【人】 メルヴィル ― 幕間にて ― [ パンケーキの甘い匂いが漂っている。 たっぷりのはちみつ、バターと それに加えてまっしろな生クリーム。 魔術師らしく昼夜逆転──とは無縁の生活であるため これは二人分の朝食だ。 外の森は穏やかで、時折獣の話し声が聞こえてくる。 窓から見上げる空には雲ひとつもなく、 少し目に痛いほどの青が空を埋め尽くしていた。 ] ──────いいお天気だねぇ…… [ 呟いて、パンケーキが乗った皿を机に置いた。 出来に「うん」と満足げに口角を上げる。 ] (3) 2024/09/24(Tue) 18:56:05 |
【人】 メルヴィル[ ″ 魔術師 ″の記憶を取り戻してから、 まだあまり時間も日も経っていない。 二人で朝食を食べ終えた後は、薬の練習でもしようか。 ──ああ、メレフが作った薬を見せて貰うのもいい。 そんなことを朧に考えながら、 男は「起きたかな」と、視線を扉の方に動かした。** ] (4) 2024/09/24(Tue) 18:56:09 |
【人】 薬師 メレフ良い匂い。 パンケーキだ? [彼の器がまだ小さかった頃は、朝食は必然的に 大きく育った方が担っていたが、器が成長するにつれ、 魂の持つ記憶に引っ張られてか或いはメレフが元来の 甘えん坊を発動させてしまったからか、 世話をする立場が逆転した。] まだちょっと眠いな。 コーヒー淹れて良い? [メルが「メルヴィル」時代を取り戻したことにより 時折養い子時代に逆行したような言動を見せる男も 肉体年齢でいえば30年を超えている。 8歳の少年は好まなかったコーヒーを飲むことを 「彼」はどう見るのだろう。 少年が成長しいなくなったことを寂しく思うのか、 それとも「メル」として記憶してきたコーヒーを飲む この長身の男の姿をありのまま見て何も感じないのか。 ゴリゴリと音を立ててミルを引く。 粉ひきの作業は薬の調合作業にも似て、 頭を覚醒させてくれる。*] (6) 2024/09/24(Tue) 20:34:19 |
【人】 メルヴィル[ 教えなかったことは数えきれないほどにある。 人として生きること、魔術、己のこと。 そう、それから────── ] ……いいよぉ。 ミルクと砂糖は? [ あの頃はコーヒーの味や淹れ方も 好まないなら、と与えていなかった。 渡していたのは、はちみつ入りのホットミルクや 甘さだけが残るココアだ。 ぼろぼろの状態で出逢った子どもを大事にしたくて、 コーヒーが苦手なら、と カフェラテにして渡すこともしないままだったが。 豆を挽く音がして、俄かに匂いが漂い始める。 ] (8) 2024/09/24(Tue) 21:41:35 |
【人】 メルヴィル…………飲めるんだもんねぇ。コーヒー。 昔は苦い〜って言って好きじゃなかったのに。 [ この光景自体を初めて見るわけではない。 寧ろ見慣れたと言って差し支えない程度に知っていて、 だから今更、ミルクや砂糖も聞かなくて良いのだけど。 記憶を得て間もない今、 妙な感慨深さのようなものが神経を這い上がって 男は改めて目の前の彼を見た。 薬も随分立派に作れるようになっていたし、 身長だって自分を抜いて大きく育ったし、 この前のキスだって …… ] (9) 2024/09/24(Tue) 21:41:43 |
【人】 メルヴィル( いやなんで今そんなの思い出した……? ) [ 他人の匂いがするのは嫌だと言った我儘を思い出す。 肉の器が幼い頃から見てきた育て親は、 魔術師だった頃から見てきた養い子の、 無邪気だった色ばかりではないのだ。 思考を誤魔化すように「ねぇ」と彼の服を引いた。 甘やかされた子どもの仕草のまま。 ] (10) 2024/09/24(Tue) 21:41:52 |
【人】 メルヴィル朝ごはん食べたらどうする? 昨日の調合、まだ続きあるんだっけ……? [ 認識遮断の術で外界から隔てたこの家にも、 まだ行商の亜人はやってくる。 己はもう卸す分を作り終えているけれど 彼はどうだろう、と首を傾げた。** ] (11) 2024/09/24(Tue) 21:41:56 |
【人】 薬師 メレフはちみつとバター、それと生クリーム! [子どもの頃の味の好みは変わらないまま、 一時は量が増えたが今は落ち着いている。 見た目だけは魔術師の細胞を口にしたことが原因か まだまだ青年の入り口に見えるが、胃腸の方は 老化へと進んでいるのだろう。 朝から甘いパンケーキをいつまで楽しめるだろうかと 思ってしまうのは、メルが「メルヴィル」を取り戻して 同じ速度で生きられないと悟ったから。] (12) 2024/09/24(Tue) 22:59:42 |
