【秘】 親友 編笠 → 明日へ進む 青嵐「――っ」 バシィン! と。 背中を打擲する音が、高らかに青空に響いた。 手加減も何もないまっすぐな活は、 今何より自分に必要なもので――。 いつか俺のやらかしたことにこうやって、 お前がぶん殴ってくれる日もちょっとだけ願っている。 ――今頃になって気づいた。 アカネに言われ、夕凪の姉さんに言われ、アオに言われて。 何もかもが欲しかった。 失ったものを取り戻したかった。 この場所に永遠に保管して、大切に守っておきたかった。 でも、本当にそう思うなら。 ――迷わず言葉にして伝えるべきだったんだって。 (-9) 2021/08/17(Tue) 3:45:32 |
【秘】 親友 編笠 → 明日へ進む 青嵐気合が入った。熱が入った。 いつだって『編バカ』に火を入れてくれるのは『アホ嵐』だ。 どんな冒険だって乗り越えてきた無敵の二人が。 ――10年の時を経て、再びここにある。 「……よし。 ありがとな。 やっぱり、最初に相談するなら、お前だと思った」 倒しておいた自転車を立てて、再びそれに跨る。 「……結果がどうあれ、必ず報告にはくるから。 ……だから、そんときは、笑い飛ばしてくれよ」 そしてそのために。 今お前が地球上のどこにいたって。 ――また遊びに誘うから。 自転車の上から、ビシッと指さして。 「 ……おう、任せろ、アオ! 」そして再び、ペダルを前傾姿勢で漕ぎ出して、発進する。 ――目指すは、アカネの元へ。 (-10) 2021/08/17(Tue) 3:46:50 |
【置】 さよなら 御山洗カチカチと、いつしか時計の針が進む音を克明に聞いた。 霧がかった道が晴れていくように、頭の中の夢が色を失って消えていく。 そうだ。俺には、帰るべき場所なんて無い。迎え入れる親族はない。 親父の実家がどうなっているのか、今の俺に分かる筈もない。 夢の中の居処ががらんどうのようなのは――会うべき人がいないからだ。 「……俺は。もう、帰る場所なんて無かったんだな」 最初は本当に只々、昔過ごした場所を懐かしむひとつの郷愁によるものだった。 少年期を過ごした場所は何よりも大切なもので、自分を作り上げた愛おしいものだった。 だけどもう少しで、その外で生きてきた時間に追い越されて塗りつぶされてしまう。 消えゆくまま、過ぎゆくままに。その前に、もう一度だけ帰ってみたかったな、と。 自分が置き去りにしてきたこの村というものに、会いたかったのだ。 でも。その輪郭を思い出すほどに、俺は別のものを蘇らせてしまった。 夢が終わったのにも関わらず、胸を焦がす思いと心を失ったような空隙が消えない。 ああ、そうだ。帰りたいという思いは過剰に増幅された不自然なものだったとしても。 長らく患ってきた恋は決して誰かに煽られたせいではない、ほんものだったから。 夢が終わりを迎えたって、時間が過ぎ去ったからって、目が覚めるように消えるわけじゃない。 (L2) 2021/08/17(Tue) 4:44:50 公開: 2021/08/17(Tue) 4:45:00 |
【置】 さよなら 御山洗ふと、この痛みを負うことになったきっかけを瞼の裏の景色に思い出す。 十五年前。親父と母さんが喧嘩をして、三人で遊びに行く約束を反故にしてしまった。 両親は色絡みの揉めがあったわけではないが、生き方に無視できない隔たりがあった。 父は昔ながらの考えの人で、此処で働き母にもそれについてくることを望んだ。 母は先進的でそれに馴染めず、度々仕事の都合での不便を緩和しようと打診していた。 そうした話し合いが不定期にあることで、お互いへの不満が爆発することもよくあったのだ。 機嫌を悪くした二人に挟まれ、その日は外に遊びに行くことが出来ず閉じこもっていた。 そんな時。部屋の中で蹲って過ごしていた俺に、手を伸べたのが翔だったんだ。 こっそりと家の中に入ってきて、遊びに行こうと笑って。 思えば向こうからしてみれば、時間になっても来ないから迎えに来ただけだったのだろう。 大した意味もなければ勇気が必要なわけでもない、ほんの些細な行動だ。 けれども。それが、まだ子供だった俺には、何より喜ばしい救いだった。 自分に伸べられた手と同じくらい、こいつに与えられるものがあればいい、と。 それは独り善がりの思いでしかなくて、ただ子供ながらに抱いた望みでしかなくて。 そんなものが、どうしようもなく焦がれる想いになって、今の今まで心の中を占めている。 村を離れて、自分の人生を得て、恋人を持って、別れて、それでもまだ燻る熱が。 ――少年期が終わろうとしている。 (L3) 2021/08/17(Tue) 5:03:57 公開: 2021/08/17(Tue) 5:05:00 |
【置】 さよなら 御山洗カチカチと、いつしか時計の針が進む音を克明に聞いた。 水を吸った服をまとっているかのように重たい体をずるずると動かす。 夏の盛りにも関わらず、薄ら寒い感覚が背中をゆっくりと降りていった。 帰ってこなければ、この夢の中に呼ばれなければ、こんなに胸の苦しさを覚えずに済んだのに。 腫れた瞼から流れた涙が、皮膚を引きつらせてぴりぴりと痛み走る。 鉛のように重たい体を動かして浴衣に袖を通す。少し調整すれば見栄えに問題はないだろう。 薄灰色の浴衣は、まだひょろっとした子供だった頃に比べれば印象も変わって見えるのだろう。 十年。十年の時が過ぎ去って。 それはどんなに飾ってまばゆく見せたところで、思い出のものとは何もかもが違うのだ。 鏡の中に立った男は、山の中を走り回って三人だけの秘密を埋めた、あの頃の子供ではない。 終わらせなければ、夢の終りが訪れないのなら。 もう少しだけ見えない誰かに付き合えば、目が覚めてしまえるだろうか。 遠くに祭りの喧騒を聴いて、届かない手を思う。 (L4) 2021/08/17(Tue) 5:15:10 公開: 2021/08/17(Tue) 5:15:00 |
【秘】 無敵の二人 青嵐 → 親友 編笠「アキラは俺のこと買いかぶり過ぎ。 …って言いたいけど、嬉しいな、やっぱ。」 お前の隣はいつだって心地がいい。 似て無さそうで似てる二人だからか はたまた無二の友だからか。 きっと、そのどちらもなのだろう。 「おう、待ってる。 …別に、報告じゃなくてもいつでも来いよな。」 お前が来るか、俺が痺れ切らして行くか、きっとどっちかなのだろう。 その時は、またいつもみたいにバカやって、騒いで遊ぼう。 後先考えない俺のこと、今度はお前が止めてくれるよな。 俺達の冒険は、まだ続くのだから。 啖呵を切ってから勢いよく自転車を漕ぎ出した親友の背を いつまでも、いつまでも見ていた―――――。 (-11) 2021/08/17(Tue) 5:51:29 |
【独】 無敵の二人 青嵐「……おー、もう見えねー。 はは、俺のとこにもあんなチャリ飛ばして来たんかな。」 すっ転ぶなよーと口にしながら、 もうすっかり見えなくなった親友の事を思った。 俺は多分、まだ冒険の道半ばで これからもどんどん色んな事が起こるんだろうし その度に悩んだり傷ついたりするんだろうけど それでも、きっと大丈夫だと思えた。 お前がいるなら、どんな嵐でも、どんな大雨でも 俺たちは越えていけるのだろう。 (-12) 2021/08/17(Tue) 6:08:03 |
【独】 無敵の二人 青嵐空を見上げる。 きっと、もうこんな事は起きないんだと思う。 なんの因果か、神様の悪戯か、 それは分からないけど。 決して悪いだけのものではなかった。 だけど、いつか夢からは覚めるものだ。 俺の夢もそろそろ御終い。 ああ、どうか 青い嵐 <かれ> 彼の愛する人たちを励まし、 迷った彼らの背を押しますよう――。 その為なら、 青い嵐 <かれ> あなたの元にやって来るのです。 だって、それが、青嵐瞬の――唯一の願いだから。 ・ ・ ・ 青嵐…青葉のころに吹く、やや強い風。 瞬…またたきするひま。ごく短い時間。(一瞬、瞬間) (-13) 2021/08/17(Tue) 6:35:34 |
【独】 一人 卯波結局のところ、真正面からぶつかったり、 追いついた背中を押したりしているうちに、俺は誰の横にも並び立つことはなかった。 晶兄にはどうしても勝てなかった。 それに誰の一番にもなれなかった。 茜ちゃんの一番は晶兄で、 晶兄と瞬兄はお互い一番で、 ずっと、二番以下の一ノ瀬卯波。 四人でひとつなのに、 四角形の中にはいないんだ。 「だから、女の子らしくなんて、 願っちゃったんだろうなあ……」 時任の兄さんを思い出す。 夢の中でもあの人のように振る舞えたら、また何か違っていたのだろうか。 いや、結局のところ晶兄への嫉妬があった限り、何かが変わったわけじゃあるまい。 (-14) 2021/08/17(Tue) 10:04:21 |
【独】 一人 卯波一ノ瀬卯波がいなくても、 みんなはきっとうまくやっていける。 俺がいない間も、みんなは、 各々の人生を問題なく歩んでいける。 そんな自分の心の声に負けるのが癪だ。 誰かの一番になれなくったって、 俺がみんなを等しく一番に愛したらいい。 みんなの人生の一番綺麗な部分を、 切り取るのはいつだって俺にしたらいい。 “卯波は写真を撮るのが一番上手な子だった” それだけは、誰にも負けない、 確かで大切な事実なのだから。 晶兄との勝負だって、負ける気がしない。 (-15) 2021/08/17(Tue) 10:12:32 |
【独】 あなた達の写真家 卯波愛する友人たちが立ち止まるたびに、 押し寄せる波 ≪かれ/かのじょ≫ 例え呼ばれずとも、鬱陶しがられても、 夕焼け色の瀬 ≪かれ/かのじょ≫ 一ノ瀬卯波の夢はまだ形を得たばかりだ。 皆の人生の何処にでもついていって、 大切な時間の中に、一員として身を滑り込ませる。 茜色の空の下 、嵐の中、 傘を編む人へ 、波は漣漣とする。 それが、一ノ瀬卯波の思う、幸せだ。 (-16) 2021/08/17(Tue) 10:21:29 |
卯波は、皆の写真を撮った夢を、現実にする。 (a5) 2021/08/17(Tue) 10:27:25 |
卯波は、たった一人だけの。 (a6) 2021/08/17(Tue) 10:27:49 |
卯波は、あなた達の写真家だ。 (a7) 2021/08/17(Tue) 10:27:55 |
一人の、あなた達の写真家 卯波は、メモを貼った。 (a8) 2021/08/17(Tue) 10:38:45 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 数年前、夕凪たちがまだ、大人になる前のこと。 よく、みんなのことを思い出しては話をしました。 「これって、あ。卯波か、可愛いなーちっちゃくて」 「卯波くん? ああ、ひとつうえの子たちと結構遊んでた子だよね。 可愛かったなあ、たくさんじゃないけど覚えてるよ」 「なーんか誰かに似る気がするんだよね、兄さんとかじゃなくて。 それこそもっと上の兄さんとかからとか?」 「好きな人のまねをしたいって奴? どうなのかな。 案外自分らしく自分の武器で戦う子かもしれないよ、男の子だもんね。 会えたらどんな趣味が増えたのか聞きたいな」 (-17) 2021/08/17(Tue) 12:07:59 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 「茜ちゃん見た目結構変わったって聞いたんだけど、夕凪はみた?」 「ううん、みていないよ。茜ちゃんって、竹村茜ちゃんのこと? 昔は、小さいみんなと混じって遊んでた子だよね。 見た目――は黒っぽかったと思ってるんだけど、変わったんだ」 「なんか最近の若者らしくなったって母さんが言ってた。 女って本当に変わるよな、――夕凪が珍しいくらい」 「私も変わったよ? ほら、えっへん」 「……???? どんな風に変わったか気になるな……。 ちょっと構いたくなるような子だったから」 (-18) 2021/08/17(Tue) 12:09:27 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 「あ、こういう木のよじ登り方添木くんにおしえてもらったな」 「時々私をのけ者にしていたやつね? 女はってすっごく悔しかったんだから。 夜凪だけ特別扱いされてたんじゃないの?」 「僕からみたら夕凪だけ特別扱いだよ。 そういうんじゃなくってさ、男同士の……秘密っていうか。 欲しかったわけ! そういうの教えてくれた兄さんだったよ」 「そんなロマンで小さい頃の私を拗ねさせていたのなら、 添木くんにあったら一発入れたいわ? 髪の毛の色かわってちょっとびっくりしたけど……」 「あれは僕もびっくりした……黒ってなんかしまっていいよね。おとなっぽい。 でもーおそろいの色好きだし、僕たちはこのままがいいな」 (-19) 2021/08/17(Tue) 12:11:50 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン…… 「嘘つきって言うと、花さんの事を思い出すね」 「私、花さんのこと好きだったからあんまりその噂信じていなかったの。 だけど、みんなが言うならやっぱりそうだったのかしら」 「それは、あの周りの人しか知らなかったかもしれない。 僕たちは少し離れていたから。……でも、嘘を作ってどうしてだと思う?」 「隠したいものがあるからかしら? 言いたくないことの代わりに言うとか。 そういうのが当てはまるような気がするわ」 「僕は、―――そうだね。黙っていたい。 本当のことを言わなければ伝わらなくてすむから、かな」 「難しいことを言うわね夜凪、でもね。 お話ししていたら、黙っていてもわかるわよ。 あなたのことも、嘘つきさんのことも」 (-20) 2021/08/17(Tue) 12:13:53 |
陽は落ちぬ 夕凪は、メモを貼った。 (a9) 2021/08/17(Tue) 12:40:21 |
