた通りに瞼を下ろし、 暗くなった視界の中で話し掛け続ける。 沈黙を恐れたのだろう。 (-44) 2021/07/13(Tue) 22:03:54 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロクその頭部に手を伸ばす。 案の定触れる事はできず、ただ虚しくすり抜ける。 それでも。 撫でるように、掌で頭の形をなぞった。 「……はい、おしまい。 もう目を開けて良いですよ」 貴方が目を開ける頃には、もう手を下ろしている。 本当は見られても構わなかったが、貴方は拒むだろう。 貴方がこの手を求めていたのは今ではなく、 ずっと幼い頃だったであろうから。 全てが過ぎ去り、今となってはどうしようもない事だと理解しながら──、 そうしたかったという只の自己満足だ。 (-45) 2021/07/13(Tue) 22:27:08 |
【秘】 遊惰 ロク → 失格 セナハラ「――、終いかい」 クロスグリが露わになって、瞬く瞼に幾度か隠される。 僅かな時間振りの色彩が少しばかり目に痛かった。 「そンじゃ、まァ、これにて。 なにか用がありゃアまた呼んでくれ。 もうちっとはここにいンだろ、互いにさァ」 今、何を貰ったのか――与えられた事も知らぬ儘の男は、 そんな風に。アッサリとした別れを告げる。 至って平々凡々な挨拶は、だからこそ可笑しな話だった。 (-48) 2021/07/14(Wed) 1:23:15 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロクあなたの足元に黒猫が一匹。 小さくないて、じゃれつけば姿を消した。 「バケツなんて持ってどこに行くんですか」 それがどんなものかわかっていても、 男はそう話しかけました。 (-51) 2021/07/14(Wed) 8:31:22 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 足元に現れた猫を踏んづけぬ様蹴らぬ様、 避けようとしてたたらを踏む。 「――あァ、いいとこに。 お前サンの墓、つくりにいくとこなんだけども。 どこに埋めりゃァいいかねェ」 一人分の首と骨とが収まったそれを抱え直して、 顔を上げた男はそう返事をした。 (-52) 2021/07/14(Wed) 8:54:36 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「私にソレを聞くんですね。 ニエカワさんと黒猫のお墓を作ったんで、その近くにでも。 深く掘るように言われましたが力は大丈夫ですか? タマオさんを呼べばよいと思います」 警察官はあまり文句なくやってくれるだろう。 見えている自分たち以外からは異常な提案ではあるのだが。 彼が異常な存在であるのは殺されている身からすれば十二分に知っているのだ。 そのまま案内をする、病院の裏口から出て少しした場所。 泥で山も見えなくなっているが比較的無事な地表があった。 彼らがいる場所だ。 (-53) 2021/07/14(Wed) 9:55:37 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「聞けンだし、どうせなら好きなとこがよかろ。 ……んー、まァ、おれだけでやってみるかねェ」 時間はかかるだろォが、と言いつつ 拝借したスコップを持って着いていく。 辿り着いた先、最近均されたと思わしき場所が二つ。 それが彼らの墓なのだろう。 バケツを脇に降ろし、静かに手を合わせる。 それから、程近くの地面にスコップの先を突き立てた。 十分な深さへ到達するまで、短くはない時間を要する。 只管に土を堀り返し乍らも、 話し掛けられれば手を止めぬ儘で応えるだろう。 (-56) 2021/07/14(Wed) 10:41:10 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「それもそうですか、死者の声が聞けるのも難儀ですね。 私は死んでいる方と意識して会話をすることがありませんでしたから、随分恵まれていました」 不思議な体質でしたとあなたの手を止めない程度にぽつぽつと会話を溢し自分が埋まる穴が掘られていくのを眺める。 他人事のようにみえてしまうのは、死んでしまっているからなだけだろうか。 「その骨って、"私"なんですかね」 (-62) 2021/07/14(Wed) 11:07:50 |
【人】 遊惰 ロク>>20 >>21 メイジ “会えるんだったら”。そういや見てねェなァ、と思う。 どこぞに隠れてしまったか、もうここにはいないのか。 その答えが分かるのは、きっとこの後直ぐの出来事だ。 “やっぱりやさしいね”。やさしかねェよ、と小さく笑う。 ――生きてたらこの年頃だった、きょうだいの様な友らがいた。 放っておけなかった理由は、只それだけだ。 汚れた手をよくよく洗って、綺麗に拭いて。 座る少年に近寄り「拭くぞ」と一声かけてから、 顔の汚れをグイと拭う。 痛みのない程度に、しかし繊細さの足りない力加減で。 それからそこかしこが赤く染まった包帯を替えてやる。 その儘ではお嬢サンの前にも出づらかろうと。 「――そンじゃこれにて。 おれの方こそ、どうもアリガトウ」 それらを終えれば、ブリキのバケツを一つ手に取って。 