氷肌玉骨を手に ナオアキは、メモを貼った。 (a3) 2022/06/13(Mon) 1:12:28 |
ナオアキは、会議室で猫ちゃんとお喋り。 (a4) 2022/06/13(Mon) 1:13:03 |
【人】 晨星落落 ヌイバリ目を閉じて、しばらく後のこと。 部屋に皆が戻ってきて、無事な人もいれば無事ではない人もいて。 それは分かっていても、どうにも目を開けることができなくて。 指先だけが熱くて、頭が急速に冷えていく。 まだ息をしている。けれど、それだけだ。 側から見れば眠っているように見えるだろう。 寝ずに待ってる、という言葉を嘘にしないためにも、意識だけは保っていた。 このまま指先から燃えていっちゃったりしないかな。 そんな馬鹿なことを、熱に浮かされた頭で考えていたところ。 ぶす、と遠慮なく腕に針が突き立てられた。 そのまま薬液が体内に注入されていく。 「痛ぁ!?」 思わず声が出た。 と同時に、体の自由が戻っていることにも気づいた。 あれあれ、おかしいな。殊勝に覚悟を決めていたはずなのに。 目を白黒させながら、数日ぶりに会う女性の姿を見て。 ああ、結木さんのことを信じてよかったな、とだけ、 最初に思ったのだった。 (3) 2022/06/13(Mon) 15:25:58 |
【秘】 日の中 フカワ → シャッタードグラス カナイ間に合うかどうか、とかそういう問題では既にない。 間に合わなくなる前に自ら終わらせたのだから、 今からすることは単純な自己満足に過ぎないのだろう。 何かの慰めにはなるか、と思って。 薬を片手に貴方の身体の前まで辿り着く。 「……誰でもいい、ことは、いいんです。 けれど、選択の余地なんてものを寄越されたら、 結局、貴方のことしか思いつかなかったんだ」 今手に持つこれは決して幼い頃に見た蘇生薬とか、 そんなファンタジー的な代物ではない。 曲がりなりにも薬物に精通している人間が、 そんな夢想なんかするべきでもない。 ただそれでも、万能薬にはなり得る。 相手にではない。己の無様に足掻く心に対するパナセーア。 「……頼むよ、ホント」 祈るように。暫し瞳を閉じて。 手の震えが収まったので、 徐にそれを、脈の止まった血管に突き立てた。 (-0) 2022/06/13(Mon) 18:49:27 |
【秘】 間近の焦点距離 ライカ → ひとがすきな ユウキ「……どこまでも。 あなたは人間のことを考えているんですね」 一通り貴方の言葉を聞いて。最初に会った頃のままだなあとか。 頼もしい言葉だな、こんな時なのに。とか。 感じる事は沢山あったけれど。 「先輩が言った通り、僕は記録係としてここに呼ばれたのかもしれません。 ここに呼ばれたこと自体が、死に引き寄せられる僕にとって 最適な役割だったと言える気がします。偶然じゃなかったんだ」 「僕は全てを記録します。 この施設の最初の形、最初に見たあなたたちの姿、それから崩壊していく姿。 全部全部、記録済なんですよ」 「此処でなくなったもの、なくなっていくもの、そして此処から続いていくもの。 僕はこれからも、追っていくつもりです。 任せてください」 此処で朽ちていく運命にある貴方に、毅然とした態度で応える。 迷いはない。青年はきっと、貴方の願いを背負って生きていくはずだ。 (-1) 2022/06/13(Mon) 23:03:52 |
【秘】 シャッタードグラス カナイ → 日の中 フカワ取り返しが付くか、取り返しが付かないか。 今になってそれを論じる事に大した意義など無いのだとしても、 ただ仮定としてそういったものを問うのであれば。 両者がこれまでに歩んで来た路の、 おおよそ大半は取り返しの付かない事に分類されるんだろう。 死んだ事実は無かった事にはならない。 死んだ事を受け入れた。 殺した事実は無かった事にはならない。 殺した事を受け入れた。 自らの行いは無かった事にはならない。 自らの行いを受け入れた。 犯した罪は、無かった事にはならない。 犯した罪を受け入れた。 取り返しの付かない事を認め、受け入れた。 一度生じた瑕疵は決して無かった事にはならず、 それに対してできる事と言えば、痛みを和らげる事だけ。 この痛みを和らげる為に、また痛みを重ねる。 傍から見ればそんな愚かな行いだとしても。 (-2) 2022/06/14(Tue) 2:16:07 |
【秘】 シャッタードグラス カナイ → 日の中 フカワ逃げて、逃げた事が瑕疵となって、また痛みを重ねる。 そんな生き方は、もうきっと断ち切られたのだろうから。 これまでの自分に、決別できたのだとしたら。 たとえどれほど痛みが伴おうとも、これからは。 向き合って、乗り越える事から逃げない。 だから今なら、これもきっと。 自らが恐れる何もかもに見ないふりをして、 無かった事にして逃げる為じゃない。 向き合って、乗り越える為の一歩だと思えるんです。 (-3) 2022/06/14(Tue) 2:17:10 |
【秘】 シャッタードグラス カナイ → 日の中 フカワけれど死者の歩みは止まったまま。 西日の路は覚束なくて、一人では日の下を歩けない。 人を殺しておいて、人に罪を背負わせて、その報いを受けもせず のうのうと生きて行くなんて、できるわけがない。 ──ひゅ、と かわいた空気の音がして でも、それでも。 人を殺しておいて、人に罪を背負わせて、その責任を取りもせず 一人安穏と死んで居るわけにだって、いかないじゃないか。 指先が、ほんのわずか、痙攣じみて身動いだ。 けれど生者の歩みは止まらない。 その手を引いてくれる誰かが居るなら、きっとまた歩き出せる。 (-4) 2022/06/14(Tue) 2:17:38 |
カナイは、いたい場所へ戻る為に。 (a5) 2022/06/14(Tue) 2:17:46 |
【秘】 クラックドグラス カナイ → 日の中 フカワ──死者が一切の瑕疵無く戻って来る事は無い。 現実は絵空事のように自分達に都合の良いものではない。 突き立てられる針が、自らに何を齎すものであったとしても。 死せる愚者は、 の を享受する。 朝日と共に、涼やかな風が吹き込むような。 冷たくて、けれど心地よくて、微睡みを拭い去るような清爽さ。 色なんてあるはずもないのに、 なぜか清浄な 青白さ を感じ、そう認識するその感覚に安らかで、けれど抗いがたい眠りから意識が引き戻されて。 胸の内に蟠っていたものが氷解していくような、感覚。 「────、」 重たい瞼が震えて、死の眠りから覚めた者の時間は動き出す。 死の間際の記憶が、フラッシュバックのように想起される。 神経を灼く激痛、寒気、遠退く意識、それから、──それから? 目の前に居るのは誰だ? 定まらない視界、ぐらぐらと揺れる意識の中 目の前の誰かを混濁し混乱した思考のままに、 (-5) 2022/06/14(Tue) 2:19:07 |
【秘】 クラックドグラス カナイ → 日の中 フカワ取り押さえようとして、けれど。 先まで死の淵にあった身体がそう言う事を聞くはずもなく。 「──ぁ れ、……?」 きっと伸ばした手はあなたの服を掴んだけれど、 逆に言えばそれだけがせいぜいだった。 力を入れ損ねた手足は身体を支えるバランスを崩して、 あなたに倒れ込むか、あなたと一緒に倒れ込むかの何れかだ。 「………ああ…」 視界が漸く像を結んで、 小さく掠れた声が零れた。 『私も……もう一仕事してから、そちらに行きますから。』 「…随分…はやかった、ですね……深和さん」 或いは、ずっと傍に居たのかもしれないけれど。 眠っている間の事まで把握しろなんて無理難題は言わないだろう。 ひどい悪夢を見て、飛び起きた後のようだ。 ずっとあなたから、あなた達からしていた嫌な気配がしない。 もう何も感じない。あの懐かしくも恐ろしい感覚も、何も。 けれど、けれど全てが些末な悪夢だったと思えはせず、 そして何より、そのようにしたくもなかった。 叶 西路にとって今自分が認識しているこの全ては現実で、 神も地獄も煉獄も天国も存在せず、比喩として在る概念だ。 つまりはきっと、今この現実こそが自らの歩むべき地獄なのだと。 (-6) 2022/06/14(Tue) 2:21:26 |
