……もっと……？
　
[肩に立てられた爪はもどかしさによるものなのだろうかと、深くへと呑み込まれていく指をひとつ増やして。

中を苛む異物が増えても合わせて形を変える内壁を滑らせる範囲を大きくするのに、そう時間はかからなかった。]

　っ………、ん………

[浅くまで引き抜いた指を深くまで沈める度、跳ねる腰を押さえた手で下肢を引き寄せると、腹の辺りに押し付けた熱が増して下衣を押し上げる。

欲しいと告げてくるのを待つつもりはあったけど、此方の方が我慢が効かないかもしれないな、と苦笑して。
その上で澄夜は？と言わせようとするのはずるいかもしれない。

入り口付近に引いた指で内壁を掻いて言い淀んだ言葉を促すと、小さく本音を囁いた唇に口付けた。]

　………うん、澄夜のこと全部貰うから、
　受け止めて欲しい。

[根元まで使徒度に濡れた指を引き抜いて、身体を起こす。

汚しても構わないのだけど、とTシャツを脱いで、澄夜の方もと身体を抱き起こして上着をたくし上げた。

着物を脱がせる方がこの工程は楽かもしれない。

慣れないとはいえ自分で脱げるのはわかりつつ、腕を上げて貰えば、Tシャツを脱がせて。
きつく感じていた己の下衣も脱ぎ去れば、こっちに来てと手を広げた。

膝の上に跨いだ身体を抱き寄せると、腹に押しつけた張り詰めた熱が澄夜が欲しいのだと主張する。]

　……腰、上げて。

[腰へと腕を回し、脚の間へと切っ先をあてがった。]*

[幾度も言われてはいたことだ。
迷惑ではない、荷物とは思わない、助けるから、と。

けど旧態依然とした伝統芸能の世界は、本音と建前が何かと乖離しているもので。

社交辞令をそのまま受け取ると痛い目に遭うというのが常態化していて、そのあたり、僕はこと、人の好意あるいは厚意に関しては懐疑的に話半分、いや話四分の一くらいに受け取るのが常だった。

ではお言葉に甘えて……とすると、なんと図々しいことをと手のひらを返すような輩も多く界隈なんだ。……いや、圭吾さんがそういった人なのだとは、勿論全く思わなかったけれど。

それでも、"迷惑ではない"と告げられたところで、迷惑をかけて良いんだと開き直ることはできなかった。]
　

　…………っ、ではなく……っ。



["もっと？"と問われ、首を横に数度振る。

今更かもしれない。
これなら恥ずかしくない、けれどこれは恥ずかしい、というその境界は自分の中でも曖昧だ。

でも慣らすように指で後孔を弄られるのは、どうしようもなく羞恥が募った。

ぐちゅ、と耳を覆いたくなる音と共に、埋められた指が何本なのかということまで鋭敏になった感覚が伝えてきて、ますますいたたまれなさに顔を歪めた。]
　

　……、っふ……、……ぅ、

　っぅ"……、ぁ、あ、んっ、

[浅い場所からずぶ、と奥へ指が埋められれば、それでは足りないと、腰が揺れ始めてしまう。

言って、と促す風に浅いところを抉られれば、堪えられない嬌声が漏れた。

露わになった下肢、既に己の性器が張り詰めていることはとうに伝わっているだろう。

これまで本心をなかなか伝えようとしていなかった己を省みれば、言葉での"欲しい"を求めてくる圭吾さんの気持ちに応えたくもあって、小声ながら欲を伝える。

僕はきっと、圭吾さんに"よく言えました"と言われるのが、好きなんだ。
もとより、彼の言葉に逆らおうという気が、そもそも全く沸かないのだけど。]
　

　…………ん、……っ。

[ベッドの上、座り込むように身を起こさせられ、眼前、ぱさりと圭吾さんがシャツを脱いでいく。

僕も？と半ば溶けたような思考の中、それでもシャツに腕をかけようとすれば、それより早く僕のシャツも剥かれてベッド隅にぱさりと投げられていた。

一番最初が、襦袢を腕にひっかけたままといった風だったから、肌を全て晒すというのは前回同様、気恥ずかしさは少なくない。

────やっぱり僕は、サウナの会には未来永劫行けそうにないな……。

呆とした頭で、Ωとか関係なしに、あれはむり、と思った。

自意識過剰と言われればそれまでだけれど、普段、いかにも着物姿を美しく魅せるかといった事に注力している分、纏うものがないことは、本当に心許なくて。

それでも、"全部貰うから"という圭吾さんの声には頷いていたし、促されるまま、座り込んだ圭吾さんの足を跨ぐように向かい合わせにもなった。

どうしたって、腫れ上がった風な己の性器と、己のものよりは明らか大きな圭吾さんの屹立が目に入る。

戸惑う風に視線を揺らす僕は、まさか、この格好で繋がろうとするとは全く考えていなかったから、促されるまま腰を僅かに上げたその窄まりに固いものがあてがわれたことに、目を見開いた。]
　

　ぇ……、あ！……は、ぅ"、あ"、

[ひゅ、と喉が鳴った後、重力で身体が沈むと共に、容赦無く熱杭が足の間を貫いていく。

特段の抵抗もなくずぶりと最奥近くまで貫かれ、とてつもない衝撃と快楽に押し出されるように涙がこぼれ落ちた。]

　……ま……って……、ゃ、……ぁ、っ、ぅっ、

[息が跳ねて、浅い呼吸しか、できなくて。

過ぎる快楽から逃れようと、必死に圭吾さんの背に縋り付くものの、彼が触れてくる唇からも手指からも快楽を拾ってしまうようで、爪立てた指が痙攣する風に震えてしまい、自分では、どうしようもなくて。]

　ごめ、なさ……、っ、この、まま……、……っ。

[どうにかそれだけ言葉を紡ぎ、か細い吐息を吐ききろうとするも、それすら叶わず。

後孔だけは歓喜して、勝手に圭吾さんを締め付けようと蠢きだしてしまうことに、やだ、と溢した声は、獣の唸り声によく似たものだった。]*