蓋したそれを抱えて暇を告げ、少年を残して部屋を出た。 (22) 2021/07/14(Wed) 12:11:24 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「あァ、そういやお前サンもだったか。 ……まァ、ちっとばかしナンギかもなァ」 視界の外で幾人分か、パタパタと走る小さな足音。 バッチリシッカリ とり憑かれている 側に居る。なかなか姿は見ないものの。スコップを差して、掘り起こして、穴の外へ土を盛って。 無心に繰り返す動きが、掛けられた言葉で一瞬澱んだ。 「――おれのやったモンつけてんだ、 十中八九お前サンでちがいねェだろうよ」 (-66) 2021/07/14(Wed) 12:55:31 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「……そうですかね?」 声色が少しだけ明るく聞こえたかもしれない。 「私、商人として死んだのか私として死んだのか、 あんまり自信がないんです。 理由はすべてミロクに起因しているんですが。 ……ああ、わかりにくいですかね。 ミロクというのは商人の名前で、私は名前がありません。 だから私の意思でちゃんと死ねたのか、わかりかねています」 あのとき話した言葉より少し揺れた言葉。 生き方を変えられなかった男は、自分を見つけられていない。 自分のものがようやく手に入ったのもあの瞬間だった。 今なら言っても良いだろう、生死で揺れているのは同じだ。 「誰かの為に、誰かのせいで。あなたは言いましたが。 何よりも、自分がそこにいたのかがわからなくなるのはあまり良い気分ではないと経験則から語りましょう」 (-68) 2021/07/14(Wed) 13:05:23 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロク視界の隅に捉えたままの少年に、一瞬目をやった。 「そうですね。 まあ、僕はニエカワくん次第ですが」 貴方がどんな選択をしようと、 停滞する己から見れば進むことに変わりはない。 だからこそ、別れの言葉はこのひとつしかなかった。 「……いってらっしゃい」 (-69) 2021/07/14(Wed) 13:15:20 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「お前サンの話はややこしいンだよなァ……」 流れ落ちる汗をグイと手の甲で拭う。 汚さぬ様に上着は裏口に置いてきていた。 「“商人のミロク”と、そうでないお前サンと。 ……わかんねェなァ。 それってまったくの別モンなのかい」 そう零してから、暫くの間。 傍目には変わらず黙々と腕を動かし―― 不意に、スコップをザクリと縦に突き立てた。▼ (-74) 2021/07/14(Wed) 14:58:33 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク 持ち手から手を離し、一つ伸びをして。 チラリと相手に視線を送る。頬に土汚れをつけた儘。 「――お前サン、どうして死んでくれたんだろ。 おれァ商人サンには“ガキども生かすために”って 頼んだつもりなんだけども」 諳んじる様に流れる様に言葉を吐く。 学が無いなり、考えて。用意できた返答がこれだった。 「それだけがお前サンの死んだ訳なら、 お前サン、商人として死んだんだろうさ。 それがチットモ関係ねェなら、 お前サン、商人じゃねェお前サンとして死んだんだろう」 (-75) 2021/07/14(Wed) 15:00:49 |
【秘】 焦爛 フジノ → 遊惰 ロク貴方が外から戻ってくると、フジノが近づいてくる。 「お疲れ、様。 ……外、暑くなってきた、から、喉渇いてないかなって、思って」 そう言って水の入った水筒を差し出した。 「……ロクさんは、救助が来て、その後は、どうするの? 来たところに、戻るの?」 そも、貴方はどこから来たのだったか。 そういう話を全然していなかったと思い出す。 (-81) 2021/07/14(Wed) 19:59:39 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「あなたのことを考えたかどうかで決まりますね……」 今までのややこしさを吹き飛ばし、簡潔にまとめる。 話すことが思考の整理になっているのだろうか。 「言うとおり取引にあなたは入っていなかったんです。 死ぬことは、入っていたと思いますが。 ……私あなたのために(も)死にましたか?」 罪を後悔する生者にする質問ではない。 「…………、答え出ていましたね」 そういえば、言っていた。なんだ、私はいましたか。 「私名前も、戸籍もないんです。 だから死んでしまったら本当にどこにもいなかったことになります、それが寂しいなと思っていたところだったんですよ。 あなたのおかげで、あまり気にしなくて良さそうです」 (-84) 2021/07/14(Wed) 20:11:25 |