【神】 影法師 宵闇【4日目 『不発弾』処理】>>4:G39 >>4:G37 何かに呼ばれるように、誘われるように足を運んだ先。 記憶違いでも、夢でもなかったらしい。神社の大樹の近く、清和と百千鳥がなにかを掘り起こすのを見て、男は確信した。 「よう」 浴衣姿だった。祭りに行く予定だったのだろうか。 その服装には似合わないギターを手に持っている。 「もう少し遅れてくるべきだったかなー……」 掘り起こすのは骨が要りそうだったから。見た目通り細身の男は力仕事は得意じゃない。それにあの時一体何を入れたのか、男はおぼろげにしか覚えていなかった……おそらく。一体どんな爆弾が埋まっているのか、恐ろしさ半分、好奇心半分だった。 (G1) 2021/08/17(Tue) 15:51:54 |
【神】 影法師 宵闇>>4:G67 鬼走【3日目 夜時空】 「いいんですよ。実際本当に人を愛せたかというと怪しい」 探していた。この何かが足りない気持ちを、満たしてくれる何かを、誰かを。 夢でも見ている「そう見えますか」と笑い交じりに聞き返す。 けれどふいに伏せた目は憂いを湛えていた。 「俺、は。そうだ、ずっとさ…… ここでの生活……いやこの田舎の風景。 ──アイツらのことを考えて、曲を書いてたんだ。 けど、それだけじゃあ"売れなかった"」 都会に出てきた頃は夢を両手いっぱいに抱えていた気がする。 離れてしまっても、どこかで聴いてくれると願って。 そうだ、音楽が、好きだったんだ。 あの日々が、そうさせてくれたんだ。 「メジャーデビューした時の曲なんかさ。 ただ大衆にウケそうなきれいごとを並べて いや、売れることしか考えてなかった……それだけの曲さ」 こんなこと、自分の曲が好きで聴いてくれる人間が聞いたら 石を投げられそうだ。 「最初は嬉しかった。途中からなんだかそれが苦痛に思えてきた」 「俺ってもしかして向いてないのかも」 紫煙と一緒に、軽い調子で弱音を吐いた。 (G2) 2021/08/17(Tue) 17:43:10 |
【神】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>G1 宵闇 【4日目 『不発弾』処理】 「……あ、翔兄!」 遅れてやってきた男の声にぱっと顔を上げて、 続く言葉に非難の声を上げた。 心からの、というよりはやはり軽口じみたものだけど。 「サボろうとしない!もう随分遅れてきてるんだから!」 (G3) 2021/08/17(Tue) 18:38:11 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>@1 >>@2 夜長 「会いたいよ、夢から覚めてもずっと」 どこか憂鬱そうに笑う。 それでもその言葉は本心からのものだった。 「…この夢は、ずっと楽しかったよ。 だから続けていたかった。それこそ夢のような話でも。 もう会いたくない人なんて一人だって居るわけない。でも」 「だからお別れが寂しいんだ。」 楽しい時間はいつか終わってしまう。 夢は覚めれば色褪せてしまう。 そんな当たり前の事が嫌で仕方ない。 嫌で仕方ないのに、過ぎた事になれば熱は冷めてしまう。 愚かなくせしてまた明日、を愚直に信じる事もできやしない。 そんな自分が何よりも嫌で仕方なかった。 (8) 2021/08/17(Tue) 18:55:32 |
【見】 天狼の子 夜長>>8 百千鳥 【祭りの終わり】 こっくり、頷いた。 「さみしいのは、俺も」 「この夢にいた人、みんなみんなで、こうして一緒に集まるという のは、とても難しかったと思う。夢でもなければ、本当に。 特に俺は、ほとんどが話に聞いただけの人たちで」 「……ああ、モモチには今言っておきたいな。 最初は俺も分かっていなかったが、 俺は父さんでなく晴くんなんだ」 雪子と和臣の息子の、小学2年生の晴臣。そう説明される。 「晴臣」と直接言えないので、少しややこしかったかもしれない。 「俺は、本当はここに来たことがない」 夢から覚めたら、会いにいける人には直接会いに行きたいから。だからその時にか、もしくは雪子さん伝手に、この夢にいたのは和臣でなく晴臣だと伝えるつもりだった。 けれど夜長は、百千鳥に対してはなんだか大人の皮を被っていたくなかった。いやそれよりも、晴臣として今話したかったが正しいだろう。 夜長本人も、それは自分の中で形になってはいないが。 「家族揃って来るのが一番だったと思うが、そうはなって いなくて。家族の中で誰かひとりだけというのなら、 俺でなく雪子さんがいた方が良かっただろう」 「でも、俺がここに来たことを、母さんは喜んでくれる」 (@3) 2021/08/17(Tue) 20:46:23 |
【見】 天狼の子 夜長>>8>>@3 百千鳥 【祭りの終わり】 「……言いたいことがまとまらないな」 夢から覚めて、すぐには会いに行けないのを知っているから。だから今、目の前のさみしいをどうにかしたいのに。どうしたらいいのかわからない。夜長は知っていることしか知らない。 聞いたことがないことは、知らないことだ。 「モモチは、こうしてお別れでさみしくなるくらいなら、 はじめから夢を見なければよかったと思う人ですか?」 だから聞いて、知っていることを増やしたい。まとまらない言葉からでも、何かこぼすことがあれば、そこから知れることがあるのと思っている。 あなたのことが知りたい、そう素直に思った。 (@4) 2021/08/17(Tue) 20:47:41 |
【人】 親友 編笠砂利道を、上り坂を、道なき道を、下り坂を。 息を切らせてペダルを踏んで駆け回る。 居そうなところ、思いつく場所を片っ端から自転車で周り、 小一時間もしたところで、強烈な『違和感』に気づく。 流石に、思いつく場所は全部探し終えた。 ――ここまで、どこにもアカネが居ないのはおかしい。 額から滴る汗を掌で拭いながら、 高く登る太陽を仰ぐ。汗が出るのに、喉が渇かない。 そうだ、都合のいい世界で、ここまで都合が悪いのは、 なんらかの作為があるはずだ。 考えろ。 考えろ、考えろ、どんなに探しても探しても、 アカネの元にたどり着けないことの意味を。 「っ、はぁ……はぁ……!」 ▼ (9) 2021/08/17(Tue) 21:00:04 |
【人】 親友 編笠>>10 そこにたどり着くと、 ――自転車を叩きつけるように置いて、 流石に全力で漕いで来たので膝に手をついて長く息を吐いた。 その俺の隣を――子どもの姿の―― "添木の旦那"と"清和の旦那"が追い抜いていく。 汗に塗れた顔で、その後ろをよろよろと追いかける。 子どもの添木の旦那が、公民館の番号錠に手を掛ける。 それは、この村での記憶の"残像"だ。 "この村のカギの番号、全部頭に入ってるんだ。" 嘘吐けよ。子どもの頃は、間違いなくそう思ってたけど、 どこに侵入するにも番号錠をすぐに開けてた姿を覚えている。 だから――添木の旦那が言ってたそれは、 案外誇張なしで本当だったのかもしれない。 それを証拠に、俺が教えてもらった番号に錠を合わせると、 "見事に鍵は開かなかった"。 ……そうだった。俺たちが特に悪さをした大抵の施設の鍵は、 ある時期を境にドアの鍵を無意味なものにした添木の旦那のせいで 片っ端から取り換えられてたんだった。 本当、つくづく思い通りに行かせてくれねぇあの旦那! ▼ (11) 2021/08/17(Tue) 21:09:33 |
【人】 親友 編笠>>11 "ここに関しては覚えなくても大丈夫だ。こうすれば開くから"。 子どもの清和の旦那が、ドアの枠ごと上に持ち上げた状態で、 ドアの左下を蹴る。物理的に老朽化した鍵が跳ねて、 ガチャンと目の前でドアが開く。 俺もそれに倣い、ドア枠を持ち上げて同じ個所を蹴ると、 番号錠を無視してドアが開いた。 ……ホンット。 「ただただ冒険の仲間に入れてほしかっただけのガキに、 悪いことばっかり、教えてくれてんなっ……あの二人! おかげで、めちゃくちゃ助かったよこの野郎……!」 歯を剥いて、笑ってしまった。 こんなに愉快なのは生まれて初めてかもしれない。 俺たちが公民館に忍び込む理由だった『それ』の場所も、 もう俺にはわかっていた。 それは、"田舎"には絶対にあるものだ。 そしてそれは大人たちが用意に子供には触れられないように 普段は隠されているものだ。 でも俺は知っている。悪い年上のせいで、知っていた。 ――俺は、 トランシーバー をひっつかむと。それを肩から下げながら公民館を出て、再び自転車に跨った。 (12) 2021/08/17(Tue) 21:14:26 |
【神】 編笠――田舎には、その声を端まで届けるスピーカーが必ずある。 緊急時や災害時に、通信手段を持たない村には、 その声を村の端まで届けるその装置が必要不可欠だった。 だから俺たちにとってはそれは絶好の遊び道具で。 そしてこの村のその発信機は、トランシーバーの形をしていた。 これを勝手に持ち出したときが多分、 俺たちがこの村で一番怒られたときの記憶だ。 あのときは大声で言った俺の" ちんこ "が村の端までエコーを伴って響き渡っただけだったが、 今度は違う――今度は明確な意図を以って、 そのスイッチが入れられる。 自転車をこぎながら、トランシーバーに口を当てる。 『……あー、テステス、こちら編笠晶。 あー、悪ぃ、後で死ぬほど怒っていいから、 ちょっとだけ話を聞いてくれ……』 ▼ (G5) 2021/08/17(Tue) 21:31:37 |
【神】 編笠>>G5 この世界の意味を、理由を、真実を、 皆がどれくらい知っているかはわからない。 でもそれは、俺が伝えることじゃない。 そんなことじゃない、俺が伝えたいことは。 『……" 助けてほしい "んだ。村の皆に』ずっと言えなかった。たったこれだけのことを。 子どもだって言えるそれを、俺はずっと言えずに黙って俯いてた。 『人を探してるんだ。 絶対に会いたいやつがいるんだ。 そいつに、直接言葉を届けないといけない。 でも、それは今の俺じゃできないんだ。 そして一人じゃ、絶対にたどり着けないと思う。 だから……ちゃんと言葉にして、 この言葉に耳を傾けてくれるお人好しな誰かに。 今度はちゃんと言うから…… "助けて"ほしいんだ ……!』トランシーバー越しに、スピーカーから音が鳴り響く。 (G6) 2021/08/17(Tue) 21:33:04 |
【神】 編笠『みんな知ってると思うけど、俺多分バカなんだと思う。 一人でどうにかできるかもしれないなんて思って、 子どものくせに背伸びして、大人の振りしてたら、 少なくとも自分の事褒めてやれると思ってた」 母親が居なくなったとき、俺は泣かなかった。 卯波が、青嵐が、茜が居なくなったとき、 ずっとここにいてくれなんて言わなかった。 何処にもいかないでくれなんて誰にも言わずに我慢していた。 悲しいから、一人だから、寂しいから。 だから助けてっていう言葉を言わないことが、 孤独な自分が惨めにならずに済むための唯一の道だと思ってた。 でもそのために飲み込んだ涙のせいで、 俺はその先10年の涙を失った。 泣き叫べばよかったのに、追いすがればよかったのに。 俺とずっと一緒に、大人になってくれって、 ――ちゃんと伝えればよかったのに。 (G7) 2021/08/17(Tue) 21:36:05 |
【神】 編笠「だけど、俺はまだクソガキのままだってようやくわかった。 ――何もかも間違ったあとで、 自分一人じゃどうしようもないって分かって。 だから……10年経った今こんなことを言うのは虫がいいけど。 助けてほしい。 ここから先、この田舎から出たとき 俺は、人を探して歩こうと思うんだ。 伝えたい言葉があるから、話したいことが、 たくさんあるから……! でも俺一人じゃ全員を探し切ったりできないから、 だから……もし俺がこの村の誰かに、 ここから出て出会えたら――。 もし知ってたら、そいつの居場所を教えてほしい……! どうしても会いたいそいつに、ここじゃない場所で、 ちゃんと伝えたい言葉があるから……!!」 そして伝えたい言葉がある者がこの田舎にいるなら、 俺がそうやって架け橋を作るから。 もう出会えない人もいるのは分かってる、 でも今からでも遅くない相手に、伝えたい言葉が山ほどある。 (G8) 2021/08/17(Tue) 21:43:07 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波「もう少し、 カッコつけて言えばいいのに」 いざ、境内に踏み入ってくるならば、 神社の枠の中にそれらを囲うならば、 卯波は、しっかりとその声に応える。 「俺……場違いだと思うんだけどなあ。 いつも遅れて後ろをついていったり、 急に先走ってどっかいっちゃったり。 四人組って枠組みに相応しくないよ。 それでも、俺の名前も呼ぶなんてさ。 情けのつもりなのかは知らないけど」 そうして踏み出し、わずかに微笑んで。 意味がない写真をバラバラに引き裂き、 わーっと、 風に乗せて 遠くに散らした。 (_1) 2021/08/17(Tue) 22:06:11 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波そう。全部意味のないものだ。 それでも撮ってしまったものだから、 こうして、解き放ってあげる。 もう一度、皆を写真に収める日のために、 今、やっと、夢から決別する。 いくつもの写真は、 季節外れの白いカケラに成り果てて。 「でも。やっと気づいてくれたんだ」 そっと、手を差し伸べる。 届く距離にはいないし、ただのポーズだけど。 何度も示してきたから、もう一度。 「手を貸してあげる。 俺だって、あちこち駆け回って、 みんなを探しにいくんだもの。 でも、これは競争ですよ。 俺は、晶兄より先に見つけて見せる」 (_2) 2021/08/17(Tue) 22:11:49 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波「会いにいってあげて。 ここでも。ここから帰っても。 どんなに時間をかけても、絶対」 「その行く末を撮るのは俺なんだから。 絶対、悲しい写真にはしないでください」 手を戻し、背中を向けて。 顔だけ振り向けば、何がおかしいのか、 にやにやとした笑顔を見せて、 「遅いよ、バカ」 と言い残し、走り去っていった。 (_3) 2021/08/17(Tue) 22:18:13 |