カナイは、針の路を歩く。 (a6) 2022/06/14(Tue) 2:21:33 |
【秘】 ラストリゾート フカワ → クラックドグラス カナイ「───」 力の赴くままに押し倒される。 また映画か劇かを見ているようで、 それを現実のものと認識するには、暫し咀嚼が必要で。 最後の手段に頼っておいて、なんとも情けない。 「ああ……思ったよりあっけなかった、な」 ここでの戦いも、ひとりで決めた決意も、 誰かの望みの、己の祈りも、その全てが、 実にあっけなく終わって、叶って、それだけ。 所詮自分は筋書きを変えられるほど強くなくて、 だから、ご都合主義とか、誰かの献身とか、 そんなものに頼らなくちゃならなかった。 日向と西への路を、遠くまで延ばした悪夢は、 冷たくて、苦しくて、怖くて、寂しい。 ───だから この現実で、貴方といたかったんだ。 (-7) 2022/06/14(Tue) 6:46:14 |
フカワは、ますますいたくなる。貴方のせいだ。 (a7) 2022/06/14(Tue) 6:48:18 |
【秘】 ラストワード フカワ → クラックドグラス カナイ「後悔していることが、沢山あるんです」 「やらなくちゃいけないことが、まだ沢山あるんです」 もう心の音が勝手に代弁してくれるわけじゃない。 あらゆる考えを、自ら言葉にしなくてはならない。 ああなんて恐ろしくて、わくわくすることなのか。 「何からやればいいかわからなかったけれど、 やはり、真っ先に貴方を起こして正解だった。 ひとりじゃないから、怖くないと思える」 「叶さんが守ってくれたから、 あの後……誰も欠けることが無かったんですよ。 貴方のせいです。 貴方のせいで、隠し事なんて出来なくなっちゃいました」 「だから───ありがとう。 既に取り返しがつかなかったのだとしても、 これ以上失わずに済んで、本当によかった」 (-8) 2022/06/14(Tue) 7:01:20 |
【秘】 クラックドグラス カナイ → ラストワード フカワ倒れ込んだ先、その肩にとんと額をつけて。 ぐるりと目眩く視界に耐え切れずまた暫し瞼を閉じた。 死の間際の痛みも、寒気も、まだ名残のように身体に蟠っている。 「…………」 深く息を吐いて、その間も確かに鼓膜が音を拾う。 あの時と違って、けれどあの時と同じに。 その声が、その体温が、どうしようもなく安堵を齎すのは。 それで、いいんだろうか。 「……どうして、…」 なんて、それこそ愚問なんだろうけど。 「どうして、おれなんですか…… …どうして、ありがとうなんて言うんですか。 おかしいですよ……ほとんどは、おれのせいなのに」 あなた達を守ったのは、結果としてそうなったに過ぎなくて。 誰かを傷付け、不安を広げる者が居なくなったなら その後誰も傷付く事が無いのは当たり前の事。 ここであった悲劇の大半はきっと、自分のせいなのに。 それじゃあまるで、ただそれだけじゃないみたいじゃないか。 自らの愚かな行いの、その責任を負う為に。 その為だけに起こされた、だけじゃない、みたいじゃないか。 (-9) 2022/06/14(Tue) 18:00:28 |
カナイは、いたいけれど、いたいだけではなくて、 (a8) 2022/06/14(Tue) 18:00:55 |
【秘】 クラックドグラス カナイ → ラストワード フカワ赦されたみたいだとは、思わない。 罪が帳消しになったとも、思わない。 幾度も過った後悔や罪悪感、後ろめたさ。 それらが無くなったとも、思わない。 ただ、それだけじゃないように感じた、それだけ。 「………ねえ、深和さん。 おれは……このまま生きていたら、きっと。 いつか、また人を殺します」 一度踏み越えてしまった一線は、得てして抑止力を失うもの。 これが強さなのだとしたら、それは実に間違ったものだった。 恐れるものを、自分に不都合な筋書きを遠ざけようとして ただ闇雲に猜疑と爪を振るい、牙を剥いていただけだった。 それが死の間際、漸く悔悟に至っただけの。 「そうならないように……そうしなくていいように。 どうしたらいいか、今度は一緒に考えてください、ね」 自分達は同罪で、一人ではない、 互いに頼る事のできる仲間。そんな関係が、今も続いているなら。 もう一度、ゆっくりと息をして、緩慢に身を起こす。 調子も気分も良いとは言えないけれど、幾分ましになった。 であればこれ以上寝ているわけにもいかなくて。 (-10) 2022/06/14(Tue) 18:05:10 |
【秘】 晴の再路 カナイ → ラストワード フカワ──この意思はそれらの疵を戒めとして残す事を選んだ。 あなたに疵だらけの右手を差し出して、引き起こす。 こんな疵と血に塗れた両手でも、もう嫌とは言わせない。 「あなたが生かしてしまったんですから」 あなたが再び同じ日の中へと手を引いたのだから。 「それもこれも、おれのせいだから」 あなたに同じ罪を背負わせてしまったのだから。 「責任を持って……責任を取らせて、くださいね」 きっと、まだ。 終わっていない事も、叶っていない事も沢山あって。 だからきっと、この路の先は、長く遠く。 (-11) 2022/06/14(Tue) 18:06:40 |
カナイは、晴の路を歩く。 (a9) 2022/06/14(Tue) 18:06:47 |
カナイは、いつかその中で、同罪とか、同族とか、責任とか。 (a10) 2022/06/14(Tue) 18:06:53 |
カナイは、それら建前が無くとも、同じ路を歩めたなら。 (a11) 2022/06/14(Tue) 18:06:59 |
カナイは、あなたを、あなた達の事を、正しく好きになれるのだと思う。 (a12) 2022/06/14(Tue) 18:07:06 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ――エマの助けを受け、暗澹たる状況は晴れ始めた。 今まで混乱のために見えなかったものも、少しずつ見え始め、 互いに向けられた不安も、ひとつひとつ解消されてきた。 自分たちで協力しあったなら、今度こそ欠けることなく外に出られそうだ。 >>3 伊縫 彼が治療を受けている様子を見て、ほっとしたように歩み寄る。 顔色はまだ悪いかもしれないが、今なら安心できるような、気がする。 以前にもこうして様子を確かめた気がする。その時には、今よりもずいぶんひどい状態だったが。 「……大丈夫か? だいぶん調子がよくなかったようだが。 エマの説明までは、聴こえていたか?」 (4) 2022/06/14(Tue) 18:13:13 |
【人】 海底撈月 ヌイバリ>>4 古後 しばらくはあちこち体を確かめたり、眉間に皺を寄せてなにごとやら考えていたようだ。 顔色はまだ万全とは言えないが、それでもあなたを見るとぱっと破顔した。 「愛施!おかえり! ん〜…………ちょっと熱っぽかったんだけど、薬打って貰ったら楽になったよ。気が抜けたのかなあ。 あ、ちゃんと説明は聞いてたからな!目閉じてただけで、寝てたわけじゃないからな!」 少し考え込むような、誤魔化すような物言いだった。 死の予感は実際のところすぐ間近までやってきていてものだから、あれは薬の副作用だったのだろうと青年は考えている。 去った危険については知らせない方がいいだろう、と判断して、自分から言い出した約束は決して破っていないと必死にアピールする。 「あれ、そういえば愛施はもう注射したのか?」 なんだか予防接種もう行った?とでも言うような、気軽〜な問いかけが飛んだ。 (5) 2022/06/14(Tue) 21:28:14 |