【人】 薬師 メレフ[メルヴィルを喪った日々はあんなに長かったのに、 メルに出逢ってからは日々が早く過ぎて、 きっとここからは加速度的に終わりへと近づくのだろう。] (13) 2024/09/24(Tue) 23:00:29 |
【人】 薬師 メレフ眠気覚ましだからストレートで飲むよ。 [淹れて良いかと問うて自分で挽いているのに ミルクと砂糖の有無を聞く。 メルは本当にメレフを甘やかすことに長けている。>>8] 大人になったからねぇ。 [感慨深いということは、今はメルヴィルの記憶が勝ったか。 過ごした日々で身に着けたメルに似た口調を返して 目を細めた。 メルヴィルに教わらなかったコーヒーの挽き方は メルが遺してくれたもので通った学院で覚えた。 だから間接的には彼に教わったと思っている。 一人では生きていけない年の魔力のない子どもでも その子どもと共に世間から離れて暮らしていた魔術師が 道を残してくれていたから。] (14) 2024/09/24(Tue) 23:01:03 |
【人】 薬師 メレフ[口角の上げ方を見ればもう子どもではないとちゃんと 認識してもらえるだろうか。] そうだなー、納期がきついやつはもう終わってんだよね。 だから趣味の延長っつか研究するくらいで のんびりいけそう。 先に天気が良いことだしし洗濯しちゃいたいな。 金木犀入れた洗剤作って正解だった、 シーツからほんのり良い香りするもん。 [魔術は使えなかったが薬師としての才能はあった。 今は教わっていないやり方での調合もお手の物だし 正確さとスピードを兼ね添えたベテランである。 頼りになる薬師が増えてより多くを作れるようになったが 無茶な量の注文は受けない主義だ。 メルとの時間を尊ぶことが何よりも大切だから。 仕事に余裕がある時には二人で依頼者のいない薬の研究を することが多いが、先日作った洗剤に混ぜた季節の花が 成功だったのでつい使いたくなってしまう。] (16) 2024/09/24(Tue) 23:03:26 |
【人】 薬師 メレフ[メルの距離が近い。 先刻見せた表情を思い出し、気づけば更に身体を折っていた。 ちゅ、と音を立てて唇を触れ合わせる。 300年の記憶に20歳のメルが連れて行かれないように こうして事あるごとに軽くキスをするようになった。 あの、すべてを食べ尽くしてしまいそうな深いキスは あの夜以来していない。 今日みたいに時間を持て余す日にはもう少し味わいたいけれど 日の高い内から?という気持ちは一応メレフにも存在するので。] 朝ごはん、食べよっか。 [言ってまたキスをする。 コーヒーを飲む前だから、苦くはない筈だ。**] (17) 2024/09/24(Tue) 23:04:50 |
【人】 メルヴィル[ ミルクも砂糖もいらないことは察していたけれど。>>14 「そっか」と頷いて、コーヒーの匂いに目を細める。 昔は──昔の自分はどうだっただろう。 今の彼と同じように何も入れず飲んでいたが、 この子は好きじゃないのか、と悟ってから あまり積極的に口にはしなくなった記憶が有る。 肉体の器を変えてからも、甘やかされることに慣れて 苦味が強いコーヒーから距離を置いていた。 ] まあ、ねぇ。 でも甘えんぼなとこは変わってないでしょ? [ 口許に手を当てて穏やかに笑った。 苦いコーヒーを飲めるようになり、背が伸びても 彼の甘え仕草はそのままだ。 ] (19) 2024/09/25(Wed) 19:59:37 |
【人】 メルヴィルん? [ 服を引いたまま、呼ばれた名前に顔を上げた。 見上げた先、彼の赤褐色の瞳がかすかに揺らめいている。 夜が降りるように影が差して、 反射的に瞳を閉じる──前に。 ] (20) 2024/09/25(Wed) 19:59:41 |
【人】 メルヴィル[ どう考えても髪の色で──いやそれ以前に態度で 動揺は悟られそうなものだが。 考えていたことが筒抜けになったような気恥ずかしさに 「もう!!」と目を逸らし、手を離した。 幼い頃どころか、育ててくれた大人の彼からさえ こんなからかいが飛んでくることは無かったのに。 二人を結ぶ糸が、関係性という名前を変えてから 彼は夜更けの色を覗かせることが増えた。 ] そうだねぇ……お洗濯しよっかぁ。 暇だったらメレフの研究の成果でも見ようかな。 [ 洗剤に花を混ぜる発想は男にはないものだ。>>16 男が自己流で薬の調合に成功したのも、 魔術師の頃でさえ数十年かかっていたのだから 全くたいしたものである。 ] (21) 2024/09/25(Wed) 19:59:54 |
