情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [メモ 匿名メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
名前 | ID | 生死 | 勝敗 | 役職 |
---|---|---|---|---|
寸善尺魔 ガイオ | master | 襲撃死 (2d) | 敗北 | 村人陣営:村人 村人を希望 |
その手にあいを エリカ | 66111 | 呪詛死 (3d) | 敗北 | 蒼月教会:聖女、宝玉 聖女を希望 |
黒眼鏡 | gt | 襲撃死 (3d) | 敗北 | 人狼陣営:皇狼、宝玉 皇狼を希望 |
路地の花 フィオレ | otomizu | 生存者 | 勝利 | 妖精:妖花、宝玉 妖花を希望 運命の絆★テオドロ |
貴方の傍で幸福を ニコロ | ぴんじぃ | 襲撃死 (4d) | 敗北 | 人狼陣営:凶狼、宝玉 凶狼を希望 |
favorire アリーチェ | poru | 恐怖死 (5d) | 敗北 | 蒼月教会:諜報員、宝玉 諜報員を希望 |
新芽 テオドロ | backador | 処刑死 (4d) | 勝利 | 殉教者:魔女、宝玉、隷属 魔女を希望 |
口に金貨を ルチアーノ | toumi_ | 襲撃死 (5d) | 敗北 | 邪気陣営:魔術師、宝玉、邪気 魔術師を希望 邪気だった 運命の絆★エルヴィーノ |
きみのとなり リヴィオ | sinorit | 襲撃死 (6d) | 敗北 | 人狼陣営:凶狼、宝玉 凶狼を希望 |
指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ | eve_1224 | 生存者 | 敗北 | 邪気陣営:決闘者、宝玉、邪気 決闘者を希望 邪気だった 運命の絆★ルチアーノ |
拷問吏 ネロ | reji2323 | 処刑死 (5d) | 敗北 | 村人陣営:無思慮、宝玉 無思慮を希望 |
オネエ ヴィットーレ | arenda | 処刑死 (3d) | --:骨噛み、宝玉 骨噛みを希望 | |
あなたを守り続ける カンターミネ | shell_memoria | 襲撃死 (4d) | 敗北 | 村人陣営:猫又、宝玉 猫又を希望 |
摘まれた花 ダニエラ | oO832mk | 襲撃死 (6d) | 敗北 | 叢魔陣営:波魔、宝玉 波魔を希望 |
Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ | redhaguki | 呪詛死 (4d) | 敗北 | 妖精:樹木子、宝玉 樹木子を希望 |
Commedia ダヴィード | NineN | 処刑死 (6d) | 敗北 | 村人陣営:人犬、宝玉 人犬を希望 |
Il Ritorno di Ulisse ペネロペ | unforg00 | 生存者 | 敗北 | 蒼月教会:諜報員、宝玉 諜報員を希望 |
夜明の先へ ニーノ | mspn | 襲撃死 (3d) | 敗北 | 村人陣営:共鳴者、宝玉 共鳴者を希望 |
L’ancora ロメオ | susuya | 生存者 | 敗北 | 村人陣営:共鳴者、宝玉 共鳴者を希望 |
幕の中で イレネオ | rik_kr | 襲撃死 (3d) | 敗北 | 村人陣営:暗殺者、宝玉 暗殺者を希望 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ朝が来る。 一度は正しき正義の刃として猛威を払った取締法という剣が失墜し、嫌疑の薄い者は徐々に釈放され始めた。 捕まったものはノッテファミリーや警察内外ばかりに限らず、まばらにそれ以外の姿もあり、 またある程度取り調べの終わった者たちほど、見送りもそこそこに送り出されていくような状態だった。 おそらくは街の様子も、マフィアも、警察も、緩やかに元に戻っていくのだろう。 ほんの少しの革命で何もかも全てが変わるほど、民衆の日常とは弱い者ではないらしい。 その人並みの中には、ある一人の男が含まれていた。場違いであろうその姿が。 罪を背負った長躯はその日、数日ぶりの太陽を見た。ひどく眩しい朝だった。 秋晴れは路面を艶やかに輝かせ、影を色濃く街を白く照らし出すかのように煌めいていた。 嫌疑をかけられた者の中には家族の迎えがあるものもあり、さまざまに人の行き交いがあった。 非日常と日常とが交差する。世界は引かれた線を曖昧に、混ざり合って当たり前を取り戻しつつあった。 ボーイスカウトのパレードが近くを通る。署から少し離れた通りの方で楽団が横切る。 この日は祝日のようにささやかに賑わっていて、平和の鳩が空に放たれるかのように美しい日だった。 男が空を見上げて、右手を空へとに翳す。 天気予報は、どうやら当たったようだった。 #BlackAndWhiteMovie (0) 2023/09/26(Tue) 21:45:12 |
【人】 黒眼鏡「サァテ」 カウントダウンの指折りが終わって、 鼻歌が独房に流れ出す。 「どうなるかな」 『プラン』はもう成立した。 あとは、どう進めるかだ。 (1) 2023/09/26(Tue) 21:49:31 |
【人】 黒眼鏡「まァとりあえず」 よっこいせ、と立ち上がり。 「『合図』からだな」 独房の中にどうやってか持ち込んでいた、 携帯電話のボタンを押した。 (2) 2023/09/26(Tue) 21:51:48 |
【人】 食虫花 フィオレ同じ頃、近くのショッピングモールで記念セールが行われているらしい。 朝から景気よく花火も上がっていて、パレードも相まって人通りはいつもよりも少し多いくらい。 キャップを目深に被って、カジュアルなパーカー姿の女が人込みの中を歩いている。 ノーハンド通話でもしているのか、ぶつぶつと何かを呟きながら。 花火を眺める人達の間を縫っていく。 「―――」 長身の男が、視界に入る。 目を細める。口元のインカムに何事かを呟いて。 後ろから近付いていく。その匂いは、姿は、よく知っているものだったから。 殆ど至近距離。背中に近付いて、口を開く。 「―――Ciao.」 そんな声は喧騒にかき消される。 背中に突き付けた拳銃が、間違いなく右の胸に向けられて。 人差し指が、引き金を引いた。 消音器で抑えられた音は、花火にかき消えてしまうだろうか。 それでもそれは確かに、放たれたのだ。 #BlackAndWhiteMovie (3) 2023/09/26(Tue) 21:53:37 |
【人】 黒眼鏡──ポン、と音がする。 釈放されていく人々の群れの中から、 あるいはその群れに紛れた何者かが、 人ごみの中から花火を打ち上げた音だ。 しゅるしゅると煙を曳いて立ち上った花火は、 警察署の直上でぽん、ぽんと音を立てて破裂した。 それがなんなのか、分かるものは少ないだろう。 ただ、何らかの『合図』であろうと思うだけだ。 (4) 2023/09/26(Tue) 21:53:42 |
【独】 歌い続ける カンターミネ突如、混沌とした警察署内に、署内放送が響き渡る。 外の花火に続いて。それは業務連絡でも、上司からの叱咤でも、 内部告発でも、誰かの怒号でも悲鳴でもない。 力強く、軽やかなドラムの鼓動。 スネアドラムとシンバルが手を取って奏でる前奏。 貫くように、踊るサックスの音色。 トロンボーンと共に、身体が勝手に動くようなリズムを。 それらが合わさり、高まり、渦巻いていく中、 楽器のCD音源とは違う、『生の声』が叫ぶ。 聞き覚えのある者はいるだろうか?いるとしたなら、 『ライムグリーン』の髪色を思い出す事だろう。 《"Hey!Pachuco!"》 その声を合図に、署内放送の音量が最大に切り替わった。 牢の隅から隅まで。尋問室まで。 警察署内の全てに響く、バカ騒ぎのジャズの音。 この曲が流れた映画では、緑色の顔の怪人が暴れに暴れた。 仮面をつけたが最後、誰にも止められないという。 (-0) 2023/09/26(Tue) 22:00:27 |
【独】 歌い続ける カンターミネ《"Hey!Pachuco!"》《HEY!》《HEY!》 合いの手を、叫ぶ。楽しげに。同時に、署内の固定電話が 一斉に鳴り響く。受話器の先からは同じ音楽が流れて来る。 気が狂いそうな程、一瞬で深夜の警察署は騒がしくなった。 いつもの笑みがマイクの向こうに見える。 仮面ならぬ、端末を手に入れた先生は誰にも止められない。 三度、ループ処理された曲が叫ぶ。 《"Hey!Pachuco!"》 今度は、署の外で異変が起きた。 一斉に鳴り響く、耳をつんざくクラクションの音! パー、パー、パー!ファンファンファンファン!プーーーーーーーー!!ビッビー!ビッビー!! 近所の車という車が、警報音を発し始めたのだ。 静かに寝ているのは、古い時代のアンティーク品。 機械が入っていないタイプの昔の車だけ。 《"Hey!Pachuco!"》《HEY!》《HEY!》 それは勿論、警察署地下の悪ガキ達から押収した 改造車も含まれる。一般車なんか目じゃない、 バカみたいな音が地獄の底から響き渡った。パパパパパー! 近代の手が入った車達が、カーステレオを全開に。 夜中に突然歌い出す。近所中の灯りが付き、 怒号が警察署の方面へと投げかけられる。 釈放されている者以外の、立派に『証拠』の残る者も。 騒ぎに乗じて逃れる事が出来る、かもしれない。この、『先生』のように。 (-1) 2023/09/26(Tue) 22:01:25 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>3 ──パン、と音がする。 ぱっと花びらが幾つか舞った。パレードの列から薔薇の花が散る。 傍で鳴った花火のせいで、もしくは遠くの合図のせいで、銃声は随分と目立たなくなった。 子どもたちの笑顔のはるか上を通って、凶弾は晴れの日の空気を切り裂いて、 それでも他の多くに見咎められるわけでもなく、顧みられることは少なかった。 貴方の別れの言葉は届かなかった。けれど、その"指"は確かに届いた。 着弾の衝撃で長身が二度ほどたたらを踏む。 右胸から遅れて血が流れて、かふと血の匂いの混ざったため息を吐いた。 後ろに一歩、二歩と退いて、ゆっくりと前を向いた。 貴方を見つける。男の瞳は貴方を見据えた。 忘れるはずもない。貴方のことだって、男は覚えていた。 子どもたちの笑顔の傍にいつづけた貴方の優しい表情を、男は忘れていやしなかった。 #BlackAndWhiteMovie (5) 2023/09/26(Tue) 22:02:28 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ (6) 2023/09/26(Tue) 22:02:49 |
【人】 食虫花 フィオレ>>5 >>6 「………」 拳銃を持った手は、震えている。 女は、人を撃ったことなんてなかった。 あなたのことを、信頼していた。本当に、信用していたのだ。 けれど、今は。 柔らかな笑顔を浮かべていた女の顔は憎悪の色に染まって、あなたを睨みつけている。 あなたの向ける笑顔に、ぎりと歯を噛んで。 何で、笑うのよ。 何で、何で、 あの子達を手にかけたあんたが、何で #BlackAndWhiteMovie (7) 2023/09/26(Tue) 22:11:22 |
【独】 花浅葱 エルヴィーノ警察署に銃声、怒号が鳴り響く。 銃弾に貫かれた男は、まるでスローモーションがかかったようにゆっくりと視界が回転するのを見ながら、地に倒れた。 勢いよく流れ出した血は、鮮やかな赤。 動脈を損傷したのは誰が見ても明らかで、警官の中の一人がその動脈を圧迫止血を始めた。 肩関節が無事かは、この時点ではわからない。 「…………約束」 「……僕が守れなかったかも」 さりとて、意識が落ちるその直前。 つぶやかれた言葉は、宙に消える。 その意味を正しく理解できるものは、この場には一人も居なかった。 ――その後。 病院に運び込まれた男は、直ぐさま緊急手術を受けることとなる。 長時間に及んだ手術ではあったが、ひとまず命を失うことだけは免れたようだ。 (-3) 2023/09/26(Tue) 22:12:58 |
フィオレは、拳銃を下ろした。もう、必要ない。はずだ。 (a0) 2023/09/26(Tue) 22:13:09 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ「 うっっせ!! ふざけんなバカ!!俺の耳までやる気か!?」 天地も地獄の底を引っ繰り返したみたいな騒音の中。 せっかく迎えに来てやってんのに、と ハンドルを握りぶつくさ文句を垂れ。 『家族』を迎えにやって来た車は警察署の前で停まる。 譲り受けた車に、託された『預かり物』。 全部が借り物の男を乗せて。 (8) 2023/09/26(Tue) 22:14:02 |
【人】 黒眼鏡アレッサンドロ・ルカーニオは、かんかん、と格子を叩く。 「おーい、看守さんよ。 おーい」 声を張り上げ、看守を呼んだ。 訝し気な顔で近づいてくる顔を見て、 「ああ、今日はあいつじゃないんだ。 しょうがねえな」 うーん、と言ってから、懐から何かをとりだした。 (10) 2023/09/26(Tue) 22:18:52 |
黒眼鏡は、折りたたまれた<指示書>を取り出した。 (a1) 2023/09/26(Tue) 22:20:12 |
【人】 門を潜り ダヴィード路地裏の逃走劇から一夜明けて。 借り物の電動バイクを操り、「頼まれた荷物」をどうにかこうにか積み込んで昨日までとは違う種類の混沌にあるアジトへと顔を出した。 「あだだだ」 「おだちん」の鍵を使うことなく運び出されたそれに首をひねりつつ、頬を腫らしながら。 昨日までの陰鬱な雰囲気をすべて忘れたような、晴れ晴れとした顔で。 (11) 2023/09/26(Tue) 22:22:55 |
【人】 黒眼鏡「――……っ、これは」 看守が目を見開く。 「ソ。 共和国元老院終身議員の委任状ね。 」──「裏切らず、漏らさずの黒眼鏡」。 10年積み上げたその信頼は、 政治家すらも"港"を利用する切っ掛けとなっていた。 後は簡単な話だ。 絶対に裏切らないということは、 まだ裏切っていないだけ。 かくしてアレッサンドロは、自らの自由が法的に認められる手段を一つ、手に入れたのだ。 ──少なくとも、混乱の極みにある刑務所を出るまでの間は通用するくらいの。 (12) 2023/09/26(Tue) 22:23:03 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>7 パレードが横切っていく。色とりどりのリボンと花が道を過ぎていった。 道には美しい花の残滓と甘やかな香りだけが残されて、 そこにあった殺意と敵意の痕など多くの足音の後にかき消されてしまった。 貴方の手の内の刃の鋭さを、其れと見咎める者がどれほどいることだろう。 男は酔っ払いのようにふらりとした足取りで路地へと吸い込まれていく。 高い建物の間の小暗い道の、その間に長身が消える。 そこに追いかけるものがあったとして、男の姿を見つけることは出来ないだろう。 代わりに過ぎていくのは、車の走り出す音だけだった。 どこへ行ったかなど、誰が知っているようなことでもない。 #BlackAndWhiteMovie (14) 2023/09/26(Tue) 22:24:41 |
【人】 黒眼鏡看守が直立不動の姿勢になって、牢の扉を開ける。 外からはパー、パー、パー!ファンファンファンファン!!!とすさまじい音が鳴り響く中、 「ドーモ」 がちゃり。という扉が開く音は、どこにも響かずにかききえて。 「あ。預けてたやつ、返してくれる?」 (15) 2023/09/26(Tue) 22:25:13 |
【人】 歌い続ける カンターミネ「"Hey!Pachuco!" HEY! HEY!」 携帯端末を握って叫ぶ。寝てる奴が居ても叩き起こせ。 どうせここから先は大騒ぎの時間だ。 「……さーて、そろそろ誰かは動くだろ。 スマートキーハッキングしてーっと。 1、2台外壁に突っ込ませとくか。HEY!」 ドン!ドン!ドラムの音に合わせて、 それなりに高級な車が外壁に突っ込んだ。 「しばらくはこれでいい。あとは…… あーった。俺のク・ス・リ! ……あの変態メガネ野郎め、"本物"をくれてやろうかな。 ま、どうせしばらくは潜伏しなきゃいけないしな……」 呟くと、適当な無線機と知らん警官の端末を ダクトテープでぐるぐる巻きに。 曲のリピート設定をONにして、隠しておいて。 これが発覚する頃には、すっかり『先生』は 署内のどこかに隠れて消えてしまうのだった。 (16) 2023/09/26(Tue) 22:25:31 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>18 黒眼鏡 「おう、bentornato大馬鹿野郎」 正面から堂々と、散歩でもするみたいに歩いてくる姿に、 車の窓を開けて騒音に負けないくらいの大声でがなる。 それでも最初に言う言葉は『おかえり』だと決めていた。 「俺ァ『家族想い』だからな!!わざわざ来てやったんだ 『家』に帰る足が要ると思ってな!」 いつも通りの傲慢は、踏ん反り返らん限りの勢いで。 (20) 2023/09/26(Tue) 22:35:35 |
【人】 corposant ロメオ>>7 フィオレ 『ciao,fiore! 見たぜ〜』 ピピ、と耳元の電子音。続く男の声は貴女の協力者。 なんとも楽しそうな声は明らかな上機嫌。 『なんとも善き日、なんとも都合の良い日だ。 良い花火が上がったな』 『あんたも良い顔してるけど大丈夫そ?』 #BlackAndWhiteMovie (21) 2023/09/26(Tue) 22:37:02 |
【人】 食虫花 フィオレ>>21 ロメオ 「……まだ生きてた」 「……けど、これ以上は…」 人ごみの中を追いかけるだけで目立ってしまう。 それに、胸を撃ち抜いたのだ。時間の問題だろう。 「……大丈夫では、ないかも」 思ったよりも、負担が大きい。 ふらりと人ごみの中を歩いていく。 眩暈がする。吐き気が込み上げてくる。 すっきりすると、思っていたのに。 「悪いけど、車…用意しておいてくれる?」 #BlackAndWhiteMovie (23) 2023/09/26(Tue) 22:48:13 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>22 黒眼鏡 「そりゃ大変、上司の教育が悪かったみたいだなあ?」 乗り込んでくるや否やのご挨拶には軽口で。 叩かれた肩はすぐに竦められた。 「ろくでもない事仕出かす気しかしねえ前フリだな。 はいよ、しょうがねえな。一つ貸しな」 車を再び発進させれば、あなたの店まで最短距離で。 その後はちゃあんと指示通りに動くだろう。 (24) 2023/09/26(Tue) 22:52:05 |
ダヴィードは、落ち着く間もないまま車に詰め込まれた。無抵抗だった。 (a2) 2023/09/26(Tue) 22:55:06 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオぬるり、と。 口内に暖かく柔らかいものが滑り込む感覚。 常であれば不快でしかないのに 熱に浮かされた体には甘い刺激になってしまう。 しかし絡めようとすると、舌は逃げる。 「ゃ、め…っ…んんっ……」 貴方が咎めるように下肢を撫でるなら やはり震えて、体は堪える為に強張るのが分かるだろうか。 瞳は蕩けそうになるけれど やはり貴方を睨むのは止めない。 ほんの僅かに残った理性をかき集めて、堪えようとしている。 もし布越しにソコに触れられたならば 途端にその理性も瓦解するだろう。 昂り切った体に、その刺激は猛毒すぎるから。 (-4) 2023/09/26(Tue) 22:59:18 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>25 黒眼鏡 「は? 嫌だね。 地獄の果てまで行っても取り立ててやるわ」 裏社会の人間など皆平等に地獄行き。そう思っている。 だから地獄まで行けば取り立てられる。簡単なお話だ。 「はいはい、言われるまでもねえよ。 心配すんな、手前の犬くらいきっちり躾けてやらあ」 どん、とそう厚くもない胸を叩いて。 そんじゃあな、そう言ってドアは閉じられる。 きっと別れはずいぶんとあっさりとしたものだった。 (26) 2023/09/26(Tue) 23:06:58 |
【人】 corposant ロメオ>>23 フィオレ 『おう、撃ててんだろ。 ならいい、あんたは種を埋め込んだ訳だ』 『車ならもう用意してる。マップ送るからそこに行きな。 お疲れさん。あんたは経験をした。 冷たい水用意して待ってんぜ〜』 通信の切れる音、その直後に貴方の端末に通知が入る。 そこにあったマップ情報に、これが用意した車があるのだろう。 「アーハハ。そらキツイわ」 別の路地の影、ポニーテールにキャップ姿。 自分も行くか、と歩き出した。 あなたが車に着くころには、 運転席に足を組んで座っている事だろう。 #BlackAndWhiteMovie (27) 2023/09/26(Tue) 23:14:35 |
【魂】 花浅葱 エルヴィーノ―――夢を見ている。 それはいつもの幼い頃の夢。 ルチアーノの両親が殺された現場を見たときのこと。 僕は息子同様に可愛がってくれる二人が大好きだった。 でも、不幸になった。 ルチアーノが突然居なくなってしまったときのこと。 僕はいつも一緒に遊んでいた彼が大好きだった。 でも、不幸になった。 ラーラが交通事故に遭って養育院から居なくなってしまったときのこと。 僕は彼女に初めての恋をしていた。 でも、不幸になった。 彼女が麻薬に手を出していることを知っていたのに。 何も言わなかったから。 僕が好きになる人はいつも、不幸になる。 (_0) 2023/09/26(Tue) 23:25:41 |
【魂】 花浅葱 エルヴィーノだから、死んでしまった二人へは何も出来ないけど、生きてる二人に幸を送りたい。 ラーラには、彼女に合う義足をプレゼントしたい。 彼女が施設を出ても、普通に生きていけるように。 生きてさえ来れば、いいから。 でも、ルチアには。 マフィアを抜けるのがだめなら、ルチアには何をしたらいいんだろう。 それが僕にはわからない。 これ以上、大事な人を作ったら。 みんな不幸になってしまうのに。 お願いだから、僕を残して行かないで。 僕は――――――― (_1) 2023/09/26(Tue) 23:26:05 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ──天気予報は当たった。 晴天の元、数日ぶりに見た陽光は眩しい。 一応迎えが来るらしい、とは看守からの言伝。 家に戻った後のことを考えると些か気が重いような、そうでもないような。 とりあえずは待つしかないかと行き交う人々を眺めていた、時間。 見慣れた長身は視界の端に掠めればすぐに分かるもので、「ぁ」と声を発した。 自然足がそちらへと寄っていく、聞きたいことがあるんだ。 貴方の罪状は知っていて、それが到底許されないものだと理解していて、尚。 怒り、よりも悲しかった。されど罪を裁くのは己ではないから。 ──夕暮れの公園、二人並んで食べたパン。 ──声を上げて笑った表情、全てが落ち着いたらの先の話。 だから、手の届かぬ遠くに行ってしまう前に。 ヴィトーさん、いつもみたいに名を呼んで、その先を、 ──パン。 距離は開いていた。まだ数メートル先。 それでも見えた。胸から。落ちる。血が。 ……なんで? 背後に居るのは誰。目深に被ったキャップ。 でも見間違えるはずがない。横顔は。 ……なんで? #BlackAndWhiteMovie (29) 2023/09/26(Tue) 23:26:22 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「………………なん、で」 止まる足。 立ち尽くす間に二つの人影は遠ざかっていく。 パレードが横切っていく。 全ては足音の元に掻き消されてなかったことみたいに。 心臓がうるさい。 熱は下がったはずなのに頭がぐらついた。 なんで。 ──それしか言わないな、って、誰かが言った声が蘇る。 でも、なあ、だって。 それしか言えないだろ、こんなの。 #BlackAndWhiteMovie (30) 2023/09/26(Tue) 23:27:20 |
【人】 食虫花 フィオレ>>27 ロメオ ふらり、キャップで顔の隠れた女が車までたどり着く。 助手席……を通り過ぎ、後部座席に転がり込む。 そのまま丸まって、しばらく動かないだろう。 「………」 お水、と小さく呟いて。運転席の方に手を伸ばしている。 #BlackAndWhiteMovie (31) 2023/09/26(Tue) 23:29:42 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、ぐ……」 地に身体が押し付けられる。 露出した肌に、転がった砂利が食い込んで眉を寄せた。 携帯には手を伸ばすものの、自由に動けるあなたにかなうわけもなく。 返して、と口では言うものの。きっとそれは聞き入れられないのだろう。 あなたの下から、女が睨みつけている。 「話すと、思ってるの……」 「何も話すことはないわ、あんたみたいな人に……!」 体重が掛けられたくらい何だ。そんなことで仲間を売ったりはしない。 気丈な態度の女は、簡単には屈しないだろう。 (-5) 2023/09/26(Tue) 23:44:27 |
【人】 corposant ロメオ>>31 フィオレ 「おかえり〜。休みな〜」 人通りも少なく建物の影、表の賑わいは少し遠い。 ひっそりと停車している黒い乗用車は新しいものだった。 後部座席にはこれまた新品の白いクッションが置いてあるから、使うのだって自由だろう。 「慣れない事をするのは疲れるよな。色々」 はい、とペットボトルを渡す。 「で」 「どうだった?」 #BlackAndWhiteMovie (32) 2023/09/26(Tue) 23:59:40 |
【人】 路地の花 フィオレ>>32 ロメオ 置かれていたクッションに遠慮なく顔を埋めている。 キャップがはずれて、あなたと同じようにポニーテールにした髪があらわになった。 「……こんなもんか、って思っちゃった」 ペットボトルを受け取り、ふたを開けて。横になったまま口を付ける。 目を伏せてぽつりとつぶやいた。 「思ったより、ずっと……すっきりしない」 「あいつが、笑ったから…?」 脳裏に焼き付いて離れない。 あんな顔が出来るなら、どうしてあんなことをしたのか。 わからなくて、気持ちが悪いままだ。 #BlackAndWhiteMovie (33) 2023/09/27(Wed) 0:35:41 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ珍しく舌打ちを鳴らしかけたのは多分、体調のせいだ。 代わりに深いため息を零し、首を緩く傾ける。 「…… していない ことを認めろと?」それは、子供に伝えるようにハッキリとした物言いだ。 ない事実を吐くことなど、 当たり前ながら出来るはずもない。 「…何も始まらないさ、イレネオ。 やはり君は、少し、休暇を取るべきだ」 そして俺にも休暇を届けるべきだね。 あの固くて冷たい場所でも構わないから寝かせておくれ。 柔らかいブランケットを届けてくれても構わないよ? また笑みを浮かべて、 君を真似るように自由な指先で己の膝を軽く叩いた。 (-6) 2023/09/27(Wed) 1:24:11 |
【人】 新芽 テオドロ未来の事はいつか考えなくてはならないと知っていたが、 もう少し、泥のように眠っていたかった。 代わる代わる牢の前に現れる奴がいて、 ろくに襤褸に埋もれさせても貰えなかった気がする。 ああそう、だから己も腐らずに芽吹くべきなんだろう。 「───辞職願は保留、か」 事実とはそれでも各々の正義の前に曲解されるもので。 己の行動は、署長代理の所業を疑った勇気ある者のそれとして処理された。 後処理の為に駆り出す駒として、これ以上人員を減らしたくなかったというのが正直なところだろう。 漸く帰ってきた署長の目は。嫌になるほど正しい$Fをしていた。自分もまた、心の奥で嫌味を一つ二つ飛ばしながら酷く安堵したことを覚えている。 「くそったれのナルチーゾ。 しわがれた爺になって夜道に怯えてろボケ野郎」 その矛先は、渦中の元代理様に向かっていって。 結局のところ、俺は警察に向いていたんだろうか。 それを教えてくれる人はきっといない。 向き合って、優しい言葉をかけてくれる奴だけがいる。 (34) 2023/09/27(Wed) 5:57:05 |
テオドロは、事が片付いたら、それでもやはり警察を辞めるつもりでいる。 (a3) 2023/09/27(Wed) 5:57:22 |
テオドロは、でも、それでも今はまだ警察であることには違いない。 (a4) 2023/09/27(Wed) 5:57:58 |
テオドロは、だから─── (a5) 2023/09/27(Wed) 5:58:06 |
【人】 新芽 テオドロギプスと包帯にまみれた手指を引き摺るように。 それでも曲がることのない背筋が、 漫然と人混みをかき分けて歩いていた。 迎えに来るような人間に覚えはない。 人々の顔を一切見遣ることはなく、ただ足を進めていく。 当てもない、というのは少々正確ではなく。 心配をかけさせないために、この顔なんかを見たい奴らのために、暫し寄り道でもしてそれからどこに行くかを決めるつもりだった。順序が逆な気がするがまあいい。 そこまでなら、まあよかった。 ───パン、 その音に、警鐘であるはずの声に、つい顔を向けてしまった。 何の冗談だと思う。否、それが冗談でないということは、 きっと人一倍知っていることだった。誰よりも、なんてのは恐れ多くて思ったりできなかったが。 故にホワイダニットを一瞬で理解する。凄腕の探偵でさえここまで早く答えを出せることもそうそうないだろう。 「…………」 ただ、自分は警察だ。 だから、知らないことにした。 見なかったことにした、聞かなかったことにした。 全部は痛む身体と喧騒の中に紛れてしまったことにした。 #BlackAndWhiteMovie (35) 2023/09/27(Wed) 6:18:35 |
【人】 新芽 テオドロ法の下にある正義ではなく、 自分の中にある正義を迷いなく行使する。 分かっている。どれだけの理由を積んだとしても、 どれだけの感情を考慮したとしても、それが許されることではないのは。 いいことじゃないか、あいつを逮捕するチャンスがすぐに巡ってきたと囁くこの心の声は、自分を守るための棘で、決して本気じゃないもの。これもまた聞こえなかったふりをして、好きに言わせておいた。 「……まだ皿まで食ってないからな」 後悔しろ。俺をまだ飼い続けると決めた奴らめ。 いつか咲くだろう花はこんな一個人の横暴よりももっと根深く、奥底まで侵すのをその目で見ていろ。 警察には警察の規律があり、 マフィアにはマフィアの掟がある。 易々と破れば必ず身を滅ぼす、絶対不変の。 自分に残される最後の仕事は──その間を取り持つことだ。 もう二度と、全てを巻き込んだ諍いが起きないように。 それはきっと、 (36) 2023/09/27(Wed) 6:27:38 |
【置】 新芽 テオドロ──間違いなく、ひとつの毒だ。 ゆっくりと、弾みをつけて理を呑み込んでいくだろう。 (L0) 2023/09/27(Wed) 6:29:00 公開: 2023/09/27(Wed) 6:30:00 |
テオドロは、棘は人を無暗に傷つけるが、これならばあるいは。 (a6) 2023/09/27(Wed) 6:30:11 |
テオドロは、「変じて薬となる───というのはどこの国の言葉だったか」と笑った。 (a7) 2023/09/27(Wed) 6:30:43 |
【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ時間の合間を縫って、男は病院に辿り着く。 自分も診てもらうべき部分は多かったが、 今回に限っては友人の為に、珍しく進んで訪れていた。 「……エルヴィーノ」 自分たちの背中では、全てを背負うにはあまりにも小さい。 知っていたはずだ。託すこと、その代償、全部、全部。 毒吐く余裕もあったりはせず、 ただ静かに、その病室で静かに佇んでいる。 見放したわけではない。けど、夢も希望もない自分は、 みっともなく声を掛けることに意味を見出していないだけ。 (-7) 2023/09/27(Wed) 6:37:00 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ>>-7 「…………」 病室に来た時、男はベッドで静かに寝ていただろう。 点滴に繋がれた線は多く、肩から胴にかけたガッチリとギプスと包帯で固められている。 輸血も受けたようで、意識は戻り顔色は大分良くなっているが、まだまだ寝ている時間が多かった。 こんなに寝て過ごすのは子供の時以来だ。 命の危険にさらされたゆえに、流石の男も夢を見ても目覚めること無く長時間を寝ている。 あなたは、男の顔からクマがなくなっているのを見るのはきっと初めてのことだろう。 「…………ん」 「……テオ……?」 友達……と、いって良いのだろうか。 あの時一歩進めたのだと感じたことを、そう断定しても怒られやしないだろうか。 そう思ったからだろうか、舌が回らなかっただけだろうか。 同期の名前が最後まで呼べない。 (-8) 2023/09/27(Wed) 8:35:26 |
【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-8 「──」 「全く、やってくれたな」 一先ず決まり文句だけ述べておく。 その前に挟まれた息を呑む為の沈黙は誤魔化せただろうか。 「牢で乱暴されてた俺よりも、 なんであんたの方が重体で寝こけているんですか」 そして当然のように文句をとってつける。 それは勿論、ただ苦言ばかりを呈しているわけではなく、 心からの心配が滲んでいるかのような声色だった。 「今までの睡眠の帳尻を返すのは結構ですが、 負債が多すぎて目覚められなかったらどうなることかと」 「……でも、あんたはやるべきをやった。 だから……無事なだけ、喜んでやりますよエルヴィーノ」 他でもなく、友達の掴み取った未来だから。 互いに命があるだけ及第点というものだろう。 (-9) 2023/09/27(Wed) 9:08:46 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 門を潜り ダヴィード大騒ぎの中で、あなたの端末が鳴る。 それを確認するのはいつになるかはわからないけど。 数件のメッセージが立て続けに入っていた。 それは前日に送ったものへの返信だ。 『故郷の母ちゃんか子供みたいな文章だなおい』 『怪我:ある 痛み:寝て忘れた 休み:しばらく取れない ご飯:臭いメシ飽きた 野菜:気が向いたら』 『歌はな、警察署で凄いのが聞けたぞ。 近くにいたら面白かっただろうに。 帰れるかは……まだちょっとわからんな。 やる事が残ってるから、俺も残ってるんだ』 『ま、帰れたら遊んでやろう。 なんたって俺は「先生」だからな』 メッセージはそう締めくくられる。 どうやら、口の叩き方からして元気らしい事は伝わるだろう。 (-10) 2023/09/27(Wed) 13:21:38 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ>>-9 「……キミと約束したからね」 「無事に釈放されたみたいで良かった」 力なく、にこりと笑う。 約束だけが理由ではないけれど、あの時背中を押された事が力になったのは確実だ。 「牢で乱暴……?」 「僕は、まぁ……避けきれなくて」 銃弾を避けれる人間など居るものではないが。 そういえば、あの時のあなたは手をずっと後ろに隠してやいなかっただろうか。 あんな法があったとはいえ、どうしてそんな事がまかり通ったのかわからず眉を下げた。 あわよくば、気になっている手を覗こうと視線を動かす。 「夢を見るんだ。 ……何度も繰り返し見ても、起きれない。 これが今までの負債なのなら、確かにそうかもしれないね」 大事な人に不幸が訪れる夢。 いっそ今までのようにすぐに起きられた方が、心は楽だ。 それでも、無事を喜んでくれるのは嬉しく思うから、その賛辞は素直に受け取ることにした。 (-11) 2023/09/27(Wed) 13:55:50 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 傷入りのネイル ダニエラ悪人が嫌いだ。 人を踏みつけにして笑う悪人が嫌いだ。 嘲りも嫌いだ。 人を踏みにじり傷つけるそれが嫌いだ。 嫌い。嫌いだ。 がつん。 遂に響くのは硬い音。 握りしめた拳が貴方のこめかみを打つ音。 そこを殴られれば脳が揺れるはずだ。視界が揺れるはずだ。 襟首を締めあげた手を乱暴に離せば、背中や尻を打ち付けて椅子の上に落下するはずだ。 「わかるわけがないだろう」 「意味がわからない」 「お前」 「何のために警察になった?」 それでも倒れることなど許さない。 貴方が項垂れる、或いは椅子からずり落ちて逃れようとするなら、乱暴に右腕を掴んで引き上げる。 突然強く引かれた肩が嫌な音を立てたかもしれない。 しかし男には関係ない。 (-12) 2023/09/27(Wed) 14:52:08 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 黒眼鏡と とん。とん。と、とん。 速度は思考に伴って緩やかに。 視線は貴方のかんばせから落ちて手元に。 決して賢いとは言えない男だった。こういうところもまた。 僅かならまだしも、尋問中に被疑者からこうまで目を離すなどあり得ない。 思考に耽溺するなどあり得ない。言葉に乗せられるなどあり得ない。 あり得ないことをするのは、貴方に対し信頼とは呼べない何かがあるからなのだろう。 ────金属の音で、思考は引き戻された。 落ちた双眸が貴方に戻る。その時にも双黒輝いていただろうか。であるなら不審そうに眼を細めて、でなければやっぱり顔を顰めるのだ。不愉快そうに。自身の未熟を突きつけられたように。 (-13) 2023/09/27(Wed) 15:13:02 |
【秘】 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオたとえいつ視線を戻したとしても、堅炭の目はそこにある。愉快そうな、興味深そうな色を湛えて。 「理解したか?あるいはできないか? 疑問があるなら聞いとけ。 疑問が要らないなら、自分は馬鹿だと自覚しろ」 俺は馬鹿寄りだ、と笑う。 「アリソン・カンパネッロのことなんて、本質的には どうでもいいはずだ。 手あたり次第に噛みつくよりはいい兆候だがね」 くるくる、と空中をさまように回した後──指を指す。 ちゃり。また、金属音。 「お前は自分が本当は頭が悪いと知っている。 だから分かりやすい色に…白黒に割り切りたがって、 そのうえこれは性格的な面だろうが、黒を…… もとい、"対岸"を根絶やしにしないと気が済まんタイプだな?」 身を乗り出す。その声色は、やっぱり、心配しているようで。 「いいか、正義だからってお前の生き方が肯定されることはない。 肯定されるのはいつだって、その時正しいことばかり。 暴力をお前の真ん中に置いてるうちは、 お前はどこに行っても、どう生きても、 そのどうしようもなさからは逃げられない。 暴力では誰も納得しないからだ」 ──押し付けるような言葉は、ただ、たんたんと語られる。 (-14) 2023/09/27(Wed) 15:35:58 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロそこまで頭が回らなかったのか、 それだけ貴方を侮っていたのか、 それとも必要ないと判断したか。 男は貴方の口を固定することはなかった。 だからその舌に噛みつくことだってできたろう。けれど貴方がした報復はそれ以下のもの。抵抗はそれ以下のもの。 柔らかな千草色が濡れてこちらを睨む。それだけ。 それでさえ男は笑って受け流した。喉を笑いがのぼった。 愛しさではない。愉しさだった。 指がするすると撫であげる。一度みぞおちあたりまで、そうして腹、下腹部。同時に頭を支えた手は耳朶を擽り、舌は舌を捕まえようと口腔内を這った。 何も言わない。 促すような言葉は必要ない。これは睦み合いではない。 ただ屈辱的な快だけを与える手が、そのままの速度で貴方の粋の形をなぞった。 (-15) 2023/09/27(Wed) 15:50:37 |
【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 法の下に イレネオ強い衝撃に、頭が揺れて。 ちかちかと、視界が瞬いた。 「……づ、ぅ」 また喉から呻き声が漏れ。 それでも女は逃げようとはしなかった。 口元の笑みも、絶やさない。 たとえその肩が外れ吊られ激しく痛んでも、笑顔だけはその表情から消えなかったり 「…同じこと」 「ニーノ・サヴィアにも、聞かれましたあ」 どこまでしっかり発音できていたか、最初はよくわからなかった。 それでも、そんなものも悟らせないよう、可能な限り、努めて。 「ニーノ・サヴィア。分かりますよねえ。」 「逮捕されました。…あたしに 嵌められて 。」――真実。 「…それでイレネオさんがこおした 5人 に」「ニーノ・サヴィアは、…含まれますかあ?」 笑うしか取り柄のない女は笑う。 己の罪を告白する。彼は本当に、善良な警察だったのだ、と嘯いた。 (-16) 2023/09/27(Wed) 16:00:24 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ「それを言うなら。」 ざり。体重をかける。度に靴底が地面と擦れて音を立てる。 「黙秘の権利があると思っているのか。」 「お前のような悪人に?」 横向いて倒れた貴方の身体を、押さえつけた膝で地面に転がした。仰向けに、急所の多い腹が自分に正対するように。 「吐け。」 「それとも吐くか?」 ぐ、と。 重みが食い込む先は、貴方の腹だ。 (-17) 2023/09/27(Wed) 16:03:40 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ変わらない態度。 あまりにも変わらない態度に、男は姿勢を崩した。 それは生真面目な男には珍しいことだ。決して姿勢の良いわけでもない男は、それでも大抵、おそらく自分にできる精一杯で背筋を伸ばしていた。 緩慢に背もたれにもたれる。顎を上げて視線だけ投げ寄越す。そうして息を吐いて、もう一度身体を起こす。 億劫そうに一度逸れた瞳は、再び貴方のかんばせに戻った。 「耳がついていないのか?」 「それは犯罪者の戯言だ。」 「証拠は挙がっている。」 「無駄な言い逃れはよせ。」 決めつけ。決めつけ。決めつけ。 男の口から出るのはそれだ。 尋問とはそういうもの。男の仕事とはそういうものだった。 貴方で、六人目だ。 (-18) 2023/09/27(Wed) 16:21:15 |
【秘】 favorire アリーチェ → 口に金貨を ルチアーノ何が起こったかわからなかった、と言うのが本音だ。 閉塞な牢に突如解放の知らせが届いた と言う噂を、逮捕者の後方で聞いていた女は、 四方八方に散っていった他の逮捕者達に後れを取り、 気付けば一人、見知らぬ廊下に佇んでいる。 そんな状況だから、偶然か意図的かはさておき、 この現在地すらもわからぬ廊下を歩いていた貴方を 見つけた時は、それはもう見てわかる通り、 明らかに安堵の表情を覗かせて、が、声をかける際は 一瞬緊張したように声を縮めて、話しかけてくる。 「Mi scusi. あの、人が解放され出したって本当でしょうか? わ、わたし、道がわからなくなってしまって……」 要は迷子であることを明白に伝えるのは恥ずかしいが、 背に腹は代えられず、よりによって洒落た伊達男に対して 道を尋ねる事になってしまったのを恥じるように、 視線が合わず俯いたまま貴方に声をかけている。 (-19) 2023/09/27(Wed) 16:28:03 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 傷入りのネイル ダニエラニーノ・サヴィア。 その名前は知っている。 五人のうちの一人だ。 しかし。 その言葉に、男の瞳は揺れなかった。 貴方は悪人である。 彼も悪人であった。 あれはノッテを家族と呼んだ。 「庇い合いか?」 「もう遅い。」 「今頃治療を受けているだろうな。」 実際それは必要で、男が進言したものだった。 罪人であろうと不当な扱いをするのはよくない。 病人に治療は受けさせるべきだ。 さて、それを貴方がどう受け取るかはそちらの自由。脅しや冗句と聞いたかもしれないし、男の暴力によるものだと思ったかもしれない。 笑う貴方が不愉快だ。 余裕だと誇示して見せる貴方が不愉快だ ────誰かの顔が浮かんだ。 「含まれているよ。それがどうした。」 (-20) 2023/09/27(Wed) 16:56:16 |
【秘】 リヴィオ → 暗雲の陰に ニーノ伸ばすまでで、触れる勇気のなかった左手は、 君の手が迎えてくれたからその熱を感じて。 そして君にもまた、男の異様に熱い温度が伝わる。 ふっと緩まる表情はきっと、君だけが見れたもの。 その熱に安堵したのだ、君という陽だまりのぬくもりに。 だから、男の心はここでまた少し 晴れた のだろう。雨と曇り空ばかりで陰り続けていた心は、 あと少しをもっと、確かに、頑張れそうだ。 だから俺はきっと、 大丈夫 だ。まだ握り返し、その指先を撫でるには怖くて堪らないが、 君がくれるぬくもりから決して、逃げることはなかった。 「…うん、とても素敵な提案だね。 是非、その散歩にご一緒させてくれ」 同じ向きに小首を傾け、更に表情を緩めて笑う。 未来を語る事もまた、逃げ出したくなる心はあるが、 それでも君を見る翠眼は揺れることなく、真っ直ぐに。 「……あぁ、待っていてくれ。 俺に出来ることは、彼と少し異なるが………」 「──俺に出来ることを、頑張ってくるよ」 (-21) 2023/09/27(Wed) 17:19:08 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ嬲られて、辱められて。 愉し気な貴方と対照的に、快楽と羞恥の間を行き来する。 もう我慢は、出来なくなっていた。 与えられる快楽に従順に反応して、息が上がり その手が形をなぞり上げれば、溜まらず腰が浮いた。 「っ、ぅ…ふ……」 固く限界まで熱を持ったそれは 何度か強く触れてしまえば、果ててしまいそうなほどだろう。 睦み合いであれば、さぞ扇情的にも映ったろうが 与えられるものに縋るような様はいっそ滑稽だろうか。 (-22) 2023/09/27(Wed) 17:19:10 |
リヴィオは、この『未来の話』が君と俺の希望になるよう願った。 (a8) 2023/09/27(Wed) 17:19:27 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「あっきれた……悪人は、人間じゃないとでも言いたい、わけ?」 は、と挑発するように笑ってみせる。 警察だろうが関係ない。この男の言い分に乗ってやるつもりはない! 「っ、ぁ…く……」 背中が地に付けられて。 柔らかな女の腹に、男1人分の体重がかけられていく。 苦悶の表情を浮かべていたかと思うと、女の体が小さく跳ねた。 甘い声が漏れる。 内臓が圧迫されて苦しいのに、苦痛とは別の波が襲ってきていた。 女は、性行為をしてきた直後だった。 だから、あなたの責苦に快楽が揺り戻されている。 苦痛が上回れば、流石にそれどころでなくなるだろうけれど。 (-23) 2023/09/27(Wed) 17:23:57 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 黒眼鏡「お前は」 「何を言いたい?」 それは問いだ。 しかし外れた問いだ。無意味な問い。貴方の言葉を真っ向から受け止めないからこその問い。 貴方が何かを隠しているはずだと決めつけた問い。その態度は悪徳尋問官として全く相応しい、頭の固いものだった。 「俺の何を知った気になっている。」 不機嫌そうな表情。たん。たん。たん。叩く音が一定の速度を取り戻し始める。 思春期の子どもがするようなそれ。自分を理解した気になるなと突っぱねて身を護るそれ。似ているだけで似つかない、もっと暴力的な方法で爆ぜかねない敵意が貴方に向かって首をもたげる。 「俺が」 「そうしたいのは」 「 ノッテファミリー だけだよ。」たん。たん、たん。 苛立ちの罅が割れていく。心願が徐々に零れ出る。 「それに、俺に暴力を振るう趣味はない。」 「ノッテと同じにするな。」 (-24) 2023/09/27(Wed) 17:27:13 |
【秘】 門を潜り ダヴィード → 歌い続ける カンターミネおそらくきっと、男がその返信を見たのはペネロペの運転する車の中。 必死こいて汗を流したあとに車に詰め込まれて、端末が通知を発していることに気づいてからだった。 『帰りを待ってるけなげな後輩ですよ すみません ちょっと盛りました』 『しないでくださいって書いてあるの読みました?先生 帰ってきたらめちゃくちゃ苦情入れてやる…』 帰ってきたら、あなたに会ったら、また明日。 貴方が元気でメッセージを返してくれたという事実だけで、男は安堵することができた。 だからその返信だけをぽちぽちと打ち込んで、送信する。 そのまま端末をしまい込んで、貴方のやる事とやらが万事平穏に終わればいいな、と思った。 (-25) 2023/09/27(Wed) 17:47:04 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ変える訳がない。 変えてやる 訳がない。腐っても俺は先輩で、君は後輩だ。 その分、経験として培ったものは多くある。 仮面は剥いだ、あとは己がままに向き合うだけだ。 「いいや、戯言なんかじゃあない」 「証拠なんてものはない」 「無駄な言い逃れでもない」 否定する。否定する。否定する。 その決めつけ全てを、真っ直ぐに否定する。 「これは全て 事実 だよ、俺の可愛い後輩君」「そして俺は、これから何をされたところで、 その 曲がった 事実を認めてやらない 」決してここを曲げてはならない。 己と真っ直ぐに向き合う彼らのためにも。 尋問とはそういうものだとされるなら、 そんな無価値な仕事はさっさと やめてしまえ 。「……だから、後輩──いや、イレネオ。 君に俺は曲げられない、残念だったね」 (-26) 2023/09/27(Wed) 17:51:55 |
リヴィオは、"いつも通り"だ。 (a9) 2023/09/27(Wed) 17:53:21 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ求めるものを与えてやる。 それは今この瞬間、今この一瞬だけのもの。 熱に浮かされて踏み外し、正気に戻った瞬間嫌悪と後悔と慙愧が襲うようなもの。その布石。 手錠で戒められた手はさぞ不自由だろう。 自由ならばそれは男の身体に縋っただろうか。 行き場なく震える手は自分の身体を僅かも押し返すことがない。それだって愉快に感じられた。 湿った唇は離れれば僅かに音を立てた。そのまま男は貴方の耳元に囁いた。 「良いんですよ。」 「我慢しなくて。」 触れる手は無骨な男の手。 恋人のそれでなければ女のものですらない。 けれど同性同士だからこそわかるものもあるというもので。 この辺りかな。 張ったところに手を添わせて、そのまま。 耐えられないような強さで触れてやる。 (-27) 2023/09/27(Wed) 18:13:35 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ>>30 ニーノ 暗い知らせと取締法が収束しかけ明るい賑わいを見せる頃。 空は晴れ渡り、火花が空に咲き―― まだ知人達が数人拘留されている時間、外に用があった男は出歩いていた。 そうしてふ、と一台の車が目に入る。 その車の運転手など見えない、ナンバーに覚えもない。 それでも、都合の良い『あいつ』の車だと気付いた瞬間、 ルチアーノはパレードの通りに向かって走っていた。 パン。 音がやけに大きく聞こえた気がした。 どんな状況であるか男は確認できないまま辺りを見渡す、そして漸く見つけた知り合いは。 賑やかな喧騒の前に立ち尽くす、彼らが大事にする小さな弟分だった。 「ニーノ!」 その呆然としている姿に声をかける、貴方はこの嫌な予感の当事者であったのか。 それとも、ただの、目撃者であったのか。 #BlackAndWhiteMovie (37) 2023/09/27(Wed) 18:18:59 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → favorire アリーチェ「ン? お嬢さんは――アリーチェかあ」 貴方に映るのはやけに興味深げに顔を見つめてくる男の姿だ。 それは迷子であることに対する興味か、 羞恥で目をそらしている事に対するものか。 実際はどちらでもあったが、重要なのは名前を即座に呼べたことだろう。 「ご機嫌よう、牢獄の生活は堪えただろう。 怪我や病気にはかかっていないか? 件の法案で捕まった連中はマフィアも警察もこぞって釈放だ。 俺でよければ道案内しよう。 だが、お嬢さんは確か幼馴染みがいたと思うんだが…… エスコートしてくれる色男は他にいないのかな?」 (-28) 2023/09/27(Wed) 18:27:53 |
【人】 corposant ロメオ>>33 フィオレ 「そんなもんだよ。殺しって晴れ晴れしたもんじゃない」 横に積んだ小さなクーラーバックから紙パックのジュースを取り出し、ストローを差す。 端末で部下に次の指示を出しつつ片手間に飲むための物だ。 オレンジの爽やかな酸味はこの場に不釣り合いだった。 「……マジ? 笑ったの? なんで?」 「そらすっきりしねえわ。最後まで嫌だねえ……」 こっちは復讐に来たってのになあ。 珊瑚色の爪がこめかみをカリカリと掻く。 「でもあんたは撃ったよ。それで何か変わればいい」 #BlackAndWhiteMovie (38) 2023/09/27(Wed) 18:36:09 |
【秘】 黒眼鏡 → 法の下に イレネオ「こりゃ失礼。 お前は、理解されたいんじゃないのかと思ってね」 あなたの態度に言及するでもなく、 笑いながら意識を逸らす。 たんたんとなる音をまるでBGMのように聞きながら、 「 ぶ っは」──思わず吹き出してから。 「ば、っは、ははははは、っ はははははははは 」はははは あはははははは !!!!!楽しそうに、馬鹿笑いをした。 「しゅ、 好きでもねえのに暴力を振るうのか、 大した悪党だな!!」 「マフィアでやってけるぜ、なあ!」 (-29) 2023/09/27(Wed) 18:56:24 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ「先にそうしたのはお前たちだろう。」 成り立たない会話の応酬。 貴方もそろそろ気づくだろう。どうやらこの男は貴方を人間扱いする気持ちがそれほどない。 けれどそれには男の中で何か理屈があるらしかった。貴方の気にすることではないが。 「お前たちは」 ぐ。 「他者を尊重するのか?」 ぐ。 「しないだろう。マフィアだからな。」 ぐ。ぐん。 一定のリズムで圧迫される内臓。 さて次の責め苦をどうしようかと考える間の手慰み。 続く暴力を予見させる行動。カウントダウン、だったはずの、それ。 対する貴方の反応に、男は怪訝な顔をして動きを止めた。 薄暗い路地。表情は伺えず顔を寄せることになる。 発作か何かを起こしているなら厄介だ。まさかこの行為が、貴方の快に繋がろうとは思うはずもなく。 (-30) 2023/09/27(Wed) 18:58:32 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「ぅ、あ…っ…!」 ひと際大きく震えたのが、伝わる 堪え切れずに、ついに、落ちたのだと、分かるだろうか 屈辱に顔を歪める様は 貴方にとってさぞ気分が良いかもしれない けれど…解き放たれれば 理性は徐々に、戻ってくるものだ 熱い息を吐きながらも ようやっと、意識が多少はっきりしてくる 「く、っそ…」 顔を反らしては、貴方から表情が伺いづらくなるように そう仕向けるだろう (-31) 2023/09/27(Wed) 19:23:42 |
【秘】 favorire アリーチェ → 口に金貨を ルチアーノ「ええ、アリーチェ……そう、なんだけれど」 「どこかでお会いしたことがあったかしら? こんな色男さんの名前を忘れる事はないと思うのだけれど……失礼ながら、お名前をお伺いしても?」 名前を呼ばれたことで正直に目をぱちり。合わせて頷く。 知り合いかと思って警戒が増すどころか緩む気配を感じる。 とてもじゃないが危機感がてんでないのがわかるだろう。 「私なんて、拷問された人に比べれば大したことないわ。 この通り、ネイルの一つ剥がれてもいないもの。 ……陰鬱な気持ちにはなったけれど、それは皆同じだろうしね」 爪を、剥がされている様を見たことがある。 それを裏付けるような話題のあと、無意識に手元を撫でる。 「……幼馴染……テオとニコの事? 二人とは牢に入れられてから一度も会えてないの。 この状況にまぎれて脱出してくれるとは思うのだけど…… 二人の友達なら、そっちを心配した方がいい気もするわ。 私、まだ探したい人がいて……」 (-32) 2023/09/27(Wed) 19:31:16 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ「エルヴィーノ、今大丈夫……? お見舞いに来たんだけど、凄い事、やらかしたって」 ひょっこり、病室のドアから少しだけ顔を覗かせて。 やらかしたとは失礼な事を言いながら、 貴方が目を覚ましているのを確認すると中へと入ってくる。 「銃で撃たれたって聞いた時は本当に驚いて…… 多分、署の全員が間違いなく驚いていたと思うわ。 ……でも、この騒動が終わりを迎えられたのは、 エルヴィーノの力が大きいと思う……ありがとう。 ……先にこれだけは、どうしても言いたかったの」 少しだけかしこまって、頭を下げて、ふわりと髪が揺れる。 牢での日々はとてもいい思い出とはいいがたいものだから、 それをなくしてくれた一員であるあなたに心からの感謝を。 (-33) 2023/09/27(Wed) 20:15:17 |
【人】 オネエ ヴィットーレ……解放の通達は突然に。 牢に捕まった立場も年齢も性別も違う何人もの"冤罪人"達は、 蜘蛛の子を散らすようにその場を離れていった。 ヴィットーレの怪我は随分酷くて、一人では動けそうも 無かったから、きっと誰かに支えられ、病院まで行ったことだろう。 ……そうして、病院に着くや否や治療を受け。 丸一日と少しの後、手術室から病室へと移される。 両手は爪が疎らに剥がされ、利き腕だった右手はさらに 指先の粉砕骨折や、ガラスでできた粗い裂傷。 肉ごとぐちゃぐちゃに潰されていたそれらは、今は ぐるぐると巻かれたギプスによって覆い隠されている。 神経まで細かに千切るその負傷は、 とても後遺症無し、で済むようなレベルではないだろう。 ヴィットーレは右手の痺れを感じながら、ベッドで座っていた。 #病室 (39) 2023/09/27(Wed) 20:26:29 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ>>-33 「……! やぁ、アリーチェ。 私服のキミもなかなかだね」 ベッドに横たわったまま、顔をそちらを向けて笑みを浮かべる。 いつもなら手の一つも上げるのだが、あいにく今はそれができそうもない。 肩から胴にかけてがちがちにギプスと包帯で固められ、逆手には何本もの点滴が繋がっているからだ。 署で話を聞いていたなら、あなたは病状を動脈損傷による大量出血と肩関節損傷だということを知っているだろう。 「……うん。まぁ……テオドロと約束したからね」 「キミ達が皆無事に釈放されたみたいで安心したよ」 署からも感謝の言葉は何度か聞いた。 改めてあなたからも告げられると、むず痒さが出ていけない。 だから挨拶もそこそこに礼を言われれば、少しだけ困ったような笑みに変わる。 この怪我がなければ格好もつけれたんだけどねと、そんな事を言いたいようだ。 (-34) 2023/09/27(Wed) 20:28:51 |
【人】 黒眼鏡──真昼のこと。 海沿いの開けた道に面して建てられた、トラックがまるまる入ってしまいそうなスチール・ガレージを改装して作られた店舗。 それなりに古びていて潮による錆も無視できないが、そこは短パンとサンダル姿で表をぶらぶら出歩けるくらいには気ままな彼の城だった。 ──ごり、ごり、ごり。 【Mazzetto】という味気のない店名。 今その店頭に、看板は置かれていない。 入り口の脇にたてかけられたその看板には、そこの主に似合わない小さな花がセロテープで張り付けてあった。 ──ごり、ごり、ごり。 店内は照明が落とされて、黎明に照らされた海の底のようにじっとりと薄暗い。 そんな中で黒い眼鏡をかけた怪しげな男が、カウンターの奥でコーヒーミルを回している。 男はむっつりと口をへの字に曲げて、額からぽたりと汗を垂らしながら重たいハンドルに力を込めた。 ──ごり。 硬く、重い。金属質な音が部屋の奥底まで響き渡り、波に運ばれた石のようにカウンターの裏を埋めてしまいそうになるころ、 「兄貴?」 ──店の扉をがちゃり、と開く音がした。 #AlisonCampanello (40) 2023/09/27(Wed) 20:30:53 |
【人】 黒眼鏡>>40 路面と海面が反射する太陽の光を背負って、 一瞬影となったその男が店内に足を踏み入れる。 「黒眼鏡の兄貴、よかった、ちゃあんと釈放されてるじゃねぇか!」 ガイオと呼ばれるそのマフィアは、観光案内所の役付き者だ──表向きは。 実際にはノッテ・ファミリーの一員として、観光客を相手にスリや詐欺、置き引き、恐喝などを働く、外貨獲得部門を取り仕切っている。 「おう、ガイオ。 お前も出てこれたのか」 「部下たちもな、兄貴も早いじゃねえか。 あんなネタが出たんだ、もう少し絞られるかと思ってたぜ。運がいいな」 気安く笑いながら、意外と丁寧に掃除されている床を踏みカウンターに肘をつく。 アレッサンドロもまたコーヒーミルから手を話し、かちゃかちゃとコップを用意しながら立ち上がった。 「ソウ、裏切者のアレッサンドロです。 いいのか、こんなとこに来て。俺の処分はうやむやになってるだけだぞ」 「とぼけんなよ、『プラン』だろ? 何言ってんのかと思ったら、こういうことだったとは。 最初はびっくりしたが、すぐに失効したし、今なら取り返すのはなんとかなる。 …そんでもってこの機会に恩を返したら、高ぇ利息を取れるんじゃないかと思ってね」 ははは。アレッサンドロがにやりと笑って、ガイオの肩をぱんと叩く。 「抜け目のねえやつだな。ま、わざわざ呼ぶ手間が省けたよ」 「あんたにしごかれたからな。今度またうちに来てくれよ、フィーコも寂しがってる」 「ああ、あの犬」 (41) 2023/09/27(Wed) 20:32:59 |
【人】 黒眼鏡>>41 ガイオがスツールを軋ませて腰を下ろす。 アレッサンドロは何か思い出すように視線をあげながら、 ポットに入っていた珈琲をカップに注ぎ、カウンターの上にかちゃり、と置いた。 手をタオルで拭って、自分の分のカップも取ってガイオの隣の席に座る。 「そうそう…ってふざっけんなあんたが押し付けたんだろ! だが実際飼ってみるとかわいくてな、 ただでさえ家を空けちまったんだ。 早く帰ってやらねえと」 「ガイオ」 ん? と顔を向けたガイオに、 アレッサンドロが体を重ねるようにもたれかかって、 ―― ず ぐ。#AlisonCampanello (42) 2023/09/27(Wed) 20:36:07 |
【人】 黒眼鏡>>42 「兄 貴、… は? …ぇ、 」「ガイオ。犬の世話は、俺からお前の部下に頼んどく。 引き取り先も探すよ」 「……ぁ、……っ、……」 ぼた、ぼた。 綺麗に磨かれた床に、赤い雫がぼたぼたと落ちる。 体ごとぶつかるように突き込まれたナイフの先端は狭い肋骨の間をすり抜けて、 ちょうどガイオの肝臓に達していた。 太い血管がいくつも同時に切断され、ごぼり、と大量の血が傷跡から零れ落ちる。 ナイフを握ったままのアレッサンドロの手が一瞬で赤に染まって、受け皿にもなりきれず、零れた血液はばちゃばちゃと床をまだらに汚していった。 ──そのまま。固く握りしめられたナイフの柄が、ぐるんと捻り捻じ込まれる。 ぶぢぶぢと、さらにいくつもの血管が引きちぎられる音が響いた。 #AlisonCampanello (43) 2023/09/27(Wed) 20:38:48 |
【人】 黒眼鏡>>43 「……あに、……ぃ、 なん、……で、」 「お前、10年前に観光客ひとりひっかけただろ」 「………、……」 「それだ。お前ほんと、引き運悪いよな」 「………」 「悪い」 ぽん、ぽん。 まるで幼子をあやすように、血に染まった手がガイオの背中を叩く。 出血性ショックで既に気を失ったその体は、男の手に支えられながらゆっくりと傾ぎ、倒れる。 それを抱き留めて、まるで気遣うように優しく床に横たえると、 「バカラの続き、できなくて残念だ」 アレッサンドロはいつもの、酒の席で別れる時にかける調子のまま、そう声をかけた。 #AlisonCampanello (44) 2023/09/27(Wed) 20:39:48 |
【人】 黒眼鏡>>44 ぼた、ぼた。 返り血がカウンターの上に数滴飛ぶのも構わず、アレッサンドロは立ち上がった。 血に染まったスウェットを脱ぎ捨てて、扉の隙間から差し込む潮風をも追い越すような早足で、店の廊下を歩いていく。 まだらに赤く染まったトランクスをひっつかんで引き下ろし、サンダルを放り捨て、裸足で全裸のまま私室の扉を蹴り開けた。 みしり、と音がして蝶番が歪み、中途半端に傾いた扉。 それを振り返ることもなく、乱雑にかけられた黒いシャツをとスーツをひっつかむ。 下着、肌着、シャツ、スーツ。 次々と脚と腕を通していって、ボタンが捻じ込まれるように止まる。 その一挙手一投足が鳴り響く開演のベルのように耳に響いて、 アレッサンドロの全身を流れる血流がどくどくと脈打った。 その高ぶりを鎮めるように一度、ぱちんと頬を叩いて。 「うし」 ──すっかり準備を終えてから、壁際に据え付けられた鏡を見る。 ふーー、と吹きだした息は、まるで火が舌なめずりをしたかのよう。 ぎらぎらと燃え盛る堅炭の瞳がひび割れて、ごう、と熱が渦を巻く。 自分でその顔を見て、ふ、と笑い。 「確かに、こりゃ。 人相が悪い」 #AlisonCampanello (45) 2023/09/27(Wed) 20:40:45 |
黒眼鏡は、ポケットに突っ込まれていたサングラスをぴんと指先で弾き、つるを伸ばす。#AlisonCampanello (a10) 2023/09/27(Wed) 20:41:18 |
【人】 黒眼鏡>>45 拳銃に弾倉を装填する時のようにもったいぶって、かちゃり、と顔にひっかけて。 「──久しぶりの喧嘩だ。 楽しくなってきたよなあ、おい」 に、と口許が、牙をむくように暴力をにじませて笑う。 その様相は馬鹿みたいに荒々しく、 気さくで飄々としたカポ・レジームの面影はもうどこにも残っていない。 ──アレッサンドロ・ルカーニア。 それはかつて十四にしてスラム街の一角を暴力で纏め上げ、 その喧嘩の腕と狂暴性だけでファミリーへと拾い上げられた 喧嘩屋の小僧の顔だった。 #AlisonCampanello (46) 2023/09/27(Wed) 20:42:25 |
【人】 黒眼鏡>>46 そいつは格好をつけて黒眼鏡をかけると、またずかずかと店の方へ脚を進め、 折りたたまれた看板を片手で持ち上げる。 【CHIUSO】の面を向けて店先に放り出す。 潮風がごう、と吹く。 風に流された雲が太陽を覆い隠して、 三日月島の名物である太陽に照らされた海面はほどほどにしか光っていない。 それでもかまわない、と男は、革靴に包まれた脚をがつんと前にだした。 くるくると指先で回す、革細工のキーリング。 かちゃりかちゃりと音を手てて、愛車――フィアット500の鍵が音を立てる。 そんな音では、足りはしない。 そんな音では、贖えない。 10年を費やした弔いが、今日この時に結実する。 そんな風に喧嘩をしたことがないから、男にとってそれは最初で最後の、 ──最初で最後の、 ことだった。 「負ける事考えて喧嘩するやつが、いるもんかい」 だから、彼は勝つつもりだ。 だから、彼は笑っている。 #AlisonCampanello (47) 2023/09/27(Wed) 20:45:26 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>47 潮風がごう、と吹く。 地を照らさぬ太陽の代わり、差別主義者の神の代わりに、 俺がやる。 アレッサンドロ・ルカーニアはそういう風に生きて来て、 だから最後までそういう風にやるつもりだった。 「──さあて。」 ──さあて、鳴らそう。 アリソンに捧ぐ鐘を。 #AlisonCampanello (48) 2023/09/27(Wed) 20:47:29 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレきっと病院についた頃には貴方を見つけ、 付き添っていたであろう女はずっと青白い顔で、 手術の時間、ひたすら神に祈りながら、 ある種の永遠とも思うような時間を耐え忍んでいた。 命に別状はなかったとしても、その怪我の深さに見かけた時は酷く取り乱したかもしれない。 それでもこうして病室へと移された後は少し落ち着いた様子で、ベッドの傍の椅子に静かに座っていた。 「ヴィットーレ、大丈夫? やっぱり、ズキズキ痛んだりする? ……少しでも、その痛みが分けて貰えたらいいのに」 この台詞も何回目だろうか、と思うくらい、 余りにも状況は目まぐるしく変わり、自分達を苛んで。 3回目にもなる台詞では、前回2回と違って取り乱した様子もなく、あの混乱を終えた後は少しだけ大人びても見える程だ。 「……ようやく、崩れたね。トランプタワー」 #病室 (-35) 2023/09/27(Wed) 20:56:29 |
【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 幕の中で イレネオ――治療。と。 聞いて女がまず感じたのは、今まさに感じる自分の肩の痛みだった。 「……。」 ざわと粟立つような思考を鎮める。 笑って。隠して。悟られず。ずっとそうしてきたように。 あは、と声。 笑っている間は堪えられる。だから女は、まだ囀る。 女にはそれしかないだけで、決して余裕を誇示するつもりはなかったが。きっと、それは、皮肉と呼べる。 「ふふ。いいえぇ。」 「気になっただけですけどお。」 「それにしても」 「決めつけるんですねえ、庇い合い…。」 「取締法、そんなに信用できますかあ?おもしろおい。」 「あたしが自首するまで、あたしのことも捕まえられなかったくせにい」 「こんなことなら、自首なんかしないでもっと引っ掻き回せばよかったあ。」 くす。 きっと女の目論見は、大半にして成功していた。 聞かれたくないことには答えず、この法案がどれだけ 悪用 しやすいかを説く。あとはこの笑顔を絶やさず堪えるだけ。頭のおかしな愉快犯が、単独でこれを行ったのだ。 女は笑う。笑う。笑い続ける。 何があろうと、仮令――その大事な花が、摘み取られようと。 (-36) 2023/09/27(Wed) 21:00:23 |
【独】 歌い続ける カンターミネとあるひとりの女性警官が姿を消した。 バカ騒ぎの中で消え去ったひとりの姿は、 喧騒の内にうやむやになり。 ある者は出ていった者達が抱えていった、 それも下着以外の全てを剥かれて、なんてことを口にしたが。 結局それも噂の内。今必要なのは人手でしかないから、 そんな噂もやがて消え失せてしまった。 「お疲れ様で〜す」 巡回の警官が笑いながらすれ違う。 ……あんな奴居たか?そう疑問を持った者もまた、 やがて忙殺に思考をもみ消された。 なにせ特徴の薄い警官だったから。 長くも短くもない茶髪が揺れる、小柄な警官だったから。 これは、どこかで事が動き始める前の事。 準備を始めた、『ケーサツ』の話。 鼻歌混じりに廊下を歩き、消えた人間のデスクを漁り。 書類を書き込むと、ポケットに捻じ込んで、 また署内のどこかへと姿を消した。 (-37) 2023/09/27(Wed) 21:02:45 |
カンターミネは、情報チームに連絡した。もうすぐ帰る予定だ、と。 (a11) 2023/09/27(Wed) 21:06:16 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-34 「もう、褒めても大したものは出ないわよ。 ……エルヴィーノは……」 なかなかに、重症だ。一周回って感嘆しそうになるほど、 手術の痕が色濃い様子に、おもわず溜息が零れた。 「男の人はみんな無理し過ぎよ、もう。 女の人も勿論しているんだろうけど、 私の耳に入ってきたのは殿方ばかりだったわ」 ベッド脇の椅子にそっと腰掛けながら、病室を眺める。 花瓶にもし花が活けられているならば、 水替えを手伝いながら話の続きを始めるだろう。 「テオと約束? まさか、こんな危険な事をする約束を?」 もう、信じられない……と呟きながら少し拗ねたように頬を膨らませて、テオもテオよ。と若干飛び火した怒りが見える。 (-38) 2023/09/27(Wed) 21:06:37 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ>>-38 「意地を張らなきゃいけないときもある……ってとこかな」 「いや、僕もまさかこんな事になるとは思わなかったんだけど…… テオドロは応援してくれただけだから、怒らないでやってほしいな」 普段の自分なら無理に行動をおこしたりなどはせず、当たり障りなく行動してたはずだ。 それでも動いたのは、テオドロとの約束もそうだが。 一番は、牢に入ってしまった友人たちを釈放させたかったからで。 「悪いね、……この状態では自分で何も出来やしないから助かる」 花瓶の水換えをしてくれるあなたに、申し訳無さそうに礼を告げて、息をつく。 自分の腕は、きっともう、以前のように動きはしないことを宣告されている。 リハビリをすればある程度までは回復する見込みはあるが、肩の可動は狭くなるし、反動の大きい銃は握れないに違いない。 それは、警察としてはかなりのハンデとなる話で……。 (-39) 2023/09/27(Wed) 21:18:10 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → favorire アリーチェ「大丈夫よ、アリーチェ。 もう痛くはないわ。」 何度も言ってきた"大丈夫"の言葉。 病院に運ばれるその時ですら、うわ言の様に 貴方に呟き続けていた言葉。 ……今はしっかりとした意識で、安心できる声色で、 きちんとそれを伝える。 少なくとも、眉根を顰めるような激しい痛みは今はない。 視線を貴方から外して、反対側にある窓の方へ。 「……そうね。耐えてたかいがあったわ。 ……アタシたちの勝ちね。良かった……本当に……」 少なくとも、自分にとって大切な人々は皆大なり小なり怪我こそすれど生きている。捕まらずに済んだ子達も大勢いる。 ……腕一本失った対価としては、申し分ない結果だ。 「……退院出来たら、お店を立て直しながら…… ……あの子達のこと、ちゃんと探さないとね。」 (-40) 2023/09/27(Wed) 21:25:13 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオこの男が何を言っているのか、女には理解が及ばない。当たり前だ。 「バカ、ね」 「私たち、ほど、っ…繋がりを尊重、するところ…ないわよ…っ」 少なくとも、あんたよりはずっと。と口角を上げて。 は、と熱い息を吐く。下腹部が疼いて、喘ぎ混じりの声が小さくこぼれる。 場違いのようにも思えるその反応に、あなたが顔を近付けたのなら。 そこはハニートラップを生業とする、彼女のテリトリーだ。 「っ、ふ…… 捕まえた 」自由な腕が、あなたの首に回されて。 ぐ、と彼女の方へ引き寄せられる。 あなたの唇に、女の唇が合わせられた。そのまま、抵抗の暇すら与えず 唇を舌でこじ開けてやる。 マフィアを毛嫌いしている様子のあなたなら、嫌悪から身体が離されるはずだと踏んで。 吐き気と快楽が迫り上がるのに耐えながら、あなたの口内を犯そうと舌を蠢かせた。 花の棘には毒があるの。 気安く触れると、痛い目を見るわよ。 (-41) 2023/09/27(Wed) 21:34:50 |