【妖】 無敵の二人 青嵐「……おー……… 多分俺今いい感じにエンドロール流れてたんだけど もう出番な感じ?…しょうがねぇなぁ…」 響いた声の方向を見ながら愉快そうに笑う。 軽口の返事はないけれど、それでも心は満たされていた。 「田舎のいいとこその1、人が優しい。 その2、人も優しい。 その3、人たちが優しい。 っつーことで手伝ってやりますか。」 昔から、目立つのだけは得意だ。 だから、俺が目印になるから ―全速力で、走ってこい。 祭囃子の比なんかじゃない、 でっかい声でここだと叫びながら 皆をみつけて、お前も、見つけてやる。 「あ、でも見つけたら俺が満足するまで冷やかしの刑だな。」 笑って、 村を、山を、海を、 4人で駆け回ったあの日みたいに 俺もまた走り出した。 ($0) 2021/08/18(Wed) 1:23:35 |
【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥「本当に、仕方ない人ばっかりなんだから」 ざあっと木立が戦いで、その向こうに誰かの声を聞く。 その声を代弁するように一人呟いた。 「人が何かを抱えられるのは両腕の数まで。一遍にはね」 「でも一つずつ順番に手に取れば、ほんとはもっと持てるはず」 「もう手放さないようにしなね、どっかの誰かさん」 形を保ったままの石畳を踏んで、背を向けた。 夢はもう手放した後、でも今から拾い集める事はできるから。 「──さ、行こう 。」 (*0) 2021/08/18(Wed) 2:50:44 |
【赤】 学生 涼風「ねえ、待ってモモ」 一人分の足音に、もう一つだけ加えられる。 私は貴方を一人にした。 貴方が心の内に何を秘めているかも知らないまま、招かれた者としての立場で夢を見てははしゃいでいた。 だから、貴方を追いかけて傍に行こうとするのは今更遅すぎることなのかもしれないけれど。 「ねえ、モモ。これから君はどうするの?」 (*1) 2021/08/18(Wed) 3:02:03 |
【赤】 学生 涼風「……編笠くん」 小さな影を追う前に、聞こえてきた声の方へと振り返る。 何もかもが遅いと言われても仕方がない。それでも、声をかけたくて。 「君は遠くから眺めていたことの方が多かったけれど。それでももし、許されるのならば。 ……どうか私に、君を応援させてほしいな」 勿論ここを出てからも君のことを手伝うつもりだ。 伝えることの大切さは、もう痛いほど理解したから。 貴方にも、後悔なんてして欲しくなくて。 だから、そっと声を風にのせる。 涼やかな風が、ふわりと流れていく。 「……頑張ってね」 (*2) 2021/08/18(Wed) 3:09:32 |
【独】 宵闇──夢の終わりを告げる声が聞こえた。 ここに残ってと呼ぶ声も、誘う声も、 もう聞こえなくなってしまった。 「やっぱり、夢だったんだな」 自分でも驚くくらい覇気のない声が出た。 夜は明ける、夢はいつか終わる。 泡沫のように夜に溶けて消えていって 疲れることなんてなにも考えなくてもよくて 思い出だけを抱いて漂っていたかった 夢を、ずっと見ていたかった。 でも古民家<ピアノ教室>が本当はもう存在しないように あの頃には、戻れないんだ。とっくに知っていた。 いい、夢だった。子供の頃に戻ったみたいで。 田舎への想いは消えたわけじゃない 男はずっと過去に囚われていたけれど それは現実から目を背けたいだけだった。 ──いい、夢だった。 だけど、それだけで終わらせるには胸中に悲しみが滲んだ。 夢だったけれど、胸に抱いた想いは本物だった。 (-22) 2021/08/18(Wed) 6:05:19 |
【独】 宵闇──考えている。 ──ずっと、考えていた。 祭囃子の音を遠くに聞きながら 人ごみの中をさ迷うように。なにかを探すように。 「どうして、俺だったんだろうな」 誰に届くこともない問いかけが夜の空気に溶ける。 彼になにか特別なことをしてやれていただろうか。 幼少の時のことをぼんやりと思い返す。 いつも自分勝手に振り回していた記憶ばかりだ。 好きになるなら、ルカのほうだっただろとさえ思う。 (-23) 2021/08/18(Wed) 6:09:03 |
【独】 宵闇男は清和を、羨んでいた。 自分には、なんとなく言われてやっていた音楽くらいしかないのに アイツはあちこち飛び回って、色んなやつに影響与えて なんでもできて、風みたいだったし、光のようなやつだった。 あいつが光ならば、自分は、影。──いや闇かもしれない。 光にどこまでもついていく影ほど、近くはなかった。 男は清和のようになりたかったのだろうか。 だから意地なんて張って"プロになる"なんて宣言して。 たくさんの人間に影響を与えるような人間になりたかった。 でも、沢山の人間に向かう器用さはない。昔も今も。 挫折さえしそうな今だ。 だからいつも、子供の頃は近くにいてくれた御山洗を引っ張っていた。それでも嫌な顔ひとつしない、御山洗がいることで安心していた。差し出した手を、取ってくれる彼を。 ただの、自己満足だった。 (-24) 2021/08/18(Wed) 6:11:13 |
【独】 宵闇ふ、と顔を上げる。 「……なんだ。さわがしいな。 やっぱりなかなかやるね、小さいほうのアキラくんは」 ──編笠の放送を聞いた男は、ひとり呟く。 がむしゃらに駆け回っていた青春時代を思い出して 少し胸の奥に火が灯るような気さえした。 俺もできるだけ手伝うよ、少年。と呟く 元の生活に戻ったら。この夢でのこと なんならラジオで彼と彼女の盛大なるラブソングでも 青春ソングでも流してもらおうかと、笑う。 曲が書けないだなんて、言ってられないな。 少しはこの村で、年上らしいことをしてやりたい。 「俺も、後悔しないようにしないとな」 (-25) 2021/08/18(Wed) 6:17:16 |
【独】 さよなら 御山洗聴こえてきた声は遠く遠く山の端まで響いてしまいそうなものだった。 この虚構の楽園の中で、それでも足掻いて、届けようという声がある。 まだ、追いかけているのだ。夢の中の残影を、思い出を。 靄の中に映り込んだ蜃気楼のような夏に、心を曝け出して。 彼らは現実に繋がり続けるための叫びを伝えようとしているんだろう。 「……敵わないな」 少しだけ吐息のこぼれたような笑い。あんなに真っ直ぐには、いられない。 だからこそ縁側に続く扉を明けて、澄み渡った空を見上げる。 せめても彼らの願いばかりは、見届けていたいと、そう思ったのだ。 ……それは在りし日の自分が背を向けたまま不発弾の奥底に閉じ込めたものだから。 同じ道を、彼らが歩んでしまわないように。その背に続く路のないように。 夢の終りが早く、だれかの望ましいかたちで、訪れますように。 (-26) 2021/08/18(Wed) 14:58:22 |
【人】 未来へ 竹村茜「……アキラ」 境内の裏、少女は懐かしい出来事を思い出すような 村に響く音を聞いていた。 あの頃は馬鹿な言葉を叫んではこっぴどく叱られたっけ。 「馬鹿だなあ、それじゃあ皆に聞かせてるみたいじゃん。 男らしいってそういうことじゃないでしょ」 耳に届いた声は、夏の隙間を通り抜けて、さわやかな一陣の風のように頬を撫で。 少女は嬉しさと照れくさい気持ちで、胸がいっぱいになる。 ▽ (14) 2021/08/18(Wed) 17:01:00 |
【人】 未来へ 竹村茜「……ありがと」 境内の裏から姿を見せた少女は、晴れやかに笑って。 「でも、その言葉……ちゃんと、会えた時にもう一度聞かせてよね。 それで、皆の事探して―――今度こそ、"また会えたね"って言って、話をしよう。 あたしも、手伝うから」 不器用で、こうするまで人に頼ることすらも出来なかった幼馴染に。 手を差し伸べて、笑う。 きっと見つけて、この手を取ってくれると信じられる。 また皆で。そして、貴方と一緒に未来を見たいから。 (15) 2021/08/18(Wed) 17:02:02 |
【人】 編笠>>15 アカネ 少しだけ視線を逸らして、頬を掻いた。 卯波が踏み出し、アオが踏み出し、 アカネが目の前にいる。 「皆知ってるだろ、馬鹿なんだよ多分。 だから、また馬鹿だなって笑ってほしいんだ。 ……ここにいる俺は、 村のどこにいたって聞こえる声しか出せなかったけど、 世界のどこにいたって、また声を伝えようって思うから」 だからこれは、告白ではなく宣言だ。 今から何百回、何千回と繰り返し伝える言葉の、 覚えていないかもしれない最初の一回だ。 一番恥ずかしい思いをさせたら、 もしかしたら永遠に残るかもしれない。 その胸の高鳴りを抱いたまま、 いつか俺が来るのを待っていてほしい。 同じ空が続く、世界のどこかで。 ▼ (16) 2021/08/18(Wed) 21:35:15 |
【人】 編笠>>15 アカネ 「ああ……任せろ。 どこにいたって、どんな姿をしてたって。 必ず見つけてやるから。 自転車の後ろに乗せるから、皆に会いに行こう」 手を取る。差し伸べられた手を握ると。 そこには10年前に欲しかった温もりがあった。 「……ごめんな、アカネ。 俺はお前を、 卯波を、青嵐を。 永遠に夢みたいな楽園にいさせてやりたかった。 これは、掛け値なしに本当の気持ちだった。 でも、どうやらそれは無理みたいだから――」 だから。 「――お前のいる"現実"を、 夢みたいな場所にすることにした。 今度は、諦めたりしねえから。 ……アカネが味方なら、百人力だしな」 ▼ (17) 2021/08/18(Wed) 21:36:45 |
【人】 過去から 編笠>>15 アカネ ばあちゃんみたいに、全員を一気に集めるとかできないから。 だから俺は、一つずつ繋いでいく。 糸を編むように、繋げていく。 出来るかなんてわからない。何年かかるかもわからないし、 その間にほどけて行くものがあったとしても、それでも。 それが今の俺に出来る、精一杯の感謝と謝罪だ。 握ったアカネの手を引き、相手の背中を抱いて。 その耳元に頬を寄せ――。 ……静かに、今度はアカネにしか聞こえない声で囁いた。 「―― だから"未来"で待っててくれ 。"10年前"から、一気に自転車ぶっ飛ばして。 必ずお前に「好きだ」って言いに行くから 」だから今は、少しだけお別れだ。 青く、青く澄んだ空の下で。 伝えられなかった言葉を、静かに伝えた。 誰かが、微笑んでくれているのを感じながら。 (18) 2021/08/18(Wed) 21:40:07 |
【人】 未来へ 竹村茜>>18 アキラ あの頃触れなかった手は、ずっと大きくて温もりがあった。 夏の暑さとは別に、握った手が熱を持って存在を主張する。 「あたしだって、そうだったんだよ。 婆ちゃんがいるこの夢にずっといたいって思ってた。 そうあれば幸せだって信じてた。 だけど、アキラの言う通りそれは叶わない 泡のような夢でさ」 それでも。 「"忘れてきたもの"が、あたしを―――皆を、前に向かせてくれたんだ。 アキラや卯波、シュン達と未来に行きたい。 そして、婆ちゃんに『あたしも負けないくらいオシャレになったよ』って報告したいから」 夢も叶えたよって。ずっと話せなかった分、目いっぱい。 ▽ (19) 2021/08/18(Wed) 23:53:14 |
【人】 未来へ 竹村茜「……うん、うん。 待ってるよ、皆より一足早く辿り着いたところに、あたしはいるから。 だから、今度こそ――― 男らしいところ、ちゃんと見せてよね 」くすぐったいような、耳元の声に頷いて。 そのまま、こつんと額をくっつける。密着した顔が、熱くて仕方ないけれど。 あの時のように、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。 それ以上は、"未来"までお預けだ。 大丈夫、もう10年待つ事はないんだから。 待ってるよ、同じ空の下で。 (20) 2021/08/18(Wed) 23:57:52 |
竹村茜は、未来で待っている。 (a10) 2021/08/19(Thu) 13:28:28 |
【秘】 宵闇 → さよなら 御山洗これはひとり祭りをさ迷った後 三人で埋めた秘密を暴きに行った後 そして、だんだんと夢が綻んでいくどこかの時 男は、一方的に吐き捨てた再会の言葉通り、御山洗を探していた。あの時は夢がこんなにすぐ終わるとは、思っていなかったから。 ──彼はまだ、家にいるのだろうか? そうでなければ、どこにでも探しに行く。 夢が終わる前に、夢が終わるとしても さよならをするとしても 男がこのままいい夢だったと終わらせるには 寝覚めが悪かったからだ。 話を、したかった。 (-27) 2021/08/19(Thu) 18:54:58 |
【秘】 さよなら 御山洗 → 宵闇>>-27 ――まだ、祭りの終わりきらない頃。夢の覚めやらない頃。 少年たちのまばゆい夏が、未来に向けた約束を遂げた頃。 御山洗はまだ家にいて、縁台から花火を見上げていた。 ぱらぱらと降り注ぐ光の帯は夢の中でも美しいもので、きっと、誰かの思い出なのだろう。 こんな田舎で打ち上がるにしては数も多く規模も大きくて、きっと、こんなに裕福なら。 都市開発に負けず、この集落もいつかのままの形で残っていたのかも知れない。 空を彩る花火の音が、細かな音をかき消して。 誰かが訪れたのだということに、未だ気づけずにいた。 見上げる顔は色とりどりの花に照らされて、目に七色が映り込んでいる。 (-28) 2021/08/19(Thu) 20:51:10 |