【人】 メルヴィルぁ……えと、……うん [ 別に、キスが初めてというわけでもない。 あの夜以来、こうして軽いキスは幾度となく与えられて 男に体温やキスの感触を教えている。 唇を重ねることの意味も熱も感触も、 ──寂しさも、与えたのはあの夜の彼なのに。 蜃気楼の夢かなにかか、と思うほど あれ以来、彼は優しく触れるばかりで。 別に、それが不満というわけでは、ない。 …………不満では、ない、はず だ。 ] (23) 2024/09/25(Wed) 20:00:03 |
【人】 メルヴィル[ 前も今も、色恋や性的なことに関心がなかったせいか 男の中には″ 日が高い ″ことに思うことはなく しかし、彼は食事を腹に収める必要はある訳で。 朝食に同意はしたものの、男は珍しく やや躊躇った仕草の後、彼の胸へ頬をすり寄せて ] ………………もっかい。 [ なにを、とまでは言わないが。 理解してくれるはずだと甘えながら顔を上げた。** ] (24) 2024/09/25(Wed) 20:00:10 |
【人】 薬師 メレフ[メルヴィルを喪ってからの数年は、甘えん坊ではいられなかった。 行商の亜人には助けてもらったが、甘える対象にはならず、 養子の提案は断った。 学院では一人で生き急ぐように学問を収め、世間の人よりも 早く薬師として身を立てるようになった。 甘えなくても生きていけることをもう知っている。 甘えん坊になれるのは、彼が甘やかしてくれるからだ。] メルにだけだよ。 [嬉しくて笑う時の仕草を見た時に感じる愛しさも変わらない。] (25) 2024/09/25(Wed) 21:20:41 |
【人】 薬師 メレフ[瞼が揺れる。 このメルは「キスを知っているメル」だ、と実感する。 揶揄の声を密やかに響かせれば、感情に合わせて変わる髪が 一気に様相を変えた。] ふっ ……くく、 [300年を生きたメルヴィルは、養い子が揶揄したところで こんな風に動揺しないだろう。 その記憶があるのにほんの短い言葉で狼狽するのだから、 彼が恋心を自覚してくれて良かったと思わざるを得ない。] (26) 2024/09/25(Wed) 21:21:25 |
【人】 薬師 メレフシーツと、ついでにカーテンもかな。 抽出用のガーゼは香りをつけたくないから 別洗いで。 それでも午後まではかからないだろうからね。 昼は研究につきあってくれると嬉しいね。 夏に採集した材料はそろそろ使い切りたいし。 [子どもの頃にも石鹸を作ることのあったメレフ少年は 病を治す為の薬の研究の他に病にならない予防医学の為の 薬の研究を長年行ってきている。 その過程で花による自然の香料を取り込むことを思いつき、 まずはこの家で使っているのだけれど、金木犀は 想いの外良い匂いだから、市井に売り出しても良いかも しれないと思っているところだ。 金木犀の外にも洗浄効果を保ったまま香りがつけられるか、 目下の研究テーマである。] (27) 2024/09/25(Wed) 21:22:00 |
【人】 薬師 メレフ[「しないといけない」ものではなく「したいな」程度の予定は 開始時間も所要時間も気にしなくても良い。 まずはゆっくり甘い朝食を楽しもうと思って、 テーブルを挟んだ距離でも離れるのを惜しむようにキスをしたら。] ……メルが言ったんだからね? [そんな仕草でお願いされたら、 「お言葉に甘える」しかない。 何せ年季の入った「甘えんぼ」なので。] (28) 2024/09/25(Wed) 21:23:11 |
【人】 メルヴィル[ 男も、最初から甘やかし方を識っていたわけではない。 拾ったばかりの頃は、子どもの目線に合わせて 屈んでやるという行為ひとつすら知らなかった。 彼が甘え方を自分で憶えたのだとすれば、 甘やかし方を教わったのは自分だった。 ────それが今は甘やかすばかりでも無くなって、 嚙み殺せない笑いを零す彼のことを>>26 頬を赤くして睨むので精一杯なのだけれど。 ] いいよぉ、僕もメレフの研究は興味あるし。 行商に頼まれたものばかりも飽きちゃうからねぇ。 [ 自白剤だの惚れ薬だの、全く変わらない要求である。 彼は今や予防医学の薬を研究するところまで進んで、 世界は色を変えているというのに。 ] (29) 2024/09/25(Wed) 22:19:32 |