【秘】 日がな向き合う フカワ → 晴の再路 カナイ「貴方がそうならないように。 今度は決して取りこぼさないように、 オレももっと、しっかりしていきます。 お互いに大事なことを突然頼んだり、 あるいは一人で抱え込んだりしなければ、 きっと───もう繰り返さないはずです」 勿論全てが上手くいくわけじゃないだろう。 やはり当たり前のように悲劇的な事は起こるだろうし、 また、追い詰められてしまうことだって、きっと。 それでも、過ちを認めて、逃げずに立ち向かい、 頼るべきものに頼るなら、同じ結果には絶対にならない。 掴んだ手をあの時のように両の手で握って、 確かにそこにある人肌の熱が、こんなにも嬉しくて。 「オレだって……結構、頭がおかしいんだと思います。 ええ、貴方の言う通り。間違いはなくって。 だから、だからこそ必要なんですよ、叶さんが」 思わず、皮肉気に言う。何を言っても、 我々は端から一人では生きていけない、強くない人間で、 力を合わせればそれなりに頑張れる、弱くもない人間。 分かってしまえば、やはりそれだけの簡単なことだ。 (-12) 2022/06/15(Wed) 12:48:10 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日がな向き合う フカワ「おかしな人ばっかり」 そういう約束、ではあったけれど。 この罪ばかりを重ねた手を必要として、 こんなどうしようもない人殺しに『ありがとう』なんて言う。 罪人として西へ行き着く事よりも、 その罪咎を背負って、なおも日の下で生きて行く事を望む。 気付けば周りはそんな人間ばかりのようだった。 「…真っ当じゃないのは、同じなんです。 だからまたあなたを間違った事に巻き込むかもしれないし、 暗闇の中で咄嗟に進んだ方向が合ってるとも限らなくて……」 結局のところ、叶 西路は歪な人間だ。 けれど正常な道徳観は持ち合わせていて、 モラルに反した行いを咎める良心や理性もある。 やりたくない事を、それでもやらなければならないと そう思い詰める事さえ無ければ普通の人間で居られた。 そんな、何処にでも居るような、運の無い人間だ。 「だから……おれにできる事は、過ちを認めて、向き合って もう繰り返さないように。それを忘れない事と、…」 「これからも、あなたと一緒に。 二人で同じものを背負って、分かち合う事だけです」 結果として、やる事は初めから何も変わらない、簡単なこと。 一人で抱えるには重すぎるものを、二人で抱えるだけ。 (-13) 2022/06/15(Wed) 21:08:19 |
カナイは、決して強いとは言えない人の事が結構好きだった。 (a13) 2022/06/15(Wed) 21:08:29 |
カナイは、理由は言ったら怒られそうだから、言わないけど。 (a14) 2022/06/15(Wed) 21:08:36 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日がな向き合う フカワ「でも、」 一度、するりと手を離して。 片手を床について、もう片手は壁に添えて立ち上がる。 まだ少しふらつくけれど、どうにか一人で立てそうだ。 「…おれがそうしたいから、 だから一人で責任を果たしたい事が、まだあるんです。」 自分にとって、この場所は。 逃げてしまったり、途中で投げ出してしまった事ばかりで。 だから、それらを拾い集めて来る事くらいは、自分の手で。 「それでも、あなたに話してない事もまだあって、だから…… 全て終えたら、ちゃんと戻って来ますから」 「それだけは、一人でさせてくださいね」 その路に、何があったとしても。 もう言った事を、言われた事を、反故にはしない。 だから──この先は、自分だけで。 (-14) 2022/06/15(Wed) 21:11:03 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>5 伊縫 「……熱っぽかった、ね。まあいい。詮索するのは生産的じゃないからな。 少なくともこれ以上不愉快ななにかに蝕まれるということは、無いらしい。 そんな便利なものをいくらも用意できるなら、騒動のほうも治まるだろう」 果たしてどんな手を使ってそんなものを手に入れたのか、わかったものではない。 そして、同時に彼女がどれほどの労力を賭してそれほどのことをやってのけたのかも。 脱出するまでの短い道をどのように切り抜けるか、必要なものをかき集めつつ。 疑わしいような、恨めしささえあるような目で貴方の顔をじっとにらみつける。 もしくは観察しているのかもしれないが、愛嬌のない表情からは知れるものもない。 「僕はまだだ。退去する前にやるべきことがあるかもしれない。 撤収する前にはどうにかするから、気にしなくて良い」 エマにはきちんと治すつもりであることを説明した上で、今は固辞しておいたらしい。 記憶に関わる力は、これから外で生きていく者には必要となることもあるだろう。 それが誰で、どんなふうにか、なんてのは交友が狭かったぶんわからない話だ。 (6) 2022/06/16(Thu) 0:16:50 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>> 叶 「……ああ、そうか」 言葉をかわしながらに、思い出したように手を手で打つ。 それから、破損しないようにハンカチにくるんだままにしてあった余剰の薬剤を、 貴方のほうへと押し付けるように寄越した。 手はさっと引き上げられ、返却は許されないらしい。 「僕は誰がこれを必要としているやら、皆目検討もつきませんので。 "約束"をした貴方が、どうするのかは決めてくださいね」 そう言い残し、撤収準備に立ち返る。 それが、掌の上の希望が誰に向けられるべきであるかは。 自分よりも貴方のほうが、知っているはずだと、わかっているのだ。 (7) 2022/06/16(Thu) 0:19:29 |
【人】 晴の再路 カナイ>>7 古後 「あの時、……僕達の事を 助けてくれて、ありがとうございました。」 少し以前の事。会議室のやや手前、廊下での一件。 そこでの出来事は、 少なくとも自分達にとっては些細なものではなくて。 あの時、確かに自分は多少なりあなたに恐怖を抱いていて。 それを知らずとはいえど、 そして、あなたにとってはそれが当然の事だったとしても。 寄る辺など何処にも無いと思っていた自分達の事を、 あなたは確かにその身を挺して助けてくれたのだ。 その事は、確かに皆が行き着く先を変えたのだと思う。 「それから…今もまた、こうして助けてくれて」 年甲斐も無い、助けられてばかりだな、と思う。 とはいえ事実今の自分にできる事が何かと言えば、 あなたのその行いを、その言葉を裏切らない事が最上だろう。 「ありがとうございます。 あなたが、皆が無事で、本当によかった」 手渡された希望は、届けられるべき先へ。 だからあなたに返すのは、この言葉だけ。 (9) 2022/06/16(Thu) 1:40:25 |
【置】 晴の再路 カナイ──この先は、自分だけで。 話を終えた後、預かったものを二つ持って、資料室を出た。 その用途を委ねられた注射器と、今ここには持ち主の居ない、 ロックされたファイルばかりのタブレット端末。 ふと、こんなに心細いものだったかな、なんて思った。 安全な場所を離れ、一人で行動するなんて この数日の間で何度もしてきた事なのに。 とはいえそれも当然の事で、そもそもの話。 これまで自分が形振り構わずあちこち出歩く事ができたのは ただあの力の殺傷力に頼り切っていただけなのだから。 人気は無く、人以外のものは遠く。 実際はもう自分達以外に動くものは少ないようだけれど、用心深く慎重に。 気配を感じ取るなんて事ももうできないから、頼りになるものは五感だけ。 資料室を後にして、随分静かになった廊下をやはり恐る恐る歩いて、 一回、二回、角を曲がって、…… 三回目の角を曲がっても、 今そこにあるのは幾度か見た事のある扉だけ。 (L0) 2022/06/16(Thu) 3:37:50 公開: 2022/06/16(Thu) 3:40:00 |