【秘】 宵闇 → さよなら 御山洗>>-28 男は探し人の姿を認めると、色とりどりの光を背に歩む。 しばらく思い出に照らされるその横顔を立ち止まって見ていた。 話しかける機を伺っているのかもしれない。 一際大きな花が夜空に咲き、男の黒も鮮やかに照らされた。 そして、訪れる少しの静寂。 「よう、アキラ」 いつもの調子で、名を呼ぶ声が響く。 昼間のようにはしゃいだ風ではなく落ち着いた声だ。 (-29) 2021/08/19(Thu) 21:53:46 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>@3 >>@4 夜長 【祭りの終わり】 「そうだね」 夢を見せるなら、最後まで騙していてくれたらよかったのに。 この夢も、この祭りも なまじ楽しいと思ってしまえるから、 尚の事終わりが来る事の寂しさが募る。 この夢の終わりを感じ始めてから、何度も思った事。 「うん、夢を見せ続けてくれないなら、初めから。 皆には、きっとこの夢が終わっても会いに行けるよ。 でも、僕が本当にこの場所で会いたかった人には 夢から覚めたら、何処に行っても、もう会えないから。」 思い出の中にしか居ない人には、思い出の中でしか会えない。 見ないふりをしていた事実を改めて、喪失感が蘇って行く。 どうにもならない想いを抱えて、それでもと言葉を継いだ。 「でも、この夢で 皆と過ごした時間が楽しかったのは本当のこと。 『みんな』と『この村で』会う事はもう叶わなくても 僕が思っていたよりもずっと、 皆は過去に縋り付く事無く"今"を生きていける人達でも 僕はそれならそれで、どうとでも納得する事はできてしまうし 呼子姉が皆を好きだった事も、無かった事にはならないから」 (21) 2021/08/19(Thu) 22:10:03 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>@3 >>@4 夜長 【祭りの終わり】 「呼子姉もきっと 僕が皆と、また昔みたいに遊んでいられた事 よかったねって言ってくれるとは思うんだ」 「でも、だからやっぱり寂しくて。 呼子姉と一緒に来て、一緒によかったねって笑いたかった。 それはもう叶わない事だから、 いつまでも考えたって仕方ないのにね」 淋しげに笑って、晴臣へと片手の小指を差し出した。 目の前に居る人が、和臣でなく晴臣だという事は 夢の残滓がそうさせるのか、大して違和感も無く腑に落ちて。 「ね、晴臣くん。 僕はきっと、それでもずっと同じ事を考え続けてしまうから また会いに来て、君達の居る"今"を大事にできるように。 いつか遊びに連れ出しに来て、考える暇も無くなるように。 …またいつか、約束してくれる?」 (22) 2021/08/19(Thu) 22:12:44 |
【秘】 君ぞ来まさぬ 百千鳥 → 学生 涼風神社の境内を後にして、人の手の入っていない雑木林を抜けて 二人言葉も無く歩いて、暫くの後。 「……これからどうするの、だっけ」 徐に口を開いて、そう零した。 「どうもしないよ。 って言うと多分、誤解があると思うんだけど… この夢にやり残した事は無いから、今まで通り生きてくだけ。」 今まで通り。 可も無く不可も無く生きて、 時々過ぎた事に後悔をして、それから。 「いくつか探しものはしないといけないみたいだけど。」 (-30) 2021/08/19(Thu) 22:53:18 |
【秘】 さよなら 御山洗 → 宵闇>>-29 一瞬夢を見るような顔をして、今しがた飛び起きたように目を見開いた。 前髪の向こうに透けた表情は驚きでいっぱいになっている。 薄灰色の浴衣の袖が縁台の上で引きずられて、指先が強張った。 疑うような諦めるような、未だ信じきれていないような顔をして。 「……ゆ、め……?」 (-31) 2021/08/19(Thu) 23:36:51 |
【秘】 宵闇 → さよなら 御山洗>>-31 首を傾げた。そんなに驚くことだろうかと言わんばかりに。 「……さあ。どっちだろうな? お前はどっちがいい?」 おどけたように話しながら、からころと下駄を鳴らし 目の前までやってきて、少し困ったように笑う。 「言わなかったっけ"またな"って。話がしたいって ……だから来たんだけど。ダメだったかい」 また逃げられてしまうだろうか、それは悲しいな。 目の前までやってきて、手を差し出す。 それが取られようが取られまいが言葉は続く。 「なあ、少し外歩かないか」 閉じこもってばかりでは気が滅入るだろう、と。 もう夢は終わる。この思い出のままの村の姿は もうなくなってしまう。だから、最後に見ておきたかった。 (-32) 2021/08/20(Fri) 0:41:32 |
【秘】 さよなら 御山洗 → 宵闇>>-32 喉が嗄れたように声はうまく出てこず、短い息が漏れた。 目元から鼻に掛けては赤く腫れていて、情けない顔をしている。 "また"、都合のいい夢をみているのではないかと、自分の願望で汚していやしないかと。 泣きはらしてぼんやりとした頭のまま手を浮かせて、そのままそろそろと触れる。 見上げた顔に、ああ、と。懐かしいものを感じて、また鼻の奥が痛む。 「……どうして、来たんだ」 身勝手な物言いだなと思った。勝手に耐えきれなくなって、突き放して。 宵闇の言う通り、なにも納得させられるような話なんてしていないのに。 それがいいものでも、わるいものでも――ここはゆめのなかだから、自分の願望なのではないかと。 そこから先を求めることに怯えて、逃げていた。 唇を引き結び、差し出された手にこわごわと手を乗せた。触れ合う箇所は着いては離れて落ち着かない。 距離感を測りかねるようにかさついた手が触れて、ゆっくりと立ち上がる。 見下ろした目線の高さの違いは、いつかのものとはだいぶ違っているように思う。 (-33) 2021/08/20(Fri) 2:36:00 |
【神】 公安警察 清和>>G4 宵闇【4日目 『不発弾』処理】 「遅れてきた分、残りは全部カケルにやってもらうか」 なんてな。と悪戯っぽく冗談めかして言いながら笑う。 浴衣姿にギター、その次はスコップとミスマッチな姿がおかしくって。 なんだその格好、と思わず小さな笑みが零れる。 しかしそれも、最後のひとりが来ないと聞けば少し曇ったものになり。 「……そうか。 なら、この不発弾処理も、随分と大仕事になりそうだ。 埋める時も、アキラが一番頑張ってくれてたからな…… やっぱり、いてくれないと困るんだよな。 アキラは、自分なんかってよく言ってたりしたけれど……」 清和や宵闇と比べれば、御山洗はどこか退いた位置にいたと思う。 自らの皆の憧れの存在であろうとする振る舞いもそうする一因ならば、 そうさせてしまった自分の罪なのかもしれないと少し罪悪感を感じた。 (G10) 2021/08/20(Fri) 3:34:17 |
【秘】 宵闇 → さよなら 御山洗>>-33 「"ばーか。なに泣きべそかいてんだ。 お前がいつまでたっても来ないからだよ"」 なんてな、子供の頃のような戯言を吐いた。 細いけれどしっかりとした手が、大きな手を引く。 一歩踏み出す、夜に溶けそうな後ろ髪をふわりと翻す。 今や見上げるほど大きな彼を一瞥した。 田舎の夜道を照らすのは、時々上がる花火と 月明かりがほとんどだ。 男は、こうして夜に出歩くのが好きだった。昔も、今も。 「どうして、か。聞きたいのは俺のほうなんだがな。 お前が抱え込んでたもの……全部この耳で聞きたかった。 俺は言葉を音楽にして届ける仕事をしてる。 だから大事さは知ってるつもりだ」 長い前髪が風に乗って、横顔の目元を隠す。 焦がれるほどに誰かを好きな気持ちを抱いたことがない男には きっと、全部は理解できないのかもしれないけれど。 だからこそ、図々しく聞こうなんて思えるのだろうか。 「……じゃあ先に俺もなんか言うか? 祭り一人で行けって言われて割とショック受けた」 夢が綻び始めた夜の道 あてもなく歩く先にはなにがあるだろう。 (-34) 2021/08/20(Fri) 11:02:01 |
【神】 宵闇>>G11 清和 百千鳥【4日目 『不発弾』処理】 曇った表情の清和に少しばつが悪そうにした。 「……アイツは約束破ったことなかっただろ。 だから来れないのは、俺のせいだ」 子供の頃も男が振り回したりしたせいで 彼がなにかを守れなかったことが、あったかもしれない。 淡々と話しながら、幾分か真面目に掘り進めて ついに中身が開けられるときにぼんやり思ったのは 自分がなにを埋めていたのかよりも、御山洗のことだった。 「まずい、10年前の俺なら……エロ本入れてるかも。 モモチは見ない方がいいかもしれない」 冗談ひとつ、スコップを置き、不発弾の中身を覗く。 カセットテープや、写真、何かを書き残したらしいノート。 男子高校生が埋めるものなんてこんなものという平凡なもの。 当時は面白がってなんでもかんでもいれたのかもしれない。 → (G12) 2021/08/20(Fri) 11:21:29 |
【置】 あの頃の 宵闇──宵闇 翔『不発弾 <タイムカプセル> 』の主な中身『一枚の写真』 10年前の三人が自分を中心に写っている。 卯波少年からもらった(宵闇談)ベストショット 背景は宵闇の家の前、今の田舎そのままだ。 『カセットテープ』 当時宵闇が文化祭のバンドでボーカルをやった ──という設定で歌っている流行りのロックな歌。 今聴けなくてよかったかもしれない。 『ノート一冊』 なにやら色々な言葉やらくがきが書きなぐってある。 村の人たちの名前、料理のレシピのようなもの。 いわゆる、混沌と化したポエムノートかもしれない。 『楽譜』 10年前、初めて自分で作詞作曲したもののようだ。 『薄っぺらい紙切れ』 "10年後の清和へ、お前はたぶん今彼女いないに5000円賭ける" と書いてある。バカ。 (L5) 2021/08/20(Fri) 11:24:14 公開: 2021/08/20(Fri) 11:25:00 |
【秘】 さよなら 御山洗 → 宵闇>>-34 変わらない言葉を掛けてくれるのだと、変わらず手を伸べてくれるのだと。 こらえきれずに瞼に溜まっていた涙がぽろりと目頭から落ちて、 それだけで揺らぐくらい色んなものがもろくなっていることに、自分で笑ってしまう。 見下ろす目はまだ恐れていて、怯えていて、壊れ物を見るように愛しさで溢れている。 「……それは、ごめん。 一緒に行くなんて、もう出来ないと思ってたから」 御山洗はどうして彼が帰ってきたのか、わかっているようでわからなかった。 急なことで何もわからなかっただろうというのはわかるのに、 それでも遠ざけきれず、遠ざけられきれなかったのは、不思議でしょうがなかった。 「俺は、同じくらい三人でいるのが好きで、楽しかったから。 もし不用意に口にしたり態度に表れたら、もうあんな風に遊んだり出来ないんだって。 そう思ったら……もう絶対に誰にも言わずにしまっておけば、今まで通りにいられる筈だって。 ずっと、昔から、そう思ってた」 実際にはここに帰り着いて、胸の中を占めていく心に耐えきれず鬼走に打ち明けたりもした。 自分の意思で抑え込むよりも育っていく願望を恐れている事ごと口にして、満足しようとしていた。 懐かしさの中に抱いていたいつかの面影や今の宵闇に対する思いは、 結局ふとした瞬間に耐えきれなくなって口を衝いて吐き出されてしまったのだけど。 下駄の歯が控えめに地面を叩く音ばかりが耳に響く。 指先まで心臓の鼓動が伝わるくらい、やけに血が集まって熱い。 細い蜘蛛の糸のようにつながっているだけの手は、ガラス片のように剥がれ落ちそうだった。 「言うつもりなんてなかったのにな」 (-36) 2021/08/20(Fri) 12:59:46 |
【置】 いつかの 御山洗──御山洗 彰良『不発弾 <タイムカプセル> 』の主な中身きっと二人の入れたものより、内容は少ないのだろう。 『一枚の写真』 三人が遊んでいる風景の写った写真。 村の大人に、もしかしたら鬼走かもしれない、撮ってもらった写真は、視点が高い。 思い思いのポーズをとっていて、薄い写真からでもそれぞれの性格が現れるようだった。 『MDプレイヤー』 ずっと昔に御山洗が使っていた。一枚のMDディスクがそのまま入っている。 好きな順番で録音された中には、清和や宵闇の勧めた曲が入っているのだろう。 "11' 夏"とラベリングがされている。 『フォトブック』 料理の写真と料理名や感想が乗っている。 清和の家でいただいたものや集落の外で外食した時のものばかり。 そんな機会は少なかったのか、後ろの方はページが余ってしまっている。 『押し花の栞』 ベゴニアの押し花がプラスチックに挟まれている。 (L6) 2021/08/20(Fri) 13:10:38 公開: 2021/08/20(Fri) 13:10:00 |
【秘】 宵闇 → ただいま 御山洗>>-36 「そうか」 どうしてか遠ざけきれなかった男は、眉を下げて笑う。 見上げた先の涙を見れば、どうしても、あの時の表情が浮かぶ。 苦痛を堪えるように目を伏せる姿──同情だろうか。 過ぎ去ってしまった日のことはもうどうにもできないけれど。 「ごめんな」 お前はひどいやつだ、と言われたのを思い出して自嘲する。 彼の気持ちを知りたかった、手を取って振り回すのではなく 隣で歩いてみたかったのだ。もう、あの頃の自分のままではない。 「お前がそんな想いずっと抱えてたなんて知らなかった」 昔。10年もだろうか。忘れられてもおかしくない長い月。 男はそんなに想われるような価値のある人間だっただろうか。 「俺、いつもお前を振り回してばっかだな。大人になってもさ」 こうして手を引いて歩いていても、伝わらないことだらけだ。 男の手は体温が低くて、すこしひやりとしている。 (-37) 2021/08/20(Fri) 16:23:15 |
【秘】 ただいま 御山洗 → 宵闇>>-37 「いいんだ。隠してたんだから、知られてないならそれでよかった。 今だって困らせてるのは俺で、翔が悪いことじゃないんだから」 遠巻きにする手、遠巻きにする言葉。泣いて萎れた頭はなんだか遠い風景のように隣を見ている。 見納めるように横顔を見つめて、視線が輪郭を滑っていく。 いつかも、この夏も。ずっと見つめていたもの。風景の中にある彼を見ていたのだ。 年甲斐なくはしゃいでる姿も、バーベーキューにかぶりつく様子も、 日の傾き始める空と海の間にある姿も、等身大の彼を。 「……ありがとうな。連れてきてくれて」 きっとこれで最後になるのだろう、それを視界に収めてられるのも。 きゅうと指先を皮膚の固くなった手が握る。 握りしめているのに、身動ぎしただけでするりと落ちそうなくらい脆い。 (-38) 2021/08/20(Fri) 16:45:18 |
