人狼物語 三日月国


303 地久節に吟うprélude

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視点:


サレナ・アントワーヌ  男

    男

  男

3票

処刑対象:、結果:成功

[犠牲者リスト]
該当者なし

決着:村人の勝利

名前ID生死勝敗役職
孤城   master襲撃死
(2d)
勝利村人陣営:村人
  村人を希望
人形技師 サレナ・アントワーヌuebluesky生存者勝利村人陣営:村人
  村人を希望
今宮 水芭   生存者勝利村人陣営:村人
  村人を希望
  男yuma_werewolf処刑死
(3d)
敗北人狼陣営:人狼
  人狼を希望

村の更新日が延長されました。

村の更新日が延長されました。

【人】 今宮 水芭   

道行く人を弾き飛ばす勢いで隘路を走り抜けて駆け込んだのは、煉瓦造の頑強な大型建造物に三方を囲まれ、残る一方を川に囲まれた、閑散とした広場でした。

それまで何も訊かずに付いてきてくれていた学友の萩木が、息の混じる声で「そろそろ説明してくれないか」……と口を切った矢先、地鳴りが響き渡りました。

足元がすべり、地に膝をついてしまいます。
それでも顔を上げ、周囲に目を向ければ、探し物がまだ遠く空に映えているのが見えました。

文字通りの砂上の楼閣、とでもいうべきでしょうか。燃え尽きた薪炭がボロリと零れ落ちるように、高くそびえ立つ望楼塔は、呆気なくその頂上部を崩し壊れてゆきました。
(0) 2025/07/02(Wed) 2:33:36

【人】 今宮 水芭   

滑落する瓦礫は、そこからでは砂粒ほどにしか見えませんでした。
撒き上がった砂塵をなす一粒は、あの時展望室に居た誰かだったでしょうか。それとも、尾張だったでしょうか。

それらは外に投げ出されると一度フワリと舞い上がったものの、すぐさま重力に引かれ、墜落前の鳥のように加速してゆき、犇めく家々の屋根に叩きつけられていきました。

望楼塔に呼応するかのように、あちらこちらで続けざまに、重い物が崩れるような轟音が響きました。

黒煙の柱が何十、何百と立ち、空が赤く燃えるのが見えました。

私と友は互いの袖を握ったまま、都市が壊滅してゆく様を、まじろぎもせずに見詰めていました。*
(1) 2025/07/02(Wed) 3:08:48

【人】 今宮 水芭   

その後日常らしい日常が戻るまで、長い月日がかかりました。

消火、片付け、配給と、次々湧いてくる仕事に慌ただしくする傍ら、被害状況の報とともにあの塔の話も入ってきました。
凌雲閣は、ちょうど私達の居た八階から上が綺麗に崩れ去ったとのことでした。しばらく経ってのち、残った部分もろとも爆破解体され、今は跡形も残っていません。

尾張はあの日以来、学校に戻ることはありませんでした。
臨時休暇が伸びに伸び、ようやく授業が再開された教室には、少なくない数の空席がありました。
席のあるじは、運よく発見された者もいれば、見つからないままの者、状態がひどく推定に留まった者と様々でした。

倒壊による被害もさることながら、市内をもっとも蹂躙したのは随所の大火災で、焼け出された他校の生徒達が私の学校にやって来て、合同授業ということになりました。尾張の椅子はすぐに見知らぬ生徒の席となり、ぎゅうぎゅうの教室には、何かに蓋をするかようなから騒ぎに溢れ、そんな異様な空気のまま、毎日が忙しなく過ぎてゆきました。
(2) 2025/07/02(Wed) 22:10:48

【人】 今宮 水芭   

未曾有の被害によって日常が崩れた中でも、周りの生徒達も、大人達も、みな、立て直しに向けて粛々と日々をこなしているのでした。

街に出れば、焼け跡をざりざりと踏みながら竈を炊く人々が見え、物干竿に見立てられた鉄骨が煤まみれの布をはためかせていました。

やがて、見たこともない大きな車がやってくるようになりました。少しずつ、瓦礫が減ってゆき、
少しずつ、街路が、公園が、
新しい姿で作り出されてゆきました。

再起を願う人のしたたかさは、枯果てた大地を突き破って次なる葉をひらき、
街をふたたび緑に染めてゆくのでした。
(3) 2025/07/02(Wed) 23:18:56