【秘】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ → 門を潜り ダヴィードあなたをどこぞで拾って車内に詰め込んで。 それからアジトを離れ、 隠れていろと言われた手前隠れ家の一つへと。 そんな移動中の車内でのこと。 「見ないうちにずいぶん 男前 になったなあ?ダヴィード」腫れた頬を横目に見て、不意に。 「こういう生き方をするって事がどういう事かわかったろ」 「お前は今岐路に居る。 そのツラ見るにどうしたいかも、もう腹が決まってんだろ」 どうするかではなく、どうしたいか。 マフィアとして生きていくか、それとも違う道を選ぶか。 頬を腫らして、けれどどこか晴れ晴れとした顔で。 あなたは確かにそうしていた。 ならばきっと、答えは決まっているのだろう。 ちらりと横目に見た端末の中では、 情報チームの頭がようやくお帰りになるとの事だった。 (-42) 2023/09/27(Wed) 21:37:55 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-39 「それで偉業を成しちゃうんだから。男の人ってずるいわ。 ……心配だって、怒れなくなるもの」 「テオは応援しただけ…?それなら……」 それなら、いいのだろうか。 うーんと唸って、OKの結論が出たらしい。 すっきりした表情に戻った。 「……エルヴィーノも、腕、動かないの? じゃあ、警察を続けるのは、難しくなる? ……ああ、わたしが落ち込み過ぎても、だめね」 警察として、いや、どの道を選んでも腕がうまく動かないとは苦難の道となるはずだ。それを心配しないはずがない。 「うん、未来の話をしましょう。 余計に朝ごはん食べたりするの、面倒臭くならない? ……やっぱり、皆で交代でご飯持ってこようか?」 先日も考えた案をぽつり、困ったように漏らす。 (-43) 2023/09/27(Wed) 21:58:58 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……よかった。ヴィットーレ、全然大丈夫に見えない時も いつも大丈夫って言ってくれるから… ……もう、痛い時は痛いって言っていいのに」 心から安堵したように肩の力を抜いて、深呼吸する。 よかった、とようやく"大丈夫"が心に届いたかのように、 安堵感が押し寄せ、つい頬も安心したかのように緩む。 「ヴィットーレの言うことを信じて耐えてよかった。 ……あの時、焦って動く事が最も悪手だっただろうから」 「って、言っても、私も牢に捕まっちゃったんだけどね」 なんて、ぼそぼそと目を逸らしながら少し引きつった笑い。 それでも捕まった理由は無暗やたらに動いていたせいではないから、これは不可抗力だと言い聞かせるように頷いた。 「……うん。3人の事を探す、と、 ちょっと関係ある事なんだけど……」 視線がゆらゆらと揺れている。 次に発する言葉は間違いなく貴方には否定される。 そう思えても、ずっと隠し続けるのは"誠実"ではないからと、 彷徨わせていた視線を上げて、 貴方の視線の先、窓の外に向ける。 「あのね、ヴィットーレ。わたしね、 実は……マフィアに入ろうか、ずっと悩んでるの」 (-44) 2023/09/27(Wed) 22:15:00 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ>>-43 「今回が特別だよ。 こんな事はもうないと願いたいとこだけど」 そう何度もあってはたまらない。 こんなヒーローまがいな事は、自分には決して似合わないのだから。 それに、アニメや漫画と違って、こういうのはそう簡単に治るものでもないから、次の話では元通り!とはいかないのだ。 「……そう、だね。 医者からはリハビリ次第とは言われてるけど、関節が壊れてるらしいから……以前と同じレベルをとはいかなさそうだ」 神経が切れたわけではないから、麻酔が切れればきっとすごく痛いんだろうね。なんて軽く話しては笑う。 落ち込まれてしまったらどうしようかと思ったが、あなたがその様子なら大丈夫かとホッと胸をなでおろした。 身内になってしまった人間で女性なのはあなたくらい。 どうあがいても、あなたには甘くなってしまうらしい。 「警察辞める事も考えたけ………ど、って、ええ? それ、退院してからの話かい? 朝ごはんはそもそも食べないんだけど……昼だけで勘弁ならない?」 とはいえ、胃についてはご覧の通り。 そう簡単に大きくなるようなことも、なかった。 (-45) 2023/09/27(Wed) 22:28:06 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ「……はあ、まったく……」 このあと直ぐにタートルネックを部下に持ってこさせた男は、あまり目立たせることなく監獄を過ごせることにはなる。 差し入れも、もしその時が来るのであれば助かったのだろうが。 「おー……まあ。少しでも寝られたか。 ついてやるとも言ったのに……こんなことして」 「おう、戻れ戻れ。ああだがちょっと最後に聞かせろ」 「お前にこの入れ知恵をしたのは誰だ? 絶対居るだろ。 そして……本当にそいつがここまでするように指示したのか」 ここまで、というのには首についた歯型を指している。 随分な見た目になったし、正直貴方がここまでやるとは思わなかったと返して。 (-46) 2023/09/27(Wed) 22:34:45 |
【秘】 Commedia ダヴィード → Il Ritorno di Ulisse ペネロペ乗れと貴方に言われれば何処へと問うまでもなく、息をつく暇もなく。 とりあえず乗り込んでそれからどこに行くんだろうと考える。 男はいつだってそういう風に生きてきた。 「ええ。勲章が似合うようになったでしょう?」 こういう生き方。 暴力と血に塗れたいずれ必ず地獄へと至る道。 男は神に祈らないが、それでも己の生き方が神の愛に背く生き方であることは理解していた。 「俺はノッテファミリーのダヴィードです。 これまでそう生きてきたし、死ぬまでそう生きる」 ――ああ、やっと伝えられた。 だからそれは「こうありたい」という希望ではなく、「そう生きる」という決意として表された。 いつか貴方に頭を下げ、アジトの門を潜った日に、捨てた希望だったのに。 こうして言葉に出来るようになるまでには短くない時間が必要だった。 (-47) 2023/09/27(Wed) 22:46:52 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-46 「うん、 大事な仕事 があるからね」絶対に失敗できない仕事だ。 成功すれば、タートルネックを男が持ってくることはない。 それ以前にそんな時間は全くといっていいほどなかったのだが、それは未来の話だから割愛させてほしい。 「……?」 あなたに背を向けて牢を出ようとしたところ、かけられた言葉。 なんだろうと振り向けば、首についた歯型を指している。 これはどう返せばいいだろうか。 自問すること、数秒。 少しだけ言いづらそうにすること、数秒。 「……ええっと、ルチアをどうにかしたいならって話をしてきたのは、黒眼鏡だよ。 首のそれは……そうしたほうが良いのかと思って……その」 自分のタートルネックの襟を、ぐいっと引っ張る。 襟の下から出てきたのは、あなたについているのと似たような、多くの歯型と鬱血痕がつらなった首輪があった。 「 だ、かれる、のは初めてじゃなかったから ………見様見真似で」「あ、これは流石に黒眼鏡じゃなくて、その、………………… 後輩が 」怒られるかもしれないと、あなたに忠告される前の話だったのだ、と説明を付け加えたが、 多分。時期の話はあまり関係ないだろう。 (-48) 2023/09/27(Wed) 22:52:23 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ「曲がられちゃ困る。」 「俺が聞きたいのは真っ当な真実だからな。」 言葉は平行線。 それを男もそろそろ気づき始める。 では言葉でどうにもならないのならどうすればいいのか。 それも、男は既に知っていた。 間違った解答だ。 自然な仕草で立ち上がる。これから起こすことに対する緊張も高揚もそこには存在しない。 そのまま貴方の頭部に手を伸ばす滑らかさ。逆らわれるなどと、まるで考えていない動作。 けれど。 そこから先はそうはいかない。髪をぐいと引き掴み、しっかりと動かぬように固定する。 かち。 それは。 いつの間にか手にしていたナイフの、刃を剥き出しにする音。 鈍い色は白い室内灯を弾いて光った。光ばかりが清潔だった。 貴方が抵抗しないのならばそのまま貴方の側頭に添うだろう。 酷く冷淡に、残酷に。少し動けば切り込みが入る、その位置で。 「もう一度聞く。」 「マフィアと内通していたのか。」 「渡した情報は何だ。」 (-49) 2023/09/27(Wed) 23:02:31 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → リヴィオ異様に熱い熱は己にも覚えがあるそれだった。 言いたいことが他にも増えそうになったけれど。 だとして成し遂げたい何かが其処にあるのだろう。 緩む表情が安堵したのを見る。 貴方の心を少し、暖めることができただろうか。 ならば今は抱く心配は抑え、伝えるべきは別のもの。 「…………うれしい」 こわくなんてない、大丈夫。 幾度でもそう伝えるように、同じ言を重ねて笑う。 指先が離れなかったことも、提案を受け入れてくれたことも。 今、この瞳を真っ直ぐに見つめてくれることも。 その全てがうれしくて堪らないんだ、だから。 するりと肌を撫でた指先は直に離れることだろう。 頑張って、大丈夫、せんぱいなら。 ひとつひとつ浮き上がる気持ちを最後、選んだ一言に載せる。 見せた笑みはこの牢獄の中で浮かべた、何よりも一番のもの。 「──いってらっしゃい、リヴィオせんぱい!」 たったひとつに込める願い。 どうか、どうか。 天気予報が、当たりますように。 (-50) 2023/09/27(Wed) 23:12:03 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ>>37 ルチアーノ 呼ばれる声で白昼夢から醒めるように。 ハッと貴方へ向けられた顔は憔悴しきったように酷く青褪めていた。 「ルチアーノ、さん」 それでも目の前の人が誰かは分かる、理解できる。 鉄格子越しではない再会に伝えたいことは他にもあったはずだ。 けれどどうしたって今、震えた唇が紡ぐのは。 「…………ねえさんが、ヴィトーさんを、撃った」 先の現実をなぞらえる言葉だった。 そうしてはっきりと形にしてようやく喉奥まで飲み込めた気がして、くしゃりと顔が歪む。 泣きたくはなかったのに涙が溢れてしまいそうで。 「……撃った、んだ」 なんではもう声にしなかった。 理由なんてわかっているから。 でも、わかっても、……わかっただけ、だった。 「…………ふたりとも、だいすきなのに…………」 #BlackAndWhiteMovie (49) 2023/09/27(Wed) 23:14:33 |
【秘】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ → Commedia ダヴィード>>-47 「おう、着いたら後で箔も付けてやるよ。 湿布と消毒液って名前のな」 泣いて後悔したって、もう引き返せやしない。 ──この門を潜る者は一切の希望を捨てよ。 一度その門を潜ってしまえば、神も法も助けてくれはしない。 神も法も助けてはくれない者の居場所。 この世界には、神も法も手を差し伸べないものが、 場所があるから。だからそれがある。 「───ふうん、そう。」 返答は短いものだった。 既に決意された事に、御託は必要無いと思ったからだ。 故にこの後に続くのは、単なる確認でしかなく。 「そんなら、こないだ言った事は忘れてないだろうな? 自分の命には、行動には、自分で責任を持て。 これまでも、これからも、お前の命はお前のもんだ。」 「使い方を決める権利はお前だけが持ってる。その上で、 ノッテに、ボスに、俺達に胸張って誇れる 番犬 になれ」「わかったな、Cucciolo」 曰く、男は犬が好きだった。 自分がどれだけ姿形や振る舞いを変えても、見付けてくれるいきものだから。 (-51) 2023/09/27(Wed) 23:22:52 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ>>-49 「あぁ、そうだろうね。だから、 無駄 なんだ。そこに真実がないのに何──」 何を認めると言うんだ。そう口にしようとした言葉は、 君が立ち上がる動作とともに静かに消えていく。 代わりに響くのはこちらへと近づく冷たい靴音。 伸びてくる腕を、手を、避けようとする動きはない。 しかし滲む汗は、男の警戒の色を表すように額を伝う。 「……っ、………おいおい、乱暴だな」 そう長くもない髪を掴まれたことで頭皮は刺激され、 何本かはブチブチと音を立てて 君の指先へと絡まり、はらはらと床へ落ちていく。 耳元で鳴る音は早々に聞き覚えがないものだが、 触れる冷たい感覚が何であるかを凡そ理解させる。 僅かでも動けばその冷たさは己の肉を裂くのだろう。 思わず吐き捨てるような笑みが零れ出た。 「君は一体エルから、エルヴィーノから何を教わったんだ。 この方法は間違っている。善良な警官の俺が否定しよう。 …あぁ、いや。エルがこうしたことを教えるわけがないんだ。 これは、こんな馬鹿げたことに目を瞑るあの 狸 が悪いな」▽ (-52) 2023/09/28(Thu) 0:01:42 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ>>-49 >>-52 「……もう一度言うが俺は、内通者なんかじゃあない。 繋がりもないんだ、渡す情報も何もない──以上だ」 実際、こう語る人間の"嘘"を見たことがある。 痛みは何よりも相手を自白させるにいい手段かもしれない。 だがしかし、男の語るこれは"本当"で、変えようがない。 ただ真っ直ぐに訴えかけること以外に何かをしようがなかった。 さて、これらの言葉で君が止まるのならばいいが、 慣れているその手つきが違う未来を物語る。 もしもその刃を食い込ませていくというのなら、 力強く君の身に己の身をぶつけ、 僅かでも怯めば、ナイフを持つ手に噛み付こうとする。 培った危機的状況に対する反射というやつだ。 それにより切れ込みが激しくなろうが、 髪が更に数十本抜けようが、それ自体がなくなるよりはマシだ。 本当は何かをやり返すつもりなどなかったが、 それはダメだと、自分の中での警鐘が鳴り響いた。 刃が食いこんだその瞬間、 悪夢に現れる女の声が耳元で聞こえた──気がして。 (-53) 2023/09/28(Thu) 0:04:12 |
リヴィオは、痛みには慣れている。本当に恐ろしいのは──。 (a12) 2023/09/28(Thu) 0:08:50 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-45 「私もそうであってほしいと願ってるわ。 世界を救うヒーローになったって、泣く子はいて。 それは大体貴方のそばにいる子になってしまうからそれが心配。 そういう人がいないならまあ、たまには、ね」 地味に遠回しな「いい人はいるの?」と聞いてきている。 最もいたとしてその人が泣くタイプかは未知数だけど。 「……そう。……リハビリ、大変だっていつも聞くわ。 少しでも友人として支えになれるかはわからないけど…… 弱音を吐きたくなったら、いつでも使ってね。聞くから」 以前のアリーチェなら確かに落ち込んで、私達のせいで……なんてしょぼくれていた姿を見るのは明らかだった。 それが、どうしたことか。何か心境の変化でもあったのか、 成長する"何か"が起こったのか。少しだけ強くあった。 「……そう、こればかりは難しいわね。 私個人の意見だと、エルヴィーノには警察に残って欲しいけど… ……あら、でも朝食べて行かないと体力もつかないわ。 腕が動きにくいならせめて体力はつけておきたいじゃない」 (-54) 2023/09/28(Thu) 0:10:48 |
【秘】 Commedia ダヴィード → Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>-51 「 うげ。 ……あんまり沁みないやつがいいです」 そうしてまた、無理なことを言った。 一切の希望を捨てて進んだから、今の幸せがある。 その幸せが薄氷の上にあって、いつかぱちんとはじけて消えてしまうようなものであっても。 それを守ってくれた人間がいるから、自分はぬくぬくと温められていたと気付いてしまったから。 「覚えてますとも。俺は、俺がしたいことをします。 俺の大好きな、大切な人たちを言い訳にしなくても。 死ぬほどやりたいことがあったんです、ずっと」 「だから―― これからもファミリーのために働きますよ」 Bau bau、と小さな鳴き真似が口から洩れた。 思ったよりは似ていた。 愛する家族の姿形がすこしばかり変わったからと言って、間違える犬はいない。 だってそれは、『貴方』なのだから。 (-55) 2023/09/28(Thu) 0:35:12 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-48 「あの老害は俺を一体どうしたいんだ」 頭を抱えた、どうしてこんなことを教えたのだろうか。 俺になにか恨みでもあったのか?と言いたくなるような仕打ちだ。 よくもまあ、ここまで。本当に理解をしていて困る男だ。 「…… こんな噛まれ方をして抱かれた事がある 」「…… 名前を言え 」言ったらかえって良いぞ、と。 同時に、言うまで帰るなとシンプルで分かりやすく笑顔を向けておねだりをした (-56) 2023/09/28(Thu) 1:36:38 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ>>-54 「僕に何かあって泣くヒロインの話かい?」 「……そんな子はキミくらいでしょ。残念ながら僕のヒロインではないけどね。 ……まぁ、ヒロインかはともかく―――――……いや、なんでもない」 言いかけて、止まる。 それはあたかもそういう存在が居ると言ってるようなものだが、あまり不確かなことは言いたくなかった。 少なくとも、頭に浮かんだ人物が泣く所は想像できない。 「はは、キミが元気づけてくれるのはありがたい。 それにしても……随分様子が変わったね。クロスタータでおどおどしてたのが嘘みたいだ。 僕としても職は失いたくないけど……ま、リハビリ次第かな」 今、右手を失うわけにいかない。 男の目的はまだ、何一つ果たされていないから。 そんな事を考えながら、右手に力を入れてみた。 ―――まだ何一つ動かすことの出来ない手だが、痛みという感覚だけはある。 自分の手はまだちゃんと腕に、肩に繋がっている。 それがわかるだけ、今は十分なことなんだろう。 「食事の方は…… まぁ、退院するまでに少し胃を強くしておこうかな 」ある意味、肩のリハビリより努力がしづらい難題だった。 (-57) 2023/09/28(Thu) 1:51:48 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-56 「……ええと……」 これは怒っている。 笑顔だけど、怒っている……気がする。 言ったらどうなるというんだろうか。……主に、後輩が。 彼がこれまでやってきた事を、何一つしらない男は、流石に言いづらそうに視線を彷徨わせた。 流石にこの件で喧嘩しに行く、なんてことはないと思いたいのだが。 「ぼ、僕が頼んだ、ことだから」 「意識が落ちるまでしてくれたら、薬も酒もなしに寝れるんじゃないかって…………だから」 彼は何も、悪くないからね? と、できる限りの念を押して。 仕事にだけは行かねばならぬと、ぼそぼそと小さな声で名前を告げた。 「イ……イレネオ・デ・マリア……僕が教育係をしてたひとつ下の後輩だよ」 「ひどく見えるかもだけど、本当に心配をしてくれただけだからね」 これは大分頑張って庇っていた。可愛い後輩のために。 あなたからしてみれば、その名を聞けば思う所はきっとあるだろう。 だが、男から見た彼は、ただの大型犬であった。 この意識の差を埋めるのは、かなり困難なハードルだ。 (-58) 2023/09/28(Thu) 2:09:55 |
【秘】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ → Commedia ダヴィード>>-55 「そいつは無理な相談だな」 なんとも薄情なこたえを返して、笑う。 斯くして、一切の希望を捨てた後に残ったのは 決意と幸福のかたちであった。 たとえそれがどんなに儚いものであろうとも、 たしかに今そこにある事には変わりない。 そして、それを守ろうとする者が居る事も。 「良い返事だ」 そう言ったのはあなたのこたえにだか、鳴き真似にだか。 何れにせよ、確かな事は。 勲章に箔が付けば、それはきっと 忘れられない思い出になるだろうということ。 (-59) 2023/09/28(Thu) 2:26:34 |
【人】 路地の花 フィオレ>>38 ロメオ 「……」 そうなのかもね、なんて言葉を口にしようとして。 結局は開いた口からは何も発さずに、クッションに頬を埋めている。 いやな気持ち悪さだけが、ぐるぐると頭の中を回っていた。 「分かんないわよ……」 「……もしかしたら、……ううん、」 何でもない、とやはり言葉を飲み込んだ。 私が間違えているのかも。とか。本当は、もっと確かめるべきことがあったのじゃないかとか。 全部、全部。今更だ。 「これで、子供たちの未来が救われればいい…」 「もう、誰もいなくならなければいい」 ロメオ、とあなたの名前を呼んで。 後部座席で両手を広げている。寂しい時の、合図だった。 #BlackAndWhiteMovie (50) 2023/09/28(Thu) 2:27:52 |
【秘】 路地の花 フィオレ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡にまにまと笑いながら話を聞いている。 言いづらそうな理由なんて知らなかったから、ただあなたが珍しい顔を見せてくれるから。 楽しくなってしまって。 「そんなことがいいの! アレの腕の中、凄く安心するんだから」 「ね、約束よ。ちゃんと叶えてよねっ」 ホッとしたように息を吐いて、笑みを返す。 こういう反応はやはり、あなたに甘えているからなのだろう。 年下らしいと感じるかもしれない。 あなたとの未来を、疑問なく信じている。 「ん……ふーん、ふふっ」 「好きじゃない、それは大好きだって言うの! 嬉しいな、アレがそんなに私のこと考えてくれてたなんて」 そんな顔しなくてもいいのになんて言いながら、頬を染めて笑う。 いつもじゃれ合っているきょうだいが、いつになく褒めてくれたのだ。 可愛がられている自覚はあったけど、言葉にしてもらえるのはまた違ったうれしさがあった。 「私も、アレのこと大好きよ」 「だから、早く出てこれることを祈ってるから」 かしゃん、と牢に手を置いた音が小さく響く。 触れられない。 だから、触れられる場所に早く戻ってきてくれますように。 「じゃあ、そろそろ行くわね。 フレッドが何も怪我してないといいけど……アレも、これ以上怪我しないようにね」 (-60) 2023/09/28(Thu) 2:49:03 |
【独】 リヴィオ終幕へと向かう頃、収容所内は人が減り、 残されているのは怪我人やそれに付き添う者達。 ここで怪我人がいるというのもおかしな話だが、 許されてしまっていたというのがここの真実。 しかし、それも今日で終わりだ。 これ以上、ここに雨は降らない。雲は太陽を隠さない。 晴れやかとは言い難いことも多く、多く起こるが、 それでも、空の明るさはこの街を照らしていくのだろう。 男もまた、そんな街の様子を翠眼に映し、 光差す空を眺めるはず──だった。 ▽ (-61) 2023/09/28(Thu) 3:12:10 |
【独】 リヴィオ痛みが体を支配する。 体が熱くて、 寒くて、 息をすることが苦しい。目を覚ましているのなら、そう感じていたはずだ。 目を、覚ましていたのなら。 夢を見る。何年もずっと、ずっと、俺に付き纏う夢。 ここ最近は頻度が増して、満足に眠れない夜を過ごした。 だから今日も、同じように起きてしまえたなら。 それなら、その方がきっとまだマシだったのかもしれない。 『要らない』『要らない』『あんたなんか要らない』 『死ね』『死んじゃえ』『産まなきゃ良かった』 どこか怯えるように体を丸めたのは、 きっと誰も、その場には誰も見ているはずもなくて。 精神的にも肉体的にも疲れ果てていた男は、 小さく苦痛の声を漏らし、震えるように熱い吐息を零す。 『…本当に必要とされていると思ってる?』 『そんなの嘘』『全部嘘』 『誰があんたを肯定するの?』『嘘に縋って馬鹿みたい』 『さっさと死んで』『幸せになるなんて許さない』 これはきっと、俺の心で。否定するばかりの、俺の心で。 分かっているのに足掻けなくて、止まらなくて。 逃げたい。ひとりは怖い。苦しい。恐い。 ▽ (-62) 2023/09/28(Thu) 3:13:53 |
【独】 リヴィオ爪のない右手が、床を掻く。 白に滲む赤はやがて床を汚し、線を残す。 それでもまだ、目を覚まさない。覚ませない。 起き方を忘れてしまったかのように、 夢の中に囚われている。囚われ続けている。 しかし、男にとって幸福だと言えるのは、 この場に、男に手を伸ばすものがいないことだった。 そのはず、だった。 誰かに迷惑はかけたくないんだ。 …俺なんかの為に、その心を割いて欲しくない。 やっぱり心は簡単に変えられない。変えられるはずがない。 だけど。 「 」 誰かに求めた救いが、音にならずに消えていく。 それでもこれはきっと、確かに救いを求める"声"で。 …もう一度、指先が床を掻く。 零れる吐息は、苦痛の入り混じるものだ。 きっと、そんな自分を表に出すのは今回限りで。 誰にも見せたくない、リヴィオの姿だった。 …夢を見る。この悪夢から抜け出すにはきっと。 自分自身の力では、到底難しい話だった。 (-63) 2023/09/28(Thu) 3:14:20 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレくそー、なんて悪態をつきながら、 はいはい、と手を振った。 「全く、今お前を抱き寄せられないのが残念だよ」 「約束約束。叶えるから」 ――嘘。 珍しく嘘をつく自分に顔をしかめて、 けれどかつて、腕の中にあった体温は本物だった。 それを確かめるように、自分の腕をさすって、 「大好きね、……まー、そうかもな、うん」 その言葉を口にすることが、正しいのか。 自問と自戒が渦を巻いて、普段はくるくると回る口を重くする。 そうしているうちに、格子が音を立てる。 届かない手をこちらに伸ばす女に、 もう 届かない笑みを返して。「おー。俺もそう祈ってるよ。 お前も無茶すんなよ、怪我も。あーそれともし金とかないってなったら、俺の口座にはいってるから。あれ、非常用。ちゃんと使えよ!」 はよ行け行け、なんて手ぶりをしながら、あれこれつけたしで放り投げる。手が触れられないなりにあなたを気遣う言葉をいくつも取り出して、 「帰り。車気を付けな」 ──見送った。いつものように、いつものようにはできずとも。 (-64) 2023/09/28(Thu) 5:53:10 |
【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-11 「避けられなかったなら仕方ありませんね。 少なくとも……今回の俺が咎められることではない」 視線に気づけば、見せびらかすように片手を胸の前に掲げる。 指先には残らず包帯が巻いてあり、骨が折れたものもあるのか固定具が付けられている指もいくつか見えるだろう。 「この忙しいのに人員の欠けや身体の不自由で、 普段に比べて著しく効率が落ちている。全く面倒です」 「全体の最適ばかりを気にしていた俺と、 他人の幸福ばかりを気にしていたあんた。 自分勝手な我々に与えられた罰……とすら思えてきますね」 己を疎かにすればいつか負債が返ってくる。 あまりにも当たり前のことを、忘れていたように思える。 文字面以上に深刻には受け止めておらず、浮かべる表情は気楽なものだったが。 「ま、それでもやっぱり、 命と取り返しのつかないほどでもない肉体があるだけマシで。 俺たちはまだ後戻りできる場所にいたともいえる」 「だからこれからは……俺はあんたと違って夢を見ませんが、 エルヴィーノの健康くらいは願ってやりましょう。 覚悟してください。その身体は何から何まで健全から程遠い」 願うなどと言っておきながら、 その実はやはり自分が世話を焼く気満々でいる。言葉だけでも相手を想うことが言えるだけ進歩はしているだろう。 (-65) 2023/09/28(Thu) 6:06:05 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ逮捕された人たちが解放されてから、暫く経って。 落ち着いた頃合いにメッセージがひとつ。 よく知るところとなった女からのものだ。 『Ciao,テオ』 『夜、どこかで時間取れない?ゆっくりお話したくって』 『何か飲みたいものとかあれば持って行くわ』 (-66) 2023/09/28(Thu) 7:29:00 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ>>-65 「キミも十分酷い怪我じゃないか……。 捕まる時に無茶をしたのかい? それか、違法な取り調べか」 男は拷問が行われていたことなど一つも知らない。 心配気な表情であなたを見上げて息をつく。 「そうかもしれない。 これが罰なら、甘んじて受けるしかないなぁ」 それでも幸を願わずにいられないのが、浅葱の瞳を持つ男だ。 願うだけじゃ足りないから、これからも他人に幸を与えようとするのだろう。 それでも、これまでよりは幾許かは、自分の身やその他の事も気にするようになるはず。 巡り巡って大事な人が不幸になってしまうなら駄目だということを、学んだから。 「はは……健康を得るには寝るのが大事なのはわかってるんだけど。 どうしてもなら本当に僕を寝かしつけてもらうしかない気がするよ。 ……や、本当にそんな事はしなくて良いんだけど……、まぁ、僕もキミの回復と幸を祈っておくよ」 寝かしつけの何かを思い出して、一つ咳払いをして。 ただ祈るをすると告げる。 あなたはきっと幸を自ら掴んでいくタイプだと、今なら尊重することが出来た。 (-67) 2023/09/28(Thu) 8:02:29 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → favorire アリーチェ「ふふ、ごめんなさいね。 つい、昔からの癖で………」 スラムで生きてきた頃は、弱みを見せないように。 孤児院に居た頃は、心配させないように。 院長であった頃は、遠慮させないように。 常に元気に振舞う必要があったものだから、 ついつい染みついてしまった"大丈夫"の癖。 …これからはちゃんと弱さも見せられるよう、 少しずつ頑張っていきたいなと思う。 「えっ!?捕まってたの!? 大丈夫!?怪我は!?酷い事されなかった!?」 そうしてあなたから零れた言葉を聞けば、 牢の中ではほとんど意識が朦朧としていたヴィットーレは それはもう慌てて、貴方に寄り詰めようとしてベッドの上で よろけたりしたことだろう。 怖かったわね……なんて眉を下げて労わる様は、 やっぱり昔から変わらないお兄ちゃんの姿だ。 そんな顔も、貴方からの打ち明け話にはぴし、と固まる。 貴方にはいつも柔らかな表情を見せていたヴィットーレも、 この時ばかりは渋い顔をして。 「……マフィアは優しい世界じゃないのよ。 昨日まで喋ってた人は死ぬかもしれないし、 マフィアってだけで酷い事もされるかもしれない。 酷い仕事だってたくさんしなきゃいけないの。 アタシは………反対だわ。」 (-68) 2023/09/28(Thu) 8:15:27 |
【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡「は?」 予想外の騒音というのは人の意識を奪うものだ。 突然の哄笑に男は目を丸くした。それからぱちぱちと瞬きをする。見事な口上への拍手と同じ。しかしそれもまた、同じだけ。 表情はみるみる険しくなった。 侮られたという激昂が面を染める。 がたん。 何度目かの立ち上がる音。襟元の締まる感覚。「口を閉じろ。」 「俺はマフィアとは違う。お前たちとは違う、」 「同じにするな!」 それは男にとって侮辱であり、侮蔑であり、屈辱であった。 暴力を好む野蛮人だと思われるのも、悪党と形容されるのも、マフィアと同様に扱われるのも、何もかも。 (-69) 2023/09/28(Thu) 8:40:45 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ「あはっ」 身体の下に震えを感じて男は笑った。やっぱり愉快そうだった。声ばかりは無邪気だった。 悪意なく他者を貶める、幼い子どものする笑い声だった。 一通り満足したらしい瞳が貴方の表情を確かめる。 悔しそうな様は心地いいらしい。偽物の上下関係を確かめるような暫しの間があるだろう。さて、と次の行動を考えつつ、最初の目的に立ち返る間だ。 この間は隙である。 離れた空間を利用して頭突きをするなり、自由な足で蹴飛ばすなり─────反撃をするなら、通るだろうが。 (-70) 2023/09/28(Thu) 8:51:05 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ「なにが違えんだよ、言えよ、ほら定義してみろ、学校出てんだろ!?」 ぎりぎりと締めあげられながらも、かはは、と哄笑を続ける。 「おめー法律によって許可はされてない暴力を 抵抗できない相手にふるってるよなァ、 相手を脅してよォ」 「お前が一番知ってんだろ? ヤってんだからさぁ」 それは間違いなく侮辱であり、罵倒だ。 ──そして、事実だ。 「何が違うか、 何が同じか、 ちゃんと確かめろ、今、なあ!」 (-71) 2023/09/28(Thu) 9:09:38 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ「……うるさい。随分ご機嫌なようで」 まったく目の前の男は突然口が回る。最悪の気分であろうに、一体どうしてそんなにその威勢を保てるのか。 本当に殺しておけばよかったと思うのはこの先に予知できる破滅の音のせいだろうか。 知ることが好きだ。先がわかることは安心する。 大事な人が知らない場所で死なれるのが嫌だった。 いなくなるぐらいならなら、この手で、目の前で死んでいなくなって欲しい。 何故こんなに執着してしまったのか身体を重ねたからなどではない、と思っている。 ならばやはり、少なからずこの目が貴方をただの悪人と捉えていないからであるのだが。 この感覚は説明できるものではないし、理解されるとも思えず終ぞ口に出されることはなかった。 溢れんばかりの情報を、大雑把に勘だけで見通してきたここ数年間。 ただただこの男が、理由もない大悪党だとは思わないという理由だけで。 本当に今更な感情に振ってくる言葉も途中まで考えられず、最後に漸く顔を上げた。 → (-72) 2023/09/28(Thu) 9:18:15 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ「死体……?」 ヘタれた子供と呼ばれた男はうっそりと目を細めた。 それは彼の周りの人間は知らない顔であることを、また彼自身も知ることではない。 「…………」 万が一が起きたその時。 黒眼鏡も、ボスも、必要なのは生死の判断だろう。 もしかしたら死体を傷めつけられたりするかもしれない。 死者を冒涜する人間も晒し者にする存在もいるかもしれない。 自分はそんなことはさせたくはないし、させるつもりもなかった。 「わかった。 必ず見つけてあんたの墓の常連になってやる」 自分以外が簡単に知ることもないようなその場所に、一体どんな意味があるだろう。 貴方にとってもその墓を懇意にする事実がどういったものをもたらすかもわからない。 しかしまるで望んだ物を手に入れたような様子でルチアーノという男は貴方にうすく笑いかけていた。 (-73) 2023/09/28(Thu) 9:21:56 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ息を整えている間に 貴方の方も手が止まって、考えているのが伺えた。 ――今だ 頭を軽く振りかぶって その額へと頭突きを喰らわせようとする。 当たり、怯んだのであれば 少しでも自分の身体から距離を取らせるべく 右足で腹を狙って蹴り飛ばそうとするだろう。 (-74) 2023/09/28(Thu) 9:25:20 |
【秘】 Commedia ダヴィード → Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>-59 いやだあ、と情けない声が上がった。 そんなことを言っても治療行為に抵抗など出来るはずもなく、ぎゅっと眉間に皺を寄せて耐えることになるのだろう。 ずるずると座席からずり落ちながらそんな未来を予想した。 本当に嫌だ。 「ん」 いつもより数段気の緩みきった返事を添えて、決意表明は終わり。 あとは貴方が車を走らせるままに外の景色を眺めていることだろう。 忘れられない思い出は、忘れたくない思い出にもなった。 この幸せと痛みを抱えて、子どもはまたすこし大人に近づいたのだった。 (-75) 2023/09/28(Thu) 9:31:24 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → リヴィオもう一度、貴方の指先が床を掻いた時。 触れた熱は少し暖かく、柔らかい物であった。 その夢に入り込むのは――眠る猫の姿。 誰にも触れられずただ無防備に、静かに眠っている。 「――呼んだか? リヴィオ」 貴方がその重たい瞼を開ければ、横になっている一人の男が世界に映りこむ。 男は幾回にも渡り残された赤い線も気にせず横たわり、眠そうな顔で似通った海の色を見つめていた。 血のにじむ手の下にも違う形の片手が滑り込まされていて、再度の床への傷は掠れるものとなっただろうか。 「お前まで子守唄が必要かね。 ……俺もシエスタは好きだがなあ、そろそろ帰る時間だぞ」 (-76) 2023/09/28(Thu) 9:41:54 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-58 「……ほお。お前が、頼んだ。 そんな噛み方をして、答えた奴が」 「…………イレネオだあ?? あのガキ」 「心配しただけでこんな噛み痕もキスマークつけてるなら 随分この町はもっと性犯罪が頻発しているだろうなあ! お前、そいつを庇ってるんじゃねえぞ! 少しは文句を言え! 首まで隠す羽目になるのは仕事の支障にしかならないだろ。 それと、善意で強姦して許されるなら警察はいらねえ! お前らは何処で働いてる、鏡見てから仕事するんだな」 結局怒った。 「さっさと出ていけ、馬鹿野郎。……ああ最後に」 「 二度と黒眼鏡に会うんじゃねえぞ! 」先程流そうとした思考が戻ってくる。 誰しも自分の信じる姿でいることなどない。 疑って過ごすべきだ、だから一番に気にかけるべきだった。 この幼馴染はちっとも信頼できない不用心な人間で。 マフィアなんかと関わるべきじゃない大事にしなければいけない存在だったと。 男のくせに、とため息を吐いて牢の出入り口に向かって追い払うように手を振った。 此処から出てからも話すことが多すぎる、そう考えながら。 (-77) 2023/09/28(Thu) 10:06:14 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 傷入りのネイル ダニエラ男は信じている。 自分の信じる、正義を信じている。 それは酷く盲目的な様だ。酷く独善的な様だった。 この世で正しいものはひとつだけ。それは法である、という排他的な思想。警察とはそれに従うものであるという圧倒的な従順さ。 それがこの男を構成するほとんど全てだ。 全く全て、ではなく。 瞳に浮かぶのは暴力への高揚ではない。単に苛立ち。誇りを傷つけられたことへの厭悪。 「お前のような人間を」 「一時でも警察だと思った俺が、馬鹿だったよ。」 そこからは。 肉を撲つ音。 骨の軋む音。 貴方に器具を握らせる声。 共同作業だ。自らの爪を剥がさせたり。 それでも貴方は笑っていただろうか。 血と汗と涙に塗れても笑っていただろうか。 少なくとも、きっと。 男はきっと、笑っていたんだろう。 (-78) 2023/09/28(Thu) 10:13:19 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → favorire アリーチェ「俺はルチアーノだ。 はじめましてだなあ……友人の妹分だと聞いている。 様子を見てやりたかったんだが、結局こんなところで話すことになるとは夢にも思わなかったね」 どうして男と二人きりで危機感が緩むのやら。 随分と気を許されているようだが今は気にかけることをやめた。 大事なのは無事に貴方がこの牢獄の迷宮から抜けることが出来るかだ。 「あの二人は大したこと……ないだろうー。 これは一種の信頼でなあ? ここを出たら一緒に酒を飲みにでもいくさ。 それで――」 「誰を探したいんだ? 俺が手伝ってやろう。 丁度外に出る準備は整っているんだ、その連れも一緒に出ればいい」 さて、目の前の彼女は何処と繋がっているのやら。 やり残した冤罪の証明を自分自身でしなければいけない。 (-79) 2023/09/28(Thu) 10:30:43 |
【人】 corposant ロメオ>>50 フィオレ ちらとバックミラー越しに目を合わせた。 滅入った顔にかつての焔火の面影はない。 片眉を上げる。どうしたものか。 「フィーオレ……引き金は引かれたんだ」 「ケジメ付けに来たんだろ。 あんまり落ち込んでちゃ撃った相手に失礼だぞ」 呼ばれた名前に振り返り、ああ、と意図に気付いて。 ドアを開けて後部座席に回れば、 「ほい」と優しく抱き締めようとした。 「泣きたきゃ泣きな〜」 「落ち着くまでこーしてていいから」 ぽんぽん、と背を穏やかに叩いては擦って、 安心させるために、いつもよりも落ち着いた声のトーンで。 自分が焚き付けたものだから、ちとばつが悪いのだ。 #BlackAndWhiteMovie (51) 2023/09/28(Thu) 10:31:31 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ口元が“N”の形を作った ────お前たちは違う。 それはこれまでも繰り返されてきて、これからも繰り返される否定。 しかし、その唇から音が発されることはなかった。 絡め取るように回される腕。それから柔らかい感触。 しまった、と思った時にはもう遅い。内側の粘膜にまで触れられ、それが口付けであると遅れて知る。 勝ち誇ったようなターコイズが近くで細まった。のを、見て。 男は、 その首を絞めた。 何よりもまず嫌悪。背筋から項までが総毛立つような不快感。その次に焦り。何かが仕込まれてやしないかという恐怖。油断した。まずかった。マフィアとはそういう生き物だ。 舌に噛み付くなんてそれなりの高等技術は思考に及ばない。まず飛び出すのは手。片手で貴方の首を押さえつけて絞めあげ無理矢理引き剥がそうとする。これは男の腕力だ。通常なら負けることはないだろうが。 (-80) 2023/09/28(Thu) 10:56:12 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ>>49 ニーノ 「ヴィトー、……そうか。あいつが」 本当に、嫌な予感が当たってしまった。 だけど今ここに死体はない、周りが騒いでいる様子もない。 つまり彼はまだ生きていて、彼女は殺し損ねたか何かを仕込んだか。 少なくとも――その引き金を引いたのは確かなのだろう。 「……すまんなあ、ニーノ。止められんかった」 また男はあなたに謝った。 悪くもないのに、ただ謝った方が楽になれる気がして。 それは起こるのがわかっていたかのような表情で、諦めたような、それでも物悲しそうなものであった。 「旦那のことは諦めるんだなあ。 あの音で撃たれて騒ぎがないってことは もう何処かに逃げてるか、誰かに匿われてる。 行き場所は分からんが、……俺たちが探すから心配するなあ。 無事なら病院に直ぐ運ばれるだろうよ」 「それよりもなあ、ニーノ。今お前は誰に何を言ってやりたい。 ちゃんと決めんとならんだろ、俺はそれの手助けをしてやる」 「また一人で泣いてお家に引きこもるつもりか?」 #BlackAndWhiteMovie (52) 2023/09/28(Thu) 11:06:12 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、!」 口内を堪能するような時間は与えられず、女の細い首はその手に捕えられて。再びこの地に縫い付けられる。 ギリ、と締め上げられて。首に回していた腕で、あなたの片腕を握って離させようとする。 女の腕力だ、敵いっこない。 この口付けは、咄嗟に思い付いたものだ。 故に、何かを仕込む余裕などなかったのだが。あなたを疑心暗鬼にさせたならそれで十分仕事を果たせたと言える。 打って変わって、あなたの下の彼女は苦しげに顔を歪ませている。 結局のところは引き剥がせなかったわけだから、形勢逆転とまではいかなかった。 (-81) 2023/09/28(Thu) 11:21:47 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオその名前にも男が揺れることはない。 信じている。警察を、正義を、善性を、彼のマフィアへの嫌悪を信じている。 信じているのだ。純粋に。この行為が真実正しいものであると信じている。 だから止まらない。止まらなかった。 刃の冷たさを内側に感じたはずだ。 ついで熱の感覚に近い痛みが襲う。 それは男が貴方に与えるもののはずだった。 緊張した身体に油断していた。緊張しているからこそ、抵抗はぎこちなくなるものだと思い込んでいたのだ。 ▽ (-82) 2023/09/28(Thu) 11:22:20 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオどん。 衝撃を感じたのはこちら。反射的に視線をやればかち合った。きっと貴方の瞳は激しく反抗に燃えて、それを裏付けるように歯を剥き出しにする。それで怯んだとは言いたくないが、見た事のない表情に一瞬動きが止まった。 がち。 骨と歯がぶつかる音。昨日も聞いた音。まずい、と思ったのはそれも反射だ。 髪を掴んだ左手を引き倒すように横に振った。 薬を飲んでいるとはいえ負荷がかかる。親指の軋む痛みに顔を顰めたが構わない。右まで奪われるのはまずい。 そうしてその抵抗が叶うなら。 貴方は男ごと床に倒れ込むことになるはず。急激に揺らされた頭はくらりと遠のくはず。隙ができるならばそのまま、動きを封じるように腕を固めようとするが。 (-83) 2023/09/28(Thu) 11:22:29 |
【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡──ノッテ・ファミリーのアジトは、当然ながら街中にある。 周囲の人間もそこがマフィアの根城であることは知っているから、壁によりかかったり周囲で騒ぐやつはそうそういない。 それでもそこは市中であり、人通りもあれば車や荷物が往来することも珍しくはなかった。 そんな中。アジトの一角にひっそりと置かれたその「荷物」──何の変哲もない黒いスーツケースは、ファミリーの一員である若者が置いていったこと、そして取締法失効に伴う混乱によって、見分されることもなかった。 だから、それが原因であると気が付くものはいないままで。 ──パパパパパパパ パァン !!けたたましい破裂音と共にそれが「爆発」した時。 すわ襲撃かと銃を手に駆け付けた構成員たちが見たのは、内側から真っ二つに焼け焦げ吹き飛んだスーツケースの残骸に過ぎなかった。 「っンだこれ」 「……な、なんだ? テロ?」 「いや、これ…花火じゃねえか」 「イタズラ〜?」 「ウチ相手にそれやるのはバカかジェームズ・ボンドだけだろ」 「じゃあCIAだ」 「CIAがうちに何の用だよ」 構成員たちは、訝し気に顔を見合わせる。 そんな混乱と焦燥が、彼らの判断を僅かなりと鈍らせていたといえる。 …だから、気が付かなかったのだ。 「よう」 アレッサンドロ・ルカーニアが、ぽん、と肩を叩くような距離に近づいてくるまで。 #AlisonCampanello (G0) 2023/09/28(Thu) 11:29:12 |
【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>G0 「ぅお」 「キャ」「ギャア」「ひ!」「マジでビビる!」 「くそばか眼鏡」 「やめてくださいよアレ!」 「……って、おいおい、お前ら、おい…」 驚いたように飛び跳ねたり文句を言ったり、めいめいの反応を見せる構成員たち。 ──だが数名は警戒して距離を取り、手に持った銃を遠慮がちに向ける。 「どうした」 にやにやとしたいつの笑みに、向けられた銃口が下がる。 訝し気な顔と困惑した視線が絡みあって、緊迫した糸がぷつり、と切れた。 「い、い、いや、だって、あれ、取締法」 「裏切ったって…」 「いやそんな」「旦那がさぁ、そんな」「ね、だよね」「お前らさぁ」 「ハハハ、まあ待て、お前ら、落ち着け」 まあまあ、なんて手つきでその場を押さえる。 カポ・レジームとしてのその仕草に、構成員たちは思わずぽかん、と立ち止まって。 #AlisonCampanello (G1) 2023/09/28(Thu) 11:31:18 |
【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>G1 「怪しいと思ったら」 バ バ ガン 。「ぐ」「ギャ」「っ、あ」「っづ」 「先に拘束」 背後に隠していたソードオフ・ショットガンから一度に二発。 立てつづけに放たれた鳥撃ち用の散弾が、至近距離で密集していた構成員たちを襲った。 室内にいたことで肌の露出している服を着ていた若者たちが、あちこちに被弾してうずくまる。 直径0.2inch以下の鉛の雨が手足や顔、首の皮膚を突き破り、発砲炎に照らされた赤い飛沫が花束のように咲き乱れた。 「う…」「ってぇ、く、…ッ」 「コラ」 被弾の少なかったソルジャーが痛みと衝撃に顔をしかめながら、 突きつけるよう向けた拳銃がバギン、と真横に弾かれる。 身を低くし、スーツの裾を翻しながら距離を詰めたアレッサンドロが、踏み込みと同時に跳ね上げた足刀。その横殴りの爪先が、中途半端に前にだされた銃身をとらえたのだ。 さらに振り抜いた足が振り下ろされて、若いその男の掌をばきばきと踏み砕く。 「、っ、あああああっ!!」 「アキッレーオ、ピストルを構える時腕伸ばしすぎ。前も言ったろ? 室内戦なら引いて体につけんだよ。おめ〜は前からかっこつけて、銃をこう…横に構えるからさぁ、やめろってマジ」 #AlisonCampanello (G2) 2023/09/28(Thu) 11:33:28 |
【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>G2 くるり、と回したショットガンに弾丸が装填され、つきつけるようにもう一発。 散弾に吹き飛ばされて床に転がっていた女性のアソシエーテの右膝が、至近距離からまとめて叩き込まれた散弾でずたずたに引き裂かれる。 「ぎ、ぁッ! あ、ぁああッ!」 「ビアンカ、彼氏とうまくいってるか? 優しそうなガキだったよな、あれだ、面倒見てもらえよ。 そんくらいやるって、やんなかったらこえ〜ぞ、うちのルチアーノがっていっとけ」 奇襲によって乱れた集団は、既に抵抗する能力を失っていた。 アレッサンドロは彼らに無造作に近づいては、次々と追撃を咥えていく。 這って逃げようとした男の頭をがつんと蹴り、銃身をこん棒のように振るってタックルをかけてきたもう一人を殴り倒す。 散弾を最も多く浴び呻いていたメイドマンの胸倉を掴んで引き起こし、その指をごきりとへし折る。 「カミッロ、親父さんの借金は払っとくから。入院代は心配するなよ」 「エルネスト、俺がやった万年筆どうした? …お、持ってんじゃん。高いから大事にしろよ」 「フェリーチェ、お前料理屋やったほうがいいって。 俺がやった車売れよ、ちゃんと値段調べたか?」 ──最初の発砲から20秒とたたないうち、五人の構成員たちが床に転がり呻く。 アレッサンドロはまるで酒の席のように、ひとりひとり言葉をかけた。 そしてその返答を聞く様子もなくショットガンを肩に担ぎ、 サテ次は、とアジトの奥に進もうとして。 「……お」 どかどかという足音。ぶつかりあう硬質な音は力強く、だが統率が取れている。 その動きを聞いた途端、アレッサンドロは足を止め──にんまりと、口元に笑みを浮かべた。 #AlisonCampanello (G3) 2023/09/28(Thu) 11:34:51 |
【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>G3 「もうか! いやあ、うちのソルジャーも捨てたもんじゃないな!」 我が子の成長を喜ぶ父親のように、誇らしげで嬉しそうに声を弾ませると、懐から取り出した使い捨て携帯電話をぱちんと開く。 ボタンを指で押し込んで、ピ、という電子音が一瞬鳴った――直後。 ――爆音が、五つ。 アジトの各所、計五か所。 アレッサンドロがあらかじめ協力者たちによって配置させていた爆薬が、一斉に封入された爆発力を解き放った。 建物全体が僅かに軋み、置かれていた観葉植物の鉢が斜め上に跳ねて砕け散る。 窓ガラスのほとんどが白い雨のように割れ砕け、甲高い音を立てて路上の上で跳ね返った。 「………、ハ、ハ」 天井からぱらぱらと落ちた建材の破片が、ばふんと顔に落ちてくる。 ぺろりと唇を舌で拭い、牙をむきだすように笑ったアレッサンドロはしかし、そこで――くるり、と踵を返した。 #AlisonCampanello (G4) 2023/09/28(Thu) 11:36:41 |
【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>G4 本来の『プラン』では、ここで死ぬまでカチ込むはずだったが。 そうはいかない事情があった。 喧嘩のケリをつけなければいけない相手が、もう一人残っている。 がしゃあん。 僅かに残った窓ガラスを内側から蹴り砕いて、アレッサンドロは路上に飛び出した。 「あっちだ!」 「あんクソ元ボケ上司…ッ」 「撃て、マジ殺せ!!」 上階の窓から身を乗り出したソルジャーたちが、その背に向かって発砲を繰り返す。 だがアレッサンドロはそのまま迷う様子もなく、開けっ放しにされていた近くのマンホールに身を躍らせた。 #AlisonCampanello (G5) 2023/09/28(Thu) 11:37:36 |
【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>G5 ──カポ・レジームであるアレッサンドロ・"黒眼鏡"・ルカーニアによる、『カチコミ』は、僅か3分の出来事だった。 設置された誘導用の花火、および爆薬によるけが人はなし。 だがアジトの設備や建物には少なくはない損害が出た他、 「奇襲」してきたアレッサンドロの手が5名の構成員が重軽傷を負う。 命に別状こそないものの、足や手に障害を受け今後ファミリーを続けることが難しいものもいた。 被害者の中には、アレッサンドロの配下である者も含まれている。 さらに彼が取締法への献金により、マフィアの勢力に打撃を与えようとした疑いも残ったままだ。 つまりこれは、彼本人による裏切り。 …曲がりなりにもカポ・レジームにまで上り詰めた男によって、ノッテ・ファミリーは少なくはない打撃を受けたのだ。 さらにこの上、アレッサンドロに然るべき「報復」を与えられないとなれば、 マフィアとして――暴力組織としての面子が立たないだろう。 こうして、アレッサンドロによる『プラン』は一定の成功を見る。 ノッテ・ファミリーに「一発かました」男は、下水道に逃げ込んだあと見事にその姿を晦ませた。 結果的に彼は、10年かけて用意した人脈、準備、調査、全てを駆使し、この一石だけを成功させたのである。 #AlisonCampanello (G6) 2023/09/28(Thu) 11:39:12 |
黒眼鏡は、行方を晦ませた。 #AlisonCampanello (a13) 2023/09/28(Thu) 11:39:29 |
【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡「違う」 何が? 以前もこうなった。 「違う!」 ならば否定しなければならない。 堂々と。理路整然と、正しく。これは正義なのだから。 「如何なる手段を持ってしても聞き出せと命令だ」 吠える。 自分の頭で考えた、わけではない。 「したくてしているわけじゃない」 吠える。その嘲笑を掻き消したい。 どうあれ事実は事実であるのに。 「大体」「お前たちが」 「お前たちが何もしなければ」 「こんなことにはならなかった!」 吠える犬は噛まない。ならこの男は犬以下である。 貴方の口に手が伸びた。せせら笑う舌に向かって。閉じないなら引き掴んでやると。 他責の正義。 調和でも融和でもない排除の正義。 白と黒の黒を徹底的に焼き尽くす愚直な暴力。 男の手の中にあるのはどこまで行ってもそれだけだ。 (-84) 2023/09/28(Thu) 11:59:27 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ「どんな命令があったって 誰の命令だって "いかなる手段も"合法になるわけねェだろ! 法律ってのはそういうもんじゃねエんだよ、 それが通るならマフィアだって必要悪とか言えちゃうだろ。 そういうバカな言い訳を封じるためのモンが法律だろうが」 げらげらとした笑い声はますます大きく、 煽るように高鳴るばかり。 「何をしてどうなったかちゃんと言えよおめェ! ほんとにわかってやって──」 伸びた手を避けることも無く、ぐにり、と筋肉の束をひっつかまれて。 「……へ、へ、へ。」 舌を掴まれても笑えるぞ、と。 口の端をぐにい、とゆがめた。 (-85) 2023/09/28(Thu) 12:08:51 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 口に金貨を ルチアーノ猛威と理不尽を振るった法が失効して 多くの囚人が日の下へと送られる中。 ニコロ・カナールは未だに牢の中に居た。 というのも、拷問で負った怪我のせいで、動けないのだった。 右腕、右足の骨折に肋骨も何本か。 顔や身体には打撲痕もある。 そして何より、拷問時に薬を2種類同時服用したことで 体が怠さと熱っぽさの不調を訴えているのだった。 それでも、意識だけはきちんとあるのだけれど。 薬そのものの効果がきちんと調整されていて 且つ量も大して飲まされることが無かったのは幸いだった。 もし調整されていないものであれば 意識すらも危うかっただろうから。 そんな訳で。 どうしたものかなぁ、なんて考えながら 動く気にもなれず、ぼんやりと時を過ごしているのだった。 (-86) 2023/09/28(Thu) 13:22:38 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ法が失効してから。 貴方もまた、牢から解放されて 病院送りになったろうか、それとも自宅療養だったろうか。 ともあれ、動ける程度になった頃合いに 運命共同体を謡っていた狼を探してみれば どうも病院に放り込まれたという話が聞こえてきた。 ちょっとでも様子を見てやるか、と思ったのか 話したい事があったのか。 貴方は彼の病室を訪れる事を決めたのだろう。 ニコロ・カナールの病室は個室になっていて それもそこそこ怪我の程度が重い人向けの病床だ。 重体、とまではいかないけれど、重傷なのは伺えるかも。 けれど実際訪れてみれば、当人は無事ではある様子で。 腕と足を吊った状態でベッドに横になって 点滴の管に繋がれている以外は、意識もあって元気そうだ。 (-87) 2023/09/28(Thu) 13:28:33 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロぐらん、と。 貴方の頭が傾ぐのが見えた。見えただけ。 避けるに間に合わぬ近い距離。ごん、鈍い音と共に脳が揺れる。 「ッ────」 勢いはそうなかったはずだが頭骨は硬い。それは怯ませるには、かつ貴方の反撃の意志を伝えるには充分なものだった。 次いで蹴飛ばす足も入る。ずぐ、と男の硬い肉を、貴方は膝か脛かに感じたはずだ。しかしだからこそわかるだろう。 命中したわけではない。 男は目が良かった。 外している時の方が良いのだ。だから、反応が遅れることもなかった。完全な一撃として食らう直前、距離を取って避ける。 チ、と舌打ちが聞こえた。 一転、表情に不機嫌の影が差す。 (-88) 2023/09/28(Thu) 13:40:14 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 月桂樹の花 ニコロ>>-87 「Ciao,ニコロ」 快活な声色だが気だるげな態度で声をかけるのは首までしっかり着込んだ貴方の友人色男だ。 「……はあ。 なんでこうなってるんだ? 説明はするな、どうでもいい。大変だったなあ」 鍵が開けられた牢の中に入れば貴方の目の前に行ってしゃがみ込む。 目の前の男の傷は見ているだけで痛々しい、その上何か飲まされているらしく扱いが厄介だ。 俺が背負っていかなくちゃならんのかもしれない。それは怠い。 「――問いに答えてくれえ。 手は、貸してほしいか」 (-89) 2023/09/28(Thu) 14:02:28 |
【秘】 新芽 テオドロ → 路地の花 フィオレ『いいですよ』 『なんでもいいです』 音声入力なんかしたことないし、かといえ細かいニュアンスを記せるほど自由な指はないから、突き放すというかもはやただただそっけない文面になってしまった。 『一度家に来ますか』 『開けています』 ベランダに飾っている花たちのことも考えなくてはならないし。 そんな気分で、軽い気持ちで家に招くのだった。 (-90) 2023/09/28(Thu) 14:11:43 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ『はいはい、じゃあ適当に持ってくわ』 手の状態は知らずとも。 まだ万全ではないのかも、ということくらいはわかる。 『元々家で済ませるつもりだったから、出かける準備はしなくていいわよ』 『買い物が終わったら向かうわね』 サングリアやワイン、カクテル用のジュースパック。 それからスプーンやフォークを不要とするご飯やデザートの類をいくつか買っていく。 せっかくだし、遅れた退所祝いみたいなものにしてしまおう。そんな魂胆で。 買い物を終えたなら、あなたの家に向かっているだろう。 メッセージが来た日の夜、あなたの部屋の扉がノックののちに開かれた。 (-91) 2023/09/28(Thu) 14:21:23 |
【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-67 「どっちもです」 どっちもらしい。酷い怪我をした理由じゃないにしろ、 ちょっと無茶をしたときもそれなりに痣が出来た。嘘はついていない。 何より、これをした人間の名を上げたところで、 良いことがおきるとはこれっぽちも思っちゃいない。 罪はともかく、何か俺に対して悪いことをしたか≠ニ問われればそうとは言い切れない。己にも非があり、そしてきっと彼にも彼なりの報いがある。それに任せようと思うのだ。 「罰をある程度受け終わったら、 その時はまた張り切ってやっていきましょう。 こうして休んでる間にも溜まっていきますからね、仕事って」 それよりも、今は目の前のあなたに、 もう少し誠実であれるところを探したい。 「……へえ。これまでは度々冗談を言っていましたが、 今度こそ本当に寝かしつけてやりましょうか? 手仕事が出来なくて暇な時間は本当に暇なんですよ、こちとら」 やはり願うだけは性に合わない。 自ら率先して、今度は自分を使いつつも削らない全体の利益を求める。ありていに言えば───ちょっと図々しく成ろう。そう決めたのだ。 (-92) 2023/09/28(Thu) 14:31:15 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ「え、ちょ、な……っ」 なんでキミがそんなに怒るんだよと、喉まででかかった言葉は出ぬまま、牢屋を追い出されてしまった。 この仕事をしていればマフィアに会わぬことなどできないというのに、無茶苦茶なことをいうと、ぶつぶつ何かを言っている。 あなたに大事にされていることくらい、周りから見ればすぐわかることだろうに、当の本人はそれに気づかない。 ただ、それでも。 たまにしでかす物事が、危なっかしいと心配をさせてしまっているのは確かな話。 これから行う仕事も、あなたには絶対にいえない話ではあったが、言えばきっと怒られてしまっていたのだろう。 事実、マフィアにただ会うよりも危険なことをして、 大きな負傷をもって病院に運ばれてしまったのだ。 あなたと次に会うのは病院か、それとも外になるか。 何にせよ怒られる案件をひとつ、増やしてしまったのは確かな話だった。 (-93) 2023/09/28(Thu) 14:33:05 |
【秘】 新芽 テオドロ → 路地の花 フィオレ「本当は次に備えて、 もう少し整理とか準備などしてようと思ってたんですが」 「あまりにも予定のブッキングが多かったですね」 以前来た時とまるで変わらない、 どことなく寂しいシンプルの過ぎる部屋を背に出迎える。 これ以上どこを整理できる場所があるというのだろうか。 「さ、適当に置いて行ってください。 俺が手伝えることは殆どないでしょうので、あんたの勝手に。 勿論狼藉を働いたら蹴り出しますが」 出迎えも漫ろに背を向けて歩いていく。 手袋の嵌められた腕先の動きは少々ぎこちなく、室内でつけているのはまあいいとして、この季節にしては暑苦しそうに見えただろうか。 (-94) 2023/09/28(Thu) 14:44:50 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレくそ女、とは言わなかった。 それなりの自制、それなりの理性、それなりの当然の善性は、男にもあった。 この時は、まだ。 焦りで鼓動が逸る。それで思考が鈍くなり、貴方の首を押し付けるようにする力ばかり強くなる。はっと下を見れば酷く歪んだ顔があって、男はそれにも動揺した。動揺した自分に、それを催させた貴方にまた苛立ちが募った。 舌打ちがひとつ飛ぶ。ままならない思考とこの行為に対して。伴って男は貴方の上から退き、同時にその半身を蹴り飛ばした。 八つ当たりだ。 貴方の身体が再び砂利を擦って転がるだろう。壁にでもぶち当たればどこかしらが切れるかもしれない。しかしむしろそれを利用して、距離をとって立ち上がろうとすることは不可能ではない。かもしれない。 (-95) 2023/09/28(Thu) 14:48:28 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ>>-92 「どっちも」 それは軽く言うことだろうか。 まぁ、本人がそれほど気にしてない様子に見えたので、それ以上は聞かないことにする。 ――きっと、言えない事情もあるのだろうし。 なんていう事を考えてるのだから、結局身内に甘い男なのだ。 「考えたくないな……実際キミ達が居なくて僕と先輩の仕事量すごかったんだ」 それこそ、あの自分磨きが好きなリヴィオが、鏡を見る時間もないほどだったのだから、どれほど仕事がためられていったかは想像に難くないだろう。 仕事に真面目な人間というわけではないが、それでもその時のことを思うと、まだ起きることも難しい身体が少し恨めしくなってしまった。 珍しい話である。 「え”……、や。冗談のつもりで言ったんだけど。 ここでそれを頼んだら前の二の舞い……じゃなくて、後で僕がものすごく叱られることになるんだ」 ないとは思うが、ついでにキミも怒られることになるかもしれない。 事件の日の朝を思い出して、重い息をついた。 (-96) 2023/09/28(Thu) 15:08:41 |
【独】 歌い続ける カンターミネ署内のどこかで『ケーサツ』の端末が震える。 取り出し見ればその場で仰け反るような文字が踊っていた。 「勘弁してよオッサン……なにしてんの……?」 思わず"素"が出た。こほん、と咳払いひとつ、 周囲に人影がないのを確認して高速で返事を飛ばす。 『他の連中には内密にして探し出せ』 《えっ?連携を取った方がいいのでは》 『殺すならそうだが、俺はまだ用があるんだよ。 指揮権も貰ってるし、港から最新の空撮ドローンを かっぱらってこい。熱源探知機能付いてる奴な。 それからチームルームに下水道の地図があったろ。 あの辺揃えてB4倉庫で開始しろ。 俺以外の誰にも知らせんなよ』 《しかし……》 『あ〜なんかうろ覚えだけど、確か港には 新型のグラボがどっかに運び込まれてた気がするなあ。 それはさておき、いい働きを見せた奴の手元には 幸運が転がり込むらしいって昔から言うんだよな〜』 《イエスマム》 『よろしい。他の連中に先を越されるな。 俺の直属情報チームの実力、見せてみろ』 そして端末を閉じる。 「始めよう」 警帽を深く被り直すと、『ケーサツ』は歩き始めた。早足に。 (-97) 2023/09/28(Thu) 17:14:53 |
【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡「マフィアが必要悪なわけがあるか」 「お前たちが必要悪なわけがあるか」 へらへらと笑う表情が嫌いだ。 楽しげに全て奪ったお前たちが嫌いだ。 それは骨の髄に染み付いた偏見からくる嫌悪だ。 「────アルバを亡くしたのはお前たちだろうが!」 笑う度にかかる息が、挟んだ指の間で震える濡れた肉が、自分と同じ温度が、不快だ。 見縊って笑う横面に拳を叩き込みにかかる。憤怒の衝動にかまけた渾身の一撃。成功すれば貴方は音を立てて転がってくれるか。その体躯に対しこの力ではまだ足りないか。少なくとも舌を噛むくらいはするだろう。 「黄昏抗争で何人が死んだ」 「アルバからの提案がなければ更に何人殺した?」 「お前たちの切った舵で警察との関係は悪化した」 「そうじゃなきゃこんな法案が施行される必要もなかっただろうなあ!」 椅子を立ち上がって回り込むのすら面倒で押し除ける。ぎぎぃ、摩擦で軋むような音が鳴った。 ────イレネオ・デ・マリアは、 ノッテファミリー が嫌いだ。 (-98) 2023/09/28(Thu) 17:19:17 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオがじゃあん、と派手な音をたてて椅子ごと床に転がり、倒れる。 ぺ、と吐き出した唾には赤いものが混じっていて、舌か何かを切ったようだ──だが。 「……げほ。……はぁ?」 そんな痛みや衝撃よりも、きょとん、とした顔。 「アルバってお前…ジジイの代の話だろ。 確かアルバの残党はノッテが吸収したらしいが、 知らんよそんなの」 「つうか、あれなの? アルバならよかったなんて、完全に『マフィアでもやってることによっちゃ必要悪』って話だろ。 それは」 「……当時のアルバとノッテのやってることの違い、分かってる? 時代背景との相関性とか〜……」 うーん、と考えるように転んだままで目をさ迷わせて。 「いや、そういうこっちゃないか。 黄昏抗争なんて今時、学校で習うのか? それともネット・サーフィンしてて見つけたのか。 お前あれだな。そんなに叩いていいモノが欲しかったんだなあ。そんなに殴っていいものが欲しかったのか。 それは昔から? ママにしつけられたからか? 学生時代は殴るモノがなくてベッドの中でシコるくらいしか暴力衝動を発散できなかったのか? じゃ〜〜お前、俺に感謝すべきじゃねえのか。 法案通してやった んだから」わはは、と。血が混じった声で、笑った。 (-99) 2023/09/28(Thu) 17:51:51 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ>>52 ルチアーノ なぜ貴方が謝るのか分からなかった。 以前のようにその理由を問い質す余裕はなかったけれど。 それでも語り掛けてくれる言葉を拾い上げていれば頭の芯が徐々に冷えていく。 誰に、何を。 言葉にせず胸で繰り返した直後、最後の一言にははっと目を瞠り。 「…………ううん」 幾らか落ち着きを取り戻した表情で、首を横に振った。 目を塞がないと決めた、己を責めて泣くこともまた。 此処はもう何もできない牢の内ではないだろう。 ……誰に、何を。 もう一度、繰り返したところで解は不明瞭だ。 だが、そうなってしまう理由だけは明らかだったから。 [1/2] #BlackAndWhiteMovie (53) 2023/09/28(Thu) 18:09:30 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ>>52 ルチアーノ 「ごめんなさい、情けないところ見せて……」 「……あはは、ルチアーノさんさ。 面倒見いいね、ほんとに。 あの、手助け……というか、また、甘えていい?」 「いま、ひとつだけ」 少し遠くで見慣れたひとが自分を探す姿が見えた。 家からの迎えで、ならどうしても帰らなくてはいけなかった。 その先でないと、どれほど貴方の手を借りたところで解は得られないと分かっている。 だから今は、ただ貴方を見上げて乞う。 強く在りたいと願う。 されど気を抜けば目を塞いでしまいそうになる。 その弱さを見抜いてくれた、貴方にだからこそ。 「───"大丈夫だ"、って言って」 「……今のオレ、全然そんな風に見えなくても。 それだけ、……言ってほしいんだ」 「おまじない、欲しくて」 「……だめかなあ」 [2/2] #BlackAndWhiteMovie (54) 2023/09/28(Thu) 18:11:27 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ果てなどないと思えるほど長い長い尋問の時間が、終わり。 ようやく牢獄に戻された女は、著しく消耗していた。 殴打の痕目立つ腫れた頬。 きっと衣服の下、見えない部分にもいくらもの痕がある。 外れた肩も治療こそされたもののまだ鈍く痛んだ。 ただ横たわることすら苦痛の中、女の頭の中はひとつのことでいっぱいだ。 それでも、考えないようにしているつもりだったのに。 大切な、ふたりの約束の証。 「……ぅ…」 熱くなった目頭から零れるものを堪えようとしたがそう上手くはいかなかった。 ひとつふたつと目尻から流れ落ちて髪を濡らす。 だけど我が身可愛さにただ黙っていることだけはできなかった。 こんな腐った法案なんかさっさと壊れてしまえ。 …あの様子では、その一助にすらなれたかすら怪しいものだ。 しかしその尋問のさなかだったこともあり、法案の出資者とされる人物の正体を今の女が知らないことは、不幸中の幸いといえた。 もうひとつ幸いがあるとするなら、 1番守りたい情報たちだけは守り抜くことができたことだ。 あとは多少騒々しさのある署内の様子に、 『祭り』の成功を感じとることができたなら、それも。 それにしたってやっぱり気分は最悪で、 その中でも見つけられる小さな安心に縋っているだけだ。こんなのは。 (-100) 2023/09/28(Thu) 18:20:54 |
【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-96 「今はさらに周りに任せてしまいなさい。 俺たちはこれでも功労者として扱われているんです」 自分たちの踏み出した一歩は、 周りに確かに影響を及ぼしたものだから。 これ以上更に無理をする必要はないし、何かあったら本当に丸投げしてしまうつもりでいる。この身体の状態でどうしろと。 「俺以外にもものすごく叱る相手がいたんですね、あんたは」 いるだろうなあ。納得感は勿論ある。 罪作りな男だろうなと客観視していたから。 流石に叱責を丸投げしては名が廃るというものだが。 「じゃあ今回はその人に免じて、 寝しなにくどくど言うのは別の機会にしましょう。 あんたが叱られることに関して言えば、俺が止める理由も別にないんですからね」 悪戯な笑みで言ってのけた。 (-101) 2023/09/28(Thu) 18:47:24 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-100 ごつ、ごつ、ごつ。巡回の重いブーツの音がする。 それを履いた茶髪の ウィッグを被った 『ケーサツ』は、あなたの牢の前で止まった。本当なら、もう少し気の利いた声でもかけるつもりだった。 或いはおふざけの気配を纏わせて元気づけるつもりだった。 そこにある光景は、それらを忘れさせるのに充分過ぎた。 今この場にあのイレネオが居たら。もし、牢の中に彼が立っていたなら、間違いなくカンターミネは彼がやったと決めつけて、全力を賭して殺しただろう。 それくらい、その尋問の跡は慣れ親しんだ者にとってはまだ、『甘かった』。だからといって状態に安心する光景ではまったくないが。 鍵束を出す音が聞こえる。内1本が扉に挿される音が聞こえる。 少し古い牢の扉が軋みながら開いて、ごつ、ごつ、ごつ。 近付くにつれて、喉が詰まる。声の代わりにポケットから紙を取り出し広げて見せた。それは犯罪者の移送依頼書だ。 当然、偽造された。 「……、」 用意した言葉が出てこない。覚悟はしていたはずだが、 それでも足りていなかったらしい。 少しの間の無言の後で、やっと声を出した。 「…… ん゛んッ 、ダニエラ・エーコ。お前の隠し持つ情報に関して、より上位の機関による精査を行うべきだとの進言があった。よって、三日月島刑務所までの移送を行う。……。移送車までの私語は厳禁だ。また、……」 少し気取ったような声。それも途切れ途切れに。そして、 「あー、やめた。迎えに来たぜ、お姫様。」 いつもの声でそう告げた。 (-102) 2023/09/28(Thu) 19:01:57 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ>>-101 よくよく男の身体をあなたが見たならば、患者用の服の胸元から少し薄くなった噛み跡などが見えるだろう。 本人としてはタートルネックで隠したいのだが、入院してると流石にそれは許されなかったようだ。 「うん、まぁ……色々あって、心配かけてしまったのは確かだから」 とはいえ、何故そこまで叱責を受けなければならなかったのかはついぞわからず。 次に会うときは、今度はこの怪我のことを叱られるのだろうなと思うと苦笑いの表情を浮かべる。 ここに入院していることは警察の人間くらいしか知らないだろうから、会うのは退院してからになるかもしれないが。 ……まぁおそらく、あなたの予想のその罪づくりな男で間違いないはずだ。 「あぁそうだね……二人がかりで叱られると流石の僕も立ち直れなくなりそうだ。 というか。キミのその色気のある声で、寝ながらくどくど言われたら寝れる状態であっても寝れない気がするよ」 皮肉には皮肉で返して口端を上げる。 気のおけない同期とのこの関係は、きっとこれから先もずっと変わることはないのだろう。 (-103) 2023/09/28(Thu) 19:11:56 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-102 頬つけた床を通して、足音が聞こえる。 その足音が牢の前で止まった時、女はその視線だけをそちらへ向けた。 乱視の眼鏡は歪んでしまっては掛けるだけ無駄で。 ぼやけた視界で茶色の髪を一瞥すれば、 その視界でその瞳の色まで判別なんてできるはずもなく またぼんやりと視線を虚空に移していく。…もしかして、またあそこに戻されるのだろうか。 ほんの一瞬そう過ったのは否めない。それだけ好き勝手いったしな、という納得だってそこにはあった。 だから、少しの間無音が続いたのには些か不審を抱いた。 もう一度、視線を向ける。こちらの方から声をかけてやろうかとすら思った頃だ。 視線だけでなく、顔ごとそちらへ向く。 言葉の中身自体は、本当に何一つ頭の中に入ってこなかった。 ただ聞き間違えるはずはないって。それだけ。 「……っ」 がばと起こそうとした身体は軋んであまりいうことを聞かなかった。 それでもその努力くらいはしようとして。 「…………ミネぇ…」 その言葉で決壊した。涙が流れたあとにじんと沁みる。 ――迎えに来てくれた。本当に。 だけど、それがどういう意味を含んでいるか過ぎらない女でもなかった。 ただ、今この瞬間はそれより安堵の方がずっとずっと上回っただけで。 (-104) 2023/09/28(Thu) 20:02:17 |