【人】 過去から 編笠>>23 凪 ――俺は、静かにその言葉に応える。 「……ああ。分かった、姉さん。 それだけは、絶対に約束する。 俺も自分の気持ちに、はっきりとケリをつける覚悟、 姉さんのお陰で出来たから。 お互い、どこまで覚えているか分からねえけど、 だからこそ意味のある約束を、ここでしよう」 言いながら、目の前の誰かに、小指を差し出した。 それは意味のない約束だ。 ここから出たときに、夢から覚めた後に、 どれくらいそれを覚えているかは分からない。 ましてや本人でもなければ、今のままの姿とも限らない。 それでも、今ここに居る俺たちの間で約束をすることが、 必ず意味を持つ。 (24) 2021/08/20(Fri) 19:34:14 |
【人】 過去から 編笠>>24 夕凪 「……俺が出来る限りの何もかもを引き連れて、 必ず、会いに行く。夕凪の姉さんが思っているよりも、 もっともっとすげえものを見せるために、 ちゃんと自分の声を伝えに行く。 ――今なら、 自転車一個でどこまでも行けそうな気するんだ。 夢のような言葉も、夢のような現実も、 何もかも持って行くことを、ここで約束しよう」 だからこの"初恋"だけは、 もう少しだけ決着を先延ばしにしておく。 これは間違いなく、"本人同士"の問題なんだから ちゃんと失恋なりなんなり、しにいかねえとな……。 「なあ、こっちからも一つだけお願いしていいか、 ――『夕凪の姉さん』」 相手に、静かに尋ねる。 (25) 2021/08/20(Fri) 19:35:43 |
【秘】 宵闇 → ただいま 御山洗>>-38 沈黙。いつしか頬を撫でる風は潮風になっていた。 ──すこし遠くに、しずかな海が見える。 「なあ、」 ふいに見納める視線から逃げるように手が離れて行った。 男は少し先を歩くと、数歩先で振り返る。まっすぐ視線をやる。 「昔からって10年以上も俺のこと好きだったってことだよな。 やっぱりさ、この夢の終わりに語るには時間が足りないだろ」 「それに、まだ話は終わってない」 「俺は最初からこれを言うつもりでお前に会いに来た」 ──そして、楽し気に目を細めた。 「俺さ、驚いた、知らなかった、とは言ったけど お前の告白に対する返事をまだ"ちゃんと"してないんだよな。 ずっと考えてた……これは、本音だから真面目に聞いてくれよ」 「きっともう、ここ <同じ景色> には二度と帰ってこれないから」この場所に未練を残すのは勘弁だ。 せめて、おかしな夢だったと笑い飛ばしたい。 → (-39) 2021/08/20(Fri) 19:52:35 |
【秘】 宵闇 → ただいま 御山洗「俺は、アキラのことは好きだ──友人としてな。 お前が手を取ってくれると安心するんだ。 好きだと言われて、嬉しかったよ」 これはいつもの軽口ではない、嘘偽りのない言葉だ。 「俺とお前の好きが違うことは百も承知で言うが だからって……このまま手放したくもない。 傲慢だと思うかい、俺はいつも満たされない気分で一杯だ」 想いが両立しないときはどうしたらいいなんて、ひとつだ。 「なら俺が、考えを変えよう。変えたい、そう思った」 いつまでも同じ考えに囚われる必要を捨てる。 それに、やっぱりお前が悪いとは少しも思わないからだ。 そう思わせてしまうほど、きっと心に灯がともってしまった。 これで最後なんて、やっぱり寝覚めが悪いんだ。 どう思われようが構わない、きっと、後悔はしないだろう。 思い出は思い出のままだ。壊れはしない。 あの時楽しかった日々のままだ。 誰がどんな気持ちを抱いても、そうだ。 一歩、また一歩と近づく。目の前までやってくる。 御山洗の胸倉をつかんでぐいと引き寄せる、二つの影が重なる。 → (-40) 2021/08/20(Fri) 19:59:25 |
宵闇は、御山洗に口づけをした。 (a11) 2021/08/20(Fri) 20:02:26 |
【秘】 貴方の隣に 宵闇 → ただいま 御山洗「……どうだ、参ったか?」 顔を離すと、不敵に笑む顔が間近にある。 思い出でも今でもなく"これから"を見つめていきたくなった。 ただ、それだけ。もう、夢は終わるのだから。 (-42) 2021/08/20(Fri) 20:02:54 |
【秘】 ただいま 御山洗 → 貴方の隣に 宵闇>>-39 >>-40 >>-41 >>a11 >>-42 宵闇 夜の海は空との境界を失くしてどこまでも真っ暗なそれらが続いているみたいだった。 黒い髪に、黒い浴衣。時折ぱらぱらと光の粒を振りまく花火が、そこにいると教えてくれる。 やっぱり、海が似合うなと思った。掴みどころがなくて、波間の泡沫と一緒に流されていきそうで。 「うん、……うん。 きっとお前が思いもしない頃から……そうだったんだと、思ってる」 望みのないことだというのも、それ以上に何もかも終わらせてしまう一言だということも。 その先に何かあるだなんて思えなかったし、思いつきもしなかった。 瞼を閉ざすようにその先を閉ざされてしまうくらいなら、何も聞きたくはなかった。 だから逃げて、突き放した。その先を聞かなくて済むように。 けれども今彼が続く言葉を告げるというのなら、それを止める術もまた、なかった。 明かりになるようなものはほとんどありもしないのに眩しそうに目を細める。 告げられる言葉のひとつひとつを拾い上げて耳に入れる。返すのは小さな頷きばかり。 どんなことを望み、声にしているのか。望んでしまいそうで、期待してしまいそうで。 浮つきそうな気持ちを、きっと違うと押し止める。自分の都合のいいように思ってしまいたくなくて。 立ち尽くしたまま下がった指が、袖口に寄った皺の形に癖がついてしまいそうなくらい力を込めている。 → (-43) 2021/08/20(Fri) 20:34:57 |
【秘】 ただいま 御山洗 → 貴方の隣に 宵闇>>-40 >>-41 >>a11 宵闇 「でも――」 形のないものを恐れてまだ駄々を捏ねようとしていたのだと思う。 変わらないままでいればいい、変わらないままでいることがいいと信じてきたから。 喉の奥に封じ込めてきた思いを飲み下してしまえば丸く収まるのだと思っていた。 だからこそ何も聞かずに逃げ出したのだし、何も耳に入れようとせず。 じっと蹲ったまま時が過ぎるのを待っていた、それでいいと思っていた。 自分の上背が落とした影の中で睫毛が動くのを見ていた。 息のかかる感触があって、触れ合うものがあって。 指折り数えるようにそれを確かめて、声の近さに気付かされて。 「――」 まだ胸の奥で都合のいい事を押し込めるものがある。 それを、彼の声がそうではないと引きずりあげるのだ。 俺にとって都合のいい夢がそこにあるのではなくて。 情けなく蹲った俺に、自分で選んで手を伸べてくれたのだ。 歩み寄って、声を掛けて。いつだって、そうしてくれたように。 立ち竦んでいる腕を引いて光のある方に連れて行ってくれたのはいつだって。 (-44) 2021/08/20(Fri) 20:35:14 |
御山洗は、宵闇を抱きしめた。 (a12) 2021/08/20(Fri) 20:35:42 |
【秘】 ただいま 御山洗 → 貴方の隣に 宵闇>>-42 宵闇 「――……降、参……」 しゃくり上げて閉塞した喉からやっと出たのはそれだけだった。 涙が絡まってほとんど言えたかどうかも怪しいくらい。 背中に回したのは片腕だけ、それも一歩退かれれば押しのけられてしまえそうなくらい遠く。 それでもごく微かに背に支えたてのひらは、そこにある体温を確かめている。 うなだれた頭が側頭部に寄せられる。めちゃくちゃになった顔を見られたくなかった。 互いの髪越しの体温はほとんど通い合わなくて、がさがさと音がするばかりで。 ごくかすかに頭の重しを乗せて、腕の中にあると、きっとそう信じて良いのだろう音を聴いている。 (-45) 2021/08/20(Fri) 20:39:20 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>25 編笠 「……大げさ。 それでも、夕凪は楽しみにしてる。 怪我してこないでよ、…急ぎすぎないで。 夕凪は、ただ。 こんな約束ができただけで、十分なんだよ」 小指を絡めただけの意味のない約束。 少年はなにに固執していたのか、今になってわかったような気がした。 編笠の"夕凪たち"に対する気持ちが聞きたかったのだ。 夕凪として聞きたかったのか。 夜凪として聞きたかったのか。 今となっては混ざってしまって明確にするのは意味をなさないだろう。 一度でも任せてしまいたくなったこの気持ちも。 一度でも隣を夢見た形にならないこの気持ちも。 あなたへの気持ちが泡沫のように消えてしまうのかは、この約束さえあれば不安じゃない。 "なれなかったこの気持ち"は、成熟する前に夢が覚めていく。 (26) 2021/08/20(Fri) 20:50:23 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>26 編笠へ だから今この祭りの間だけは、 夕凪としてこの夏、ここにいる。 「お願いって、何? わざわざ改まって」 あなたの言葉を聞くために、ここにいる。 ――ねぇ、淡い初恋を話してくれるのが楽しみよ。 大切な思い出が存在したことが嬉しくて仕方ない。 今も思ってくれていたことに胸がいっぱいで。 本当に来ていたら、その手を掴んで、水に飛び込んでいたでしょうね。 お魚さんは、逃げちゃうのかしら、捕まっちゃったのかしら。 夜凪なら、きっとそうしたわ。あなたのことが好きだから。 だから私も、言葉があふれる前に体が先に動いてしまいそうね。 (27) 2021/08/20(Fri) 21:05:45 |
【人】 過去から 編笠>>27 夕凪 ずっと、その器用に何かをこなす彼に憧れていた。 子どもだった俺たちは全員、その背中に背負われてきたはずだ。 普遍で、不動で、信頼できて、 何故かそれが絶対崩れないと信頼していた。 だから、誰も気づかなかった。 他の皆には夜凪の旦那がいても、 夜凪の旦那には、夜凪の旦那が居なかったことを。 弟分が、卯波が憧れを捨て去ったなら。 あいつのことを格好いいと思ってしまった俺が。 ――じゃあいつまでも、 こんな気持ちを抱えてていいはずがない。 助けての言葉が言えない相手に、手を伸ばさずにいられない。 「……伝わんないかもしれないけど。 ……全部勘違いかもしれないけど。 俺は憧れていた『夜凪の旦那』になる覚悟が出来たから。 だから、アンタにも必ず会いに行くよ。 でも、一人じゃ何もできないから。 ――たくさんの仲間を連れて」 そしたらきっと。 俺は、俺たちは――無敵だと。 そう信じさせてくれた親友がいるから。 (30) 2021/08/20(Fri) 21:37:16 |
【人】 夜を越えて 編笠>>27 夕凪 たち 一人じゃ救えないかもしれない。 一人じゃ答えを出せないかもしれない。 人は、誰かを救うようには出来ていない。 何もかもを解決するなんて無理だ。 なあ、もう一人の俺。 もし会えたら言うよ。必ず探し出して伝えるよ 人の腕が二本しかないのは。 誰かの差し出した手を握り、誰かに手を差し伸べるためだって。 「……だから夕凪の姉さん。 『 旦那も姉さんも待っててくれ 』って。そう伝えてくれねえかな。必ず、迎えに行くから。 それが、俺のお願いだ」 少しは、これで惚れた相手の前で格好つくかなと、 少年だった顔で、自然な顔で笑って肩を竦めた。 (31) 2021/08/20(Fri) 21:39:34 |
【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>32 編笠 たち 「『なんだか楽しみ、賑やかそうで。 もちろん伝えてあげるわ。 今の言葉、夕凪にはさっぱりわからないのに。 夜凪がずっと聞きたかった言葉だってすごく思うの。 男の子同士で伝わるものなんて、なんだか妬けちゃうな』」 伝わらないかもしれないけど。 全部勘違いかもしれないけど。 「『夢から覚めたら、―――』 夕凪たちの物語も、これから紡がれていくんだから。 私から夜凪たちに伝えることは、 」一生があれば、大抵のことは大丈夫ってこと ここには凪いだ波しかなくて。 何一つ紡がれていなかったとしたら。 未来に繋がる"それ"さえ、あれば。 夕凪たちは二人でいくらでも待てるよ、だから。 「「待ってるね、編笠。 夕凪たちはきっと、そう言うよ。双子だからわかるんだ」」 青い空に、朱い灯火に、黄色の太陽に、緑の山に。 忘れ物はもうしなくてすむように。 もし、なくしたものがあったなら。 一緒に探して、また、魚でも捕まえて帰りましょう。 思い出はいつだって、みんなが来るのを待っている。 (33) 2021/08/20(Fri) 23:20:57 |
【秘】 学生 涼風 → 君ぞ来まさぬ 百千鳥 お祭りが終わった後、あとは帰るだけという暗がりの時間。 どうしてこの時間はいつもよりちょっと寂しさが増すのだろう。 静けさの中に落とされた貴方の声を拾い上げて凪いだ水面のような落ち着いた声を返す。 「今まで通り……そっか」 訃報で姉の呼子鳥が亡くなったことを知っている。でも、それが"今まで通り"になってしまった後の百千鳥の様子は分からないままだ。 それでも、10年前の姿、この夢の中で見ていた姿、そのどちらでもない事くらいは分かる。 「いくつかの……探しもの? 何を探しているの?それは私に手伝えるものかな?」 少し不思議そうに目をほんのちょっと丸くさせて尋ねた。 (-46) 2021/08/20(Fri) 23:55:22 |
【人】 夜を越えて 編笠>>33 夕凪 「残念だけど夜凪の旦那との関係は、 夜凪の旦那との関係だけなんだよ。 同じように、夕凪の姉さんとの関係も、 夕凪の姉さんとの間のものだけだけど。 だから、俺にとっては…… どっちだって欠けがたいもんなんだよ」 それは。 幼馴染三人の誰一人、 何一つ手放す勇気を持てなかったのと同じで。 今まで何かを支えてきた人が居るなら、 今度はそれになりたがったっていいはずだ。 どうせここが夢なんだとしたら。 夢みたいな話をしたって構わないだろう。 そしてその夢を現実にするために、 少しばかり頑張ってしまうのが男という生き物なんだ。 大切な誰かの夢を叶えてほしいから、 方法を迷わないのが、男なんだ。 そうだろう――夜凪の旦那。俺たちやっぱ、似てるかもな。 (34) 2021/08/21(Sat) 0:18:55 |