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

サレナは、拾った人形を胸ポケットに送り入れ、ポケットから顔だけ覗かせる。
傍目には、可愛らしい状態になった。

つけられた痛々しい傷は、人形のためにも、人の目には触れないようにしたかった。
(4) 2025/07/02(Wed) 23:44:41

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

その場を去ろうとした矢先、野次馬の中に、地面に膝をつくように崩れ落ちている人物>>1:13
に目についた。
(5) 2025/07/02(Wed) 23:45:35

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

覚えがある。
昨日、商店街でパフォーマンスを披露した際に、最前列でサレナを窺うかのように見ていた少年だ。>>0:28

群衆が沸く中、まるで何かに逃げるかのように身を翻したその美しいブルーヘアーの後頭部>>0:31
が目に焼き付いている。
(6) 2025/07/02(Wed) 23:46:12

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

その美しい髪で、新たに人形を作れたらどんなにいいかしら。
なんて、男をいなしながら、ふと考えていたのだった。

サレナは、心の中で、その日の、ブルーヘアーの後頭部を心に描いていた。>>1:14
(7) 2025/07/02(Wed) 23:46:29

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

サレナは、するすると滑らかに動き、かの少年に背後から近付く。

ーーもっと、そのブルーヘアーを近くで見たいーー
その好奇心に駆られていた。

少年は、きょろきょろと辺りを見廻しているようだ。>>1:14
視線の先は、先ほどサレナが立っていた場所ではあったが、それをサレナが気に留めることはなかった。

同時に揺らめく直毛のブルーヘアーが、息を呑むほど、美しい。
(8) 2025/07/02(Wed) 23:54:13

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

「もし、大丈夫ですか?」*
(9) 2025/07/02(Wed) 23:54:42

【人】 今宮 水芭   

私はあの日以降、もちろん人並の悲哀と喪失こそ覚えながら、しかしどこか弛緩したものが心奥に巣食っていることを認めていました。

いつ来るとも分からない余震におびえる人々をよそに、もし自分の命に危険が及ぶならば、またあの幻覚とやらの警告があるのではないか……といった慢心が、私を彼らと同じ焼け跡という土俵に立たせずにいるのでした。

あれから幾度か、人の死に目を視ました。
それらの全てが、偶然の事故や、人の故意による、どこかの誰かの最期でした。いずれも、私が未然に防ぐことは叶いませんでした。

"夢"は、遠い将来の出来事であるほど抽象の度合いを増し、時期が近付くと具体性を帯びてくることが分かっています。抽象的な絵図の示唆するところは曖昧で、読み解きはほぼ不可能です。
(10) 2025/07/03(Thu) 1:18:08

【人】 今宮 水芭   

時折私は、地から足が離れてこの街を鳥瞰しているような錯覚を覚えます。
その時の私はなめらかに透き通っていて、生物としての重みを失っているので、あの時のように転げ落ちる心配もありません。

もとより断ち切られる筈であった糸を接いだ私は、本来生きる筈ではなかった世界です。
私が見ている新しい街並みは、一人で──いえ、正確にはもう一人を選んでいるので計二人で──友を見捨て、抜け駆けをして、得られた眺めなのです。
(11) 2025/07/03(Thu) 1:18:26

【人】 今宮 水芭   

背徳感を拭い去るため、起こるべき惨事を食い止めようとしたことはありました。
唐突に現れては他人に対して逃げるよう指示し、報道前に事件現場に急行したりと、わき目もふらず軽率なことばかりです。人目に付くことも当然でしょう。

何か物騒なことが起こる度に、そこに居合わせる人影がいる……そんな噂が流れるまで、さほど時間はかかりませんでした。

私の危なげな様子に家族が気付かないはずがなく、奇矯なふるまいをにらまれ、お父様に出された結論は「この子に勉学は毒である」という事でした。
苛烈な受験戦争に関しては、長らく問題とされ、論壇を賑わせているのは知っていました。自分の場合はそうではない……などと説明しようにも、大人を説得できる言葉はありません。