【秘】 遊惰 ロク → 焦爛 フジノ キョトン、と。差し出された水筒と少女の顔を見比べて。 どこか面映ゆそうに受け取る。 「こいつはどうもアリガトウ。 アハ、ワザワザ用意してくれたのかい」 それなりに渇いていたのだろう、直ぐに蓋を開ける。 喉仏が幾度か上下して、一気に中身を目減りさせたのち。 「おれァ、……どうするかなァ。 ……出てきたとこには戻んねェつもりだけども。 アー、ここだけのハナシ。親から逃げてきてんだ、おれ」 まさか 『おっ死んじまう予定です』などと 馬鹿正直に答える訳にもいくまい。 シカシ咄嗟に上手い嘘も吐けず、そんな風に返事をした。 (-85) 2021/07/14(Wed) 20:19:01 |
【秘】 遊惰 ロク → 被虐 メイジ「お医者サンから、お前サンに」 いつかの時間。そう言い乍ら一枚の封筒を手渡す。 封がされておらず、中には数枚の紙が入っている。 ――少年の手に渡ったと同時、 男は「アッ」とワザとらしい声を上げる。 「封しとけって言われたんだが、忘れちまった。 悪いが坊チャン、しといてくんねェか」 糊は宿直室にあると言って、そンじゃこれにて。 返事も待たずヒラリと手を振り、男はサッサと立ち去った。 死人に口なしとはマサにこの事。中身を見るも見ないも、少年次第だ。 そも、少年を只、大人しく守られているだけの存在と見做さなかったのは、かの医者なのだし。 (-86) 2021/07/14(Wed) 20:27:13 |
【秘】 焦爛 フジノ → 遊惰 ロク「外の作業、手伝えなかったから……できる事、しようと思った、の」 ほっとしたように水を飲む貴方を見た。 「……そう、なの? ロクさんも、私も……メイジも。 似た者同士、だったんだね」 すんなりと信じた。自分の事も、メイジの話もあったから。 貴方が死んでしまうつもりだなんて、思ってもいない。 「……なら、また、会える? 私、ね。都会に出て、ミロクさんの紹介してくれた所へ、行くの。 もし、ロクさんも都会へ行くなら……会えたらいいなって、思って」 言いながら、腹を摩った。 (-87) 2021/07/14(Wed) 20:27:34 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「……。そうかい」 何かを露わにする程の体力も残っておらず。 ただ相槌を打って、男は再びスコップを握る。 「お前サン、いなかったことにはなんねェだろ。 いなくなって泣く子だっていンだから。 ………………、おれが言えたことじゃねェんだが」 下を向いて作業を続け乍ら、そう言った。 ……本当に、言えた義理ではない。 (-88) 2021/07/14(Wed) 20:35:45 |
【秘】 名無しの ミロク → 遊惰 ロク「泣かせたんですか。知りませんでした」 すべて見ていたわけでもなくて、死体に興味がなかったわけですから。 ピアスが残っていたのは嬉しかったです。 「あなたは悲しくなってくれましたか? 心が痛むのならば、いい場所がありますよ。 安くて、美味しいものが食べられます。 死ぬ前に贅沢しませんか、私の荷物隠してあるんです路銀にしていいですよ」 (-89) 2021/07/14(Wed) 20:40:49 |
【秘】 被虐 メイジ → 遊惰 ロク「……え? あ、うん──」 メイジは不思議な面持ちで封筒を受け取る。 さっさと立ち去ったあなたを、唖然と見送って 封のされてないそれを見つめる。 そういえば、手紙を置いておいたと 彼が生前言っていたのを思い出した。 ──中身は見ないでください、とも。 (-90) 2021/07/14(Wed) 20:47:48 |
【秘】 遊惰 ロク → 焦爛 フジノ「――どうだろ、なァ。 おれァ先のこと、まだ考えてねェからさ」 “まだ”なんて、言葉の上では小さな、 けれども総じて大きな嘘を口にする。 商人がやってくれたのはそういう事だったのか、 と思い乍ら、回りにくさを覚える口を開く。 「……そうだなァ、もし、都会にでるって決めたら、」 それから一度水筒の口に唇をつけて、 その必要もないというのに軽く湿らせる様にして。 「そん時は、もうちっと。 飯をキチント食えてそうなお嬢サンに、会えたらいいなァ」 ヘラリと笑って、 あるかも分からぬ 未来を語った。 (-91) 2021/07/14(Wed) 20:48:36 |
ロクは、死んでいない。まだ、今のところは。 (a14) 2021/07/14(Wed) 20:53:41 |
【秘】 遊惰 ロク → 名無しの ミロク「――お前サン、諦めてなかったのか」 “悲しくなってくれましたか?”。 その問いに答えは返せず、返さず。 青年は只そう言って、困った様な顔して笑った。 (-94) 2021/07/14(Wed) 20:57:34 |
ロクは、一先ず、今日も生きていた。 (a19) 2021/07/14(Wed) 20:57:41 |
【秘】 焦爛 フジノ → 遊惰 ロク「じゃあ、今、考えて……ううん、やっぱり、いい」 じっと貴方を見て、そう言いかけ……途中で口を閉ざした。 「それぐらいなら、するよ。 見せられるように、する。 ……その、時は」 腹をそっと撫でる。 「その時は、『この子』を見せる、からね。 絶対。会いに来て。 皆に生かしてもらった、子だから」 そう言って、女は笑った。 (-95) 2021/07/14(Wed) 20:59:25 |
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