だけどそこには大好きな貴方の顔があって
　　　怪訝そうに見つめたはずの私の顔も
　　　数秒もたずに緩んでいくんだろう

　　　そう、多分
　　　私たちは��上手くいった�≠�だ。 *

だけどそんなことは些細なことだった。
大事なことは、今また二人は恋人になっていて、そして全てを取り戻したと言うこと。

一気に全てを思い出せたわけではなかったけど。

そう、俺たちは上手くいったんだ。

　だから小指のネイルはほんの少し剥がれた

運命という言葉を使うのなら、
きっどこの広い世界で出会えたことが運命なんだ。
互いに恋をすることは、そう、��当たり前�≠ﾈのだから。

　……ところで。

　綺麗な薬指と、剥げた小指のネイルはどうしたかって？
　きっと、翌朝出かける前にリムーバーで取り除いたの。


　「 紅い爪に似合う指輪を選んでも意味がないもの 」


　ずっと大切にする宝物だから
　いつもの私に似合うものがいい。

祖父曰く、恋天使の力が強くなったのではないかということだった。元々、宮々の中ではかなり力の弱い方だったのだけど。
ただ、そのせいで恋熱病の症状が強くでたのではないかとも。

家の人間以外にそれを知っているのは瀬里だけ。

今の蓮司は、宮々の本来の水準にあるらしい。

　

　きっと蓮司のビジネスにかかわることでは
　役に立てないと思うけど。
　


　だけど本当は何か、貴方の��役に立ちたい��
　話を聞いてあげることくらいは、
　きっと、私でもできるから。

　ううん、きっと、
　私にしかできないことが今はあるから。

　だから。何でも言ってね、って。　*

　

陶芸家の雨宮瀬里はきっと要らない。
お人形のような可愛らしい雨宮瀬里も。
あんな瀬里も、こんな瀬里もきっと要らない

俺の左隣には瀬里がいて、瀬里の右隣には俺がいる。

　

　恋の叶うBARを貸し切りにして、
　あの時の恋天使仲間をみんな呼んで同窓会をしたいな。
　BARがふたつある？集まりやすいほうでいいけれど
　バーテンダーがふたりいるから、
　いろんな味のお酒が楽しめそうじゃない？

　お願いしたら歌姫には歌ってもらえるかな。
　ほら、私たちなんかよりも早く結婚したふたりもいるから
　みんなを祝福するような恋の歌を。

　美味しいお野菜は農家の彼に任せよう。
　その時には私、自分で作った大皿、持っていくね。
　トマトととうもろこし、それからきゅうりも忘れずに。

　あとは手先が器用なふたりには
　私からこっそりお願いをするの。

　ひとつは手作りのリングケース
　もしできるならあの子に作ってもらいたいなって
　
　そしてもうひとつは、お揃いのアクセサリー
　これは婚約指輪のお返しに。
　私と貴方でお揃いの何かを作るなら
　やっぱりあの子にお願いしたいな、って。

　私の夢が、どこまで叶ったのかは………どうかな。

　

　そんなジンクス、きっと私たちには必要ないけど
　だけど私は、貴方としっかり手を繋ぐ。
　指を絡めて、決して離れないように。

　　　　あの日、貴方に今までで一番幸せかって
　　　　そう聞いたら、貴方は首を横に振ったね





　　　　…これはいつかの声。

　　　　あの日から、何度、私たちに
　　　　一番幸せだと思える日が訪れたかわからない

　　　　だけど、私と貴方はこれからも
　　　　ずっとふたり、離れずにいるの

それが全部叶えられたからわからない。
だけど、瀬里の語る夢を俺はひとつひとつ実現していく。

あの時、お見合いに集った面々の一人一人に連絡を入れて。
一人一人の都合を合わせて。


叶えられるものは、全て叶える。
叶えてみせる。

もう左目は何でもないのに。

そんなジンクスは二人に必要ない。
それどころか、そのジンクスの裏付けを今から二人で行うのだ。

　　　きっとね
　　　明日からの毎日も、
　　　今までで一番幸せだって言えると思う
　　　だって、貴方と一緒だから

　　　私たちが選んだ道。
　　　あの時離れなくて本当に良かった。

　　　ううん、離れていたとしても
　　　記憶が戻ったら、また
　　　貴方を探し求めていたかもしれないけれど

　微笑んだのは…それだけじゃないけど。
　　　
　　

お前が好きだと言ってくれたこの左眼。
今はお前しか写っていない。
この一瞬も、次の一瞬も、片時も逃さずにずっとお前を見つめている。

お前を選んだ。
二度、お前を選んだ。
自分で思っているよりも、遥かにお前を求めめいた。

それは今この瞬間も同じ。

だから、今が一番の幸せでも、
明日もまた今まで一番の幸せが訪れる。

お前が居て、俺が居るかぎり、ずっと。

　　　　それから ───

　

　ほんの少し離れているだけでも、
　いつだって貴方に会いたい、そう思う気持ちは
　週末デートのころと、なんにもかわらない。

　そうね。いつだって、毎日同じ感情を繰り返す。
　だけどそれが、たまらなくうれしくて、おしい。

　

　　　　　
　　私は恋をして、生きていく