素行不良が直るまで家にいるように、という指示に逆えず、そのまま高校受験は取りやめになりました。
そして今に至るまで、学校にも行けず、実家暮らしです。
(12) 2025/07/03(Thu) 1:55:28

【人】 今宮 水芭   

これが私の病癖、私の過誤です。
私を支えるものといえば、共に災禍を逃れた友人の萩木から涙ながらに感謝を述べられたことだけでした。

兄の友人の口利きで、せめて文筆に携われるようにとコピーライターの仕事を貰い、生活の足しにしています。

本当のところは仕事がなくとも金銭には困らないのですが、手を付けたくないお金は無一文と同然ですから。
(13) 2025/07/03(Thu) 1:57:21

【人】 今宮 水芭   

  

 
「君の才覚は君一人では支えられないほど大きなものだ。
 我々は協力を惜しまない。
 次こそ共に成そうではないか、救世済民、尽忠報国を」

  
(14) 2025/07/03(Thu) 2:08:44

【人】 今宮 水芭   

  

  
(15) 2025/07/03(Thu) 3:08:59

【人】 今宮 水芭   

しばらく、呆けたように座り込んでいたようです。
例の遺体はとうに官憲の手で運び出されており、
残された黒い血溜まりは日射に水気を吸われ、その外周からだんだんと硬く萎れかけていました。

正夢の感覚を、久しく忘れていました。
焼き付けるようなイメージで強く揺さぶりをかけてくるので、私はいつも急き立てられるようにその場所まで引き寄せられてしまうのでした。

とは言え、せめて現場に急行する癖はどうにか改善しないと、また周囲に睨まれてしまいます。

早く帰らなければ。未だに力を失ったままの脚を持ち上げるようにして、その場より踵を返……
(16) 2025/07/03(Thu) 3:18:24

【人】 今宮 水芭   

『もし、大丈夫ですか?』

ぞく、と後頭部が総毛立つ思いがしました。
忘れもしません。冷徹さと温かみの入り交じったような、言い現しがたいその声色を持つ主を。
(17) 2025/07/03(Thu) 3:19:46

【人】 今宮 水芭   

人形の視線を感じるなどという予感が、現実のものとなってしまうとは。

まるで正夢の続きを見ているかのような錯覚に慄きつつも、一思いに首を回して声の主に相対しました。
行商の女の着るドレスは冬物のようにも見えましたが、彼女は暑気など微塵も感じない、昨日と変わりのない無表情をこちらに向けているのでした。
私は、内心の狼狽を隠すように

「あ、ああ……いえ、すこし立ちくらみが」

などと言って当たり障りない返しをします。
何でもないふうを装ってやり過ごそうとして、つい、彼女のその暑気をものともしない、涼しげな面差しに目が惹かれていきました。
(18) 2025/07/03(Thu) 3:44:17

【人】 今宮 水芭   

まるで陶器で設えたかのようにきめ細やかで、
近くで見るほどにうつつ常世とこよの区別のつかないほどに、一片の曇りもなく均整のとれた造形です。

その人形……いえ、行商の女に吸い寄せられるような感覚は恐れにすり代わり、私は堪らず目を逸らしました。

彼女のドレスからはもう一人、小さな人形の頭部が覗いています。
……こう見ると、やはり似ている。
二人はまるで親と子のようにこちらを真っ直ぐに見ているのでした。
(19) 2025/07/03(Thu) 3:56:53

【人】 今宮 水芭   

  

「では、これにて」

二対の視線に絡めとられる前に去らなければ。
そんな焦りは、私の膝をむなしく地面にめり込ませました。

立ち上がりざまに転ぶ私を見て、彼女は無表情を変えぬままなのか、それともその冷ややかな頬を持ち上げて微笑むのか、
私にはまったく想像もつきません。*
(20) 2025/07/03(Thu) 3:57:16