【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ普段なら、男はただその夢を眺めているだけで。 繰り返し唱えられる呪詛を身に受け、縛られていく。 もう何年も、逃れることの出来ない悪夢だった。 今度はもう、戻れないのかもしれない。 このまま暗く深いどこかへ、 落ちていくんだと思った──その時。 静かに眠る、無防備な猫の姿が見えた。 別に、猫が好きな訳じゃない。…………けど。 何となく、ただ、何となく、己の指先を 恐る恐る 伸ばす。触れたその熱は、暖かくてとても──安心したんだ。 ▽ (-105) 2023/09/28(Thu) 20:13:13 |
【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ重い瞼を何度か緩慢な動作で繰り返し瞬かせ、 霞む視界の中徐々にピントを合わせていけば、 眠たげな、大きな猫の姿が視界いっぱいに映される。 何を言おうか。男の口が幾度か動かされて。 「…………ル、チ……ルチ、アーノ…………………? …目を覚まして直ぐに、色男の顔が……見れる、なんて。 俺は……、しあわせものってやつ……、かな」 名前を呼び、"いつものような"軽口を紡ぐ。 しかし、ただそれだけという訳ではなくて、 己に触れる熱を求めるように、 痛みを感じながらも 指先を動かし軽く、その手を掴んだ。「……あー………すまない…、迷惑、かけたね。 子守唄は、そうだな……もう一度眠って、いいのなら」 君の子守唄を聞けばよく眠れるかな? 浮かぶ台詞の代わり、小さな笑い声を零して、 幼子のようにへにゃりと笑った。 それは今まで生きてきて、誰にも見せなかった弱さだ。 見せたくなかった弱さだ。……けど。 異様に熱い体が、響くような頭の痛みが、 折れた左腕が、血のにじむ右手が──全てが限界で、 誰かに手を伸ばすことに臆病な男が、 弱さを見せるきっかけとなってしまった。 (-106) 2023/09/28(Thu) 20:14:41 |
【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡「そうだよ」 「ジジイの代の話だ」「俺の爺さんはアルバのソルジャーだった」 「アルバこそ必要悪だった」 「ノッテがバランスを崩した!」 不自然なまでの怒りで声は震えていた。嘲りに、侮りに、謗りに返す言葉は既になく、ただ貴方を黙らせようとするだけ。どうにかして抑えつけようとして、それが出来ずに手段だった暴力が目的化していく。起き上がらないのをいいことに胸元を蹴りつける。反撃がなされないのをいいことに腹を踏み付ける。足りない。 足りない。 秘密というほど隠す意思があるわけではない。 正体というほど裏表があるわけではない。 それでも、男の中にそう呼べるものがあるなら、そこだった。 50年の昔、この国に存在したもうひとつのマフィア。 アルバファミリーの忠犬。 その末裔。足りない、と踏み込んだ足とともに言葉は吐き出されたのかもしれない。それなら一層、その声は大きく届いたはずだ。 肩で息をした男はそれを聞いて一際大きく吸い込み、唸るような問いを呼気に乗せる。 「法案だと?」 「裏切ったのか? お前」「ノッテを?」 「マフィアを名乗っておいて?」 「風上にも置けない……」 (-107) 2023/09/28(Thu) 20:18:20 |
【人】 路地の花 フィオレ>>51 ロメオ 「泣かない、泣くわけないわ」 「……ありがとう、ロメオ」 一人だったら、きっとどうにもできなかった。 感情のやり場も、それを発散することも。 大丈夫、これは前を向くための儀式だ。 共犯者と言ってもいい関係のあなたと、背負ったものを分け合うような気持ちで。 これからも、私は間違っていなかったんだと思えるように。 「あなたがいてくれて、よかった」 胸を借りて、優しい声でそうつぶやくのだ。 #BlackAndWhiteMovie (55) 2023/09/28(Thu) 20:24:32 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-57 「あら、あらあら……」 ヒロインかはともかく、の先に、 何か紡がれる言葉があったのだろうと鈍い女でもその意味にはさすがに気付いたようで。 自らの頬に手を添えながら、「エルヴィーノの事を大切に思ってくれる人がいるのね」と微笑む。 「今度よかったら紹介してね」 何て、嬉しそうに笑みを深めて笑う。 のだが、貴方の大切な人はこちらの大切な人の拷問相手と言う有様である。 その事実を知った後に出会うと互いにどうなるか、今は不明なのが恐ろしい。 「あ、あの日は、自分のタイミングの悪さに普段よりも 落ち込んでいたのもあったりしたからで…… ……変わった、かなぁ。自分ではいまいちよく わからないのだけれど、支えたい人ができたから、かも」 少し照れ臭そうに前髪を指先で弄って、くるり。 「あんなに凄い事をやってのけたのに、朝ごはんの話に なると途端に自信なさげになるんだから。 ん。病院の人の指示をよく聞いて無理なく鍛えてね」 (-108) 2023/09/28(Thu) 20:39:08 |
【人】 corposant ロメオ>>55 フィオレ 「そ? ならいいや。 美人が泣くのは絵になるが心が痛む……」 またぽろぽろ泣き始めてしまうのかと思いきや、 どうやらそうではないらしかった。 ちゃんとマフィアらしいトコあるな、と再認識をする。 内心ほっとしたと同時に、── 全てに報いあれ と願った。この因果の先がどうなっていくのか、きっと自分の目にはすべて映るわけじゃあ無いんだろうけれど。 「いくらでもいるさ。なんでもするって言ったろ」 そういう約束なのだし、そういう役目だ。 頭に軽いキスを落として、また背中を擦る。 「落ち着いたら帰るか? 今他の皆はどうなってんだろ」 #BlackAndWhiteMovie (56) 2023/09/28(Thu) 20:44:47 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-104 「おぁぇ」 そんな間抜けな声が出たのは『努力』を見たからで。 変装の意味がなくなる、慌てて抱きとめるような格好に。 流れる涙にこれまた慌てて、偽造書類を取り落とし、 茶髪のウィッグを揺らしながら辺りを窺う。 「あ、え、エリー、ごめんて、遅れたのは謝るって。巡回ルートの把握と監視カメラの細工に手間取ったの。でもほら、来たから。ちゃんと来たろ?な?後もう車で外出るだけでこの場はクリアだから、な?安心してくれって。あ、あれか!?い、痛かったか!?」 慌てたおかげで勘違いも甚だしく、息つく間もなく 口を動かしながらわたわたと身振り手振り。 それでもなんとか痛くないだろう場所を探し触れ、寄って。 「……え、えっとな、後はもう、偽造書類とかあるし、 このまま護送車で脱出するだけだから。 運転手も用意してあるから、手当はそこで――」 ふと、目についた。約束の証がない指。 触れれば当然痛いだろうから、そこには触れないように。 そっと手を取って、ほんの僅か唇を落とす。 「――今はこれで我慢して。生えたらまた、塗らせてよ」 そうして、瞳を目前に。指先で慎重に涙を拭う。 これ以上余計に傷つけないように。 酷な事に、まだやる事は残っている。 まだ止まれない。まだ終わってない。まだ、まだだ。 でも、この一瞬だけでも、安堵を抱かせてやってほしい。 それが、多分俺が任された事だ。あの男から。 (-109) 2023/09/28(Thu) 20:45:29 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ「何、準備って私のために?」 「これ以上整理なんてしたら、この部屋から物なくなっちゃうわよ」 軽口を叩きつつ。 よいしょ、とまた大荷物をテーブルの上に置いて。 今すぐ食べないであろうデザートは、いくつか冷蔵庫に入れさせてもらって。 空きを聞いてなかったから、入ってよかったと思う。 「まあ警察もあんなことがあった後じゃあね」 「今時間取れてるのが奇跡なくらいじゃない。まだ全然落ち着いてないんでしょ?」 怪我人に手伝わせるわけにはいかないと、最初から自分で準備するつもり満々だったようだ。 テーブルの上に酒と食べ物を並べていく。今日は出来立てのものが多く、料理はまだ温かい。 たまにちらりとあなたの様子を見ては、手、相当ひどいのかななんて気にしたりして。 「狼藉なんて働いたことないでしょ、失礼ね」 「それより、手袋。暑くないの?外せとは言わないけど」 まだ見せたくないんでしょ、と。 物を並べながら、何でもない風に。 それでも顔を見たのなら、ちょっとだけ拗ねてるようにも見えるだろう。 (-110) 2023/09/28(Thu) 20:47:55 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ貴方が距離を取ったのが見える。 頭突きのせいで此方まで脳が揺れたが、誤差だ。 「っつぅ…浅かったか。」 息を切らしながら身を起こして 袖で唇を拭う。 「薬で動けないからって好き勝手にしやがって…… これは立派な犯罪だぞ。分かってんのか? 躍起になって検挙しようとしているマフィアと変わらねえ。 いい加減に無意味だって気付けよ。」 如何に薬そのものがシンプルで副作用がないものだとしても 個人の体に掛かる負担は別問題だ。 少しは落ち着いたが、くらくらするのは変わりない。 しかしこれ以上手を出せば、 今度は抵抗するという意思を見せるだろう。 (-111) 2023/09/28(Thu) 20:49:50 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ別に、名を出したのは揺れることに期待した訳じゃあない。 ただ少し、思うことがあったからこそ告げただけ。 その意図が伝わらないなら結局、そこまでなんだ。 だから、 止まらないというのはまぁ──やはり予想通りの事だった。 刃の冷たさを内に感じた時、 僅かにも跳ねるように震えたのは嘘じゃない。 それもきっと、抵抗への油断を誘うもので。 ▽ (-112) 2023/09/28(Thu) 20:55:47 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ人間の歯というのはそれなりに武器になるらしい。 加減もなく噛み付けば、歯が骨にぶつかる音が脳に響く。 しかし、それもほんの一瞬のこと──にするはずだった。 何も噛み切ろうという訳ではないのだ、この男は。 ただ、今の行為を止められるならそれで、良かった。 次の思考をするよりも早く、脳がぐらりと揺らされる。 男の歯は小さな呻きとともに君の腕から離れ、 今度は抵抗もなく、抵抗する間もなく君ごと床に倒れ込む。 男は、脳が揺れた事は勿論、 倒れた衝撃で右手に走る痛みにまた僅かに呻きを零す。 それは明確な隙だ、 腕を固めることなど容易すぎる隙だった。 痛みには、慣れている。 我慢することなら、いくらだって出来る。 だとして、それが痛くはないという話にはならない。 苦痛に顔を歪める代わりに男が零したのは──。 「………………………ははッ」 (-113) 2023/09/28(Thu) 20:56:49 |
リヴィオは、笑っている。 (a14) 2023/09/28(Thu) 20:57:19 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 口に金貨を ルチアーノゆる、と貴方の方を見た男は 笑みを浮かべて、無事な方の手を挙げて見せた。 「Ciao,ルチアーノ。 このくらい、なんて事ねえよ。 そっちも随分苦労したんじゃないか?」 なんて、軽口を叩く余裕はまだある。 ただ、気怠いし、動けないのは事実。 「ああ、貸してくれ。 どうやって此処から出るか、考えてたところだったんだ。 お前が来るとは、思ってなかったけどな。」 アリーチェやテオドロでなくて良かった、などと。 零しながらも貴方の問いに答えただろう。 (-114) 2023/09/28(Thu) 20:58:01 |
【独】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ「マ〜〜〜ジで ろくでもない事 しやがった、あのクソ親父」アジトに『カチコミ』が掛けられた後。 仕事用の端末に矢継ぎ早に入る連絡を見て、 猫被りは盛大な溜息を吐いていた。 「はいはいはいはい箝口令箝口令、 戻ったらまず立て直しからだとは思ってたが 仕事増えたじゃねえか覚えてろよマジで……」 ぶつくさと言いながら各所へ根回しをしていく。 余計な混乱を広げるなと箝口令を敷く。 この『ろくでもない事』がこれだけで終わるはずもない。 何せ報復を与えられるべき下手人は、 今はすっかりと行方を眩ませてしまったのだから。 (-115) 2023/09/28(Thu) 21:07:50 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ>>-108 「…………何も言ってないのに」 言ってはないが言いかけたことが完全に失言だった。 苦虫を噛み潰した幼な顔をして息をつく。 余計なことは言うまいと心に決めて話を聞いてると、支えたい人という単語に、「へぇ」と目を見張った。 「なるほど、前よりずっと綺麗になったわけだ。 僕らの助けはもう必要なくなるのかな? それはそれで寂しい気もするね」 恋する女は強いものだ。 多分、男よりもずっと強くて、勝算は万に一つもありえない。 これは好かれた男は大変だなと、目を細め。 「まだ重湯くらいしか食べてないけどそれでもキツくてね……」 などと言いながら困った顔をしながらも、心の中ではあなたの幸を祈っていた。 (-116) 2023/09/28(Thu) 21:28:40 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ首がギリギリと、強く強く締め上げられる。 息が出来ない。視界が歪んで、腕を剥がそうと掴む手から力が抜けそうになるのを何とか気力で堪える。 舌打ち一つ、耳に入ったかと思えば。 空気が入り込んでくる。気道が塞がれ続けていたせいで、異物が入ってくるような感覚に咳き込んで。 ガッ!! それも長くは、許されない。 蹴り飛ばされた体は、砂利の散らばる石畳を勢いづけて転がっていく。 尖った石が肌を傷つけ、白い肌に小さな赤い花を咲かせる。 壁に背中をぶつけ、今度は身体を丸め大きく咳き込んだ。 痛みと、苦しみとで表情は歪んだまま。 あなたの方に、顔を向ける。 「っ、けほ……は、……」 苛立ちを見せるあなたに、女が笑みを浮かべてみせたようにみえたかもしれない。 (-117) 2023/09/28(Thu) 21:50:08 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ何があっても入院はしたくない。 医者に怒鳴られながらもこの男ははっきりとそう告げた。 友人がもし付き添っていたならば、恐らく、 誰にとっても予想のしやすい表情を浮かべていたはずだ。 それから数日後、あるいは数十日後。 風の噂で君の入院を知った男は、その病室を訪れた。 ガッ。………ガラガラッ! 「……やぁ、 ニコロ 。随分と素敵な装いになっているね。君ってやつはあんな場所でも大暴れしていたのかな?」 片腕を吊り片手を包帯で巻かれている男は、 ついでに耳にもガーゼが当てられている。 自分のことは棚に上げ、若干おかしなボリュームで君を煽る。 そんな男の後ろでは、 勢いよく開けられた扉が緩やかに閉まっていくのだが…。 その扉が完全に閉まるよりも前に足を挟んで。 「……さて、満足した。帰ろうかな」 帰ろうとしている。 何をしに来たんだという話だが、 ただ大変そうな君を煽りに来ただけらしい。 これは嘘。…その様子を見に来た、というのが真実だ。 (-118) 2023/09/28(Thu) 21:51:33 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ日常と言うにはまだ遠いが、それでも多少の落ち着きを取り戻してきた頃。 その日はなんてないただの雨予報の日だった。 灰色の空は水気を含んだ空気を纏って重く沈んだ色をしている。 こつん、わざとらしく靴先で石を蹴った音。 忘れるわけもない。気付いてしまった自分に嫌気がさした。 「Bonsoir.愛しの猫ちゃん。今日も可愛らしいね」 その声の正体が確信へと変わった瞬間、彼の体はただただ固まって、その顔を見る事しかできなくなっていた。 「なんだ、ご機嫌斜めだね。 色男になったのでも言われたかったかい?」 散歩でもするように歩いてきた者の名はファヴィオ・ビアンコ。 十年前にルチアーノの上司となり、五年前に行方不明になった男であった。 #ReFantasma (57) 2023/09/28(Thu) 21:55:13 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ「見違えたね、随分大きくなって」 「……だんまりか、本当に拗ねているのかい。 甘えたがりのルーカスは何処に行ってしまったのかな」 「うるさい」 聞きたくない、嫌でもあの日を思い出させるから。 目の前の男に触れられ、愛されて満たされていた日々が蘇ってくる。 失いたくなど無かった、ずっと居なくなって欲しくなかったものだ。 「どうして今更此処にいるんだ」 焦がれて、愛して、忘れられるはずなんてなかった存在が目の前にいる。 男から彼に施していたのは五年間の"教育"だ。 彼が決して逆らわないように、男の前では従順で素直で、常に周りを疑い警戒をし、それこそ男が居なくなれば何もできなくなるような人間になるように。 彼に自覚させることもなく、それが正しいことなのだと教え込ませ続けていた。 それは確かにうまくいっていて、今でさえその事実を彼は自覚することはない。 しかしそれは――未完成に終わっている。 #ReFantasma (58) 2023/09/28(Thu) 21:58:17 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ「仕事だよ、言わなかったかな? 『行ってきます』って。期間を言い忘れていたかもね」 「なんだ寂しかったのか、それなら君が怒るのも仕方ない。 私が居なくなってから昇進もしたようだし、 それはうんと働いて一生懸命に頑張ってきたんだろう」 五年前ファヴィオはオルランドに海外のマフィアへ諜報員として潜入する命を受けた。 極秘任務の為に完全に身分を隠さねばならず、同意の下行方不明扱いにされることになる。 そうして雨が降りしきるその日、何も言わずに男は彼の前から姿を消したのだ。 「それでも、漸くひと段落付いた。 時間はかかったけどボスにも許可は貰っていてね。 やっと君を連れて行けるようになったんだ」 ああ本当に自分勝手だな、年寄り共は。 俺のことを一体何だと思っているんだ。 初めからそうだった。 死体の前に血塗れで座る子供の俺を連れて行った今のボスも。 そんなガキを兄弟みたいに連れまわして面倒を見た黒眼鏡も。 十年前がらりと変わったファミリーで孤独を埋めてきた男も。 本当に、俺を何だと思って。 #ReFantasma (59) 2023/09/28(Thu) 21:59:29 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ「おいで。また昔みたいにしてあげよう」 男は動きがない彼の目の前まで歩んでいけば、流れるような仕草で頭の上に手を置いて髪を梳く。 腰を抱き寄せつつ首元に見えた赤い痕におや、と呟けばくすくすと楽し気に笑って愛で続けた。 「何も考えなくてよくなるよ。沢山頑張って疲れただろう?」 「ファヴィオ、」 反射で男の名前を呼んでしまえばもう止まらない。 「俺は……」 揺れた声は艶を帯びていて、緩やかにそのシャツに手が伸びて。 縋るように服に皴を作れば、甘く誘うように口端が上げられる。 やっと、見つけた。 #ReFantasma (60) 2023/09/28(Thu) 22:00:59 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ (_3) 2023/09/28(Thu) 22:03:23 |
【独】 口に金貨を ルチアーノ分厚いランダムに組まれた繊維が男を貫こうとする弾の威力を分散させた。 鈍い音がする。あばら骨の一本二本は折れただろうか。 「おお痛い痛い、飼い猫に手を引っ掻かれた気分だ。 やれ、随分とやんちゃになって…昔とまた違う魅力を感じてしまうなぁ。 ふふ、これ以上君のことを好きにさせて、一体どうしてくれるんだい? なんてね。私も命は惜しい、と言うより死んではいけない」 「舌噛んで死ぬぞお。もう一発受けるか」 「世界の宝を壊す権利を愛しの君に渡したいのは山々だが、 愛より優先しなければならない使命が私にはあってね」 「いやぁ、すまないな、私が色男なばっかりに 君を首ったけにさせてしまって」 「どっちが。あんたが俺を欲しがってるんだろう。 甘えんな、俺に甘えていいのは犬と猫だけだ」 ルチアーノ・ガッティ・マンチーニは謔笑を送り。 ファヴィオ・ビアンコは巧みに咲い返した。 「私が必要なくなったら、いつでも捨ててしまいなさい。 とは言えいつかに私が愛を最も優先してよくなった時、 君がどこぞに落ちていたなら拾ってやるさ。 安心して捨ててくれていい」 「そんなところかな。それではね、A bientôt〜!」 #ReFantasma (-119) 2023/09/28(Thu) 22:04:06 |
【独】 口に金貨を ルチアーノ立ち去る男の背を彼はもう追うことはしなかった。 「……」 「結局、置いていくんだよなあんたも」 俺のことを信じているくせに。 俺が信じているのを知っているくせに。 「……動けんー……」 しゃがみ込んで、新しい酸素を吸う。 誰かが銃声に気づいて来てしまうだろうか。 それでも暫くは足は動いてくれないから。 『すまんな、こんな時間に。 今から言う住所のところに車乗ってきてくれえ。 今日は部下連れてこれなかったんだ』 いつも通りの声で、何を返す間もなく。 最後に場所を告げれば、ぷつり、電話を切った。 #ReFantasma (-120) 2023/09/28(Thu) 22:06:35 |
【独】 Commedia ダヴィード隠れ家に着いてから少々乱暴に消毒を受け、熱を持った痣には湿布を当てられ。 男はカウチに体を投げ出してうとうとと眠っていた。 丸一日追われていた精神的疲労と、単純な肉体的疲労によるものだ。 「通知うるさッ ……切ろっかな」 本来は許されないであろう行為だが、今日は『お祭り』なのだ。 横になったまま端末を操作し、もう一度惰眠を貪る前にざっと目を通して。 ――脳が動作を停止した。 アレッサンドロによるアジトの襲撃。負傷者。爆発。失踪。 ばん! と大きな音を立てて、端末を壁に放り投げる。俺は今、何か、とても怖いものを見なかったか? 無意識に抑えた口が、体が、震えていた。 喉から音が出てこない。寝ている間にぐしゃぐしゃになったブランケットを痛いほどに握りしめて、被って、目を瞑って―― 男はもう一度、夢のない眠りへと落ちていった。 (-121) 2023/09/28(Thu) 22:13:34 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ「犯罪者がまともぶるなよ。」 たたん。靴底の音。 「躍起にならざるを得ないだろう。何度同じ説明をさせる。」 たたん。苛立ちの音。 「強引にでもしなければ後手に回る。」 「お前たちは嘘と隠し事だけは上手いからな。」 たたん。たん。 鳴らしながら貴方の様子を伺う。ふらついている。警戒している。 けれど難しい相手ではないな、と思った。それは半分事実であって、半分は状況も含めての侮りだ。 息を吐く。溜息のようだったろう。貴方への哀れみだ。 「自白剤がなかったのは不運でしたね。」 「続けます。座ってください。」 取った距離を一歩で詰めて、足首目掛けて蹴りが飛ぶ。 (-122) 2023/09/28(Thu) 22:13:47 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「んっ!?リヴィ、来てくれたのk…いやいやいや。 お前も大概えらい事になってねえか!?!? 」来てくれた貴方に目を瞬かせて。 嬉しそうにしたのだけれど、一瞬で心配する表情に変わる。 自分もそれなりの怪我だが、貴方も相当酷く見えたから。 「ちょ、待てって! 折角来たんだから話していったって良いだr… うおっ!? 貴方が足を挟んで、帰るか、なんていうものだから。 止めようと反射的に身を乗り出して ベッドから落ちそうになっているだろう。 ガタン!とベッドが揺れてけたたましい音が鳴る。 (-123) 2023/09/28(Thu) 22:20:27 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ入院して1周間くらい経った頃だろうか。 流石に寝るのにも飽きた男は、こっそり点滴を抜いて外に出た。 片腕が全く動かない上、肩から胴までギブスでガチガチに固められた状態では、着替えるのがほぼほぼ不可能なため、入院着にカーディガンを羽織っただけだ。 担当のナースに見つかれば間違いなく、青い顔をされた上で怒られるに違いない。 夢の中で名前を呼ばれた気がずっとしていたし、 悪夢を見続けるのにも飽きてしまって、外の空気に触れたいと……そう、思ったから。 病院の庭を散歩するくらいは許されたい。 「いたた……でも流石に早かったかな……」 点滴には痛み止めも含まれてるのだから、抜けば痛みが戻ってくるのは当然の話しだろう。 (-124) 2023/09/28(Thu) 22:38:37 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「犯罪者はお前だろ、イレネオ。 一体何人をそうやって問い詰めて来た。」 靴底の鳴る音が聞こえる。 「お前らが正しく尋問していれば 何度も説明する事なんてないんだよ。一度で済むかもな。」 ああ、苛立っている。 「一理はあるが、正論とはとても言えねえよ。 自白剤や拷問で引き出した言葉なんて、それこそ嘘だ。」 違うか?と笑う。 此方も、貴方の様子を伺っていた。 警察に属する以上、最低限の体術は身に着けている。 主に護身用ではあるけれど。 足首を狙った蹴りは 数歩後ろへ下がる事で位置をずらして避けるだろう。 これ以上貴方が手を出すならば、反撃の構えをしながら。 「拷問に付き合う趣味はねえよ。 話す事もねえけどな。」 (-125) 2023/09/28(Thu) 22:38:42 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「え、へへ……実はまだ腕とかはちょっと痣が残ってるけど、 でも訓練の時とさほど変わりないくらいの痛さなんだ。 痛くないとは言わないけど、大丈夫!って言える程度の 怪我なのは本当だよ。ほら、元気元気」 温かい。昔から変わらないはずのお兄ちゃんの姿に、 何故か頬が熱くなるのを抑えきれずに、 元気をアピールしたもののすぐに気まずげに俯いてしまう。 「守ってくれたおかげだよ」と、よろけた貴方を支えようとした手を下ろしながら、労わるように貴方の傷付いた片腕の怪我のない部分をそっと撫でた。 「わたし、牢にいるだけでもあんなに億劫だったのに、 あんな環境で拷問まで受けて、ずっと耐えてくれて、 だから逮捕理由も、貴方の関係で逮捕されたわけじゃないの。 ちゃんと守り切ってくれてた。……わたしのお兄……」 お兄ちゃん。今まで自然に呼べていたその呼び名。 なのに喉の奥に引っかかって取れないように詰まるから、 少し不自然な間の後、名前で呼び直した。 「……ヴィットーレは、やっぱり凄いよ!」▽ (-126) 2023/09/28(Thu) 22:40:23 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「わ、わかって……ううん、こればかりは、 入ってる人にしか本当の過酷さはわからないだろう、けど。 でもね、人が死ぬのは今の警察でもそう。 それに、マフィアじゃなくても貴方に助けられていなかったら、あの時酷い目にあっていたかもしれないし、 酷い仕事も、今回わたしは選ばれなかったけど…… A.C.Aに着任していたら、それこそヴィットーレ、 貴方に酷い事をする命令を受けてたのは、 ……わたし、だったかもしれないから」 強引すぎるとも言える逮捕を実行していた警察組織の名。今回の件で多くのマフィア、警察問わず多くの人間から恨みを買った事だろう。後の報復も視野に入れておかなければならないこの組織に、入らないで済むなんて保証はなかったはずだ。 「勿論大半の警察官は善良な人たちではあるでしょう。それでも警察は安全な組織である保証もなくて、それなら。 この人は大丈夫って心から思える人の傍に居たい。 同じ組織なら、貴方に銃口を向けろと命じられる事もないし、……マフィアじゃないとわからない悩みがあるなら、私、なって支えたいって、そう思ったの」 「……でも、本気でヴィットーレの負担になるのなら、マフィアには入らないわ。支えたいのと押し付けたいのは違うから」 (-127) 2023/09/28(Thu) 22:41:54 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-109 ひらり、ぱさりと冷たい床に白い紙。 身体は痛いし指先に力は入らないしで散々だ。散々だけれど、今は全く最悪なんかじゃなかった。 「…うー。だいじょ、…」 大丈夫じゃないけど。 「だいじょおぶう……」 今は、大丈夫。 落ちる涙の隙間からそれだけをいう。 空気が触れるだけで痛み続ける指先だったけれど、単純にもその唇が触れたあとには少し痛みが引いたような錯覚さえした。 「…ん ん 。」頷いた眼前。茶色の髪の下に咲くようなライムグリーンが映る。 約束のあかしがなくなっても、今はそれだけでよかった。 こうして本当に、傍にいてくれているんだから。 自分の手で拭えない涙をあなたが拭う。 そんな中、冷静になるのは状況の割に早かったように思う。 少しずつ、自分が本当に 警察のお姉さん でなくなったのだという自覚も湧き始めていた。「…ええ、と、」 追いついてくる。現実に。 まだまだ、それくらいじゃ追いつけていないことなど今の女が知る由もない。 「…護送、ですかあ。」 「わかりましたあ、よろしくお願いしますう」 そう笑う。本当の笑顔に、作り物の笑顔をかぶせて。 (-128) 2023/09/28(Thu) 22:44:26 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ何度も殴りつけられながら、哄笑がやむことはない。 いや、殴りつけられれば途切れ咳き込むが、 それが収まるたびにまた吹き上がる。 押さえても抑えても溢れる泉のように、 沸騰し沸き立つ泡のように、 ぼこぼこと音を立てて。 「やっぱお前、マフィア向きだな」 「うまくやってけるぜ、なあ」 ──にぃ、と笑い。 「ただ、お前の爺さんはダメだな」 「あの抗争で死んでねぇし、 ノッテに迎えいれられてもねえんだろ?」 そりゃあどういうことだ、と。 「じゃあ、そのジジイは 最後まで戦わなかった んだな。そしてその後戦うこともせず、 ノッテの陰口を孫に吹き込み、家族と自慰するしかなかった、 お前のジジイは情けねえ落ちこぼれだな!! お前が見返してやれよ、なあ!」 (-129) 2023/09/28(Thu) 22:48:52 |
【秘】 favorire アリーチェ → 口に金貨を ルチアーノ「え」 ぱちぱち、大袈裟に瞬きをして、 「貴方が噂のルーカスさん!……あ。 ……って、友人が言ってて……し、失礼しました……ルチアーノさん……」 初対面の人にいきなりあだ名呼びとは、 うっかりとは言えあまりの失礼さに目を思い切り逸らし。 「ニコとテオの妹分?……ふふ、そうなるのかな。 私としては幼馴染は幼馴染ってジャンルなんですけど…… ニコに言われたの。情報で困った時はルチアーノって 男を頼れって。だから余程凄腕の諜報員なのねって。 ずっとお会いしたかったけれど、私もこんな所で 会う事になる事になるとは思わなかったわ」 この女は幼馴染二人に絶対の信頼を置いている。 それだけにそこの共通の友人なら、警戒をすることもないだろうとむしろ憧憬の眼差しで見つめている。 はずなのだが、その上でなお、一瞬話していいのかと悩む素振りを見せて、暫し悩んだ末にその名前を答える。 「……ん、いえ、私一人でも…… ……でも、そう、ね。 ……ヴィットーレを、探してて 」「私が会いに行った数日前で既に拷問を受けてたの。 今はもっと酷い事になってるかもしれなくて、だから ……手助けをお願い、出来ますか」 (-130) 2023/09/28(Thu) 23:06:22 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-128 「……後でたっぷり泣いてもらうぞ、その口も素直に してやる。カンターミネ式尋問術、ピヨピヨ口の刑だ」 おどけて笑う。 わかってるから。 「正直言って、外はっていうか全部の状況がかなーりヤバい。 が、今説明するのはエリーの心などがもっとヤバいから、 後で手当しながら言う。いいな?よし、行こうぜ」 こほんと咳ばらいをひとつ、書類を改めて拾い上げ。 「……結構。常にそう従順であってもらいたいものだ」 今度は気取って、小柄なケーサツが先導する。やがて辿り着いた駐車場では、改造車が未だ喧しくアラームだのクラクションだのを響かせ続けて、その対応に追われる者が殆どだった。 おかげで記帳係を見つけるのに少し手間取ったが、 ともあれ護送車を一台手配して、あなたを護送席に、自身を運転席に。 「さて。ドライバーの所までちょっと我慢してくれよ!」 ちなみにケーサツの方は運転があまり得意ではない。 車は揺れに揺れたし、敷地から出る際門柱に車体を擦ったが、 丁度その辺りで運転手らしき男がやってきた。 「御苦労マリオ。悪いね、運転は苦手で。交代だ。 俺は後ろで見張るから、一先ず西ルートで走ってくれ」 (1/2) (-131) 2023/09/28(Thu) 23:09:43 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-128 >>-131 「場合によっては後で車を変えるが、とりあえず 手当から……つっても湿布と軟膏、 あと俺製の鎮痛剤くらいしかないけど。 爪は……まあ持ってる訳ないよな、 普通に被覆材使って応急手当にしとくか……」 そんな感じで、あなたの隣に寄り添って。 いそいそ、せかせかと傷を見ていく。 勿論運転手が覗けないように事前にカーテンはした。 頬にはアイシング。痛みが酷ければ鎮痛剤。 肩はどうしたもんかと思いながらも、 軟膏タイプの麻酔で一時的に痛みを引かせるだろうか。 「さて、改めて。 おかえり、エリー。 待たせてごめん。そんでごめんついでに、もう一個ごめんがある。 この後色々やる事がある。多分エリーにも来てもらう。 質問と泣きごとと愛とかまあその他なんでも聞くし、 疲れてるなら寝てもいい。数時間は余裕あるはずだし」 とりあえず一旦落ち着ける状況にはなったようだ。 聞ける限り聞いてもいいし、抱き着けるだけ抱き着いてもいいし、心配させやがってとパンチの一発をいれてもいい。 カンターミネは、傍に居る。 (2/2) (-132) 2023/09/28(Thu) 23:19:59 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ「ふふ。声に出してない言葉、聞こえちゃったから」 少し機嫌よさげに笑って、そっか、やっぱりいるのね。 なんて、何も言われていないのに一人話を進める。 「もう、褒めてもお土産しか出ないわよ。 ……それは、どうかしら……支えたい人ができたからって 書類仕事が急にできるようになる訳でもないし…… ……まだまだみんなにはお願いするかもしれないわね……」 言いながら封の空いた小さな紙袋を貴方に差し出して。 中に入っているのはテントウムシのキーホルダー。 男の人が持っているには少々可愛らしすぎる、といったデザインだ。 「お守り代わりにでも、と思って」 「フルーツと悩んだけど、エルヴィーノまだ余り食べられないでしょ?腐らせちゃうのもまずいなって」 「そうだ、退屈していない? あれなら本でも適当に買ってくるけど。 ……でも、エルヴィーノならお願いできる人沢山いるかな」 (-133) 2023/09/28(Thu) 23:21:00 |
【秘】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ → Commedia ダヴィード『お祭り』の日の夜が明けて。 きっと日もとっぷりと傾きかけた頃。 そこまであなたが寝過ごしていたって、誰も咎めるものは居ない。 寝転がったまま、ぼんやりとしていても。 隠れ家は静かなものだった。 「ダヴィードー、ダヴィード起きてっかあ〜?」 「飯行くぞ飯!ずっと家に籠もってんじゃカビ生えるわ 後の事は一旦全部後回しだ」 一応の家主がいつも通りにやって来るまでは。 端末が床に落ちていてもお構いなし、 あなたを叩き起こしてでも連れて行くだろう。 何せきっと、昨日の夜からろくに食べていないだろうので。 (-134) 2023/09/28(Thu) 23:22:22 |
【独】 corposant ロメオその時ロメオは、曇天の空模様を窓越しに眺めつつ 適当な店で時間を潰していた途中だった。 窓際のカウンター席で足を組みながら アイスティーを飲んでいた頃、手元の携帯端末にコール音。 発信先の名前を見て、「あれ」と一言呟き電話を取った。 「はい、もしもし。オレですけど」 「はあい。あい。久しぶりすねそういうの」 「んじゃそこまで……」 「……もう切れたわ」 すぐに切れた電話には、もう驚きもしない。 通話時間の表示された画面を消してすぐに席を立った。 以前であれば、今度は何用かと疑問が勝っていた所だが。 車を取りに歩きながら考える。 こういう時の心配って当たるんだよな、と。 #ReFantasma (-135) 2023/09/28(Thu) 23:25:47 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → リヴィオ──それは天気予報が当たった数日後の夜半。 その足は在るべきとされた場所から遠ざかり、人気のない路地を辿っていただろうか。 何時ぞやと違い空を覆う厚い雲はなく、星は瞬き月もまた同様に光を注ぐ。 それでも届く光がまばらな路地は暗く、黒く。 だからその色に溶け込み壁際でしゃがみ込む人影にもすぐ気づかないかもしれない。 だとして、「みゃぁ」、不意に猫の鳴き声がして。 「なぁに」、落ちた声は貴方にも聞き慣れたもの。 深く被った黒いフードの奥、翠眼は貴方の姿を捉えた。 驚いたように瞬きを繰り返したのもきっと見えなかっただろうが。 男は立ち上がり、手を伸ばした。 「──リヴィオせんぱい」 つんつん。 つついた腕は三角巾をしていない側だ。 貴方が視線を向けるのなら、パーカーのフード下には見慣れた後輩の顔があるだろうし。 「……そのカッコで散歩にしては、遅くない?」 ついでに割とすぐ下に白い子猫の姿もあった。 服の中に入れられて顔だけ出てる。 (-136) 2023/09/28(Thu) 23:27:46 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-120 ブレーキランプがまだ乾いている地面を照らす。 まだ新しい黒の車を指定された場所の付近に止めた後、 やや急ぎ気味に降り貴方の姿を探すために周囲を見た。 ちゃり、と鍵に付いた鈴の音。 「ルチアーノさん?」 自分を呼びつけた依頼主の名前を呼ぶ。 貴方は声の届く所にいるだろうか。 #ReFantasma (-137) 2023/09/28(Thu) 23:29:04 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ>>-133 「お土産?」 話を逸らすように聞き返せば、差し出されたのはテントウムシ。……の、キーホルダー。 聖母マリアの使い。幸運を呼び込み、病や災いごとなどの不幸を運び去ってくれるそれは、愛らしいデザインで確かに男性向けのものではない。 それでも、そこから伝わってくるのは気遣いと祈りが込められてるのがわかるから悪い気はしなかった。 「ありがとう。ごめん、もう少しこっち来て」 右手が動かないから、左手をそちらに伸ばして受け取った。 逆手では届かなくて、あなたにこっちに来て貰う形になっただろう。 「可愛いね、これ。 あぁ……今はまだ殆たべられないからね……本は助かるな。 毎日寝てるだけだと暇だし……ページがめくれるようになったら読みたいな。 推理小説が好きなんだけど……、……ブックスタンドも欲しいかもしれない」 両手が使えぬと本も読めなかった。 (-138) 2023/09/28(Thu) 23:53:55 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ>>-137 野次馬が集まり始めたその通りは賑わっていて。 どうやら発砲事件があったらしい。 しかしそこには怪我人も銃を持った人間もいなかったのだとか。 何処かで見たような事件の話、明日の記事に小さく乗って忘れられるような物だ。 「――ロメオ」 そんな路地の裏から話しかけてきたのは貴方を呼び出した男だ。 声色はいつも通りに思われたが、腹部および右手に赤い血痕がべったりと付着しており何事かしか起こっていない。 追加で滴っている様子がないことから観察していれば返り血であるのがわかるだろうか。 「……あー。アジト以外ならどこでもいい」 そう、ただ此処でもいいわけでもない、と。 今回の貴方への要望は何処かに連れて行って欲しいらしい。 #ReFantasma (-139) 2023/09/28(Thu) 23:58:09 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-131 >>-132 痛む身体を引き摺り、足取り重く。 それでも可能な限りしっかりと歩いた。 少し小柄な茶髪の後ろ姿にライムグリーンを重ねる。 それで、一瞬揺らいだ心を落ち着ける。 エリーの心などがもっと? 警察に潜入して2年。 あなたに会うのは殆どがあのモーテルだった。 だからではないが、多分女は知らなかったのだと思う。 乗り込んだ車。あなたの運転技術。 文字通りの痛い思いをした。…いやまあ、ちょっと響いたくらい。 「おー…。」なんて間の抜けた声も上がったと思う。別に怖くないわけではなかったはずだが。 「…ありがとお。」 運転手が変わり、一頻りの手当が終わるとだいぶ楽になった。 そうしてやっとへにゃと笑って、「ただいまあ。」って。 ともすればあなたの言葉を聞き終わるまでもなくやおらにその身体へとしなだれかかったかもしれない。 …決して聞いていないわけではないのだ。 ただそうしながら聞かないとまた不安な心地がしてしまっただけで。 (-140) 2023/09/29(Fri) 0:17:42 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ>>-131 >>-132 >>-140 何度か相槌をうち、一区切りのついた頃。 少し揺れる目が甘えるようにあなたを映した。 身体をゆっくり反転させると、首筋へときゅうと抱き着いた。 手探りの右手で、茶色のウィッグを一度むしり取る。 「……。」 少し身体が震えていた。回す腕からそれは簡単に伝わっただろう。 あの夜から先、ずっと我慢をしていたのだ。 そうやって我慢するのは得意だけれど、そこにあなたがいるのに我慢する理由が今どこにもない。 「あの…ねえ。」 そう口を開くのにも少しばかり時間をかけた。 「 やっぱり、もお、置いてったら、やだあ…… 」子どもが大人の顔して背伸びして呑み込んだ、…そのはずのものを吐き出して。 身体と一緒で震えた声がそう紡ぐ。 そうやって今はすり減った分を取り戻さねばならなかった。 その先にある不安に、きっと備えようとしていたのだ。 (-141) 2023/09/29(Fri) 0:18:30 |
【秘】 Commedia ダヴィード → Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>-134 はたして男は、昨日の夜からブランケットを被ったままカウチの上から動けずにいた。 気を失うように眠りに落ちて、目を覚ましてからも隠れ家の窓から入る光が色を変えていくのをただ見ていた。 おきてます、と答える声もどこか掠れている。 「めし……」 思い出したかのようにぐぅ、と腹が鳴る。 のろのろとブランケットをはぐって立ち上がり、靴を履く。 昨日は一仕事を終えてからそのまま隠れ家に来たので、服装は問題ないだろう。 腹が減るのも、今この時にそんなことを気にしている自分がいることも、なんだか冗談のよう感じられた。 「どこ、いきます? 腹にやさしいのがいいな」 ついぞ隠れ家を出るまで、端末の方は見なかった。 見ないようにした。 (-142) 2023/09/29(Fri) 0:38:07 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ>>-140 >>-141 「うん、」「おかえり」 何度言ったって別にいいはずだ。この先何度だって言う訳だし。 そうしてしなだれかかる貴女を、当然のように受け止めて。 その背に手を回して、二度、三度軽く叩く。あやす様に。 ウィッグ、結構高いんだけどなあ、なんて考えは いつもなら口からからかうように出てたけど、今日はナシだ。 「……。」 温めるように、背中を擦る。昇った指を髪に沈めた。 尋問の形跡か、少しべとついたのを構わず、指で梳く。 「ん」 ほんのり上がる口角に、ばさりと揺れ落ちるライムグリーン。 解放された微かな汗のにおいが一瞬漂った。 髪から耳を、耳から頬を。腫れてない頬に指が流れる。 「……二度としない。だから、エリーも俺の傍から離れないでくれ」 囁く。真っ直ぐにミントグリーンを見つめ返す。 殆ど距離のない位置で、呼気を絡ませている。 ――王子様の瞳にも、今は波が立つのが見えるはずだ。 その多くは喜びで、幸せで。だが他が0とは、言えなかった。 それでもせめて、この子の前では、他の全ては塗り潰そう。 この先にある大きなものに対して、少しでも…… 約束通りに俺が支えて、約束通りに心を守る為に。 (-143) 2023/09/29(Fri) 0:44:54 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオそこで止めるべきだった。 制圧したいだけならそれでいいはずだった。 貴方が知っているこの男はそういう男だったはずだ。 間接に負荷がかかる。可動域とは真逆に向けて体重をかけられる。当然苦痛の伴うそれは、貴方の喉から呻き声を漏らさせもするだろう。 めり。 なまじ真っ直ぐに硬い部位ではないがために一撃でとはいかず、逃げないのであれば貴方はそれなりの時間苦痛に呻くことになる。ゆっくり、ゆっくりと断裂していく感触が伝わったかもしれない。 めり。り。 男は声を発さない。ただまだ少し荒いままの息を繰り返して、煮えた瞳で貴方を見つめている。 貴方を屈服させることだけを一意に考えている。やはりこんな仕事には向いていないことが明らかだ。 めり。 めり、 めき。 それでも。 それでもなお抵抗しないなら、いつかその腕も自然な反発すらなくすはずだ。だらりと左腕が垂れ下がれば、男はようやく安心したように息を吐いた。 (-144) 2023/09/29(Fri) 0:47:24 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-139 剣呑な賑わいを見せる通りを横目に通り抜けて、 貴方の所へ来ただろうか。 いつもの声が聞こえたのはそちらの方ではなく、 少し外れた路地裏の方で。 「あ」「あ?」 「いや」「………………」 顔を見て安心し、視線を下にずらしてすぐに驚愕したような様子になり。そのままゆっくりと目を細めて怪訝な顔をして、もう一度視線が貴方の顔に戻る頃には片眉を上げつつ苦虫を嚙み潰したような表情だった。器用な表情筋をしている。 「あんたねえ。いや…………」 「乗ってくださーい……」 「あんたの怪我が無いんならまあひとまずはいいです……」 車の方向を指し案内する。その途中にそう零して、 車まで辿り着けば「邪魔なものはないと思うんで好きなとこ乗ってください」と運転席へ乗り込んだ。 車内には物が少なく、精々後部座席の白いクッション程度だ。 カバーのかかっていない座席はそれでも清潔に使われていて物をこぼした形跡もない。足元のフロアマットにも砂や泥は少なく、こまめに掃除はされているのだろう。 シガーソケットにセットされたディフューザーからは、ウッディーノートの香りが仄かにした。 貴方が座れば濡れタオルをぽい、と投げよこす。 「これで手拭いて。服それどうすんすか、それも拭きます? 行き先どこでもいいなら気晴らしになるとこでも行きますか。海に嫌な思い出は? ある? ない?」 #ReFantasma (-145) 2023/09/29(Fri) 0:49:33 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ再び踏みつけにしようとした足はそのまま地に降ろされ土を蹴った。それは子どもの癇癪じみた仕草だった。 二度もあんな気色の悪い声を聴かされるのはごめんだ。 けれど男は子どもではないから、続く動作には悪意が込められて遊びがない。 裏路地の砂ぼこりが巻き上げられてぱらぱらと貴方の顔やら身体に降り注いだろう。荒く息をした口にも僅かに入り込んだかもしれない。浅い青の瞳に触れそうで咄嗟に瞑ったかもしれない。 男はその隙を狙う。 ざり。体重の位置を僅かに変える音。そのすぐ後。 丸まった腹を目掛けて蹴りが飛んだ。上手くいけば薄い腹に深く入るはずで。 加えて再び弾かれた身体はまりのように弾むはず。 「盛ったか?」 「何か。」 この国じゃサッカーは人気のスポーツだ。 蹴飛ばす以外に同じところはなく、全く愉快にはなれなかった。 (-146) 2023/09/29(Fri) 1:10:45 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ>>54 ニーノ 「お節介なところが誰かに似た。 なんだ甘えたいのか、どうした?」 視線を一瞬だけ他所にやって、また顔を見返した。 やはり大人だといっても心配されるような家に居るのだろう。 羨ましいような、そんな自分も想像もつかないというべきか。 「なんだそんなことか。 お安い御用だ、その言葉のチョイスの是非は置いといてな。 いったい誰に貰った教わったのやら」 「重要なのは言葉の意味じゃない、おまじないであることだ」 そう言いながら、貴方の頬に手を当て、こつんと額を合わせる。 「ニーノ、お前は"大丈夫だ"」 余計なことは添えずに男の目は正面から貴方を見つめている。 根拠もない言葉がどんな意味を持って貴方の中に生きるのか。 きっと多くに生かせる人間であると男は信じていた。 それだけに頼り切らないで歩いてくれると祈っていた。 だから、これだけでいい。 #BlackAndWhiteMovie (61) 2023/09/29(Fri) 1:23:25 |
【秘】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ → Commedia ダヴィード>>-142 どんな時であっても、腹は減るし明日は来る。 滑稽とも思えるほど当たり前に世界は回っていく。 「休みの連絡入れるついでにアマラントでも行くか。 どうせしょぼくれたり他所行ったりで 忙しくて行けてないだろ、お前」 これは根拠もない決め付けだ。 とはいえ慌ただしい数日だった事には間違いない。 一人で慣れない場所へ行く機を窺うには少し不自由な程度に。 「酒のあて以外に普通の飯もあるし…… シチュー、よく作ってたんだと。 腹にも優しいし傷にも沁みにくい、ちょうどいいだろ」 車は出さず、徒歩で向かう。ただ歩くだけでも、 何もせず助手席に座っているよりかは幾らかましだろう。 そのような考えがあってのことだった。 (-147) 2023/09/29(Fri) 1:26:19 |
【秘】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ → マスター エリカ『今日はお仕事はお休みします』 『お客さんとして行きたいので』 『知り合いも連れて行きますよ』 歩きながら、簡潔なメッセージを送信した。 (-148) 2023/09/29(Fri) 1:26:44 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>-142 ダヴィード 表通りからは離れた路地の一角、隠れ家のような入り口。 石の階段を下ると、落ち着いた色の木の扉がそこにある。 下げられたプレートには『OPEN』の文字だけ。 カランカラン 扉を開けばドアベルの音が店内に響く。 暖色の控えめな明かりの下、 カウンター席に着けば、さっそく注文を。 「マスター、シチューとパンを二人分お願いしますっ。 あと、コンクラーベも!」 注文するのは、あなたが以前話していたものと。 比較的沁みにくいだろうノンアルコールカクテルがふたりぶん。 具沢山のシチューと、ライ麦100%の食事パン。 注文したものがカウンターに並べば、 猫被りは休日の一従業員の顔をして表情を綻ばせた。 「どうですか?美味しそうでしょう! マスターの作るシチュー、 私も一度食べてみたかったんですっ」 #バー:アマラント (62) 2023/09/29(Fri) 1:27:58 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロよくよく素直な男だった。分かりやすい男だ。 犯罪者と声をかけられればあからさまに表情を変えたろう。顔を顰める。眉間に皺が寄る。 「拷問じゃない。」 「仕事です。」 詭弁だ。 物分かりが悪い人間の相手をしている。そういう億劫さでやれやれと首を振る。蹴りが避けられればまた口の端を引き攣らせた。たたん。落ちた靴底が音を鳴らす。 ガードが邪魔だ。 ならばそこを砕こうか。 次には左腕が貴方の腕を上から、同時に右膝は下から。上下方向からの勢いで骨に衝撃を食わせようと。 抵抗せずともこの暴力が止むことはなく、 抵抗すればなお止むことはない。 障害があれば人は乗り越えようとするもので、 男は殊更、そういう時に周りが見えなくなるたちだった。 目的がずれていく。 (-149) 2023/09/29(Fri) 1:29:08 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ君は何を言っているんだ? そう言いたげに傾く首はまるで、 自分は怪我をひとつも負っていないというような態度で。 しかしまぁそこに事実はあるしおかしな反応ではある。 「待たない。俺の目的は達成したん──」 だ、言い切るよりも前に足が動いて、 扉はぱたりと閉まり、代わりにその片足は 落ちかける君の支えとなるように差し出された。 その代償と言うのもなんだが、 「……………早く、ベッドに、戻ってくれないか??」 体重のかけられた足は一瞬でも体全体に響いて、 痛みに顔を顰める代わりに満面の笑みを君に見せる。 若干その笑顔が引き攣っている気がするのは気のせいだ。 …多分。 (-150) 2023/09/29(Fri) 1:37:31 |
【秘】 路地の花 フィオレ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡「ふふ、ここから出られた時の楽しみに取っておきましょっ」 「アレならすぐにでも出てきちゃいそうだけど」 きっと、そう時間はかからないはずだ。 あなたのことを信頼している。本当に。微塵も、約束を疑わない。 「あは」 「嬉しい、ホントに。アレ、全然言ってくれないんだもの」 珍しく素直な言葉をいくつも聞けたからか、妹分の女は心底嬉しそうに頬をほころばせて。 こんなこと今後あるかもわからないから、噛み締めるように大好きかあ〜と口にしたり。 「もー、何年ここにいるつもりでいるのよ」 「お金だって足りてるって言ってるのに……過保護よ、過保護! …ま、いいけどね。うん、アレが安心できるようにちゃんと守ってみせるわ」 格子に置いていた手を離して、呆れたような顔ののち。仕方ないなあと緩めて。 体温代わりに投げられた気遣いを、大事に大事に受け取った。 「うん。フレッドにもアレが元気そうだったこと伝えておくから」 それと、と一度言葉を切って。背中を向けて少し歩いたかと思えば。 振り返って、にいと笑う。 「アレ、大好き。また会いにくるから!」 ばいばい、と手を振るのだろう。また会えると信じて。 次はもっとゆっくり話せればいいなんて、叶わない願いを胸に抱くのだ。 (-151) 2023/09/29(Fri) 1:49:11 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「よく言うぜ。」 顔を顰めて それでも仕事だと言い切る貴方。 男は今度は避けなかった。 貴方の左腕と右膝が、利き腕である右腕を捉える。 ミシ、と嫌な音を立てたのに呻き声を漏らしながら けれどこの状態ならば、貴方は避けられまい。 「これのどこが、拷問じゃないって言うんだ?」 相手の腕をへし折ろうとするその行動。 どう見たって、尋問の仕事ではないだろう、と。 目を覚ませ、と言わんばかりに 貴方の頬へ、左手の拳を振るうだろう。 (-152) 2023/09/29(Fri) 1:53:13 |
【秘】 リヴィオ → 暗雲の陰に ニーノその日の夜、 男は友人の静止も聞かずいつもの徘徊を行っていた。 だって家にひとり、退屈は紛れない。 それなら晴れた外を歩く方が余程男の頭も冴えるというもの。 余計なことばかり考えてしまう時間は何より苦痛だ。 昼の活気を失い、落ち着いた夜の街を歩きながら、 ふと、足は人気のない路地へと迷い込むように曲がる。 暫く歩けば、猫の鳴き声。 ふ、と……海にも似た翠がそちらへと向かう。 向いたのは、猫の鳴き声がするからではない、けど。 「………おや、ニーノ。こんばんは」 右腕をつつかれながら笑みを浮かべて、 君と猫を交互に見やる。 「…いや、何。俺を呼ぶ可愛い猫の声がしてね。 呼ばれてしまったならどんな格好でも出歩くしかない」 「……というのは勿論嘘で、こんな格好だからこそだよ。 目立つだろう?両手が自由じゃないってのはさ」 だからといって出歩かない選択はないし、 医者に怒鳴られながらも入院は断固拒否した。 こういう所は強情だ、 嫌 な予感がするのだから仕方がない。 (-153) 2023/09/29(Fri) 1:54:33 |
【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡がちん。 それは男が自分の歯を打ち鳴らした音。噛み締めるだけでは足りずに、威嚇でもするように強く噛み合わせた音だ。 音を立てて沸騰するのは貴方の笑いだけではない。高温でぐらぐらと煮立っているのはこれもそうだった。比にならない怒り。不快や不愉快では片付かない圧倒的な憤怒。激情。心火が理性を薪にして燃え上がる。 ばきん。 横面を蹴飛ばした。 貴方が避けないなら、の話。 だん。 心臓の上を踏みにじる。 それも避けないなら、の話。 衝動的に、酷く冷静に、机の上に放ったペンを引っ掴んだ。 それも邪魔されないなら、の話だ。 「爺さんはな」「逃げてない」 「お前たちに愛想を尽かしたんだよ」 長身が遮る室内灯。 逆光の中でも歪んだ表情はよく見える。 貴方が結局そのままでいるのなら、男はそのまま馬乗りに体重を掛けるのだ。ウェイトではそちらに分があるのだから、この行動はやはり賢いとは言えない。 (-154) 2023/09/29(Fri) 1:54:48 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → favorire アリーチェ「噂のルーカスさん、ははっおもしれえ言われようだな。 好きに呼んでいい、歳もそこまで変わらん、テオドロの一つ上でリヴィオと一緒だ」 さらりと貴方の同僚達と仲がいい旨も告げる、年齢はわざわざ聞いたものではなく調べたものだが。 それぐらいは気にするような者達ではないだろうし、歳を知っているという情報も巧妙に隠しているつもりだ。 「ヴィットーレが拷問? あいつ、自分の店が燃えて警察に捕まったと思ったらそんなことになってたのか。 仕方ないな……あー、……ん−?」 「……、 すまんヴィットーレやらかした 」どうやら名を挙げた彼とも知り合いではあるらしく、同時に何かを謝罪した。疚しいことでもあったのだろうか。 「よし、今から何でもしてやる。奴には特上の個室を寄越そう。 お嬢さんも付き添いだけじゃあなくて一緒に診察は受けてくれ。 こんな悪環境で何か病気を貰っていてもおかしくない、 同じ病院でかかれるように手配してやる」 「そんなところか、運ぶのは今すぐしよう」 電話を手にして部下に車を手配させた。 そうして踵を返せば、彼の牢屋までの長くない道のり、貴方を連れてその道を行く。 「あんたはヴィットーレがなんの罪で捕まったか知ってるかあ? 俺はな、少しだけ。それが悪い事かどうかは知らんが。 お嬢さんはどう思う、取締法で捕まったやつらのことや ――罪もないのに捕まえられたこと。 こんな可憐なお嬢さんが冤罪以外で連れてこられることなんてないだろう?」 (-155) 2023/09/29(Fri) 2:03:24 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「お前…その顔は自分の両手を見てから言えよなぁ…」 どう見ても両手が無事じゃないし、なんなら耳もちょっぴり。 不思議そうな顔をしてもダメなのだ。 「おーう…悪い。ちょっと足と腕がこれなの忘れてた。 あと、俺の目的が達成されてないんでやっぱ待ってくれ。」 片手で何とか、戻ろうと藻掻いて。 体の大半をベッドに乗せる事に成功するだろう。 そしてベッドに戻るついでに ちゃっかり貴方の袖を掴んで引っ張ろうとしている。 行かないで欲しい、とそちらを見るだろうか。 (-156) 2023/09/29(Fri) 2:05:02 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオげほ、げほ、と咳き込んでいれば。 少しだけの間を置いて、砂埃が女を襲う。 口の中がざらつき、目に入らぬよう瞑った目を両腕でかばって。 あなたの思惑通り、大きな隙が出来る。 「 が、っ! う……ぐぇ……っ」靴先が、女の腹に突き刺さる。 一瞬浮いた体は、もう一度壁に思い切りぶつけられて。 再び地に落ちた。まるでボールのような扱いだ。 膝で圧迫されていた時とは比べ物にならないくらい、抉るような衝撃が内臓を襲って。 その場に胃の中のものが吐き出される。 つんとした匂いが鼻を刺激して、口の中がきもちわるい。 その衝撃で、ポケットから 注射器 が転がり落ちる。中身こそ空になっているが、使用された形跡のあるもの。 疑心暗鬼になっているあなたは、これをどう取るだろうか。 「っ、ぐ……あ、は」 「どう、おも、う?」 青い顔で、しかし。 負けるわけには、いかなかったものだから。 (-157) 2023/09/29(Fri) 2:05:05 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ>>-145 「そうだな、俺は正直者なんで怪我をしていたら言う」 流石にその表情と言葉に申し訳なさを感じたのか、 しっかりと自分に被害があるわけではないことを告げた。多分。 少なくとも物理的被害はその血の汚れだけだ。 「なんだ、俺が悪いのか? ちゃんと仕留めようとしたんだ」 「これでも頑……」 言葉を止めたのは決して褒めて欲しいわけでもなんでもなく、 今思えば完全に自分の事情でファミリーを撃ったことであり、 むしろあまり良くないことであるとわかりつつ、 怪我の理由も痴情のもつれにジャンル分けされるのかと思うと一瞬で気分が悪くなったからだ。 自分から見ても他人から見てもそうかもしれない。 最近猫と自分が入り込んだその座席にもぐりこむ。 出来る限り汚さぬように気を使いながら、投げられた濡れタオルで手を清め一息ついた。 服の問題がある、日が暮れゆく世界の中であれば目立たないがそのままもよくはない。 だがそれ以上に、もう動きたくもなかった。 「……服は、外で脱ぐ羽目にならなければどうでもいい」 「海に嫌な思い出は、ない」 「多分、泳ぎは微妙」「見るのが好きだ」 #ReFantasma (-158) 2023/09/29(Fri) 2:08:00 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → リヴィオ>>-106 「おう、改めておはようさん幸せ者」 「悪いがゆっくりは寝れんのだ。 目は瞑っていいが寝るな、しばらくしたら俺が運んでやる。 ……それとリヴィオ、お前医者嫌いだろー、顔に描いてある」 どうするんだその怪我と、ため息を吐いて医者に出張してきてもらおうかだとかぶつぶつ聞こえてくる。 金の力でどうにかする算段を独り言で呟いていれば漸く貴方の方に意識を向けて。 「なあリヴィオ。今どんな夢見てたか覚えているか。 ……話せるんなら話せ、体より口が今一番動かせるだろう」 改めて訪ねるということを、教えてくれと頼むことは自分にとっても久しぶりであった。 幼馴染にも、友人にも、上司にも。知りたいと言って調べることはしてきた。 だが、その場で教わりたいとちゃんと言うのはそれはそれで勇気もいる者で。 決して自分勝手に関わりたいわけじゃあない、貴方のその口から聞いてみたいことだってあるのだ。 (-159) 2023/09/29(Fri) 2:15:59 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ「………ぅ、ぐ………は…はは…………ッ」 止まることなく感じる負荷に、やはり笑いは途絶えない。 呻きもあれど、この取調室に響く声は そちら が多めだ。「あは…、………は、ぁッ…………は、」 まずは、ずり、と床に顔を擦ろうが、 男は君に顔を見せぬよう煮えた瞳から視線を逸らす。 「な、ぁ……イレ…ネオ……………君、たのし……かぁ?」 そうして、声を発さぬ君とは反対に、問う。 問いかける。既に制圧は完了しているはずの人間に、 こう することは楽しいのかと問うている。「いや、…な、に………つい、口が滑って、な……ァ、」 痛みに藻掻くように指先を跳ねさせながらも語り続け、 「わる………か、…………ふ、……はぁ、はッ」 荒い呼吸で体を上下させながら、 抵抗もなく、その行いを 受け入れ続けた 。▽ (-160) 2023/09/29(Fri) 2:26:40 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ「………… あ ゛ッ ゛」日常ではあまり聞かない音とともに漏れた声は、 より一層強く跳ねた指先とともに静かさを君に届けるが…。 それでも尚、「ふ、」と笑う声が聞こえるのだから 君は、この男がまだ落ちていないのだと理解出来る。 痛みには、慣れている。 だけどやっぱり、痛みがない訳ではない。 叫びそうになった声は口内に広がる血とともに飲み込んで、 長い苦痛で生理的に零れかけた涙は、 逸らした視線のまま目を閉じることでせき止めた。 だからきっと、安心するように 吐かれた息はより強く感じられたのだろう。 (-161) 2023/09/29(Fri) 2:30:47 |
リヴィオは、まだ、笑っている。 (a15) 2023/09/29(Fri) 2:32:39 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ押し問答だ。 貴方は正しい。けれど男は肯わない。 その言葉をあくまで否定する。男にとって、これは正義の行いだった。 「正当な手続きを踏んでいる。」 その通り、踏んでいる。 机の上の書類こそその証拠。貴方の名前とその嫌疑、何をもってしても自供させよと令の刻まれたその紙面。 これは男の勝手な判断ではなく、 趣味や高揚を得る手段でもなく、 飼い主に下賜された仕事だった。 男の骨の抵抗。それがぐいと引き攣って僅かに薄れる感触。治る傷だ。問題ない。 けれど、だからこそほぼ同時。ほんの少しだけの時差での攻撃は避けきれず。 右頬に攻撃を食らえばぐるん! と顔が横向いた。ぐら、と視界が揺れてたたらを踏んだ。追撃がないのならそれは運よく踏み込みに変わるだろうか。必然的に低い姿勢、下から顎を狙って肘を振り上げる。命中すれば、そちらの視界もまっすぐなままではいられない。 (-162) 2023/09/29(Fri) 2:37:59 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレびちゃ。 きっとそういう音。濡れた音が地面に散った。 同時にすえた臭いが立ち上り、男は厭うように距離を取ったろう。誰だって汚物で衣服が汚れるのは嫌だ。 ────それでもきっと、 ここにいたのが貴方ではなく一般市民であれば、 迷いなく助け起こそうとしたはずだ。 潰れた蛙のような声を上げて身を震わせる貴方を、視線で見下して男は眺めていた。 月色の目を丸くして見ていた。そうしてひとつ、静かに息を吐いた。ぱち、ぱち。瞬きは油断の合図であり、転換の印。 一度目の暗転の後、瞳はまだ貴方を見ていた。 二度目の明転の後、瞳は転がる注射器に向いた。 男が手を伸ばす。貴方が奪い取らないのであればそれを拾い上げるだろう。しゃがみこんで、針先を見つめて。 「使ったのか?」 誰に、と言わなかった。 むしろそれは、自分ではないと確信した落ち着きだ。 逸っていた鼓動は今は収まっている。体温の上昇や低下、発汗等もない。それに針を刺された感覚はなかったし、液状なら──思い出したくもないが──口づけで仕込むのも不可能だろう。 だからこそ。 だからこそ問う。 無辜の民を犠牲にしたかと問う。答えの見えた問いだ。 見えているから、畳みかけて問い質す準備は出来ている。 (-163) 2023/09/29(Fri) 2:55:48 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「だったらその飼い主がクソって、事だな…っぐ… この場合は、署長代理殿か?」 腕が軋む。 骨が、筋が圧迫で押しつぶされ、嫌な音がした。 同時に拳で感じる、確かな感触。 「あ、がッ…!」 そして次の瞬間には、貴方の肘が顎を撃ち抜いて 自分の脳が揺らされていた。 同じように、たたらを踏んで 一歩、二歩と下がり、首を横に振る。 お互いにほんの僅かな隙となる、かもしれない。 「そんなくそ野郎に従ってたら お前だけじゃねえ。家族も大事な奴も何もかも。 全て地の底へと落とされることになるぞ。」 言葉を紡ぎながら 次の一手へと構える。 顎を打ち据えた貴方の肘を狙って、蹴りを一つ見舞おうと。 足を振り上げた。 (-164) 2023/09/29(Fri) 2:56:57 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ楽しいか、と問うたなら。 かかる力は強くなったことだろう。それは男にとって侮辱だった。 暴力を好む野蛮人。そう評されることを、男は好まない。 だから一層静かになった。 淡々と、粛々と、機械のように。貴方の身体を、悪いとも思わず痛めつけて。 そうして一際大きくなった声に嘆息した後、 男は、その頭に手を伸ばした。 金糸の髪に指を通す。 その下の頭皮に指を添わせる。無理矢理こちらを向けと首を回させる。 青い瞳は未だ閉じているだろうか。 閉じているならそれを無理矢理開かせることはしなかった。 男は自身の欲求を知覚していない。 浅い金色。月の色に似た瞳が、やや遠巻いて貴方のかんばせを眺めてから。 「楽しいわけがないでしょう。」 さて。 そう言った男は、どんな顔をしていただろう。 (-165) 2023/09/29(Fri) 3:10:21 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ「はは、なんの事だか分からないな」 左腕は治療すれば治るし、指先は動く。 右手も同じ。…いや、こちらは動かすのは辛いが。 左耳は半分もいかないくらい削がれただけだ。 人間の体というのは便利で、きっと何とかなる。 ということにしている。医者にも見せているので。 戻ろうと藻掻く君の体重を片足で受け止め、 笑顔は徐々に引き攣りを増す。 ようやく戻り離れようとする頃には、 「…………だから、近付きたくなかったんだ」 掴まれている。ついでに引っ張られている。 やれやれというように 首を横に振るのはさて、何を思ってか。 「…それで、目的ってのは何だい? もしかしてお見舞い品のことかな? それなら両手が塞がっていてね、俺としたことが」 「あー……。……… やめよう、まずは素直に聞くから とりあえずその手を離すのとその目はやめよう」 個室の中、閉まった扉は外との隔たりで。 貼り付けていた笑みをふっと落とし、 ひとつ、大きなため息を吐き出すのだった。 (-166) 2023/09/29(Fri) 4:08:49 |
【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ「…そうかい、それは残念だ。 もう少し、いい夢を見続けていたかったものだが……」 医者嫌いと言われれば、 否定しない代わりに小さく笑みを零す音。 概ね正解だが、"医者"自体は『きらい』じゃない。 何やら聞こえる呟きに耳を傾けながら、 掴んだ君の手を軽くふにふにと摘んでみたり。 しかし、夢の話を問われればその動きを止め、 悩むように少しの間を置いた後。 「………ひとつだけ、聞かせてくれ。 俺の可愛い後輩達は、無事、外に出られた……かな」 それは、今一番確かめるべき事柄で。 それを聞かねば自分のことを考えられそうにもなかった。 助けを求めたのは、確かな事実なのだけども。 ロクに回らない頭でも、考えずにはいられなかった。 そうして答えがどうあれ、一度頷いてから。 「…何、大したことじゃない。いつもの夢だ。 ……『要らない』『死んでしまえ』と 存在を否定されるだけの、くだらない、夢だ」 そんな夢に、もう何十年も囚われ続けている。 だから男は、要らない者、だった。 (-167) 2023/09/29(Fri) 4:42:54 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → favorire アリーチェ腕に痣、と聞けばすこし悲しそうに顔を歪めるけれど、 でも、尾を引くものじゃないと分かれば安心したように。 きちんと座り直して、大したことじゃないわ、と笑う ヴィットーレは、昔からずっと変わらない、 貴方の、みんなのお兄さんのまま。 名を言い直した貴方には少し首を傾げたりしつつ。 「……それでもアタシは、貴方にマフィアには なってほしくないわ。それは、マフィアという職業が 危ないからというのもそうだけれど…… …もし何かがあった時、何かをする時、 同じ視点であるよりも、それぞれが違う視点を 持っていた方が、対応幅が広がると思うの。 ……人探しという面でも。」 同じ立場では、同じ手段しか取れない。 もしもの時に手が届かない、守る手段がない、 そうなってしまう可能性がないとも限らない。 今回の件だってきっと、マフィアか警察、 どちらかだけではこんなに早く解決しなかっただろう。 貴方を側で守りたい、という気持ちはあるけれど…でも。 やっぱり貴方には、法に守られた場所で。 今までの仲間と共に過ごしてほしい、そう思う。 「……それでも不安なら、そうね……」 ヴィットーレはそう呟いて、少し思案して。 それから顔を上げて。 (-168) 2023/09/29(Fri) 6:07:20 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → favorire アリーチェ「……一緒に住む?それなら少しは安心かしら。」 孤児院で、他の家族と住むのと同じような、 そんな気軽な口調で。 そう言ってのけた。 (-169) 2023/09/29(Fri) 6:08:46 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ>>-143 背から髪、耳、頬へ。 流れる指先に、くすぐったそうに身じろいで。 邪魔だなんて言い方は、ひと仕事した茶色髪に本当に悪いのだけれど、やっぱりこの鮮やかな色が女は好きで、好きで。 「 ―――うん。 」殆ど音だけで頷いて、微かな距離すら埋めていく。 欲しがり屋さんのお姫様が、その瞳を見て堪えれるはずもなかったのだ。 啄むように、1度2度。…後はもう、満足いくまで深くまで。 寂しかった分。怖かった分。そして、今の不安を塗り潰す分。 既に知っていること。察したこと。 潜入任務は完全に終わりになったこと。 脱獄は自分が手を貸せずとも成功したこと。 その上でなにか良くないことが起きたのだということ。 そしてそれが、あなた若しくはアレッサンドロ・ルカーニアに関わる何かであるということ。 それかもう、それすら関係ないくらいの世界の終焉か。 これすら絶妙に間違いでないのはきっと最終的に幸いすることになる。 いづれその覚悟ができた頃。 ゆっくりと顔を離して女は訊ねることとなる。 「…ミネ。」 「何があったか。聞かせて」 含んだ緊張の分、声が強ばった。 (-170) 2023/09/29(Fri) 7:02:07 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ意識を落としてしまえたなら、楽だったんだろう。 しかしそうならないからまだ続く。 しかし抵抗する気力もないほどに、弱っているのは確かだ。 目を閉じ、顔を逸らす男では伸ばされる手に気付けない。 最も気付いていたとしてもその手を避けることはなかった。 君の指先が己の髪に触れ、頭皮を添い、 君に与えるのは、熱や苦痛による汗ばんだその感触で。 無理やりに向かされるその行いまでを感じてから 閉じていた海にも似た翠眼を僅かに開いて。 「………そうか」 たった一言。どんな表情であれその一言だけを返し、 汗に濡れる額を、張り付いた髪を、火照る頬を、 涙の滲む瞳を、唾液に濡れた唇を君に向け、 小さく吐息を零しながら緩やかに、微笑んでみせるのだ。 苦痛に歪む顔など、そこにはない。 ただぼんやりと両手が自由でない不便さと、 君の表情についてだけを考えている。 そうして再び、どこか気怠そうにも見える緩慢さで もう一度、翠を閉じていこうとする。 ここに君が望む答えはない。 あるのは無駄な時間と、意味のない暴力だけだ。 答えられることなど何もない男は、ただ、笑っている。 (-171) 2023/09/29(Fri) 7:20:03 |