【置】 晴の再路 カナイ「職員仮眠室」のプレートが掛かったその扉を開けて、 いつかこの場所を後にした時同様、静かに電気を点けた。 あの時からどれだけ時間が経っているんだろう、 なんてふと過った詮無い考えは答えがあるはずもなくて。 神様なんて居ないと思っている。 少なくとも、子供心に思い浮かべるような都合の良いものは。 もしもそんなものが居るのだとしたら、 どうしてもっと早く、他の形で助けてくれなかったんだ。 そうはならなかったから至った今を否定したくはないけれど、 弱い自分は、きっとそう思ってしまうのも事実だろうから。 神様なんて、居ない方が良いと思っている。 けれども居ない事を証明できはしないから、 自分以外の誰かが居ると思う事を否定するわけじゃない。 自分にとっては、居ない方が良いものというだけだ。 もしもそんなものが居たとしたならば、 起きた悲劇を"それ"のせいにしてしまえるものだから。 (L1) 2022/06/16(Thu) 3:39:00 公開: 2022/06/16(Thu) 3:40:00 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ「…………」 やっぱり、まだ少し明るい場所は眩しくて。 再び室内を照らす明るさにほんの少し目が眩んで、 暫しの後、目が慣れれば仮眠室の中へ歩いて行く。 これまでの全てを、悪夢だったと思いたくはない。 「………弓日向さん。 …すみません……すぐに戻るつもりだったんですけど」 だからあの時、確かにこの手で寝台に横たえたあなたが。 眠りから覚めれば忽ちに消えてしまう夢のように、 何処かへと消えてはしまわず、今もそこで待っているのだと。 返る声は無くたって、確かにそこに居るのだと。 「また…待たせちゃったみたいですね」 約束したわけでは、ないけれど。 許されるのであれば、叶うのならば、そう思っていたくて。 (-15) 2022/06/16(Thu) 3:40:39 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ曲がり角を三度曲がったその先の扉の向こう。 もう、すっかり慣れてしまったでしょうか。 開け放てば、むっとするような濃厚な死臭が漂います。 他の……つまり、開放されている廊下だとか、 そういう場所と比べると、この部屋は随分静かで、 閉じられたままで、それこそ遺品を取りに来られた時以外は、 一切の光もなく、音もなく、ただ暗闇が蟠り。 ここは、大きく肉が裂けた胸元を淀んだ空気に晒しながら、 満足気な微笑みを浮かべて眠る、納められた死者の為の部屋。 ……随分短い間で、部屋は大きな棺に変わっていたようでした。 電気をつければ、血が和装を染め、ベッドから滴った血が 周囲に赤く広がっているのがよく、わかります。 ともすれば、それは赤い花を亡骸の周囲に敷き詰めたよう。 棺に納められた死者は、言葉を持ちません。返事も、しません。 あなたを責めもしなければ、許しもしません。 だからこそ悪夢のような光景は、あの時のまま。 ――あなたのしてくれた事への感謝を顔に浮かべて、 ただそこにあります。まるで、待っていた、というように。 (-16) 2022/06/16(Thu) 10:42:43 |
【人】 海底撈月 ヌイバリ>>6 古後 「話が分かって助かる〜。 はあ、あれ便利だったんだけどな……」 ふるり、と身を震わせてから青年は不思議そうな表情を作った。 自らの『想い』を『意思』のままに制御下に置いていた分、全ての主導権を一気に失ってしまったかのような感覚になる。 例えばそれは、恐怖であったり。 じっとこちらを睨むあなたと目を合わせ、へにゃりと笑う。 ここにいるのは怖い。怖かった。でも今は何だか大丈夫だと思えた。 無理矢理に誤魔化すのではなく、自然とそう思えた。 あなたがそこにいるからだ。 「……あんまり、無理しちゃだめだぞ? 出るまでの話とはいえさ、使うのも辛いだろうし。 注射怖かったら手握っててやるから言えよな…… 」あなたの能力に救われた人間はここにいる。 忘れることで救われる人間だってきっといる。 そのためにあなたが身を削ることだけは、釘を刺しておかねばと思った。 (10) 2022/06/16(Thu) 11:09:52 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミそこにあるのは、今や静謐な死の気配ばかり。 死者は何も語らない。死者は生者の罪を咎めも赦しもしない。 そこに何かを見出すのは、そして如何なる行いをしたとして。 ──結局のところ、やはり生者の身勝手でしかない。 「…………」 肌に纏わり付き、息をする度肺に蟠るような重苦しい空気。 これまで幾度も自ら作り出して、けれど。 人殺しの狂人とて、終ぞそれに慣れる事は無かった。 いつだって我に返れば後に残るものは恐ろしいばかり。 (-17) 2022/06/16(Thu) 19:29:07 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ「…ずっと考えてたんです」 それでもやはり、今も恐れるべきはあなたではなくて。 だから徐に、けれど迷わず死者の傍へと歩み寄って 手向けのような赤の中、ただ安らかに眠る表情に視線を落とす。 「あの時、あなたはもう、変われていたんじゃないかって」 悲鳴のような想いが書き連ねられたタブレットは、その傍らに。 血に汚れていない、まっさらなシーツを掛け直して そうしながらに、誰に届くかも知れない、身勝手な独白を零す。 「あなたにはもう、自分の抱えるものを誰かに打ち明けて」 文字だけの言葉の裏に何があったとしても、 あなたがあの時自らの背負うものを打ち明けたのは事実で。 「誰かを頼る勇気があったんですよ」 あんな形になってしまったとは言えど、 あなたがあの時、誰かの助けを求めた事も事実なのだから。 そうして変われたからある今が、きっとそれを証明してくれる。 (-18) 2022/06/16(Thu) 19:30:52 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ「…後悔が無いなんてとてもじゃないけど言えなくて」 結局、あんな形であなたを助ける事になってしまった。 「やらなきゃいけない事、終わってない事も沢山あって」 ここから無事に出たとしても、良い事ばかりではない。 「せっかくできた約束だって、 まだ全部は果たせていないんです」 それでも、まだこれからだったはずなのに。 もし無事に外に出られたら、なんて。 あの時は、口約束未満の皮算用だったかもしれないけれど。 それでも。 あなたがこれから先の事を話してくれたのは、 実は結構、嬉しかったんですよ。 (-19) 2022/06/16(Thu) 19:31:37 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ「……おれはやっぱり、神様が居るとは思いたくなくて」 また一つ、息をして。 重く停滞した空気を鼻腔に肺に感じながら。 「でも、わかったんです」 「助けてくれる人は、案外居るんだって」 眠り続ける少女の、冷たい腕をとって。 確かな一人の意思によって、向ける先をこの手に委ねられた希望。 戒めでも、断ち切る為でもないその針を皮下に潜り込ませた。 それが再び同じ結果を齎してくれるとは限らない。 けれど、深く昏い眠りの中に、ほんの少しだけでも。 あなたが導とできるような、光を落とす事ができればいい。 それを導として、暗い森を抜けた先が何処であったとしても。 叶 西路は、あなたの味方だ。 行き着く先が何処であったとしても、これからも、ずっと。 一人では沈み行くばかりの西日でも、 一度は砕け、罅割れの残るガラスでも。 誰かの光を受け、反射して、ほんの僅か。 あなたに光を届ける事は、できるのだと。 身勝手だとしても、今だけは。 誰の赦しが無くたって、そう信じる事だけは。 (-20) 2022/06/16(Thu) 19:33:22 |