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

少年は、勢いよく振り向いた。サレナは、揺れた濃紺じみた髪を間近でまじまじとみてしまう。

彼は、どこかぎこちなく、狼狽の色が見える。>>18

「では、これにて」>>20

逃げるように焦るようにその場を去ろうとした少年は、改めて地面にめり込む。

サレナは、少年を慈しむように心からの笑みを浮かべて、手を差し伸べる。
少年は、サレナの手を取るのか、取らないのか。

そして、取るならば、血の気の通っていない冷たい手に、何を思うだろう。*
(21) 2025/07/03(Thu) 22:27:08

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

ーー時は変わり、これは、サレナが人形だった頃

人形技師の、レオ・オベールは、人生を賭けて等身大の作品を手掛けていた。
人形の名は、サレナ・アントワーヌ。

「さあ、目を開けてごらん」

優しい囁きに反応して、サレナのまつ毛が揺れる。
レオは、顔を覆うほどの白髪まじりの髭を蓄えており、傍目には表情が分かりづらいが、この時ばかりは、息を呑むのが分かった。
(22) 2025/07/04(Fri) 7:13:52

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

奇跡が起きた。
サレナは、まるで人間のように、瞳を開ける。

初めて認識する外界に、少し戸惑いながらも、目にも鮮やかに色が飛び込んでくる刺激を楽しむ。

サレナは、庭の中にゆりかごにすわっていて、周りには色とりどりの花々が可愛らしく顔を上げている。

視線を上げると、どこまでも透き通って高い空が広がっている。
山々は、すべからく紅葉し、青い空とのコントラストが綺麗だ。
(23) 2025/07/04(Fri) 7:14:09

【人】 今宮 水芭   

膝をしたたか打ち付け、
痛みが表情にでないように精一杯繕いつつも、
ばつの悪さについ目の前の相手の反応をうかがいました。

膝立ち姿のさえない私に、彼女はふっと口元を緩めます。
それは嗤笑でも朗笑でもなく、
包み込むような慈愛の笑みでした。
(24) 2025/07/04(Fri) 12:32:38

【人】 今宮 水芭   

この人形然とした女と、微笑むという行為が、私の中でなかなか結び付きません。
何者をも射貫くように思えていた透き通るような瞳は、今は優しげに細められ、さらにその奥に何らかの興味が躍っているようにも思えました。

彼女は手を差し伸べます。
やはり抜けるような白さですが、それは朝日を受けた柔和な白ではなく、海の底で仄白い内紫貝が闇に浮き出るような、妙に不釣り合いな白に思えました。
差し出された手を掴めば、何処か知らぬ処へいざなわれてしまう。そんな予感が、私の伸びかけた前髪を吹き抜けました。
(25) 2025/07/04(Fri) 12:47:18

【人】 今宮 水芭   

そして彼女に連れ去られた先は、グリム童話に出てくるような凍えた洞窟だった──

そんな光景を幻視したのち、彼女が手を差し出したのは私を立ち上がらせるためだ、と当たり前の事実に思い至ります。

自分の膝は相変わらず、腑抜けています。
(26) 2025/07/04(Fri) 12:57:02

【人】 今宮 水芭   

ひとつ溜息が漏れました。
意を決し、差し出された手を取ります。

庭下駄で地面を踏みしめて踏ん張るあいだ、彼女の手の上に少なからず体重をかけていた気がします。
女に対する態度としてまったく情けないことですが、こと彼女に対しては、そのようなことを気負う必要が無いことは、分かっていました。

「ありがとうございます」

起き上がって着流しの裾を払うと、改めて彼女に向き直りました。目の高さが近づき、その玻璃のような……いえ、本物の水晶の瞳を見つめ返しました。
(27) 2025/07/04(Fri) 17:08:02

【人】 今宮 水芭   

知ってしまえば不思議と、驚きもなく受け入れている自分が居るのでした。人らしからぬその掌は、夏らしい日差しの下でひんやりと心地よく、すべすべとしていました。

そして、かくいう私の握り返した掌も、きっとつめたいことでしょう。*
(28) 2025/07/04(Fri) 17:14:27

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

少年は意外にも、サレナの手を取った。>>27

というのも、サレナに対して、恐怖とも畏怖ともつかぬ感情を持ち合わせてるように見えたからだ。

少年は、律儀にお礼を述べて、サレナの瞳を正面から見つめた。
サレナの瞳は、希少なエメラルドグリーンの水晶で出来ている。
エメラルドグリーンの瞳の奥を覗いた者は皆、宇宙が広がってるような不思議な感覚に陥るだろう。
(29) 2025/07/04(Fri) 20:30:31