【秘】 Commedia ダヴィード → Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>-147 『世界が終わったような』気分になったって腹は減るし眠くもなる。 そんな当たり前に傷つく歳ではなかったが、代わりに両親のことを少しだけ想起した。何故だろうか。 「うーん、その通り。 ごはんだけでもって聞いて行きたかったんですけど。 もう……すぐにはちゃめちゃになっちゃったし」 忙しかったのは本当。迷惑を避けて近寄らなかった面もあるだろうが、わざわざ言うほどではない。 いつぞやに三人で話した時は、まだいつも通りが続いていたから、いつだって行けると思っていた。 「あ〜〜、シチューいいなあ。俺シチュー好きです。 お手製さいこーだしあったかいし、うれしくなるし……」 外で貴方と二人で歩いているというのに、子どもの口調はいつもより砕けたもののままだった。 会話の中身も無に等しい。 口も足もちゃんと動く。 生きている。 貴方と食事に行けるのは嬉しい。貴方の企みはしっかりと効果を発揮したようで、当たり前がひとつずつ取り戻されていく。 (-172) 2023/09/29(Fri) 7:52:38 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-124 貴方が病院の中庭に辿り着いた頃、ベンチに見慣れた男のシルエットがあった。 その男は誰かの見舞いであろう病院の前にはない店の紙袋を下げながら暖かな日差しの下で眠っている。 他人の視線や居場所を関係なく眠っている。 時々身じろぎしては丸まって器用に長い脚を収めている。 貴方は彼を放置することも出来るし、声をかけて起こすことも出来るだろう。 (-173) 2023/09/29(Fri) 7:54:05 |
【人】 Commedia ダヴィード>>62 ペネロペ 一人であれば少し気後れしそうな隠れ家だ。一緒に来てくれる先輩がいてよかった。 ……いや、自分達は隠れ家から歩いてきたのだから正しくは隠れ家「風」か。 とりとめのないことを思うし、いくらかは口から出てきたかもしれない。 促されるままに着席するが貴方の頼んでいるカクテルが何なのかもわからない。 大人しく椅子に座って店内を見回しているうちに提供された一皿は、一日以上何も食べていない人間にとって魅力的すぎた。 「本当に……めちゃくちゃ美味しそうですね。 え、これ、ねえもう食べていいですか?」 なので、我慢ができるはずもなく。 煮込まれても素材の食感を失わず、シチューの味をしっかり吸い込んだ具材たち。 ほどよくあたためられたパンを浸せば、しっとりと口の中の傷に障らない美味しさが口の中に広がる。 合間に口にしたカクテルはやさしい甘酸っぱさが特徴で、貴方がこれを選んでくれたのがじんわりと嬉しかった。 #バー:アマラント (63) 2023/09/29(Fri) 7:54:29 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-173 流石に歩くのがつらくなってきた散歩の最中。 中庭のベンチにでも座ろうかと視線を投げれば、何故か見知った男がベンチに寝ている。 「……いや、なんで?」 浮かんだ疑問は言葉になって呟かれ、きょとん、と小首を傾げた。 あの日のようなあどけなさのある寝顔は、何も警戒してないようにも見える。 部屋やホテルとは違うのに、なんとも無用心だ。 「誰かの見舞いにでも来たのかな……」 あの強制的な逮捕の裏で拷問などもあったらしいから、怪我人もきっと多いだろう。 部下を沢山もつマフィアは大変だな、なんて思いながら、連なる隣のベンチに腰を下ろした。 そろりと、動く方の左手を伸ばして。 柔らかな髪に触れてみる。 いつも気持ちよさそうに眠るから、起きないだろうなんて思いながら、その頭をゆっくり撫でて表情を緩めた。 暫く休憩したら、そっと立ち去ろうと思いながら。 (-174) 2023/09/29(Fri) 8:38:24 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ暫く、まともに声を出すことすら叶わないだろう。 身を丸めて、痛みを逃すのに精一杯で。 転がった注射器を拾う手を、止めることは出来なかった。 中身は空であるし、仮に女の体を調べたところで元の液体を持ち歩いているわけでない。それが何であるかまではここではわからないだろうが。 「……どう、かしら…使ったか、どうかくらい……見れば、わかるでしょ」 時間稼ぎにもなるか怪しい返答だ。 使用されていること自体は明白だから、否定する意味もない。 痛みを堪えながら、片手を身につけておきあがろうとしている。 もう片方の手は腹にあてて。ぐ、と力を入れる。 動きは緩慢で、簡単に妨害できてしまうだろう。 (-175) 2023/09/29(Fri) 8:45:36 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-174 「ん」 ぱちくり、と、少しだけ時間をかけて瞼を開くと視線だけ隣のベンチに座る貴方へと向ける。 そのまま戻して、つまり結局微動だにせず口を開いた。 「なんで撃たれてるんだお前」 調べたらすぐに分からなくもなかったことを敢えて見ずにやってきた。 貴方が今何処にいてどうなっているかだけを男は知ってきたのだから。 (-176) 2023/09/29(Fri) 8:46:08 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-176 「うわ、起きた」 少し驚いたものだから、呻くような言葉が、思わず口をついてでてしまった。 「ごめん、気持ちよさそうに眠ってたからつい……」 「あー……えっと……」 あの騒動を引き起こしたのは、何もあなたのためだけではなかった。 まさかギリギリになってあなたまで捕まると思っていなかったし、自分に出来ることを友との約束を果たすためにやったことで。 彼らを釈放させるためにやったことで。 でも……、あなたが捕まったことでその必死さに拍車がかかったことまた、事実で。 騒動のことくらい情報通のあなたなら知ってそうなことなのにと、言い倦ねて、それからぽつり。 「…………代理逮捕の時の騒動の首謀者だったから…………かな……」 事実、あの時僕が死ねば、証拠を持つ問題で自体はややこしくなってたはずだ。 とはいえ、まさかあんな所にノッテのボスが潜んでいて援護射撃をしてくれるなどとは思ってもなかったのだが。 ともあれ、あなたとの約束を破って危険な行動にでたことは確かなので、申し訳無さそうに眉を下げた。 (-177) 2023/09/29(Fri) 8:57:19 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオまるでその様は大型犬のようだったかもしれない。 貴方が仮面をかぶる手を少し緩めたのが見えたら ようやっと、手は離して。 「俺が見舞い品を強請る為にわざわざ引き止める がめつい男に見えるか?」 可笑しそうに笑いながら、けれどとても嬉しそうなのだった。 「ずっと会いたかったんだ。 一人にしちまったし、手が届かない場所に居るのって こんなに不安なんだなって初めて思った。」 自分が受けた時点で 拷問を貴方が受ける事自体は想定内だった。 だけど、離れている以上 知らない間に何処か遠くへ行ってしまう可能性を ほんのちょっぴりだけ考えると心配で。 会いたかったし、こうして会いに来てくれて 本当に心の底から安堵したし、嬉しかったのだ。 「リヴィが生きててくれて良かった。 終わったな、俺たちの“仕事”。」 本音を言えば、拷問を受けている間、牢に居る間は 酷く心細くて、気を張り詰めていて。 貴方の前でくらい、抜いても良いだろうか、と思うけれど。 つい、兄貴面をしてしまいそうになるのは、性だろう。 (-178) 2023/09/29(Fri) 9:25:48 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ>>61 ルチアーノ その距離は普段なら恐れを抱くものであったのに。 声を望んだ今はどんなものより安堵を渡してくれた。 たったそれだけでよかった、一人で呟くよりもずっと。 見つめる真っ直ぐな眼差しが差し出してくれるのは、勇気と信頼。 それがいつかの夜と重なって喉奥が詰まる心地がして。 「……うん」 貴方の手に指先を重ねて、返す。 「オレは、"大丈夫"」 そうしてようやく、揺らめいていた水面が静寂を得た。 おまじないが無くても立てる強さが在れば本当はよかった。 だけど今はそれは叶わないから、あなたの手を借りさせて。 それでもいつかの先には自分がだれかに、それを与えられる人になれるように。 [1/2] #BlackAndWhiteMovie (64) 2023/09/29(Fri) 9:28:31 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ>>61 >>64 ルチアーノ 続いた沈黙は二呼吸分。 直に貴方の指先を離した男は、一歩後退ってやっと笑えた。 「……へへ。 ありがとう、ルチアーノさん」 「すっごく助かった、どうにかなっちゃいそうだったから。 オレさ、ちゃんと答えを見つけて……言いたいことを伝えられるようになるから」 姿に気づいてこちらに駆け寄ってくるのは年嵩の女性だ。 "坊ちゃん"と呼ぶ声にひらりと左手を振って、最後に貴方へと向き直る。 「──おまじない、大事にする!」 「今度はもっと落ち着いたところで話そうね。 ……ヴィトーさんのこと、よろしくおねがいします」 もう一度だけ『ありがとう』を繰り返せば、じゃあとそのまま女性の元へと歩いて行く。 親し気に彼女へと声を掛けた男の姿は道脇に止められていた車の助手席の中へと消えて、車体もまた遠ざかっていくことだろう。 すれば今度こそ残るのは人々の賑やかな声と、時折宙を舞う鮮やかなリボンと花だけ。 其処に在った凶行など誰も知らないまま、晴天の元を白い鳩が一羽横切って行った。 [2/2] #BlackAndWhiteMovie (65) 2023/09/29(Fri) 9:30:31 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「──坊ちゃん。 ……旦那さまが夜、お帰りの後に話があると」 窓の外で流れ行く景色を見ている。 先程の光景は未だ瞼の裏に張り付いて離れはしなかったけれど。 心は、彼のお陰で幾分か落ち着きを取り戻している。 「……うん」 大丈夫……大丈夫だ。 沈黙が長く続いた車内で瞼を伏せ続ける。 口をようやく開いたのは信号待ちの時間。 ひとつを尋ねた、『かあさまはもう長くないの』。 声はない、それでも髪を優しく撫でる指先を感じた。 薄々勘付いていた現実の答えだ。 ならばこれは相応な時で、これ以上にない機なのだろう。 不思議と悲しさはなかった。 それよりも安堵が勝る。 その事実こそが何よりも苦しかった。 #SottoIlSole (66) 2023/09/29(Fri) 9:50:47 |
【独】 暗雲の陰に ニーノ一歩踏み出せずに、扉の向こうから覗き見た最初を覚えている。 初めてオレが見たそのひとはベッドの上で泣き続けていた。 傷だらけの腕が示すのは彼女がどれほどに自分を傷つけていたのか。 新たに血を滲ませようとする指先を握る彼の顔も痛みに満ちていて。 『ねえ、どこなの』 耳を打つ濡れた声は、頼る先を見失った幼子のそれによく似ていた。 #SottoIlSole (-179) 2023/09/29(Fri) 9:52:17 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「夜までは身体を休めてくださいね。 食事も食べられそうになったら、いつでも」 変わらず優しい家政婦に声を掛けて、自室へと足を踏み入れる。 まず目に入ったのは扉近くの数箱の段ボール。 何が入っているのか一瞬思い出せなくて……でも、すぐに思い出した。 置きっぱなしだったからもうダメになってしまっているかもしれない、たくさんの果物。 ……ああ、そうだったな、そういえば。 怒りも憎しみもやはり湧かなかった。 あるとするなら上手く騙してくれたことへの感心と。 最後、取り繕えなかった綻びへの好意だろうか。 やさしいひとだって、今でも思っているんだ。 ……ぽすり。 誘われるように重たい身体を寝台に載せれば、毎夜目を通した本が其処に在った。 手に取り頁を捲れば幼い子供の字が書き綴られている。 うとうとと落ちていく瞼が最後読めたのは幾度も辿った一文。 『 おとなになったら、けいさつかんになる!!! 』#SottoIlSole (67) 2023/09/29(Fri) 9:53:24 |
【独】 暗雲の陰に ニーノ学など無い子どもだったから、まず必死に文字を覚えた。 全ての遅れを取り戻すように寝る間も惜しんでペンを握った。 学校で話す友人はその場だけの付き合い。 遊びに誘われてもごめんねと答えて帰る。 そうまでしないと到底、 この頭では『夢』に追いつけそうになかったのだ。 あの頃を思えばなぜか、 社会に出てからの方が幾分も余裕のある生活で。 だからこそ、ずっと、ずっと。 道がぱたりと途切れたような感覚が、怖かったんだ。 #SottoIlSole (-180) 2023/09/29(Fri) 9:54:12 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ──名を呼ばれて目を覚ます。 気付けば外はどっぷりと暮れて暗闇に満ちていた。 起こしてくれた家政婦の顔は晴れたものではなくて。 彼が帰ってきたことを知り、立ち上がる。 部屋を出て向かうのは居間。 普段通りの整ったスーツ姿で、その人はソファに腰掛けていた。 右手に巻かれた包帯に視線が寄せられたのは一瞬だけ。 後は、テーブルに載せた一枚の紙を見つめていて。 「……逮捕は誤認に近かったそうだが。 お前がマフィアと関わりを持っていたのは、事実だな」 固い声、感情の読めない色。 目を細め、「はい」とひとつだけを返す。 これほどの騒ぎとなり彼が知らない筈がなく、だから予感は当たったのだ。 「なら、言いたいことは分かるだろう」 この人にとってどうしたって許容できないもの。 そのラインをオレは知らず飛び越えていた。 ならばこれは、当然の帰結だ。 #SottoIlSole (68) 2023/09/29(Fri) 9:55:07 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ (69) 2023/09/29(Fri) 9:56:45 |
【独】 暗雲の陰に ニーノ一目見てオレを引き取りたいと伝えた男の人の後ろを歩いて行く。 遠ざかる養育院での思い出に後ろ髪を引かれながら、彼を見上げていた。 『これからはニーノと名乗ってくれ』 感情の良く見えない横顔だった。 何を考えているのか知りたいのに、わからない。 『……死んだ息子の名だ』 わからなくて、わからない間に、困惑した。 『彼女の前だけでいい』 『代わりをしてほしい』 ……急にそんなこと言われてもな。 見たこともない誰かの代わりだなんて、気乗りはしない。 返事はできず、一度足を止めてしまう。 彼も足を止めて振り返る、やはりその眉はぴくりとも動かないまま。 それでもふと落とした視線の先に、強く握り込まれた拳が在った。 『…………これ以上は、もう』 震えたそれは表情よりもよっぽど、彼の感情を示しているようで。 オレはしばらく視線を注ぎ、もう一度歩き始めた。 #SottoIlSole (-181) 2023/09/29(Fri) 9:57:43 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ……拾い上げる。 訓練で幾度か触ったそれは、最後まで人に放つことは無かった。 先輩に幾度か教わった撃ち方を思い出しながら左手に持つ。 利き手じゃないからブレそうだな。 ねえさんはどんな気持ちで、これを握っていたのだろう。 見つめて、見つめて、見つめて──その銃口を。 目の前の彼へと、向けた。 「────」 感情の良く見えない横顔だった。 何を考えているのか知りたいのに、わからない。 それでも彼が眉を動かすこともなく、静かに瞼を伏せた現実を見て。 「…………あはは」 ……笑えてしまった。 ああもう、ずっとそうなんだ。 いつも、いつも。 #SottoIlSole (70) 2023/09/29(Fri) 9:58:47 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「……恨んでほしいなら」 「もっと、うまくやれよなぁ」 手は落ちる。 懐へとその重みを仕舞う。 『ねえ、かあさまに会わせてよ』 『それでおしまいにするから』 オレは笑って伝えられただろうか。 返る声はなく、彼は小さく頷いただけだった。 #SottoIlSole (71) 2023/09/29(Fri) 9:59:32 |
【独】 暗雲の陰に ニーノ『──ニーノ!』 花が咲いた、と。声を聞いて思ったのは初めてだった。 強く抱きしめてくれる腕は不思議とこわくはなくて。 『あぁ、おかえりなさい』 『心配してたの、ずぅっと待ってた……』 知らない誰かの名前で呼ばれて。 知らない誰かの帰りが喜ばれる。 困惑、動揺、ちがうのだと言いかけた刹那……けれど。 覗き込んだ表情は心底うれしそうに綻んでいた。 それがまるでようやく縋る場所を見つけた小さな己と重なった。 この世の掃き溜めの隅でも、絶え間ない愛情が降り注いだ理由。 だいすきな姉を置き去りに、陽光の元に己だけが拾われた理由。 それらの全てがもし、 この奇跡のような偶然に繋がるために在ったのなら。 『……ただいま』 声は自然零れ落ちる。 そのときから死んだ彼の生は引き延ばされ。 オレの人生はそこで止まっていた。 #SottoIlSole (-182) 2023/09/29(Fri) 10:01:38 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ寝台の上で眠る、随分とやせ細ったその人の頬を撫でて囁いた、「かあさま」。 薄らと開いた瞳はオレとよく似た色をしていて、この姿を視界に入れた途端にほらまた、花が咲く。 「……ニーノ、ずっといなかったきがするの」 「そんなことない、かあさまが寝てただけ」 嘘を吐くことに胸は痛まず、騙すことに罪悪感も無い。 「ニーノ、手はどうしたの」 「転んで怪我をしただけ、大袈裟だよね」 願うのはどうか、彼女がまた迷い路に落ちてしまいませんように。 「そう……、…………ねえ、ニーノ」 「……うん」 「…………ニーノ」 「なぁに」 ただ名を呼ぶだけで体力を消耗し、また落ちかける瞼に微笑んでみせた。 この世はきっと、残酷でやさしい嘘に満ちている。 信じるには時に辛く、眼を塞ぎたくなる現実が其処にある。 だとしてこの身に手渡された祈りに偽りはなかったんだろう。 ──オレが、この人の幸せを願うように。 閉じ切った瞳、冷えた額へと唇を寄せた。 #SottoIlSole (72) 2023/09/29(Fri) 10:03:01 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「……良い夢を」 「愛してる」 ──彼女の前で一番の本当を告げ、寝顔をしばらく眺めた後に部屋を出る。 自室へと戻って、着替えて、荷物を纏めて、居間を覗く。 彼の姿はもう其処には無くて、最後の挨拶なんて一言もないまま。 ならばと出て行こうとする背を呼び止めたのは家政婦で、差し出されたのは一枚のカード。 全部がへたくそな人だなと、やっぱり笑ってしまった。 軽くなった身体で夜の道を歩いた。 ひとり、星空を眺めていれば先のない孤独を見たような気がした。 だから『大丈夫』をまた形にする、それだけで不安が溶けていく。 向かう場所はどこにしようか。 ……そうだな、今日はとりあえず。 #SottoIlSole (73) 2023/09/29(Fri) 10:03:59 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ──みゃぁ、白い子猫が鳴いて擦り寄った。 「……んぁ〜なあに。 新入りに挨拶しにきてくれた? そうだよお揃い、住所不定無職の名無し……ああいや、名前はあるな」 「今日はミルクはないぞ〜。 朝になったら買いに行ってもいいけどさ」 深夜、誰も居ない公園の原っぱに寝転んでいたらすりとちいさなぬくもりに擦り寄られる。 頬を左手で撫でてやりながら、あたたかな存在に知らず目が細まった。 「これからどうしようかな。 死人が歩いてちゃだめだよなあ、街は出ないと……」 それでもそうする前にやることはある。 解は見つかった、誰に、何を言いたいのかも。 けれどこの夜が明けるまではここで一人、空を見上げて居よう。 ようやくに訪れた彼の死を悼もう。 言葉を交わしたことのない、知らない誰か。 オレに今日までを与えてくれた、陽だまりの子ども。 #SottoIlSole (74) 2023/09/29(Fri) 10:05:07 |
【人】 夜明の先へ ニーノ「……おやすみ、ニーノ」 上手にらしくあれただろうか。 彼女が望むただ一つの太陽に。 陽は何れ落ちる。 夜は必ず訪れる。 されどまた、輝きは昇るだろうから。 その時は違い無く、己自身の光で誰かを照らせますように。 #SottoIlSole (75) 2023/09/29(Fri) 10:06:07 |
【妖】 新芽 テオドロ>>-110 「いいじゃないですか」「俺がいるんだから」 それだけでこの部屋には価値ができる。 あんたが訪れる。誰かが遊びにくる。それを自覚した者の言葉。 この家には沢山の捨てられなかったものがある。 良いも悪いもない過去の思い出、漠然と受け取った賞状に、 頭にあるのに読み返してばかりいた書物たち。 これからの自分に必要ないものは多く、 きっと新しく増えるものもまた、多いのだろう。 「本調子じゃありませんし、 適切な仕事の割り振りが行われている為か、 案外忙殺されているという訳ではないな」 「俺がこうなる前に働き詰めでいた甲斐もあっただろう」 表情や視線に対しても全く悪びれずに言う。 ただ代償を支払っているだけのこと、罪悪感に苛まれるつもりは毛頭ない。 「失礼なのはお互い様でしょうが、全く。 暑くないとは言わないが、こっちの方がマシですね」 少なくとも、剥き身で見せるよりかは。 ($0) 2023/09/29(Fri) 10:27:14 |
【人】 夜明の先へ ニーノ……ぼんやりと夜空を眺めて過ごした夜。 空が白んできた頃にようやく身体を起こした。 本当に仲間だと思ったのか懐かれてしまった子猫を、……悩んでとりあえず抱えて。 さて、しばらくはどうしようか。 『ニーノ』が死ぬとなればスマートフォンは置いてきてしまった。 手持ちにあるのは幾らかの現金と、少しの着替えと、それから入っている金額を聞いたときに耳を疑って笑ったキャッシュカードだけ。 他にはなんにもない、けれど小さなころよりはずっとましだ。 金があれば大体はなんとかなる、誰かも言ってた。 あまり顔を見られないようにとパーカーのフードを深く被り、ついでに黒いマスクもしておく。 不審者っぽいかな?合ってるからいいか……。 会いたい人にはこの足で。 場所がわからないなら連絡先だけメモをした紙はあるから。 「……行くか」 返事をしてくれるみたいに、子猫が腕の中でまた鳴いたのでひとり笑った。 (76) 2023/09/29(Fri) 10:50:22 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ──早朝も早朝。 貴方のスマートフォンに着信が一件入る。 表示される名前は非通知、或いは『公衆電話』。 怪しいそれにあなたがもし出てくれるのなら。 『……あ、ろーにい?』 『…………ですか?あってる?』 聞き慣れた声が届くだろうか。 (=0) 2023/09/29(Fri) 10:51:08 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-158 あんたが正直者で助かりましたよ、と苦笑した。 無事ならば何でもいい、……なんて思考は、少々雑だろうか。 「やっぱあの騒ぎはあんたか。 ……その言い方だと逃げられました?」 後でやり返しに来やしないだろうか、なんて思うのは その相手を知らないからだろう。 ──事実、知ったところでその相手についての事はあまりよく知らないのだが。 貴方の気分が悪くなっている理由も知らずに、別ベクトルの心配が始まっている。 「座席の下の引き出しになんか入ってなかったけ…… パーカー畳んで入れてたはずなんで使っていいですよ。 サイズも合うでしょ、きっと」 どこへ行くにもその格好じゃまずいだろうと考えて、そう言えば非常用に一つ上着を用意していたことを思い出す。 汚れたタオルはそこら辺に放っておいてもいい事を伝えながら、エンジンボタンを押してシートベルトを締めた。 「じゃあ見に行きましょう。泳ぎやしませんよ、寒い」 「人も建物も視界に入らない方が思考もスッキリするんじゃないですかね〜。多分ですけど」 自分も海を見たい気分だったし丁度いい。 ハンドルを切り、車を発進させる。 あんまり揺らしちゃ気の毒だとスピードはいつもより少しだけ抑えられていた。 #ReFantasma (-183) 2023/09/29(Fri) 11:31:43 |
【鳴】 corposant ロメオ「……ん”ぁ」「ぁに……何?」 早朝のコール音。 寝起きは良からずとも無理やり起きる事には慣れている。 また何か誰かの手伝いの依頼だろうか……とベッドサイドに置いたスマートフォンを手に取り画面を見れば、なかなか見ない表示がそこにあった。 訝しむ一瞬で受話ボタンを押すのが遅れたが、無視するわけにもいかないと通話に応じ、 「あいもしもし…… あ? 」「フレッド!? 何お前ムショ出てたの!?」 ……無事に一気に目が覚めた。 寝転がったまま電話に出たのに、 飛び起きたみたいに上体を起こす。 思わず問う声は早朝に出すにはやや大きかった。 (=1) 2023/09/29(Fri) 11:46:01 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ>>-183 「逃げられたんじゃねえ、逃がしてやったんだよ。 またいつか来るからその時は殺してやる」 まるでその日を楽しみにするような態とらしく穏やかな声で殺意を述べる。 ここまで誰かに執着しているのも少ない、他には黒眼鏡ぐらいだったろうか。 別れの日が来てほしいなど思っていない、それでも嫌いなのだ。 「そうか、それは助かる。借りるぞ。 いや、…… 脱げばお前も驚くだろうからな…… 」男は何故か普段着ないタートルネックを着ている。 上着の血飛沫が付いた部分を内側に畳み込みタオルも添えて座席に放れば引き出しをあさりにかかる。 少し大きめか丁度いいそれを手に取れば自分のシャツの血が固まるのを待つことにした。べた、あと少し。 「カナヅチじゃないが俺が夏の浜辺に行くとモテてしまうからなあ、海に泳ぎにいかんのだ」 「んー……そう、だな……? 別にその辺の空き地に放っておいてくれても良かったがな」 その様子だと付き合ってくれるんだな、となんともなしに。 時間があったから来てくれたのだろうが。自分は貴方に頼み事をするのが苦手であるので少し助かった。 こんな時ぐらい少しぐらい素直になれたら良かったが、電話をするので精一杯だった。 #ReFantasma (-184) 2023/09/29(Fri) 12:00:06 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → リヴィオ手を弄られている様子を見て小さく笑い声を零す。 自分が訪れた時には既に目の前の貴方は魘されていて地面には既に血が滲んでいた。 さて無理やり起こしてもよかったが、体力が弱ってる友人を眠らせてやりたかったこともあり怪我を減らす方向に動いたのだ。 結果は、まあ今このようになっているのだが。 「ん? 後輩たち……あー。どれぐらいの数かね。 それぞれ連れが居たから見送ったり、案内したり。 俺が話聞いて病院に投げ込んだり、……ほぼ全員無事だ」 少し思い出すように目を伏せてからいくつか名前を告げてやる、男の名前は忘れがちだった。 そして大体が出ていったから貴方を迎えに来たのだとも重ねて。 ほぼ、というのは確認できていない人間もいるということだがこの状況なら仕方ないだろう。 「いつもの夢っていうにしたらハードすぎるだろそれ。 なんだ、こどもの頃の夢かあ? 随分嫌なことをいう親だな。 今も言ってるなら侮辱罪か名誉棄損で訴えてやったらどうだ? 町の宝がそんな謂れのない批判を受ける方がおかしいだろう」 「存在否定なんてもの、個人の私怨以外、なんも正当性はないんだからな」 お可哀想に、同情もしていないようなわざとらしい言い方をすれば貴方の頭を撫でまわしてくる。 嫌だったなー。と笑って髪を乱せば貴方が眠らないように時々こめかみの近くを押してやったりなどした。 (-185) 2023/09/29(Fri) 12:20:48 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-184 「え。なんすかそれ。いいな」 へー、と面白い物を見せてもらった子供みたいに弾んだ声を出した。 そんな人が居るんだとも思ったし、 それってちょっといいなとも思った。 絶対殺したい人、オレにはいないしなあ。 『脱げば驚く』の言葉に見せられない何かがあるんだな、と雑な察し方をして「そか……」と口を少し曲げてこれまた雑な返事をした。 「あ。モテてる人の台詞だあ。色男は大変すね」 「……え? やですけど……オレそこまで薄情じゃないんで」 「愚痴でもなんでも付き合いますよ。 どーせ今日は暇だったんす」 海が近くなれば運転席の窓を開ける。 こうやって潮風を浴びるのが好きだった。 青空の下であればどこまでも青い風景だったんだろうけど、 海は素直なものだから空の色をそのまま映している。 「あんたと話もしたかったし。何話すんだって感じですけど」 ハハ、といつもの調子で笑った。 あれからもロメオは変わっていなかった。 昔から起こった事を引きずらない方だった。 感情の振れ幅は一定で、今回もどうやらそうらしい。 #ReFantasma (-186) 2023/09/29(Fri) 12:21:34 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ深く息をする。心拍を落ち着けようと試みる。 早く鳴るのは身体を動かしたからでもあった。刷り込まれた暴力、肌に感じる肉の感触でアドレナリンが分泌される。それから、やはり、怒り。 好んで従う者をこき下ろされたことへの怒りだ。瞳の温度がかっと上がった。 「くそ野郎はどっちだ」 「随分口汚くなりましたね」 貴方の言葉を男は一向に受け入れない。悪人の愚弄に乗らない。犯罪者の口車に乗らない。そんなものでは動揺しない。だって、法に従っているのはこちらだ。 言葉と共にゆるやかに落ちた視線が貴方の背後を浚う。机の位置を確認してそれを使おうとした思考は、きっと隙になった。 力を込めていなければガードにはならない。 攻撃後に緩めていた腕が蹴りを食らってそのまましなる。身体から離れていた分遠心力は強く、後ろ向きの動きに前進気勢を僅か削がれる。 舌打ち。また舌打ちだ。ガラの悪いのはこちらも同じ。徐々に苛立ちは募る。 どうすれば止まるだろうか。 あの口もうるさいな。 テーブルの縁の部分。あそこに叩きつければ止まるだろうか。思考と共にまた足を払いにかかった。 (-187) 2023/09/29(Fri) 12:44:55 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ「昼に歩いたら目立つね、目立つよ。 でもオレが言いたいのはそうじゃなくてぇ〜……」 鉄格子越しに面会をしたときより、貴方の口振りは普段通りだった。 それでもそんな姿でこんな時間に歩いていることを思えば、だ。 「……どう見たって重体なんだから。 ちゃんと寝ていた方がいいってこと」 じっとするのを苦痛に思う何かがあるとは察せられた。 もう一度突いて唇を尖らせてみたが、ぱ、と話せば溜息ひとつ。 そうしてフードを取り去って笑う。 「会えたからうれしいけれどね。 昼空の下だったらもっとうれしかったけれど」 「オレ、警察官やめたんです。そういうのって聞いてるのかな……。 だからせんぱいにもどうやって会おうかって考えてたところ。 まだ散歩は続けるつもりですか?」 ニーノ・サヴィアは死んだことになったから、実際に署で伝えられるのは訃報だが。 やめたのはやめたで事実だから、口調が砕けているのもそのせいだった。貴方も気にしないのだろうなと甘えて。 多分Uターンさせるべきなんだろうが、Uターンしたくなくてここにいるのだろうなと思う。 なら最後の問いは"話す時間がありますか"と同義だ、肯定が返るのなら場所を変えようと思って。 (-188) 2023/09/29(Fri) 12:49:47 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ『声でけえ〜』 電話口では貴方の大声に何やら笑っているらしい声。 『刑務所出たよ、ついでに家無し子になった』 『いや、今はそれいいんだ、あの、その』 『やっぱり困っちゃって……ええと……』 よくはなかったが、家が無いのは最初に戻っただけなので。 あまり深刻に捉えていなかった、今の一番の問題は別。 無期限、回数無制限、いつでも言っていい。 に、甘える最初がこれなのもどうかと思うが。 『ぁの〜、…………あのさぁ……』 『……よくないとは思うんだけど……』 よくないなあと思っているから声はちいさくなる。 犯罪だよなあ、わかってるんだけど。 『………………こ、』 『…………戸籍って……お金で、買えるかな……?』 身分を証明するものがないと、何をするにしても困る。 まだはっきりと貴方の素性を聞いたわけではないけれど。 想像がついている弟は、よくない頼り方をしているところだ。 (=2) 2023/09/29(Fri) 12:52:08 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ開いて閉じかける双の眼。一部始終を見届けて、男はふんと鼻を鳴らした。 それは酷く従順な様だ。 そうして男にとってはつまらない様だった。 ぐん。既に傷んだ腕を強く引く。折れた箇所が更に引きちぎられて周囲さえも傷つけただろうが、そんなこと男にとってはどうでもいいことだった。 抵抗しない貴方を引きずり上げるように椅子に座らせようとする。一度。二度。貴方がそれでもずり落ちるなら、ようやく諦めて手を離すだろう。それだって当然丁寧なものではないから、貴方は力の入らない腕を床に叩きつけることになるはずで。 その痛みに悶えている間に。 男は何かを取りに壁際に寄った。金属製のものが仕切り板に擦れる軽い音。顔を上げても背に隠れて見えないが────さて。器具を使う拷問と言えば、最もわかりやすいものがひとつ、脳裏を過ったかもしれない。 (-189) 2023/09/29(Fri) 13:02:06 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ肘の辺り目掛けてふるった。注射器を掴んだ手だった。立ち上がる仕草を妨害する。 というよりは、嬲りに偏ったような動作だ。 当たり所が悪ければ関節が非可動域に曲がり込んだかもしれない。或いは、使用済みの注射器の針が刺さったかもしれない。単にバランスを崩して、再び地面に顔から叩きつけられただけだったかもしれない。 血液の匂いはここにない。 ここにいるのは血に飢えた狂犬ではない。 「人を殺しておいてその態度か?」 「心が痛まないのか? これだからノッテってのは嫌なんだ。」 決めつけ。マフィアとはそういう生き物だ。 しかし今回はひとつだけ当たっている。貴方が人を殺したということ。 「黒眼鏡の命令か?」 問いながら自分の携帯を取り出す。 逃げない内に応援の要請。それから被害者の捜索が急務だ。相手をねじ伏せて少し落ち着いた頭は冷静な判断をしようとし、しかしそれは隙にもなる。 (-190) 2023/09/29(Fri) 13:19:31 |
【人】 路地の花 フィオレ>>56 ロメオ 「涙は安売りしてやらないんだから」 少しの間そうしていれば、調子も戻ってきたのか軽口も飛び出して。 あなたの胸から顔を離せば、笑みを浮かべるくらいの余裕もあるようだった。 「やってやったんだから。私」 「ね、何でもしてくれるなら」 「何か美味しいものでも買って帰りましょ、あの部屋でお疲れ様会したいわ」 みんなも早く落ち着いたらいいんだけどね。 解放されたばかりであれば、なかなかそうもいかないだろうけれど。 #BlackAndWhiteMovie (77) 2023/09/29(Fri) 14:13:14 |
【妖】 路地の花 フィオレ「どこからそんな自信が出てくるんだか」 なんて呆れたように言いながら。顔は穏やかな笑みを浮かべて。 あとで整理するものがあれば手伝いくらいはするわよ、と続けて。 あなたが部屋のものにあまり触れられたくなければ、1人の時に任せるだろうが。 「意外と余裕…があるわけじゃ、ないんでしょうね。動ける人はとんでもなく忙しくしてそうだもの」 テーブルにグラスも並べて。 なんでも良さそうだったから、白ワインを注ぐ。辛口で食事向き。 「私はこう見えて気遣い屋さんだけど」 「そう。まあ無理に見せてとは言わないわよ、その手に関してはね」 他はまあ、追々。 とりあえずは食事が先決だ。 「乾杯でもする?」 ($1) 2023/09/29(Fri) 14:20:27 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「いいわけあるか。……あー。 五年前俺が馬鹿みたいに落ち込んでた奴だよ! 別れの言葉は、あびやんて……だったか? 何語だ……何処にいた……また来なかったら許さん」 雑に叫んでやった、自分を置いていった上司が目の前にいたからぶっ殺してやろうと思ったと。 でも逃がしてやったと言うことはそれなりに情と殺意が入り混じっているということで。 ファミリーでは見かけたら殺していいとは言われているが故にこそこにきまりは悪く。 殺し切れた方が絶対良かったのだ。いつまでも自分は甘ったれである。 「あとは肌が焼けるのも嫌だ、結局疲れるから海水浴自体は好かん」 「……? 薄情も何も。何処かに運んで置いておくのは十分仕事してるだろ」 「愚痴なんてものもなあ……、愚痴なんて……。 言語化するほどあいつらを殺したくてたまらなくなるからいいもんじゃない」 「殺したくないんじゃないぞ、あいつらがの逃げ足が早すぎるからチャンスが掴めんのだ」 雲が泣きそうな天気だった。 あれから数時間経った今、相変わらずの重たい灰色は緩やかに流れていく。 「俺と話したい? 本当になんでまた。 お前はそんなやつじゃないだろう。 ……この間の文句でも言いたいのかあ?」 文句の一つでもあったほうが救われたかもしれない。 そんな事は言ってやらないが、貴方が変わっていないことを確かめるためにあえて話題に出した。 #ReFantasma (-191) 2023/09/29(Fri) 14:26:07 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「少なくとも俺はくそ野郎に成り下がった覚えはねえな。 それと、この口は元からだ。」 元々口が良い方ではない。 警察官だからある程度の体裁で、直しているだけで。 だから此方が、この男の素であり 今まで隠してきた、獣の部分なのだ。 男は犬は犬でも、狂った狼だ。 例え貴方が法の下で、男と同じ法の執行を目指していても それが従うべきものでないと判断すれば。 容赦なく噛み付き、食い殺す事を厭わない。 蹴った後の体勢を戻していれば 足払いが飛んできて、避けることは適わないだろう。 けれど足を払われながら 体勢だけは崩しきらないように体を捻る。 貴方の次の一撃に対応出来るように。 (-192) 2023/09/29(Fri) 16:28:42 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-177 「……なんだ、そのまま撫でて居ろ、聞いている」 どうしてそんなに言いよどむのだろうかと疑っていたが 貴方の思惑を聞き取れば、と納得するように相槌をうった。 やっぱりお前は馬鹿だと小さな声で呟いた。 「そうか」 「もうお前は信用しないと決めたから気にするな。 ……勘違いするなよ、嫌いになったわけじゃない」 「お前は安心ができん。心配もかける常識も時々外れている。 もうまともな人間だと思わないことにした。 これまでは一人でやっていける立派な大人だと信じていたんだが、……思い違いだったなあ?」 何も気にしていなかったわけじゃあない。 何も思っていなかったわけじゃない。 いつだって頼られれば答えたし貴方の心配ばかりし続けていた、会うたびに面倒は見ていたつもりで。 それでも足りなかったんだなと改めて知る。何にも知ろうとしてこなかったのだと。 「……もう、一度お前のことは 洗いざらい調べようと思う 。だがその面倒くさい程開かん口はどうしようもならんから、 何か疚しいと思っていることがあったらバレ早めに言えよ。 言わなかった事一つある度に、お前の事嫌いになるから」 何とも子供らしい言い方で貴方をとがめた。 調べようと思う、という言い方に何処までの意味が含まれているか貴方にわかるとは思っていない。 (-193) 2023/09/29(Fri) 16:49:19 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 月桂樹の花 ニコロ「俺はほぼ無傷だなあ……。 ……一番きつかったのは幼馴染からの言葉だった」 牢屋の生活はむしろ快適に過ごしていた、何処でも寝られる男はそういうが。 やはり時々出てくる幼馴染に世話を焼いているらしい。 そういいながら話す様子は穏やかで嫌がっている様子は見せていない。 「素直でよろしい、それじゃあ車に運んで適当な病院にぶち込んでやる。 んあ? なんだ俺がくる理由なんて簡単だ。 確認だよ、お前がどれぐらい無事かの。それですることを考えていたんだ」 「無理だと判断したからはっきり言ってやる。 リヴィオが俺が持っていくからな。 貰っていくじゃあない、この様子のお前じゃ連れていけないと判断した。 あいつも怪我をしているらしいから医者に掛からせる、会うなら後にしろ。 大分死にそうな感じがするのでな、少々世話を焼いてくる。 これぐらいは許せよ、俺たちは友達なんでね」 (-194) 2023/09/29(Fri) 17:04:44 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-193 「べ、つに。 今はもう何も隠してないよ……入院したこと言わなかったのは悪いと思ってるけど……」 これは間違いなく、この人は自分に会いに来たのだと思った。 たまたまなんて反応ではなかったから、きっと、その情報網の広さでここに居ることを知ったのだろう。 でもそれなら、どうしてこんな所で寝ていたんだろう? 病室に来てくれたらいいのに、僕がここに散歩に来なければいつまでここに居たのかと、ちょっと心配になった。 そのままと言われたので左手でそのまま柔らかな髪を梳くように撫でながら、浮かべる表情は困惑した表情だ。 「代理を引きずり降ろそうとした結果、肩を撃たれましたとか、格好付かないし……」 「あ、洗いざらいって……あ、ねぇ……でもそれなら」 「キミになら何知られたって良いし聞かれたら答えるけど……それなら、僕にも教えてよ」 「キミのこと」 駄目かな? と、あなたの顔を覗き込んで問う。 僕は多分、知らないことがたくさんあるんだ。 今まで知ろうとしてこなかったマフィアの話とか。 幼い頃何を考えてたのかとか。 色々だ。 (-195) 2023/09/29(Fri) 17:15:41 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、う…、!」 注射器の針を避けるような動きをしたばかりに、下手にその拳を受け止める形になる。ゴキ、と嫌な音がしたのち。ぶらんと力が抜けたように垂れ下がる。 全身の痛みに、意識が持っていかれそうで。 気力でもって、なんとか耐えている形。 まだ、立っている。 「っ、…はぁ……先に、不義理を働いたのは…彼の方、よ」 口の中の異物を胃液と唾液に混ぜて、地の吐瀉物へ垂らすように吐き出し。 息を整える。痛みに意識を向けないように。 「違うわ。私の、独断よ」 たまたま火遊びの相手が、ファミリーに害を生した男だったというだけ。 ここに誰の命令も介在しない。この殺しだけは、自分だけの責任だ。 話していれば、あなたが携帯を取り出したものだから。勘がまずい、とでも告げたのか。 強く地面を蹴って、諸共地面に叩きつけられるよう飛びかかる。 携帯を取り落としてしまえばいい、と。不意をつく形で。 ここで捕まるわけには、いかないのだ。 (-196) 2023/09/29(Fri) 17:23:04 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-195 「……」 その心配そうな顔に答えを返してやる。 今となっては貴方の顔から疑問が読み取りやすい、本当疑う方が俺は性に合っている。 「……言わないってことがどういうことか教えてやろうと思ってなあ。 ずっと連絡を取らず、偶然お前が散歩をしなかったら、 俺は何日もここで昼寝して一生お前に会えず無駄な時間を過ごしていた。 どうしてかって? わざわざ見舞いに来たのが恥ずかしかったから。等言ってやろう。 そうして風邪を引いたとしても自業自得だな、馬鹿だろう? 馬鹿なんだよ」 お前がしたことを真似しただけだけどなあ。と鼻で笑った。 「俺が駄目だなんていったことがあるかよ」 あ。と言ってから気づく。 あの男と同じ台詞をいってしまってしかめ面をした。 本当に何もかも背中を追っていた弊害で、所作や口調が染みついてしまっていて嫌になる。 「気味が悪い……あいつなんで俺の人生に侵食してるんだ。 はあ……なんでも聞けよ。なんでも答えてやるから」 (-197) 2023/09/29(Fri) 17:29:21 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「―――」 1度2度。それから深く。深く……。 本音を言えば。永遠にこうしていたい。 薄汚れた痕を塗り潰して、 だけど……少なくとも、今はまだ、だめだ。これは、手当て。 この後に立ち向かう為の準備だから。 それでも求められる限り応え、何度だって撫でる。 だって、それだけ頑張ったんだ。少しは報われるべきだろ? 俺も一緒にさ。 やがて。強ばった声を聞けば、もう一度だけ唇で触れる。 顔を離せば、その目に僅かに迷いを乗せ、静かに目を瞑って。 開いた時には、迷いは消えていた。 (-198) 2023/09/29(Fri) 17:43:54 |
カンターミネは、口にする。「エリー、」その名前を呼ぶ時は、いつだって。 (a16) 2023/09/29(Fri) 17:44:26 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-197 「ほ、本気かい?」 本気でなかったらこんなところで寝ていない。 ここで見つけなかったら。 この後もずっと連絡をしなかったら。 ……その先はちょっと想像したくない。 「はぁ……これからは後ろめたくてもちゃんと言う。 だからこんな嫌がらせはやめてほしい」 重々しく息をついて、降参の白旗を上げた。 皮肉めいた言い方だが、流石にそれは後悔するどころではない。 あなたに風邪をひかせてまで守るプライドなんて、本当はないのだ。 「今、なに思い出したの?」 「そうだな……じゃあ、なんで子供の頃の夢はどうでもよくなったの。 おじさんとおばさんを殺した犯人をもう追わないのはどうして?」 これを知らなきゃ、僕も調べる手が止められない。 男はまだ、あなたに幸を届ける方法がわからない。 (-199) 2023/09/29(Fri) 17:45:37 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 路地の花 フィオレ>>5:-581 「ああ、いつだって俺の子猫ちゃんのおねだりは歓迎だ」 何処かの噂で聞けば、この男は部下を持つのを嫌がっている。 本当に誰かを抱えるのは苦手で、責任を取るのも面倒くさくて仕方ない。 それでも貴方だけは簡単には手放してやらないと、貴方の意志を大事にしながら共に歩かせると決めたのだ。 誰かに言われたからでもなかった、後で――誰かさんに言われてしまうが、そんな背中を押す言葉なんていらなくて。 「頼むぞー。一番が自分だからな。 俺はちゃんと、……お前が帰ってくる場所を守ってやるよ」 いつかその場所が自分自身にならなくなっても見守り続けよう。 この場所を離れたくないというのならずっと傍に置き続けよう。 貴方は自分の部下で、自分は貴方の上司だ。 血の掟などなくとも絶対の誓いをここに、そう信頼を込めて貴方の額に口づけを落とした。 (-200) 2023/09/29(Fri) 17:47:22 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-138 「あ、ごめんね。はい」 貴方の左手で自然に取れる位置まで移動して、 改めて大変そうだなと手の様子をまじまじと見つめている。 「ちょっとかわいいの買いすぎちゃったかな…… って思ってはいるのよ。……不要だったら他の子に 遠慮なく渡してくれたりしてくれていいからね」 棄ててもいい、とは、貴方は絶対しないタイプだろうから わざわざ言葉に出したりはしなかった。 「それならお土産、ブックスタンドの方がよかったかも。 今度持ってくるわね。推理小説好きって格好いいし 表紙が格好いいデザインが多いものだから、エルヴィーノの為って理由をつけて本屋で選ぶのちょっと楽しみになってきたわ。 後は最近音声で本を読む、って言うのもあるから、 あれ、試してみたらどう?お料理の最中とかに わたしはたまに聞いたりしているのよ」 (-201) 2023/09/29(Fri) 17:50:20 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「俺は現場は見てないからチームからの報告書だ。あー、 まず、ノッテファミリーのアジトでスーツケースが 爆発したらしい。中身は花火で、けが人はナシ。その直後、 ……現れたアレっさんが、突然襲撃をかけた。単独で、だ。 現場にいた5名に重軽傷を負わせた、命に別状はなし。 そして直後アジト内に仕掛けた5つの爆弾を起爆。 爆破によるけが人はないが、建物と設備が それなりに被害を受けた。当人はそのまま逃走、 下水道に逃げ込んで以後行方を晦ませている……」 傍らに置かれていた二人分の着替え、 その片方のポケットから報告書を取り出して差し出す。 「……上からの指示としては『報復』だそうだ。 その、……今回の法案の件にも関わりがあるから、ってな」 これは、あなたを案ずるように言葉を少し暈した。 「エリー。俺は、アレっさんを探すつもりでいる。 報復なんかどうでもいいが、個人的な用があるからな。 ……あのおっさん、絶対前から準備してやがったし、 しかもこれ単なる裏切りじゃねーもん絶対」 そう呟いて、一度言葉を切る。 (-202) 2023/09/29(Fri) 18:00:08 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-199 「無茶だ? いくらでもできるぞ。何なら退院するまでやってやる。 もっとも風邪なんて引かない上に途中からは仕事をしながらここで医者でも口説いてコネクションを増やしにいくさ」 無駄なことにはしたくないんでねと、肩をすくめながらよいしょと起き上がった。 この先は寝ながら話すことでもない、病院の中庭で話すことでもないが聞いている人間もいないのでいいだろう。 「今だあ? 馬鹿老害だよ、同じ事言ったんだ。 あいつも俺に目立った隠し事なんてしてなかった、聞いてれば素直に答えたんだ。 だけど……もういい。あいつはもういいお前も関わるな」 いつか黒眼鏡がこの世から居なくなった噂は広がってそして忘れられていくだろう。 実際貴方の頭にそんな記憶が残り続けるのも嫌なのだ、 本当に喪失感を味わう人間は一人でも減らした方がいい。 ▼ (-203) 2023/09/29(Fri) 18:05:46 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-199 >>-203 「どうでもいいというか……そんな暇がないのが正しい。 大学に行かなくとも俺は頭がいいからな。 それよりもやりたいことがある上に、 お前たちと遊ぶ時間が取れなくなる方が問題だった」 「あと犯人捜しだが――見つかってる。内容は言わん。 マフィアと関係ない反社組織で、そいつらはもう死んでる。 俺は両親が落ち込みも泣きもしなかったただの薄情者だ。 ただ犯人が何のために殺したのか、理由だけが知りたかった。 お前を止めなかったのは関わらせないためと、 その……調べることに意味があるかと思って。 ずっと頑張ってくれていたのに、知ってるからもういいなんて、嫌だろ……?」 「……お前が居るから別に家族が死んでも寂しくなかった。 想像しているより俺は引きずってないんだよ、それよかアジトでの毎日が慌ただしくて 辛いや悲しいなんて気分になることなんて一度もなかった。 だから――悪いな、俺は今いる場所が、本当に大好きなんだ」 例えこれからどれ程辛いことがあっても、無茶をさせられても、 怪我をしても、犯罪にかかわることをし続けても、辞めたいと願うことはないのだろう。 はっきりと貴方に意志を伝えるのはあまりなかったように思える。 「それでも俺を抜けさせたいって言うなら――それを全部奪うつもりで来るんだな。 俺の大切で守りたいものを全部奪ってまでやり通したいって言うなら受けて立つ」 全く嫌がっていない様子で、それでもそんな日が来ないで欲しいと願う気持ちで。 貴方に向けるのは、好いている人間には裏切られてもいいという絶対の信頼だ。 (-204) 2023/09/29(Fri) 18:10:15 |
【秘】 favorire アリーチェ → 口に金貨を ルチアーノ「まあ、リヴィオ先輩まで? 警察に仲良しが随分多いんですね。なんだか私だけが お会いした事がないの、少し寂しくなってきたわ」 言いながらも拗ねた素振りもなく、笑顔な事から どうやらこれは軽口の一環らしい。 「……ヴィットーレと親しい、ご友人かしら。 い、色々ご迷惑をかけてすみません。でも私からもお願いします。病院の手配とか、一般の病棟しか連絡もできないから……」 随分と気の利く男の人だ。なるほど、友人の数にも納得だ、となりつつ、病院への手配が終わると口を引き結んで、まだ痣の残る腕をさすり上げる。 「……悔しいな。こういう時、いつも。警察じゃなければ何かできたんじゃないかと悔やみそうになるの」 「……聞いてないわ。ただ、ずっと私達家族の事を 守ろうとしてくれてたのは、知ってる。 ……だから人より拷問されることになったことも」 貴方の言い回しに違和感を感じたのか、尋ねられると困ったように顔を上げる。どう思うか、法案について述べろと人に言われた事は初めてなのもあって。 「……そも、この取締法自体に私は納得していなかったと言うの前提で話すけれど……冤罪が多すぎるのよ。一番最初に捕まった巡査を覚えている?同僚だけどとても投獄される子じゃなかった。 ただ、私は……私が投獄された罪状は完全な冤罪、だけど。 ……貴方がマフィアだから答えるけど、取締法の別の罪状に値はしていたと思う。──頑張って隠して来ていたけれど、やっぱり、いつもみたいに駄目だったなぁ」 (-205) 2023/09/29(Fri) 18:10:50 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……ヴィットーレは今、結構偉い立場なんだっけ。 「もうひとつ、不思議な諜報ルートを見つけて、それで……」 ふぁい!? ──一緒に、住む!? 確かに貴方の思惑通り、傍に居られない心配は 「わ、わっ、」 なのだが、 ちょっと、今この繊細な乙女の気持ちを抱える女には 「……いっしょに、くらせるなら……」 「くらしたい、です……」 しゅしゅしゅ、と縮こまって顔を真っ赤に染めつつ。 わたしのばかばか、誠実ってどこに行ったのよ! それでも答えを変える気はないから、救いようがない。▽ (-206) 2023/09/29(Fri) 18:14:27 |
アリーチェは、両手を顔で覆ってもだもだした。 (a17) 2023/09/29(Fri) 18:14:37 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……ここから先は、聞かなくてもいい。 個人的な用を済ませる為にエリーにも来てもらいたいが。 それに際して、多分、エリーにとって 結構辛い事が起きる……と、思う。わからんけど。 俺が勝手に思ってる辛い事が、 俺が勝手に予想してる内容で、起きるかもしれんってだけ。 ……でも、多分、そうなるし、俺は……エリーを 泣かせるかもしれんが、内容も言うべきだと思ってる」 あなたにとって酷な事を伝える、とそう言っているらしい。 それでも、真っ直ぐに目は見つめたまま。 どんなに優しい嘘でも、あなたに嘘はつきたくない。 「聞きたくないなら、それを尊重する。 ここから逃げて、全部忘れたいって言うなら、 それでもいい。このまま車ぶっ飛ばして どっか別の国で生きるのもアリだ。 俺はそれについていくし、最後まで一緒にいる。 個人的な用だけ済ましたくはあるけど、 エリーが行くなって言うなら、諦めよう」 「けど、俺の話を聞いて、俺のする事を聞いて、 俺と一緒に行くって言うなら、改めて誓うよ。 俺は、お前を全部から守ってやる。 お前の心が痛い時、傍でずっと抱きしめてやる。 お前の足が折れそうな時、必ず支えて一緒に立つ。 ……どうする、エリー。」 (-207) 2023/09/29(Fri) 18:17:49 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……わかったわ。マフィアになるのは辞めて今のままに。 でもね、何があってもわたしは、 マフィアの味方でも、警察の味方でもなく」 「ヴィットーレの味方だからね」 (-208) 2023/09/29(Fri) 18:19:16 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → favorire アリーチェ「そうだなあ、……といっても男連中とばっかだぞ。 女性とはもっと運命的なところで出会いたいたちなんでね」 女性警官に殴られたのも男にとっては予想外だ。 警官をやっていたというのならもう少し慎重に扱っていた、なんて。 「あいつの店は知ってるだろ? 常連なんだよ。 いくらでも融通利かせてやる、あいつのラザニアは失っちゃあならん。 そんなあんたは恋人でもなさそうだが、仲がいいようで」 からかうわけでもないが軽口を。 貴方が彼に大切にされているとわかってしまったから。 「おっと。……家族ねえ。 ……違う家族を持ってる輩が多いなあ、あそこは」 「……マフィアってばれてるなら隠さなくていいかあ。 血の掟は結んでいないがこれでも警戒はされたく無くてなあ? ああ常連は嘘じゃないぞ、本当に店にはよく通ってる。 だけどお嬢さんの話は全く聞いたことがなかったんだ。 よっぽど大事にされてたんだなあ」 「ニーノ・サヴィアのことかあ。 あれはなあ……悪意はなかったとしか言えんなあ。 それでも悪い事であったのは確かだからいい訳は出来ん。 なんだ、お嬢さんも少しは過激なことをしてたのかい。 いいじゃないか、だったらバレないうちに早く出てしまおう。 俺とヴィットーレでその罪ぐらい隠してやる、大方俺たちの仲間も関わってるだろ? 駄目かどうかをお嬢さんが決めつけてしまわんでいい、ちょっとぐらい隠し事があってやんちゃしてる方が魅力的さ」 (-209) 2023/09/29(Fri) 18:25:48 |
【人】 corposant ロメオ>>77 フィオレ 「……ハハ。それでいい。女の涙は宝石と同じだからな」 下を向けば貴女と自然に目が合う。 口の端を吊り上げて、悪戯小僧みたいな笑い方をした。 「Ottimo lavoro!」 「美味しいもの? いーよ、何買う? つかなんでも買うか……せっかくなんだし奢ってやるよ」 運転席に戻れば、そろそろずらかるかとエンジンボタンを押す。端末には見張りの部下達の『問題無し』との報告が入っていた。そちらにも『お疲れさん』と返して、後部座席を振り返る。 「じゃあ行きますかぁ。問題無い?」 #BlackAndWhiteMovie (78) 2023/09/29(Fri) 18:46:00 |
【秘】 favorire アリーチェ → 口に金貨を ルチアーノ「う、……恋人、じゃないわ。 家族……」 貴方が女の扱いに手慣れているなら、この反応だけで 何を心苦しく思い、何故切なげな顔をしているかも 容易に読み取れはできるだろう。 「血の掟、あまり詳しくはないのだけれど、 敵対組織と仲よくしてはだめ、とかだっけ? ……ふふ、疑ってはいないわよ。贔屓にしてくれてありがとう」 大事にしてくれていたことについても、疑った事はない。 今までのうのうと警察を続けて来られたのだって、 全部彼が大事に守り通してくれたのだろうと信じている。 「……ルチアーノ、何でも知ってるのね。情報屋顔負けだわ。 わたし、貴方に会えたら諜報の極意を教えてもらうか 弟子にして貰いたいって思ってたの。……だめかしら」 だめかしら、ではない。あまりに唐突に、もしかしたら チャンスがあるとばかりに尋ねてくる女、おかしい。 「……困ったわね。少しで済むかしら…… ……ヴィットーレに関わる件でちょっと、調査をしていて。その過程で色々知ってしまっていて……。 ルチアーノに会うのもこれが初めてではあるけど、 "声"は私はお会いしたことがあったわ。私を投獄した日の指示を貴方がしていたのも、聞いている。 ……これでも魅力的ってまだ言ってくれるかしら」 心配そうに目を逸らす。まさか、それを聞いたのが不思議空間であることまでは説明しなかったが、逆にそれで貴方の会話を盗聴していました宣言になってしまう。 (-210) 2023/09/29(Fri) 19:04:19 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「あ〜……あ!? いたんすかその人!? あんだけ姿見せないで今更ひょっこり? そら……そうもなるか? なってるか……」 その話を聞いて瞼を持ち上げて驚いた。 貴方の落ち込みようを見ていた事もあるし、生きていた事にも驚いた。下っ端の自分にはなんにも知らされないばっかりで、とっくに処分されたものだと思っていたし。 お疲れさまです、とどこに向けてかもわからない労りをした。 「日焼けはオレも嫌いです。泳がねえし……。 浜辺散歩するだけで十分すよねえ」 「そんなカッコのそんな経緯の人を空き地に転がして帰るのは十分薄情でしょうが。いや……オレが心配性すぎるだけなのかもしれねえすけど?」 「怖……そんなんすっげえ恨みじゃないですか。余程すね。 じゃあチャンスがあれば殺すんだ。オレ手伝います?」 そんな事をサラっと言って、それともそんな殺してえなら帰って一人の方がいいすか? とも。 海と雲の間の、白い空を横目で眺めながら「なんでまたって」と。 「いいでしょ、逮捕されたって聞いて寂しかったんだし。 すぐに帰ってこられたからいいけどさ……」 「文句なんかないですよ。オレが心配で行ったんですから。 無理やり文句言うなら買ったティラミスが少し溶けてた事くらいじゃないですかね〜……」 「……ま、あの時よりは元気すね」 適当なスペースを見つけて、緩やかに停車する。浜辺の近くまでやってきたから、ここから歩こうと。 サイドブレーキのレバーを引いて車から降りれば、 ここまで波の音が聞こえた。 #ReFantasma (-211) 2023/09/29(Fri) 19:18:28 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → favorire アリーチェ「おや? ……まー、今は忙しい事が多い。 ちょっと込み入った関係になるんなら落ち着いた平和な時に口説いてやれえ」 「それとーそうだな、掟は警察とは仲良くしちゃならん。そんな感じのだ。 だから俺たちも今はただ迷子を案内しているだけの仲だ」 今は誰にも聞かれてないとでもいうように、そういえば少し変わった道を歩いているかもしれない。 すれ違う看守いない、遠回りでもされていただろうか。 「アレは驚いたなあ。 まさか俺に届いてると思わんかった、面白かったぞ? 悪い事だと思わんくていいし気にしてもない。 途中から聞かせてやる気だった上に、大事な部分は筆談でやっていたからな」 あっけらかんとした態度で貴方の罪は丸め込む。 そうして改めて足を止めればしっかりと向き合ってからその瞳を見つめた。 ▼ (-212) 2023/09/29(Fri) 19:25:09 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → favorire アリーチェ「というわけで、今話したことはここだけの秘密にしよう。 内緒にできるな? アリーチェ・チェステ。 女の秘密は魅力を高める、これぐらいは守ってもらおうか。 それにせっかくヴィットーレが守り切っていた宝なんだ。 これ以上自分から顔を出して奪われちゃあいつが可哀想だ。 それが守れるってんなら、弟子……弟子ぃ???? まあ……ニコロにも言われたしな。 少しぐらいは隠れ方や調べ方を教えてやっていい。 危なっかしいんだ今のお嬢さんは。 油断を減らす術を身に着けた方がいいな。迷子も直せえ。 ……あー。それで、構わないかい?」 そうやってあまり師匠ぶるのは苦手なんだがと、貴方にその手を貸すことは構わないと穏やかに告げた。 それは誰かから託されたことや、宝物である事実もあるが。 何よりも少し悪い事をした気がしてる女性の頼み事は断れない、そんな色男のちょっとした罪滅ぼしだった。 (-213) 2023/09/29(Fri) 19:25:25 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>-172 >>63 ダヴィード 「Buon appetito! 冷めない内が食べ頃ですよっ」 食事前の挨拶をして、シチューをひとさじ。 具材の旨味と甘みがふわりと広がる優しい味。 しっかりとした食事パンの食べごたえも、夕食にちょうどよく。 「Buono! …そういえば、 実は近々マスターに料理を習おうと思うんです」 「最初に習うのは、このシチューで決まりですね」 なんて笑って、シチューをもうひとさじ。 いくらか食べ進めた頃に、カクテルのグラスを傾けた。 「それはそれとして。 来年来たら、今度は一緒にお酒を飲みましょうねっ。 成人祝いはここでさせてもらってもいいのかも」 来年。あなたが18歳になれば、 ノンアルコールでないカクテルで乾杯ができる。 そんなまだ先の未来の約束も勝手にしてしまって。 残暑も過ぎて、外は徐々に涼しくなっていく頃。 バー:アマラントは今日もいつも通り。 穏やかであたたかな時間が過ぎていく。 #バー:アマラント (79) 2023/09/29(Fri) 19:26:18 |
【鳴】 corposant ロメオ「いや……デカくもなるよ、驚いてんだもん」 「家無し子ォ〜〜? お前家まで追い出されてんのかよ。 や、良くはねえだろ。なんですか」 まだ梳いていない寝起きのままの前髪をかき上げながら、 また仰向けにぼすんと寝転がる。 「……なんだよ。言えよ、何でも」 まごつく様子に、何を言い出すのか待っていれば。 「…………………」 「ああ〜〜……」 納得した。それは確かに貴方には言い辛い話だろうと。 「分籍とか就籍とか養子縁組とかそういう感じじゃない奴ね? あれクッソめんどくさい上に書類でつっかかりそうだもんなぁ……う〜〜〜〜〜ん……まあ逆にそっちの方が……」 しばしの間、そんな風に考える呟きが 通話口に垂れ流された後。 「……できるよ。よそのブローカー頼んのはやめな。 足元見られて適当な仕事されんのやだろ。 やんならオレがやるから……」 つまり質問の答えは『Yes』だった。 良くない兄も居たものだ。 (=3) 2023/09/29(Fri) 19:41:30 |
【妖】 新芽 テオドロ手伝ってもらった方がいいか。 手袋に包まれたそこを見下ろしながら、助力を受け入れて。 「恨まれていそうですね。俺じゃなくてやらかした奴らが。 きっとゆくゆくは俺の机にもデスクワークが山積みになるんでしょう、今から少々気が重くなってきますね」 にしてはあまり憂鬱そうにしていないのは、 仕事そのものを苦にしていないからか。 何かしらの世話か、警察の仕事くらいしかしてない男である。 それ故食事の用意も任せっきりにしていて、 どことなく落ち着かない様子に見えるだろう。 「無理に見せろと言ったところで、 得られるものは何にもないでしょうから、賢明です」 「……できないことはないか、乾杯くらいは」 大人しく席については、自分の手をまた見遣る。 曲げられる指はどれとどれだったかな。 ($2) 2023/09/29(Fri) 19:57:49 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-203 >>-204 「……そっち行って良い?」 あなたが起き上がってしまうと、寝転がってた分の距離が開いた。 あなたはきっと断らないだろうから、せめて同じベンチに座ろうと隣にすとんと腰を下ろした。 「黒眼鏡と何があったのか知らないけど……その口ぶりだと彼も脱獄したんだね。 明確に罪状がでてるあの二人の釈放は認められないはずだったんだけど」 まぁ、どうせそうなるだろうとは思っていた。 あの二人がそう大人しく捕まったままでいるわけがない。 二人が消えたら喪失感を覚えるのかということならば、やはり、上司の死を聞かされる方が喪失感はあるだろう。 喪失感から歪んでいった事を考えると、あなたの判断は正しいものだ。 ▼ (-214) 2023/09/29(Fri) 20:05:51 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-203 >>-204 >>-214 「えっと。つまり……」 話される言葉を噛み砕いて、理解する。 ずっと仲良しで優しい家族だったと思っていたあなたの家族は、実はそうではなかった。 そんな事すら知らなかった事が、少し恥ずかしい。 ただ、それよりも。 あなたの言葉を聞いていると、どうにもうずうずしてしまっていけない。 だって。 「……それって、全部……僕のため?」 だってそうだろう。 大学よりも、両親よりも、 自分を優先してくれてるように聞こえた。 なんなら、牢屋であんなに黒眼鏡や後輩との事に怒ったのも。 ――全部。 あぁ、本当に僕は馬鹿で愚か者だったのだ、今まで、ずっと。 「…………。もう、そんな事望まない。 キミがまた、依存してしまうようなら別だけど……大好きな場所から引き離すほど、聞き分けのない子供じゃないよ」 自分だって、今いる警察が 嫌いじゃない 。嫌いな上司は沢山いるけれど、それ以上に大事な同僚たちがいるし、守りたいものを守る事くらいは出来るのだから。 「でも……やっぱりね。 キミが誰かに捕まるくらいなら、僕が捕まえに行くつもり。 マフィアのこともちゃんと知りたいし、好きな人が好いてる人の事くらいは知りたいから……会ってもいい人くらいは紹介してね」 (-215) 2023/09/29(Fri) 20:08:15 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ>>-201 「いや、これも嬉しいよ。 キミの気持ちが籠もってるしね」 手の中のキーホルダーをみつめて、表情を緩めた。 流石に持ち歩くには可愛すぎるから、家に帰れるようになったら飾っておこうと思う。 「あぁ、ブックスタンドと本の代金は払うから頼むよ。 ここにいる間に何冊も読めてしまいそうだから、キミのおすすめも混ぜてくれて構わないし。 格好いいかはわからないけど……トリックとか先に解けたらよし!ってなるでしょ」 「音声か……イヤホンつければ確かにここでも聞けるからいいかもね」 料理は確かにやってると手が離せないから、音で聞けるのはいいのかもしれない。 なるほどね、なんて言いながら相槌を打った。 それはそれとして……。 「あれで皆外に出れたと思うけど……皆無事かな。 ここにいると、外のことが何もわからないんだ」 (-216) 2023/09/29(Fri) 20:21:05 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「凄いぞあいつ、俺も死んだと思ってた。 なんせ黒眼鏡すら見つけられなかったんだからな」 こんな風に笑い話のように話せている姿なぞ昔の自分では想像もできなくて。 細かく言えば今この瞬間まで口に出してここまでつっかえない物なのかと驚いている。 それは相手が貴方だからなのか、拳銃をぶちかました後だからかわからない。 「まあ俺は黒眼鏡もぶっ殺したいほど好きで嫌いだったが? チャンスがあれば……そうだな。 もう一度失敗したし、次はお前にも手伝ってもらうか。 俺じゃあ上手く殺せるかわからん、殺意が漏れてる人間ほどかわしやすい奴もおらんだろ」 自分でもそうかと腑に落ちるような答えだった。 執着していたのは確かだが、もう彼の意志を知った以上、その背を追うことはもうしない。 別に生死は関係なくて、はっきりと一人でどうこう思うだけの時間が終わったのだと実感した。 ▼ #ReFantasma (-217) 2023/09/29(Fri) 20:26:03 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「んで。つまり。 心配で寂しかったから今俺の愚痴を聞いてくれて その上で散歩に付き合ってくれてるってことか? ……成程お? あー」 「…………」 「 ……ティラミスはすまん 」思い出して、目元を抑えながら珍しく心の籠った謝罪をした。珍しいことだらけだ。 「そうだな、あの時より疲れてはない。 疲れてはないが……一人が嫌だったんだよ」 「……靴の中酷くなるかー?」 車から降りてパーカーを羽織る、もう血濡れたシャツは乾いて黒ずんでいて。 まあ、こんな時ぐらいはいいかと砂浜に足を踏み入れ波の音へと近づいていった。 #ReFantasma (-218) 2023/09/29(Fri) 20:27:41 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 口に金貨を ルチアーノ「ハハ、そりゃあご愁傷様だ。 傷が無いなら何よりだよ。」 ケラケラ笑いながら 体に伝わる振動でいてて、なんて言う。 「そうだな。助かる。 俺もこんな無様な成りじゃ会えねえと思ってた。 アイツのことはお前に任せるよ。」 貴方が思うより素直に、男は頷くだろうか。 自分の体の状態が分かっていて 且つ、貴方になら任せられると思ったのか。 「死にそうってのはあれか。精神的な方か。」 それでも、心配そうにする。 (-219) 2023/09/29(Fri) 20:35:34 |
【秘】 favorire アリーチェ → 口に金貨を ルチアーノ「驚かせられただけよかったと思うべきかなここは…… こっちは毎回神経をすり減らして調査していたのに、 実際されてる側にはそんなあっけらかんとされるなんて 安堵はするけど複雑な気分ではあるわね……」 足を止めればこちらも止め、顔を上げて瞳を見つめ返す。 「──勿論よ、ルチアーノ。 例えこれで魅力が下がろうとも、秘密は守るわ。 貴方の言う通り、彼に余計な心配もかけたくないし、ね」 とりあえず諜報の件はひと段落付いたか、と。 安堵の溜息を思わずふぅ、と漏らす。秘密と言う形にする事でかえって肩の荷が下りたくらいだ。 「弟子」 弟子。 「先生と生徒でも全然構わないのだけれど、…… ニコにまでよろしく頼まれてたの?…………もう」 隠せない笑顔が思わず零れてしまう。どうしてそこまでして、私の幼馴染たちは大切にしてくれるのだろうと。それに報いられる女になりたいなと改めて想い直して。 「……よく、言われるわ。危なっかしいって……そんなつもりは、無いんだけど…… わ、わかったわ!油断は減らすし、迷子にはならない! 次からはそうなるように最善を尽くすわ、だから…… 将来、恩返しできる人材にきっとなってみせるから ……改めて、よろしくお願いします」 深々と頭を下げてから、「やっぱり師匠と呼んだ方がいいかしら?」なんて本気の顔で貴方に質問もしてきた。 (-220) 2023/09/29(Fri) 20:45:50 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ『ぶんせき、しゅうせき、ようしえんぐみ……』 呟きを復唱する声は正直あんまりよくわかっていないのが伝わるだろうか。 養子縁組ぐらいはぎりぎりわかる、他はわからない。 わからないから感心していた、あ、やっぱり詳しいんだな、と。 で、『Yes』の答えが返れば表情が明るくなる。貴方には見えないものだけれど。 『ほんと!?』 『よかったあ、スマホ無くてさ〜。 新しく契約したかったんだけどそういえばなんもねえ〜と思って……』 『……あはは、ごめん。 困ったの頼り方の一番最初、こんなで。 お金はあるんだ、好きに使って』 もっと兄弟らしい可愛げのあるものだったらよかったのだが。 それでも手放しに頼りたいと思える家族がいることは幸福だと心から思う。 相変わらず包帯で固定された右手で、なんとなしに電話機を撫ぜた。 『今家?二度寝する? 顔見たいな、ろーにいが良い時間に家行きたい』 (=4) 2023/09/29(Fri) 20:48:15 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ最後に触れた唇と。呼ばれたその名前と。 多分それで本当に、心の準備は整ったのだと思う。 そうやって、ふしぎなくらい凪いでいた。 聞こえる言葉に背筋が粟立つ。 報告書の内容はすんなり頭へと入ってきた。 「そっか。」 無感動な声。 多分今まで聞いたことがないくらい冷ややかな。 それでいて、その口元だけは歪に 笑んでいる 。「……ミネ」 しずかな声で促す。 「聞かせて。」 報告書を持つ手だけが不自然に震え。 合わせて紙がぱさぱさと揺れる音。 そうしてライムグリーンを視界に入れた女は笑い直す。 笑うのは得意だ。そしてそうしなければならないときは往々にして存在している。 今みたいに。 (-221) 2023/09/29(Fri) 20:54:24 |