カナイは、晴の路を歩く。 (a15) 2022/06/16(Thu) 19:38:16 |
カナイは、日向から暗い夜へ、その光を届けに行く為に。 (a16) 2022/06/16(Thu) 19:38:30 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイあなたの独白が、棺の中へ降り積もります。 もう噴き出すほどの血も残っていないのでしょう、 まっさらなシーツは微かにその白を赤に染めただけでした。 傍で見れば尚更、血の失われた青白い肌が目立つのです。 それでも、幾つも、幾つも言葉を零していけば。 その空っぽになった胸にある、半分以上潰れた少女の心に 幾らかは零れず残るのかもしれません。 あなたが、考えてくれたことが。 あなたが、守った約束のひとつが。 あなたが、人に少し近づけた事実が。 そして、西へ旅立ったあなたが、叶西路が、今ひとたび。 東から現れて、傍で味方をしてくれる。それが、 きっと、少女にとっては、なにより嬉しい事なのです。 (-21) 2022/06/16(Thu) 21:41:48 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイぶつり、冷たい身体に幾らかの抵抗をしながら針が刺さります。 流し込まれる薬液が、その腕の内部へと滲みていって。 そうして、全てがからっぽの身体に流し込まれました。 それだけでした。 血流の止まった体では、薬液が行きわたる事もありません。 神に弓を引いた少女は、 の を受け取れないのでしょうか? 変化のないまま、数十秒が経って、きっともう何も起きないのだろうと思った頃に。 「こぷっ」 と。小さな音が聞こえました。 (-22) 2022/06/16(Thu) 21:42:49 |
マユミは、その固まった微笑みの口から、血を流しています。 (a17) 2022/06/16(Thu) 21:43:09 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイこぷ、ごぷ。 ……少女の微笑んだ顔は変わらないままに、 血が口から垂れ流されます。 それと時を同じくして、シーツの奥から音が鳴り始めました。 ぱき。ぱき。 ――目の前で、シーツが持ち上がっていきます。 抉れたような形だったそれは、音と共に膨らんで。 胸骨が再生しているのでしょうか、 ぱき、ぱきり。 そして、脈動の音が聞こえます。どくん。どくん――。 (-23) 2022/06/16(Thu) 21:45:02 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ心臓の稼働する音がする度、口から血が吐き出されます。 マットレスが血で赤くなり、シーツの赤がじわと広がりました。 ぱき、ぱき。 また、シーツが盛り上がります。ゆっくりと。それを以て、シーツの赤が広がるのは止まりました。 少し形の歪んだ二つの山が布一枚を隔てて、 すっかりと元のように現れるのがわかります。 針を刺した腕の血色は、気付けば随分と人のそれに近づいて、 未だどくん、どくんと響く音は力強く。 口から流れた血は枕を重くする頃に、やっと止まりました。 腕から肩にかけて空いていた丸く小さな幾つもの穴は きっと結晶を生やしていた痕でしょう。 それらもまた、安心して眠るように瞼を閉じて治っていきます。 そして、ひと際大きく。 どくん 、と響いて――。 (-24) 2022/06/16(Thu) 21:46:52 |
マユミは、目を開いて、大きな血の塊を吐き出しました。 (a18) 2022/06/16(Thu) 21:47:07 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ少女は、酷く混乱した様子でした。 開いたばかりの目を白黒させて、見えているのかいないのか、 手さぐりに胸元のシーツをぎゅうと掴んで、 その血で濡れた感触に肩を跳ねさせます。 未だぼたぼたと垂れる口元からの血に何度も何度も咳き込んで。 目元からは苦しさからか涙の粒が幾つも零れます。 その手が、ふらふらと辺りを探ります。 その指が、ふらふらと伸びていきます。 一番近くにいるのか、あるのか。 見覚えがある色な気がするそれに、すがるように。 はくはく、口が動きます。 「たすけて」 叶の方へ、苦しげに。助けを求めました。 あの時よりはずっと、普通に。 (-25) 2022/06/16(Thu) 21:49:19 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ針先は、蒼白な肌の僅かな抵抗だけをその手に伝えて。 そののち、ゆっくりと押子を進めていけば、 シリンジを満たす薬液はすっかりなくなってしまった。 そうして針は抜き去られ、空っぽの注射器はよそへと置かれ。 それが齎す結果を、自らの身勝手が行き着く先を。 どこか祈るような気持ちでただ見ていた。 自らが祈る神など居ないとしているのに、おかしな話だと思う。 それでも暫しの後に、そうおかしな話でもないのだと。 そう思ったのは、今この場に於いて、この祈りの先はきっと 神でもなく、運命でもなく あなた自身に、だったからだ。 (-26) 2022/06/16(Thu) 23:52:49 |
カナイは、だからただ、あなたに祈るだけ。 (a19) 2022/06/16(Thu) 23:52:55 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ実際はきっと、そんな思考の間は短くて。 その間に、何らかの変化を見受けられるはずもなく。 これは忽ちに全てが良くなるような、そんなものではないと。 そう理解してはいても、一抹の不安を覚え始めた頃。 「────、」 少しずつ、水が溢れ出すような、小さな音。 再び流れる血。死の停滞が、その均衡が崩れていく証左。 それが少女にとって、或いは自分にとって、善いものであるのか そうでないのかは、今はわからない。 シーツの下、液体が立てるものではない、やや硬質な音。 幾度か聞き覚えのあるそれは、少し不穏なものを感じさせた。 けれど、それでも、いつかの時に聞いた、 まるであなたの心が軋むような、凄絶な音ではないものだから。 そして、何よりも。 あなたの表情が、穏やかなもののままでそこにあるから。 だからただ、黙ってその光景を見守っていた。 再び巡り始めた血が未だ残る傷から溢れ出し、 毀された人体が独りでに形を変え、元の形を取り戻していく。 おおよそ奇跡などと呼べはしないであろうその光景を、 その行く末がどうなろうとも、事実として向き合う為に、ただ。 (-27) 2022/06/16(Thu) 23:53:29 |
カナイは、後悔している事が無いとは言えない人間だ。 (a20) 2022/06/16(Thu) 23:53:37 |
カナイは、けれど、今にして思えば、後悔ばかりでもなくて。 (a21) 2022/06/16(Thu) 23:53:45 |
【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミそうして、それら急速な変容に区切りをつけるように。 一度鼓動が大きく脈打って、閉じていた瞼が開かれる。 また一つ、少女の口からは多量の血液が溢れ出て。 混乱も顕に咳き込み涙を流し、けれど確かに、生きている。 そうして死者を安らかな死の眠りから引き摺り出す事が、 どれだけ残酷な事なのだとしても。 また罪を重ねる事になっても、それさえ承知の上でした事だ。 「大丈夫」 彷徨う手指を柔く、けれど確かに捕まえて。 この手が、暗く冷たい眠りから覚めたばかりのあなたを 安心させられるほど温かなものであるかはわからないけれど。 「ちゃんと傍に居ます。」 何処かしら血で汚れるなんて今更な事。 あなたは今、ひとりぼっちではない。 それさえ確かに伝わるなら、それで。 「落ち着いたら、ゆっくり息をして…… ちゃんと待ってますから、焦らないでいいんです」 あなたを待たせてしまった分、今度は自分が待つ番だ。 そうしたら、改めて『おはよう』を言おう。 (-28) 2022/06/16(Thu) 23:54:51 |