【人】 茜差す方へ 編笠言いながら、自転車に跨った。 もう、後ろは振りむかない。 後ろに置いていくんじゃない、前に迎えに行くために。 だから、ここでは、さよならしなきゃな。 少年の残滓を置いていくようにして、 自転車のペダルに足を置いた。 「さあ、伝えてくるか。 ――今度は、俺の番だ、アカネ」 世界の何処にいたって一番最初にはきっと、 お前を見つけてやる。何回でも。何十回でも。 そう思いながら、自転車に跨った。 お前のことが好きだと。 今どこにいても伝えにいってやるからな――。 (36) 2021/08/21(Sat) 0:23:11 |
夜長は、こくり、こくり。頷いて、百千鳥の言葉を聞いていた。しっかり、確かめるように。 (t1) 2021/08/21(Sat) 1:00:41 |
夜長は、差し出された小指を見て、少し申し訳なく思った。 (t2) 2021/08/21(Sat) 1:00:46 |
夜長は、小指を置いてけぼりにして言った。「考えても仕方のないことでも、考えてはいけないことではないです」 (t3) 2021/08/21(Sat) 1:00:59 |
【見】 天狼の子 夜長【祭りの終わり】百千鳥 「昔がよかった、こうだったらよかった。 それは持ち続けていていい、モモチの持ち物だ」 またいつかの約束をするのは嫌でなかった。むしろしたいことだったが、そうするよりも先に、言いたいことがあった。 「……なんだろう。砂が、経験や思い出の砂時計があって。 白い砂が、落ちたら色が付くんです。 生きていて、色砂が積もって、増えていって。 その増えたもののことを考えることが増えるのは、当たり前だと 俺は思う。良くない思い出一個だけをよけておくのも難しい。 砂が落ちて積もる場所は、ひとつだけだから」 雪子から聞く思い出話は、いい思い出だけではなかった。悪い思い出の全部が話されたわけでもないと夜長は思っている。それでも夜長は村が好きで、村に行きたかった。 「色砂はモモチの物だが、 忘れたり、考えないようにしまってもいい。 考えるとつらかったり、くるしかったりするから。 時間を刻まない、時計みたいになっても良くて」 鬼走から譲られた懐中時計も、もしかしたらつらいやくるしいが理由で止まってるのかもしれない。そんなことを考えたことがある。 家族が欠けて、かなしくて、それでも変わらず時を刻み続けて。それはすごく無理をしている状態で。みんなが揃っていた時には、同じ様に落ちても"みんながいるから"平気だったかもしれない。でも、落ちた時にはたくさんくるしかったから。 何もなく動き始めるとしたら、色んな奇跡が重なった時だろう。 (@5) 2021/08/21(Sat) 1:03:37 |
夜長は、ひとつ深呼吸をして。それから言った。「モモチ」 (t4) 2021/08/21(Sat) 1:04:13 |
【見】 天狼の子 夜長【祭りの終わり】百千鳥 「俺は会いに行きます、連れ出します」 「でも、考える暇がなくなるようにでなくて、 モモチがモモチの持ち物を全部持って行けるようにが、 俺の理由になるな」 考える暇がなくなるように。自分が動くのはそのためにではない。少し突拍子のない例え話は、夜長本人としては繋がったものだった。 「そっちは、できるのがいつかもわからない、 本当にいつかのことになってしまうが……それでも、」 止まった時計が動くのは、奇跡が重なった時だけではない。 「あなたに会いに行く、またいつかの約束は今に出来る」 (@6) 2021/08/21(Sat) 1:05:26 |
夜長は、小指を絡めた。 (t5) 2021/08/21(Sat) 1:05:41 |
夜長は、何度でも約束し、何度でもそれを果たす。 (t6) 2021/08/21(Sat) 1:05:47 |
【神】 公安警察 清和>>G12 宵闇 百千鳥【4日目 『不発弾』処理】 「それじゃあ、次は責任持って連れてきて貰わないとな。今度も」 "次"と"今度"があると信じて疑わない様子で、宵闇に向かって微笑む。 ずっと昔から、ずっとそうだった。 清和は、小学生になるのと同じタイミングでこの田舎に越してきた。 その前から村にいたのはふたりで、割って入るなんてできなかった。 だからこそ、俺たちを三人にするのはずっと宵闇の役目だった。 「だから言っただろ、そんなもん入れて開けるとき後悔すんなよって」 などと言っているが真っ赤な嘘。 そんなこと言ったような記憶も、宵闇がそんなもの入れた記憶もない。 ただ、宵闇をからかう為に言うハッタリをかましながら、 あの頃の自分自身がタイムカプセルに残したものを確認する。 (G13) 2021/08/21(Sat) 1:06:43 |
【置】 いつかの 清和──清和 瑠夏『不発弾 <タイムカプセル> 』の主な中身『一枚の写真』 中学生の頃の三人が写っている。 清和が思う、三人が最も"三人"だった頃の写真のようだ。 『オイルライター』 "火遊び"に使っていたもの。 "ワル"との決別のために過去に置いてきた。 『キーホルダー』 "相棒"であるバイクに付けていたもの。 懐かしいデザインのそれも、決別のために過去に置いてきた。 『手紙』 "10年後のカケルとアキラへ"と書かれた封筒に入っている。 (L7) 2021/08/21(Sat) 1:07:58 公開: 2021/08/21(Sat) 1:10:00 |
【置】 いつかの 清和俺の親友たちへ。 お前らがこの手紙を読んでいるということは、 俺はそのタイムカプセルの回収に失敗したということなのだろう。 もしくは、何らかの事情でそちらに行けなくなってしまったのか。 ともあれ、先に手紙に辿り着いたお前らに向けて俺は筆を取っている。 何も言わずに出て行ってしまったこと、お前らは恨んでいるだろうか。 この手紙を書いているときから、そうすることは決めていた。 俺たちの田舎がなくなってしまう以上、誰かがしなければならない。 その役割をする悪者は、俺であるべきだろうと、カッコつけていた。 本当は、俺もお前らと離れるのは寂しいと思う。 だけど、お前らを守るためにはいつまでも田舎にはいられなかった。 俺は必ず警察官になると決めた。みんなを守れるようになるために。 ハーフだろうが、金髪だろうが、誰にも文句を言わせるつもりはない。 だから、お前らにもちゃんと夢を叶えて欲しいと願ってる。 俺は、お前らの音楽や料理が、みんなを笑顔にできるように、 この世界の平和と安全を守れるような人間になってやるから。 カケル、アキラ。 俺は、何処に行ってしまってもお前らの幸せをずっと願い続けてる。 お前らが幸せに笑って生きていてくれることが、俺の幸せだ。 だから、どうか笑ってやってくれ。 こんな手紙を残してやる、バカな清和瑠夏って男のことを。 お前らの親友より。 (L8) 2021/08/21(Sat) 1:18:05 公開: 2021/08/21(Sat) 1:30:00 |
【神】 公安警察 清和>>G13 宵闇 百千鳥【4日目 『不発弾』処理】 「ふ……」 過去の自分自身が書いた手紙の内容を確認し、どこか呆れたように笑う。 「だっせーな、10年前の俺…… こんなもん、お前らには見せらんねえわ」 手紙を誰にも見せずに懐にしまって。 「やっぱり、誰にも見られないようさっさと処分するしかなかったな。 この不発弾は……」 ここは夢の世界。 本物の不発弾は、今もまだあそこに埋まったまま。 ならば、それを掘り返すためにまたあの場所に集まることもできる。 だからこそ、この手紙は誰にも見せないでおく。 もう一度、今度こそは"三人"で掘り起こすために。 (G14) 2021/08/21(Sat) 1:27:48 |
【神】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>G12 >>G13 >>G14 清和 宵闇 【4日目 『不発弾』処理】 御山洗は来れない、そしてそれは宵闇のせい。 そんなやり取りに少し気遣わしげな顔をして、 それでも確固とした語り口で"次"を突き付ける清和に あまり気にする事でもないのだろうかと思い直した。 宵闇の冗談には、 なんでタイムカプセルにそんなもの入れるのさ なんて軽口を挟みながらも中身を覗く事はしなかった。 中身を検めた二人の反応から大体察しが付いたという事もあり。 「……なんていうかこれ、反面教師ってやつ? いつかタイムカプセル埋める事があっても モモチは絶対に変なもの入れないようにしよーっと」 一緒に埋めるあてがあるか、と言えば怪しくはあるけれど。 ぼんやりとそんな事を考えて、ふと思い至った。 「10年後になっても一緒に掘り出しに来れるって よくよく考えたら結構すごいよね、 そんだけ時間経っても仲良いままって事だし…」 10年後もそれなりの関係が続いていると素直に思える事、 それから、そのきっかけは意図しないものであったとしても。 確かに10年後にこうして集まる事ができている事が、 或いは埋められたものの中身よりも ずっと大事なのかもしれないな、なんて。 (G15) 2021/08/21(Sat) 4:49:45 |
【神】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>G15 清和 宵闇 【4日目 『不発弾』処理】 「あーあ、つっかれた〜!!んもう、勤労奉仕!! …そうだ、穴埋めるのと帰りの荷物持ち翔兄が担当ね!」 詮無い考えを放り出すついでにスコップを投げ出し…… かけて、やっぱり思い直して適当な所に置いた。 物を乱暴に扱うのはよくないので。 (G16) 2021/08/21(Sat) 4:50:32 |
【秘】 夢のその先 百千鳥 → 学生 涼風喧騒は今は遠くに過ぎ去って 聞こえるのは、細流のような声と、日の暮れに鳴く鳥の声だけ。 からん。 一つ、下駄を鳴らして振り返る。 「みんなのこと。」 問いには端的に"捜し物"の名を告げて。 淋しげに響く下駄の音につられてか、 湛えた笑みは寥々たるものだった。 「お願いがあったから、だけじゃない。 僕だって、また皆と会えるなら会いたいと思ってる。 この夢が終わったら、きっと会うのは少し難しくなるけど」 それでも。 過ごした時間が楽しいほどに、寂しさが募っていくように。 「呼子姉が、"みんな"のこと…… "大好きなみんなの居るこの村"が好きだった ことも僕が皆の事を好きってことも、消えて無くなるわけじゃない だからまた会いたいって思うのは、変な事じゃないでしょ?」 そうして寂しさが募るほどに、"また"を乞う気持ちは強くなる。 「それとも、薫兄さんはもう"僕"とは会ってくれない?」 (-47) 2021/08/21(Sat) 4:52:29 |
【人】 夢のその先 百千鳥>>@5 >>@6 夜長 【祭りの終わり】 置いてけぼりになった小指に、一瞬だけ ああ、やっぱり皆は自分が思うほどには、なんて 後ろ向きな考えが首を擡げて けれどそれはすぐに散り失せる事になった。 「……そうだね。 砂が落ちて積もる場所は、一つだけ。 そこには当然良くない思い出もあって、 他のものと混ざり合っているから、よけておくのは難しい」 「だから、掬い取ってよそへやってしまうのも良くない。 全部が混ざり合って、それでやっと今の僕があるから。 たとえたった一掬いだけでも、それを失くしてしまったら きっとそれは、今の僕とは違う人になってしまうのかも」 さんざん人に取り落とすな、なんて言っておいて その実、自身を省みる事もできていなかった。 はは、と息を吐くようにも笑いを零す。 夢を見るのに疲れてしまった今のそれは弱々しいものだけど 決して、後ろ向きなものだけではない。 「…うん。 それがいつになるかは僕にもわからない、それでもよければ いつか会いに来て、晴臣くん。 それで会えたらその時は、もう一度"またいつか"を約束しよう」 (37) 2021/08/21(Sat) 4:55:09 |
百千鳥は、「ゆびきった。」 (a13) 2021/08/21(Sat) 4:55:59 |
【秘】 巡査部長 鬼走 → 警部補 添木祭のエリアでようやく一息つく。混雑に仕事上慣れていても、嬉しいものではないしこの格好だと落ち着かない上に窮屈だ。 「何年付き合ってると思っているんだ。大体10から15年程度はいるからそれくらい読み取れる」 余り読み取れて良い事がと言うとまるでないが。 「言い方に物申したい事はあるが、ないと救えるものも救えないのも確かだ。家族を失うなら村を離れる事になろうが迷いはなかった。今似たような状況になって、何かを選ぶ必要があっても俺は躊躇なく家族を選ぶ。うんざりするほど生きろよ。そうして欲しかったのに叶わなかった人を二人も見送った」 金の為、と言いつつ実際は母親の治療費の為なのを当然知っているだろう。家族の為なら夢でも何でもこの男は捨てて選べる。多分今でもそれは変わらない。それくらい“家族”は大切なものだから。 「それもそうなんだが……お前の口からそういう言葉が出る度に感慨深くなるだけだ」 りんご飴を買う落ち着きが無さすぎる26歳児を見つつ、不意に昔を思い出した。祭りに来ても自分は誰かを見ているだけで、誰かの隣はそうなかったから。 (-48) 2021/08/21(Sat) 7:44:56 |
【秘】 貴方の隣に 宵闇 → ただいま 御山洗>>-43 >>-44 >>a12 >>-45 涙声でも、確かに聴こえた言葉に笑う。 「──は、じゃあ、俺の勝ちってことで……」 小さく吐くのは、安堵のため息だ。 得意気に湛えた笑みは少し和らいで その身を目の前の彼に委ねる。 たしかに宵闇は御山洗の腕のなかにいる。 波の音、夜の海がしずかに見守っている。 ここにある想いは、海の泡沫のように消えゆく夢ではなかった。 「もっとちゃんと捕まえとかないと 勝手にどっか行っちまうけど……?」 そっと大きな背に手をまわす こちらはしっかりと体温が感じられるくらい。 「目覚めたらちゃんとお前が見つけられる ようなとこにいてやるけどさ、」 (-49) 2021/08/21(Sat) 11:33:40 |