【影】 摘まれた花 ダニエラ…コーヒー豆の、香りがした。 ああそっか。 あの人は最初から、許してもらおうなんて思っていなかったんだ。 一番最初に腑に落ちたのはそのことだ。 ――いってらっしゃい。幼子の声。 その後数日顔を合わせることもなく母は死んだ。 …同じかもしれない。ずっと同じように時が過ぎるなんてことないって知っていたつもりだったのに。 ばかだなあ。ほんとうにばか。 (&0) 2023/09/29(Fri) 20:54:48 |
【人】 Commedia ダヴィード>>79 「へえ?ああ、じゃあ。 習ったらおれにも作ってくれませんか、ペネロペさん。 材料代も出すし片付けもしますから」 もくもくと食べ進めながら、貴方のそんな一言に反応した。 もとよりこの男は人の手がかかった料理が大好きで、外食にそこそこの給金を注ぎ込んでいる節がある。 それが貴方のお手製ならばもっと嬉しい。そんな単純さだ。 「いいなあ、それ。来年にもまたこうやって…… 俺に似合うお酒選んでくれますか?」 今回の選んでもらったカクテルは「傷に沁みないもの」という基準が大いに影響しているだろう。 それを抜きにして、18歳の自分に貴方が何を選んでくれるのかが気になった。 その時に貴方は別の顔をしているかもしれないけれど。 貴方のいつも通りに触れた、あたたかい時間。 子どもはなんだか、泣きたいくらいに嬉しかった。 (80) 2023/09/29(Fri) 21:01:15 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ「 見える 、ということにしておこうと思って。その方が帰りやすいだろう」 男の目的は既に果たされ、ここにもう用はない。 冷たいようにも見えるが、単に、 追われると逃げたくなる性質が出てしまっているだけの話。 それでも、男がここへ訪れる選択をしたのは確かだった。 「……その台詞は幼馴染に言うべきものじゃないか? それに俺は別に不安じゃなかったよ、俺はね」 本当は君が出てくるよりも前に姿を眩ませて、 それで、居なくなるつもりだったのはひとつの道で。 予定が狂ったのは君と友人の 物好き さのせいだ。同僚とはいえ、友人とも言えなかった関係で。 今回もただ、同じ立場で"仕事"をしていただけで。 それなのに、手を掴もうとする君の心が分からなかった。 そしてそれはきっと、今後も曖昧な形のままなんだろう。 だからこそやはり、どうしてだと思う心は消えない。 そんなにも誰かを思える人間は、 その人を思える誰かと幸せになるべきだと考えているからこそ。 「…本当に君は、まんまとやられてしまったものだ」 「………あぁ、だけど。お疲れ様と返しておこうか。 "運命共同体"ってのもこれで終わりだね」 (-222) 2023/09/29(Fri) 21:02:11 |
【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ手を掴み、摘むのはその存在を確かめるため。 確かにここにいるのだと、 夢ではないのだと、感じたかったからだ。 「そうか。…うん、なら……良かった」 後輩の話を聞けば安堵の息を吐き出して、 まずはダニエラ、そしてニーノ。アリーチェと。 次から次に後輩の姿を思い浮かべ、そして、 名前のあがらなかった一人も、ほんの一瞬思い浮かべた。 恨むことはないだろう。ただ、思う所があるだけで。 しかし、それに浸るのはもう少し後。 君は先程ゆっくりは寝れないと言っていたから、 話が一段落つけば移動のため身を起こさなくてはならない。 「…いや、"赤子"の頃の記憶ってやつかな。 俺は案外、記憶力が悪い方ではなくてね。 まぁ、なんだ。……覚えているから、繰り返し見るんだ」 「あぁ、行方は知らないし訴えようとは思わない。 街の宝ってやつはそれなりに寛大なんだ」 わざとらしい言い方は逆に男の心を落ち着ける。 髪を乱され、こめかみの近くを押されても苛立つ心はない。 ただ友人とじゃれ合い、笑っているだけだ。 夢の残像は消えないが、それでも、顔色はずっとマシで。 (-223) 2023/09/29(Fri) 21:02:57 |
【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ言いたいことはそうじゃない。 それはそうだろうねと口にせずに笑うのは、 恐らく確信犯故のこと。 「…眠っていたが目が覚めてしまってね。 気晴らしの散歩ってやつだ、 ずっと家にいると頭にキノコが生えてしまうよ」 嘘。君は察しているのだろうから、 敢えて今、嘘をついてまた笑う。 隠したい訳じゃないというのはその笑顔が物語っていた。 そうして、警察を辞めたと聞けば知っているよと頷いて。 実は俺も、有給届とともに叩きつけてきたよなんて、 自分の話はさらっと終わらせてしまう。 「俺も丁度、君に会いたいと考えていたところだった。 これって運命ってやつかな?…なんてね」 「そして勿論、散歩はまだ続けるつもりだ。 眠るにはまだ、早すぎる時間だからね」 君の無事は友人から聞いていたんだ。 だから、訃報を聞いたところで動揺ひとつもない。 理由を察することは難しいが、 どこかで元気にしているはずだと、その無事を祈っていた。 (-224) 2023/09/29(Fri) 21:04:05 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオまるで子供のようだと頭に過ぎったのは、 目を閉じるよりも前のこと。 そして次に考えたのは、 目を閉じたのは 失敗 だったということだ。「ッ……あ、ぐ…………………」 強く引かれ、己の関節から嫌な音がまた響く。 無理やりに半身起きた体はそのまま引きずり上げられて、 呻く男の表情は先よりも余裕を失っているのが見えるだろう。 少し離れた位置にある椅子は 随分と遠くにあるよう感じられる。 「君、な………ッ」 最早言葉はないこの空間で、何が取調だと言うのか。 色々と言ってやりたい気持ちは山々だが、 無理やりにも椅子に座らせようとする君に着いて歩くのだ。 覚束ない足を動かすのにそれなりに必死になっていた。 だから。── ガシャン! と、椅子を蹴り飛ばしてしまうのも仕方のないこと。 そこで君が手を離してくれるのなら有難い話だが、 勿論、君が支えのようになっている今に離れてしまえば 体が、腕が床に叩きつけられることは目に見えていた。 ▽ (-225) 2023/09/29(Fri) 21:05:30 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ…あるいは、もう一度座らせることを試みるだろうか? そうであれば今度は何とかその思惑を叶えることが叶うが、 しかし、どちらにしてもだ。 男は、君から表情を隠すように体を内側に曲げる。 きっと、自分は今、酷い顔をしているはずだから。 「…ふ、………ふ、ふッ…………」 笑いか、あるいは呻きを堪える声か。その両方か。 男の口から漏れるのはそんな音。 病院へ行き、多少眠る時間も確保したとはいえ、 かなり無理をしていた体は、鋭く痛みを訴えている。 「………………………イレネ、オ」 名を呼ぶ。 「君、……何人を、 こう やった……?」そして問う。 それが何であるかより、 右手を腫らした後輩の姿が脳裏に過ぎる。 そして次に過ぎるのは、 「ダニエラ君にも──何かをするつもり、か?」 男は知らない。既に一度は彼女の番が済んでいることを。 そしてそれを問うことが、自らの"隙"になるのだと。 (-226) 2023/09/29(Fri) 21:06:59 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「アイツらのこともそれなりに心配はしてたけどな。 それ以上に、お前のことが心配だったんだよ。 拷問の事より、どっか行っちまわないかなって。」 変わらない言い草に何故か安心しつつ。 まあそうだよな、とも思う。 「ま、想定内と想定外、半々だが。そうだな。 A.C.Aとして運命共同体になるのはこれで終いだ。 なあ、これからどうするつもりだ?」 だから貴方とお別れだ、なんて その表情は語っていない。 今度の休みどうする?くらいの気軽さで 貴方に尋ねるだろう。 (-227) 2023/09/29(Fri) 21:29:40 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「っ…………エリー……」 恋は胸を締め付けるなんて聞いた事があるし、 今までだって同じ相手に何度かそうなった事がある。 でもこれは、きっとそうじゃない。ああ、つまり、 これは本当に、……きついな。 せめて、と。震える手を握る。笑うその顔に近付き、 額を合わせる。目を閉じて、名を呼んで、目を開く。 ミントブルーが少し滲んだ。 「エリー。……ごめん、言うな。」 少しだけ、強く握る。だって、……自分の手も震えている。 「……ファミリーから狙われたら、逃げられない。 今は俺にも、他の誰にも見つかってないが、 時間の問題だと思う。アレっさんもわかってるはずだ」 遠回しに言いたくない。 それは希望の芽を潰しながら歩くようなものだから。 「そのくせ、襲撃は中途半端だ。設備施設に損害? 5人の負傷?アレっさんがやろうと思えば、 下手すりゃこの地域半壊までいけるだろ。なのに 『遠慮』してる。つまり裏切りは見せかけか、 じゃなきゃ……必要な処置って辺りだ」 自分の中でも整理をつけないといけない。 そうじゃなければ、目の前の子も守れない。 (-228) 2023/09/29(Fri) 21:31:10 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「行方不明の振りもココまで上手くやれるもんなんですね。 そんでまた消えたと。ニンジャかなんかなんですか」 ちゃんとまた現れるといーですねえ、と呑気に一言。 聞いてるこちらも他愛ない話のような感覚で返事をしている。 内容はそんなものではないという事は知っているのだが。 「苛烈だなあ……いーですよぉ。なら手伝います。 オレが手伝えばまたなんか違うでしょ。 そーいうサポートは割と専門なんで」 片手でOKサインを作ってみせる。 ぶっ殺したいほど好きで嫌い、だなんて随分な感情だと思った。愛憎相半ばにするとはよく言ったものだ。 実際の感情の比率は、ロメオが存ずる所ではないのだが。 それにまた、少し羨ましさを覚えたのだった。 ▷ #ReFantasma (-229) 2023/09/29(Fri) 21:32:47 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>80 ダヴィード 「Certo!」 実際のところ、この男の『趣味』は多岐に渡る。 取り繕った顔の数だけ趣味があり、 料理を趣味とした事もあれば苦手なふりをした事もある。 ともすれば、以前にも手料理を振る舞った事があるかもしれない。 けれどそれとこれとはまた別の話。 「ふふー。感想聞くのが楽しみです、どっちも」 料理も、お酒も。 18歳になったあなたに似合うのはどんなカクテルだろう。 幸いにして酒には詳しいものだから、いくらでも選択肢はある。 初めて飲むそれが、良い思い出になるように。 それから、あなたの成長ぶりを楽しみにして。 #バー:アマラント (81) 2023/09/29(Fri) 21:33:41 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「そーいう事です。win-winでしょ」 いつぞやみたいな都合の良い言葉。 一緒に居るのはこちらの勝手であることは知っている。 追い払われないから今は一緒に居ていいものだと思っている。 ロメオが「なんでもする」のはそれを許されるからだ。 許されなければ、なんにもしない。 貴方は許してくれる人だと思っている。 「いーですよ。溶けても美味かった」 「あんた、意外と寂しがりだったりします?」 それを揶揄するでも責めるでもない、ただの感想。 思った通りにここは人の気配が無くて、ここには二人しかいなかった。 彩度の低い風景だった。 「オレが言えたことじゃないか。お揃いすね」 そうしてまた、勝手にお揃いにしている。 #ReFantasma (-230) 2023/09/29(Fri) 21:33:44 |
ペネロペは、約束をした。 (a18) 2023/09/29(Fri) 21:34:00 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「それにこの前警察内で会った時、港を落ち着かせるよう 頼まれたし、指揮してもいいとまで言ってた。 メイドマンクラスの名前も出して使えとも」 つまり、完璧な港を扱う、用意周到で実力のある男なのに、 それを俺に渡す時点でもう、管理を投げたようなもの。 或いは、もうとっくに準備を済ませていた。 また、手を握る力が強まった。もう、唇の震えも隠せない。 (-231) 2023/09/29(Fri) 21:39:49 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「エリー。アレっさんは、……死ぬ気だし、 死ぬんだと、思う。殺されるのか、死ぬのかは、 ごめん、わからない。でも、命を落とすと、思う」 「俺より付き合いが長いエリーがどう思ってるかは わかんないけど……俺も、あの人には結構世話になった。 それに、エリーをあの人は世話してくれてたと、 思ってる。……俺、親ってものの事は、正直言って 全然わかんないから、間違ってるかもしれないけど、」 逡巡。迷い。口にしてはいけない、と思う。 でも、口にしないといけない、とも思う。 「 俺、アレっさんの事、エリーの親父さんみたいに思ってる。 俺がこっちの世界に来てから何度も世話になって、 カフェでバカ話して、なんだかんだ可愛がってもらって、 俺も、アレっさんのこと親父みたいに思ってたのかも。 ……アレっさんが、俺らの事どう思ってたかは、 全然わかんないけど。もしかしたら、 なんとも思ってないかもしれないけど、でも、」 「……俺達の親父が死ぬ前に、礼とか、文句とか、 ワガママとか、色々。……言いたい。言っておきたい。 すっげー辛いと思うけど、……言えないより、いいと思う」 「一緒に、言いに行かないか。中身はなんでも、いいから」 (-232) 2023/09/29(Fri) 21:41:26 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ>>-224 「大丈夫だよ、キノコが生えてもせんぱいはかっこいい」 敢えてのそれであるとは理解できているから、こちらが返すのも軽口……ではなく普通に本心だった。 今でもやっぱり貴方のことをかっこいいと思っている、本当のこと。 さらっと伝えられた言葉には瞬きを一回、二回。 とはいえその簡潔さもまた敢えて選ばれたのだとしたら、「そっかぁ」と笑った。 「……じゃあ、運命ってことにしよっか」 「運命なので残りの散歩の時間をオレにちょうだい。 せんぱいと話したいです」 あそこ行こう、あそこ、と貴方を連れて行こうとするのは二人で食事をした夜のベンチ。 今の状態で立ち話はさせたくなかった、場所もそう離れていなかったので丁度いい。 そうして歩調は貴方に合わせて、人の少ない夜道を二人で歩いて行く。 直にそこへと辿り着けば先に貴方を座らせたことだろう。 で、ちゃんと座ってくれたのを確認したらこちらも隣に腰掛ける。子猫をパーカーから出すとよいしょと膝の上に載せて、好きなようにさせながら。 「……せんぱい、なんで警察やめたんですか?」 (-233) 2023/09/29(Fri) 21:53:56 |
【鳴】 corposant ロメオ「おう、いいよ。なる早でやっとく。 スマホもねえのは不便だろうさ。 お前の事、他に心配してる奴いるんじゃねーの?」 公衆電話だけで知人とやり取りするのは余りに不便だろう。 友人も多いだろう貴方のそういう不自由はやや不憫に感じた。 「なんでもいいよ、頼ってくれんなら。 金は貰う事になるけどそれは勘弁な。安くはしとくよ」 個人的にやったっていいのだが、他の人間と連携を取る以上仕事の客として扱った方が勘ぐられもされずに済むだろうと思っての事だ。自分もだが、相手の立場は守らねばなるまい。 詐欺としてやるなら別だが今回はそうではないので。 「家だよ。いいよ、今来る? なんもねーけど……30分くれない? 身支度とか終わらす」 来てくれるのは純粋に嬉しい。素直に快諾して、話しながらようやっとベッドから起き上がる。 場所ならこの間連れて帰ってきたときに覚えてもらっている筈だ。 「なんなら迎えに行くけど……足あんの? 近場?」 (=5) 2023/09/29(Fri) 21:54:04 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「……win-winなのか」 こちらはこちらでその言葉に少し訝しげになる。 あのときは冷静でも何でもなかったが、今思えば相当お互いにおかしかったのだ。 それが、何故か。自分はともかく目の前の男までも。 今態度が変わらないことを含めても、やはり違和感を感じる。 無条件に人に尽くそうだなんて思わない。 たとえそれが娯楽として行われていたとしても理由があるはずなのだ。 「……ああ、寂しがりやだなあ」 「お前と揃いで嬉しいよ、ずっと似ていると思ってた」 だからここは素直に告げてやって。 「なあロメオ。 お前は一体何がそんなに不安なんだ?」 「何が欲しい。 言えんのだったら俺はあのときのことを聞き直してやる」 水気を帯びた砂を蹴って、貴方を振り返った。 #ReFantasma (-234) 2023/09/29(Fri) 22:18:59 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ『ありがと、すっげ〜助かる! 心配はどうだろ、連絡取りたいの職場のせんぱいとちょっと身内ぐらいだからな』 だからそう貴方が不憫に感じる必要はなく、というのは此方が知っていることでもないのだが。 早めに手に入れたい理由は生存報告がしたいそれだけだった。 『高くてもい〜よ』と値段については伝えたものの、安いままでも素直に甘えることだろう。 さっぱり入手経路なんてわからない自分にとっては大層なものだから、何らかの形で恩は返すつもりだが。 『今行く!』 『足ならあるよ、オレの足が。 近場かな、わかんないけど。 場所は覚えてる、のんびり歩いてたらそれぐらいにならないかな』 回答全てがふわふわしているが、道は覚えているのでとりあえず辿り着けそうなことだけ確かだ。 『だからだいじょうぶ、ゆっくり身支度しててよ。 あ、猫アレルギーじゃない? 仲間がいてさ、離れてくんないの』 伝え、切ろうとして、その前に思い出したように最後の確認がひとつ。 猫を家にあげてもいいかなの意。 (=6) 2023/09/29(Fri) 22:19:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ──貴方が初めて人を撃ってから数日後の夜。 其方のスマートフォンに着信がひとつ。 非通知、或いは『公衆電話』と表記されたそれに出てくれるのなら、聞き慣れた弟の声がしたことだろう。 用件としては短い、『今夜どこかで会えないかな』。 承諾してくれたのなら貴方が指定してくれた場所へ。 場所の指定が無ければ昔二人で遊んだことのある公園へ。 昼と比べれば人気のない場で、弟は貴方が来るのを待っている。 黒いパーカーのフードを被り、ぼんやりと月を見上げていた。 (-235) 2023/09/29(Fri) 22:28:02 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ「ああ、すぐに出るさ」 嘘は言わない。 「そう、俺は嘘は言わねえよ。 まぁお前は特別だ」 嘘を言う。 「──そうそう、ここに来る前、ちょうど荷物送ったから。 じき届くと思う。 まあ、適当に受け取ってくれ」 いつものこと。 「──ああ。 まあ、…色々、気を付けてな」 いつもでないこと。 手を振って、その背中を見送る。 はあ、と息を吐いて、 「じゃあなあ」 (1/2) (-236) 2023/09/29(Fri) 22:39:38 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ翌日、あなたがいない時だろうか、荷物が届く。 入っているのは、口紅が一本。 色々悩んだ結果、あなたに似合うかもわからずに選ばれたに違いない、 オレンジのシアーリップ。 どういう意図で選んだのかも何も書いていないままだ。 ──いつものように。 (2/2) (-237) 2023/09/29(Fri) 22:40:04 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ避けることも抗することもない。 がつんと肉を打つ音、骨がぶつかる音、 息が零れる音、げほ、と咳き込む音。 全てが無抵抗のまま、ただにやついた笑みが消えない。 ──やってみろ、とでもいうように。 「はぁ、愛想をね。 その程度で逃げられるんだ」 馬乗りにされたままなのに、見下ろす。 黒い瞳のひび割れた隙間から、 嘲りと怒りの炎がちろちろと漏れ出している。 「お前のジジイのやってたマフィアごっこは、 随分お気楽なんだな」 がつ。 小突くように挙げられた膝が、馬乗りになる背中を蹴った。 「オオ、だからお前もこんなにヌルいんだな」 「うちに来いよ、立派なマフィアにしてやっから。 まずはそのくだらねえジジイのたわごとを忘れるところからだな、 負けてグダグダ言う奴の言葉なんか聞く必要はないぜ──」 それとも、と。言葉が続く。 「──お前もジジイみたいに、ノッテから逃げ出すのが趣味なのか?」 (-238) 2023/09/29(Fri) 22:48:11 |
【人】 Commedia ダヴィード>>81 ペネロペ 「ペネロペさん」の手料理はきっと、初めてだろう。 貴方に作ってもらったものならきっとなんだって、それこそ消し炭だって無理矢理に口に詰め込んでから泣くような男だけれど。 これからあるかもしれない、ない話。 「あははっ、来年ですよ。言いましたからね。 絶対一緒に来てくださいね」 もうすぐ夏が終わり、実りの秋と眠りの冬が来る。 この先にどんな苦難が待っていようと、未来に楽しみな約束があるのはいいことだな、と思う。 目の前の苦難を乗り越えるためにたくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん食べて。 すこしだけ貴方に甘えて。 そうして、日常は続いていく。 #バー:アマラント (82) 2023/09/29(Fri) 22:58:24 |
ダヴィードは、平穏と日常を愛している。 (a19) 2023/09/29(Fri) 22:58:39 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡「一人だけ……」 俺は浮気は嫌いだ、だが同時に甘ったれでさみしがり屋だった。 あんたと同じか違って、努力をすれば助けにはなれてしまうから 少しでも多くの者を救えるものだと勘違いばかりしてきた。 「難しいなあ」 それを貴方に向けられていたら、きっと未来は変わっていた。 そうできないと思うほど、全てを諦めきってしまったいたから。 「――でも、そうか。漸く分かった。 俺のしたいことなんて、 知りたいこと以外何もない 」半分だけ嘘をついた、それだけ聞けたら良かった。 この先の貴方のしている事など全て見通せもしないし、このときは何も分からなかったが。 手遅れでも真実が知れればそれでよかったのだ。 それは自分の親の死の真実を知ったときのような、 それでも、誰よりも大事に思った事のある恩人への、愛憎入り交じった感情に襲われるのだろう。 「言われなくとも、フィオレのことは大事にしてるよ。 あんたに言われたからだと思うなよ」 それだけは選んだ、置いていって嘘をついている貴方とは違う。 自分はそうならないと、もう、この時点できっと気付いて居た。 貴方は自分達の前から目の前から居なくなる。 (1/2) (-239) 2023/09/29(Fri) 23:02:52 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡信じたかった。最後まで信じたかったのに、ここに来て嫌なほどわかってしまった。 泣きたくなりそうな程気持ちが高ぶって、それを隠そうとするように深く息を吐いた。 「アレッサンドロ、」 俺はあんたを殺したいほど好いていた。でも、もうやめだ。 「――勝てるといいなあ?」 このどら猫の祝福は可愛らしい祈りではない。 その口ぶりには『お前なんてやられてしまうさ』という本音の軽口も入っている。 だけど、それでも。 かつての貴方の下で働いていた時間が人生で一番楽しかった事は変わらない そんな日は二度と戻らない、だから、俺はそんないつも通りの言葉で貴方を見送ることになるのだ。 (2/2) (-240) 2023/09/29(Fri) 23:07:54 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、う…、!」 注射器の針を避けるような動きをしたばかりに、下手にその拳を受け止める形になる。ゴキ、と嫌な音がしたような気がした。 地についた肘に、強い痛み。 全身の痛みに、意識が持っていかれそうで。 気力でもって、なんとか耐えている形。立ち上がろうとした格好のまま、脂汗を浮かべている。 「っ、…はぁ……先に、不義理を働いたのは…彼の方、よ」 口の中の異物を胃液と唾液に混ぜて、地の吐瀉物へ垂らすように吐き出し。 息を整える。痛みに意識を向けないように。 「違うわ。私の、独断よ」 たまたま火遊びの相手が、ファミリーに害を生した男だったというだけ。 ここに誰の命令も介在しない。この殺しだけは、自分だけの責任だ。 話していれば、あなたが携帯を取り出したものだから。勘がまずい、とでも告げたのか。 立ち上がろうとしていた格好から強く地面を蹴って、諸共地面に叩きつけられるよう飛びかかる。 携帯を取り落としてしまえばいい、と。不意をつく形で。 痛む身体も、男女の対格差も考えない。がむしゃらに仕掛けたお粗末なものではあったけれど。 ここで捕まるわけには、いかないのだ。 (-241) 2023/09/29(Fri) 23:09:48 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ背の低いしっかり者を見送ったあと、通知の鳴り止まない携帯を見る。 まだまだ自分は何処かで必要とされていて。 疲れても歩きを止めることすら許されないような気にさせられた。 「『ちゃんと答えを見つけて、言いたいことを言えるようになるから』……ねえ」 「俺もそれをしないとならんのだよな」 大きなため息をついて空を仰ぐ。 にぎやかなリボンを一つ空中でキャッチしてまた捨てた。 「それにしても今、あの旦那のことを頼まれたか……? どうせアレのところに行ったんだろ……人気者め……。 ……はあ、……俺が吹っ掛けておいて邪魔できるか」 あと何時間だろうか、と凡そ場所ももうわかっている。 片方の事は良く知らずとも、片方のことはよくわかっている。 あいつがやると言ったらやるやつだ、一番とは言わずともそこそこ理解者でいるつもりなのだ。 「アジトの様子見に行くか……あーあと牢屋の中の怪我人……。 忙しい、忙しいぞアレッサンドロ・ルカーニア! お前が放り投げた分全部俺が拾うことになってるの許さんからな!」 #BlackAndWhiteMovie (83) 2023/09/29(Fri) 23:14:10 |
【人】 路地の花 フィオレ>>78 ロメオ 悪戯小僧には、目を細めて悪い女ぶった笑みを返す。 こどもっぽい仕草が、なんだか今は一番似合う気がしたのだ。 「片っ端から気になるもの買ってみちゃう? 出来立てのお惣菜とか、お店の人の今日のおすすめとか!」 今なら何だかいいものと出会えそうな気がしたから。 あなたが運転席に戻っても、後部座席に居座ったまま。 体は起こして、白いクッションを抱きかかえる。 キャップをかぶり直して、アクティブなスポーツレディの装いをもう一度。 「うん、いつでも行けるわよ」 「安全運転で、でもぱっと済ませちゃいましょっ」 吹っ切れたような顔で、楽しそうに笑ってみせた。 #BlackAndWhiteMovie (84) 2023/09/29(Fri) 23:27:25 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「不安?」 ……足を止めた。 潮風で揺れる前髪が、深みのある翠の瞳を隠しては現す。 「オレは別に……」「いや」 「不安じゃないって言えば嘘ですけど。うん」 うろ、と視線が惑った。考えに迷っている時の癖だった。 自分の心について語るのは苦手だった。 誰にとってもどうでもいいもので在って欲しいから。 不安。欲しいもの。言ってどうなる。けれど問われている。 「……欲しいものなんかいっぱいありますよ。 でもオレは弁えてるんだ。 オレは聞き分けのいいゴミでいたい」 「そら使ってほしいのが一番だよ。 オレを使ってくれる人はいっぱい居る。いいことだ。 オレは便利な物か畜生扱いでいい。 利用価値があったら捨てられないでしょ……」 とつとつと、ぼそぼそと、 それでも波音には掻き消されないくらいの声。 内容はいつか貴方に話した、在り方の続きだった。 #ReFantasma (-242) 2023/09/29(Fri) 23:30:54 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「けど……どうせだったらさ」 「やっぱり好きな人に使われたいですよ。役に立ちたい。 オレを求めてくれる人が居たら嬉しい。 オレだって大事なものを大事にさせて欲しい」 「オレはゴミだが悲しいことに心がある。嫌だね。 贔屓 が出来ちゃうから……情があんだよ」「なくなったら嫌なものにしがみついちゃうんだよな」 みっともなくてすみませんね。 眉を下げて、へらりと笑った。 あんまり答えになっていなかった気もするが、 不安と欲求の種はこれなのだ。 「だからオレ、なんでもするんです」 人というには烏滸がましい。 でもゴミにも畜生にもなり切れない。 居場所にさせてくれる人が欲しくて、 型落ちの用済みになるのが不安だった。 #ReFantasma (-243) 2023/09/29(Fri) 23:33:42 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ「……うん」 震えた手と震えた手が重なる。 目を伏せた女はその手を持ち上げ、あなたの手に口付けた。 語る間、相槌を続ける。檻の中の言葉。預けられた荷物。 …事前に計画され準備は済んでいた。それは女の方が、きっとよく分かっていた。 「…うん」 そしてファミリーが彼を追うことだって。 面子にかけて逃がすわけにはいかないことだって。 頭の中で分かりきっていたことひとつずつ、言葉にされて形になって。 「………………うん。」 だから、そうやって。 ただ聞き分けのいい子供みたいに頷いて。 「…あたしは、」 (-244) 2023/09/29(Fri) 23:34:45 |
ロメオは、ひとのかたちをしている。 (a20) 2023/09/29(Fri) 23:35:07 |
【影】 摘まれた花 ダニエラ檻の中の言葉。渡された荷物。コーヒーの香りする紙片1枚。 …答えは出ているはずだった。 彼が自分を、どう思っていたかは知らないけれど。 …少なくとも。 (&1) 2023/09/29(Fri) 23:35:31 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ「……。」 言いかけた言葉を止めたミントブルーがあなたを映す。 それを口にする勇気のない意気地無しだった。 そうやって、やっぱり受け取ってばっかりだった。 そんな数年が、こういうときに、返ってくる。 「…言えるかな。」 そんなだから、あまり自信はなかった。 それが必要なことなのかも、全然判断できなかった。 ただ何が起きても隣にあなたがいてくれるなら。…逆にいえば、それしか確かなものはここになかった。 「………… いく 」それでも。 そうやって頷いたのは。 ずっと聞きたかったことが、ひとつだけあったのを、思い出したから。 (-245) 2023/09/29(Fri) 23:36:21 |
エルヴィーノは、イレネオの電話を鳴らした。 (a21) 2023/09/29(Fri) 23:38:24 |
エルヴィーノは、イレネオに通話が繋がる事はない。 (a22) 2023/09/29(Fri) 23:39:50 |
【鳴】 corposant ロメオ「おう。用意出来たら出来たって言うわ。 スマホに掛けたら繋がらないのは心配させるだろ、 早く安心させてやらねえとさ」 ついでにスマホも登録しておいてやろうかな、 なんて企みは口には出さないでおこう。 「そ? わかった、徒歩なら気を付けて来いよ。 ──あ。そうだ、猫」 それならこっちも色々用意できるな、とズレかけた思考は、 『猫』という単語ですぐに戻った。 「あのさ。飼ったわ、猫。家に居る」 「貰ったんだよ。白猫……」 だから大丈夫、と一言。 いつぞやは自分では飼わないと言った覚えがあるが、 結果として今、家に一匹いらっしゃるのだった。 (=7) 2023/09/29(Fri) 23:48:35 |
【人】 corposant ロメオ>>84 フィオレ 「アハ、それもいい。 余ったら家に持って帰って食えばいいしな〜」 すっかり機嫌が直った様子にこっちも気を良くして、 今から何を買ってやろうか計画立てて。 自分もキャップを被り直せば、 バックミラーの位置を調節してハンドルを握った。 「OK〜。んじゃ、行くか」 そうして車は走り出し、きっとどこかの店にでも そのまま向かうのだろう。 自分のカローンとしての役目も これで果たされた。 一つの銃声の犯人を連れて、リボン舞う青空からは遠ざかる。 仕事はきっと、これで終わりだ。 #BlackAndWhiteMovie (85) 2023/09/30(Sat) 0:00:19 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「……そういうことかあ」 この化け物じみた努力ができる男がやっと人間らしく見えてきた。 自分から道具や畜生になろうとしたらこうもなるか。本当に涙ぐましい心意気と言えよう。 「俺もなあ、利用価値があれば捨てられんと思ってた。 便利で都合の良い人間になることが自分の為にも周りのためになるとも思ってたんだ」 「……半分ぐらいそれで上手くいくんだがなあ? もう半分はどうしようもなくてな」 知ってしまったのだ、必要とされる喜びを。 本当に好いている人に求められる時間は有象無象の何かを超えた満足感が得られるということを。 「あと俺はわかりにくい嘘はつかない主義でなあ」 あの時の自分も、自分自身なのだ。 本心しか言わない、馬鹿ほど素直で、おかしくなった姿だ。 「……はー」 言ったことも本当にしたいことで嘘も一つもなくて。 ただ心配だったのはそこに貴方の心があったのかどうかだけ。 誰かに言われた一人だけという言葉が脳裏に浮かぶ。 確かに、こんな事を言う相手人生に二人もいてたまるかも思った。 ▼ #ReFantasma (-246) 2023/09/30(Sat) 0:01:17 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ (-247) 2023/09/30(Sat) 0:02:26 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……。」 言葉を止める姿をライムグリーンに映す。 互いを映し、認める姿。 きっとどちらにも――震える女が映っていた。 子供の頃からあんまり変わらない二人。 我慢する方と、しない方。 わがままを言えない方と、言える方。 頷くあなたの言葉に、こちらも頷いてみせる。 「言えるよ。エリーなら……言える。 一緒に、言いに行こう」 勇気づけるように、あなたの手にくちづけを。 静かにしかし断言するその瞳には、あなたへの信が満ち。 もう、瞳に揺れはない。これはあなたの隣を行く。 (-248) 2023/09/30(Sat) 0:27:42 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……よし、そうと決まればエリーは少しでも休むんだ。 俺のチームが今、アレっさんの移動先を探してる。 最新の機器でフル稼働でだぞ?楽勝で見つけてやる。 見つけたらすぐ、かっ飛ばして現地に向かうからな。 後はまあ、なんだ。……ノープランだ!はは……」 弱く笑うと額を離して、壁際に座り込む。 護送車の床は少し硬いが、持ち込んだ毛布が2枚。 1枚は床に敷いて、もう1枚はあなたに。おいで、と手招き。 「……なんとかなるよ。なんとか、する。 俺が傍に居る。俺が支える。俺が守る。 ……安心しろ、は無理かもしれないけどさ、 ちょっとはマシだろ?それこそ、この毛布みたいに!」 へら、と笑っておどけたようす。傍らのラップトップには、 絶えず状況連絡の様子が流れ続けていた。 (-249) 2023/09/30(Sat) 0:44:57 |
カンターミネは、歌う。歌うのが怖くとも。 (a23) 2023/09/30(Sat) 0:45:33 |
【妖】 路地の花 フィオレじゃあ後で手伝うわね、なんて会話をしたかもしれない。 この女に任せると、捨てようと思っていた物をいくつか持って帰られるかもしれないけれど。 それはそれとして。 「お気の毒様ねえ」 「まあ、警察も上がああなった以上はドタバタ騒ぎもやむなし……っていうか。 それくらいで済んでよかったって感じじゃない?書類仕事で済むなら、それほどの痛手でもないでしょうしね」 署長代理とやらが捕まることで、丸く収まっているならいいことなのだろうけれど。 自分が撃ち抜いた彼の事も公になっている。結構な地位にいたらしいと聞いたから。 警察内部の事情に疎い女は、実際のところどうなの?と聞いてみている。 落ち着かない様子をちらりとみて、にまと悪戯っぽい笑みを浮かべる。 「怪我人は大人しくしてて下さ〜い」と楽しそうに口にして。 鼻歌まじりにデリのパックを開けていく。 チーズとろけるピザに熱々揚げたてのアランチーニ。ジューシーなポルケッタ、パリパリのパネッレにほくほくクロッケー……本当に片っ端から屋台飯を買ってきたようなラインナップ。 結局こういうものが一番おいしいのだ。 「まあそれもそうなんだけど。 テオが見せたくないものは、無理に見たくないってだけ」 嫌な思いさせたくないし。気を遣ってくれてるのを無碍にはしたくないし。 「できないことはないか、じゃないのっ」 「もし難しそうなら私の片手をテオだと思って乾杯するから」 どういう有様かは知らないけど。無理してグラスを落としたり、不安定になってもいけないし。 ちゃんと持てる状態でないと、この女は折れなさそうだ。 ($3) 2023/09/30(Sat) 0:56:35 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「え」 口からぽろっと零れたのは動揺の一音。 「……な」「なんで? 今なんて?」 それから疑問。 見た事無い仕草は、欲しかった言葉に添えられている。 理解が追い付いていない。確かに欲しいものを言った。 何故この場で、貴方からそれが与えられたのか。 これはめいっぱいに目を開いて驚いて、どっと汗をかいた。 嫌ではない。嬉しいはずだ。 与えられた言葉の一言一句は望んでいたものだ。 ただそれを、あまりにも簡単に貰ってしまったものだから。 「んで急に、 は? なんでもしてやるって言った?」 「オレに? いや、冗談なら……」「違、あ」「その」 「本気? マジで言ってる? オレだぞ? いや、あー」 「オレ別に見返りを求めてるわけじゃ……そうじゃない、 分かってる。嬉しいんだけど、嬉しいんだけどさあ、 使ってくれんの……? 欲しいの? オレを?」 誰にも見せた事無いくらい狼狽えた様子で、 それでも落ち着こうとしきりに後頭部をパシパシと叩いて。 ▷ #ReFantasma (-250) 2023/09/30(Sat) 1:02:31 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「……………………あの……」 「……クーリングオフ期間付けますけどお……」 「それ言われるとオレ本気にするんで……マズいから」 丁寧に飲み下して、本当に本気か、とそれでも問う。 言葉の杭が欲しいのは相変わらずだ。 #ReFantasma (-251) 2023/09/30(Sat) 1:03:25 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ貴方の足を捉えた。 身体が崩れた。 その腕を、男は落ちる途中で取って、 身体の向きを変えさせた。 机の角に叩きつけるのは身体の前面。 自重と落下の速度で肋骨に傷を負わせようとする 成功するなら貴方は呼吸すら難しい激痛に襲われるはずで、 踏ん張れずに落ちるならさらに床でバウンドする形になる。 そうなれば当然噛み付く追い討ちで痛むはずだ。 男がこうまでするのはある意味で貴方のせいだ。 大人しくしていれば後遺症まで残す気はなかった。 なんて、身勝手な話。 (-252) 2023/09/30(Sat) 1:44:46 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ心配されるような人間ではないと、 喉まで出かかってしまうのは変えられない性分で。 僅かに口ごもって、また、ため息ひとつ吐き出した。 「……こうして生きている、それが答えだよ。 でもね、ニコ。君は俺よりもまず、彼らを心配するべきだ。 それに君が色々と話をするのは大事だと思うんだが」 話したかい?話せたかい? これからのこと、今回のこと。どうするのかって話。 俺に問うよりもと思うのは少しのお節介。 だから、これから先を当たり前に語る君にもう一度、 深めのため息を敢えて零すのは、仕方のないこと。 「…さぁ、特に何も考えていないよ。 適当にもう暫く──…生きてみる、だけだ」 それが長く保てるかと言えば、分からない。 だけど出来れば、 その時は誰も彼もが手を離して欲しいと思う。 首にかかった縄はいつだって、ここにあるままだ。 誰かとともに落ちるのはきっと、耐えられないから。 (-254) 2023/09/30(Sat) 1:52:03 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ半端に立ち上がった姿勢では男の頭の位置も低かったはずだ。 身体ごと突進すれば胸あたり、或いは運良く顔面に入ったかもしれない。がつん、ともどすん、ともつかない音が大きく鳴って、男の身体がよろめいた。 けれど、それでも。重みの差というものは大きく。 そもそも筋肉量だって随分違う。よろめく以上のことは起こらず、しかし目論見通り携帯は軽い音を立てて地面を転がっていった。 男が顔を顰めたのが至近で見えたろう。鋭い犬歯が剥き出しになり、チ、と舌打ちが寄越される。 苛立ちにかっと燃える瞳は金で、温度の上昇がよく分かった。 貴方は男の胸元に埋まっているだろうか。 未だに組み付いて離さないでいるだろうか。それをラッキーだなんだと思う遊び心が男にあったなら、こんな出会い方はしなかっただろう。 生真面目で四角四面で実直な男は、貴方の両頬を両手で掴む。 けれどそれは整ったかんばせを眺めるためでも、勿論口付けのためでもない。 「動くなよ」 ────ごん。 声の直後、仕返しとばかりに硬い音と感触が響く。 額と額を打ち付ける音。貴方は上を向いていたから、首にかかった負担も大きいはずだ。 それで腕が緩むなら突き飛ばして立ち上がるだろう。じんじんとこちらの頭も痛んでいるけれど、背に腹はかえられない。転がした携帯、或いは手錠 ──今は持っていないのだが── を探す隙を見せた。 (-255) 2023/09/30(Sat) 2:07:53 |
【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノかっこいいと返されて僅かに言葉に詰まったのは確か。 それが照れなのか、動揺なのかは不明だが、ともかく。 確かに男は君にそんな様子を見せて、 手が自由であれば頬でもかいているんではないか? と思えるような形で少しそわそわと体を揺らす。 咳払いという誤魔化しをひとつ。 格好悪いなとは思うのだが、これが俺だった。 自分が言う分には何ら、そんな感情を抱くことがないのに。 「…あぁ、俺も。君の時間をもう少し欲しいと考えていた」 行こうかと、緩やかな足取りで君を追いかける。 追いかける、とは言ってもだ。きっと君は隣を歩く。 同じ速度で、人の少ない夜道を歩いていくのだ。 辿り着けば促されるままに先に座って、 次に君が座るのを見届けてから口を開いた。 「…この怪我が治った後、復帰したいかどうかを考えた。 だけど、どうしてもその気持ちは湧いてこなくてね」 「…警察だとか、マフィアだとか。隔たりにも疲れた。 あとはそうだね、……少し、自分の道を歩こうと思って。 何がしたいとか、何をしていきたいとか、 そういうものがあってのことじゃあないんだが」 もう少し生きようと思えるうちは、 レールを外れて歩くのも悪くはないかなって考えたんだ。 (-256) 2023/09/30(Sat) 2:18:28 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-214 >>-215 「あの二人は仲良くデートの約束だったんだろうよ。 脱獄したのと、色々あってなあ。……まったく」 「なんだと……別にお前だけ、のためではないがあ……? まだ色々勘違いさせてるかもしれんな、ちゃんと話してやるからな」 わかりやすく嘘をついて照れ隠しをした。 隣に来ることを了承すればため息を付いて肩にもたれかかる。 「依存は、わからん。 ……血の繋がりもないあいつらに、 既に俺はしっかりと依存しているのかもしれんし」 「会っていいやつなんてそんなにいないが……? 血の掟は聞いたこと無いのかお前、 ……本当は警察と俺たちは会っちゃならん。 関わることから禁じられてる、だから俺は……まあ」 ▼ (-257) 2023/09/30(Sat) 2:18:43 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-214 >>-215 >>-257 「捕まるんならお前しかいないと思ってるさ。 だけど簡単には捕まらない、 それに大きな事をどうせなら起こすかもしれん」 この時点でもまた誰かをなぞっているだろうか。 それでも、何となく、いつかの終わりは来るような気がして。 永遠に平穏なんて続かないのを知っている。 「番狂わせを見せてくれるほど俺の幼馴染は面白いからな。 その時は絶対逃げ切ってやる、覚悟してろよエル」 逃げ切るということは、俺はその手を拒む日が来るということだ。 生きることをやめようとするかもしれないし、すべてを投げ捨てているかもしれない。 いつかそんな日を迎えても、最後は貴方の顔を見たいと甘えている。 あの日からずっと、貴方は大切な唯一の幼馴染で、かけがえのない人なのだから。 (-258) 2023/09/30(Sat) 2:20:09 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ男はこの仕事が好きだった。 人を助けることが好きだった。 悪い人間から人を守れるのが好きだった。 純粋な誇りに、今は既に別のものが滲んでいる。 椅子を蹴飛ばした貴方を、男は怪訝そうな瞳で見つめた。 随分と悪そうな具合を不審に感じた。殺すつもりはない。 身体を折るその仕草だって、一応の心配を誘っただろう。 だから。 だからこそ。 男はその実際を見ようとする。 掴んだ手は離さないまま、もう片方で上半身を軽く押す。それは顔を見せろという合図だ。 従わないならそのまま再び床に押さえつけられることになるだろう。強制的に背を床に付けさせてしまえば、背ける以外の抵抗はできなくなる。 ぐ。押す。彼女にも聞かれた問いだ。 「五人ですよ。」 ぐ。押す。彼女にも明かした答えだ。 「そうですね。」 ぐ。押す。もう終わった話だ。 「それがどうかしましたか。」 さて。 顔は見えただろうか。 (-259) 2023/09/30(Sat) 2:20:59 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → リヴィオ「……本当に大事なんだな」 なんだか自分が警察にいたらそんな事を言っただろうか。 少しぐらい責任感がついて、後輩たちを思いやって、 格好つけて、無理をして、笑って、辛い姿なんて見せずに。 無茶をして、いつかその終わりを夢見て。 けれどそんな悪夢の中に貴方は囚われていて、助かり方が分からなくなっている。 「リヴィオ。 俺は……お前が望まなくとも俺はお前の家族を調べようと思う。 この間も言ったとおりな、だから。 今後、彼らについて知りたくなったら、 見られるようになったら俺に声をかけろ。 そして、一緒にぶっ飛ばしに行くぞ。 お前が行かないなら一人でいってくる」 全く笑えない話を楽しげに話す。 もう死んでいるというのなら墓石でも蹴りに行ってやろうか、なんて。 (-260) 2023/09/30(Sat) 2:48:42 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → リヴィオ「それまでは俺がたまに夢の番でもしてやる。子守唄を歌おう。 声をかけてやる、お前は確かにその時は憎まれていたが…… 今はこんなに望まれて、愛されて、必要とされている」 「それを隣で教え続けてやる。友達として、ずっと変わらない」 俺はお前のことを本当に助けたいと思っている。 一人で助けきれない分は他の誰かの手をいくらでも使ってでも、 何人もの絆を用意してお前を勝手に何処かに行かせんと心に誓った。 「な、リヴィオ」 似た者同士なのだ、いつかの終わりを求めるものとして。 それを否定などしないが、せめて今はもう少し。 終わりの日が来るまで緩やかに、平和に過ごして、酒を一杯また飲もうじゃないか。 (-261) 2023/09/30(Sat) 2:50:50 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ保っていただけだ、不完全な仮面を被り直して。 保とうとしていただけだ、そうでなければ自らを守れない。 がくりと折った膝と曲げた体が掴む腕を離さない君と 反発し、折れた腕に相当な負担をかけていく。 離してくれた方がまだ、マシだった。 「ッ……なんだ、…そんなに、俺の、顔が……見たいかい」 照れてしまうなぁ、そんな軽口を返すものの。 あからさまに苦痛の声が混じっているのは確かだった。 動く右手で君の行いを止めようとする。 弱さを見せるのは苦手だ、笑顔で隠すのは得意だ。 だけど。 守るべき がない分、体調が崩れている分、守るべきものがある彼女より 脆さは出てしまう。「う、ぁッ……は、………そう、か」 ドッ と音を立てて背が床に付けられる。背けた顔は、抵抗する右手は君の力に敵いそうにもない。 「……いや、何…っ、流石にそれは、許せなくてね……ッ」 なんせこちらは病人だ。ここまで保っているのが異常で。 人の内を覗こうとするなんて無遠慮だなと笑いが込み上げた。 しかしその抵抗も長くは続かない。 君に見えるのは余裕もなく、苦しげに顔を歪め、 それでも笑っていようとする弱い男の姿だっただろう。 (-262) 2023/09/30(Sat) 2:56:31 |
【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡小突かれれば丸めた背が更に前のめりになるだろう。 近づけた顔の位置が更に下がって、視線はずっと近くかち合った。 せせら笑う堅炭が間近に見える。嘲る漆黒が視界いっぱいに映って染めた。 「ならない」 ぐらぐらと煮える頭から考える前に声が出る。引き攣る程に震えた喉は思考より先に否定を返した。 「ならない」 「うるさい」「お前」 考える前に身体が動く。左の手が貴方の口元から鼻筋までに触れ、体重を掛けて瞼を押さえつけた。 「逃げるわけがないだろう」 「俺が!」 全て後手に回った理性の制止が効くはずもない。ペンを武器に握りしめた拳がついに振り上げられた。 にやついた笑みがずっと気に食わない。 見え隠れする怒りはもっと気に食わない。 お前に怒る権利なんてない。 平常に戻れとどこかが言った。 これが戻れるかと言い返す声の方が強かった。 振り下ろすのは黒の中心。 貴方の左の瞳に目掛けて。 命中せずともこれだけの勢い。それなりの痛みは伴うはずだ。 薄着の女よりも何よりも、 貴方の笑顔と言葉の方がこの男には効く。 (-263) 2023/09/30(Sat) 3:41:15 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ公衆電話からの着信に、怪訝そうな顔。 怪しい相手ならすぐに切ればいい、と通話ボタンを押して。声を聞けばすぐに、愛しい弟のものだと分かったものだから。 あなたから会えないかと打診があったのならそれを拒むことは絶対にない。 公衆電話からかかってきたのだから、もし何かあったら連絡をこちらから取れないだろうしと。 場所の指定を結局委ねて。 夜、月を見上げるあなたの元に駆け寄る足音が一つ。 「───フレッド!」 名前を呼んで、駆け寄ってくる。 まだ顔も見えていないあなたを、そうであると確証があるかのように。 (-264) 2023/09/30(Sat) 3:41:26 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ絶え絶えの息に気を惹かれる。 様子を確認するだけ、それ以外の何かが男の瞳で閃く。 ぐ。幾度目かの力比べの結果は見えていた。力尽きるように倒れた貴方の腕から男はようやく手を離し、そのまま顎へと移動させる。 背けようとするのを無理矢理上向かせれば寄せた眉根の下の瞳に目が合った。 見たことのない歪み方をした貴方の表情が、男にとっては。 「ふ、」 愉快だった。 男は、貴方のことをよく知らない。 男にとっての貴方は、いつも何かよくわからないことに気を遣って、それでいて楽しそうでいる手のかからない先輩だ。 だから分からない。だから興味がない。 何故彼女を気にするかなんて気にならない。 気になるのはその顔色だけだ。 それがどう移り変わるのかは、興味があった。 ▽ (-265) 2023/09/30(Sat) 4:11:38 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ更に、更に抑え込む。それ以上の抵抗がないように。貴方が目を逸らさないように。 それが叶ったなら、男は自らの顔を貴方の方へと寄せいって。 こつん、と。 額と額を触れ合わせた。 「許せない?」 「ダニエラのことが?」 「どうして?」 話してみろ。 聞かせてみろ。 眼前に迫った金色は、そう急かす。 (-266) 2023/09/30(Sat) 4:11:52 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ女の身体はあなたの胸元に勢いをつけてぶつかって。 あなたのことを地に伏せることは叶わなかったけれど。 カシャン、と石畳に携帯の落ちる音が耳に入る。 目論見は上手く行った。 「は、あは……これ、で……」 少しは時間稼ぎになっただろうか。 苛立ちの色を見せるあなたの顔を見て、"してやったり"といった表情を見せて。 しかしすぐに、その顔も眉を寄せ 苦痛のそれに変わっていく。 痛みが、どっと襲ってくる。 腹も、肘も、背中も喉も。痛みが、戻ってきて。 立っているのもやっとなそれらに、女は"あなたに掴まっているしかない"。 縋るように、そうしている。だから。 「っ、が……!?」 頬は容易に捕らえられる。 痛みにぼんやりとした頭が、あなたを見上げて。 強い衝撃。 ノイズが走る。 ぐら、と脳が揺れて。縋っていた腕の力が抜ける。 今度はあなたの思惑通りに、突き飛ばされる。尻もちを着く前に、なんとか踏ん張って。 もう、後は意地だった。 あなたが自分の携帯を拾いに行こうとしたのなら、無防備な尻ポケットに手を伸ばす。 彼女自身の携帯だけでも返してもらおう、とでも言わんばかりに。 ぐらりと揺れる体が、ふらふらとあなたの背後に近付いていく。 これさえあればあとは、逃げるだけなのだから。 (-267) 2023/09/30(Sat) 4:12:02 |
【人】 幕引きの中で イレネオまさに蜘蛛の子を散らすようだった。 監獄から吐き出されていく人、人、人。 早朝の白む空に照らされ、昇る朝日に祝福されるがごとく家路に着く。或いはそのまま遊びに赴き、それとも最早この地を捨てて遠くへ駆けて行こうとする面々は、疲弊しつつも各々どこか安心した顔をしていたのだろう。 これでもう終わる。悪人は討伐され、三日月島には平穏が戻るのだ。おめでとう、みんな、よくやった。おめでとう。 ぱんぱんと鳴るパレードの花火は拍手にも似て、奇妙にこの日を彩っていた。 しかし。 イレネオ・デ・マリアが牢を出たのは、それから随分後のこと。 日が再び落ち、また高く昇りきり、中天を過ぎた頃──── つまり、次の日の午後のことだった。 #AbbaiareAllaLuna (86) 2023/09/30(Sat) 4:59:01 |
【人】 幕引きの中で イレネオ突然の展開に署内は蜂の巣をつついたようになっていた。情報は錯綜してんやわんやの大騒ぎ。電話対応にも追われ会見の準備、やれあの証拠を持ってこい、やれあれを止めさせろ。末端も末端で仕事に勤しんでいた男が法の失効を知らされたのは、ナルチーゾ・ノーノの緊急逮捕が幕を下ろした後のことだった。 事後処理に駆け回った署内の人間の一人が取調室に飛び込んだのは、イレネオがまさに目の前の男の爪を剥ぎ取ろうとしていた時のこと。 謂れのない責め苦に悲鳴をあげていた被疑者は、その知らせにどれだけ安心したか知れない。彼は椅子から転がり落ちるようにして伝達者の元に走り、縋り付いて涙を流したという。 対する男は、当然法の失効に反対した。 これはマフィアやその協力者を先んじて取り締まることの出来る、画期的な法案だと主張した。いつもの生真面目さ、四角四面さ、愚直さで主張した。 しかし全ては終わったことである。 その言葉はひとつも聞き入れられることがないまま──それは皮肉にも、これまで犠牲者たちにしてきた態度と同じだ──男は一度落ち着けと犬小屋に戻された。 それはおそらく、暴挙の限りを尽くした愚犬に対する庇護の意味合いもあったのだろう。 混乱に乗じてどんな目に遭うかわからない男を野放しにするほど、この国の警察は終わってはいなかった。 #AbbaiareAllaLuna (87) 2023/09/30(Sat) 5:01:35 |
【人】 幕引きの中で イレネオまんじりともせず夜を過ごした男に沙汰が言い渡されたのは、次の日になってからのこと。 停職処分。 期限については追っての通達。 それは男にとっては重い、しかし見るものが見れば軽すぎる裁定だった。 どうしようもなく愚かで、それでも職務に懸命だった忠犬への、慈悲の意を含んだ処罰だった。 #AbbaiareAllaLuna (88) 2023/09/30(Sat) 5:02:19 |
イレネオは、警察署を出た。16時を少し回っていた。 #AbbaiareAllaLuna (a24) 2023/09/30(Sat) 5:02:39 |
【人】 幕引きの中で イレネオ故に男は途方に暮れていた。 犬に出来ることは主人の意向に従うことだけである。 身を捧げた正義には手を離され、リードを握る者はいない。従った法は失効し、今や頼るものもない。 明るい陽射しの下に、男は憔悴しきった姿を晒した。 右を見る。牢に入る前と変わらない人並み。それは既に日常に戻りつつある。 左を見る。紙吹雪が散っていった。昨日あったらしいパレードの名残だろう。 後ろを見る。その門はいつもと変わらず、けれどこの男を追い出して閉じた。 前を見る。一般車両に紛れて通り過ぎた救急車を見て、思い出す声があった。 「バディオリは大丈夫なのか」 「彼なら病院へ」 「撃たれたのは肩だろう。命までは────」 ざり。 靴底が舗装された道を擦る。イレネオ・デ・マリアは知らない。 何故彼が負傷することになったか。 それでも。いや、それだからこそ。 足を向けたのは自宅ではなかった。 #AbbaiareAllaLuna (89) 2023/09/30(Sat) 5:03:13 |
イレネオは、病院を訪ねた。16時を15分ほど過ぎていた。 #AbbaiareAllaLuna (a25) 2023/09/30(Sat) 5:03:33 |
【秘】 幕引きの中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ院内は清潔な空気で満ちていた。 容態は悪くないのだという。示された先の病室で、貴方は一人、未だに眠っていた。 その姿を認めた男は靴音を立てることなく近寄っただろう。 眠る姿をいつもの高みから見下ろす。上からではまだ遠かったので、すぐに腰あたりから折り曲げるようにして顔を寄せた。 色が白い。 けれど顔色はさほど酷くない。繋がれた点滴のおかげだろうか。 線が細い。 それでも今すぐ命を落としてしまうほどに儚くはないのだろう。 命がある。 たったそれだけの事実に、自分が酷く安心したことに気づいた。 男は更に腰を折り、頭の位置を下げる。肩口に顔を近づけたのは当然、噛み付くためではなかった。 顔を傾ければ僅かに上下する胸元が見えた。それでも足りずに手をかざせば呼吸を感じられた。未だ痕の濃い首筋に指で触れれば、生きている温度が伝わった。 しまいにくん、と鼻を鳴らして短く空気の匂いを嗅ぐ。血の匂いは僅かにもせず、ただ清潔な布の匂いと、その奥にほんの少しだけ消毒の香りの混じりを感じた。 貴方の負った傷は、遠からず治っていくのだろう。 それにようやく、心から安堵した男は上体を戻した。 #AbbaiareAllaLuna (-268) 2023/09/30(Sat) 5:05:11 |
【秘】 幕引きの中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ「エルヴィーノさん。」 無骨な指がさらりと頬を撫でる。 呟いた声を聞いた者は一人もいなかったはずだ。 男は暫くの間、そのまま貴方の傍にいた。 それは飼い主の目覚めを待つ愛犬の姿のようでもあったし、やはり貴方の眠りを守る番犬のようでもあった。 #AbbaiareAllaLuna (-269) 2023/09/30(Sat) 5:05:40 |
イレネオは、病院を後にした。20時の少し前のこと。 #AbbaiareAllaLuna (a26) 2023/09/30(Sat) 5:06:11 |
【人】 幕引きの中で イレネオ帰路に着く足は酷く重く、億劫だった。 元より姿勢のいいわけではない男の背が今日は更に丸く俯いている。日の暮れた暗さを心細いとは思わないが、明日から過ごさなければならない日々のことを考えれば自然気は沈んだ。 幾日の間を何もせず過ごすことになるのだろう。 どれだけの時間に耐えることになるのだろう。まるで未決囚だ。 趣味も何もない、訪ねるような友人もいない不明瞭な空白を思えば、知らずうちに溜息が漏れた。 こつ、こつ、と石畳を鳴らす足音はいつか砂利を踏む音になる。 裏路地を通るのはいつも通りの癖だった。 なにも近道というわけではない。ただ、街灯のない細い道を帰宅がてらにパトロールするのはこの男のルーティンだった。 始めた頃には時々目にしたチンピラなども、最近はとんと見かけない。 良いことだ、と男は思う。きっと良いことだ。 だからこの帰宅ルートは、任を解かれた今日だって変えるつもりがなかった。 ────そして、それがいけなかった。 #AbbaiareAllaLuna (90) 2023/09/30(Sat) 5:07:21 |
【独】 幕引きの中で イレネオがつん。 衝撃。背後から突然横殴りに吹き飛ばされ、側頭を酷く打ち付ける。視界が白に黒にちらついて足はたたらを踏んだ。 何事かと状況を理解する前にもう一度衝撃。 がつん。 同じ部分を路地を遮る汚い壁にぶつけた後、酷い音を立てて身体が地面に転がる。揺れる。揺れる視界と脳。上手く立ち上がることが出来ずにただ酷く痛む頭に手をやった。誰だ。どうして。何が。 「こいつだ」 「イレネオ・デ・マリアだ」 耳鳴りで歪む中、それでも聞こえた声は知らないものだった。 「誰────」 聞く間は与えられない。 がつん。 #AbbaiareAllaLuna (-270) 2023/09/30(Sat) 5:09:04 |
【独】 幕引きの中で イレネオ三度にわたって硬いもので殴り付けられた皮膚が裂けて、側頭から頬にかけてを生ぬるく濡らしていく。 眼鏡はどこかに吹っ飛んでしまったらしい。おかげで薄暗い周囲でも先程よりはよく見えた。 路地裏の暗闇から染み出すように人影が三人。 各々何かを手に持って、それで、瞳はぎらぎらと燃えている。暴力への高揚と、標的への憎悪の色。 対する男の瞳もまた怒りに燃えていた。真っ当な激昂だった。 出血は既に瞳に混じって、これの視界を僅か塞いではいたが。 「一体なんなんだ」 「ふざけるなよ……」 それでも男は立ち上がろうとする。長身がぐらついて、睨め付ける金が浅い光を放つ。 しかしそれもまた許されない。地に着いた右手の指先に金属の平面が振り下ろされる。 その残像の形と音は金槌だろうか────気づいたところでなにもならない。 めき。 嫌な音がした。痛みに動きを止めた横面に目の前の誰かの蹴りが入った。 「なんなんだって」 「仕事だよ」 そう言った声は、笑っているように聞こえた。 #AbbaiareAllaLuna (-271) 2023/09/30(Sat) 5:10:02 |
【独】 幕引きの中で イレネオ「 が ふ 」肉を打つ音。内臓の深くまでを揺らす音。 「ゃ め゛ 、ろ」何かで叩く音。ぱきん。小気味よく硬いものが割れる音。 「い゛ッ……あ、ぁ、あ 、あ゛ 」ぶち。ぶちぶちぶち。なにかを千切る音。引き裂く音。 「── 、────!」 ごり。ごり。ごり。ごり。 硬いものを幾度も幾度も念入りに削る音に伴って、血液が土を濡らした。 初めに側頭部への打撃。 ついで指先の破壊。主に腹部を狙った殴打。 口に捩じ込まれる錠剤。重ねて手指の粉砕。 踏みつけにされて取り剥がされる爪が数枚。 無事だった左手は鋸歯の往復で切断された。 最後割れた瓶の破片を押し込まれたのは口腔で、 握り込まれるのではなく横面をまた殴られる。 自分がやってきたことに似ていると、気づく余裕はあっただろうか。 まだ鼠が紛れ込んでいたのか、善良な警官が義憤で情報を売ったのか、それとも。 #AbbaiareAllaLuna (-272) 2023/09/30(Sat) 5:11:47 |
【独】 幕引きの中で イレネオ────鼓動は随分緩やかになった。 ざっくり裂けた舌では言葉も話せない。 唸ろうにも流れ込んだ血液が喉にかかって咳き込むことしか出来ない。 立ち上がろうとすることさえ酷く億劫で、試す前に不可能だと本能が否定する。 全身の痛みは既に隙間なく身体の表面にも内側にもひしめいていて、最早これを痛みと呼ぶのかどうかさえ定かではなかった。 じゃり。 砂の擦れる音。自分の身が痙攣したのか、それとも誰かが踏みつけたのか。 かち。 硬いものが触れ合う音。自分の歯が鳴ったのか、それとも誰かが立てたのか。 血混じりの視界は光を失って赤くすらない。ただ黒く、白く、濁って靄がかった景色だけが、濡れた金色に映っていた。 それを酷くゆっくりと動かして。 それでも動くものを追おうとして。 震えた 瞳が、 #AbbaiareAllaLuna (-273) 2023/09/30(Sat) 5:12:58 |
【独】 幕引きの中で イレネオどす。 揺れた。 体内に冷たい衝撃。 これは彼らの仕事であって、男の仕事とは訳が違う。 男のそれはあくまで言葉を必要としたが、今のこれは、むしろ言葉があっては困るのだ。 命までを奪われることをようやく肌に染みて悟った。 鈍った思考ではそれを現実と受け止めるにも時間がかかった。 叫び出して暴れるような体力はこれっぽっちも残っちゃいなかった。 どす。 衝撃。 身体がまた重なる。吹き出す血は既に温度を失いつつある。それと共に当然命も零れ落ち、果てる意識の狭間にあえかな息をする。 どす。 最後の最後。 脳裏に過ぎった顔は、 母でも、父でも、祖父でもなかった。 #AbbaiareAllaLuna (-274) 2023/09/30(Sat) 5:14:40 |
【置】 幕引きの中で イレネオ猫みたいな人だった。 痩せぎすで、億劫そうで、いつも顔色が悪くて。 気まぐれで毛並みの悪い、野良猫みたいだった。 それでも。 瞳だけはいつも、いつも鮮やかに花やいでいた。 あの目が困って伏せるのが、嫌いじゃなかった。 ────好きな花くらい、聞いておけば良かった。 #AbbaiareAllaLuna (L1) 2023/09/30(Sat) 5:16:45 公開: 2023/09/30(Sat) 5:20:00 |
【独】 幕引きの中で イレネオ (-275) 2023/09/30(Sat) 5:17:20 |
【人】 手のひらの上 イレネオイレネオ・デ・マリアの遺体は見つからない。 一巡査長の身柄は行方不明として結論される。 その捜索も、程なくして打ち切られるだろう。 それはマフィアから警察への手打ち表明であり、 それは警察からマフィアに対するけじめであり、 狂犬が病理を撒く以前に駆除されただけのこと。 誰かが言ったように、署長代理にも法にも見捨てられ。 誰かが言ったように、道理と因果に従って。 誰かが言ったように、地獄に堕ちる。 狭い路地裏では空すら見えない。 負け犬が月に吠えることはない。 #AbbaiareAllaLuna 悪人は、等しく裁かれるべきだ。誰かが言ったように。 (91) 2023/09/30(Sat) 5:20:23 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ折れて動かない左も、力比べによる消耗で落ちた右も。 まるで壊れた人形のようだと思考出来るだけまだマシだ。 そうして君 に 顔を見せない よう背け続けるが、顎に伸ばされ無理やりに向かされるようであれば、 それも結局、見え透いた結果しか齎さない。 「…………は、」 愉快そうな君に、精一杯の笑顔を返す。 それでも苦痛に歪む顔も余裕のなさも隠しきれはしない。 無駄な抵抗と言われればそれまでだが、 笑顔は己の心を守るための砦だからこそ崩せない。 せめてと、視線だけでもと逸らすことを試みるが それもまた、結局は無駄な抵抗となってしまう。 揺れる海が君の月に映し出される。 隠しきれない弱さが、間近で、 自らにも見える形で映されている。 男の部屋にある鏡は洗面台に取り付けられたものだけ。 本当はずっと、弱さを映すその存在がとても、苦手だった。 ▽ (-276) 2023/09/30(Sat) 5:22:38 |
【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ触れ合う額はきっと君に、男の異様な熱を伝えてしまう。 滲む汗だって触れ合うことになるだろう。 男にとってそれもまた、顔を歪めるひとつの要因。 気丈に振舞っていたのだと知られてしまうことが嫌だ。 己の弱さを暴かれていくことから、逃げ出したかった。 話し方を忘れてしまったかのように一度言葉を詰まらせ、 代わりに吐き出すのは熱い吐息だ。 それでも、急かす君に伝えなければならないのは、 「……ち、がう。許せない、のは……俺自身、だよ……っ」 それ以上に話すことはない。言っても分かるはずがない。 問われれば答える男ではあったが、 今この時だけは、その全てを晒け出すことはなかった。 男は、察しが悪い訳ではない。 だから、もしかするともう既に……と。 そう考えてしまう頭を、止めることが出来なかった。 それがより一層仮面を保つに障害となると知りながら、 どうしたって、自分よりも彼女を考えてしまうのだ。 笑顔がふ、と──ほんの一瞬、掻き消えた。 (-277) 2023/09/30(Sat) 5:23:41 |
【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノヒュッと、自分の喉から聞いたことのない音が出た。 翠眼は緩やかにさまよって、そうしてもう一度、君を見る。 「……止めても、無駄なんだろうね」 出来れば、知りたくない。そして、知られたくもない。 聞かれれば答える男ではあったが、 知らない答えまでは君に渡せないからこそ そうするしかないのだと、理解はしているが。 声をかける日なんて、あるのだろうか。 知りたいと思える日なんて、来るのだろうか。 お互いにその領域を侵さなければ、まだ。 何も変わらず、今と同じ"平和"で居られるはずだって。 悪夢を見ることの何が平和か。 そうでないことくらい、もうとっくに知っている。 それでも別に、恨んでいる訳じゃない。 だって顔は知らない、声だけの存在だ。 亡霊を恨んだって何も変わることなんてない。 …だからこそ、 この苦しみを向ける場所はどこにもなかった。 ▽ (-278) 2023/09/30(Sat) 5:52:44 |
【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ望まれて生まれたかった。 愛されて生まれたかった。 必要とされて生まれたかった。 ずっと、ずっと──生きていくのが、苦しかった。 涙は出ない。泣き方の辞書なんてとっくの昔に置いてきた。 代わりに浮かぶのは、泣きそうなほど顔を歪めた笑顔だ。 俺は要らないものだった。もうずっと、昔から。 ようやく手に入れた居場所でも結局また、 必要とされない、価値のない存在だった。 それでも生きてきたのはきっと、 本当は誰かに、その言葉を否定して欲しかったのだろう。 夢は終わらない。 これからもまだ、変わらない時間が続いていく。 それでももう少し、生きようと思えたのは───。 「……本当に君は、俺のことが……好き、だね」 破滅願望はきっと消えない。 いつかにきっとまた、終わりを求めてしまうのだろう。 それを否定されることは望めないし、変えられない。 それでもまだ少し、あと少しこれから先の未来を、 友人と、君達と、緩やかに、平和に過ごすとしようか。 「……ここを出たら、酒が飲みたい気分だ」 (-279) 2023/09/30(Sat) 5:55:54 |
リヴィオは、君と友人であるリヴィオは、柔く微笑み君との未来を思い描いた。 (a27) 2023/09/30(Sat) 5:58:09 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「あの日にあれだけ言ったのに……。 信じてくれてなかったのかあ?」 態とらしく落ち込んだ口調で呟けばふいっとそっぽを向いて口の端を機嫌よくあげた。 ああやっぱり少しはあるんだな、好感が見えるその姿で優越感に浸れてしまう。 この男がなにかに慌てふためくところなんて見たことがなかった。 もう滅多に見られないだろうがそれでも嬉しいものは嬉しい。 だから、誰かのものになってしまう前に欲しくなるのは仕方無いじゃないか。 「使ってもやるし、褒美もやる。 出来るだけ寂しがらせんが、俺が寂しがったらなんとかしろ。 お前が良いんだよ。傍に居るだけなら誰でも良いが それでも、俺の"相手"ができるのは、本当に都合がいいお前ぐらいしかおらんのだ」 たとえそこにどんな感情があるかわからなくとも、 確実に自分の役に利益になる物を手元に置きたがるのが俺だ。 大金よりもっと価値がある、そんな男が眼の前にいるのだから。 やはりこの口は口説かざるを得ない。そういうことにした。 そういうことにしておかないと、今まともに顔を合わせられない気がした。 ▼ #ReFantasma (-280) 2023/09/30(Sat) 6:56:19 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「……それともお前は。 この色男のことを遠慮すると?」 「そうというのなら、勝手に一人で歩いてくたばるかもなあ。 俺はそのせいで何人もの人間が悲しもうと気にしないぞ。 身勝手で自由気まま放蕩息子で銘打ってるんで」 きっとその時は、また誰かのように念入りに準備をして、何かをやらかそうとするのだけれど。 今はそんなことは関係なく。 ただ、裏切ることの許されない約束がそこにかわされるかだけ。 「なあ。俺を欲しがってくれよ、ロメオ」 #ReFantasma (-281) 2023/09/30(Sat) 6:59:33 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-257 >>-258 「違うの? それなら勘違いした僕が悪かったかな」 知らないことはたくさんあっても、その性格位はよく知っているつもりだった。 幼馴染が照れているのも、嘘をついているのもわかったけれど、その言葉を額面通りに受け取って、表情を緩めて笑う。 怪我のない左肩にあなたの頭が置かれれば、その頭を左手で柔らかく撫でた。 「……居ないの? 血の掟は知ってるけど……あまり守られて無くない?」 これはあなたのことを言ってるわけではない。 事実、マフィアと関係を持っている知人が周りに多いのだが、男はその事をよく知らない。 あなたとの関係を外に漏らすことがなかったのは、掟に裁かれることがないようにと、勝手に配慮していたことだった。 ▼ (-282) 2023/09/30(Sat) 7:37:13 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ「…………逃げ切ってくれなきゃ、困るよ」 呟かれた言葉が、あなたの耳に入ったかはわからない。 男は本来、正義感なんていうものはあまり持ち合わせていない。 あなたを捕まえると豪語する理由は、たった一つだけ。 あなたを警察に渡す気はない。 ただ、それだけだった。 恋愛感情なんて、とうにない。 だけどその重い鎖が切れることも絶対にない。 すでにそんな感情は超越して、重く歪んでしまっている。 それでもはっきりと、僕はキミに愛していると告げることが出来る。 何だって出来る。 死ぬことだって別に怖くないのだ。 あなたに幸を与えられれば、それだけでいい。 これはだって、僕に出来る、最大の我儘なんだから。 花浅葱の瞳が、遠い異国で知られるダンダラのようだ。 そこに『忠愛の誠』が存在しているというのなら、 その相手は決して、警察へのものではなかった。 (-283) 2023/09/30(Sat) 7:40:36 |