カナイは、何より今は、しなかった事で後悔をしたくはなくて。 (a22) 2022/06/16(Thu) 23:54:59 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイただ一度。 捕まえられた手は、びくりと大きく跳ねました。 インザダーク きっと、少女の目はまだ見えていなかったのでしょう。 少女のその手はずいぶん、冷たくて。 冬のあいだじゅう、ずっと外に出していたような冷たさでした。 だからでしょうか、少女は……一度跳ねさせただけで、 その後はあなたの手を指で慎重になぞっています。 形を、そして熱を確かめているのです。 きっと、そのせいであなたの手は赤黒く汚れてしまいます。 まるで、少女があなたによって殺された事を、 改めて示すかのようでした。それでも、少女は続けます。 そうして震える指は、少しずつ、落ち着いていくでしょう。 それは、氷が溶けるように。 そこに居るのが誰か、分かったように。 だから、『大丈夫』のあと。 咳き込む自分の音を聞く事すら惜しんで、 酷い耳鳴りの中で、確かにその声を拾ったのです。 (-29) 2022/06/17(Fri) 0:41:46 |
【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ……はじめは。少女はそれを、夢かと。 それもとびきり、幸せな夢かと、思ったのです。 地獄以外に行く場所などありはしない自分が、 そこへ行く前に持たせてもらえた最後の幻なのかと、 冷え切った身体を抱えて思ったのです。 だけど、違いました。 それは、夢なんかじゃありませんでした。 それは、幻なんかじゃありませんでした。 そこには、温もりがありました。 嫌悪を呼び起こすような、自分を穢す 熱 ではなくて。いつか、ずっとまえに、他愛ない会話で得たような。 それこそ、お散歩をしていた時の。 ……ただ、じんわりと暖かい―― (-30) 2022/06/17(Fri) 0:42:35 |
マユミは、咳がやっと落ち着きました。 (a23) 2022/06/17(Fri) 0:42:47 |
マユミは、深呼吸を二回、三回。 (a24) 2022/06/17(Fri) 0:42:56 |
マユミは、ぼやけた視界が、はっきりとしてきます。そして、 (a25) 2022/06/17(Fri) 0:43:10 |
マユミは、あなたをみつけました。 (a26) 2022/06/17(Fri) 0:43:19 |
マユミは、ぼろぼろと涙をこぼして、飛び込みます。 (a27) 2022/06/17(Fri) 0:43:27 |
【秘】 日向の再会 マユミ → 晴の再路 カナイ――おひさまのような、あたたかさ。 マユミは、今、生きています。 in the sunshine. あなたと一緒の場所で。 (-31) 2022/06/17(Fri) 0:45:20 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ──日は沈めばまた昇る。 暗く、寒く、寂しい死の夜は終わり、 少し眩しいけれど、暖かな日の差す時間がやって来る。 夢も悪夢も一様に、覚めても消えて無くなりはせず 一度夢から覚めた人間の歩む路の名は現実だ。 「────あ わ、 〜〜ッ 」いつかの時と、似ているけど違う。 なんとも格好の付かない声を上げて、それでもちゃんと。 若干バランスは崩しかけたかもしれないけれど、 ぐっと踏ん張って、今度こそ、確かにあなたを受け止めて、 (-32) 2022/06/17(Fri) 4:46:43 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ「………おはようございます、弓日向さん。」 一つ息を吐いて、へにゃりと笑った。 紛れもなく、現実だ。 今ここにある、明るさも、あたたかさも。 確かにあの時、自らの意思であなたを手に掛けた事も そして、確かに今こうして互いに生きて居る事も。 (-33) 2022/06/17(Fri) 4:47:20 |
カナイは、きっと良い事ばかりではないけど、それでいい。 (a28) 2022/06/17(Fri) 4:47:28 |
カナイは、今ここにある安堵もまた、現実なのだから。 (a29) 2022/06/17(Fri) 4:47:36 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ比喩ではなく自分が血に塗れている事もまた、現実で。 血に塗れた手も袖も、あなたの涙を拭うには憚られた。 だからその頬を伝うあたたかさは暫し流れるままにしておこう。 殺して、殺して、殺して、殺して、死んで。 その後に、一度は潰えた路の先へ、手を引かれて。 だから今こうして、その続きを歩んではいるけれど。 じっとりと血を吸った服をどうにかする間も無く来たものだから、 こちらも殺人現場から抜け出た惨殺死体宛らといった有様で。 近付いた分きっとひどく血の臭いを感じるだろうけれど、 これはお互い様という事で許されないかな、なんて現実逃避。 そんな詮無い事を考えながら。 あなたが落ち着くまで、言葉通り、ただ傍に居た。 触れようとする事に拒絶を示されなければ、 そっとその背を撫でる事は、あったかもしれないし。 そうでなければ、もう一度その手を取るだけで。 (-34) 2022/06/17(Fri) 4:49:59 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>8 >>9 叶 例えばあの時貴方達が敵であることをわかっていなくとも、 今ならわかっているか、と言われたら。 この不安定な力をそこまで意識的に扱えたのだ、なんて確証もないまま、 そうに違いなかったろうと、確信めいて思うことはできなかった。 そして、古後愛施は小さな疑念を過ぎ去った後まで持ち出す人間ではない。 自分以外の人間に、さほど価値を見出していないが故に。 「些事でも助けになったのなら何よりですよ。 僕は自分の周りのことしか、わかりませんので」 貴方の感謝の念の重さに比べれば、返した言葉のなんと軽いことだったろう。 背中越し、或いは横顔から放たれた"どういたしまして"がどれほど価値の在ることやら。 兎角、この出来事を超えて変わった様子のあった貴方に比べたら、 この青年ときたら、最初に偉そうにしていた様子から大きな変わりもなく。 それでも、返る言葉を受け取る腕は、変わらずそこに、あるだけだ。 (11) 2022/06/17(Fri) 4:53:32 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>10 伊縫 「結局のところここから離れるまで安心できるわけでもない。 僕は戦うための力というわけでもないけど……まあ、保険だ」 例えばひとたび使うだけで追手を振り払えるようなものだったなら、 もう少しだけ渋る理由もあったかもしれないし、或いは危険視されてしまって、 今よりも早くエマから駄目押しの注射が振る舞われていたかもしれない。 誰かを斃すに向かずとも、何が出来るわけでもない、とは思っていないようだった。 「……何が怖かったら手を握っててやる、だ。 注射が怖いから躊躇しているとでも思っているのか?」 長い前髪の向こうで眉間に皺を寄せて、渋い顔。 貴方の忠告を侮られたとでも思ったのかもしれない。 作業の手を止めて、伸ばした人差し指で額をつついてやろうとしたかもしれない。 