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

「貴方、お名前はなんとおっしゃいまして?わたしは、フランスから参りました、サレナ・アントワーヌ。人形技師ですわ。」

少年からスッと手を話、スカートの裾を摘んでうやうやしく、西洋風のお辞儀をする。*
(30) 2025/07/04(Fri) 20:30:54

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

ーー人形技師レオ・オベールと、人形サレナの物語ーー

「サレナ、世の中は、とても綺麗だろう」

硬そうにギギギと首を、レオの方へ向ける。

「お前の名前は、サレナ。サレナ・アントワーヌ。これから、人形技師として生きていくんだ」

レオは、続ける。

「おれは、レオ・オベール。人形技師だ。お前の父親であり、師でもある。これから、お前に教えなきゃいけねえことがたくさんあるんだ。」
(31) 2025/07/04(Fri) 20:36:58

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

サレナは、何かを伝えたいが、どのようにしたらいいのか分からない。

「サレナ、ものを人に伝えたいときは、口を使うんだ。そら、ここだよ。」

レオは、自身の口を大きく開けてみせる。サレナは楽しくなり、ふふっと吹き出した。

「そうだ、喋れたじゃないか。」

レオは、感極まってサレナを抱きしめた。そうして、サレナとレオの生活は幕を開けたのだ。*
(32) 2025/07/04(Fri) 20:42:19

【人】 今宮 水芭   

虚を衝かれました。
欧羅巴式のカーテシーなど、今まで受けたことなどなかったからです。

技師、というと専門の職業服を着た男達がする仕事のように聞こえますが、西洋では優雅なドレス姿の、一見工芸とは縁遠そうな人間でも技師になれるようです。
いえ、そも彼女は絡繰人形なのですが。

彼女の所作は人と見紛うほど滑らかで、それどころか人以上に完璧で、気品に満ち溢れているのでした。
(33) 2025/07/04(Fri) 22:47:15

【人】 今宮 水芭   

彼女が自分を憎からず思ってくれていると分かり、一度さざめいた心は徐々に凪いできました。

「……今宮……水芭 みずは
 その人形は君がつくったのですか。昨日の踊る人形達も」

私の名はよからぬ噂の元になるので名乗りの方は小声で済ませ、続けて聞きたかった事を問いました。

ポケットから覗く人形とサレナを交互に見、彼女が昨日、人形を「子供達」と言っていたのを思い出します。
一体彼らはどれほど精巧な絡繰なのでしょう。
気になりつつも、たとえその真相が、子供の頃に児童雑誌で読んだ"森の魔法"のせいと言われても、不思議でないように思えました。*
(34) 2025/07/04(Fri) 22:58:51

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

少年は、今宮水芭と名乗った。
水芭は、サレナの胸ポケットの人形を見つつ、尋ねた。

「水芭さんですね。素敵な名前。
『作った』…、そうですね、『生み出した』が正しいでしょうか、なんて」

サレナは、悪戯に瞳を光らせて答えた後、ふと気付いたように、目線を上に向ける。

「水芭さん、倒れてたせいかしら、砂利がついておりますわ」

サレナは水芭の髪を払う仕草をした。ひんやりとしたサレナの手が、水芭の髪にさらりと触れた。
(35) 2025/07/05(Sat) 9:53:52

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

「それでは、水芭さん、お会いできて光栄でした。」

サレナは背筋を正し、水芭に向き合い敬意を示す。

「私は、子供達、いえ人形たちが皆んな新たな生活に旅立ってしまったので、明日、母国へ帰国しますわ。
また定期的に日本で行商に参る予定ですの。お見かけしたら、ぜひ、寄ってくださいな」