【人】 口に金貨を ルチアーノからん、と靴の先で何かを蹴った軽い音がする。 繊細なグラスに罅が入ったそれは、何の変哲もない眼鏡であった。 裏路地をただいつものように歩いていた男は首を傾げつつも、 それを上着のポケットに入れてそのまま先へと歩んでいった。 「……、何かいるなあ」 漂ってくるのは慣れない鉄の香りだった。 鼻が利く犬でなくとも想像できてしまう程の量が流れていることがわかる。 すえた匂いはしない、まだ時間があまり経っていないのだろうか。 さらに足を向ける。 ここは自分のシマの傍だから、治安は正しく守っていかねばならないと。 #AbbaiareAllaLuna (92) 2023/09/30(Sat) 7:53:53 |
【独】 口に金貨を ルチアーノ「ああ」 目に入った赤。ついでに白と黒。最近よく縁がある配色だ。 この眼鏡もその男の持ち物であったな、と漸く思い当たった。 男の持ち物など覚えて居られなかったから、少しすっきりしたような気持ちになる。 「そうか、お前さんかあ。イレネオ・デ・マリア」 それは酷く冷静で、まるで笑みを携えるような穏やかな声で。 暫く他人事のようにその死体を見つめていれば片手で携帯を取り出し連絡をする。 『……ラウルだな? ゴミが落ちてるんで片づけに来てくれ。 ああ、絶対誰にも見つからん場所に片づけろ』 その言葉に、同情も憐憫も慈しみの欠片もありはしない。 誰かの縁も絆も配慮する心も用意などはしていなかった。 #AbbaiareAllaLuna (-284) 2023/09/30(Sat) 7:55:40 |
【独】 口に金貨を ルチアーノ「さて、……酷い有様だ、右手はぐっちゃぐちゃだな。 誰がやったんだ? 直ぐには思いつかんな、恨みが多すぎる。 大方上が殺し屋でも雇ったか。 まあなんとも、絶対に死ぬようなことばかりしかされないで。 顔見ておくか……あ、駄目だこりゃ」 黒いずた袋にその遺体を入れるまで、男はもうしばらく辺りを見回った。 見つけたのは比較的綺麗なままで切り落とされ転がされた、左の手首だ。 持っていけるのはそれぐらいであった、しかし、さて。 「……んー。これを土産に持っていくのは趣味が悪いか」 そうしてやってきた男の部下により遺体は瞬く間に片付けられ。 争いの形跡は最小限に隠滅させられ、残ったのは黒く染みついた血の跡だけ。 結局、小さなずた袋も一つ用意された。 #AbbaiareAllaLuna (-285) 2023/09/30(Sat) 7:59:45 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ路地裏の前に用意された二台の車のうち、大きな黒いずた袋を乗せた車が男を乗せずに何処かへと向かっていく。 「うちの犬も仕事が早くなったなあ。 猫が関わらなければ本当にいい仕事をする。あ。 ……今日は猫にすれ違わんかったな、エキスパート失格か? まあいい」 車が向かう目的地は知っている、だが自分がそこまでついて行ってやる気もなかった。 そこまで自分達は仲もよくなければ情もない。 俺の方で悪かったな、クソガキ。だが別れの挨拶ぐらいは送ってやろう。 「Notte notte e sogni belli, それでは御機嫌よう」 #AbbaiareAllaLuna (93) 2023/09/30(Sat) 8:05:00 |
【置】 口に金貨を ルチアーノ路地裏を縄張りのように歩くどら猫は、常に不幸の傍に、何かを奪って去っていく。 どら猫は気にしない、悪意に手を染めることも。善が尊ばれないことも。 そこには常に理由があり、誰かの利益の為に何かが淘汰され続けている。 世界は独りに優しくなく、価値がわからぬものに救いなど手に入らない。 そんな現実をただ見て歩き、通り過ぎてゆくだけの人生。 仕組みさえわかってしまえばそこまで悪い物じゃあない。 今日も男はその道を歩く、止めてしまえばそれこそ生きることをやめてしまうのと同じだから。 #AbbaiareAllaLuna (L2) 2023/09/30(Sat) 8:06:24 公開: 2023/09/30(Sat) 8:10:00 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ…一緒に。 うん、とまた頷いた。 でも。言って、どうするんだろう。 それで、何か変わるんだろうか。 そう湧くのは女の場合、仕方がないことだった。 突然の喪失ならばとっくに識っていた。 それだって乗り越えてきたはずだった。 だからこの場合、信じたのはやはりあなたの言葉だったように思う。 手当のされたこの手に直接口付けが触れずとも、そこには熱がともるようではあったから、それだけをただ、頼りにしていたのだと思う。 手招きに応じて、敷かれた毛布の上へ。 ぺたりと座り込んで、あなたへ手を伸ばす。 やけに控えめな甘え方だった。それでもそうできたのは、きっと幸なことだった。 横たわって、目を閉じる。いつものようにすぐに眠れそうにはない。 瞼の裏には、ずっと同じ人の顔が流れていた。 幼子が、いつだって心の中にいる。 でもその幼子は、『 』に甘えることだけが本当に下手くそだった。 (-286) 2023/09/30(Sat) 8:49:53 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「大丈夫だよ、あいつらは。」 此処に来ていても、来ていなくても 話をしていても、していなくても。 同じ言葉が、男からは返ってくる。 もう彼らは上手くやれるから。 そこに己は関係ない。いや、関係ない側に置いて欲しい。 A.C.Aに身を置く時に既に決めていた事だ。 大切ではあるが、手を離れて欲しいからこそ、なのだろう。 「むしろ今の俺に、あいつらは関わるべきじゃない。 余計なもんが降り掛かりかねんだろ。」 何を選ぶにせよ、どうするにせよ、だ。 「そうか。適当にもう暫く、な。 警察…は続けなさそうだよな。やっぱり辞めるのか?」 きっとルチアーノが何か言ったのだろう。 少なくとも死ぬ気が今はなさそうであることにホッとする。 緩みそうになる本音を、そっと抑え込んだ。 (-287) 2023/09/30(Sat) 9:15:58 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「っ…!?」 それは、一瞬のことだった。 読みを違えて受け身に走っていた身体は 容易に引っ張られて、その勢いのまま、机の角へ。 バキッ 鈍い音が、胴から響く。 1本は確実に折れ…周りの数本も罅くらいはいったか。 もしくはまとめて折れたかもしれない。 息が漏れ、衝撃から遅れてやってくる激痛に まともな受け身も取れずに床に叩きつけられるだろう。 「あ゛、がはっ、ああああっ!」 胸を抑え、蹲る。 脂汗が滲み、止まらない。 一時だけ、その口は言葉を失うだろう。 そして、抵抗する余地も今少しは、ない。 (-289) 2023/09/30(Sat) 9:27:30 |
【独】 マスター エリカ/*>>0:178 #m_ヴィンセンツィオ 歩調のゆったりさと気軽さいいな。秋の夕暮れに合うねぇ。 > この街の特産の花は一年に何度も白い花を咲かせる。 特産の花はなんだろう、イタリア国花のデイジーかしら。 > 長く咲き続ける花が、次々と開花するので、長期にわたって庭を彩ります。 成程ね、ありがとうグーグル先生。いや違う花だとしても教養〜〜〜〜〜!! 花の特徴を知っていてこの表現になるのはセンスがおよろしいんよ。SUKI (-294) 2023/09/30(Sat) 10:04:21 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ「……いいことを教えてあげよう、ニコ。 大丈夫だと、そう決めるのは君じゃない」 何を思うであれ、アリーチェの姿を見ていた男は、 あれを大丈夫などと口にしたくなかった。 だから話せ、そう言っている。言わなければならない。 「上手くやれるから話さなくていい、それは違う。 だからこそ、話をしておくべきだって言ってるんだよ」 と、そこまで言って男は右手をぶん!と横に振る。 避けなければ君の頭にヒットする予定だ。 ついでに言うと痛み分け、男も自らの傷で顔を顰める。 その場合はかなりの間を置くのだが。 「………あぁ、そうか。それなら俺が彼らに話しかけるか。 今の俺は本当に無敵だよ、何せ肯定されまくってるからね。 A.C.Aだった俺を肯定する甘い人間が多いんだ」 困ったものだね。そう口にする男の口調は柔らかいものだ。 上手くいかないなと何度思ったことか。 「で、警察を辞めるかどうかだったか。 …もうとっくに辞めてるよ、有給届と叩き付けてきた」 真っ当に警察をやってきた男は、 去り際に真っ当ではない辞め方をしてきたらしい。 当然色々とあったがどうせ、この腕では暫く働けそうにもないのだ。 (-298) 2023/09/30(Sat) 10:32:51 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → favorire アリーチェ「不思議な諜報ルート……?……わっびっくりした。」 テレビのチャンネルみたいにころっと表情が変わった 貴方に驚いて声をあげて。 昔だって、交流会の時には1日お泊りしたりしたのだし。 だったら一緒に住むのも大丈夫かな、と思ったのだけれど。 やっぱりもう大人だし、そういうのは嫌なのかしら?と 首をかしげて……… 「……あら!ふふ。よかったわ。 帰っても誰もいない生活ってちょっと寂しかったのよ。 疲れて帰った時にアリーチェが出迎えてくれたら、 アタシ、今よりもっと頑張れちゃうわ♡」 もちろん、貴方の帰りが遅くなった時は ちゃんと出迎えてあげるからね、とウィンクして。 一つ屋根の下、きっと色々なこともあるだろう。 ……乙女の貴方には少し、大変な日々となるかも。 「それじゃあ、退院したら貴方の荷物を運び出さないと。 アタシのお家も片付けて……素敵なお家にしましょうね。 何か要望があったら遠慮なく言ってね。アタシだって」 「アリーチェの……愛する家族の味方なんだから。」 手を伸ばしてよし、と頭を撫でようとするヴィットーレは、 やっぱり昔と変わらない。 貴方にとってはきっと少し物足りないくらいに。 これがその心持ちを変えるにはやっぱり…… "3つ"の重荷を下ろす必要があるのだろう。 きっとこれから、長い戦いになるはずだ。 (-299) 2023/09/30(Sat) 10:33:16 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「や」「う……」「は? ズル……何?」 ぐう、と色々を噛み殺した声。 言葉の合間合間に挟まるのは返事にも満たない、 口の中だけで完結したもごもごとした言葉。 急にそんな事を言うのもずるいし、 あの日を引き合いに出すのもずるい。 あれはあの日の頼み事の通りにしただけで、 あの時だけだと自分に言い聞かせてきたのに。 恋でもない、愛でもない、けれどただ本当に好ましかった。 確かに期待をしたのだ。 所有してくれるかもしれないと思ったのだ。 尊敬していた。信頼があった。心を許していた。 この人の頼みなら本当に何でもできると思っていた。 だけど自分から手を伸ばせない。人畜生にその権利はない。 せめて道の行く末がどうか善きものになるようにと、 自分はずっとその手伝いをしていようと思っていたのに。 「……遠慮ぉ…………?」 喜んでいる筈なのに、 きっと自分は今随分苦しそうな顔をしているんだろう。 ▷ #ReFantasma (-300) 2023/09/30(Sat) 10:41:49 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「そんなの」「そんなの許されるんならしませんよ」 「そんな事もさせませんよ、 あんたが居なくなんのが嫌でこっちは、」「……はあ」 噛みつくみたいにそう言って、深く息を吐く。 都合よく誰かの岸辺にある船のようなものでいたかった。 これからもきっとそう在る事は変わらない。 けれど、錨を降ろすのはここがいい。そうしていいのなら。 心の裏側を焦がされるような後ろめたさは今は無かった。 きっと自分がこのままでいいからだ。 これはあの時とはまた別の『許し』だった。 「……欲しがっていいなら」 「そうします。遠慮なく」 裏切るだなんて、可能性の欠片もこれには元より無い。 波の音がやけに遠く感じた。 #ReFantasma (-301) 2023/09/30(Sat) 10:45:33 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「そりゃどういう… あだっ!? 」言葉を返す前に、頭に貴方の右手がヒットした。 思わず、という様子で頭を抑えるその表情は 何とも訝し気な様子だ。 この男は、頑張る、と前を向いたアリーチェしか知らない。 止めるなよ、と足を踏み出したテオドロしか知らない。 だから大丈夫だ、と思っている。 右手の薬指に、目線が落ちた。 ネイビーブルーはまだ、そこにある。 「ちょっと見ない間にそんなことになってるのか。 馬鹿だなぁ…首謀じゃないとはいえ 街中を混乱させた法に従った奴らだってのに。」 苦笑いが零れ落ちる。 「分かった、分かったよ。 後でちゃんと様子を見に行く。 けど、ままならねえな。」 「お前じゃないが、俺も消えるつもりで居たってのにさ。 そんな風に言われたら、おじゃんだ。」 貴方の前では、ただのニコロでも許されるだろうか。 (-302) 2023/09/30(Sat) 11:31:40 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 月桂樹の花 ニコロ「精神的な方だな、怪我もして余計に弱る。 お前に会うときも格好つけたがる、 それが上手くできないと落ち込む、完全に悪循環だ」 どうして自分たちの気にかける彼が落ち込むのか丁寧に説明をする。 理由なんて詳細にはしらないのだ、それでも表面で見えることだけでもある程度の推測はできて。 「破滅云々はしらんが、俺がそうだからよーくわかる。 こういうときは一人がいい。 だけど、……誰かに来てくれると救われる。 そして少しでも自分の事を好きなやつの声が聞けるだけで前を向ける。 お前が、絶対あいつを離さないってんなら。 早く怪我を直して引っ張れるぐらいになってやれ。 無理やりじゃないぞ、全部同意でな。 ……お前は俺の幼馴染になんとなく似てるからアドバイスだがー」 「簡単に幸せや生きがいを与えられると思わんことだ。 自分が幸せになって、迷わなくなってから、 ようやく他人に幸せを与える余裕ができる。 それができないなら背伸びせずに一緒に歩け、以上。行くぞ」 そういって貴方の痛むであろう体を無理やり持ち上げる。 薬のせいでおかしくなってるかはしらないが、運び出さなければ意味がない。 肩を貸すか、歩けもしないのなら背負って外に向かおうとするだろう。 (-303) 2023/09/30(Sat) 11:48:34 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-282 >>-283 「悪くは、ない……いや……。 今思えば本当にお前以外見てなかったのが恥ずかしいんだ。 子供の頃は全部お前優先にしてたから……」 その頃から向けている感情は変わらない。 大事なひとつ下の幼馴染、歳の違いなんて気にしないで。 一緒にいられるために周りの媚を売れた、文句を言ってくるやつの排除もした。 その時から貴方に対する感情はとっくに歪んでいた。 愛でも恋でもなくて、きっと純粋な友情ではなくて、それでも失いたくないものだった。 「まあまあ……守られてるぞ。というか隠されとる。 厳格に気にしてるのは俺より上の立場のやつだ。 下の輩はすこーしだけ緩いんでね」 今の地位を保っていたのも、貴方との交流を咎められないためもあった。 血の掟を交わしてしまえば自分はきっとそれに従うようになる、 貴方に会うなと言われるのまでは良い、殺せと言われたらどうすれば良い? そんな日が訪れてしまうぐらいなら、きっと自分は此度の騒動のような大事を起こさないと言い切れないのだ。 世界と貴方を天秤にかけて釣り合わせることが出来る。 今はそれが落ち着いているからこんなに穏やかでいられるけれど。 ▼ (-304) 2023/09/30(Sat) 13:20:38 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ「…… 俺はマフィアだからなあ 」愛してる、誰にも言えないと思っていた言葉。 あなたにかけられたとき、そのままそっくり返せると思った。 あの牢屋で揃いの首輪をつけられて、 確かにその言葉に懐かしさと切なさを抱いてしまったから。 何だってできる。 死ぬことだって別に怖くない。 貴方が幸せであれば、それだけでいい。 これは我儘なのか? 俺はいくらでもし続けていたいのに。 終りが来るその日まで、穏やかに笑っていたいだけだったのに。 (-305) 2023/09/30(Sat) 13:21:48 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ>>-304 >>-305 「……エル」 貴方を誰かに渡したくなどない。 とうに、恋愛感情など抱いていないが。 なんであんな奴に大切な幼馴染をやらなくちゃならんのだ。 それなのに、どうして、 これ が大切だと思ってしまうのだろう。この手を離されてしまう、きっと約束以外の心は遠ざかる。 真に俺の手から零れ落ちていくのだと思い知らされる。 「……」 好きだから、貴方が望むものがわかってしまう。 本当に、俺は、誰かの傍にいるだけで何かを奪ってしまう人生を送ってきた。 それでも歩いて進んで、知るものかと。自分の為に生きてきた。 罰をくらうというのなら、今日今この瞬間なのだと思っている。 身体を改めて離せば、 貴方へと紙袋に入っていた小さな包を一つ渡した。 そこには何の変哲もない片方のレンズが割れた眼鏡が入っている。 「見舞いだ、受け取れ」 その声は冷たく。 貴方が望むような幼馴染の声ではなかったかもしれない。 (_4) 2023/09/30(Sat) 13:29:35 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロどういうも何も詳しい話はしてやらない。 何も出来なかったことを悔いる気持ちは知っているが、 その奥底、確かな思いまでは分かってやれない。 だけどそれは、そう思うのは君だけじゃないってこと。 最後に見た姿が確かさなのか。 それを言うなら、俺がA.C.Aでなければ君は "いつも通り"の俺に大丈夫だと言うんだろうな。 まぁこれは、持たざる者としての妬みだろう、きっと。 痛みに顔を顰める間、そんなことを考えていた。 「……人間っていうのは案外、そういうものなんだろう」 ふと、彼女と語った出来すぎた未来を思い出す。 形は違えど、これもまたその未来なんだろうな。 「それに、それなら俺に道を作らない方が良かったな。 そういう甘さが、未来に繋がっているんだよ。ニコ」 『兄』として、『巡査部長』として、 『いいおまわりさん』として、 そのどれかでいろと頼んだ覚えは一度だってないんだ。 後悔したくないのなら迷わずそれを選べ。 選ぶのは"君"で、"君"がどう在りたいかが答えだった。 …あぁ、勿論。"全部受け入れる"とは言わないけどね。 (-306) 2023/09/30(Sat) 13:40:20 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオばづん、と何かを貫く音がして、 ばちゅ、と粘り気のある水音が響いた。 「が、あ、は、は、ああああああああッ!!」 獣のような咆哮が響いて、ぼだぼだとした液体をまき散らしながら男がのけ反る。 涎をまき散らしながらごろごろと床を転がり、喘ぐように息が何度か、途切れる。 それでも、過剰なほどに分泌されたアドレナリンが 哄笑を引き起こし、留まることもなくは、は、はという甲高い音がこだまする。 「い、いっで、でええ、ははははは、いってぇ、なあ、あああぁ、ははははは!!」 「おい、警っ、官としての、仕事だぞ、早くしろよ、治療だよ」 「ああ、痛ぇ、なあ、ははは、ほんっと、仕事できねえなぁ、お前、助かる、──――」 がなるように声をまき散らしながら。 ぼたぼた、ぼたぼた。 涎か、あるいはぐちゅりと潰れた水晶体か、その判別もつかないものが床に落ちる。 そのままぐしゃり、と男の巨体がつんのめるように倒れ込むと―― ──哄笑も、言葉も止まる。 口の端から泡を吹いて、アレッサンドロは気絶していた。 (-307) 2023/09/30(Sat) 13:48:46 |
【妖】 新芽 テオドロ「口さえ利けるならできる仕事は幾らでもありますから、 幸いにも税金泥棒になることはなさそうだ」 悪逆の限りを尽くしてくれたとはいえ親しかった、 因縁深い警部の話になれば、ほんの少し渋い顔をして。 余罪の追求に関する話を幾つか述べた後に、 彼を打った下手人の捜索が行われ始めていることも語る。 その方針について口利きできないわけでもないが、今はそこまで言う必要もあるまい。テオドロ・アストーリは兎も角、この警部補は何も知らないのだから。 「尊重を身に着けたのは良い傾向だな。 この調子で俺の不機嫌を悟ったときに、 いつでも離れられる心掛けをしていてほしいものだが」 少なくとも今は言うほど機嫌が悪く無さそう。 それよりも並べられた食事を見て、「これが怪我人の食事か……」と苦笑をしつつも賞味を楽しみにしている。 「俺の目の前で独り芝居をしないでほしい。 そっちに滑らせるくらいはできるから、 ちゃんとこっち宛に乾杯をしてくれ」 ここで無理を言っても仕方ないことは分かるから、譲歩案を提出する。暫くは強く出られなさそうだ。 ($4) 2023/09/30(Sat) 14:30:53 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ>>=7 気遣いを感じる言葉には『ありがと〜』と嬉しそうな声、もちろん企みにも気が付かないままだ。 そうして猫については…… 『え?飼ったの?やだーってしてたのに。 あはは、そっか、でもならよかった。 遊び相手になるかも、なー』 足元で丸まってる白い毛玉に話しかけてから、それなら問題ないかと一安心。 じゃあこいつも連れてくなとそれだけを伝えて、電話を切ることだろう。 まだ人々の活気は遠い街中を伝えた通りにのんびりと歩いていく。 ようやく会えるなあ、とか。どういう心変わりがあったんだろうなあ、とか。 考えながら歩みを進めていれば、目的地までは案外すぐだった。 いつぞやもお泊まりをした貴方の家の扉前。 左の指先を伸ばしチャイムを鳴らす、ピンポーン。 「ろーーにいーーー」 ついでに子供みたいに呼びかけながら。 (=8) 2023/09/30(Sat) 14:56:13 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ以前だったらかっこいいを届けた後はそうだろうと言わんばかりに頷いていた貴方が、少しそわつく様を見ればなんだか微笑んでしまった。 咳払いも誤魔化しだと伝わってしまって、さらに笑みは深まっていたことだろうか。 ベンチ上では大人しく問いの返答に耳を傾けている。 最後までを聞き届けてから、目を細めて見上げる顔はやっぱり微笑んだまま。 「そっか、ならオレとお揃いだ」 「オレもさ、警官やめないといけなくなったんだけど……じゃあ戻りたいかって言われたらそうじゃなかった。 何がしたいも、何がしていきたいもわからない、でも……」 「── 自分の道を、歩いてみたい 」耳にしたばかりの言葉たちは、簡単に自分のものとしても形作ることができる。変な感じだ、だけどそれがうれしい。一人ではないようで。 「……ねえ、オレたちって本当に似ているのかも。引き取られた先に振り回された同士ってやつ、せんぱいもきっとそうでしょう?」 「がんばってきたんだよね、その中でオレにかっこいい姿もたくさん見せてくれてた。 ……だから今もさあ、やっぱりせんぱいってすごいなって思うんだ。せんぱいがそうしてくれていたから、立つための勇気を貰えたオレがここにいる」 「ずっと感謝してる。 ……改めて、ありがとうを伝えたかったんだ」 "大丈夫"を幾度繰り返したことだろう。手渡してもらえたおまじないは絶えず胸の内にある、きっとこの先も。 (-308) 2023/09/30(Sat) 14:57:21 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ名を呼ぶ声を聞けば弾かれたようにそちらへと顔を向けて。 「──ねえさん!」 珍しくこちらから両腕を伸ばし、駆け寄ってきてくれた貴方をぎゅうっと強く抱きしめることだろう。 伝えたいことがある、言いたいことがある。その為に呼んだくせに。 言葉はすぐに出てこなかった、ただ細い肩に顔を埋めて。 「…………フィオねえ……」 その存在を噛み締めるように、そのぬくもりを確かめるように、もう一度呼んだ。 抵抗がなければ少しの間そのままでいて、とはいえその内にはちゃんと顔を上げ貴方を解放することだろう。 「……あはは、話がしたくて呼んだのに、会えたの嬉しくて全部吹き飛びそうになっちゃった。ごめんね」 「ええと……あのさ。 オレ、家を出たんだ。それでその内、街も出ようと思ってる。 色々あって……なんていうか、ニーノは死んだことになって、それで今後はフレッドとして生きていこうと思うんだけど。 死人が歩いてたらマズイからそのへんのね、調整、それから自分探し……?うん、とりあえずそんな感じで」 「だからねえさんともちゃんと落ち着いて会いたかった。 ……急に、いろいろごめん」 ひとまずは随所奇妙なところがあっただろう理由の説明をして、とりあえずの貴方の様子を伺っては表情を覗き見る。 (-309) 2023/09/30(Sat) 14:57:56 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-304 >>-305 >>_4 「……ちゃんと気づいていればよかったな」 そうしたらこんなすれ違いなんて、最初からなかったろうに。 あの頃は純粋に幼馴染を慕っていたのだと思うけれど、重い感情に不快感を示すことなどきっとなかっただろうと思うし。 今思えば、初恋はラーラではなかったのだ。 ラーラを好きになって、想いを告げた日。 「私はルチアーノが好き」だと言われ抱いたのは、ラーラに対する嫉妬心だった。 ラーラに振られることよりも、ルチアーノを取られる事が、嫌だった。 それは友情の域をゆうに超えていると指摘できるほどに。 「ふぅん。 そういえばルチアはまだ血の掟は結んでないんだったね」 それをきちんと守って初めて上に上がれるというのなら、本当は自分たちは会わないほうが良いんだろう。 でもそんな事、出来ないよ。 もう疎遠だった頃みたいには戻れない。 あなたがずっと無事であるように手を回して、見守っていたいと思っている。 あなたの心が、悪いものに囚われてしまわないように。 ▼ (-310) 2023/09/30(Sat) 15:52:35 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-304 >>-305 >>_4 >>-310 「なにそれ、わかってるよ」 あなたがマフィアであることは、ちゃんと。 でもこの時、まだわかってなかったんだ。 あなたの愛の重さもまた、とっくに歪んでしまっていたんだって。 すれ違った重すぎる心は時に、鋭い刃になって互いを傷つけ合う。 けれども。 その原因を作ってしまったのは、紛れもなく、何も知らなかった愚かな自分だ。 ▼ (-311) 2023/09/30(Sat) 15:53:43 |
エルヴィーノは、不思議そうにその紙袋を見た。 (a30) 2023/09/30(Sat) 15:54:07 |
【魂】 花浅葱 エルヴィーノ>>-304 >>-305 >>_4 >>-310 >>-311 「見舞い……?」 冷たい風が、互いの髪を揺らした。 手渡された小さな包をしげしげと見つめて、「あけても良い?」と聞いてみる。 駄目だなんて言われることはないから、左手で苦心しながら包を開いてみれば、そこには―――――― 壊れた、丸い眼鏡。 レンズが片方割れてしまっていて、それが新品の物でないことは誰にだってわかる。 ヒュ…… 乾いた息を吸った。 吸ったけれど、まるで酸素が入ってきていない、気がする。 だって、脳裏に浮かんだのはあの。 ギラギラと輝いた、金の瞳で。 「な……で……。 これ、は……っ、どうし、」 目の前に居る幼馴染は、マフィアだ。 聞かずとも何が起きたかなんて―――――― わかってしまう 。「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」 (_5) 2023/09/30(Sat) 15:58:20 |
エルヴィーノは、が上げたその慟哭は真昼の庭に響いた。 (a31) 2023/09/30(Sat) 15:58:36 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオあなたは騒動の後、署に出向く機会がいくらかあっただろうか。 それともあなたの友から話を聞く機会があっただろうか。 いずれにせよ、あなたが教育係を務めたひとつ下の後輩が、銃に倒れ入院しているとの知らせだ。 怪我の詳細は肩関節損傷、鎖骨下動脈損傷。 噴水のように吹き上がった赤い鮮血は、その場に居合わせた警官が圧迫止血を施し命をとりとめたらしい。 あの日仰いだ協力の約束。 その仕事の最中、署長代理逮捕の大金星との引き換えにしては大きすぎる代償だ。 あなたがその病室を訪れるのはいつ頃だろう。 1週間以内の事ならば、ベッドの上の男はあなたににこやかな笑みを浮かべて迎えるはずだが――――― (-312) 2023/09/30(Sat) 16:19:35 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>5:-513 「知るか、お前には聞きたいことが沢山あったんだ。 だけどなあ、聞くよりも調べてやった方が、 "嫌な顔"が見れると思ったんでね」 楽しげな様子なのには少し首をかしげたが、 本当に嫌な様子は見えないので内心はほっとしていた。 「そうだな、覚えてる分を除けば今後も お前の名前 だけは覚えておこう。そろそろ女の名前を覚えるだけで手一杯だったところだ」 全てが貴方自身なのだろう。 そして見えないそこにも貴方がいる。 それをしっかりと自覚できればもう不安なものはない。 いくらでも探してみせるし、いくらでも覚え続けてやる。 人は変わるものと変わらないものがある、 それがちょっとオカシイのが目の前の奴というだけだ。 「大盤振る舞いだな? どうした、今度槍でも振るのか。 終わったらカンターミネとも食事をする出所パーティーでもする予定なんだ。 さっさとこの優秀な情報通が解放されるのを待っていてくれよマイハニー」 貴方が自分に向ける感情も自分が貴方に向ける感情も、 何かと比べれば些細な者で、それでもかけがえのない唯一のもの。 逃がそうとしなければ、執着もそこそこに。 犬とはまた違う方法で、猫らしい男は貴方を見つけ続けるのだろう (-313) 2023/09/30(Sat) 16:26:06 |
【妖】 路地の花 フィオレ優秀な人は引く手数多でいいことねえ、なんて言う。 その分頼られて大変なのだろうけど。 「そう。妥当な処分が下るといいわね」 下手人の捜索が始まっていると聞けば、少しだけ目をそらすようにして。 それでも、それ以上の動揺はない。 協力者がうまくやってくれているだろうから、よほどのことがなければ足がつくこともないだろう。 そして何より、目の前の彼に知られたくはないものだったから。 あの時のことを見られていたなんて、彼女には知る由もないのだ。 「もう!前から尊重はしてたと思うんだけどっ」 「あなたが何してようと勝手に喜んでる女なんだから。 まあ……しつこく付きまとってるところを言ってるなら、たまには放っておけって言うのも分かるけど」 「不機嫌になったくらいで離れるような女、つまんないでしょ」 黙って近くにいるくらいはするのだろうけど。 「病人食の方が好みだった?」なんて揶揄いながら。 「それなら許してあげる。軽めのグラス選んだから、そんなに力入れなくていいわよ」 それじゃあ、と気を取り直して。 「お疲れ様、テオ。乾杯〜」 テーブルの上で、グラス同士をぶつけ合うのだろう。軽い音が響いた。 ($5) 2023/09/30(Sat) 16:56:31 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラいつもよりずっと控えめな甘え方。 それはどうしても、何かを我慢するようにしか見えなくて。 心の内がじくりと痛んだ。 その手を取って、ゆるやかにいざなう。 引きずる事も、迎えに行くことも簡単だ。 でも、カンターミネは、出来ればあなたの意志で 傍へ来ることを選んでほしかった。 これが強制では、ただの自分のエゴではないと信じたかった。 横たわったその顔にかかる髪を、少し退けてやる。 いつもの寝顔と違う表情にまた、じくり。 小声で運転手に指示を出すと、向き直って。 「……、una regina fulgida e bella al pari d'una fata siede accanto alla culla tua dorata...」 少しでも。ほんの少しでも、今が穏やかであるようにと、 前と同じ子守歌を歌って、怪我のない箇所を撫でさする。 やがて、ラップトップの端末から通知が届くのだろう。 あなたを起こすまでの間、これはずっと傍から動かなかった。 (-314) 2023/09/30(Sat) 16:56:38 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 口に金貨を ルチアーノ「そっか。 ああいや、無理に会おうとは思ってねえよ。」 素直に貴方の言葉を聞いて。 頷いている。 「ハハ、手厳しいな。 無理矢理引っ張った覚えはないが、心に留めておくよ。 …幸せで満ち溢れた人間なんて居るのかね。」 自分の幸せなど長らく考えていなかったから そんな風に零す。 無理矢理体を持ち上げられると 痛みに呻くだろう。 肋骨と足が特に痛むが 肩を借りれば何とか気合いで動くことは出来そうだ。 (-315) 2023/09/30(Sat) 17:01:28 |
【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ>>-216 「……よかった。 何だかんだ、正直言うと選んだからには、ね。 喜んで貰えた方が嬉しいから安堵したわ」 両の手を合わせながら喜びを素直に露にする。 この辺りの喜楽の感情を正直に見せる所は昔から変わりのない所で。 「実は推理小説、あまり詳しくないのよね…… あ、モンタルバーノは私も好きよ!あれ、あれはミステリーの方になるんだっけ…… だから買おうとした本は一回」 「……警察を、やめる事になる人が少しいそうね。 こればかりは皆各々の考えだから何も言えないけれど、 寂しいって気持ちはあるわね。 私が言えた話じゃないけれど…」 なんせマフィアになろうと考えていた女である。 寂しいですら本来言ってはいけない話かもしれないが、皆なら許してくれるだろうとの甘えだ。 「さて、本屋が閉まる前に一度どんな本が並んでるか 見に行ってこようと思うわ。またねエルヴィーノ。 次の機会には本をどっさり持ってくるわ」 この女の事だから、加減しろと言うレベルの多さの本を持ってくるかもしれない。 (-319) 2023/09/30(Sat) 17:32:14 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ「あら……珍しい、フレッドの方から来てくれるなんて」 あなたがぎゅうと強く抱き着くと、驚いたような顔をするけれど。 すぐに穏やかな笑みを浮かべて、少しだけ低い位置にあるその頭を撫でてやる。 フィオねえだよ、と優しい声で口にして。 あなたが熱を出してしばらく会えなかったあとに、久し振りに再開するとこんなふうに顔を埋めてくれたっけ。なんて懐かしく思いつつ。 「解放されたばっかりなんだもの、私だってこうしたかったわ」 「だから気にしないで、ね」 ちょっと座ろうか、とベンチを指して。 話が短くたって、まだ出所したばかりなのだ。体力が心配だ。 そうして落ち着いた状態で、あなたの話を聞くことになるのだろう。 うん、うん、と口を挟まずに相槌を打ちながら。だんだんと表情は曇っていく。 「そう」 「街を、出るんだ。……気軽には、会えなくなっちゃうのね」 寂しいな、と。飲み込めずにいた言葉は素直に口をついて。 しょうがないことだとは分かっているのだけれど。 「でも、フレッドが決めたことなんだもんね」 「お姉ちゃんなら、応援しないといけないよね」 (-320) 2023/09/30(Sat) 17:47:57 |
【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡張り詰めたものが一気に放たれる時のような衝撃。 貴方の抵抗ではなく、それは肉体の反射。弓なりに反る背中にバランスを崩し、転がる動作で男もまた振り落とされる。机の脚に鈍い音を立てて頭をぶつけると、茹だった頭はまたぐらぐらと揺れた。 ごろごろと転がる身体に手を伸ばす。捕まえられたかは知れない。振りほどかれるなら抱き竦めるようにしてしがみつこうとした。これは衝動的な執着だ。盛った犬のような荒い息を繰り返して男は貴方の身に覆い被さる。 許せない────見当違いの激情だけがそこにあって。 斃れた身体を仰向けに強いて追い打ちをかけた。 じゅぐ。 振り下ろす。 ぢゅぶ。 振り下ろす。 ずじゅ。 振り下ろす。 しまいには指を突っ込んで眼窩に残った部分を引きずり出そうとしたかもしれない。濡れて潰れた葡萄のようなそれは上手く掴めずに、もう何度目かの舌打ちが空気を裂いた。 ぐちぐちと微かになるいやな水音と男の息遣いだけが、しばらくの間狭い部屋に満ちている。 ────それが終われば。 男は貴方の口元を手で拭い、それを貴方の衣服に擦り付けた。 落ちついたらしく深く息をして立ち上がり、扉を開けて人を呼ぶ。 訪れた数人はその状況に驚愕の表情を見せもしたが、 深く追求することはなかったのだろう。 (-322) 2023/09/30(Sat) 18:04:46 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ薄く太陽に陰りをもたらす空の下。 ルチアーノは片手にブーゲンビリアの花束を持ち何度も足を運んだガレージの前に居た。 そこに同じく見飽きるほど身近に感じていた赤のフィアット500が収まることは二度とない。 鍵のかかっていない扉を開ければ真っ直ぐいつもの場所へ。 ここは誰が入ってくるかもすぐわかる席で、カウンターに立つ長躯も良く見えた。 「あんたにじゃないぞ」 花束を置いてから店をじっくりと見渡して、一つ息を吐く。 もうこの空間が無くなるのは時間の問題だ、珈琲は飲めなくなるし、皆でたまに顔を合わせた時間もなくなる。 暫くしてからテーブルにうつ伏せ目を閉じた、ここでもやっぱり眠れそうだ、今はとても疲れていたし誰も来なければ許されるだろう。 何処か穏やかな気持ちで別れを受け入れることができている。 怒りや殺意がないとは言わないが、楽しそうであったのだ、 そんな男の姿が見れて自分が嬉しくないわけがない。 ただ今は静かに休んでいたい。 大好きだったこの場所で、彼の愛したものへの想いが籠もったこの場所で。 #Mazzetto (94) 2023/09/30(Sat) 18:15:27 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>a33 店に置きざりにされていたコーヒーミルには、 「使用禁止 廃棄しろ」という張り紙がある。 どうも食品ではないものを曳いたらしい。 喫茶店の風上にもおけない所業だ。 ガレージはがらんとしていて、 けれど多くのものがそのままだ。 それはきっと、戻ってくるつもりだったからではない。 このままにする以外に、なかったのだ。 それ以外に、何を足すことも、何を引くこともしたくはなかった。 潮風だけが、その憩いを見守っていた。 #Mazzetto (95) 2023/09/30(Sat) 18:41:27 |
【独】 マスター エリカ/* 浜の真砂…しんさ?ってなんだって思ってググったら浜のまさごか、これは聞いたことある〜〜〜〜!!!となっていました。こう書くんだ。学びを得ました。 (-325) 2023/09/30(Sat) 18:50:44 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ強く打ちつけたことでずれてしまった眼鏡の位置を直すとか、 連絡のために携帯をまた拾い上げようとするだとか、 今は手にしていない手錠を咄嗟に探す仕草だとか。 そこここに充分な隙があって、男の手慣れなさを示していた。 雑に突っ込まれたそれを奪い取るのは難しくないだろう。 先程とは違いこの道は狭く、男は後ろを向いている。 振り向くのにかかる時間は、貴方の逃走に寄与するはずだ。 ────当然、男は追いかけるだろうが。 仕返しに砂でもかけてやれば、更に時間は稼げるだろう。 (-326) 2023/09/30(Sat) 18:52:37 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[10:00] よく洗車された白いバンは街の様子によく溶け込んでいた。 賑わいと反対に駆け出していくことを不自然に思うものは殆ど居ない。 未だ街の中央はそわついた雰囲気に満たされている。敷かれた法案を過去にするように。 其れ自体の撤廃は未だ知れたばかりではあるものの、人々の安寧を喜ぶように受け入れられた。 締め付けの強い法案は元より島の雰囲気には合っていなかったのかも知れない。 パレードはそれと関係の無いものの、人々の解放感を受け入れるには十分な土壌だった。 東南アジアの市場を仕切る人間の顔は、三日月島では目立つ。 国外の人間への当たりは著しく強いというわけではないものの、 移民らの比率は印象ほどには多いわけではなく、彼らの顔はありふれてはいない。 人目に触れてはいけないことをするには、顔を知られずにいる必要がある。 自分たちが目立たずに活動をするには、別のシンジケートを経由する必要があった。 テュルク民族の相の色濃い運転手の後頭部を後部座席から見つめる。 日に焼けた色の人相はさほど見咎められることはない。 人間の使い方を心得ているなと、捉えられた男は呑気に考えていた。 警察に己の行為が見咎められた時点で、自分がこうなることはわかっていた。 人間は情報の塊だ。記憶、歩み、所持品、表情、どれ一つ取り上げても何かを得ることが出来る。 世界で一番口の堅い人間が居たとして、そいつの人生は幾らでも隠し事を抽出出来るだろう。 信頼の如何に関わらず、他人のアキレス腱となり得る人間など生かしておく必要がないのだ。 故に口封じは早いほうが良い。叶うなら警察が向かうよりも早く。 恐らくは開放されずとも業を煮やした人間が侵入して男を殺すこともあっただろう。 右肺を貫いた彼女のような感情による逡巡もなく、取りやめる余長さえもない。 かつて協力した人間にとって、ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリアは、 全く必然的に死ぬべき、死んでもらわなければ困る人間だったのだ。 (-328) 2023/09/30(Sat) 18:59:15 |
【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノお揃い、果たして喜んでいいものか。 男は薄く微笑んだまま、君の話を聞き、頷いている。 やがて、緩慢に口を開いて。 「…君が、そうして笑って道を考えられるようになって 多分俺は、凄く嬉しいんだと思う」 あの日もここで語り合いはしたけど、 あの日の君は迷路の中で、とても苦しそうで。 まるで、自分を見ているようだと思った。 「君なら大丈夫、そう思ったことも嘘じゃない」 「………本当に、俺達は似ているのかもしれないね。 俺は尊敬や感謝を貰うような人間じゃない、けど。 あの日の君の"希望"になっていたのなら、良かった」 振り回されたとは言わないし、あの日のように、 君の頭を撫でる手はない。代わりに少しだけ身を寄せて、 君の肩にトンッと少し触れようとする。 「きっと君はこれから大変だろうし、 自分の道で歩む分、色々と考えることも増えるだろう。 だから、大丈夫じゃないって少しでも心が揺れたら、 いつでも──俺に甘えておいで」 どこまで頑張れるかは分からない。 だけどもう少し、頑張れる間は君を見守っているつもりだ。 (-329) 2023/09/30(Sat) 19:01:24 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ署に出向く機会も、友人に聞く機会もあっただろう。 そのどちらかは明かすことはないが、 ともかく、君の病室に出向くのは確かで。 それはきっと一週間以内のこと。 ガガッ。…ガッ、………ガラガラ。 扉を開ける音が外から響く。 何やら、少し手こずっているような様子だが。 暫くすればドアは開いて、君の知る男の姿がそこにある。 とは言っても無事とは言えず、左手は三角巾で吊り、 右手は包帯で巻いて、左耳にはガーゼが貼ってある。 しかしそれを感じさせることもなく、 「やぁ、エル。…随分と、無茶をしたようだね?」 何となくいつも通り、 しかし少し異なった印象を覚えるような冷静さで問う。 「……約束、守れなくてすまなかったね」 そうして、二言目は謝罪だ。 もしもあの日君の約束を果たせていれば 君は、そんな怪我を負うことなどなかったのかもしれない。 考えたところで、仕方のないことだけど。 (-331) 2023/09/30(Sat) 19:20:00 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → L’ancora ロメオ「ズルいってなんだ、変なやつだな」 この空いてる距離が少しもどかしいな、 普段なら丁度良いと思えるのだが。 貴方が手を差し伸べられないというのならまた一歩近づいてやろう。 もう、あなたの言葉からは問題ないと思ってはいるのだが。 触れ合ってやるのもいいかと思って。 「俺はこの間のことで引かれてないかと心配していてな。 そんな様子もなかったんで、もう、いい。我慢をやめた」 ▼ #ReFantasma (-332) 2023/09/30(Sat) 19:21:43 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → L’ancora ロメオ「もう俺には遠慮はいらん」 同時に貴方にだけは遠慮をやめよう。 諸刃の剣かもしれないがなんとなくうまくいく気はしている。 現に、何も気にせず話せるような友人たちはできたのだ。 ほんの少し秘密や頼み事が多い縁であるだけ、 たまに、ティラミスを溶かしてしまうかもしれないほどの。 「俺はお前に……楽にして欲しい。 それでいて、お前を大事にしてやりたいと思った。 本物の役立たずになるまでは俺の宝だぞ? そうならないようにするんだったら、」 「俺を離すな、幾らでも求めていい」 「そうしたいほどお前のことが好きだ」 顔を覗き込むように貴方を見上げ、変わらぬ笑みを携えて。 波の音に混ぜるように言葉が、どれほどシンプルでも通じるだろう。 自分はもうこれ以上ないほどに信頼してしまっているのだ。 #ReFantasma (-334) 2023/09/30(Sat) 19:23:16 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ>>-331 「……!?」 慣れぬ左手でスマホの操作をしていたときだろうか。 急に不器用に扉を開く音が部屋に響いて、びくりと肩を震わせた。 「誰かと思ったら……。 先輩こそ、僕とそう変わらない大怪我に見えますよ」 一週間がもうすぐすぎるとはいえ、未だ何本もの点滴を受けながらベッドで過ごす身の上としては、話し相手になってくれる人が来るのは喜ばしい。 リハビリは早い方がいいというから、明日にはおそらく始まるのだろうが。 なにせ暇なのだ。 寝るだけの日々というのは。 「良いんですよ。 先輩は先輩の仕事をしていたんでしょう?」 「それで十分です。けど、その傷は……何があったんですか」 確かにあなたが居ればこの怪我は負わなかったかもしれない。 それでもこの傷はあなたのせいではない。 自分への不幸ならば、このように考えることが出来るのに他人の不幸はそう考えることができない。 男の思考は何処か歪だ。 (-337) 2023/09/30(Sat) 19:33:49 |
【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネいつかと同じ『子守歌』。 身動ぐように身体を寄せた。その身体は震えてもいなかった。 それでもやはり寝息となるには些か時間はかかっただろう。 一緒にハーモニカの音色を思い出せば、まるで、自分のやってきたことが返ってきたようですらあった。 …いづれ、女は夢に落ちる。 そのとき見た夢が幸せな夢だったのか不幸な夢だったのか、後になっても思い出すことはない。 呻くような寝言が誰かのことを呼んだ。 Madre.と。 あとはずっと静かなものだ。 あなたが女を起こすまで、女が目覚めることはなかっただろう。 (-338) 2023/09/30(Sat) 19:46:12 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ同じように入院している誰かさんのように 何を言っているんだ? と首を傾げたり、緩やかに閉まっていく扉に足を挟む、ことはない。 素直に病室内に入り、ベッド際へと近づいていく。 「はは、俺はデートをしていただけだよ」 嘘、とも言えない。 その詳細までは言えないが、確かに彼女とデートをした。 女性を誘うには些か、 いや、かなり色気のない場ではあったが。 そうして、怪我のことを問われれば、 落ち着きを見せた表情からパッと切り替え笑って。 「デートに心が弾み過ぎてね、ついうっかり 階段から足を踏み外してそのまま転がってしまってね……」 いやぁ、君も気を付けた方がいい。 男は笑顔のままそう付け足して、傍にある椅子に腰掛けた。 これは嘘。しかし必要な嘘だった、と考えている。 誰を守るためか、誰を隠すためか。 そんなことは、どうだっていい話だ。 (-339) 2023/09/30(Sat) 19:51:42 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 月桂樹の花 ニコロ「会うのは平気だ、どうせいつになっても変わらん。 ただお前が励ましてやればいいんだよ」 ただ知ってると知らないでは気遣い方は変わるだろう、と。 貴方が貴方らしくいるのが誰かの救いになることは自分が良く知っている。 現にこうして自分達も仲良く話せているのだから。 「……無理やり引っ張ってない、ねえ? 心中までしそうだったやつが言っても説得力はないな。 俺にも警戒心を見せてきてた奴が何を言ってるんだか。 相当な感じだったぞお前らは、今はぼこぼこにされて気が抜けてるのかもしれんが」 今は力が抜けたか? と笑いかけてやって。そのまま外に運び出す。 車に乗せれば病院に行くだけ。あとは自力でやれ俺は帰る、と言いながら。 「そんなの早々いるわけねえだろお。 だからなー、高望みするなってことだ。簡単にできやしない。 それでもいつかそんな日は来るって望むぐらいで丁度いい」 「お前も早くそうなって俺を安心させてくれえ」 (-340) 2023/09/30(Sat) 19:59:27 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ>>-339 「デート、ですか。 まぁ良いですけどね、相手は美人でした?」 あなたが【A.C.A】の人間だったことは聞いている。 それでも男はあなたへの態度を変える気はなく、今もたったひとりの先輩だと思っていた。 そのあなたがデートだと言ってはぐらかすならば、それは詳しく聞かないほうが良いということなんだろう。 それでも怪我の方については、明らかに嘘だとわかってしまった。 そんな、笑顔で心配させまいとする下手くそな嘘だ。 デート相手よりも気になる事だったけれど、そう言われるとやっぱり、あまり追求はできない。 「それはあまりにも不用心が過ぎるでしょう……。 言いたくないってことなら、深く聞かないことにしますけど……もう少し後輩にも心配させてくださいよ」 男は何も知らない。 あなたと同じように、自分が教育係を務めた後輩がその怪我を負わせたこと。 行方不明となって、その捜査も手打ちになってしまっていること。 その他も、全部だ。 (-341) 2023/09/30(Sat) 20:04:04 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[11:00] バンはやがて川沿いの工場街へと至る。観光資源の豊富な島の中でここは比較的静かだ。 防音設備のしっかりと考えられた無機質な建物が並んでいるのは当たり前で、 車の出入りのあることも、なんら不思議を覚えるものでもない。 バンは町工場めいた小さな企業の並ぶ一角へと吸い込まれていく。 そこは男にとっても見覚えのある場所だった。自分が取引の際に使っていた場所だ。 薬で眠らせ、深い夢の中へと送り出した子供たちを引き渡す場所。 ――ここで子供たちは人の形を失くし、島外へと分かたれていく。 腕で押しても上背のある身体はほとんど動かず、何度か蹴り込んでようやく動いた。 車に乗った時に拘束されたそのままの状態で手術台に座らせられ、 まず手始めにと聞かれたのはなんの意味も成さない問いだった。 警察にはどれくらいのことを話した、と。回答は簡易だった。 全て、だ。取引先の場所、運び込まれた先や関わった人間の個人情報。 今手が回っていないのは一人とて逃さず捕まえる策を練っているからだろう。 「今更お前たちが焦りだしたところで何の意味もないだろう」 そう平然と良い連ねた男の腹に靴裏が叩き込まれる。 肺の底を縮められたような悲鳴と共に体をふたつに折り、寝転ぶように横に倒れ込む。 見下せる位置に引きずり降ろされた男の顔に、腹いせの拳が何度も叩き込まれた。 素手が傷つきにくいよう、周りに並べられた工具へと凶器は入れ替わっていく。 目の前の男を痛めつけたところで自分たちの損失は戻ってこない。 それでも、湧き上がった怒りをぶつけずにはいられないのだろう。 #BlackAndWhiteMovie (-342) 2023/09/30(Sat) 20:09:46 |
【鳴】 L’ancora ロメオ>>=8 「いや〜、人間心変わりってするもんだよ。 きっかけさえありゃあ人間なんでもするんだね。 猫用のおやつはあるから分けてやるよ。んじゃな」 ぴ、と電話の切れた音。 さて、とりあえず顔を洗わなければ。 適度に取っ散らかった床も片付けて、それから…… ◇ 「はあい、はいはい、はーい……」 近所のガキみたいだな、なんて思わず笑みが零れる。 早足で玄関まで行けばすぐに扉を開いた。 貴方に会う時はいつも髪を結んでいたけれど今日はそのまま。 勿論眼鏡もかけていなかった。 「入んな〜。飲み物、用意してるから」 扉を開け放ち貴方を家の中へ迎え入れる。 ロメオの家は一階建てのこじんまりとした家で、それほど部屋は多くない。けれど物が少ないから少し広く見えるのだった。ガラスのローテーブルを挟んで一人掛けの白いソファと椅子代わりにもなる大きなクッションが置いてあり、窓際には白猫が丸まって眠っていた。 「近所の店にマリトッツォ売ってたから買ってきたわ。 これ二人で食べよ」 心なしかそわそわと嬉しそうにおやつの用意をしながら、 「好きなとこ座んな」と促した。 (=9) 2023/09/30(Sat) 20:11:42 |
【秘】 Commedia ダヴィード → 法の下に イレネオそれはこの一連の事件から数週間が経ってからのこと。 男はいつもより少し重い昼食が入った紙袋を持って、狭い路地裏を歩いていた。 「買っちゃったなあ〜…… 誰かに会えればいいんだけど」 お気に入りの店が貼り出していた期間限定商品のチラシに、 『本日最終日!!』の文言が上から貼られていたものだから。 さてどこで食べようか、また公園にでも行こうか。 街を歩いている間に知り合いでも見つければ、 押し付けて一緒に食べてもらえばいい。 そんなことを考えながら、近道に入った路地裏でふと地面を見る。 拭われた形跡のある、古い血痕。 注視しても判別が難しいようなそれに何故目が吸い寄せられたのかは分からない。 誰かが喧嘩でもしたか、派手に暴れたか。 はたまた――これ以上は、今考えることではない。 そのあたりで頭を振り、血痕を踏み越えて歩き出した。 足早に路地を抜け、数週間前と同じように公園の外れのベンチを陣取る。 違うのは、今日は一人ということ。 (-343) 2023/09/30(Sat) 20:15:06 |
【秘】 Commedia ダヴィード → 法の下に イレネオ期間限定のチョコバナナとマシュマロのパニーニは表面がごく軽く焼かれていて、齧ると予め火を通されたチョコとバナナが蕩け、表面が炙られているマシュマロがサクサクとアクセントになる。 そんな甘いパニーニを口いっぱいに頬張りながら、今は姿の見えない人のことを思う。 毎日顔を合わせるほどの仲ではなかったけれど、こんなに長い期間会わなかったのははじめてだ。 喋る相手もいないものだから、咀嚼しながら思考は巡る。 イレネオさん、この街から引っ越しでもしたんだろうか。 この街がきな臭くなってしまって、治安も混乱していた。 故に家族に急かされたか、急な転勤を命じられたとか何かで。 お互い連絡先も知らなかったから伝える手段がなかっただけで、きっと別の街で今日も元気にしているはずだ。 貴方はやさしい人だった。 たとえ何処に行っても幸せに、陽の当たる道を真っ当に歩き、今日も大切な人と笑い合っているだろう。 だからきっと、幸せな生を全うして、ああいう人こそが天国に行くだろう。 当然のように、そう思った。 (-344) 2023/09/30(Sat) 20:15:52 |
ダヴィードは、買いすぎた昼食を、一人きりでは食べきれなかった。 (a34) 2023/09/30(Sat) 20:16:09 |
ダヴィードは、『イレネオ・デ・マリア』に、生涯出会うことはなかった。 (a35) 2023/09/30(Sat) 20:16:27 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ「…あぁ、とても美人で俺には勿体ないくらいだった」 本当。それが誰だとは言わないし言えやしない。 でも君はきっと聞かないでいてくれる。 そう信じているから、男は緩やかに微笑んだ。 それで怪我の嘘、その笑顔は "いつも通り"に振舞っていたつもりだが、 君が察してしまうのなら何も言えるはずがない。 だとして、その詳細を明かすことは一生、ないだろう。 聞かれたら答える男ではあっても、 それだけは語ってはならない真実だった。 「はは、これが真実だよ。俺を疑うのかい? こんなにも正直者で無敵の俺だと言うのに」 今まで散々リヴィオ・アリオストに騙されてきたんだ。 君は、何も知ることなく未来を歩いていくべきだ。 例え歪んだ道だとて、その道が途絶えない限り、ずっと。 ただ、出来ることなら本当は、 その歪みがいつか、真っ直ぐになればいいと。 君のことが大切な先輩は未来に期待している。 例えその未来を、この海のような翠に映すことがなくとも。 (-345) 2023/09/30(Sat) 20:34:04 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「……ズルいでしょ、だって」 「引いて無いよ……オレだって、嬉し、かったし」 いつか貴方に齎した甘言の分が返って来ているような心地。 本当に欲しい言葉を、貴方は全部くれていた。 一歩分の足音に、近付いた距離に、 いつの間にか足元をうろついていた視線を上げる。 その拍子にころりと一滴だけ、涙の粒が零れた。 泣いたのは久しぶりだった。何年泣いていなかったろうか。 涙の出し方を忘れていたようで、たった今思い出したようでもあった。 「……宝なんて」「初めて言われた」 ぱち。また目を閉じる。また零れる。 白い砂に吸い込まれて、涙の粒は消えていく。 「オレにね、そんな事言っちゃダメですよ。 本当にそうなるんだからさ……」 ゆるりと貴方の右手を掴んだ。 両手で手のひらを持って、強く握るでも握手をするでもない。 緩く握って、指の形を確かめて、手の甲を撫でて。 手のひらを揉んで、それから包んだ。 それから恐る恐る貴方の顔を見て。 「あは、」と蕩けるみたいに笑った。 初めてこんな笑い方をした気がした。 #ReFantasma (-346) 2023/09/30(Sat) 20:36:43 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[12:00] 三日月島内でノッテファミリーとの関わりを厭う島外の業者は必然的にが内部への伝手を求めた。 陸路の少ない場所は守られているという、それは閉鎖的であるということであるともいう。 内部で起きていることは他に知られにくいことと同義であるともいう。 インターネットが発達した今でさえ、陸の繋がらない場所のことは真に知ると言えもしない。 故に狙うものは多く、そして狙うならば自らの実入りは多いほうがよく好まれた。 ノッテと手を組もうとする業者が己の安定と安寧を求めたのに対し、 その裏に隠れようとする業者はリスクを掛けてでも金を得ることを選び、 そしてそういう者たちは、ノッテと関わりのない男の手を借りることを選ぶが多かった。 その全てが、たった一人の男の零落と共に引きずり込まれて壊れていくのだ。 一人が舌打ちとともに乱闘めいた光景を止めさせた。 言葉に続いたのは電動ドライバーを持ち上げる、硬質のぶつかる小さな音だった。 過ぎてしまったことを責めることは何の意味も持たない。 だからこれからは自分たちが情報を引き出す番だ。 拘束され、殴打を加えられた男の肩を足で押さえつけて電動ドライバーの先を突きつける。 他に手引している組織や、今まで構築したルート。 自分たちが手にすれば今からでも利益を得ることの出来る隠し事。 そういうものをできるだけ多く吐いたほうが傷は少なくて済む、と問う。 できるだけ、というのは相手が満足するまで、という意味だ。 男はそれに、嘲るような笑いで返す。 水っぽい音が響いた。 #BlackAndWhiteMovie (-347) 2023/09/30(Sat) 20:52:39 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ>>-345 「デートついでに病院まで連れて行ってもらったらいいんですよ、先輩は」 まさか本当にそうなってたとは、流石に思ってないが。 それでも手当をされている様子を見れば、病院に一度は行ったのだろうからとりあえずは及第点だろう。 「そういう事にしておいてあげますよ。 僕の周りは皆すぐ無茶をする人ばかりだ……あ、そういえば先輩、イレネオ知りませんか。 連絡が取れないんですけど……アイツ、釈放ちゃんとされてますか?」 勿論正直に答えなくて良い。 答えるべきではない質問だ。 ただそれでも、それを知らぬ愚かな男は、可愛い後輩を純粋に心配をしていただけ。 「……先輩?」 どこか遠くを見ているようなあなたに気づいて、ベッドに寝かされたまま不思議そうに、その顔を見上げた。 (-348) 2023/09/30(Sat) 20:56:00 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ>>_5 「……」 若干驚いたように体を揺らしたが文句は言わなかった。 遠くから駆けつけようとする看護師に手を振って、 大丈夫だ、と口元に人差し指を当て笑ってみせる。 貴方の背中を撫でつつ、優しく軽く叩けば、 ゆっくりと息を吐くように促していく。 自分たちに向けられていた視線は段々と減っていき、 また此処は二人きりとなった。 「驚くじゃないか、……まあ。俺の用はこれでおりだ。 ……まだ片付けないとならんことがある。」 目を伏せて。開けて。貴方を見つめる。 「お前は立てるか?」 (_6) 2023/09/30(Sat) 21:05:01 |
【魂】 花浅葱 エルヴィーノ>>_6 「むり。……嫌だ。行かないで」 何処にも行けないから、 頼むから、今僕をひとりにしないで。 胸にぎゅっとその眼鏡を抱いて、頭を振った。 すがるように伸ばした左手は、あなたの袖をぎゅっと掴んでいる。 事実、痛み止めが切れた肩が悲鳴を上げるかのように痛んで、顔色も青白く死にそうな顔をしている。 けれど。 「……どうして……」 「イレネオは殺されたの……?」 震える声が、それを問う。 あなたがこれを持ってきた。 それは、マフィアかそれに関係する何かによって彼は殺されたということ。 あなたはその死を見届け、正しく処理をしたということだ。 だったら、その死の原因をあなたは知っているはずで……。 僕は、それを知らなきゃいけないはずで―――― (_7) 2023/09/30(Sat) 21:13:22 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「そういうもんなんだろうな。」 良くも悪くも。 今回にあっては幸いとも言えよう。 「そうだなぁ。 俺の甘さが全部今になってる。 でも、後悔はしてねえよ。」 貴方の言葉に、頷いて笑う。 全くだ。甘く計画性もなく。だからふらつく。 けれど後悔はしていないのだ。 貴方が小突いてくれたから 目が覚めたような気がした。 「お前の手を引っ張らない方が良かったなんて そんなこと絶対言ってやらねえ。 リヴィは、俺にとって必要な、大事な奴だから。」 離さないと誓った。 「だからこれからも、一緒に居ても良いかな。 友達になるのか、俺もまだ良く分かんねえけどさ。」 (-349) 2023/09/30(Sat) 21:19:01 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ「はは、病院デートなんてつまらないだろう? 今度は埋め合わせとしてカフェに行く予定さ」 嘘、本当。ぐるぐると混ぜて、分からないようにする。 それが今までのリヴィオ・アリオストという男で、 無敵という仮面は剥いでしまったとしても リヴィオもまた、都合の悪いことは覆い隠していく。 それが上手く出来るからこそ、 "リヴィオ・アリオスト"は20年近く生きていた訳だ。 「…イレネオ?いや、俺は知らないな。 ばたばたしたまま警察を辞めてしまったからね」 本当。行方すらも知らない、生死だってそうだ。 でもそのひとつを考えない訳ではない。 答えは結局分からないから、箱の中に仕舞われたままだ。 元気だといいねと呑気にも語るのは、願いか、あるいは。 「あぁ、あと君は"僕の周りは"と称するが 今の現状を見ると君が一番無茶をした人間だからね。 それを忘れず、見舞いに来る人の有難みを噛み締めてくれ」 「君がこうなる事で悲しむ人はちゃんと、いるんだからね」 これに懲りたら無理はするな。 今回は仕方がないとはいえ、命がいくつあっても足りない。 不思議そうにこちらを見る視線に笑いかけて、 ゆっくりと、腰掛けた椅子から立ち上がった。 (-350) 2023/09/30(Sat) 21:25:37 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ後悔はしていない。それは男もまた、君と同じ。 そうして甘さも同じだ。 目的は違えど確かに同じ道を歩いていたらしい。 「……はぁ、君ってやつは本当に」 「ひとつだけ、ひとつだけ明確にしておこう。 これは、俺の譲れないものだから」 そう、君が誓おうともこれは男の譲れないもの。 俺を大切にしようと思うのなら、果たせと願うもの。 絶対に、言っておかなければならないことだ。 「……俺は、 次 があれば君を連れて行きはしない。そして、君はそんな俺を追いかけてはならない」 友達になるのか、何になるのかは分からない。 だとして、これは男の提示する一緒にいるための条件だ。 頷かなければ、こちらも君に頷くことはない。 人を掴むなら、君自身が幸せになれ。 それが願いだ、それが望みだ。 俺に"希望"をくれた君に──叶えて欲しいことだ。 「約束、してくれるかな?」 (-351) 2023/09/30(Sat) 21:35:55 |