けれども少なくとも。貴方の言葉に思うところは、あったのだろう。 まとまった荷物を脇に置いて、貴方の隣に座り込む。 「――でも、そうだな。 ここから出ていくまでの道中が恐ろしいなら。 僕が、お前の手を握っていてやるさ」 手を、差し伸べて。 (12) 2022/06/17(Fri) 5:14:49 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミそうしてあなたが幾許か落ち着きを取り戻した頃に。 ぽつりぽつりと切り出したのは、この後の事。 暗い夜を越え、朝に目覚めた者が、再び現実を歩む為に必要な事。 「…脱出経路は既に確保されていて、 おれが見た時は、無事な人の大半は資料室に居たはずだけど そろそろ出口に向かってる人も居る、かもしれません……?」 エマの帰還と、それが齎したもの。 それから他の生存者達の様子だとか、 自分が把握している範囲の事を整理する傍らに。 仮眠室に置き去りにされていた誰かの上着と、 それから傍らに置いていたタブレットをあなたに差し出した。 「それから……おれと同じなら、多分。 薬の影響で使えるようになっていた力は…… …もう使えない、みたいです」 それはつまり、あなたの望みは再び困難なものになったという事。 視線は一度、空っぽの注射器へ向けられて。 それから、自身の疵だらけの右手へと落とされた。 聞いた分には、そもそも力の抑制が主な用途のようで。 自分達に齎された作用は飽くまで副次的なものなんだろう。 「……でも…もう、一人ではなくて。 だから……どうすればいいか、これから一緒に考えましょう。 おれにできる事は、手伝いますから」 (-35) 2022/06/17(Fri) 5:21:04 |
カナイは、自分のそれは、どこまでも一方的な感謝だったのだと思う。 (a30) 2022/06/17(Fri) 5:48:45 |
カナイは、だからあなたが言葉を受けて、それに言葉を返してくれた事。 (a31) 2022/06/17(Fri) 5:48:56 |
カナイは、その重さや価値の如何を問わず、ただその事だけで十分だった。 (a32) 2022/06/17(Fri) 5:49:05 |
【秘】 日向の再会 マユミ → 晴の再路 カナイ目を覚ました少女は、おはようの言葉を確かに受け取ります。 ほろりほろり、幾つもの生きている証を零しながら、 同じ分だけ頷いて、声のないおはようを返します。 背中に手が伸びれば、やはり一度小さく震えますが、 しかしあなたの手を受け入れるでしょう。 代わりに、より強くあなたを腕に抱いて。 骨が突き破った和装はぼろぼろで、 指先はその背に直接触れる事になるかもしれません。 もしそうなら、その指には幾つもの深い溝…… 鞭で刻まれた大きな傷跡の感触が伝わります。 落ち着くまでは……きっと、血を吸った服を握りながら。 涙で血を洗い流す事は出来ませんが、零した分だけ―― あなたと共有した分だけ、薄まっていくはずです。 (-36) 2022/06/17(Fri) 11:13:54 |
【秘】 日向の再会 マユミ → 晴の再路 カナイ随分長くそうしていた気がします。 やっと落ち着いて、目元をごしごし。 自分が夜に居た間のあれやこれやを聞き取って頷いて、 上着を差し出されて初めて自分の格好に驚いて、顔を赤くして。 そして……使えなくなった力には、ほんの少し俯いて。 タブレットをゆっくりとなぞりました。 『わかったのです。 ありがとうございます、叶様。 とても心強く、そして嬉しいのです』 と全てを纏め、飲み込んでそう見せて微笑んでみせました。 あなたの視線を追って、……そしてそこでまた目を丸くして、 あなたの身体を慌ててぺたぺたとまさぐります。 上着を着るのもそこそこに、 タブレットを大慌てで叩いて、画面を見せて。 『血怪我大丈夫』 と、大変分かりやすい6文字の表示。 つまり、心配していました。とても。それはもう、すごく。 目前の少女は不安げに、視線をあなたの全身に注いでいます。 (-37) 2022/06/17(Fri) 11:14:33 |
【人】 海底撈月 ヌイバリ>>12 古後 「うんうん、こんな場所のことすっかりさっぱり忘れたい〜!って人もいると思うしな。 ……あとはまあ、出る前に怪我とかする人も、いるかもだし……」 いない方がいいのは間違いないが、途端に不吉な想像が湧き上がる。 見知った顔が苦しむ顔も、血に塗れた姿も、もう見たくないものだ。 腕を組んで深く頷いた。 「あ〜、今のは言葉の綾ってやつでぇ〜…… あてて、ごめん、ごめんって!注射する前にはちゃんと消毒しろよ!」 いつぞやのように、眉間に皺を寄せるあなたの顔を見て。 仕返しのようにつつかれた額を抑えて、青年はやっぱり笑った。 膝を抱えるように座ったまま、頭も膝に乗せるようにして丸くなる。 そうしてそのまま、差し伸べられたあなたの手を見て。 何やらむにゃむにゃと言葉にならない声を発してから、意を決したように口を開いた。 (13) 2022/06/17(Fri) 13:12:35 |
【秘】 暗夜行路 ヌイバリ → 棕櫚の主日 コゴマ「……ありがとうな、愛施。 俺、ずーっと怖かったんだ。 お前がそこにいてくれて、本当に嬉しいよ」 (-38) 2022/06/17(Fri) 13:17:18 |
ヌイバリは、差し伸べられた手をとった。 (a33) 2022/06/17(Fri) 13:18:26 |
ヌイバリは、ずっとずっと、怖くて仕方なかったけれど。 (a34) 2022/06/17(Fri) 13:18:43 |
ヌイバリは、一人ではないので。 (a35) 2022/06/17(Fri) 13:19:40 |
ヌイバリは、やっぱり、あなたに会えてよかった。 (a36) 2022/06/17(Fri) 13:26:12 |
【人】 篝屋に来た カジヤマ「ぎっ……ぐァッ……! いっでェ……!! マジきっっつい…」 焼けただれている背中と、傷ついた身体を起こす。 目を開けて、声を聞いた。ああ、本当に聞きたかった声達だ。 二日程眠っていた身体は不思議と大きな傷口だけを閉ざす形で再生した。 想像よりはひどくない、明らかに緩和している症状と怪我。 あり得ない治癒力と、まだ鈍く身体に残る痛みに思わず笑ってしまった。 これが、はじめての"治りかけている"という感覚だった。 「―― あは」 部屋で心配をされながら、笑って受け答えて内面を隠す。 今は叫んでいる暇はない。 また生き残ってしまった。 まだみていないからだ、あの日焦がれた炎を。 死んでもみたかった、この傷を与えたあの美しい光景を見ていないからだ。 これは、生きていたかったからじゃない。 醜い執着のせいだと、いつか、ぶちまけようかとは思っている。 「めっっちゃ、遅くなった。皆ただいま〜」 (14) 2022/06/17(Fri) 20:44:27 |
【独】 篝屋に来た カジヤマ『可哀想ね、一人になってしまって』 いらない。 『とても痛々しいわ、大丈夫?』 いらない。 『これからどうするつもりなの?』 一番知りたいのは、この俺だ。 思い出させる者全て燃えてしまえば良いのに。 自分の身体さえも、記憶さえも、全て消えてしまえば良いのに。 全部思い出させる、嫌なほどこの火傷が 一番美しかった景色[輝かしい豪炎] と一番嫌だった景色[大切な家族を喪ったこと] を思い出させる。生まれつきの変異した細胞と、虚弱体質。 病気が治らない、誰もかれもが匙を投げた。 現状維持と当たり障りの言い言葉をかける。 無能だ。 お前達は、自分の身体は、無能でしかない。 だから唯一俺は、俺だけを見捨ててはいけない。 ――誰も俺を助けなんかしない。 ――誰も俺を助けられなんかしない。 ――ああ、生きて居るのに死んでいる気分だ。 (-39) 2022/06/17(Fri) 20:47:36 |