「それでは、ごきげんよう」

手を顔のあたりに上げて、サレナはその場を後にした。*
(36) 2025/07/05(Sat) 9:54:38

【人】 今宮 水芭   

  

「生み出した……? 」

含むような言い回しにひそめた眉は、相手の思うつぼだったかも知れません。
石膏かブリキか歯車か、詳しいことは分かりませんが、人と異なる素材でつくられたその胸中も、抱えた腹の内も、どこか捉えがたく不可思議なのでした。

西洋式に刈り込んだ小庭で、サレナと子供達が、瀟洒な家具のミニチュアに囲まれながら飯事ままごと遊びをしている──そんな様子が胸に浮かんだのも束の間、彼女は一歩近づき私の髪に触れてきます。
(37) 2025/07/05(Sat) 13:49:13

【人】 今宮 水芭   

確かに私は先ほどまで地面にめり込んではいましたが、大の字に伸びていたわけでもありませんし、頭髪に砂利というのは腑に落ちません。
或いは風に捲き上げられた砂がついてしまったのでしょうか。

思案するうちに彼女の顔が近づきます。
上向いて日の差した双眸が、眼前に大写しになりました。

異国の海のようなエメラルドに、星々の散った虹彩です。
それは初めて見た時と変わらず惹きこむような求心力に満ちていましたが、
くらい誘引めいたものはなく、
それ自身が外界への興味に湧き立っているような、澄んだ煌きがあるばかりでした。

サレナが身を引くと、ふたつの翠玉はふたたび遠く離れ、
厚く揃えた前髪のひさしの下に収まってゆきました。
(38) 2025/07/05(Sat) 14:19:58

【人】 今宮 水芭   

彼女はもう帰ってしまうようでした。
しかし、またこの国に人形を売りに来ると言います。

仏蘭西フランスよりこの極東にはるばるやって来るのに、船に揺られる時間はかなりのものでしょう。ですが彼女は、そのような旅路など物ともしないようでした。

「ええ、この街の人らは西洋の新しいものが大好きですから、また存分に楽しませてやってください」

といって、こういう時は自分自身の感想を述べるのが先ではないか、と思いなおします。
(39) 2025/07/05(Sat) 14:41:15

【人】 今宮 水芭   

  

「またお会いしとうございます、サレナさん……貴方の人形を見に」

繕うかのように付け加えた最後の一言に、わずかながら失笑が零れました。

あとに続けた、そういえばポケットの一人は売らずに連れて帰るのですね……という問いは、厚手のドレスの煽る風に攫われ、届いたか分かりません。

「では、さようなら」

サレナは軽やかに身をこなし、男のように手を挙げて去ってゆきました。

私は彼女の雑踏に消えゆく後姿を見送った後、
人いきれに背を向け、来た道を戻ってゆきました。*
(40) 2025/07/05(Sat) 14:52:54

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

サレナは、数日の航海を経て、我が工房に帰ってきた。

厚いカーペットをめくり、現れたのは、地下への隠し扉。
両手で、ギイィ…と開く。

カツン…、カツン…、と、鉄製の階段を踏み締めるブーツの足音が闇に響く。

そこは、岩盤を荒削りに掘った、まるで洞窟のような場所だ。
(41) 2025/07/05(Sat) 19:47:03

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

広い空間に出た。
暗闇にポツンと作業台が置いてあり、仄かに青白いランプが光っている。

サレナは、人形のベースとなるベージュの素体を、優しく作業台に置く。

そして、シルクのハンカチを壊れ物を扱うように開く。中には、濃紺の髪の毛が数本出てきた。

サレナが目を閉じて祈りを捧げると、パァァっと洞窟全体に閃光が走った。

光が落ち着くと、作業台には、ちょこんと大人しく座っているブルーヘアーが特徴的な人形が出来上がっていた。
(42) 2025/07/05(Sat) 19:47:21