【秘】 ただいま 御山洗 → 貴方の隣に 宵闇>>-49 宵闇 返事をしようとして喉の奥で高い音が鳴った。しゃくり上げてうまく発音出来ないのだ。 どうにも情けない反応ばかりしているのをごまかすように、喉が唸る。 「どこにも行かないでほしい、けど。 置いていかれてもきっと帰ってきてくれるって、信じてる」 ひとつひとつを返すように、進みすぎて遠ざけてしまわないように。 同じようにそろそろと両腕を背中に回して、遅まきにぎゅうと抱きしめる。 嫌われたくない。一歩一歩、隣で歩んでいけるように。 歩むあしを揃えて、置き去りにせず、されてしまわないように。 「……俺も、きっと会いに行く。 もう見失いたくない」 背丈の違うふたりの視線はうまくは通い合わない。 同じものを見るのは簡単なようで難しい。だから手をとって確かめ合うように。 聞きそびれられてしまわないように耳に声を注ぎ込んで。 かたちがわかるように頬を擦り寄せて、肩越しの骨っぽさを感じ取って。 鼓動が伝わる。もう目を逸らしてはしまわない。 夢の終りが早く、訪れますように。 今度こそは、現実でその手を取れるように。 (-50) 2021/08/21(Sat) 13:26:53 |
【神】 宵闇>>G13 >>G14 >>G15 清和 百千鳥【4日目 『不発弾』処理】 「なになに、なんの手紙よ。ラブレター? 俺ルカちゃんへのラブレター書いたけど見るか?」 にやにやしながら、からかうような口調で言って おそらく悪戯や軽いノリで入れたであろうしょうもない 一言が書かれた紙切れをひらひらとさせた。 「反面教師は言うねえモモチさん。 まあ、たしかに俺は家にあったら捨ててそうな しょうもないモンばっか入ってたけど。 ……悪くはなかったよ。」 自分のノートを懐かしむようにぱらぱらとめくる。 「集まったのは偶然ってやつだったけどな でも昔の俺は10年後も会えるって信じてたらしい」 楽譜にさりげなく添えられた手紙を見て、思い出す。 過去と決別するというよりも、未来の自分に 振り返ってほしいものが入っていることを。→ (G17) 2021/08/21(Sat) 14:04:48 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 「呼子ちゃんの話最近聞かないけれど、どうしているのかな」 「どう、なのかしら。私も連絡取れなくなってしまって知らないのよね。 モモチくんも分かれたときはとても小さかったから心配だわ」 「なんだか二人には同じ者を感じてたな、姉弟がいるって……感覚」 「あのさ、いつか会えると信じていながら そのまま会えずに終わっちゃったらどう思う?」 「突拍子もないけれど、そうね。 それは―――悲しいわ、ニュースを騒がす行方不明でも、殺人でも自然死でも。 あなたがいたことが嬉しかったって伝えるすべがなくなってしまうのが悲しい」 「それって僕は死んでもいいってこと?」 「何言ってるのよ、夜凪。私たちは一緒よ、思ってもないことを言わないの。 それで悲しむ人だって居るんだから。 そうじゃないのよ、死んで悲しいんじゃなくて会えなくなることが悲しいの」 「夕凪、きっと僕は。 君たちがいなくなったことが悲しくなると思う」 「それじゃあ、私は君にたくさん残していかないといけないわね。 さみしがり屋の弟を持つと大変ね」 (-51) 2021/08/21(Sat) 14:34:14 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン…… 「お兄ちゃんから手紙来てた!」 「本当! ふふ、今年もちゃんと来てよかったわ。 電話でせかせばくれるけど、やっぱり忙しいのかしらね」 「夏は犯罪が増えるから忙しいんじゃないのかな」 「私たちより犯罪が大事? こんなこと言ったら迷惑かかるわね。 さっそくお返事書きましょう。 大好きなお兄ちゃんへ――あなたより魅力的な男性が現れないです。 どうすればいいのかな? 私の心を奪ってやまないのです。 だから夜凪と同じように人間観察をよくするようになりました」 「夕凪、それ本当に送るの……? じゃあ僕も、お兄ちゃんにラブレター書こうかな。 お兄ちゃんへ。……添木くんみたいな黒髪の方がやっぱりモテる?」 (-52) 2021/08/21(Sat) 14:35:52 |
【秘】 学生 涼風 → 夢のその先 百千鳥「……え。 …………ううん、ううんっ。 会いたいに決まっているじゃないか!」 初めこそ驚きに僅かに目を見開いたものの、少年は勢いよく返事をした。 「会いたいよ、モモ。こうしてまたお話がしたい。夢が覚めても、これからも、ずっと。 ……望んでもいいの?君にまた手を伸ばしていいの?」 言葉尻が萎んでしまって、どうにも格好がつかなかった。 怖かったのだ。姉の呼子鳥は既に亡くなっているのだと気付いた時から、貴方になんて言葉をかければいいものかずっと迷っていたのだから。 (-53) 2021/08/21(Sat) 14:37:24 |
【置】 涼風拝啓 ひぐらしの声を聞いて胸に寂寥感が芽生え始めて参りました。残暑厳しき折ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか。 手紙を書き始め、次で十通目になります。 月日が経つのも早いものです。私の周りも、私の立場も、昔と比べると変わったものが随分増えました。 それでも変わることのないものがあります。どれだけ経っても、決して色褪せないものたちが。 (中略) 手紙は勿論書きますが、来年はようやく時間が取れそうですからきちんと貴方にお会いして挨拶をしようかと思います。 それに、見せたいものもありますから。ようやく夢が形になったんです。 (中略) 略儀ながら、書中をもちましてお見舞い申し上げます。 敬具 20××年 8月××日 涼風薫 (L9) 2021/08/21(Sat) 14:40:39 公開: 2021/08/21(Sat) 14:45:00 |
【秘】 宵闇 → 公安警察 清和「なあ、そういやルカ。お前この間最後のぎゃふんの『ん』は ──俺が作る、お前への歌と交換だって言ったな」 不発弾の処理が終わった後くらいそろりとやってきて話す。 ここから帰りたくないような 誰かが自身を呼んでいるような、そんな声が聞こえていた頃 けれど、薄々とここが夢だということに気づきはじめていた頃。 「それは"ここから"帰って再会した時ってのはどうだい」 ここで全て済ませてしまうことはできる。 その材料が揃っているからだ。 「全部田舎で済ませちまうのも、なんか勿体ないだろ ──まあ、先に聴いておきたいってんならいいけど」 せっかく再会したのだから、その先があってもいいはずだ。 だからこれは口実のようなものだった。 清和を追いかけるための。 「それに、実はさ、その曲ってのはお前だけでなく アキラにも聴いてもらいたい曲なんだよな、どうだ?」 そして、男は不敵に笑った。 (-54) 2021/08/21(Sat) 14:41:04 |
【置】 涼風 家か、或いは関係者に渡したのか。 手触りのいい和紙の便箋がとある人宛に送られた。 『優くん元気?私だよ。涼風です。 こうして手紙を君に送るなんて、昔を思い出してしまうね。 久しぶりに話がしたいな。アイスでも食べてさ。ところで、おすすめのアイスとか知らない?折角だし一緒に買おうよ。お墓参りが終わった後にでも。 追伸 なんとなく昔を思い出したからお墓参りも自転車で行きたくなっちゃった。まだ自転車はある?』 ほっそりとした字で、ありとあらゆる無茶振りが書かれている。 そんなマイペース極めた手紙を貴方が読み終えた頃── (L10) 2021/08/21(Sat) 14:44:09 公開: 2021/08/21(Sat) 14:45:00 |
【神】 涼風>>変わらない君 某所、某日。 「すーぐーるーくん! あーそびーましょー! ……ふふ、なんてね」 呼び鈴を鳴らしつつ、声を上げる人影が一人分。昔よりも髪は更に伸びたものの、楽しげに揺らす姿はあの頃となんら変わりない。 (G19) 2021/08/21(Sat) 14:45:38 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン…… 風鈴の音が鳴ります。 「雪子おばさんに教わったパンナコッタよ、夜凪!」 「夕凪慣れない料理は―――」 「私の向上心を叩き潰すのはよくないわ。 雪子さんが6割つくったから味は平気よ」 「味噌汁ですらちょっと味付けぶれてるじゃん……。 ちゃんとはかってさ。細かいところ面倒くさがらないで。 どうしてそうなるのかを理解をするのが上達の一歩だよ」 「几帳面ねそういうところは。 夜長さんはなにしてもうなずいてくれるって言うのに。 晴臣くんもよ! 私の作る料理美味しいって言ってくれるわ!」 「僕の料理の方が数秒美味しいって言うの早いよ」 「言ったわね。 今度どっちが美味しいかって言わせる勝負をしましょう。 お菓子作りならまけないわ!! 雪子さんの味で二人を落としてみせるんだから」 ▼ (-55) 2021/08/21(Sat) 14:46:39 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪「たまにはさ、……僕に美味しいもの作ってよ夕凪」 「何か言った? 夜凪」 「なんでもないよ。 その場で感覚で生きている夕凪が好きだなって思ったんだ」 「あら、私も。 どんなときでも几帳面でみんなを見ている夜凪が大好きよ」 「……」 「……」 「「ふふ。 知ってる」」 (-56) 2021/08/21(Sat) 14:49:26 |
【神】 髪置>>変わらない君 手紙を読み終えたところで聞こえたいつもの声に、思わず笑みをこぼす。 「は〜あ〜い〜!」 あれから10年、流石に少しばかり気恥ずかしい気持ちにはなるものの、変わらないことの嬉しさが勝り、ついつい乗ってしまうのだ。 大声で返事をしてドアを開け、変わらない貴方を髪置が出迎えるだろう。 こちらは髪型、服装こそ変わらないものの、仕事がら体ががっしりしてきて、顔つきも少しばかり男前になっている。 (G20) 2021/08/21(Sat) 14:56:46 |
【神】 髪置>>G21 涼風 「そ、そりゃあまぁ……ね。俺より後ろに乗るほうが大変だと思いますよ、二人乗り」 確かにやってみたさはあるのだが、怪我をさせそうなのでやんわりと断ろうとする。 「で、お墓参りですか。ここからだと自転車じゃあちょっと遠いような……」 距離を考えつつ、涼風の方を見ると……もう完全に自転車で行こうという気満々の顔をしている。 「ま、なんとかなりますか。自転車は持ってきてますか?ないなら本当に俺が二人乗りで死ぬほど疲れることになりますけど」 それにご近所様からすごい噂をされてしまうのだが、そんなことは多分気にしないのだった。 (G22) 2021/08/21(Sat) 16:13:40 |
【神】 涼風>>G26 年齢も性別もバラバラな自分達が集まったあの不思議な夢。あれはいったい誰が根本的な原因なのかとずっと思っていた。 自分や百千鳥、編笠など夢に引き留めたい者たち──自分は夢の終わる直前になるまでその役割を忘れてしまっていたが──は確かにいたけれど、夢を自分の手で作り上げたという自覚はない。だから、元凶とも呼べるだろう人物がいるのだと思っていた。 考えに考えて、一つの共通点にたどり着く。 全員"帰省して最初に挨拶をした人"が同じ人物であったと。 手にした結論をもとに手紙を書こうと決めたのだ。 どれだけ長い年月が経っても、我が子のように自分達を愛してくれた貴方。貴方にも寂しい思いなどしてほしくないと、自分達は変わらず元気であると……そう伝えたくて。 (G27) 2021/08/21(Sat) 16:50:28 |
【秘】 貴方の隣に 宵闇 → ただいま 御山洗>>-50 「お、やっと素直になったな」 そう、それでいいんだよ、なんて上から目線。 細身の男は背丈も体格も違うその腕の中にすっぽりと収まって くすくすと機嫌がよさそうに笑う声が耳をくすぐる。 男は、嬉しかったのだ。本当に、嬉しかった。 あの時苦痛を堪えるようだった姿は 怯えるように男を無理やり遠ざける姿は もう見なくてもいいのだと思うと肩の力も抜ける。 そうだ、彼に笑ってほしかったんだ。 この心が少しだけ満たされるような気分になる。 「ああ、待ってるよアキラ」 目を閉じて、広い胸に額を押し付ける。 「そしたらさ、また俺に好きだって言ってくれよ 何度でも聞いてやるし、言ってやるし」 ゆっくりと話しもしたい。この先に想いを馳せる。 ──だから夢が終わるまで、もう少しこのままで。 (-57) 2021/08/21(Sat) 17:03:54 |
【神】 夢の綴り手 涼風「……10年の節目。今年は手紙で終わらずきちんと貴方の元に来ること出来てよかったよ」 友人と交代して自転車を漕いで、ようやく訪れた場所。夢から覚めた後、連絡を取ることのできたとある記者から教えてもらったのだ。 掃除を済ませ、お供え物を並べて、線香をあげた後。 「手紙に書いた、報告したかった事というのはこれなんだ」 そう言って取り出したものは一つの紙の束。コピー用紙に文字を印刷したものを簡単に留めたものだから、本とすら言い難い拙い出来のもの。でも、それでもいいのだ。ファンだと言ってくれた双子に知らせて、表紙を描いてもらおうと決めているのだから。 それを自慢げに、誇らしげに取り出して墓前に掲げる。 (G28) 2021/08/21(Sat) 17:12:34 |