【人】 メルヴィル[ 対する自分は、今も夢見の薬を作っている最中だ。 もう彼が悪夢に苛まれることはないだろうけれど、 未完のまま研究を終わらせるのは好きではない。 そう、それに。 ]もしもこの薬が完成すれば────…… 夏の素材って、結構色々使えるけどねぇ。 活用できそうなレシピ、あったかな…… [ 彼が作るのだから、魔術を絡めたものは駄目だ。 昔の自分が書き残しているかもしれないし、 それを探してみてもいいだろう。 とはいえ時間はたくさんあるのだ。 探すのも考えるのも、今日すぐでなくていい。 ] (30) 2024/09/25(Wed) 22:19:36 |
【人】 メルヴィルわ、…わかってるよぉ…… [ 自分から「もっかい」と言っておいて、 言ってないもんと駄々をこねるほど子供ではない。 羞恥で「やっぱりなし」と前言を撤回する前に 我儘を聞いてほしいものである。 何せこちらは、甘やかすことをとうに知っていて 甘えることも憶えた男なので。 前までの自分なら言わなかったお願いを、 言葉に輪郭を纏わせたまま息を呑んだ。 ] (31) 2024/09/25(Wed) 22:19:42 |
【人】 薬師 メレフ[「メレフ」はずっと人間で、人間の基準で薬師の資格を得たので 製薬のセオリー等は人間準拠なところがある。 人間社会に出回るのは人間の知識だけで生成可能なものだ。 そうでなければ魔術師と見なされて狩られるから。 勿論、行商に渡すのは人間社会には出回らないものも含まれる。 どちらでも重宝されるのは病気の治療薬よりも 惚れ薬や媚薬といった心に作用するものだ。 メルと暮らして慾を向けてしまいそうになった時から 媚薬の生成研究の副産物で生まれた性欲減退薬を 服用してきたが、此方は売り物としては全然商売にならなかった。] (32) 2024/09/25(Wed) 23:57:37 |
【人】 薬師 メレフあっそーだ、レシピといえば。 メルが書き遺してくれてたやつ、劣化してるのが 何冊かあって、俺は魔術で保存が出来ないから 朽ちる前に書き写したんだけど、あれも古くなるから 保存魔術掛け直してほしいんだよな。 [魔術の行使者を喪っても長く残ったものもあるが 多くはその死から日が経つにつれ朽ちていった。 そのひとつがメルヴィルが300年の間に遺したレシピ集で、 それを書き写すことで勉強にもなったが、人間が残すものは どうしても何十年と持たないから。 魔術を掛けてくれたら、自分がいなくなっても 自分の字は彼の傍にいられる。] (33) 2024/09/25(Wed) 23:58:01 |
【人】 薬師 メレフ[午後の予定はそれにしようかと提案するのは朝食時に、 と思っていたが、その朝食も少し遅くなりそうだ。 固さを失った生クリームも美味しいから問題ない。**] (34) 2024/09/25(Wed) 23:58:24 |
【人】 メルヴィルうん? あぁ……そっか、さすがに古かったかもねぇ。 魔術もいくつか綻んでたかもしれないし。 いいよぉ、後で掛け直しとく。 [ 術者が死んでも残り続ける魔術は幾つもあるが ──その最たる例が契約印だ。 保存魔術も死んだ瞬間に解けるものではないけれど、 とはいえ生存下と同じ時間保つこともない。 わざわざ書き写してくれたのか、と思った。 300年生きた魔術師が遺した知識の寄せ集め。 永きを渡れば、いずれ朽ち星のように崩れるのが正道で それを惜しいと感じることは、なかったけれど ] (35) 2024/09/26(Thu) 19:45:03 |
【人】 メルヴィル[ 今でこそ外界から遮断することが出来ていても、 人間がいつ踏み入るか分からなかった頃などは 見つかってしまえば異端の裁きを受ける知識ばかりだ。 ────世界はそういう風に出来ている。 だから、誰かの手で残るなんて思わなかった。 星のかけらを集めてひとつの星にするような作業を、 彼がしてくれていたというのならば 自分にもその星を夜空に置き留めるこころがある。 ] ありがとねぇ、メレフ。 [ 微笑んで礼を言うと、男はゆるやかに目を細めた。 真昼の星がきらきらと眩くて。* ] (36) 2024/09/26(Thu) 19:45:08 |
【人】 薬師 メレフなに。「ありがとう」は俺だよ。 魔術かけてもらうんだから。 俺に使えてたら良かったんだけどな。 [メルヴィルの研究をなぞる日々は、一人の生活を慰める時間だった。 彼が確かに生きていたことを、子どもの小さな脳ではすべて 憶えていられないことが怖くて、常にメルヴィルの記憶に 繋がっていたかった。 それが自分の文字として彼の傍に残ってくれるなら、 彼の方も「メレフの記憶」として悠久の時の慰めに してくれるのではという思いがあった。] (37) 2024/09/26(Thu) 20:23:17 |