リヴィオは、本当はとても、狡い男だ。 (a36) 2023/09/30(Sat) 21:36:16 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[13:00] 短い時間の間に、的確な暴力が幾つも男の体へと振り下ろされた。 同じ時間を使って、もっと徹底的に人間の体は破壊できる。 そうしなかったのは、吐けば楽になるという意識を高めるためであり、それ以外ではない。 縋れば光があると思い込むことの出来る細道を提示するのは大事なことだ。 眼球の片方が抉られ、濁った体液がとうとうと面の凹凸を流れる。 言え、と言われたのは三度目だったが、男は饒舌を失ったように一言も話さなかった。 次に、右胸に空いた傷にドライバーの先が充てがわれた。 皮膚を突き破り肺を傷つけた銃弾は貫通せずに体の中に残っている。 片肺が残っているとは言え呼吸には著しい不足があり、普通ならば無事では居られない。 めり込んだ破片と熱と器用に傷を塞いでいる間はかろうじて息をして、 そうでない時には逆流するように苦痛が駆け巡り咳き込んでいる。 その、皮下の脂肪組織と筋肉に出来た傷へとぴったりと押し当てられる。 再びに彼らは問いを投げかけた。 男は脂汗を面に滲ませながらも、息だけで嘲弄を表した。 既に薄灰色の組織が絡んだドライバーが回転する。 ぱっぱっと、風に薔薇の花が吹かれるように血とピンク色の肉片が飛んだ。 男がどれだけ大きな声を上げて叫んでも、誰も表情を歪めなかった。自身を含めて。 そこにあるのはこれまでに築いてきたものとその結果であり、理不尽なことはない。 理解しているからにこそ、尋問は淡々と続いた。 #BlackAndWhiteMovie (-352) 2023/09/30(Sat) 21:48:56 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ耳元で落ちる優し気な声は、昔から聞くそれとずっと変わりない。 この声がずっとあったから彼を手放しても自分を思い出せる今がある。 その名を呼び続けてくれた感謝も込めて、抱きしめる腕の力は強かったのだろう。 同じ気持ちを抱いてくれていたと知れば安堵をしながら、指されたベンチに隣同士に座る。 「…………ううん」 「応援してくれたらさ、すっごくうれしいけれど。 いやだなって怒ってくれてもいいんだよ。 止めるのは難しい、んだけど……」 それでも感情に蓋をしていつか煮凝ってしまうのなら、今自分にぶちまけてくれたっていいとも思う。 自分だって寂しいから、隣に座る貴方の指先を左手で撫ぜた。 「……オレも弟だからって。 ねえさんのすること全部に応援はきっとできないから」 そうしてぬくもりを感じながら開いた唇が伝えるのは。 あの日から貴方に話したかったこと、届けたかったもの。 [1/3] (-353) 2023/09/30(Sat) 21:57:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「ねえ、フィオねえはやっぱりさ……マフィア、なんだよね? にいさんとおんなじ」 「あんまり何してるかって詳しくないけれど……誰かの命を奪うことも、あるんだよな。 そういうのが必要なときがあったりとか。 ……何かあったときに、そういう手段が取りやすかったり、とか」 脳裏に過るのは今でも思い出せる一瞬だ。 あの時酷く痛んだ胸がまだ疼く心地がする。 大事な人が、大事な人を撃ったこともそう。 ……それから、もうひとつも。 「でも、オレはさ。 そういうの、あんまりねえさんにしてほしくないって思う。 人生の中で選択に悩んだときに……それが並ぶようになってほしくない」 「オレは、そう思ってる。 ……ねえさんが大事だから、思ってる」 綺麗ごとだけで生きていけないのは知っている。 憎しみや悲しみが簡単に片の付けられる感情ではないことも。 だからこれは貴方の行為を否定したいがために紡ぐのではない。 誰よりも大切に想う貴方の前だからこそ、これ以上を偽ることなどないように。 「だからねえさんのこと、応援できないこともあるんだ」 「…………でもね」 そうしてその先に、一番に伝えたいことを伝えられるように。 [2/3] (-354) 2023/09/30(Sat) 21:58:15 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ>>-350 「え……本当に連れて行ってもらったんですか」 埋め合わせと言うくらいだから本当にそうだということだ。 冗談のつもりだったのに。 誰だか知らないが、相手の女性に少しだけ同情してしまった。他意はない。 「そうですか……。 携帯にかけてるんですけど、繋がらなくて。 ……まぁ、いいです彼も忙しいんだろうし……って、ええ? 警察やめた? 」どうして、という言葉はあなたの笑顔に封殺されてしまっただろうか。 なんとなくだけど、答えてくれる気がしない。 答えてくれたとしても、それもまた、はぐらかされたような答えに違いない。 「僕のは運が悪かっただけで……。 まぁ、死にかけたのは確かですけど…………」 あなたより傷は少ないけれど、この一つの傷が致命傷になりかけた。 それは本当だ。 けれども、僕は。 僕はあなたの後輩だから。 「でも」 「それブーメランですからね」 僕だって、心配するんですよ。 ねぇ? 先輩。 (-355) 2023/09/30(Sat) 21:59:49 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「もしねえさんがこれから先、何をしたって。 どんな罪を犯すことがあったって──」 ぎゅう、と。 今このひと時だけは、誰よりも近くに自分がいる。 その証明をするみたいに手を強く握った。 「──オレの "だいすき" は変わらないから」 「辛くて苦しいときは、傍に居たいし。 涙だって拭ってあげたい。 世界で誰よりも、ねえさんの一番の味方で居たい」 今までみたいには簡単に会えなくなる。 涙落ちるときに傍にはいられないかもしれない。 だけどもしまた、貴方の心が暗闇に落ちることがあるとき。 今のこの瞬間が微かでも光を届けられたらいいと、願って。 「そう思っている弟がいるってこと。 離れてもずっと……忘れないでいてねって」 「伝えたかったんだ、今日」 そうして笑みを浮かべて、その顔を覗き込んだことだろうか。 受け取ってもらえるかなあ、そんな期待を込めた瞳を細めて。 [3/3] (-356) 2023/09/30(Sat) 22:01:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ「あはは。 尊敬とか感謝は、勝手に手渡されちゃうんだよ。 貰うべきじゃないって思っても……貰って? だってせんぱいがしてきたことの結果なんだ」 例えそれが貴方が本当に見せたい姿じゃなかったとして。 その中で救われた人間がいたことをどうか覚えていてほしかった。 肩に触れられるのを拒んだりしない、あの夜と同じ。 誰かに触れられるのはずっと怖かったけれど、今は目を瞑ることも震えることもない。 時計の針がようやく動いた気がした、だからこちらからも体重を少し返す。 「……うん、ありがとう。 せんぱいの大丈夫のおまじないは、効くからなあ」 「でも大丈夫じゃなくなっても、すぐには来れないかも。 オレ、この街を出ようと思っててさ。 事情は〜……ややこしいんだけど、居ない方がよくって。 顔を知ってる人に色々見られるのが困るっていうか……」 見回りだけは元気に行っていたものだから、警官としてのニーノを知る住人は多い。顔見知りも。 彼等にはニーノは死んだことにしないといけない、提出された死亡診断書が真実となるように。 だから。 「……だからね。 今までみたいに毎日って会えなくても。 忘れないでいてほしいし、……見守ってくれてたら嬉しいって、なんというか」 「こ、心で……?」 言葉通りの見守りというよりかは、心持ちというか、こう……言葉が少しふんわりした。 (-357) 2023/09/30(Sat) 22:20:19 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 口に金貨を ルチアーノ「 お前がマフィアだってこの間まで知らなかったんだぞ。 警戒もするだろそりゃ。法律が施行されてる只中だったしさ。」 マフィアというものを身に染みて知っているから 例え友人だろうと警戒したのは許されたい。 それをリークしたのは彼のアリソン女史なのだが。 「心中って、そんなにか…? 今は、まあ、そうだな。 そこまで思い詰めたりはしてねえけど。 いってえ。ちょ、ヤバイ、いてぇ…!」 あちこち骨折しているせいで ぎゃあぎゃあ喚きながらも車に押し込まれた。 全治するにはかなりの時間を要しそうだ。 「…頑張って探してみるさ。 アイツの手を引っ張ったんだからな。 そのくらいは、やらねえと。」 男としてダサいだろう、と思うし 引っ張った責任もある。 貴方の言葉に頷いて、最後に。 「今度カンターミネ…いや、先生と飯行くんだけどさ。 お前も来いよな。」 何処かの先生が巻き込んだお食事会。 貴方も来るだろう?と笑う。未来の約束だ。 (-358) 2023/09/30(Sat) 22:24:32 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ連れて行ってもらったのか。 さて、笑顔に隠されたものはどちらだろう。 混ぜて隠して、本当の答えは箱の中。 椅子から立ち上がった後、ぐっと背を伸ばす。 傷んだ骨に若干響いたが、これくらいじゃ笑顔は崩れない。 辞めた理由を問われれば「A.C.Aだったから」の一言。 他の理由はもしかすると、まだ、あるのかもしれないが、 複数回答を求められた訳じゃあないから、内緒のままだ。 「おや、君は一体いつから先輩に言い返すようになったのかな。 俺は無茶ではなくてデートの結果さ、同じじゃない」 「棚上げは良くないよ、エルヴィーノ」 包帯の巻かれた右手を伸ばす。 その手は、君の背……ではなく、軽く肩を叩いて、 それから身を反転。都合の悪いことは知らないフリ。 「君とも今度、約束の埋め合わせをしよう」 君の心配を背に受けながら ひらひらと手を振り、緩慢な足取りで扉の前に。 「あ、しまった」などと呟いているのは、多分気の所為。 両手が不自由ってのは本当に──不便なことだ。 (-359) 2023/09/30(Sat) 22:24:46 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「……。分かった。 約束するよ。次があったら、お前の言葉に従う。」 言葉を飲み込んで、少しの間があって。 男はこくり、と頷いた。 貴方が譲れない事ならば、それは受け入れねばなるまい。 「ちゃんと、俺自身のことも考える。 アリーチェたちの事も、勿論。」 「でも、行く時は言ってくれよな。 じゃないと、多分、追いかけちまうから。」 急に居なくなられたらきっと。 主に置いて行かれた犬のように、探してしまいそうだから。 もしもそうなったら、と言うだろう。 尤も。 次なんて、来させないつもりで居るのだけれど。 (-361) 2023/09/30(Sat) 22:31:09 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[14:00] 街は賑わいの波も高く、パレードはメインイベントに入ったらしい。 そうした市街の様子はこんなところまでは届かない。逆も同じくだろう。 質問への回答を拒否している間に、貫通痕はあちこちと増えた。 関節部をやれば幾らも動きを封じることは出来るだろうがそうしないのは、 聞き出した話の内容によっては殺す前に実情を確かめる必要があるかもしれないからだ。 それでも、沈黙が続けば業を煮やす。傷は段々と粗雑な出来になってきた。 脇腹や腿を削り取り、筋肉を破らないようにしても出血はひどくなる。 自分たちが逃げ出すことの出来る時間をどれだけ確保できるか。 焦りは、彼らの注意を鈍らせ眼の前に集中させ始めていた。 外を走る車の走行音と、傍に着ける車の音の違いもわからないほどには。 表扉がドアノブを破壊するようにして開かれる。 注意を向けるのと銃を手に持つのとを同時に行うには警戒が足りていなかった。 犯罪グループの男たちが応戦の姿勢を整える前に乗り込んできたのは、 毛嫌いするようにその影を遠巻きにしてきたノッテの構成員達だ。 今頃はアジトが散々な混乱の内にあるかも知れないが、 それを知らないのか、だからこそ明確に目先に見える手柄に手をつけたのかはわからない。 彼らは品行方正な警察ではない。動くな、と銃を突きつけるようなことはしない。 構成員たちはまず下っ端と見られる手前の見張りの頭を吹き飛ばした。 工場内の機材を散弾銃が轢き潰し、天井の明かりを使い物にならなくした。 それだけやってもいいと踏んだのは、この建物ごと消却するつもりだからなのだろう。 混乱が場を締めている間に全てを掃討しようとするように、 彼らのよくよく磨かれた革靴が一気に建物内へと踏み込んだ。 #BlackAndWhiteMovie (-360) 2023/09/30(Sat) 22:31:14 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノそわりとこちらも扉が開くまでを待っていたところ、貴方の姿見えたのならわかりやすく瞳が輝いた。 「かっこいいろーにいだ〜」 眼鏡しててもかっこいいけれどね。 謎に付け足しながらありがとうとお邪魔しますを続けて口にし、中へと入っていく。 ちなみに子猫は腕の中ですやすやお昼寝中だった。 「え、今買って来てくれたの?」 気にしなくても良かったのに、を続けようとしたが。 何やらそわそわと貴方が嬉しそうなのが見えて……ああ、と納得する。 喜んでくれているんだなって気が付かないわけがない、だから言わなかった。 「……へへ、ありがと、うれしい。 お腹減ってたんだ、そういえば全然何も食べてなかった」 言葉は感謝へと形を変えて、抱くのはいとおしいなという感情。 ちょうどおんなじ色の……なんなら子猫をおっきくしたかのような白猫が窓際に居たので、そっと並べて隣で寝かせてみる。よし。 好きなところの指定には「どこだったらろーにいの隣に座れる〜?」と尋ねたりして、貴方が嫌がらないのならそれを叶えられるようにしながら。 「にしてもさ、ほんとに戸籍どうにかできちゃうんだね」 などと口にする言外で求めているのは、貴方の口から語ってもらえる本当のことだ。ちら、と顔を見上げた。 (=10) 2023/09/30(Sat) 22:45:00 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[15:00] 手術台そのものに拘束されていないのは男にとって幸いだった。 周囲の注意が逸れたのをいいことに寝台の上から床へ転がると、 射線から逃れるように機材置きの後ろへと潜んだ。その際に肘を捻ったが、その程度だった。 撃ち合いに巻き込まれるのは御免だという意識くらいは持ち合わせていたらしい。 されど生きたいから、ではない。何も知らない内に死ぬのでは望みに足らないからだ。 撃ち合いは暫く続いたものの、勝敗は明らかだった。 奇襲に成功し予期した武装を手にしているノッテの構成員と、 街の賑わいから逃げおおせたつもりでいて危機の迫るのをずっと先だと思っていた、 犯罪グループの人間とでは準備の段階で差が出ていた。 尤もこんなところまで出向している人間でなく、彼らの母体なら結果は違っただろうが。 構成員達は床に転げたヴィンセンツィオの肩口を掴むと、壁の薬品庫へと寄りかからせた。 既に打撲で腫れ上がっていた肩に銃口が向けられる。質問の内容が少しだけ変わる。 尋問をする人間が、代わる代わるに入れ替わっただけに過ぎない。 今までこの島に手を出そうとした人間たちの居所、そういった情報を彼らは欲しがった。 それでもやはり、男は口を割ろうとはせずに笑うだけだった。 相手が"犯罪者"である限り、男は必要なことを喋ろうとはしなかった。 #BlackAndWhiteMovie (-362) 2023/09/30(Sat) 22:51:44 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ (-363) 2023/09/30(Sat) 22:52:38 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>-363 ぐおおおん、と。 尋問と拷問に意識の向いていた構成員たちのなかで、 壁越しに遠く響いていたエンジン音が、ぐんぐんと近づいてきたことに気が付いたものはいただろうか。 ──ば がぁん。 甲高く硬質な音が、建物の中に響く。 差し込んでいた日の光が、眩く溢れ出すように強さを増した。 建材がへこみ弾ける音とともに、真っ赤な車が突っ込んできたのだ。 もうもうと車から吹きだした白煙に、ノッテの構成員たちががなり、銃を向け、あるいは混乱しヴィンセンツィオを引き倒そうとする。 めいめいに好き勝手な反応を見せるものたちは確かに、元から乏しかった統率を欠いており。 ばがん。 ──扉の隙間から滑り込んできた男が、両手に構えた拳銃と短機関銃をまき散らす間隙を与えることになる。 #BlackAndWhiteMovie (1/2) (96) 2023/09/30(Sat) 23:03:24 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、痛……」 頭を抑えながら。それでもこの機を逃すわけにはいかないと、あなたのポケットに入った携帯電話を抜き取って。 足元の砂利を砂ごと掬ってから、痛む身体を引きずって走り出す。 片腕に力が入らない。新たに連絡を入れる余裕はない。 だから、最初の場所へと戻るしかない。今ならまだ、迎えに来たはずの同僚がいるはずだ。 「はっ、……ッ!」 蹴り上げられた腹も鈍い痛みが走って、顔を顰める。 足が縺れそうになっても、ひたすらにこの路地を抜けだすために足を動かして。 あなたが迫ってきたところに、掬った砂を投げつけてやるのだろう。 狭い路地では、それを避けることも難しいはずだ。あなたのような体格ならなおさらのこと。 (-364) 2023/09/30(Sat) 23:06:01 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>-363 ぱ、ぱ、ぱ、ぱぱぱぱぁん。 発砲炎と共に破裂音が何度も瞬き、血飛沫と湿った音が響く。 構成員たちの半数近くを奇襲で叩き、 がしゃあん!! ――照明を打ち抜き。 暗闇に閉ざされた中で殴打と落下音、銃声がさらに続いて―― 「おう」 ――あなたのそばで、足音が聞こえる。 「生きてるかあ、ヴィンセンツィオ」 #BlackAndWhiteMovie (2/2) (97) 2023/09/30(Sat) 23:06:51 |
【人】 花浅葱 エルヴィーノゆっくり、上がる。 病院の階段を、一歩ずつ。 それはまるで天国へ続く道のようで、あの屋上への扉を開いたら、あなたが居そうで。 ルチアーノと別れ病室に戻された時は満身創痍だった。 絶対安静の人間が、受けるべき点滴を受けずに外に居たのだから、ナースも医者も皆が青い顔をしていたのは仕方のない話だ。 すぐにまた点滴に繋がれ、青白い顔に生気が戻ってくるのにまた数日を要したに違いない。 歩けるようになって、リハビリを始めた。 手先はなんとなく動くようになったけれど、肘を動かそうとすると痛みが響いて動かない。 砕かれた肩はミリも動かせる気がしない。 本当は、ベッドの上にいるのが一番楽だけど、今はすごく屋上に行きたかった。 金色に輝く太陽の下、広がる青い空を見たい。 だって。 寂しいんだ。 心に空いた穴はルチアが埋めてくれるけど、ずたずたになった心臓が今も血を流しているから。 #BelColletto ▼ (98) 2023/09/30(Sat) 23:13:14 |
【人】 花浅葱 エルヴィーノ「やっとついた」 白く輝く扉を開いて外に出れば、涼しい風が男の髪を柔らかく揺らした。 ゆっくり、一歩ずつ前に進んで、 柵に手をかけたらもうだめで、ずるずるとその場に膝を折って座り込む。 身体の辛さよりも、今は、心の震えが止まらないのが酷くつらい。 手の中にあるたった一つだけの贈り物を見つめて、 ……ぱた。 ぱたり。 静かに雨が頬を伝った。 「……忠犬は、主を待ち続けるものだろう?」 「な……んで、キミが先に、僕を置いていくの」 僕がもっと、あなたの手綱をしっかり握ってたならこんなことにはきっと、ならなかった。 僕がちゃんと、あなたがしている事を知っていたなら、あなたの頬を打ってでもそれを止めていた。 僕が撃たれてなんてなかったら、あなたを助けに行ったのに。 ――知らないことは、罪だ。 だからこれは、全部僕のせい 。#BelColletto ▼ (99) 2023/09/30(Sat) 23:14:13 |
【人】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ「……レオ……」 あの日約束したその名を呼ぶ。 「レオ………ッ」 何度も、何度だって、その名を呼ぶ。 天国への道を閉ざす、格子の前で。 「約束、守って……る、だろ」 「なのになんで、応えてくれない……っ」 だけどそこに、あなたは居ないのだ。 今更、その首輪を外されても、僕はもう上手く歩けそうにない。 #BelColletto (100) 2023/09/30(Sat) 23:15:34 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>96 >>97 [16:00] ノッテの構成員が殴り込んできたときよりも大胆な音が響く。 此れより先に追いかけっこに加わるものなんて警察ぐらいしかありはしない。 その筈だった。そうだとしたなら、こんな荒っぽい手立ては取らない。 他の誰が在るというのか。彼らの手を迷わせたのはそうした困惑もあったのだろう。 目を向けるべき相手を誤らせ、その視界を暗く潰した。 男の反応は緩慢だった。薄く雲が張ったような、空の色が向けられる。 人の死体がいくら増えようが男の注意を引くことはない。そうだった。 それが、乱入した男の顔を見て僅かに目を見開く。 確か当初乗り込んで来た構成員達は、ある男の部下だった筈だった。 秘密主義のマフィアたちであっても、多少顔の割れている人間はいる。 そうした者たちの幾らかは、一人の男を信奉めいて仰いでいた筈だった。 少なくとも自分が罪を暴かれ情報から隔離される前はそうだった。 #BlackAndWhiteMovie → (101) 2023/09/30(Sat) 23:27:35 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>96 >>97 その男の顔を見上げて、満身創痍の男は笑った。 息だけで、けれどもそこにあるのは嘲弄とはまた違うものだった。 仕方ないものでも見るような、怪訝と皮肉の混じったそれだ。 「……はっ、はは」 「迎えの趣味が派手だな、アレッサンドロ」 #BlackAndWhiteMovie (102) 2023/09/30(Sat) 23:28:17 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>101 満身創痍の男の前に、黒いスーツを翻した男が立っている。 壁の隙間から差し込む燦光が、ちかちかとその輪郭を彩って。 見やれば、その体のあちこちに乱雑にまかれた包帯や布の切れ端が赤く染まり、彼もまた無傷ではないことが分かるだろう。 そいつはあなたの表情に、に、と笑顔のように口元を歪めると。 「――気安く 呼ぶン じゃッ ね えよ、 くそヴィト ッ!!!!」――横殴りに銃身を叩きつける。 #BlackAndWhiteMovie (103) 2023/09/30(Sat) 23:35:27 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ物が落ちるような気遣いのない音が足元で立った。 それはあなたが倒れ込む音で、遅れて絶叫が喉を震わせる。 対する男はそれを見下ろして、ことりと首を僅か傾げた。 「……はあ。」 ただひとつ、吐かれた息。 その吐息は一方的な暴行ではなく双方間での攻防に詰めていたものが解放されたようにも、やっと大人しくなったと言いたげな溜息にも聞こえた。 きっとどちらでもあるし、どちらでもない。それを男は自覚していない。 丸くなるさまが身を守ろうとするようで、頼りなさに男はまた口元を緩める。これだって無意識のことだった。 「手間のかかる……」 まるで人ではないものを扱うような言葉を貴方に投げつける。 随分苦労させられた。まるで手負いの獣だ。今日はもうひとつ予定があるのに、と思考が過る。 ────まあ、仕方ない。これも仕事だ。 口元に手をやって男は思考を始めた。貴方はもう抵抗できないだろう、そう信じ込んだ油断がある。試しに足で小突くくらいのことはしたかもしれない。死にかけの虫の、威勢のほどを確かめるような仕草だった。 仕事なのだから、遂行しなければならない。しかしこの状態ではもう、貴方からこれ以上話を引き出すのは難しいだろう。 痛みにあえぐ貴方は、話すどころか座ることすら困難そうだ。 ならば。 ならば、最善は。 ▽ (-365) 2023/09/30(Sat) 23:35:57 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ貴方が狂った狼であるなら、これはもっとたちの悪いものだ。 ひとつ思いついた男は、貴方を放置して何かを取りに棚に近寄る。 貴方は、最後の力を振り絞ってそれを止めたかもしれない。 それとも、もうそんな余裕すら残っていなかったかもしれない。 どうあれ男はそれを振り払ったろう。酷く単純な、顔面に向けて足を振る動き。 そうして手に取るのは 金槌 だ。ぱん、ぱんと手のひらに打ち付けて感触を確かめる。男がしようとしていることは、とても悪趣味で無意味なこと。 それでいて残酷な次への布石。 再びの尋問が楽なものになるように、 貴方が二度と抵抗できないように、 その意志も行動も削ぐように ────四肢の内もうひとつを、砕いてしまおう。 (-366) 2023/09/30(Sat) 23:36:13 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「はい、かっこいいろーにいです」 かっこいいだろ。はずかしげもなくおふざけの延長でそう言って、 貴方の腕の中の子猫を見れば「かわいっ」と笑った。 「おう。折角だから一緒に何か食べたいだろ」 「オレも朝飯まだだったし……丁度よかったな〜」 朝飯にしては甘いが、見たら食べたくなってしまったのだ。 気付いたら2個買っていた次第だ。 飲み物は何がいいか聞いて、その通りにグラスに注げばマリトッツォと一緒にテーブルへ並べる。 隣に座りたい様子があれば、 クッションをソファの横に持ってきて横並びに。 自分はクッションの方に座ろう。 「まあなー。もちろん違法だけど」 「………………ノッテの人間だからね。慣れてるよ」 これだけ言えばあなたには伝わるだろうと思った。 今回の騒動で仲間が牢屋に入れられたのだと。 自分は運が良かっただけだと。 「ごめん。黙ってて」「怖がらせるかなって……」 (=11) 2023/09/30(Sat) 23:43:55 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>103 頬骨に堅いフレームが擦り合わされる感覚があった。 既に大分張られて腫れた頬に、今までの痛みを再生するように神経が痛んだ。 軽く咳き込んで血塊を吐き出す。喘鳴は荒れたものの、悲鳴はあげなかった。 衝撃に流される前に向こうを向いて金属製の扉に叩きつけられた頭は、 まず視線を貴方へと向けて、それを追うように頭そのものが前を向く。 「他人行儀に呼ばれる方が、お前はよっぽど好みじゃないだろう」 立ち上がろうともしなければ、反撃の姿勢も見せない。 ただ、大混乱のさなかにある町工場の中の景色を背景に見上げて、 叩きつけられた言葉と態度を映画のスクリーンのように眺めているだけだ。 それで満足するのなら、それで構わないだろう。 けれどもそれで腹の虫が治まらないのなら、それはきっと不満だ、そうだろう。 「一方的に殴りつけて気が済むんだったらこのまま付き合ってやる。 で? それでお前は構わないのか?」 #BlackAndWhiteMovie (104) 2023/10/01(Sun) 0:02:08 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>104 ぷ、と吐き捨てる唾は赤黒い。 ストックに張り付いてしまったような指を引きはがして、 弾切れになったらしい短機関銃ががらんと床を転がった。 「うるせェ。 舐めやがってマジで」 乱暴に伸ばした腕で、あなたの肩を掴み引き起こす。 その振る舞いに"カポ・レジーム"としての、 あなたからすれば取り繕った、気さくな様子は欠片もない。 ──ただ、まったく、見慣れた様子。 かつてソルジャーとして纏っていた、当時の顔をすっかりと取り戻した顔で。 「ここで元部下の代わりをやってやってもいいンだが──」 じろ、と目だけで横を見る。 「………」 「乗れ」 車体のひしゃげたフィアットを指さす。 「これ以上話を聞いてやる気も、解釈してやる気もねえ」 「ただ、ここにいると邪魔が入るだろ」 「──ンなことしてる時間も余裕も、暇もねえ」 だろ、と。 答えも聞かずに、車の方に向かっていく。 (105) 2023/10/01(Sun) 0:10:00 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「あぐっ…う、ぐ…うぅ…はぁっ……」 肋骨を折られては 先程のように動くことはままならない。 身じろぎする度に、激痛が身に走る。 小突かれても、呻くばかりで。 貴方が離れて、拙い、と思ったのも束の間のこと。 何とか首をもたげて、金づちを持つ貴方を見た。 「げほっ…やっぱり、尋問なんかじゃ、ねえだろ… ただの、拷問、だ……」 避ける事は出来ないだろう。 だから、呻きながらも貴方に言葉を吐きかけて。 笑うのだ、愚かだな、と。 (-367) 2023/10/01(Sun) 0:14:04 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「お出迎え……わたし、お出迎えできるんだぁ…… それは、がんばれる。今までの3倍がんばれる、かも」 わたし、そんないい所を貰っちゃっていいのかしら…… 孤児院のみんな、ヴィットーレを独占してごめん。なんて、思わず謝らなければならない気持ちが急に込み上がってくる。 無論アリーチェの理想のお出迎えとは異なったものにはなるだろうが、それでも嬉しいものは嬉しいし、幼心にも抱いていた、少しでいいから貴方を独占したかった気持ちの芽が、ちょっぴり顔を出す。 「実は私、家具とか凄く少ない方で…… 運ぶの、あんまり苦労しないと思う。 だからヴィットーレのお部屋の内装を邪魔する心配は多分ないと思うわ。 でも、要望、言っても大丈夫なら…… ……一緒に家具を買いに行って選んで欲しい、な」 頭を大人しく撫でられて、猫のように目を細める。 くすぐったいと思った。こうして大人になってまで 変わらず接してくれる貴方の優しさに、 相変わらず胸に疼く不思議な感覚に、 その上で貴方をどうしようもなく愛しているという感情全てに。 ▽ (-368) 2023/10/01(Sun) 0:16:42 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……あのねヴィットーレ、アメリータのことだけど──」 それでも、重荷のひとつはすぐに下ろされる事だろう。 残りのふたつが下りるのも、もしかしたら そう遠く遠くの未来の話にはならないかもしれない。 それはアリーチェ達の成長と決意、運や神様の祝福次第だ。 過酷な戦いにはなったとしても、それでもアリーチェは、 貴方の傍に居られるのなら、何度だって。挫ける事は、決して。 (-369) 2023/10/01(Sun) 0:18:20 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ「知るわけ無いだろう他人が死ぬ理由なんて」 貴方を突き放すような言い方であった。 過去の亡霊になど囚われてほしくない、されどこの胸のつっかかりが酷く痛みはじめている。 「……殺し屋のような連中に殺されていた。 無事な部分なんて残ってなくてな。 持ってこれるのがこれだけだった」 本当は手首もあったが、これはボスへの手土産だ。 わざわざ入れなくとも良いだろう情報以外素直に告げてやる。 値段はただで、入院中で幼馴染の貴方へのサービスだった。 その実、便利屋として確実性のある情報などどこにもなかった。 目の前の幼馴染は彼が殺された理由が知りたいのだ。 知るわけがない、過去に恨まれることがあったのか。 痴情のもつれか、私怨か、ファミリーからの刺客か。 何も理解なんてしてやらないしわかりたくもない。 (_8) 2023/10/01(Sun) 0:22:56 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ丁度よかったな〜に、うん〜と返して笑う声は陽気なものだ、訪れた平和を享受するみたいに。 飲み物についてはミルクがあればそれをねだり、横並びになれると分かればソファにぽすんと座る。 そうしてマリトッツォにはまだ指先を伸ばさず、返答を待って、待って。 「……そっか」 内容は予期していたものだから驚きはなく、答え合わせが済んだだけに違いない。 でも貴方の口から直接伝えてもらえたことに何よりもの意味がある。 「そりゃ〜中々言えないだろ、オレが同じ立場でもそうだよ。 怖いの気にしてくれてありがとう、隠さず言ってくれたのも」 ふっと目を細めると其方へと少し身体を傾けた。 クッションとソファでは高低差があるだろうからバランスには気を付けつつ、とはいえ身長差を考えれば丁度いいぐらいなのかもしれない。 頬に当たるのはあの日とおんなじ、柔らかなひだまり色。 「……大丈夫、怖くなんかない。 だから安心してね、変わらないから」 ……で。 結局それだけじゃ足りなかったから、両腕を伸ばした。 貴方の頭を抱え込んで、それから左手でやさしく髪を撫でる。 抱いているこの思いがちゃんと真っ直ぐ届くよう。 「きれいじゃなくても、ろーにいがだいすき」 違法頼んだのオレだしな、とも、笑声を傍で揺らしながら。 (=12) 2023/10/01(Sun) 0:24:59 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>105 上体さえ浮き上がらせられたなら、それに追従しないわけでもなかった。 何もかもに無気力であるのとは異なる、他から見て違いはわからずとも。 打撲程度の損耗はあるものの無事な方の腕で体を支えて立ち上がる。 片足は引きずり気味ではあるものの、体重を支えられないわけではない。 点々と血が尾を引く足跡を残しながら、助手席の方へと歩いていく。 時間が無いのは確かだ。そして目の前の相手を見れば、互いにそうなのも確かだった。 皮肉るような物言いはされど相手の提案を蹴って立ち止まったりするものではない。 そればっかりが事実であって、心中の内を饒舌に語ったりはしない。 「話くらいは聞いていけよ。何も聞きたくないわけじゃあないだろ。 もしそれくらい呆れてるなら、お前は此処にわざわざ来ない」 決めつけるような物言いのどれだけが真を得ているのだろう。 長い月日の中で互いがどういう人間か霞んだか、或いは。 少なくとも、聞けと言うほど自分から話したりというのも、男はやはりしなかった。 「……お前の運転する車に乗るのは、そういや初めてだったかな」 #BlackAndWhiteMovie (106) 2023/10/01(Sun) 0:26:40 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ「エル」 だけど自分は貴方には優しく語りかけてやる。 もうきっとその心はボロボロで、自分が何もせずとも傷だらけ。 「この世に死んで良い人間なんて早々いない。 奴のことは本当に わからない 、だから。こうして彼のものが残ってたことも、運が良かったと思ってくれ」 いつか、彼の罪というものが誰かに提示されるのであれば。 俺だってそれを知りたいぐらいだ、この事件で本当に罪を犯していたものがどれぐらいいたのか。 彼は本当に私刑ではなかったのか、証明できたものはいたのか。 ただ唯一わかることは。 「ただ、そうだな。 間違えたんじゃないか」 その方法を。信じるものを。取るべき行動を。 何かを間違えた、殺されてしまった理由なんてきっとそれだけ。 「…………。エルが無事で良かった! 心配したんだ。 俺はお前まで居なくなっていたらどうしようかと」 あなたの背に手を回し抱きしめれば、穏やかにリズム良く宥めるように動かして。 そうして何度も何度でも、優しいあなたの幼馴染は嘯いた。 (_9) 2023/10/01(Sun) 0:31:44 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>106 怪我を慮る様子など一切なく、力任せに腕を引き起こす。 手招きも指図も、説明も気づかいも無い。 奇妙で不格好な、それは信頼ににた形。 ここ十年ばかりお互いの間に横たわっていたさまざまなしがらみや思惑、年月や歳月。 そういったどうでもいいもの全て、 ばたんと乱暴に閉じられる扉の音にかき消えていくようだった。 「……カー・ラジオ代わりに流してやるから、勝手に話せよ」 分泌される脳内物質のせいか、 それとも流れ出す血のせいか。 なにもかもを走り切った直後のような、気怠さと自由の境目のような空気。 ──この十年ばかしあった微妙な距離感の代わりに、そういったものがぶちまけられたような感覚。 それを形容する名前を、ふたりは持たなかった。 あるいは、必要としなかった。 「たりめーだろ。 カポの車に乗る警部がいるかよ」 がたがたと煙と異音をあげながら、フィアットのタイヤが滑り出す。 行先は、港。 ゆっくりと沈みゆく太陽を追いかけるようにして、ひびの入ったフロントガラスが瞬いた。 #BlackAndWhiteMovie (107) 2023/10/01(Sun) 0:35:59 |
【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ勝手に手渡されるものを突き返すのは難しい。 結局、こういうところが"悪役"になれないひとつなんだろう。 でもそれに後悔はない。後悔は、しない。 だから、君からの言葉。ちゃんと受け取るよ。 触れる肩。拒まれなかったことに安堵の息を吐き 海の色は視線だけが空に向いて、 少し、何かを考えるようにその双眸を閉じた。 「俺も、」 「………俺も、この街を出ようと考えているんだ。 友人に頼めば、いい物件を探してくれそうなんでね」 A.C.Aに所属していた、それだけが理由じゃあない。 今の家は与えられたもので、職も与えられたもので。 名前も、何もかもが"リヴィオ・アリオスト"のためのもので。 それは、愛されていたからじゃない。 引き取った以上、そうするしかなかったのだろう。 だから俺が俺として、彼らが彼らとして生きていくために、 今このタイミングで選ぶことが必要だった。 「………まぁ、だから」 「忘れることはないし、見守っている……が、」 ▽ (-370) 2023/10/01(Sun) 0:37:59 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ瞳を開き、深く、息を吸ってから。 吐いて、少し躊躇って、………それでも。 「── 暫く 、俺と一緒に暮らすかい?」声にする。言葉にする。 自分を受け止めてくれた人達のためにも。 抱いた本音や想いを語って、生きていこうと考えている。 これは、その一歩──のうちのひとつ。 「勿論、既に決まっているなら断ってくれて構わない。 行き場がまだないならって話でね」 「……どうやら俺は、君のことが心配みたいだからさ」 ひとりで歩くのって、きっと大変だから。 その一時の支えを担い見届けて、満足に死ねたらいいなと。 狡い考えを笑顔に隠し、君の隣を 少しの間 歩こうとする。「情けない俺も見せてしまうだろうけど、 それは、……出来れば、許してくれると嬉しいな」 (-371) 2023/10/01(Sun) 0:39:15 |
リヴィオは、君と同じ空を見ている。 (a37) 2023/10/01(Sun) 0:40:35 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>107 その日の空は晴れていた。 緞帳を割るように光は破砕された開口部を割って差し込む。 パレードが幕を開けた頃に比べれば随分と光は色を帯びていて、 道向こうの目的地であるように主張する夕の色がやけに視界に眩しかった。 僅かな隙間を縫って吹き抜ける風が傷をひりひりと傷ませる。 「お前をパトロールカーに乗せてやることはしょっちゅうだったけれどな。 性懲りも無い暴れ方ばかりするもんだから、ガソリン代を請求してやりたかったくらいだ」 まだお互いが若く未熟で、ちょうど今の夕焼けのように昼と夜の交わりとの関わり合いを、 どんなふうに図るべきなのか探るようにしていた頃の話だ。 今、或いはこうなる直前よりもずっと上手く切り抜ける方法なんざ知らなくて、 どちらも自分の上、社会だとかそういうものに叱られため息を吐かれていた、 あの頃の夕日が一番眩しかった。 「お前は引き継ぎは終えてきたのか。どうせろくに話もしてないんだろう。 口を開かないことばかり得意になっちまったもんだな」 #BlackAndWhiteMovie (108) 2023/10/01(Sun) 0:59:55 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>108 潮風はまだ遠く、けれど海から吹き上がる風は真っ直ぐに削いでいくようだ。 こんなときにこそ使うべき黒眼鏡を助手席にかちゃりと放り捨てて、 ハンドルを苛立たし気に指先が叩く。 とん、とんというリズムは、鼓動とも路面の震動とも入り混じらない不協和音。 なのにその音が妙に耳に響いて、それ以外がどこか遠くに聞こえてくる。 「今ならぜって〜被害届出してるからな、あんなの。クソ暴力警官。 あの時懲戒喰らわせておくべきだった」 今にして思えば、あの時分が一番互いを信頼していたとさえ思う。 何も伝えず、何も理解せず、 それなのに同じ場所にいた。 その時のように交わされる言葉は、 傷跡に疼く熱に溶けていくよう。 ──理解とは程遠く、けれど齟齬がなかった。 スラムか、暴力か、あるいは痛みか。 何某かの塔の正体が何だったのかはいまだに分らないが、 少なくとも、同じ言語が通じていた。 「…そっち、あの状況でしてきたのか? 嘘だろ。 俺ぁなんもしてねえよ。あいつらならどうにかするさ」 車は海辺へと続く道路を曲がり、赤い照明が明滅する港湾設備へと進んでいく。 その光をフロントガラスに映しながら、 なんだか嬉しそうに笑う。 ──相変わらずの放任主義だ。信頼する相手のことは、あとは大丈夫だと無条件に、どこまでも放り出す。 #BlackAndWhiteMovie (109) 2023/10/01(Sun) 1:10:39 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>109 ゆっくりとカーブを曲がり、建物の間から遠くに海が見える。夕暮れの色に照らされた美しい海。 いつもだったらそれを楽しむ余裕があったかもしれないし、 その向こうにあるのだろう本土の岸辺を想像することもあるのかもしれない。 街の景色が遠ざかっていき、見えるものの色数ばかりが少なくなっていく。 そう遠くもないうちに、この車は港へと着くのだろう。 「俺の部下に引き継ぎなんざ必要ないさ。普段からなんでも教えてやっている。 お前と違って上に立つものも一人きりてなわけじゃない……うまくやるだろうさ」 果たして当人らにとって適切な引き継ぎがあったかなんて想像はしない。 少なくとも今から間に合わせることなんてのはお互いに出来やしないのだから、 彼らの身になって考えるなんてことに意味があるわけではない。 痛んでいない右腕を動かす。ポケットから抜き取られたのは一本の葉巻だ。 湿気の管理もされていなければ剥き身のままほっとかれてラッパーに皺が寄っている。 あの日、餞別として貴方から強奪したものだ。 それが見えるように片手で掲げてから口に咥える。 「……火貸してくれ。シガーライターくらいあるだろ、この車」 #BlackAndWhiteMovie (110) 2023/10/01(Sun) 1:29:23 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>110 がたがたと歪んだフレームの隙間から、さんざめく潮騒が聞こえてくる。 フロントガラスから回り込むように、 海面が反射する橙の光が覆っていく。 ぐるりとハンドルを回して、半開きのゲートをくぐる。 するすると滑り落ちるように向かう先は、港湾施設に併設された倉庫群だ。 「俺の部下にも引き継ぎなんて必要ねぇけど!? 俺のやってた仕事なんざ、あることをあるようにしただけだ。 もっとうまくやるまであるね」 張り合っているのかなんなのか、それとも誇らしく主張しているのだろうか。 確かなものなど何一つなく、空々しくすらあるがなり声が車内に響く。 葉巻の先端を視界の端にだけとらえながら、 「セルフサービスだ。 お前の人生に俺からくれてやるものなんて一つもねえ」 アクセルをがん、と蹴りつけるように踏む音。 速度を増した車は、舗装された斜面を跳ねるように降りて、 ある倉庫の陰へと向かう。 ──そこは、カポ・レジーム"黒眼鏡"が管理する倉庫群。 治安組織もファミリーの監視も、少なくとも普段はほとんど及ばない この街の空白地帯。 #BlackAndWhiteMovie (111) 2023/10/01(Sun) 1:38:23 |
【神】 口に金貨を ルチアーノ「 金の出費が激しいなあ、アレッサンドロ 」赤字にならないスレスレを狙った被害。 既に片付けられつつも瓦礫が残る爆破された場所は風通しが良くなって外の爽やかな空気をアジトへと迎え入れる。 負傷による人員の損失だけが一番デカいと感じる、 労働的にも、精神面のフォローに関してもだ。 「無駄遣いのし過ぎなんだ、最後の祭りだからって。 せめて旨いもんを部下全員に奢るぐらいしてからいけ」 #アジト (G7) 2023/10/01(Sun) 2:10:08 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>111 「っ、はははは。 物知らずが店一つ任されるくらいだ、それくらい教えられてりゃ問題ないだろうよ」 空笑いが返る。くるくると葉巻を回してポケットへとしまいこんだ。 張り合って上げる大げさな声も、突き放すような物言いも、やけに満足そうに耳を傾ける。 背中の向こう、振り返らなければわからない街の様子などわからない。 残された彼らがどうしているかなど知る術もなく、知らせる者もいない。 それでよかった。 スピードを上げる車とは裏腹に、悠揚と構えて眼の前を見ていた。 話す相手に目を向けるのでもなく、ただ紫色を帯びていくオレンジを見ていた。 たかだかの干渉に集約してしまうには、男のほうは、今にすっかり満足していた。 車が停まれば扉を開けて助手席から外へ逃れ出る。 景色を見に来た、だなんて。そんなことは欠片も思っちゃいない。 それでも求めるものを提示されるまでは、開け放った扉に手を掛けて、 沈みゆく夕日が海を照らしているのばかりを見ていた。 体重を他に預けて構える、その片目は失われていた。 全身打撲の状態であちこちに殴打の痕があり、片足は半ば引きずっていた。 外套の内側からは血が流れ出す。左肩は粉砕され、脇腹はじんわりと血を吹いていた。 一番顕著であるのは右胸の傷で、すっかり黒くなった血の跡を染めるように新たな血が流れる。 今は空にされた助手席のシートが、凄惨さを物語っていた。 #BlackAndWhiteMovie (112) 2023/10/01(Sun) 2:16:30 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>112 「ぬかせ。お前よりよっぽどいい上司してたわ」 本気の舌打ちをぶちまけながら、バックミラーをぐいと捻る。 根本から明後日の方向を向いた鏡は、もう背後の街並みを映し出したりはしない。 視界に広がるのは風の割には穏やかに揺れる海面と、 それを無機質な倉庫の陰が無機質に、参差として遮っていた。 助手席が開くの音に覆いかぶさるように、 蹴り開けるような勢いで扉が開く。 ところどころ穴の開いたスーツの裾がばたばたと、 忙しなく海風を孕んで揺れていた。 「一服する間くらいは待ってやるよ」 ばん、と力任せに叩きつけられたドアは、しっかりとは閉まらずに中途半端にずれた。 車越しににらみつけるアレッサンドロの片目もまた、押し当てられた布切れを赤黒く滲ませている。 銃弾が掠めたのか、あるいは貫通したのか肩や腿にはごわごわと乾いた血液の痕が張り付いていて、特に左腕の動きが鈍い。 それでも、 「おめえが何やったか、よく見てなかったンだけどよ」 フィアットの天板に、ごとん、と肘を乗せて。 「んなもん、どうでもいいから。」 「これからぶっ殺すくれえ殴るから、死んでも文句言うなよ」 ――笑った。 #BlackAndWhiteMovie (113) 2023/10/01(Sun) 2:30:45 |
【神】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>G7 ルチアーノ 「我らがカポ殿はずいぶん財布の紐が緩かったらしいな? ま、元からカネだのブツだのばら撒くたちではあったか」 もちろんそれは支出であって、浪費ではなかった。 今回のこれも同じ事だろう。 それを受けて周りがどう動くかも含め、 何もかもが計算ずくで行われたこと。 「せっかくの祭りだってんならついでに祝日にして 俺達にも休みをくれてやって欲しいもんだね」 「あーあ。あーあーあー。どーすんだよこれ。 人的被害も物的被害もカチコミにしちゃお遊びみたいなモン。 その『お遊び』で俺達の仕事だけが増えたじゃんか」 件の『襲撃』で死者は出ていない。 損失だって金や時間でじゅうぶんにフォローができる範疇で。 下手人も収束していく先はアレッサンドロ・ルカーニアだけ。 それが全てを物語っている。 「お互い忙しくなるなあ、ルーカス?」 アジトに吹き込む秋風と共に。猫被りはやって来るや否や、 大袈裟にやれやれと両手をあげるポーズを取り、 溜息混じりの言葉を投げ掛けた。 (G8) 2023/10/01(Sun) 2:40:26 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ「5番から8番。23から26、拡大。……違うな」「12番のこれは?」「違う、下水はとっくに抜けてるはずだ」「車の事故の報告」「車種は?」「俺が分かると思うか?」「何の為に情報チームやってんだバカ」「『先生』がキレる前に出せ」「……出たぞ、フィアット500」「渋いな……」「待て、フィアット?」「どうした」「確か黒眼鏡の旦那の店から出てった車の映像、監視カメラに」「回せ」「赤の……フィアット500!」「先生の虫を辿れ!」「45ブロックの監視カメラに該当アリ!」「時系列順に!」「中心部から随分離れてくぞ」「……もしかして、"港"じゃないか?」「一番近くのドローン回せ!」「2番ドローンが向かってる」「映ったか?」「いや……」「待った、橋の辺りに確か虫置いてたろ」「それだ、映像は?」「――通ってる!」「来たぞ!時間は!?」「12分前!」「このコースなら港湾倉庫だ!」「空撮は?」「待ってろ……あ!」「居たか!?」「居た居た居た!赤のフィアット500!」「旦那の港湾倉庫かよ!」「あそこかあ」「そりゃ見つからんわ……」「感心してないで連絡しろ!他の奴より先に先生を送り届けるんだ!」「了解」「あいあい」 情報チームの精鋭が目標を捉えるまでかかった時間は、 他の連中に比べれば随分短かった。 その理由があるとすれば、普段から『先生』が、 あちこちにばら撒いていた虫のおかげだろう。 今回の法案の事件のような、特定個人の会話を聞いたり ある一定の人間だけを追い続けるというような 局地的な精度を要する物には効果が薄い一方で。 『何が、どこを、いつ通過したか?』 そういったものの情報に関しては、カンターミネの虫と、 情報チームの連携による『網』は無類の強さを発揮した。 秘匿回線によるメッセージが届けられ、 カンターミネの目に入るまで数秒。 「――来たか。」 少しの不安と、覚悟を混ぜた呟きが小さく漏れる。 気が付けば外は夕陽で赤く染まっている。 顔に不安が出ないよう"王子様"の顔をしてから、 彼女を出来るかぎり優しく起こす。 そうしておよそ15分のラグを経て、 カンターミネとダニエラを乗せた車が、港へと走り出した。 (-372) 2023/10/01(Sun) 2:45:20 |
【神】 口に金貨を ルチアーノ>>G8 ペネロペ 「忙しくなるなあ、ペネロペ。 ……今回の件で俺の取引相手も半壊なんだが? ヴィットーレの店も建て直さなきゃならんし」 同期の声に体ごと視線を向ける、ここ最近は長く見慣れたはずのその容姿がなんだか久し振りに見えた。 それ程までに駆け回っているし、話題の男の残した仕事の後始末が何処をとっても忙しいのだ。 「全く、散歩する隙も無くなりそうだ」 「そうだお前さんは何か報告はあるか? 俺は言っておこうかと思うことが一応ある」 (G9) 2023/10/01(Sun) 2:55:55 |
【神】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>G9 ルチアーノ 「ったく、この件が片付いたら ぜって〜〜休みもぎ取るって決めてたのによ」 法案が撤廃されれば終わり、などという 簡単な話ではないとはわかってはいたが。 それに輪をかけて叶わぬ願いになってしまったらしい。 少なくとも、当面は。 「そりゃ大変だ。デートの時間は取れそうか?」 「俺は暫く纏まった時間は取れないだろうな。 文句と取り立てはあのクソ親父に言ってくれや」 口ではクソ親父、とは言えど。 子どもの頃から面倒を見てもらっていたようなものだ。 少なからず恩はあるし、慕ってもいる。 それが姿を眩ませ、剰え今や『報復』の対象となっている事は 何だかんだと身内に甘い男にとって気の重い事だった。 「言う事と言えばそれくらいだ。そっちは?」 (G10) 2023/10/01(Sun) 3:32:01 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ「あぁ、…約束、してくれ」 君には、ちゃんと"幸せになって欲しい"。 そしてこれは、身勝手な願いなんだろうと思う。 しかし、だとして。願わずにはいられない。 これは、仕方のないことだった。 だから、それでいい、そういうように頷いて。 「……君、言っても言わなくても同じじゃないか? 約束してくれと言ったところだろう?」 「精々その時の俺に祈っててくれ。 その約束はあまり、したくない」 君と俺は"対等"で、主と犬じゃあない。 気まぐれに消えた友人か知人か。 それを想って探すなど、やめておいた方がいい。 一方的に、身勝手に。 狡い言葉を並べ続けて、君を縛り付けるやつなんだ。 だけどそれが俺で、この約束を後悔することは一生、ない。 それでもきっとその時、俺は君のことを 考えずにはいられないのだろうなと──そう思うのだ。 「………さて、そろそろ俺は行くよ。 伝えたいことは伝えられた」 (-373) 2023/10/01(Sun) 4:12:10 |
【神】 口に金貨を ルチアーノ>>G10 ペネロペ 「当分それもお預けになるだろうな。 どうしても耐えきれなかったら車出してくれ。 お前も気晴らしに色男の子守唄が聞きたくなったらすぐに言え。 今ほしいのは時間だね、なにもしなくても良い時間だ」 いつものように怠惰を望む。 ドライブもすぐには叶えられないことだとはわかって貴方には甘えている。 それでも随分前よりはあっさりとした声で、そこに執着の色はなかった。 「俺はなあ、ファヴィオを撃ってきた。 あと幼馴染が年単位で病院の厄介になるほどの重症。 それと……ああ、イレネオが死んでたから捨ててきた。 牢屋で過剰な暴行騒ぎがあったの知っとるだろ、被害被ってるのはヴィットーレとカンターミネだけだが報告いると思うかあ?」 (G11) 2023/10/01(Sun) 4:45:49 |
【神】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>G11 ルチアーノ 「しょうがねえな。全部投げ出したくなった時は 手の掛かるamoreを連れ去ってやるとするか。 何ならロメオの奴も巻き添えにしてやろう 道連れは多いほど良いからな、抜け出して酒でも飲むか」 どうせ怠惰を望むだけで怠惰に過ごしたいわけではないくせに。 そんなふうに内心勝手な事を思いながら、 シレッと本人の居ない所で勝手に巻き添えを増やした。 「うへえ、まーだやってたのかよあいつ。しかも死んだのか。 要らん要らん、どうせろくでもない事しかやってないだろ もう死んだ奴のやった事なんざ知っても何にもならん」 「あいつもなんであんなになっちまったかね」 イレネオという男とは墓地で出会してからそれっきり。 以降会う事も無かったのは幸運なのか、 或いは聞かずじまいに終わるという不運なのか。 今となっては答えのないことだ。 「ま、荒療治だが結果的には良かったんじゃねえの。 これでお前も漸く前だけ見て生きられるってわけだ」 前だけを見るしかないとも言うが。 あなたにファヴィオ・ビアンコという上司が居た事を知っている。 それを撃ったという事は、 そこに何某かの過去の決別があったのも確かだろうから。 (G12) 2023/10/01(Sun) 5:13:13 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-372 目覚めてから車に揺られている間も、女はあなたの傍を離れようとしなかった。 どうして港なんだろう。 アジトに置き去りにした荷物のことを思うと、余計な期待をしないでもなかった。 しかし、まあきっと違うだろうなとどこかでそう感じてもいる。だからこれは余計な期待なのだ。 一度の仮眠を経て頭はだいぶスッキリとしている。 スッキリとしたからこそ、これからの意味を考え始めていた。 こんなに慌てなくたって、案外何とかなると思い始めている。 檻の中のあの人に、自分が向けた言葉も思い出していた。 …あの人はあの時、本当に正直だったんだなと今なら思える。 それがこんなに早く来たことに勝手に傷ついているのはきっと自分が悪いと、納得するだけの準備すら整っていた。 多分、このときには感じていた『不安』の意味が変わっていたのだと思う。 ずっとずっと、浮かぶのは、こんなことしてどうするんだろうって逃げるみたいな思考だったから。 …それが逃げだと自覚もある分、やっぱり損をしているのかもしれないけど。 「…。」 女は静かだった。目的地に着くまで、本当に静かなものだった。 それでいてずっと、意味を考えていた。 そんなものなく博打に出たってよかったけれど、博打には最近負けたばかりだから尚更に。 聞きたいことじゃなくて、████ことにしてしまったらどうだろう。 それに至ったのはきっと、車が目的地に到着する、本当にぎりぎりのことだった。 (-374) 2023/10/01(Sun) 5:48:38 |
【神】 口に金貨を ルチアーノ>>G12 ペネロペ 「酒の金は出してやる、お、ロメオか。いいんじゃないか。 あいつもこれを機にちっとは昇格するかね……? 俺が上がりすぎそうになったら推薦して仕事増やしてやる。 同じぐらいに居て貰わんと困るんだ」 貴方に対しては煽りになるような昇格の軽口がロメオに対しては真面目に考えているような口調で振舞う。 此方の話題の彼は自分達とは違い昇進を望んでいるのかもしれないし、結局はこの男の都合かもしれない。 「さあなあ、イレネオという男は存外真面目だったぞ。 俺は嫌いじゃない価値観をしていた。 ただそれが大衆受けするようなもんじゃなかったのと、 童貞らしすぎたのが問題かねえ!」 少々雑に評価しているのは私怨が混ざった結果。 真実なんて知りたいと思わなかったが、それでも、必要になったら思い出してやろうと思う。 そんな奴に幼馴染が心奪われてるなんて思いたくもなかったし言いふらす気にもなれなかったが。 ▼ (G13) 2023/10/01(Sun) 5:52:19 |
【神】 口に金貨を ルチアーノ>>G13 「あいつはなあ……一緒に来るかと言われて、断った。 そして殺し損ねた、次はロメオと仕留めてくる。 外国混じりの挨拶をしやがって……、また明後日なだとよ」 明後日、そんな日は来ない癖に。 自分たちにとって五年など一瞬だったことのように彼は語っていたような気もする。 嫌な話である、早く静かに墓の下に入っていて欲しいと願うその表情は何処となく穏やかだ。 「まあ確かに。 撃てると思った理由はまた別なんだが。 お陰で頭もすっきりで変なもんは見えんくなった。 やっぱり面倒事を断つにはぶっぱなすしかないのかね?」 恐ろしく冷静にそこに愛憎なくとも淡々と告げる姿は珍しいものかもしれない。 件のファヴィオに対しても、ついでに言えば黒眼鏡に対しても既に心から完全な死を願ってお悔やみ申し上げようとしている。 尤も端から失うことが苦手だっただけで、 死によって与えられるものがあると知ってしまえば その価値観は上書きされるぐらいに素直な人間であったのだ。 誰かに似ているとはあまり自分からは考えたくなかったが。 結局は自分の手で始末がつけれてしまえばそれですっきりするような性格だったのかもしれない。 (G14) 2023/10/01(Sun) 5:56:07 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → L’ancora ロメオ「今度からはいくらでも聞かせやれるぞ。 俺は酔ったら口が滑る」 別件でもあまり見せてなかったか、と酒飲みをする知人達を思い出す。 確かに自分は年上とばかり飲んでいた気がするし、目の前の同僚には少し格好つけばかりしていた。 あまり隠しているつもりはなかったのだが。一応は。 一瞬だけ目を離しかけた時に貴方の瞳から零れる涙に視線が奪われてぎょっとする。 何度目だろう、このシチュエーションは。 ここ数日で何人の人間を泣かせてしまったのか片手ほど行きそうなことに、自分でも困惑してしまう。 そこまで女性を泣かせた記憶もないのだ、ましてや成人男性も。 「え。だ、大丈夫か……? だってお前が変なことを言うから。 こんなに最高の男がゴミ畜生ならこの世界に居る人間の大半は一体何なんだ。 チリかカスとでも名乗らせればいいのか、結構な言い分だぞ。 自己評価を少しは改めろ、直ぐに変えろとは言わんがお前ならできるだろう?」 #ReFantasma (-375) 2023/10/01(Sun) 6:21:58 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → L’ancora ロメオ「たとえそこにあった人生が薄汚れたモンでも 俺が磨いて誰にでも認められる存在にしてやる」 掴まれた右手が撫でられ、弄られ、包まれて、まるで大事なもののように扱われる。 なんだか不思議な既視感を感じるのだが、貴方のその表情で憂いはないし、余計なことは消え去った。 そのまま少しだけ体を傾けて、その指先に口づけを落としてやる。 「俺の隣に居るのならそれぐらい、な」 いかないで、傍にいて、置いていかないで。 あの日に言った弱音がまた頭に過って、今は格好つかないと飲み込んで笑い返す。 不安に思っていたことが同じだったとわかってしまえば、もう全て受け入れてしまえばいい。 そして、いつかのその日は――何処までも一緒に連れて行ってしまおうと一人で決めて。 答えは分かり切っているのに、断らないで欲しいと願うのだ。 きっと誰かには文句は言われるだろうが、仕方ない。 みんな俺に気に入られる程価値があるのが悪いのだ。 #ReFantasma (-376) 2023/10/01(Sun) 6:22:28 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「お前の事こっちのゴタゴタに巻き込みたくないし」 「どうせだったら マトモ な部分だけ見て欲しくて……」貴方をそういう世界に触れさせたくはなかった。 無かったけれど、貴方がそうやって許すから、 正直に言おうと思えたのだ。 それでもこれは言い辛そうにしていたけれど。 「え」 ──伸ばされる両腕に、ぽんと抱き寄せられる。 抱えられた頭を、自分よりも小さな手が撫でている。 「あ」「…………」「フ、フレッド」 「オレ、」 これは途端に驚いた顔をして、何回も瞬きをし。 ふと弱弱しく名前を呼んで、貴方の胸に頭を押し付ける。 弟に甘えるなんて思っても無かったけれど。 「……きらわれなくてよかった」「安心した……」 「…………あは。オレもお前の事は好きだよ」 今は抱き締め返すよりも、この時間を享受していたかった。 穏やかに目を閉じて、ぽつりと「よかった」とまた言って。 「お前……これからどーすんの」 「他に手伝う事無いの。オレやるから……」 (=13) 2023/10/01(Sun) 6:30:29 |
【神】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>G13 >>G14 ルチアーノ 「仕事一筋にはなりたくねえもんだなあ。 真面目が行き過ぎるとどうも融通が利かなくなるらしい」 どうもずいぶん真面目に考えているらしい話に交え、 やや私怨の混ざった評価を笑い飛ばした。 良くも悪くも死者を引き摺るつもりも、 死者を嘲笑う趣味も無いが。 反面教師にくらいはしてもいいだろう。 この首のケロイドが消えるまでは。 「仕留め損ねたねえ、そりゃ残念だ。 次はちゃあんと頭を二回ブチ抜いてやれよ。 この世の面倒事なんざ金と弾丸で9割片が付く」 「殺ったら教えろよ。覚えてたら祝ってやる」 物騒な提案に物騒なお祝いを添えて。 淡々とした言葉には内心珍しいなと思いながら、 物騒な発言とのちぐはぐさにチェシアの猫のように笑った。 きっと互いに人間は案外あっさりと死ぬものだと知っている。 そして、それが小憎たらしい人間であるほど、 死に際はあっけないものだとも。 (G15) 2023/10/01(Sun) 6:32:44 |
【魂】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ>>_8 >>_9 「そう……だね」 僕は 確かに運がいい 。ルチアーノが居なければ、遺品の一つ手に入らなかった。 死体は決して見つからず、最後は行方不明で処理されてしまうかもしれない。 死亡したという事実が知れただけ、僕にとってはきっと幸せなことなのだ。 「うん……。 きっと間違えたんだ……」 じゃなきゃ、あの真面目な、真っ直ぐな人がこんな事になるわけがない。 心に巣食う自責の念はまだ小さい。 それはこうして抱きしめてくれる腕が、優しい声が食い止めてくれているかのようで、心地いい。 がらがらと心が崩れていく。 僕が。 僕が何も見ず、あなたの声だけ聞いてあなたの傍にある事が、あなたの幸だというのなら。 僕はもう、きっと他の誰かを見ることはない。 信じるものは、ひとつだけ。 「ルチア……。ルチア……! ごめんね。でも、ルチアが外に出れて、本当によかった……」 だからずっと、強く抱いていて。 僕はもう絶対、その心ごと、キミの傍を離れないから。 (_10) 2023/10/01(Sun) 6:54:49 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ「……フレッドは自分探しをするんでしょ? だったら、やっぱり姉さんは止められないよ」 「寂しいけど、ずっと会えないわけじゃないのよね?」 指先に触れるあなたの体温に、ずっと触れていられたらななんて思うのだけど。 無理をしているわけではない。 今まで気軽に会えた分、会えない時間が増えるのは心配になるというだけで。 「………何で」 知ってるの、と。 あなたの口から出てくるとは思わなかった"マフィア"の言葉に目を見開いて。 驚愕したような様子で、あなたの顔を見ている。 知らないでいてほしかった、なんて言えるわけもなくて。 そのまま目を伏せてしまうのだけど。 うん、と相槌を打った。 自分だって、出来れば殺しはしたくない。 そう思っていたのだけれど。でも、どうしたってマフィアである以上は。 避けては通れない。もう、引き返せない。 胸がぎゅうと痛むのだ。 ▽ (-377) 2023/10/01(Sun) 8:57:33 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ「……フレッド」 けれど、あなたがくれたのは否定の言葉ではない。 手に伝わる温もりも、真っ直ぐな言葉も。 自分がいつもそうするみたいに、寄り添うようなそれで。 「そんなこと言われたら……甘えちゃうよ、姉さん」 「忘れない、忘れるわけない。姉さんも、フレッドのこと大好きだもの」 「嫌いにならないでくれて、ありがとう」 だいすきなあなたが、自分を大好きなままでいてくれるというなら。 これ以上のことはない。 その顔は、眉こそ下がってはいるものの 笑みを浮かべていて。 胸を張れるような立場じゃなくてごめんね。 そんな言葉は飲み込まれた。 あなたはそんな言葉を望んでいないとわかっているから。 (-378) 2023/10/01(Sun) 8:58:57 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>113 懐からナイフの一本を取り出す。手入れはされているが汚れているそれは、 おそらく手癖も悪く先の町工場内部から拾ってきたものなんだろう。 ひしゃげた葉巻を乱暴にカットすると、煙草のボタンを押して起動させる。 幸いシガーソケットに歪みは無かった。ライターを取り出して赤熱面に押し当てるも、 直火でないから火がついて炙られるまでにはさんざ苦労をした。 「……初めはお前は随分大人びちまったから、裏切られたと知ったら切り捨てて、 あとはそれきり、自分の部下かなにかにでも始末を任せるものかと思っていたよ」 保管状況も火付けも何もかも悪い葉巻は、パルタガスの良さを台無しにしている。 しばし車に体重を預けながら、夕日が沈んでいくのを見ていた。 こんなところまで追ってくるのがいたとして、アジトやあちこちが散々な今、 痕跡を追ってやってくるとしたって日が昇ってからだろう――唯唯彼を追うふたりは別として。 「何かに付けて突っかかってくるようなガキの時分じゃなきゃ、 自分の手でケリつけようなんざしないだろうと思っていた」 「けれど、お前は追ってきた」 喉の奥から喘鳴混じりの笑い声を吐く。 車を挟んで並ぶ男の顔を見て、目を細めて笑っていた。 遠いものになってしまった景色を眺めるような、懐かしむような目。 ころりと首を傾げて、可笑しそうに、いつかのように頬を緩める。 「 自分を殺す凶器を選べるなら、お前がいいとずっと思っていたよ 」#BlackAndWhiteMovie (114) 2023/10/01(Sun) 9:11:51 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>114 「そりゃこっちの台詞だ、あんたが大人になっちまう日が来るとは思っちゃいなかった」 車に体重を預けながら、悪餓鬼のような笑みを浮かべる。 怒りと苛立ち、嘲りと――仲間意識。 そういったものがないまぜになって、ぐつぐつと、 耐えがたいはずの悪臭を放ち煮えたぎるような凶相。 なのにそれは、どこまでいっても笑みと表現されるものだ。 「──俺だってガキじゃあいられねえ。ただ、どーでもよくなる時だってある」 はるか遠くを過ぎゆくプレジャーボートのエンジン音が、波を伝い足元にまで響いてくる。 そうして、あなたの漏らした言葉には、一瞬きょとん、と目を丸くして。 「──ハ」 「気色悪いこといってんじゃねえよ」 ははは、ははは、と。抑えきれなくなったような哄笑が、途切れ途切れに漏れ出して。 「──オッサン、コラ。ノンビリ吸ってんじゃねえぞ」 かつては大人と子供ほどに離れていた年齢は、今やすっかりと希釈された。 それなのに、その口調は悪態をつく子供のようだ。 ポケットに片手を突っ込んだまま、車に手をついてゆっくりと回り込む。 おぼつかなかったはずの足取りは、舗装された足元を引きちぎるかのように重く、強い。 ぴりぴりと、引き絞られたか弓矢のように、それは放たれる時を待っている。 #BlackAndWhiteMovie (115) 2023/10/01(Sun) 9:41:54 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>115 「俺は変わっちゃいねえよ。周りが自分よりガキばっかりになっただけだ。 だから面倒を見てやらなきゃいけない数が増えた、それだけの違いしかない」 自分が、自分たちが若い頃も、自分より年少の人間は面倒を見てやった筈だ。 その数が増えただけ。目下のように振る舞う機会なぞありはしない。 それでも、根底にあるものは変わらないままだ。 哄笑を聞いて、ひとたび眉を顰めて。それから、また仕方なさそうに口角を吊り上げた。 次第にそれは同じような高笑いに変わって、港にどうしようもない馬鹿笑いが響いた。 笑えば傷がずきりと痛む。体の震えに伴って新しく血が吹き出した。 そんな無粋の一つ一つが、奇妙な高揚の後ろに押し流されていく。 頭の中が晴れていくような清々しい興奮が、片方だけの瞳を爛々と輝かせた。 「――葉巻はゆっくり吸うもんだろ、小僧。 ……だから此れはお前が台無しにしたことにしてやる」 親指が下から葉巻の胴を弾いた。燻った珈琲やナッツのような香りが舞う。 手元から離れた一本がくるくると回転しながら地面に落ちていき―― トッ、と小さな音を立てて路面にぶつかる。 それを合図とするように、車に体重を殆ど預けて予備動作を消して、 右足を大きく振り上げて蹴り上げた。距離が足りれば体の中央、 そうでなくとも当たれば顎は刈れる。 #BlackAndWhiteMovie (116) 2023/10/01(Sun) 10:14:07 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>116 「ガキみてえなこと 言ってんじゃ ね ぇえぇえええエエエエエよッ!!!」 葉巻が撃鉄のように落ちて、 そらすら待たずにばねは動いた。 ほぼノーモーションで放たれた蹴りを避けられたのは、同時に動き出していたからにすぎない。 だ、だん、と鋼板をへこませる音と同時に、アレッサンドロの長身が車の天板よりも高く飛び上がる。 大きく孤を描き放たれる、横殴りの足刀。 ──だが本命は、その陰。 先ほどまでポケットに突っ込まれていた拳が緩く握りしめられて、空中に身を躍らせた直後── 蹴りとワンテンポ遅れただけの奇妙なタイミング、そして間合いで突き出される。 当たるはずも牽制になるはずもない、ばたつかせただけのような手。それがぱ、と開かれて、 ばさり 、と。握り込まれていた粉末が、 掠れた音とともにぶちまけられる。 派手な蹴撃に紛れて放たれるそれは、 アルミ片を削った金属の欠片。 粘膜を容易く傷つける無数の礫が、潮風に逆巻きながら、顔面を狙ってぶちまけられた。 #BlackAndWhiteMovie (117) 2023/10/01(Sun) 10:25:28 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>117 躱された脚を引く力に任せて上体を引く。 大仰な動きは、それが本命でないのも相俟って適切な間合いで避けられた。 問題はその次だ。 「っ、」 片目を庇うように瞑る。視界は一時的に制限されはしたものの、恒久的にそうなるよりはいい。 避けようもない攻撃は顔面に降り注ぎ、交通事故にでもあったように傷に金属片が食い込んだ。 見えないものを、やり過ごしきったと判断するのは難しい。 目を開くことが出来るのはもう一手先だ、故に。 見えずとも当たることが予測できるものを狙わなければならない。 流れるように殴りつけにかかったのは足刀、過ぎ去った右足の膝裏だ。 勢い、空中から地面に引きずり下ろすようにしながら自身も背中を丸め、 頭上からの奇襲が追撃されることを防いだ。 握り込めるならばそのまま膝裏の布を引っ掴めたならいい。 そうしたなら落下する体の支点は言いようもなくめちゃくちゃになる。 #BlackAndWhiteMovie (118) 2023/10/01(Sun) 10:39:48 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → きみのとなり リヴィオ「…同じじゃねえよ。」 唇を少し尖らせて。 ほんのちょっぴり、拗ねた顔。 「分かってて見送るのと 知らないうちに居なくなってるんじゃ、全然違う。 好きな奴が急に居なくなったら、心配する。それだけだ。」 そもそも、貴方が気づいたら居なくなるなんて 考えたくも無いのが本音だ。 それくらいには貴方の事を好いている。 守りたくて、笑っていて欲しくて、自分は此処に居ていいと そう思って欲しいと願っている。 だからこれは、我が侭。 (-379) 2023/10/01(Sun) 10:59:18 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>118 爪先が何かを掠めて、あるいはまったく空振りをして、 けれどそんなものはどうでもいいと引き戻す。 格闘戦において、自らの肉体を伸ばしたまんま相手の射程内に置いておくほど愚かしいことはない。 ──そんなものを分かっているとばかり、即座に叩きつけられた拳と脚刀がぶつかりあう。 「っ、っだ、」 膝裏を鉤のようにひっかける指を上から押しつぶすように、 器用に全身のばねをたわませてもう片方の足を叩きつける。 技術というにはあまりにも稚拙で力任せなそれが、 もつれあうようにして互いの手足をはじき合った。 人間が滞空していられる時間は、そう長くはない。 アレッサンドロが辛うじて両足を地面に着地した時には、 そんな一瞬の攻防を経て、互いが姿勢を崩したままだった。 否。 僅かに、無茶な動きをしたアレッサンドロの方が姿勢が悪い。 それを補うように、咄嗟に距離を埋めるように左手の拳が突き出される。 ──ちか、と。 金属の輝き。 握り締めた拳の指と指の隙間、 そこに握り込むように金属片。 拳から突き出す先端は猛獣の爪のように、防御すれば肉を裂き骨を打つ。 距離と間隙を埋めるように鋭く二度、三度、狙うは当然顔面、あるいは傷を負った胸元や肩口。 #BlackAndWhiteMovie (119) 2023/10/01(Sun) 11:03:51 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → きみのとなり リヴィオ「怪我が治ったら、酒でも飲もうぜ。 ルチアーノを誘っても良い。」 貴方が去るのならば 男は見送る。次の約束を取り付けながら。 「その時には、色々片付けておくからさ。」 警察は辞めないだろう。 まだやり残したことが多くあるし、何より―― そうしろと、背を押されたような気がしたから。 (-380) 2023/10/01(Sun) 11:07:39 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>119 引っ掴んで頭を地面に叩きつけさせてやるには至らず、指はぱっと離される。 その代わり、指が潰れるほどではなかったのが幸いだ。 相手の不利を狙って畳み掛けるのが承知の人間が着地を見守っているか。 そんな筈はない。地面に落ちた雁を狙わない銃口は無い。 追う脚が一歩を大きく切り詰める。 互いに考えることは同じらしかった。 息をする間も与えまいと、両拳を使って顎下から肩、肋の合わせ、 そうでなければそれこそ向かってくる拳に平然と合わせて殴打を叩き込む。 それでもどうしたって肩の潰れた左腕は動きも鈍く痛みも走る。 右拳のように、相手の卑怯をお構い無しに血を上げながら迎え打つなんてのは出来ない。 そうしている間にも相手の左拳に挟んだ鈍い刃は己の拳や顔面を裂いていた。 新しく出来た傷口にまで、先に降り注がれたアルミ片が皮膚から剥がれ落ちて潜り込む。 いずれは勢いを失わざるを得ないのは必至だった。 だからそれを補うものが必要だ。 シガーカッター代わりのナイフはまだ左手にぶら下げられている。 勢いの無い左拳は代わりに、右拳に紛れて相手の上体を裂きに掛かる。 別段手段を選ばないのはそちらばかりでもない。 そして連撃の迫間、左手が引きに入った瞬間を見計らうと、 点対称の右足は視界の外より、相手の左足の肘を踏み付けにするように蹴り込んだ。 次に何が来るか予測するように、僅かに長身の背が曲がる。 #BlackAndWhiteMovie (120) 2023/10/01(Sun) 11:23:16 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオどうやら貴方も同じように街を出るつもりらしい。 そんなところまでお揃いなんだなあって不思議な心地に微笑んでいたのだが。 躊躇いがちに何か言葉を続けようとしているの気付けば、なあにとでも言うみたいにその瞳を覗き込む。 なんでも言ってくれて構わない。 なんだって受け止めるつもりだ。 どんな言葉だって、隠さずにおしえて。 そう願い、続きを待っていた……ら。 「────……、……」 刹那、双眸がまあるく見開かれる。 何も言えず、貴方を見つめたまま、固まってしまって。 ……思い出し、過る。 家を出たあの瞬間、どこまでも続く星空に。 途方のない孤独を感じたことを、寂しさを。 それでもおまじないを繰り返し、歩こうとしたことを。 提案が嫌だったわけじゃない。 むしろとてもうれしくて、堪らなくて、だからこそ。 ──『大丈夫』がほどけてゆく。 あの夜みたいに一粒、また涙が落ちていった。 [1/2] (-381) 2023/10/01(Sun) 11:25:18 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ「…………く、らす」 夜空を覆う厚い雲はもうないのに、 ぽたぽたと零れ行くそれは通り雨のよう。 「……せんぱいと、暮らし、たい」 感情が形となり溢れてからようやくに気付く。 本当はずっと、ずっと、苦しくて哀しかったんだ。 「オレ、……オレ、ほんとは、」 おまじないが解けた先にあるのはちっぽけな自分。 誰かの人生をなぞるために置き去りにされた、小さなこども。 そのありのままを隠さずに貴方に見せながら。 「………………ひとり、さみしくて、やだ……」 縋る先をようやくに見つけた指先は、 貴方の服の裾を強く握っていた。 [2/2] (-382) 2023/10/01(Sun) 11:27:01 |
ニーノは、あなたと同じ空を見続けていたい。 (a38) 2023/10/01(Sun) 11:27:22 |
ニーノは、だから、「いっしょにいて」とねだった。 (a39) 2023/10/01(Sun) 11:27:27 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>120 極至近距離での白兵戦で、完全に攻撃を避けることなど不可能だ。 姿勢を僅かに整えるまでの数瞬に、 殴打は筋肉と骨で、刃は服の表面で受ける。 みしりという音が体内で響いて、足先が思わず溢れ、 それでも牽制を幾度と放ち、 そのまま押し込まれることを防ぎ切る。 体躯では負けている。 体重というものは格闘戦において絶対だ。 それでも、正面からぶつかり合う。僅かでも腕のうちに潜り込むように身をかがめて、 「っ、づ」 抉りこむような蹴りが、突然そこに現れたかのように肉を打つ。 ばぢん、という音を遠くに聞きながら僅かに体を引いて、 じんと痺れる足をかばうよう片足でかるくステップを踏みながら、ノックするような軽く早い拳を叩きつける。 体力と血液を絞り出すかのように打ち、打たれ、削り合う。 喧嘩でも殺し合いでもある、それはひどく原始的な闘争だった。。 #BlackAndWhiteMovie (121) 2023/10/01(Sun) 11:39:49 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「へ。なんだそれ、酔ったあんたに褒めちぎられるって? それも面白いかもなぁ……」 今まで生きていた分よりお釣りが出るくらいに、 これからも貴方に言葉を貰うのだろうか。 それもそれでむず痒い話だった。 粒になって転がる涙はすぐに止まって、 自分でも不思議な気持ちになった。 目尻を手で拭って、スン、と鼻を鳴らす。 「や……これ嬉し泣きなんで。オレ泣けたんすね、初めて知った。 俺がゴミなのは……多分元からだし……」 「直せって言われるなら直します。うん」 「あんたが磨いてくれるなら、もうゴミじゃないな」 指先に落ちる口付けを見て、口の端をきゅっと上げて笑む。 気持ちが落ち着けば言葉は素直に受け止められるようになっていた。それでもまだ、不思議な気持ちはあるけれど。 嬉しかった。なんだか自分の今までが、報われてしまった気分だ。 自分は人畜生だけれど、大事にしてくれる人がいるらしい。 それなら一層報いたい。応えたい。 「……ね、ルチアーノさん」 ▷ #ReFantasma (-383) 2023/10/01(Sun) 11:44:56 |