【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ

「水芭さん、また、お会いしましょうね」

ーfinー
(43) 2025/07/05(Sat) 19:48:51

【人】 今宮 水芭   

きょうは地久節の翌日です。
錦鯉の群れとばかりに掲げられていた日章旗は、今朝には大方片づけられていましたが、道ゆく中では幾つかひらめく日の丸に出会いました。

一人になると、サレナに遭う少し前から背後に感じていた気配が一段と濃くなりました。
素知らぬ振りをして歩いていると、目の端でとらえていた姿が時機を測るようにして徐々に近づいて来ます。
そのうちあたかも元々そうであったかのような自然さで、私たちは横並びに歩いていました。
(44) 2025/07/05(Sat) 19:55:29

【人】 今宮 水芭   

  

『久方振りだね、今宮君』
  
(45) 2025/07/05(Sat) 19:55:37

【人】 今宮 水芭   

背広姿をした上背のある男です。
肩肘の張った、自我の削ぎ落とされたような機械的な足運びから、相手がどのような種類の者かは知らずとも察せられます。

私が無言でいると、男は幼子に語り掛けるような声色で「しばらく歩かないかい」と言いました。
その物腰が作りものであることを隠す気はないようで、有無を言わさず私の袂をくっと掴みます。
(46) 2025/07/05(Sat) 19:59:44

【人】 今宮 水芭   

二人連れ立って向かったのは、人足繫ゆく商店街。
途中に、季節外れの鍋屋が仕込みをしていました。もこもこと長閑に立ち上る飛魚出汁の香気に、私の胃は悲しげに鳴きます。

鍋屋の前には古びた掲示板があり、地域新聞の号外が貼り出されていました。


  深夜に散る血飛沫 ザックリ帶迄おびマデ真ッ二つ
  年刺殺か斬殺か 幽靈ゆうれい侍の辻斬りか? 


  
(47) 2025/07/05(Sat) 20:16:33

【人】 今宮 水芭   

男はくぐもるようにして、一方的に口を動かします。

『ともに民を救おうといった事は覚えているかい』
『あれを実現できる手筈が整った』
『君にしか出来ぬことだ。三日後に来給え』

私の袂が、すとんと重くなりました。
三日後の場所とやらを書いた紙にしては、厚ぼったく沈むような重みです。おそらく札束でしょう。少し会話するだけでも、この男は律儀にこのような物を差し入れてくるのでした。
(48) 2025/07/05(Sat) 20:30:39

【人】 今宮 水芭   

男は、まるで人が人を追い越すときにそうするような足の早め方で、またたく間に消えてゆきました。

男が去った後でも、あの者のもつ灰塵色の空気がしつこく纏わりついてくるようで、早くそれを掃いたい思いに駆られました。

普段は足の向かない雑然とした繁華街に、自然と爪先が向きました。
赴くままに人混みの方へ踏み入り、相変わらずの暑気も今ばかりはさほど気になりませんでした。*
(49) 2025/07/05(Sat) 20:41:40

【人】 今宮 水芭   

三日後の昼下がり、私は狭くくらい会議室に居ました。
窓のない部屋は古びており、吊り下げられた裸電球がまたたく度に、蒸した室内の熱を増長してゆきます。

室内には男らが数名おりました。彼らのその誰もが私を興味深げに、されどどこか敬遠するように、無遠慮な視線を送って来ます。

会議室の中央には、大きな新しい机が他のものを退けるようにして幅をきかせています。
私はその机に、一人で座らされていました。
(50) 2025/07/05(Sat) 21:05:31

【人】 今宮 水芭   

  

『三日前の事件……そこで君の
視た
者を教えてくれ。
 焦る必要はない、ゆっくり思い出してくれていい』


青年の刺殺現場に私がかけつけたことの意味を察知し、接触してきた存在は、既に一年ほど前より少なくない頻度で私のもとに姿を現しているのでした。
とはいえ、こんなにも仰々しい場で証言を促されたことはかつてありません。

目の前の大机には、大量の写真がちりばめられています。
どれも人の写真です。記念写真のような、被写体が正面を向いたものはごく一部で、多くは物陰から密かに撮影したような、遠目で分かりにくいものばかりでした。
(51) 2025/07/05(Sat) 21:10:24

