［彼女といっしょに、おさんぽに出かけて
　自分の匂いを
　できるだけ高いとこに
　くっつけながら主張してたことは


　「ここは、ルーとナーの場所だよ」ってことと、

　「ナーはね。
　　こんなに大きくて強そうな
　　ルーのものだから、誰にもあげないよ」ってこと。

　
　すん、ふすん、フンっ。

　匂いを嗅いで確認しながら
　おまえにも、おまえにも。おまえにも、
　彼女は渡さないって、息巻いてた。］
　

　
［ひと、の姿になったから
　もっと高いとこに
　匂いをくっつけられるって思ってたけど。］



　　　ルーはもう「ひと」だから
　　　外でシない。
　　　ナーと、ずっとずーっと
　　　いっしょに居たいから、トイレでする…！

　　　匂いをつけるのも、ナーにだけ。



［うん、分かったよ。

　ナーもルーと離れたくなくて
　いっしょうけんめい伝えてくれてるのかも。>>1:G1
　なら、安心させてあげなくちゃね。

　もう大丈夫、って伝わるように
　理解できたところを言葉で繰り返して
　力強く頷いて見せた。*］
　

　
［トイレに向かいながら、ルーが返事をくれた。

　ずっと一緒に居たい。>>G1
　ふたりの想いがひとつであることに
　胸がじーんと熱くなる。］


　　　マナも、そうだよ
　　　ルーとずっとずーっといっしょがいい

　　　難しいかも知れないけど、がんばろうね


［繋いだ手をぎゅっと握った。］
　

　
［それにしても、
　マナのルーは物分かりがよくて心強いんだぁ。

　これまでは犬突猛進という感じで
　マナを押し倒したり
　引き摺るように駆け回ったり
　ちょっぴり幼い印象があったんだけど

　ひとの姿を得てから
　ぐっと大人っぽくなった気がする。

　どこまで魅力を増したら気が済むんだろ……。］
　

　

　　　うちのトイレでは
　　　そのスリッパを履いてね

　　　それからそこに座ってみて？


［お手洗いの前に着いた。
　名残惜しみながら手を解いてドアを開け
　ルーにトイレスリッパを履くことと
　便座に腰掛けることを促した。**］
　

　


　　　うん、がんばる…！



［ナーもやっぱり
　ずっとずーっといっしょがいいって
　思ってくれてたんだね。>>G2

　ばたばたばたばた。
　
　しあわせが、カラダの中で
　走り回ってるみたいだ。

　手をぎゅってされたのも
　うれしかったから
　ルーもした。ぎゅっぎゅっぎゅーって。］
　

　　
［ここが、トイレって名前なのは知ってる。>>G4
　ルーが入ったらいけない場所だから
　彼女が中にいる時は
　扉の外で、おすわりして待つのが習慣。

　出てきたら、すきすきって
　足にまとわり付いて
　くんくんって匂いを嗅ぐ。
　ナーのいい匂いは、どれも逃したくないからね。

　だけど、今は
　「ひと」になれたから
　入っても良くなったみたいだ。うれしい…！］
　

　
［尻尾をぱたぱた振りながら
　興味津々に中を覗く。
　白くて、あなの開いたイスがある。
　床にも壁にも、いろいろ。］



　　　‥‥すりっぱ



［彼女が教えてくれたとおりに
　足に引っ掛けるけど、なかなかむずかしい。>>G4

　これを履かなきゃいけないから
　前はダメだったんだね。
　足が４つだったけど、２つしかないから。］
　

　
［ナーに喜んでもらいたい一心で
　ずるずる、ぺたぺた
　スリッパを履いて、どうにか移動して
　イスの前で一瞬だけ固まってから


　　　（‥‥‥あ、　わかった！）


　便座の上に乗り上げて、またがった。
　ちょっと狭いけど
　この体勢なら、あなに落ちない。

　落ちないで座れはするけど‥‥］
　

　


　　　ね、あのさ？

　　　これだと、ナーに匂いつけられないよ？



［さっき言われたことを思い返し>>1:G1
　後ろを振り返って、困ったように訊ねた。*］
　

　
［いつもトイレに入る時はひとり。

　汚い床を踏んで欲しくないし
　おトイレしてる姿を見られるのは
　ちょっと恥ずかしいから……。

　出るとジャレついてきてくれて
　匂いを嗅がれちゃうから
　ウォシュレットで十二分に洗い流す癖がついた。

　臭いって思われたくないもん……。］
　

　
［すりっぱ、とルーが復唱する。>>G7
　ルーは履いたこと、なかったね。］


　　　うん、スリッパ
　　　両足を片方ずつ入れるんだよ


［そう言って教えれば、
　ルーはスリッパを履いて
　慣れない様子ながら便器に歩み寄って行った。］
　

　

　　　（ルーがスリッパを初めて履いて
　　　　こんなにしっかり歩いてる……ッ）


［実際にはずるずるぺたぺたしてても
　ダメ飼い主の目には美化されて映るもの。>>G8
　感動してうるっときていれば

　ルーが器用にも便座の上に両足を乗せて跨った。］
　

　
［ああそうじゃないよ、ルー。

　さっきの、手を繋いで嬉しそうに
　尻尾をばさばさしてる姿も
　失敗しちゃうところも
　ルーは本当に本当にかわいい。］


　　　ごめんね、マナの説明が悪かったね
　　　そこに乗っちゃいけないの
　　　一旦降りてきてくれるかな？


［優しく言うのは責める意思が一つもないから。
　ルーが愛おしくて堪らないから。］
　

　
［彼はスリッパで便座に乗り上げちゃってた。
　ルーのお尻が汚れないように
　除菌シートで便座を拭かなきゃと思うのだけど

　降りて貰いながら考える。

　匂いをつけていいのはマナにだけ、と言ったのは
　言葉の綾みたいなものだ。

　おしっこをかける以外にも
　身体を擦り付けるのも匂い付けの一種。
　そういうのはマナにだけしてねって意味だったけど……］
　

　
［かと言ってここでして貰ったら
　掃除が大変なのは目に見えてる。］


　　　……やっぱり場所、変えるね
　　　お風呂に行こ？


［繋ごうと、片手を差し出した。
　了承して貰えれば風呂場に移動して、
　風呂桶に湯を張りつつ、脱衣を済ませよう。**］