ロメオは、「オレの事拾ってくれて、ありがと」 (a40) 2023/10/01(Sun) 11:45:18 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「こんな色男に拾われて幸せだよ、オレ」 「首輪でも付ける? アハハ……」 くい、と貴方の手を引いた。 もう少しこの海辺を歩いていたかった。 ロメオはどこか吹っ切れたような、晴れ晴れとした顔をしていた。 この空には不釣り合いに澄んだ気持ちだった。 波の音。遠くに響く鴻鵠の声。 二人分の足跡は、じきに波に攫われ消えるんだろう。 共に結んだ約束だけは、 ずっと消えないように掴んでいようと思った。 いずれ来る最期の日まで。 #ReFantasma (-384) 2023/10/01(Sun) 11:46:28 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ貴方が見せたいものがあるのならそれだけを見続けているのも良かっただろうか。 だけれどだいすきだと思うからこそ、全部知っていたいとも思ってしまう。 何かあったときも足元を揺らがせることなく、同じ言葉を紡げるように。 弱弱しく名を呼ぶ声に戸惑っているなと感じながら。 それでも嫌がられているわけではないから、抱きしめたままだ。 「……うれし」 貴方を甘やかしたいし、こうすることで自分だって甘えている。 柔らかな髪を幾度も撫でてはここに在る愛情を伝えるように。 「他はぁ……ええっとさ、街出ようと思ってて。 オレ、ニーノって子の代わりしてただけなんだけど、死んだことになったから。 死人歩いてちゃだめでしょ、だからそう……出るんだけど……」 「……それまでの家がないです。 野宿でもしようと思ったんだけど」 お金はたくさんあるとはいえ有限だ。 節約するべきところは節約しようかと考えていたが。 抱きしめていた腕を少し緩めて、そぅと貴方の瞳を見つめた。 「街出る準備できるまで……ろーにいの家に泊まっちゃダメ?」 (=14) 2023/10/01(Sun) 11:49:35 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>121 眼前を血しぶきが舞う。鈍くえぐれた傷口は鮮やかな肉を垣間見せ、直に赤を滲ませた。 段々と温む拳と襟首がその凄惨さと、負ったダメージを物語っていた。 休みの一つも挟まない連打は徐々に勢いは鈍っていく、故に仕切り直しの蹴りを放ったのだ。 持っていけなかったのなら足は弾むように引き戻されて地面を叩く。 その勢いのままに体は沈み込み、肩より下まで降りた。 幸いであったか不幸であったか、予測による行動が拳の当たる先を決めた。 「ぐ、」 ジャブは傷ついた右目の端を掠めた――正確には掠めただけで十分だった。 瞼の横手を叩いた拳は元よりあった傷を広げ、こめかみまで薄い肉を切開した。 潰れて瞼の中に溜まっていた、眼球だったのだろうものがどろりと頬を落ちる。 沈んだ体はナイフを握った左手を回すように後方まで引き絞らせる。 胴を狙うか、脚を狙うか。選んだのはそれ以外だった。 顎下を見上げられるくらいまで沈み込んだ姿勢から焦点を合わせる。 アッパーカットの要領で、逆手に構えたナイフを腹部から頭部まで駆け上がるように振り上げた。 深く当たれば骨に当たって止まる。浅ければ傷は広がる。 逆手に持ったのは射程を腕の長さより外へと伸ばすためだ。 今の状況において表情を緩めていられるほど余裕があるわけではない、というのは、 筋肉を緊張させておく必要があるからだ。そうでなきゃ、笑っていた。 これが楽しくない筈がない。 #BlackAndWhiteMovie (122) 2023/10/01(Sun) 12:10:40 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「……甘えてよ。 恩返しさせて、ねえさんがいたから生きてこられた」 大袈裟に言っているわけでは決してない。 貴方が居ないと本当に、生きてはこられなかっただろう。 早々に命を落としていただろうし、今も自分を見失っていた筈だ。 そんな大切な家族に少しでも返せるものがあるのなら。 躊躇うことなく差し出したいと強く願う。 「…………へへ。 ちゃんと伝えられてよかった。 オレもありがとう、言葉、受け取ってくれて」 「ずっと会えないわけじゃないよ。 たまには帰って来ようって思ってるし…… どこに行くか決めたら、ちゃんと伝えるし!」 まだ決まっていないけれど決まったその時には。 真っ先に貴方に伝えて、手紙を送り合ったりしてもいい。 会いに行ける距離なら遊びに来てもらったり、とか。 今はまだ見えていない先のことを思いながらも。 [1/2] (-385) 2023/10/01(Sun) 12:17:06 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「此処を出る前にはまた挨拶しに行く。 あ、だから今日住んでるところ教えてね」 何を偽ることもなくよかった。 これからも、貴方の前ではずっと本当のままでいられることを安堵して。 圧し掛かっていた重荷が軽くなった心と共に笑い、そっと手を引き立ち上がるだろうか。 「……夜遅くに来てくれてありがとう。 ええっと、送るよ、……ボディガード?うん。 もうちょっと話したいし」 こんな夜道を一人で帰らせるわけにはいかないからと言葉を添える。 にいさんにだって、色々と任されたしなと頭の隅。 近くでずっと支えるのは難しそうだが、自分なりにできることをこれからも貴方へと贈っていきたい。 そんな考えは今は一先ず胸の内に秘め、貴方が了承してくれるのなら仲良く手を繋いだままに歩き始めることだろうか。 輝く月と瞬く星だけが、寄り添う姉弟の暖かな絆を見守っていた。 ──例え、立つ場所がこれから先も違うところにあったとして。 それでも男は家族を、あなたを、愛している。 不変などないのが世の常だとして、 そんなもの関係ないって笑い飛ばせるぐらい。 この感情だけはいつか最期を迎えるそのときまで変わったりしない。 いつの日か貴方という花が教えてくれた愛の強さを胸に抱き。 男はこの先も塞ぐことのない瞳に世界を映し──生きていく。 [2/2] (-386) 2023/10/01(Sun) 12:18:51 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>122 「ッダ、…っあぁ゙あ!!」 振り上げられたナイフに対し、踏み込んだのは本能的な反射行動だった。 刃ではなく、それを握る腕を止める。 それもガードと呼べるものではなく、飛び込み、胸板で受けるだけ。 どんという衝撃が肺を貫き呼吸を止めるが、 構わず、かじりつくようにナイフごと腕を抱き込みひっつかむ。 「…… っラ、 ぁ゙!!」命を振り絞るような格闘戦では、ぱたた、と水音が響くものだ。 それは汗か涎か、血か、あるいは髄に近いものか。 生命の雫が撒き散らされていくように 二人の足元になにかが飛沫く。 笑顔はない。 だが高揚し、滾り、燃えていた。 その勢いのままに大きく体を捻り、 砲弾のようなストレートが放たれる。 技巧も戦術も殴り合いの中に消えていき、 あるのはただ肉と骨を叩きつけるような気迫だけ。 #BlackAndWhiteMovie (123) 2023/10/01(Sun) 12:19:44 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ"同じじゃない"。 男はそう口にする君の顔を見て、翠を瞬かせる。 「……そうか、違うのか」 腕が自由なら、その手は口元を覆い 考えるような仕草をとっていたはずだ。 「………あまり、期待はしないで欲しい、が。 ……メール一通くらいは送る、かもしれない」 約束は出来ない。約束にはしたくない。 その日がいつ来るかなんて、男にも分からないから。 くるりと身を反転させ、君に背を向ける。 そのまま扉まで歩いて、 来た時とは違い器用に扉を開いてから。 「………代わりに、その約束は叶えてもいい。 そのために精々ルチアーノを口説いてみてくれ」 「それじゃあ、ニコ── また ね」ひらひらと、君に向け振る手はない。 それでも確かに未来の約束を結んで、君にまたを告げよう。 好きも嫌いも、愛も恋も分からない。 だけど君の気持ちは嬉しいと感じられたから、暫くは君と、 その関係を楽しんでいくのも悪くはないだろう。 (-387) 2023/10/01(Sun) 12:33:54 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>123 ぎ、と歯ぎしりをする音が鳴る。肩を砕かれている左腕を固められれば、 どうしたって押し引きに依る力の均衡は負傷した部位に集められる。 呼吸が乱されれば攻防のリズムも自然と崩れる。 掴まれた腕を引いて振りほどこうとして、軸足に体重を掛けた、 その瞬間に破裂音じみたものが響いた。 体重の乗った一撃は頬を殴りつけ、ぐらりと首から上を揺らした。 まともに食らえば隙を生じる。ふ、と体から力が一瞬抜けた。 それしきで降参なんてつもりはないが、一手分の空隙を晒すには十分だった。 密着した体の間で、からんとナイフが地面に落ちる。 一瞬吹き飛んだ頭の中身を引き戻して攻め手を考えるにしたって、 どうしたところで相手の次撃が先になる。 #BlackAndWhiteMovie (124) 2023/10/01(Sun) 12:43:24 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ見開かれた双眸から落ちていく一粒を、 空に浮かぶ星々よりも綺麗だと感じたのは 君が君だからこそなんだろう。 「…あぁ──…一緒に居よう」 そうっと、大事な宝物に手を伸ばすみたいに 右手を伸ばして、君を軽く引き寄せようとする。 もしも君が拒まずにいるならきっと 間の子猫はにゃあと鳴いて、まぁるい瞳をこちらに向ける。 だから男は、少しだけ許して欲しいなと子猫に微笑んで、 夜空の下、二人と一匹で熱を分け合うのだ。 「哀しい時は泣いていい。苦しい時は吐き出していい。 俺に抱えられるものはきっとそう多くもないけど」 「俺の前では大丈夫じゃなくていいんだよ」 ほら、シンデレラも時間になれば魔法は解けるだろう? おまじないはあくまでおまじないで、 『永遠』に続く万能さを持つものじゃあない。 しゃんとして、着飾っているのも悪くはないけど、 ひとりの人間である俺達は、本当であっていいんだ。 (-388) 2023/10/01(Sun) 13:31:45 |
【置】 きみのとなり リヴィオ好きも嫌いも、愛も恋も多くのものを知らないまま。 それでも、誰かを、何かを大切に出来る心はあった。 それは、こんな自分を慕ってくれた君やエル、 こんな自分に何となくでも贈り物をくれたダニエラ君、 こんな自分でも友人になってくれたルチアーノや、 同じ立場で、落ちる前に手を掴んでくれたニコのおかげだ。 破滅願望はあるけど、 それでも、生きているうちくらいは前を向いていよう。 俺はもう、ただのリヴィオなのだから。 (L3) 2023/10/01(Sun) 13:33:26 公開: 2023/10/01(Sun) 13:35:00 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → マスター エリカ向けられた瞳を感じながら 皿の中身がなくなるまでは、ただ、静かに。 君の、貴方の変わらない態度が確かな救いだった。 友人でもない、時折寄る店のマスターである貴方に、 俺は、確かに救われていたんだ。 そんな話、この先誰かに話すこともないだろうが。 抱いた思いは偽物じゃなく、ずっと確かなものだった。 やがて、皿の中身がなくなる頃。 手にしていたスプーンを置いて、両の手を合わせる。 「ご馳走様でした」 その一言に含まれるものが僅かな感謝ではなく、 今までの全てを含むことを知っているのは、男だけ。 だけどそれでいい。これは男の、勝手な思いなのだから。 「……それじゃあエリカさん、落ち着いたら、また」 そう言って立ち上がり、 きっちり値段分のお金を君に渡して扉に手をかける。 そうしてそのままその場を後にする──のではなく、 「…あ」と何かを思い出したように振り返り。 「今度は、具沢山のシチューを食べに来るよ」 (-389) 2023/10/01(Sun) 14:44:54 |
リヴィオは、貴方の作る料理を大層、気に入っている。 (a41) 2023/10/01(Sun) 14:45:57 |
リヴィオは、柔らかに微笑んでから店を後にする。それは──5日目の午後のことだった。 (a42) 2023/10/01(Sun) 14:47:07 |
【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ熱い身体だ。 一人、いたな。そういうのが。 彼は治療を受けただろうか、と脳裏を過った。 受けたのなら、近くまた会うこともあるかもしれない。 歪む表情。 無敵とは程遠いその様子。 けれどそれを崩し切らないあたりが、この男の趣味の悪いところを擽った。 湿って熱い吐息が好かった。形のいい唇が引き攣るのが好かった。 ああ。 いいな。 片手は貴方の顎に。もう片手は転がしておいた器具に伸びる。 合わせた額はまるで慈しむような優しさでいて、愛情の発露のように鼻先が擦り寄せられる。 金色が海の底を微かに映している。 そして、そのまま。 貴方の震えを食らうように男の唇が押し付けられた。 丁寧さも何もない。欲情の荒っぽさもない。秘密を引きずり出そうとする求めもない。ただそれは、この男が、昼飯を食う時にするような仕草。 食に拘りのない獣が、食べられるものを見つけたから口をつけた。それだけの仕草だった。 ▽ (-390) 2023/10/01(Sun) 14:54:09 |
【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ「可哀想に。」 哀れむ声には愉快さが滲む。 もう一度軽く口づけて至近に寄せた。それからようやく身を離し、場違いな恭しさでその手を取った。 口を開く。閉じる。弧を描いた。もう一度、開く。 「ダニエラが」「心配ですか」 「それなら」 「貴方が頑張れば」 「ましになるかもしれませんね。」 嘘だ。 彼女の責めは、もう終わっている。 (-391) 2023/10/01(Sun) 14:54:24 |
エリカは、柔らかに笑んで、店を後にする彼を見送った。──ある日の午後の出来事。 (a43) 2023/10/01(Sun) 14:58:28 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ「……えっ、ぅ……う…………」 貴方の言葉が魔法を解いてしまったから。 涙と嗚咽は堰を切ったように。 溢れてやまない、いろんな感情が。 とうさま、本当は抱きしめて欲しかった。 かあさま、本当はオレを見て欲しかった。 叶うことなら最期まで、ずっと一緒にいたかった。 浮かび上がる多くの言葉は声にはならず。 ただ大きな背に手を回し、肩を震わせるだけ。 不安だよ、不安でしかたないんだ。 これからなにをしたらいいのかな。 探しても本当に、オレはオレの道を見つけられるかな。 誰かに言いたくて、でも誰に言えばいいかもわからなかった。 心配をかけたくなくて、あなたたちを大切に想えば想うほど。 寝台上の笑顔に平気だと笑った、あの癖がずっと抜けなくて。 ひとりになりたくない。 だれかといっしょにいたい。 でも何を返せるかな、オレなんにもないんだ。 後悔しない? ねえ、せんぱい。 やっぱり自信なんて全然持てないんだ、自分に。 だけどもうどうにも、ぬくもりから離れられそうにはなかった。 [1/2] (-392) 2023/10/01(Sun) 15:15:58 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ────ずび。 「………………」 涙が落ち着いた頃、鼻を啜って。 あまりに泣きじゃくりすぎて頭がぼんやりしている。 落ちてくる涙になんだこれとなっていた子猫もまた瞼を落としていて。 その姿をぼんやりと眺めた後、ゆるゆると顔を上げた。 「……いっぱい……泣いちゃって、ごめんなさい……」 とりあえず謝罪と、あと。 「あの……誘ってもらえたの、ほんと、うれしくて。 だから、えっと……一緒、ぜひさせてください」 改めてお願いしてから、あと。 「いろいろ決めることあるよね。 でもとりあえず、せんぱいの身体落ち着いてからかな。 ……あ、しばらくって言ってたけれど、どれくらい?」 先程溢れた感情に引っ張られてできなかった確認をいくつか。 泣いて縋って、いたくなかったかな。 今更のように思えばそっと貴方の腕を撫でたりもしていた。 [2/2] (-393) 2023/10/01(Sun) 15:17:10 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → きみのとなり リヴィオ「ん、分かった。 アイツのことだ、すぐ乗るだろ。」 不測の事態になったらそれはそれ 男も飲み込むんだろう。 そこまでは、貴方に強制するつもりは無いと頷いた。 「ああ、またな、リヴィ。」 手を振れない貴方と反対に 此方は無事な方の手を振るだろう。 この関係にまだ名前は付けられないけれど いつかきっと、素敵な未来につながると信じて 男は前を向いて歩くのを決めるのだった。 (-394) 2023/10/01(Sun) 15:36:21 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ「貴方が悪いんですよ。」 ────なんて無責任な言葉! 厚顔無恥とはこのことだろう。男はあくまで正義を歌う。悪はそちらと貴方に押し付ける。 ぱん。ぱん、と小気味いい音が繰り返し立った。その間にも視線は貴方の下肢を這った。 品定めの視線。吊るされた肉を解体する肉屋の視線。作業ではなく、あくまで真剣に効率を求める目だった。 大腿骨は太い。肉も多いから難しい。 同様にふくらはぎも難しい。叩くなら脛か、足首か。ぱん。音が空気を裂く。 的は大きい方がいい。 穴から蛇を引きずり出すようにして、男は貴方の足を伸ばさせた。 抵抗するなら叩く。 叩く。 敬意も尊重もない。貴方は気遣いに値しない。男にはもうひとつ予定があり、貴方と過ごす時間は着々と終わりに近づいている。 腿の上に腰を下ろして固定した。 貴方の言葉も制止も聞く気はなかった。 一番手慣れた無骨な武器を男は振り下ろした。 ▽ (-395) 2023/10/01(Sun) 15:44:59 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロこんなもの、尋問どころか拷問ですらない。 繰り返される真っ直ぐな暴力。 男はそれを仕事だと思い込んでいる。 貴方が悲鳴をあげる度に口角を上げた。 貴方が床を叩いて逃れようとする度に喉を震わせた。 それでもこれは楽しみのためになされているものではない。 あくまで。 あくまで、真摯に。 これは次の仕事のための布石。 次貴方と話す時の為の準備。 そうして金属面への抵抗が変わった頃。 貴方の様子を気にすることもない。男は最寄りでバスを降りるような身軽さで、貴方の上から退いた。 (-397) 2023/10/01(Sun) 15:46:30 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 法の下に イレネオ合わせた額も、擦り寄せられる鼻先も。 己を映す金も……顔を歪める要因ではあれど、 動揺を誘うような何かはなかった。 ただ、そこから先が 良くなかった 。「……………ん、ッ」 押し付けられた唇の感触に男は目を見開き、 瞳をより一層強く揺らす。 それはきっと、長い時間ではないのだろう。 だとして、この男にとってはそうではなくて、 落ちた右手をまた持ち上げ、 君の体にその手を当て 弱々しく 押し返そうとする。「……ふ、……………」 動揺で思考がぐちゃぐちゃだ。 自分がどのような表情をしているかさえ分からない。 ただ、目の前の君だけを感じることしか出来なくて、 自らが零す声にどうしようもなく弱さを感じて、 そんな自分がとても、とても、 嫌で堪らなかった。 ▽ (-398) 2023/10/01(Sun) 15:55:39 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 法の下に イレネオやがて一度目が終わる頃、何かを言おうと開いた口は 二度目によって音もなくまた、閉じられてしまう。 体が失った酸素を求めて、激しく上下する。 自分は知らぬうちに息を止めていたのか。 そんなことをぼんやりとした思考の中、考えて。 取られた手を、僅かに虚ろな瞳が追いかける。 あぁ、心配だよ。だって俺が連れてきたんだ。 友人に任されたこともあるけど、俺自身が彼女を心配で。 ここはいい場所とは言えないが、それでも。 彼女には少し、少しでも──休んで、ほしくて。 ぐず、と……胸の奥で何かが渦巻いた。 愉快そうな声も、弧を描くその唇も。何もかもが 信用に値せず、提案に乗っていいことがあるとも思えない。 それでも、欠片でもそれが"本当"であるなら、 「………………わかっ、た」 首を、縦に振る以外に出来ることはなかった。 せめて彼女の左手の小指にだけは触れないでくれと、 愚かな男は愉しげに笑う君に──願いを乞うた。 宝物のように大切に撫でるあの仕草が深く、印象に残っていて。 あんな風に何かを大切に思う気持ちは──彼女から、貰ったものだったから。 (-399) 2023/10/01(Sun) 15:57:58 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ路地裏を知り尽くしている程度では貴方に分があった。 それでも“このあたり”に限ればおそらく互角だった。 だから男は油断した。 だから男は隙を見せた。 自負があったから、思考が鈍った。 鼠程度捕まえられると思っていた。 窮鼠は猫を噛むのだ。 投げつけられた砂はさしてダメージにならなかった。 それでも物体が迫れば目を守ろうとするのは反射の動作だ。 立ち止まった隙に貴方は角を曲がったかもしれない。最後の力を振り絞って走ったかもしれない。それだけの時間はきっとあった。 入り組んだ路地は分かれ道が多く、そのひとつひとつを確認するだけで時間を取る。 貴方は逃げた。 男は追った。 貴方は逃げるためだけに走った。 男は、貴方が自分から逃げているのだと思った。 街に出るという選択肢を失念している。 だから。 男は貴方を見失ったのだろう。 建物の向こうから車の出る音だけが聞こえて、 ようやく気付いたころには遅かったのだ。 (-400) 2023/10/01(Sun) 16:11:56 |
【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ半端な抵抗はこれを煽るだけだ。 弱りを強調するだけの手はむしろこちらの勝利を知らせた。 取った手の熱さが愉快だった。冷たいよりよっぽどよかった。 命を甚振ることを、この男は楽しんでいる。 からん。音がして器具を床から攫った。 高尚な道具なんてない。手にした器具は飾り気のないペンチ。 貴方が耐えなければ、彼女の整えられた爪が、こんなもので台無しにされることになる。 もう終わったことだ。 従順な様を褒めてやりたくて、けれど空いている手がない。 仕方なくもう一度額を合わせてから、ゆっくりまばたきをした。 本当なんてここにはない。 提供された聴取内容も。 貴方が吐かされる“真実”も。 傍から見れば慈愛か、情欲に見えそうな男の態度も。 本当なんてひとつもない。ここにあるのは偽物ばかり ────痛みを除いて。 ▽ (-401) 2023/10/01(Sun) 17:33:43 |
【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオはじめは右の小指から。 そこは彼女の宝物にもっとも遠い。 指先に単純なつくりの金属が宛がわれる。 塗り上げられた黒の表面がぐ、とひしゃげさせられる。 そして。 ば づん 。一気に、引き剥ぐ。 (-402) 2023/10/01(Sun) 17:34:49 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-374 ずっと傍にいた女は、静かなあなたを見ていたけれど。 ふと、端末の時間を見てああ、と声を上げた。 「……エーコ、肩の鎮痛薬そろそろ切れるから。 新しい軟膏使うな?脱ぐの大変だろうし 勝手に手ぇ突っ込むから、痛かったら――」 固まったように。1秒か、もう少し。空白のあと、口を開く。 「――我慢せずに、言ってくれ」 それが、女にとって今一番口から出て欲しかった言葉、なのかもしれない。襟の辺りからそうっと、震える手を入れる。なんだか、悪い事を言ってしまった子供のように、あなたの表情を窺った。 それで肩になるべく負担のないように留めていたガーゼを少しだけ捲って、一度抜いて。それから軟膏を指にとって、また入れて……。無言のままに、治療を施した。 それから、目的地に到着する前の頃までは、 あなたの手を握ったまま、端末からの報告を読んでいた。 中身はまるで頭に入って来なかったが。 そうしてふと、口火を切る。 「……エリー。ひとつ「お願い」があるんだけどさ」 切り出した一言は、長年の付き合いでも珍しい言葉だった。 (-403) 2023/10/01(Sun) 18:00:26 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-374 >>-403 「もう何も、一切、全部、 我慢しないでほしい ん、だけど……」言葉尻を濁すのもまた、珍しいもので。 「いやその……伝わり辛いよな、えーっと……なんて言ったらいいんだろ……エリーさ、脱獄の時とかそうだったけどちゃんと……そう、わがままっていうか、自分の言いたい事?やだとか、一緒にいて、ってのを言ってくれたじゃんか。俺、あれすっげー嬉しくて……だから、えーと……他のさ。例えば痛いとか、辛いとか、やだとか怖いとかお仕事休みたいとか、そういう細かいのもデッカイのもぜーんぶ、……言ってくれたらなー、とか、思ってたり、するん、だ……よな」 とつとつと語る。ちらと顔を盗み見るような仕草。 やっぱり、悪い事をした子供のように。 「……いや、突然言われても難しいし、『今?』って感じだよな、ごめん。……でもほら、真面目な話って中々しないだろ?それに……その、今の内に少しでも言いたい事を言う練習が出来たら、って思ってたんだけど……」 窓の外を見やる。夕陽が創る海上の赤い世界が揺れていた。 「……まあ、なんだ。俺の為だと思ってさ。言いたい事あったら、言ってよ。なんでも……それこそ、夜ごはん何がいいとか……あー……そう、結婚式いつがいいとか、あればさ」 場を和ませるため、とばかりにそんな事を言って。 言っている内に、車は緩やかに停車する。 「……練習、してくか?その……俺で。 何か言いたい事とか……我慢してる事とか……」 今言った、お願いの内容を。これからする、『お話』を前に。 口を滑らかにする作業は必要だろうか? あなたからの返事があればそのようにしたあとで。 ないのなら、少し待ってから。 わかった、と口にして、車を降りる事だろう。 (-404) 2023/10/01(Sun) 18:03:42 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>124 振り抜いた腕が、拳が、びきびきと軋む。 指がひしゃげてしまったかのような衝撃。 ─構わず、再び握り込む。 「…、っ、お休みしてンじゃ、ねえぞおっ!!」 ナイフの音、体勢、隙。 それらを自覚しながら、けれどどうでもよかった。 2度。3度。その一撃一撃で殺すつもりで、 拳を叩き込みながら前に出る。 突き進む。 もつれ合うほどに飛び込んで、めちゃくちゃに殴りつける。 どちらのものかもわからない液体が飛んで、びたびたと落ちていく。 それらすべてを振り払うように足を振り上げて、 そのまま蹴倒す様な前蹴り。 姿勢を崩せば、あとは絞め殺してやるだけだと、 前へ。 #BlackAndWhiteMovie (125) 2023/10/01(Sun) 18:22:36 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ君に手を伸ばしてしまったのは、 『自分』を見てしまったからなのだろう。 多くの感情を隠し、縋れなかった先を知っている。 だから、そうなって欲しくはなくて。 君には真っ当に、真っ直ぐに、生きて欲しいと願って。 身勝手な願いのまま、 暫く なんて半端に手を取って。でも、後悔なんて、微塵も湧いてこなくて。 引き寄せた背を撫でながら、 逸らすことなくありのままの君を翠眼に映し出す。 誰に何を言えばいいのか分からない。 迷惑をかけたくない。 平気だと笑っていれば、きっと『大丈夫』だ。 本当の願いを飲み込んで、 本当の不安を隠し続けて、 それでも『大丈夫』だと──真実を箱の中に閉じ込めた。 そんな人間を、俺はよく、知っている。 そうしてそれが"普通"ではないことも、理解している。 無敵だから『大丈夫』なんて、そんなこと、在りはしないのだ。 だけど、『何にもなかった俺』は、そうするしか選べなかった。 ▽ (-405) 2023/10/01(Sun) 18:32:03 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ涙が落ち着いて、君が顔を上げた頃。 男は君に気にしなくていいというように微笑んでいた。 謝罪にだって、首を横に振る。 涙というものはそうなのだと、知っているから。 泣かないことが強さじゃない。 だから、涙を流せるのなら我慢せず泣いたっていい。 「…勿論、一緒に行こう」 「決めることは……うん、少し友人に確認してみるよ。 落ち着いてからだと君の暮らす場所に困るだろうし、 それに、俺も今の家から早く移動がしたくてね」 ひとつひとつ、君の確認へ答えを返していく。 最後については少し、悩むように撫でられる腕を眺めて。 「それで期間は………そうだな、」 「…君が、一人で歩いていけるようになるまでかな。 暫くとは言ったけど、あんまり詳しくは考えてないんだ」 1年か、5年か、あるいは10年か。 どれほどでそうなれるのかが分からない男は、 のんびりとした口調で、そんな答えを返すのだった。 (-406) 2023/10/01(Sun) 18:33:03 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>125 数度に渡り拳が頭部を殴りつける。頭を上げはしない。 上げられないのは顎を打たれるのを厭んで、頭蓋の丸みで受けているからだ。 それだって苦し紛れのやり過ごしであって、ガードしたほうが良いのは確かだ。 顎を引き、狭い視界で相手の拳の動きを潜り込むように見遣る。 それでもまだ尚眼光は諦念を宿しては居なかった。 いつも日常を過ごし、他人と過ごしている時よりもよほど活き活きと殺意に燃えていた。 「っ、づきは」 攻め手を変えた動きを、見ていた。 ふらつく頭をどうにか押し戻し、屈めた姿勢は蹴り"に"立ち向かった。 傷ついた左手が脛を掌底で受け、浮き上がらせた膝の下に肩を半ば差し込む。 重心を上にずらさせながらに踏み込んだ体は右肘を前に出して滑空し、 全体重を肩から肘の上腕筋に乗せて鳩尾めがけて倒れ込むような、 頭上まで持ち上げない形のパワーボムだ。 「地獄か、――」 日の頂点の沈みつつある、海の音が近かった。 踏みとどまることが叶わなければ互いの体は、海の中へと落ちる。 #BlackAndWhiteMovie (126) 2023/10/01(Sun) 18:47:05 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>126 がつがつと頭蓋骨を殴りつける拳が、恐らくは指としての機能を失いつつある。 だとしてもそれは打突部位として、最後までそこに在る。 だったら、十分だ。 いつのまにか取り落としてしまった車のキーは、もう見当たらない。 苦し紛れのように腕時計を外して、それを握り込み、 僅かに重みを増した拳を何度も何度も叩きつける。 油断は、しない。慢心も、しない。 このまま殺しきるつもりで打ち、殴り、叩き、蹴る。 呼吸することすら忘れ繰り返す打擲の末、 「っ、お」 先ほどナイフを握る掌を受けた時の、逆回しか。 蹴りが威力を発揮する前に受け止められ、 ぐわんと体が持ち上がる。不味い、と体を引く―― より 、も、そんなことよりも。 「…っがッ!!!」 一撃入れることばかりが、脳を焼く。 持ち上げられた肩口に重心を預けて、倒れるに任せて。咄嗟に跳ね上げた軸足を折りたたみ、 ――顔面に、膝を叩き込む。 踏みとどまるつもりは、なかった。もろともに海へと叩き込むその狭間に、がづん、と。 #BlackAndWhiteMovie (127) 2023/10/01(Sun) 18:56:14 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「ッは、どの口が言って、やが、る。」 呼吸をする度に、胸が痛む。 けれどその口も、貴方の行動によって 苦痛の悲鳴で彩られるのだ。 足首か、脛か。 兎も角、金属の面が骨を殴打する感覚が伝わる。 ボキ、ゴキン、バキ、グチャ。 嫌な音が響いて、激痛で頭が真っ白になって。 男が離れた時にはもう 足の感覚なんて残っていなかった。 残るのは、足だったものだけだ。 「あ、ぐ、ぅう…はぁ、っ…」 骨が砕けて、筋が潰れて。 皮膚が裂ければ、熱が零れていくのも感じる。 先程のように抵抗する気力も無ければ 激痛のショックと、抵抗する際に殴られた為に 意識すらも朦朧としているだろう。 尋問を続けることが出来るのかも、怪しいだろうか。 (-407) 2023/10/01(Sun) 18:59:06 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「え。街出んの? 近場? てか今そんな事になってんの? 難儀だな……。 遠かったらやだな……会いに行けなくなる」 街を離れる事については、素直に寂しそうな顔をした。 きっとパン屋で会える事も今よりずっと少なくなるかもしれない。 死人が歩いていちゃあいけない理屈は分かっているけれど。 腕が緩まれば距離は少しだけ離れる。 何を言うつもりなのだろうかと見上げればきっと目が合って。 「………………」 「なんだ。オレが断ると思ってんの?」 にま、と笑った。 そういう事ならお安い御用だ。むしろ嬉しくもある。 いつか話していたお泊り会が、 ちょっと長めに開催されるようなもの。 ロメオはそのまま身体を起こして、今度は貴方に手を伸ばす。 叶うならそのまま、むぎゅっと抱きしめて。 「いいよ。泊まりなよ、オレの家は自由に使いな。 鍵も渡しとくかな……あ、落とすなよ。色んな意味で危ない」 「あと夜帰り遅かったりとか……他の人が来ても良いタイプ? 多分たまに来たりすると思うから……」 そうやって撫でくりまわしながら、注意事項の確認。 (=15) 2023/10/01(Sun) 19:04:28 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>127 血の絡んだ髪が引きちぎられて頭皮が飛び、切れた瞼の下からは白い骨が見える。 鼻骨は折れて元の面影を残す面は少しずつ削られて尚、スカイブルーが貴方を見ていた。 しっかり組み付き切った膝は肩でホールドしたまま。 脚が地面を蹴る。二人分の重さが急に重力を失ったようにふっと軽くなって、 きらきらと海面の光る水の上へと投げ出された。 それでも尚視界に迫る膝を見て咄嗟に出来たことと言ったら。 勢いをつけた殴打は手段としては取れない。 基点となっている肘をぐるりと回して、指が伸べられたのは、 包帯で塞がれた、傷ついた眼窩の内側だった。 どっちが有効打であったのかが判明するよりも早くに、 スローモーションで動く秋の海の冷たさが迫ってきていた。 #BlackAndWhiteMovie → (128) 2023/10/01(Sun) 19:11:27 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>127 ――続きは。 「海の底で、やるか」 これで決着がついたとは思わない。相打ちだとも思わない。 だったらこれから先の予定なんてのも決まっている。 それを未だ楽しみだと思えることにか、まだ互いを付き合わせていけることにか。 着水の瞬間、ようやく頬を緩めた。 果ては地獄の底でさえあっても。 #BlackAndWhiteMovie (129) 2023/10/01(Sun) 19:11:38 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 幕の中で イレネオ煽るつもりなど、この男には微塵もなかった。 思考の乱れた頭では考えようもなかった。 ただ逃げたいと思う心が、そこにあっただけだ。 冷たい金属の音が響く。 何をされるかなんてもうとっくに、理解しているのだ。 こんなのはもう、取調という枠から外れていることだって。 最初から、そうではなかったことだって。 理解していて尚、逃れることは出来なかった。 君に、正しさを教えることなんて叶わなかった。 虚ろな瞳は天井に向いて、 合わさる額と金の瞳をぼんやりと眺めてから 離れていく君の影を見送った。 それでも、最後の抵抗だと言わんばかりに 君が居る方から視線を逸らし、その表情を隠そうとする。 引き結んだ口は不器用な笑みを懲りずに浮かべて、 宛てがわれた金属の感触を、指先に感じた。 痛みには、慣れている──けれど。 ▽ (-408) 2023/10/01(Sun) 19:13:27 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 幕の中で イレネオ「 ぎ 、ッ……あ゛ あ゛ あ゛ッ゛ ッ゛〜〜〜!!」絶叫。ここまで出来る限り笑顔に隠して、 それで、苦痛さえも閉じ込めていたけれど。 どうしたって、抗えないものはある。 体が跳ねる、左手の指先が床を掻く。 足は ダンッ と床を叩いて、右手の指先が君の手に縋るようにきゅうっと力が入る。 目を見開いて、流れる汗は床へと落ちて。 そうして、めいっぱい開いた翠から一粒の雫も落ちていく。 「ぅ、あ゛あ゛…ヒュッ、は………っふ、……あっ、あ゛」 泣けるような男ではなかった。 泣き方なんてとっくに忘れてしまった。 それでも、それは生理的なもので、止めようがない。 落ち着けようと大きく吸った息は、 カヒュッと男の喉から詰まるような音を鳴らした。 既に異常とも言えるほどに、堪えてきた痛みもあった。 だから、それら全てが集約し、爆ぜて。 そこから先はもう止められない。 それでも、君へと頷いた以上嘘には出来ない。 男は、真面目だった。それでいて、愚かだった。 (-409) 2023/10/01(Sun) 19:15:21 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-403 >>-404 ことり、と。 窺うような表情に、女は首を傾ける。 「…んー。」 「……んー…。」 言葉を受けて、少しして。 えへ…と力なく笑った。 作り笑顔にしては下手くそすぎるそれは、きっと いつもの と少し違う。「ミネはあ。」 「ふふ。あたしを甘やかすのがあ、じょおず」 額をこつんと、あなたに寄せて。 「…あんねえ。…あたし」 「こわいんだあ。」 甘やかな声。 「お母さんみたいに」 「アレッサンドロさん、いなくなるんだあって」 「…でも」 「ずっと、勝手な上司さんだったしい」 「今更だなあって思うのも、あってねえ」 重ねた手が僅かに、ぴくんと震えた。 (-410) 2023/10/01(Sun) 19:17:20 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-403 >>-404 >>-410 「だから」 「今1番こわいのは、そのことじゃなくて、ねえ」 ゆっくり、手を返して。握り返す。 「…聞きたいこと、あるんだけどお」 「間に合わなかったり、いやな返事きたら、いやだなあって」 「……そんだけえ。」 ゆっくりと、額を離して。 またへにゃりと。そして。 「だからあ」 「もしそおなったら、…ミーネ」 もう一度。甘えた声。 「いっぱい、いっぱい」 「慰めてねえ。」 困ったような笑顔と一緒に。 …やだなあ。逃げないのって。本当に、やだ。 (-411) 2023/10/01(Sun) 19:18:14 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>128 「てめえ」 口を大きく開いて、 赤い飛沫が白波を横切り、 橙の燦光が瞼を過り、 視界と天空が回転する。 「なあ」 がづん、がづん、がづん、がづん。 肉と骨が打ち合う衝撃が、今も続いているのか、 それともずきずきと鈍く残る残響なのかもわからないまま。 誰も逃れられぬ運命のごとく、 重力が追いついてきて、 「──ふざ」 #BlackAndWhiteMovie → (130) 2023/10/01(Sun) 19:18:23 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡音も衝撃も、感じなかった。 気が付いた時には、全身に泡がまとわりついていた。 どちらが漏らしたものかもわからない 気泡が全身を覆って、 海面で乱反射する夕日が薄暗く差し込んで、 がぼ。 この泡は、自分の口から出たものだ。 それだけを自覚しながら、 ごぼ ごぼぼ。 ――握り締めた拳を、そ の顔面に 叩き #BlackAndWhiteMovie → (131) 2023/10/01(Sun) 19:19:32 |
【赤】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 (*0) 2023/10/01(Sun) 19:22:31 |
黒眼鏡は、ヴィンセンツィオとケリをつけた。 #BlackAndWhiteMovie (a44) 2023/10/01(Sun) 19:25:35 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-410 >>-411 額を合わせて言葉を聞けば、常とは逆に。 今度は、こちらが笑顔を張り付かせた。 あなたほどは上手くない。眉は八の字だし、口角だって 上を向いたり、下を向いたり。震えてすらいる。 本当を言えば、あなたの真似は無理だと確信している。 だって、そんな本音が現実になる予感だって消えてない。 信じてはいる、きっと間に合う、あの男がそんな、 と思ってはいるが。保証がないのは、どちらの可能性も同じ。 「……」 お喋りが静かになる。なんとか笑顔を作らないと。 『お姫様の王子様』らしく。せめて、この件が終わるまでは。 (-412) 2023/10/01(Sun) 19:28:08 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-410 >>-411 >>412 「……任せとけよ、エリー。 その為に俺がいるんだ」 そう言って、手を取って、車を出た。 その先には、――きっともう、誰もいなかったんだけれど。 後には血の跡だとか、壊れた赤い車だとかばっかりで。 きっとそこには、ここにいた男と、もう一人の誰か以外、 誰の入る余地もなかったんだから、しょうがない。 しょうがないけど、しょうがないけれど、 (-413) 2023/10/01(Sun) 19:34:39 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ貴方が嫌がる顔は想像していなかったけれど。 変わらず微笑んでくれていることにはやっぱり安堵してしまった。 だから泣いたばかりの顔は無理に隠したりしないまま。 ひとつひとつ返る答えには頷いたり、相槌を打ったり。 思っているよりも早くその日は来るのかなとか考えたり。 していたところ、最後の期間については少しだけきょとんと瞬いた。 何かの想定があるからの暫く、だったのかと思ったけれど。 そういうわけじゃなかったらしい、なんだ、なるほど。 それからもう少し瞬きを繰り返した後、唐突に。 「……あはは、それじゃあ」 声を揺らし笑えば、腕を撫でる手を止めて。 貴方の瞳をじぃと見つめて、笑って。 [1/2] (-414) 2023/10/01(Sun) 19:34:42 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ「オレが大丈夫じゃないままなら、 ずっと一緒にいてくれるんだ?」 「…………なんて」 なんて。 そんなのきっと困っちゃうだろうな、わかってる。 目を細めてからもう一度、貴方の肩へ額をとんと押し当てた。 「……じょ〜だん」「…………でも、ほんとかも」 「オレって甘えたらしいから、気を付けてね」 勿論貴方が大切な人と共に生きていきたいと、 望むような日が来るなら止めたりはしないのだけれど。 そんな言い方をされたら、そんな風に返したくなってしまった。 だってオレ今、一人で歩ける未来なんてうまく想像できないから。 みゃあ、と目を覚ました子猫が鳴く。 ちょっとずるい顔しているのバレたかな、内緒だよ。 そう伝えるみたいにちいさな額を指先で撫ぜて。 「じゃあ、今日はとりあえず帰ろっか。 落ち着いてからじゃないっていっても、ちょっとでも早く身体治して欲しいから」 「家まで送るよ、せんぱい、…… …………リヴィオさん?」 そうしてぱ、と顔を上げた頃、濡れた瞳はそのままに。 変わらず微笑みを浮かべていたことだろう、うれしげに。 (-415) 2023/10/01(Sun) 19:35:32 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-410 >>-411 >>-412 >>-413 「……ッの……」 ほんのひと時、ざわりと逆立ったライムグリーンは、 きっと父親のように思っていたからこそ、 「俺達の話くらい聞いて死ねよ、クソバカオヤジーーーーーッ!!!!」 夕陽が去るのと一緒に黒くなっていく、 海に向かってそう叫んだ。 ぜえ、はあ、と息を切らして、……そこでやめた。 空撮ドローンの音がする。間もなくここは 夕陽の代わりに、ドローンの投射光で照らされるだろう。 或いは、それが何か遺された物を照らす事も、あるのかもしれない。 (-416) 2023/10/01(Sun) 19:40:20 |
【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ「……心配? 大丈夫、ルチアが良いって言うまでここにいるよ」 入院は思ってたよりも長期間に及んだ。 元々一人暮らしをしていた関係上、関節の損傷という怪我の具合もあったが、加えて動脈をやられていたことと、精神も病んでいると診断されたことが理由として大きかったようだ。 本人は早く退院したかったが、幼馴染が最大限病院を利用しろと言うので素直に従ったらしい。 容態が安定してからは精神的な病気の方が厄介で、男はとにかく眠らないと、病院関係者も頭を悩ませていた。 幼馴染が来てくれた時だけはぐっすり眠れているのも確認されていて、薬が効かないから助かると思われていたに違いない。 また、同期の二人や先輩も時々顔を見せてくれていたから、病院で問題行動を起こす……なんてことは起こらないから、扱いやすいおとなしい患者の一人であったことは間違いない。 ただ。 たったひとつの、行動を除いては―――――――― #VerdeMare ▼ (_11) 2023/10/01(Sun) 19:47:07 |
【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ「ねぇ、ルチア。お願い」 首を噛んでほしい。 そう言い出したのは、首についていた歯型の痕がなくなってしまった日のことだ。 幼馴染には勿論そんな趣味はない。 しないと自分で首を爪で傷つけるから、1・2回はそのお願いを聞いたかもしれないが、その後は犬用の首輪がついた。 病院の方々はさぞ不審がったに違いない。 診察の際に「人間関係を整理しては」と遠回しに幼馴染と別れることを勧めた医師もいたことだろう。 時間が経てばそういう発作みたいな衝動も少なくなってきて、首輪はチョーカーとなり、いつしかネックレスなりアクセサリーを首につけていれば安心できるようになっていた。 けれど最初の時の、あのルチアの悲しそうな顔が忘れられない。 悲しくなって、ごめんねと言って頭を何度も撫でたのを、よく覚えている。 この頃には、いつだったか。 僕が二人目に好きになった人 だったラーラが亡くなっていた。薬の処方ミスがあったらしい。 不運なことだが、彼女には身よりもいなくて訴える人間も居ない。 あしながおじさんを続けていたけれど、その必要もなくなってしまった。 その知らせを聞いた時はまた精神的に危うくなったけれど、この時もまた、幼馴染が傍についててくれたから無事だった。 #VerdeMare ▼ (_12) 2023/10/01(Sun) 19:48:07 |
【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ月日は巡る。 リハビリを経て職場復帰を果たすころには、約2年の月日が経とうとしていて。 表面上はもう、以前と変わらなぬ笑みを浮かべ仕事に取り掛かることができていた。 だが、内面はどうだっただろうか……? 海風が薫る砂浜でひとり、遠くに輝くシーグリーンを見つめていた。 幼馴染は、僕を大事にしてくれる。 それはすごく、嬉しいことで、幸せなことだ。 あなたが笑ってくれるから、僕は隣で穏やかであればいい。 でも、時々すごく、寂しくなる。 ルチアは、僕を決して抱いてはくれないし、抱かせてもくれない。 愛してると告げてみても、そうだなと笑うだけ。 別に、いいのに。 僕はもう、キミだけしか見てないのに。 悲しませたくはないから、絶対に気持ちを返してほしいなんて思わないのに。 一度抱き潰された体が疼くから、沈めてほしくて。 #VerdeMare ▼ (_13) 2023/10/01(Sun) 19:50:11 |
【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノだけどそれならと、適当な人の腕をつかもうとしたら怒るから、それはせずに首輪をつけるんだ。 あなたが訪れてくれるのを待つ、忠実な犬のように。 僕は―――― もし死に方を選べるなら、 キミに殺されるのが一番いいよ。ルチア。 キミが我慢できなくなったなら。 キミが死んでしまうその前に。 僕を優しく抱いて殺してね。 指先からこぼれる愛を集めて、全部キミにあげるよ。 僕は最期まで、キミの笑った顔が、見たいから。 #VerdeMare ▼ (_14) 2023/10/01(Sun) 19:50:49 |
【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ「やぁ、はじめまして、おちびさん。 わぁ、思った通りすごく良いね、毛並みもふわふわだ」 ある日。 腕におちびさんを抱いて、嬉しそうに笑う男が一人。付き添い一人。 医師に動物を飼う事による精神治療と生活改善を更に進めてみてはどうだろうかと勧められたから、ペットを飼うことにしたのだ。 ペットはゴールデンレトリバーの子犬。 大型犬のほうが落ち着いていて気性が優しいから、おすすめ出来ると言われたのもあるが、なんとなく、この子犬に一目惚れをしたのだ。 尻尾を振って甘える仕草が、とても可愛かったから。 「キミのお陰で、部屋も随分変わったよ。 あ、こっちのお兄さんはルチア。よく家に来る人だから覚えようね」 犬を飼うと決めてから、同期の……特にアリーチェが犬用のグッズを買っては差し入れしてくれる。 今では子犬用のグッズで部屋が彩られ、生活感のなかった寂しい部屋が嘘のように変わっていった。 いつかは庭付きの部屋に引っ越して、外でいつでも遊べるようにしてあげたいとも思っている。 #VerdeMare ▼ (_15) 2023/10/01(Sun) 19:52:11 |
【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ「え、名前?」 「勿論決まってるよ。 ……というより、それしか浮かばなくて」 名前を問われ、子犬に舐められくすぐったそうにしていた顔を上げて、男は頷いた。 抱いた子犬をじっと見つめ、気に入ってくれるかなと頬を緩め。 もったいぶるような間を取って、口を開く。 日に当たればきらきら輝く金の毛並みだから、それは勿論。 「キミの名前は今日から ”レオ” だよ」想いに想いを重ねて、僕は今日を生きる。 こぼれ落ちた愛は、全部集まったかな。 忠犬さん。 どうか僕が死ぬその日まで、ずっと傍に居てね。 #VerdeMare (_16) 2023/10/01(Sun) 19:52:58 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ「近場……かなあ。 まだ決めてない、とりあえず知り合いあんまりいないところ〜って……」 貴方があんまりにも素直に寂しそうな顔をしたので。 寂しくさせるのが自分だってわかってるのに、なんだか笑ってしまった。 嬉しかったのだ、そうやって求めてもらえることが。 なのでもう一度、いや二度ぐらい、やさしく髪を撫でてから。 にま、向けられた笑みに更にこちらも笑みを深めていれば……むぎゅっと。 「ゎ」 貴方に抱きしめられると本当にいつもすっぽり収まってしまう。 あの牢の内に居たときからそうしてほしかったと、 望む心が満たされていくのを感じて、しあわせだ、と思った。 「へへ…… ろーにいならいいよって言ってくれると思ってた」 「はぁい、鍵は失くしません、大事にするし」 「帰り遅くなってもいいよ。 オレ寝てておかえり言えないかもだけど……」 「誰か来るのも大丈夫、だめなときは外に居るし。 そうじゃなかったら家の中で大人しくもできます」 注意事項にはきちんと全てに返事を返す。 だって大事なことなんだろう、そして全部大丈夫。 ぎゅっと抱きしめながらも顔だけは上げて、貴方を見上げて。 「……だから、しばらくよろしくね?ろーにい」 無職なので家事はしまーす、と。最後に付け足して笑っていた。 (=16) 2023/10/01(Sun) 19:56:33 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ最後にもう一度だけ貴方の方を向いたかもしれない。 横柄に腰を折り、手を伸ばして前髪を掴んだ。 汗の浮いたかんばせ。涙は流れなかったかもしれないが、きっと滲んでいる。 濁る千草を目に映す。金が混じればまるで春のよう。色ばかりは明るく華やいで、それが酷く不似合いだった。 それで、男は満足したらしい。 最後にふっと息を吐いて笑う。次にはぱっと手を離した。貴方の頭部が床に落ちるごとんという音がしたかもしれない。 そのままやっぱり自然な仕草で────本当に、ただの仕事を終えて休憩に出る時のような自然さで────取調室の扉を開けて。 「救急車を。」 「少し暴れたので、手当が必要かと。」 やっぱり事も無げに、淡々と報告する声が聞こえた。 (-417) 2023/10/01(Sun) 20:12:21 |
【置】 Commedia ダヴィード昔、両親に言われたことがある。 「人を叩いたり、悪口を言ってはいけないよ。 ダヴィードもそうされたら悲しくって泣いちゃうでしょう? 誰にでも優しくしてあげるようにしようね」 その通りだ、と思った。 両親は優しかった。 今も甘ったれた性格のままなのは、どちらに似ていたんだろう? 昔、叔父に言われことがある。 「お前が居なけりゃ良かったのになァ。 どうせお前の人生もこれからお先真っ暗だよ」 そんなはずない、と思った。 一年とすこしの間の叔父との生活は、積み上げられた酒瓶と気まぐれに押し付けられたアイロンの熱さしかもう思い出せない。 永遠に続くと思っていた日々は突然に終わった。 幸せな日常も苦痛の責苦も、等しく。 そして今回も、また。 未だ分からないままに、幸せに置いていく日々を開封する日が来るのかは、これまた分からない。 ただひとつだけ分かることは、 慕わしいものはすべて地獄へ堕ちると言う。 地獄とは永遠に許されることのない罪人が集められ、永遠に責苦を受けると言う。 ならばそれに倣って、己もいずれその場所に行こう。 (L4) 2023/10/01(Sun) 20:13:04 公開: 2023/10/01(Sun) 20:15:00 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-412 >>-413 >>-416 は、と短い息を吐き。 色んな物が遺っているのに、 何もなくなった その港で。「…ミネ……」 ぱちくりと、その大きな声に瞬いて。 あはは、と笑う。…気持ちだけなら、ものすごくよく分かって。 だけど、やっぱり。 我慢とはまた別の話で、同じような文句は出なかった。 そういう人だと分かっていたから。 それを呑み込めてしまうくらいに、聡かったから。 そんな時、ドローンの照らした地面に何か光るものを見た。 見覚えのあるものに、見慣れないものがついている。 …その見慣れないものすら見覚えがあるものだから、また笑えてしまって。 「はーあ。」 「本当に、あの人はあ……」 徐にそれを拾い上げた女は、海に向かって大きく放った。 そうして大きく、息を吸う。 (-418) 2023/10/01(Sun) 20:13:34 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 月桂樹の花 ニコロ「カンターミネと食事か? 俺もする約束だ一緒に行ってやろう。 なんだそんなところと仲いいのか意外だな」 彼女も中々先生業を豊かにやっていたらしい。 いつもは破天荒な姿も、なんだかんだで誰かを率いるカリスマがあるのを知っている。 「ああ。頼んだぞニコロ。 ついでに……俺が間違ったときも止められるようになってくれ」 この騒動のように、脱獄した誰かのように。 自分はきっといつか貴方を脅かしてしまうだろうから。 その時は逃げるか戦って、また、心の内を話し合ってのみ会えたらと思っている。 まあ、負ける気はしないのだが。 精々幸せを掴んで何処かに行ってしまえ、どら猫に何かの盗まれてしまう前にな。 (-420) 2023/10/01(Sun) 20:14:29 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-412 >>-413 >>-416 >>-418 「忘れ物、ですよおー!」 「…あげたものくらい、大事にしてくださいよお」 「……ほんとおに」 それは大きく放物線を描いて。 ぽちゃん、と。波の間に落ちて見えなくなった。 …まったく。最後の最後まで、結局文句を言わせるんだ。あの人は。 そういう人だった。知っていた。 それでも、本当に、大好きな人だっただけ。 何も見えなくなった昏い海を見守る。 へたり、と女はその場に座り込んだ。 いつの間にかその頬に、また涙が伝う。 暫くの間そうやって、いつかみたいに、その空と海を見つめていた。 (-419) 2023/10/01(Sun) 20:14:35 |
【置】 Commedia ダヴィード「両親に二度と会えないことよりも、 大切な人たちに二度と会えない方が怖いんです。 アハハ、俺は親不孝な息子ですよ」 (L5) 2023/10/01(Sun) 20:14:51 公開: 2023/10/01(Sun) 20:15:00 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (136) 2023/10/01(Sun) 20:26:47 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「う、っ……」 前髪が引かれて、頭が持ち上げられる。 痛みに歪んで、脂汗と涙を滲ませた表情は 貴方にとって満足のいくものだったろう。 貴方の事を認識出来ていたのかすら怪しい意識のまま 手が離されて、頭は重力に従って地面へと。 重たい、硬いものが落ちるような音と共に 男の身体は床に転がって…脳に走る痛みを感じながら 今度こそ、意識は暗闇の中へ溶け落ちていくのだった。 淡々と報告する声を聞かぬまま 貴方の声に反応した係員が慌てて動くのだろうが 普通に救急車を呼べば、目につくことは違いない。 今のこの状態で暴行が明るみに出るのも如何なものか。 そも、貴方に命じたのは過激派の集団だ。 一先ずは命に係わる事はないだろうとの判断のもと 取り調べの終わらぬ罪人は、応急手当を受けてから 牢の方へと戻されていくのだった。 その事を貴方が知るかは、今は分からぬままだっただろう―― (-421) 2023/10/01(Sun) 20:27:45 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「……そっか。そっかあ、ならいいや。 オレが会いに行ける所ならどこでも…… あ。治安いい所にしろよ」 オレが言う事じゃねえけど!なんて付け足した。 髪を撫でられている間は、やっぱり目を閉じて嬉しそうに。 せっかく兄弟が出来たってのに、すぐにお別れなんて嫌だったのだ。会いに行けるなら、顔を見に行けるなら、それならいいかな。 包むようなハグはちょっと力が強くて、 それでも苦しくはないくらい。温かい体温は変わらないまま。 「言うよ。相手がお前なら猶更」 「帰ったら猫とお前が居るのか……嬉しいな。 ホントに家族みたいだな。アハハ……」 想像をしたらどうしようもなく嬉しくなった。 貴方が旅立つ時に離れ難くなっていたらどうしようか。 『フレッド』としての新たな再出発を、 自分は笑顔で見送っていたいのだ。 「……うん。こちらこそよろしく、フレッド」 頼みまーす、と笑って返して、背に回した腕を離す。 こうして一緒に居る時間が限られているのなら、 それまではこうやって家族らしくしていよう。 本当の家族じゃないけれど、本当の家族みたいに。 ▷ (=17) 2023/10/01(Sun) 20:28:13 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「……マリトッツォ溶けるわ」 食おうぜ、と促して朝食と称した甘味を手に取る。 まずはゆっくりお互い休もう。 これから文字通りきっと、新しい一日が始まるんだから。 (=18) 2023/10/01(Sun) 20:30:29 |
【独】 L’ancora ロメオ窓から差す朝日を浴びながら、クリームを頬張って。 ひとのかたち は。これを幸せって言うんだろうな、と思った。 (-423) 2023/10/01(Sun) 20:31:10 |
【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ「 く ふ 」その声に。 男はぱっと口を抑えた。手の下の唇は笑みの形に歪んでいた。 自分の体温もかっと上がった気がした。それが男は不思議だった。 だけれど、それをただ不思議がる大人しさは生憎持ち合わせていない。 男が持っているのは、ただその情動に身を任せる愚かな素直さだ。 剥がされた小指の爪を眺める。裏を表を返して見る。白、黒、赤の三色が人工の光を弾いて光った。くく、く、と喉から笑いが漏れる。 喘ぐように息をする貴方に目を映す。 時折は咳き込み、逃避にもならないように身を震わせる貴方を見る。 瞳はそのまま。 貴方の顔に向いたまま。 男は次に手をかけた。 ▽ (-424) 2023/10/01(Sun) 20:31:38 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (138) 2023/10/01(Sun) 20:32:21 |
【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオみち。 肉とその被膜が引き剥がされていく。 みち。みち。みち。 上下に裂かれる神経が悲鳴をあげる。 みち。みち。みち。みち。 壊れた玩具かなにかのように貴方が叫ぶ。 駄々をこねる赤子のように頭を振る。 「あはっ」 縋るように握り込まれる指。 瞳ごと溶けるように零れる涙。 男は笑っていた。 「はは…… ふ ふっ 、く」笑っている。 「 く ふ、ふ ふ、 あははっ、 あははは!」 壊されていく貴方の上で。 これはずっと、笑っていた。 笑っていた。 (-425) 2023/10/01(Sun) 20:33:42 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 口に金貨を ルチアーノ「まあ、見回りとかでちょこちょこ会う程度の仲だよ。 ガキ共の面倒見てくれてたしな。」 彼女の持つ一面しか、この男は知らないから。 真っ当な付き合いだったろう事だけは分かるだろう。 「不吉な事言うなよな…全く。 もしそうなったら、何が何でも止めてやるさ。 俺に言った事を後悔しても知らないからな。」 なんて笑うのは冗談交じりで けれど、任された、と確かに頷いてみせた。 「ともあれ、助かったよ。歩き回るなら気を付けろよな。 また会おうぜ、ルチアーノ。」 次で会う時はきっと食事会で。 此処まで世話を焼いてくれた貴方に礼を述べながら 男は病院まで担ぎ込まれるのだろう。 (-426) 2023/10/01(Sun) 20:34:03 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → きみのとなり リヴィオ「ああ無駄だね、俺はしつこいんだ。 ……心配するな。何があっても俺がついている」 貴方の事を望んでいる。 貴方の事を、まあ、愛している。 貴方の事を、守りたいと思っている。 その生が苦しい者でないように、楽に息が出来るように。 あなたがいつか安らぎの中で涙が流せるようになれば良い。 「何度言わせれば分かる、その顔が俺の願掛けだ。 勿論、顔が潰れても、オーラはなくせんよ」 その終わりが見えている。 貴方に求められてはきっと叶えられてしまう。 望んでくれるというのなら、きっと悲しみながらも、 あなたに休んで欲しいとその穏やかな声は告げるのだ。 それはきっと一つの愛で、紛うことない情の形。 それでもまだ少し、あと少しこれから先の未来を、 平和を祈った語らいを思い出して、過ごしていこうじゃないか。 「勿論一緒に行くぞ、それまでに好きな店を探しとけ」 (-427) 2023/10/01(Sun) 20:34:41 |
【人】 黒眼鏡>>138 『…もしもし?』 その電話を取ると、 男の声が聞こえた。 ──君はきっと、よく知っている。 思い出せるかは分からないが、思い出してもおかしくないくらいに。 ……あのジェラート屋の店主だ。 『──ああ。ええと。今日、あんたから電話がくるか、 あんたが電話に出たら、こう言えと言われてます』 彼はあなたの声を聴くと、 何も尋ねることなく、 『「俺が一番好きなのは、カップのバニラ」って』 『お届けしましょうか、なんて聞いたんですが、いや、食いたいわけじゃないと……』 咳払い。 『すみません、私が首を突っ込むことではなかったです。 それだけ…ああ、その電話はやるから好きにしろと。 それだけ伝えろと言われていますので、伝えました。 あ、私は姿を晦ましますのが、店は娘が継ぎます。 今後とも、ごひいきに』 がちゃり、と電話がきれて、それきり。つー、つー、つー、という電子音だけが聞こえた。 (139) 2023/10/01(Sun) 20:36:14 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ何だか悪戯っ子のようだなと、 笑う君に少しだけ眉を下げて笑う。 答えは上手く返せなかったし、君もそれを分かってる。 自分はこの問いに困っているのだろうか。 それとも、それ以外もあるんだろうか。 なんだか綯い交ぜになったような感情に僅かに首を傾ける。 その間に肩にとん、と軽い衝撃を感じて。 言葉はまだ、返せない。 聞こえる小さな声に眉を下げたまま、また、笑った。 「………はは、…そうか」 そうしてそれ以上、言葉は出てこなかったから。 止まってしまった手でもう一度、君の背を撫でる。 自分は、そう長くその選択を取れないのだろうと思うけど。 だからといって、そうだと君に明かすのは、まだ先の話だ。 再び君が顔を上げる時、その言葉に頷いて。 回していた腕を外し、緩慢にベンチから立ち上がる。 「頑張って治療するよ、困ることも多いからね。 君に迷惑をかけることもあるだろうけど……あぁそうだ。 俺には色男で猫のエキスパートの友人がいてね。 今度紹介するよ、家の話も彼にする予定だからさ」 「──それじゃあ、帰ろうか」 (-428) 2023/10/01(Sun) 20:37:56 |
リヴィオは、「ねぇ、ニーノ。………いや、えっと」 (a45) 2023/10/01(Sun) 20:38:03 |
リヴィオは、署内での"ニーノの話"を思い返して悩むような仕草。しかし、言葉は続く。 (a46) 2023/10/01(Sun) 20:38:11 |
リヴィオは、「俺達はまだ、お互いに知らないことも多いからさ。落ち着いたら話をしようか」 (a47) 2023/10/01(Sun) 20:38:21 |
リヴィオは、言えること、言えないことがあるだろうけど──それでも、話すべきことがあるから。 (a48) 2023/10/01(Sun) 20:38:31 |
フィオレは、気まぐれに、もらったリップを塗っている。似合う?なんて近くにいる彼に聞いたりして。 (a49) 2023/10/01(Sun) 20:38:38 |
リヴィオは、「あぁ、そうだ。晴空の下の散歩も忘れずに行こうね」 (a50) 2023/10/01(Sun) 20:38:41 |
リヴィオは、 暫く は君と、君達と歩んでいくために、足並みを揃え歩んでいくのだった。 (a51) 2023/10/01(Sun) 20:39:32 |
フィオレは、なんとなく、予感がしたのだ。 (a52) 2023/10/01(Sun) 20:39:32 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ (140) 2023/10/01(Sun) 20:45:00 |
【神】 口に金貨を ルチアーノ>>G15 ペネロペ 「……今の俺に言ったか?」 ルチアーノという男は常に誠実であろうとした。 誰かにとって必要とされることは、誰にとって平等で不平等か。 その価値を持って示し続け、道理を通してきた。 そんな人間は自分自身のことを融通が利かない真面目だとは思っていなかったのだが。 何かがかみ合ってしまえばそれは、きっと、誰も止められやしない石頭になるのだろう。 「練習しておこう、どうせ使わんと思ってサボり気味だった。 散歩もしばらくしないしな、少々練習に時間を使うとするか」 「ああ、祝ってくれよ。忘れてても思い出させてやるからな」 互いにいつ居なくなるか、わからない。 それが些細なことで起きることを知っている。 少なくとも互いのことで取り乱すとしたら、 それは一体犯人は誰だったのかということだろう。 死に際は立つ鳥跡を濁さず、 そんなすっきりしたものになれば、 ――俺達も今こんな風に困らなかっただろうにな。 (G16) 2023/10/01(Sun) 20:47:49 |
フィオレは、予感が、悪い方向に当たるなんて。この時は思っても見なかったのだけれど。 (a53) 2023/10/01(Sun) 20:48:31 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>140 言いたい事もなにもかも、色々あったけど。 結局その役も『父親』に取られたみたいだし。 「はーぁ」 なんて零すため息は少し自信を無くしたような。 でもまあ、それもいいだろ? だって、一番は俺が『王子様』である事じゃなくて。 彼女が前を向いて、歩いて行けるって事なんだから。 「……よっし!叫んだらすっきりしたわ、俺は。あはは! あ、今度さあ、他の奴とメシ食いに行くんだよ。 そこで俺達の結婚発表しちゃおうぜ。 ……あでもエーコがいるのバレていいんかな。 まあ、ダメだったら適当にボカして言うわ。 そもそもそいつら全員、バラしたらどうなるかくらい よーくわかってる奴らだろうしな。さーて、じゃあ――」 「エーコ、帰ろうぜ!」 (-429) 2023/10/01(Sun) 20:50:29 |
ニコロは、幸福の為に、これからも歩き続ける事を決めた。 (a54) 2023/10/01(Sun) 20:52:16 |
ニコロは、月桂樹の花を、ゴミ箱へと捨てた。 (a55) 2023/10/01(Sun) 20:52:59 |
ルチアーノは、「早起きが毎日出来るようになったらな」そう告げて、貴方と共に海辺を歩いた。 #ReFantasma (a56) 2023/10/01(Sun) 20:53:46 |
【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-429 ぐし、と少し乱暴に涙をふいて。 くるりと女は振り返った。 「…もおやだ。」 「今日なんもしたくない。」 文句だ。…お望み通りの。 そうして変わらず、ゆるりと絡みつく。 ずび、とまた鼻をすする音だけが聞こえて。 「ん、…帰ろお、ミネ」 足音がひとつ、ふたつ。 港を離れて、車へと消えていく。 (-430) 2023/10/01(Sun) 20:56:01 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノちょっと力の強いハグは苦しさを教えるものではなくて、 貴方からの愛情を教えてくれるものだ。 兄弟としてのこれからは始まったばっかりだったのに、 すぐに遠くなってしまうことはこちらも寂しいけれども。 「そうだよ、ろーにいが帰ってきたらにゃんことオレがいる。 へへ……競おうかな、この子たちと。 どっちが早く玄関までろーにいを出迎えられるか……」 それでも、それまでの少しの間だけでも。 貴方に家族の温もりを与えられるのなら。 "オレでいいの"、と。 零された小さな声を未だ、覚えているから。 「…………────」 そうして腕が離れた頃。 そっと伝えられる感謝には目を瞠り。 呆けている間にマリトッツォを手に取った貴方を見て、眦を下げる。 すこしだけ、視界が滲むのを感じながら。 「…………それなら、オレだって」 [1/3] (=19) 2023/10/01(Sun) 20:56:27 |
【念】 摘まれた花 ダニエラさて、翌日。 正式な手続きを踏まず脱獄した女にどれほどの時間があるだろう。 少なくとも今ここで、自宅のアパルトメントへと立ち寄るような女ではなかった。 「…ただいまあ」 だから、最後に立ち寄ったのはそのホテルだった。 …変わらず、照明はついたまま。誰もいない室内に声をかける。 そうして真っ先にデスクへと向かい。 そこにある『大切なもの』たちを見つめ、ひとつひとつを回収してく。 冷蔵庫から、チョコレートも取り出した。 (!0) 2023/10/01(Sun) 20:56:53 |
【独】 摘まれた花 ダニエラライムグリーンのウィッグをつけたテディベア。 これは大事に飾っておこう。 ブーゲンビリアの花束も。 枯れるまでは大切に、花瓶に生けて。 このチョコレートは、紅茶と一緒に食べようかな。 ミネは、チョコが大好きだし。 バスボムは、特別疲れた日に使っちゃおうか。 …今夜とか。 (-431) 2023/10/01(Sun) 20:57:11 |
【念】 摘まれた花 ダニエラ片腕にそれら『大切なもの』たちを抱いて。 そのまま振り返り、部屋の隅を向く。 ちょこんと最後にひとつ残されたスーツケース。 片腕で、よいしょ。これもそこそこ重いから、怪我した腕ではひと苦労。 …この中身は、どうしようか。 それだけは、まだ決められそうにない。 自分ひとりの問題ではないからかもしれない。 でも、いづれは決める心算ではあった。 (!1) 2023/10/01(Sun) 20:57:36 |
ダニエラは、「ああ、でも…。」 (a57) 2023/10/01(Sun) 20:57:49 |
ダニエラは、この中にある、鍵だけは、どうしようかは決めていた。 (a58) 2023/10/01(Sun) 20:57:59 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ「……溶けるのは、困る〜」 そうしてぐしと少し乱暴に目元を拭ってから、 己もまた同じように甘味を手に取る。 食べ終わったら何をしようか。 夜になっても貴方の隣に居られるのを思いながら。 久々に口に入れた甘味は幸福と呼ぶのが相応しい味がした。 ──『ねえ、戸籍ってろーにいのと同じにできないのかなあ』 そうして食べている最中、そんなことを零していただろう。 難しかったら大丈夫、あんまりよくわかってないから、と添えてもいたが。 ──『そうしたら、ほんとの家族になれるでしょ』 すれば離れたとして、貴方の寂しさも少しは紛れるかなって。 子どものような発想を声に載せて。 ──『そうじゃなくても、ほんとの家族だって思ってるけどね』 貴方の弟は甘えただから、変わらずぎゅっと肩を寄せて笑っていた。 [3/3] (=20) 2023/10/01(Sun) 20:58:24 |
ダニエラは、きっと近いうち『お兄さん』に連絡を入れる。 (a59) 2023/10/01(Sun) 20:58:33 |
ダニエラは、彼の方が、自分よりずっとあの場所での思い出が多いと知っていたから。 (a60) 2023/10/01(Sun) 20:58:39 |
【念】 摘まれた花 ダニエラ「常連さんには、結局なれませんでしたしねえ」 そうひとりでに、からころ笑う。 喜ぶべきか悲しむべきか微妙なところだ。 女はそもそもコーヒーという飲み物の味が好きではなかった。 今まで一度も、誰にも、そのことを口にしなかっただけで。 荷物に両腕を抱えて、女はホテルを後にする。 もうここを訪れることもないだろう。そうやって初めて照明を消した。 (!2) 2023/10/01(Sun) 20:58:59 |
【置】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ本名:ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリア(Vincenzo Berti di Maria) 死因:■■■■■■ 発見場所:■■■■■■■ 遺体の様子: ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ (L6) 2023/10/01(Sun) 20:59:15 公開: 2023/10/01(Sun) 21:00:00 |
【影】 摘まれた花 ダニエラ 苦い水面に砂糖を2つ。 そうやって飲める味にしても尚やっとだった。 それでもダニエラ・エーコは、日常的にコーヒーを嗜んだのだ。 でないと、喫茶店になんて足を運ぶ事も出来やしない。 そしてそのための我慢は全然苦でもなかった。 きっとこれも、石であり、星だったのだろう。 もう、そんなかいがいしい我慢もする必要はない。 だというのに、スーツケースの中、手放す気のないものがひとつだけあった。 …この香りが好きだったのは、本当だったから。 (&2) 2023/10/01(Sun) 20:59:21 |
【置】 摘まれた花 ダニエラねえ、アレッサンドロさん。 あの日、聞くことができなかったこと。 だから、本当のことはわからないままのこと。 あたしは、―― 親孝行 できていましたか?聞けた方が良かったのか。 聞けないままで良かったのか。 その答えすら、今も出ない。――きっと、これからも出ることはない。 (L7) 2023/10/01(Sun) 20:59:40 公開: 2023/10/01(Sun) 21:00:00 |
【人】 摘まれた花 ダニエラ荷物を転がし、抱えて、少しの距離を往く。 虚実不明の明るい鼻歌を奏でる。 そうやって向かう先にいるのは王子様。 あたしのひと。いつものように、女はその名前を呼んだ。 (141) 2023/10/01(Sun) 20:59:55 |
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [メモ 匿名メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新