【神】 夢の綴り手 涼風>>G28 夕凪、夜凪と交わした約束。幼少期から秘め続けた宝物めいた夢。 大人になってからは時間がなかなか取れなくて、仕事で使う文字以外一切書けなかった時期もあったけれど。 夢を抱いてから10年。一度諦めて、夢の中でもう一度夢を叶えたいと決意して更に10年。 28歳でようやく、物語は形となった。 初めて生み出した作品は短編集。モデルは勿論、愛する故郷で出会った人たち。彼らがどこか夢を見ているような、ほんの少しだけ不思議な体験をする物語。 「万華郷」と書かれた表紙の夢を抱いて、青年はそっと微笑んだ。 眠る間に見る夢はいつしか覚めるもの。でも……いくつになっても、見ていいものだと気付いたから。 「慈姑おばあちゃん」 私が私である限り、これからも報告しにきます。 あの時夢を見せてくれた貴方に、今度は自分が夢を見せる番だから。 (G29) 2021/08/21(Sat) 17:13:11 |
【置】 再点火 花守>>添木 【乾杯】 おつかれさまヒサシ、ホントに警察になっちゃってまあ、よくがんばったな。 久しぶりに会って、あんたの家に行って、ご飯したり酒飲んだりして、"オトナ"になったくせに昔っから変わらない所もあって、楽しかった、でも、それが逆に寂しいやらでさ…… 結局、言い出せなかったけど、私は『約束』守れなかったよ。 あんたと同じか、それ以上に努力してきたつもりだったけど、現実はいつも私に厳しくって、それでも次こそはって頑張ってきたけれど……あれから10年経って私は医学部にも入れず8浪だよ。 8年、『約束』も果たせず、"オトナ"にもなりきれないで停滞してた時間が8年間、親に呆れられて、毎日毎日生活費と学費を稼いで、隙間の時間で勉強した時間が8年間、振り返っても空虚しかないこの時間の重さ。 それに気が付いちゃったから、もうダメだって諦めてた。 だからだろうね、私がここにきたのは。 この村の大人たちはそんな好きじゃなかったけど、私の人生で一番充実してた青春が、確かに此処にあったから。 嘘つきは嘘を隠したまま、幻想の中のあの頃をもう一度望んで、あんたや私の事を知ってても知らなくても、良くしてくれた皆に会いたくて………… でもさあ、会っちゃったら、やっぱ悔しかったわ。 昔っから『対等』だって思ってたあんたが成功して、私はそのままって、惨めで悔しかったわ。 だから待ってな、今度こそ果たせなかった『約束』を果たして、ついたウソを告白して、あんたは呆れるかな、それとも昔通りでいてくれるかな、ともかく── ──果しにいくよ。 (L11) 2021/08/21(Sat) 18:09:37 公開: 2021/08/21(Sat) 18:30:00 |
【置】 再点火 花守>>清和 【約束】 『約束』、うん『約束』するよ、センパイ。 今度こそ、ウソをホントにする為の、私の人生を、この10年を。 いや、この人生が無駄じゃなかったと、私が私であると胸を張って言える様にする為に、もう一度『約束』する。 だから、貰ったメモにはしばらく頼らない、ここに連絡するのは私が合格した時だって決めた。 すぐ連絡できるかも知れないし、もしかしたらまた永く待たせちゃうかもしれないけど、これはケジメ。 そうしたら、よくやったって、褒めて。 きっとそれで、それまでの苦労が報われるから。 あと、合格したら、一緒に両親に会って欲しい、散々試験に落ちた私をみかねて、もう諦めたらと心配してくれてた二人。 意地っ張りで、見栄っ張りな私は、それに反発して喧嘩して、もう何年も会ってないから、今更顔を合わせるのが怖くて、謝りに行くのに、一人じゃちょっと難しいから、一緒に来て欲しい。 まだまだ、こんな歳になっても"コドモ"のままの私に、もう一度歩き出す勇気をありがとう。 それに報いれるように、今度こそ"オトナ"になった私をみせられるように頑張るから、きっと、必ず、いい知らせを届ける、だから私を信じて、見守ってて、いつか"コドモ"を── ──卒業できるように。 (L12) 2021/08/21(Sat) 18:11:07 公開: 2021/08/21(Sat) 18:30:00 |
【人】 再点火 花守>>4:41 「ホント、こなくてもよかったな。 甘い夢を見に来たのに、辛くて重ーい現実と向き合う勇気、貰っちゃう事になるなんて、思いもしなかった。 あーあ、諦めようと思ってたのに、これじゃ仕方無いかね」 立ち上がって、土埃を払って、大きく伸びをする。 「それに……」 ハウリングするくらい目一杯の叫びがスピーカーからきこえる。 小さい方のアキラくんの、青春生放送。 「また集まるんだったら、顔向け出来るようにしとかないとね」 夏の終わりに産まれた彼女の誕生花はシロツメクサ。 この"花"に込められた言葉を、きっと彼女は"守り"果たすだろう。 (38) 2021/08/21(Sat) 18:12:08 |
【置】 あの頃の 宵闇すこし古ぼけてかすんでいる楽譜、かろうじて読めるくらいの。 まだ音楽への知識が浅い時にはじめて創作したもの。 その曲のタイトルは『再会』 あの頃の少年が細い指でギターをかき鳴らす。 ──ふわりと、頬を風が撫ぜた 前奏、それはそよ風のように優雅に 爽やかな空気の流れるはずんだ音 雲ひとつない青空広がるすっきりとした空。 ──僕らは繋がっている ──きっと同じ空を見上げている 間奏、転調、雨が降ったように、ぽつりぽつりと。 しっとりとした、音が紡がれる。 それは恵みの雨、悲しみを流す清らかな水だ ──晴れた夕焼け空にカラスが鳴く ──帰ろう、僕らの道へ 後奏、夜が訪れるように 宵闇は光へと続くしずかな夜だ。 ──朝は必ずやってくる ──それまでは安らかな夢を (L13) 2021/08/21(Sat) 18:19:17 公開: 2021/08/21(Sat) 18:20:00 |
【置】 あの頃の 宵闇 "未来"の宵闇 翔へ 元気ですか? ちゃんとメシ食ってますか? 彼女はできましたか? 夢は叶えましたか? 俺は小さい頃、なんとなく母さんが喜んでくれるからって 理由でピアノをやってたけど、今ではすごく楽しんでる。 都会の音楽に触れられるようになったのはルカのおかげだし。 俺もなにか夢を持ってみたいと思ったのはアキラのおかげだ。 未来の俺はどうですか? もし、挫折してたりつまんねえなって思ってたら いっそ音楽なんてやめちまえばいいと思います。 それもいやなら、一緒に入れた楽譜を見て思い出してくれ。 これはアイツらには今はナイショだけど、曲をつくったんだ。 練習もしたから今の俺は歌えるし、思い出すはずだ。 まだうまくできないけど、未来の俺がアイツらと再会したら 歌ってくれよな。絶対はずかしいと思うけど。 過去の宵闇 翔 (L14) 2021/08/21(Sat) 18:21:01 公開: 2021/08/21(Sat) 18:25:00 |
【秘】 あしたの 御山洗 → あの頃の 宵闇>>-57 宵闇 じわりと滲んだ涙をうまく堪えることが出来なかった。体温の移ったしずくがぱたと落ちる。 喜ばしいからか、安堵したからか。許されたからか、まだ薄く残る罪悪感なのか。 ぐるぐると胸の内をわだかまっていたものは、溜息と共に落ちて、消えた。 好きだ、ともう一度だけささやく。今度は耐えきれなかったためではなく。 今こうして伸ばされた手を、掴み取ることが出来た手を、ちゃんと握って。 逃げるためではなく、心から伝えたかったこととして。 夜空から夢の世界を見下ろすような花火が消える頃には、夢は醒めてしまうのだろう。 ひと夏の気紛れと思い出が作り上げた願いの世界は、消えてしまっても。 ちゃんと自分の意思で願って、その手を掴みに行くために。 置き去りにしてしまった不発弾を、皆でもう一度見るために。 背中を向けたままだった思い出の中の人達に会いに行くために。 今なら、それが出来る。 ベゴニアの花言葉は――。 (-58) 2021/08/21(Sat) 18:51:17 |
【秘】 警部補 添木 → 巡査部長 鬼走「はいはい、そうですか。フフッ」 楽し気に笑いながら、のんびりと進む。 「……ああ、わかってるよ。あんたは金に踊らされる側じゃあないもの」 目を伏せて、困ったように笑う。 うんざりするほど長い生。 生きるべきだった人、生きたかった人は亡くなってしまって。 金なんてもので、それが多少是正できるのなら、それは良い事だ。 「あはは。感慨深い?そう。まあそういうのが出るようになったの……」 目を細めて、 持っていたりんご飴を相手の唇にぺちんと当てた。 「あんたのお陰さ。面倒見てくれてるの、感謝してる。」 (-59) 2021/08/21(Sat) 18:52:03 |
【秘】 夢のその先 百千鳥 → 夢の綴り手 涼風「ダメって言ったら」 伸ばされた手を躱すふりをして、少しだけ悪戯に笑う。 「それで諦めちゃうなら、少しがっかりするかもね。」 それでもきっと、追いかけて来てくれると信じていたくって。 勝手に期待していた現実に少し裏切られた気持ちになるだけで 決して嫌いになるわけではないけれど。 「夢を見るのは疲れたから、 叶わない夢 を見るのは暫く休憩させてほしいけど。今居る薫兄さん達に会うのは、叶わない夢じゃないでしょ?」 今は少し、夢を見るのには疲れてしまったけど。 今の"僕"は、もう夢の見方もあやふやだけれど。 誰かと同じ夢を見る事なら、きっとそう難しくはない。 「僕はきっと、これからも 一人でだってただ何となく生きていけてしまうけど でも、だからって誰も目を向けてくれなかったら そりゃあきっと、辛くて苦しくて泣きたくて、でも泣けなくて 一人じゃどうしようもなくなるくらいに寂しいよ」 「だから諦めないで、手を伸ばしていて。 僕から、僕が掴める誰かの手を一つでも取り上げたりしないで。 そしたら僕も、きっと諦めないでいようって思えるから。」 (-60) 2021/08/21(Sat) 19:47:44 |
【独】 天狼の子 夜長こうしたい ああしたい あの人みたいになりたい 同じことが出来るようになりたい ないものねだりはしても仕方がないが、それでもしてしまうものなのだと思う。はやく、今すぐに大人になりたい。そんなこと、普通はかなうはずがない。それでも考えずにはいられなかった。 叶った気分になったこの夢でも、大人になり切れなかったと思っている。大人になったら何でも出来ると思っていた。何でも自分で出来るのが、大人だと思っていた。 でも、案外そうでもないらしい。 なったつもりの晴くんだけでなく、大人も大人で出来ないことは出来なかったように見えた。魔法みたいに、急に出来るようになったりはしない。 経験の砂時計の色砂はすぐに沢山にはならないし、家族の時計もすぐに動かせない。それがよく分かったなと思う。俺はまだ、出来ないがたくさんだ。 出来ないことが出来るようになりたい。 ないものねだりでなく、これは宣誓だ、目指すものだ。なくなってしまった誰かや何かも、この夢も。これから新しく増えるものも。持てるものは、持っていきたいものは、全部ぜんぶ抱えて。それでみんなと、歩いていける人になりたい。 (-61) 2021/08/21(Sat) 20:26:56 |
夜長は、 夢から覚めた後、モモチに会うのが少し照れくさいかもしれない。 (t7) 2021/08/21(Sat) 20:28:41 |
夜長は、早く大人になりたい。夢に来る前と、理由は変わった。 (t8) 2021/08/21(Sat) 20:28:52 |
夜長は、来年中にはお兄ちゃんになっています。 (t9) 2021/08/21(Sat) 20:29:41 |
【置】 夢のその先 百千鳥「さようなら、慈姑さん。 ずっとを望むくらいには、ここは良い夢だったよ。 あなたにとってもそうであったらいいんだけど。 ──待っててね、きっといつか、また皆で会いに行くから。」 皆を見送る老婆に挨拶を終えて、 爽やかな風の吹き抜けるあぜ道を歩く。 夢から覚めたら、現実を生きていかなければならないから。 だから夢と現の狭間、微睡の中にある今の内に これからの事を考えよう。 皆を守る、"正義の味方"を守るのは誰? 誰もなれないのなら、今は何にもなれない自分がそうなろう。 いつも皆の背を追ってばかりのあの人は、 今や自分も追われる側なのだといつ気付くだろう? 物語を、夢を紡ぐ事を今尚捨てなかった人々に "みんな"の居る長閑な村を、物語の中に創ってもらうのもいい。 水鉄砲の、最後の一発は"またいつか"のその時までとっておこう この村に来た時に、自身の慕う兄がそうしたように "再会の挨拶"を叩き付けてやるのだ。 自分と同じように、抱えきれないほど多くを欲しがって 同じ夢を見て、そしてこれからも同じ夢を見続ける 大人になりきれなかった誰かさんに。 (L15) 2021/08/21(Sat) 20:40:29 公開: 2021/08/21(Sat) 20:50:00 |
天狼の子 夜長(匿名)は、メモを貼った。 2021/08/21(Sat) 20:42:58 |
【置】 君ぞ来まさぬ 百千鳥わが門の 榎の実 もり食む 百千鳥 千鳥は来れど 君ぞ来まさぬ ──作者未詳 『万葉集』 巻16-3872 雑歌 我が家の門前の榎の実を啄みにくるたくさんの鳥たち、 鳥は来るのですが、あなたは来てくださらないのですね。 (L16) 2021/08/21(Sat) 20:43:33 公開: 2021/08/21(Sat) 20:50:00 |
【赤】 夢のその先 百千鳥「ばいばい、呼子姉」 「みんなと一緒に、ここで待ってはいられないみたいだから」 「だからみんなを連れて、会いに行くよ」 「いつか、きっと。」 (*3) 2021/08/21(Sat) 20:49:36 |
【人】 音楽家 宵闇ここにずっといたら取り戻せそうだった心があった。 今の自分にはなくて、過去に置いてきてしまったものがあった。 思い出せそうだった、すこしだけ思い出した。 それは『好き』という、身近にあって大事もの。 この村で培ってきたものが、音楽が好きだった。 男はきっと、この夢の事を一曲にするだろう。 ひとりの老人が、皆が愛した村。 ──時数えの田舎村。 (39) 2021/08/21(Sat) 20:55:31 |
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