【人】 今宮 水芭   

私は目を閉じました。
月夜を背に腕を振りかぶった人影を、瞼の裏に映し出します。
背は五尺足らず、やせ型、派手な小袖、高帯……あの顔つきは確か……。

ふと、目に入る写真がありました。
と同時に扉の向こうで、ささめきあう声が聞こえます。


 『そんな大それた……人の道……』
 『亜米利加……西洋……女が……都合が良い……』

  
(52) 2025/07/05(Sat) 21:25:10

【人】 今宮 水芭   

会議室にいた男が一人、カツカツと外へ駆けていき、廊下の者らに怒声を浴びせました。

机を挟んだ正面には、三日前に逢ったあの灰塵のような空気を纏う男が、小動もせずに此方を凝視しています。

私は、顔を上げました。
目を二、三しばたき、男の方を見、首を振りました。
男は表情を変えぬまま此方をジッと見つめていました。

十秒ほどにらみ合ったのち、視線を外したのは私の方でした。
(53) 2025/07/05(Sat) 21:41:47

【人】 今宮 水芭   

『よかろう。また君に助力を請うことがあるだろう。
 世の為人の為だ、今後とも協力を願う』

そして、三日前よりもまして厚い封筒を手渡されます。
また、自室の抽斗の肥やしが増えてしまう……などと思いながら、押し付けるように渡されたそれを袂にしまい、席を立ちます。

帰り際は男のうちの一人から、やはりどこか隔てのある態度で見送りを受けました。
自分とさほど変わらぬ歳の男は、用を終えるとすぐさまそっぽを向き、舎内に引っ込んでゆきました。
まるで触らぬ神に祟りなし、とでも言いたげに見えました。*
(54) 2025/07/05(Sat) 21:43:38

【人】 今宮 水芭   

帰り際、五年間通った中学の横を通りががりました。
敷地内には、砂ぼこりを捲き上げながら、堅苦しい号令とともに一挙一投足をそろえる集団がありました。最近は、中学校でも隊列や行進の授業があると聞きます。
進学が叶わなかったことで、私は壮丁となれば兵隊に取られることとなるでしょう。
自分の諦めた高校で今日も机を並べているであろう級友らのことを考え、私はわだかまる思いで、とはいえ目を逸らす力もなく、ぼんやりと運動場を眺めていました。
(55) 2025/07/05(Sat) 21:48:08

【人】 今宮 水芭   

吹き上がる土埃と、灼けつく劫火の気配──

ここ数か月の夢について、その意味を考えたことはあります。
彼岸花の群生は死……それも大量の人死の表象でしょうか。
赤い空は二年前に見た空に通ずるものがあります。
しかし揺れる木々と空を泳ぐ鮫が引っかかり、想像はそこで打ち止めとなってしまうのでした。
(56) 2025/07/05(Sat) 21:56:04

【人】 今宮 水芭   

前回見た絵画のような絵図は二年前。あの夢は長きにわたって現れ、その時になって初めて実体を以てわが身に迫りました。
あそこまで抽象的な光景を見るのは、これで二度目です。

青年の刺殺も、その他も、もとより写真のように現実的で、そして現実とほど連動するかのようにの未来の様子なのでした。
(57) 2025/07/05(Sat) 21:56:34

【人】 今宮 水芭   

夢を見る期間と、抽象度。
それが、意味するもの凄惨さに比例するとしたら、今の夢は……?

頭上で、間の抜けたエンジン音が鳴りました。
郵便飛行機が、広がる空をひらくように泳いでいます。最近は航空便が空を行き交うことも珍しくなくなりました。
(58) 2025/07/05(Sat) 21:56:58

【人】 今宮 水芭   

鶯色の体躯。赤く燃える腹。
鮫はより大きく下の者を制するような気迫がありました。
あれの出現には耳を圧するような恐怖が伴うことは、よく覚えています。

その意味するところを理解するには、空はのどかで、人いきれはさざめいていて……。
(59) 2025/07/05(Sat) 21:58:56

【人】 今宮 水芭   

翠萌ゆる都市の中心で、
私は長い間、そこ場に立ち尽くし動けませんでした。


──prélude 完──
(60) 2025/07/05(Sat) 22:00:00
 




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