【独】 篝屋に来た カジヤマ火事で身内を見失ってから、全てが壊れた。 迷子になっている。家族は許してくれないだろうか、 俺が、そちら側に行くのを許してくれないだろうか。 問いている時点で、答えなどできっていた。 『なー』 『俺ちゃん、寂しい系』 『――――――』 『……けっこー元気。 もうちょっとで就職、できそう』 『食事は、怒られてばっか』 『……自炊は、微妙。鍋とたこ焼きなら出来る』 『誰かと集まる時間があったら、パーティーしてえよ』 『また、あの日みたいに……』 『できんのかなァ』 立ち直れるなんてこと、できるのか。 「聞こえない、ってことは」 「もう天国にいったってことでいいんかな!」 馬鹿みたいに前向きに考えるの、好きな人達だった。 俺ちゃんもそんな馬鹿みたいな考え、いつだって好きだ。 病は気からなんて、何れだけ勉強してもわかんねえのにさ。 (-40) 2022/06/17(Fri) 20:53:01 |
【人】 篝屋に来た カジヤマ「さとみん、あんがと。」 付き添ってくれた後輩にお礼を言う。 まったく、無理矢理付き合わせてしまった。 歯医者に生きたくない子供のように。 「今皆の現状は……どうなってる系?」 冷や汗をかきながら、状況を確かめた。 特効薬……? が見つかったらしい。 そして、それぞれに手配されたと。 ――この薬を研究したい、まっさきに思いついたのはそれだ。 これさえ大量に作ることが出来れば、 己の怪我も誰かの怪我も簡単に治すことに繋がる。 病は気からというが、全く本当にどうして。 こんな曖昧な定義だからこそ、人は救われるのだ。 できるだけ頼み、薬を斡旋して貰う。 少なくとも自分の分と誰かに与える分は用意できた。 残り、ここで命を落としてしまったのは――…… (15) 2022/06/17(Fri) 20:54:43 |
【秘】 篝屋に来た カジヤマ → 氷肌玉骨を手に ナオアキ『――あきちゃん』 能力が消える前、吐き気を我慢してあなたに問うた。 この声は届かないのかも知れない。 『俺ちゃん、あきちゃんに生きて欲しい系』 要約して薬が見つかったことを告げた。 あなたの身体も己の身体もどこにあるかわかるのは初めてだ。 眠っていないのにこの能力を使っていると言うことは、 目を開けながら寝ているのと同じ気分で、相当気分が変だ。 『……なあ、もう化け物として生きるのは難しくなったよ。 戻ってきてくれねぇの? 普通に。 励ましてくれたとき楽しかったよ。 話そうって言ったのに、おねーさんのことまだ聞いてないし。 女装の話もまだじゃん。 …… 怪我治るんだって、 俺ちゃんもこうやって喋れるぐらいには、なってんの。 あんたの頭も治んねえ……? ……殴りかかられたくねえよ それより、もっと。もう話せないのが嫌なんだ』 『せめて身内に手を出すのやめちくりー……』 ただ、届くかわからない言葉をその場で呟いて。座り込んでいた。 報復が嫌なわけでも、怖いわけでもない。 命を喪う瞬間が好きじゃないだけだった。 (-41) 2022/06/17(Fri) 20:58:46 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミそうして、あなたからの言葉もまた、確かに受け取られる。 声は無くとも、その息遣いが伝わって。 こんなに近くに──同じ場所で、傍に居るのだから、きっと。 ぎゅうと抱かれた腕の中。 指の先に触れた傷には、ほんの少し目を伏せて。 それでもただそっと、その背を撫ぜるだけ。 あなたを理不尽に傷付けるものは、もう無いのだと。 少なくとも、今この時だけは、そう思えるように。 (-42) 2022/06/17(Fri) 22:46:32 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミそんな、一時の静かで暖かな時間の後。 あなたが顔を赤くすれば、 流石に一度、そっと気まずそうに目を逸らして。 タブレットをこちらへ向ける、見慣れた動作が 視界の隅に映れば、またそろりと視線を向けた。 「……今はまだ、何ができるか… どうすれば、少しでも良い方向に進んで行けるのか。 おれにもわからない事ばかりですけど……でも、」 「神様は、おれ達の事を助けてはくれなくて。 人も、……皆が皆、信用できはしないけど。 それでも、助けてくれる人は、確かに居るみたいなので」 暗い死の闇は晴れて、日向の路は続いていく。 それでも進むべき路が何処かは今はまだわからなくて、 それでも、手を引いて、同じ路を歩いてくれる人は居て。 それでいいんだろう。結局はそれが現時点の結論だった。 「だから……、 エッ待っ ど、」 (-43) 2022/06/17(Fri) 22:46:59 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミどうしたんですか、だとか言う間も無く。 そもそもの話どうしたもこうしたも理由は明白なもの。 それは不安げな様子と、表示された文章もまた物語っていて。 「………えーと……」 どうしようかな、なんて心の内では呟くけれど。 それは言い逃れを考えたわけでは、なくて。 はぐらかすのは、違う気がする、というか。 自分の行いが招いた結果には向き合うべきで、 つまり当たり前に怒られるべき事は、怒られるべきで。 たとえ気遣いからであっても、誤魔化しを雑えるべきではなくて。 「その……ちょっと死……にかけました、けど。 あっいや、誰かにやられたとかじゃなくて、その… 殆ど自業自得というか……そんな感じで……」 「…でも、……助けられちゃった、ので。 元気って言ったら嘘になります、けど、大丈夫です。」 「もう大丈夫。 だから、一緒に帰りましょう」 既に起きてしまった事実と、それから。 今はもう、心配するような事は無いという事実。 その二つを伝えるのが、きっと今の自分にできる一番の事。 (-44) 2022/06/17(Fri) 22:47:32 |
氷肌玉骨を手に ナオアキは、メモを貼った。 (a37) 2022/06/18(Sat) 2:40:11 |
【秘】 日向の再会 マユミ → 晴の再路 カナイぢっ…………と、視線を送ります。 それからふっ、と短く息を吐いて笑いました。 『生きていてくれたのです。 その上、僕を何度も助けてくれました。 ここは信じておくのです、叶様を。 はい、一緒に帰りましょう』 タブレットを見せながら、微笑んで。 シーツから脱し……ようとして、 袴もまたボロボロになっている事に気付き。 『自爆とはいえ、一張羅が完全におしまいなのです。 今後の路上生活に完全に支障をきたすのです。 流石の僕も半裸で公園のベンチやら 植込みの茂みやらで寝る勇気はないのです』 そんな文字を表示して、ひとまずしかたなしと シーツを腰にぎゅうと結びました。 破れてしまったサラシのせいで豊満な肉体も露わでしたが、 今は無理矢理閉じた上着のお陰でなんとか隠せています。 (-45) 2022/06/18(Sat) 3:10:57 |
【秘】 日向の再会 マユミ → 晴の再路 カナイ『後は僕の弓だけは回収したいのですが、 流石に望み薄な気がするのです。 服もない、弓もない、住居もない、ないない尽くし。 ですがまあ。命はありますのでよしとするのです?』 見せながら、あなたの血に濡れた袖を指先でつまみます。 『叶様もいてくれますし?』 なんて文字も躍らせて、甘く微笑んで。 ひとまず、本人的には脱出準備は完了のようです。 服装は非常に怪しいですが。 後はあなたに何かやりのこしたことがあれば、 少女はそれに付き合うつもりのようです。 他の面々が残っているなら、挨拶してもいいでしょう。 本来の持ち物が資料室にあるならそれもよし。 何もなければ、揃って帰っていくのでしょう。 放たれた矢のように。本当の太陽が待つ、日向へと。 (-46) 2022/06/18(Sat) 3:14:17 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ穴が開くほど見詰めるとはこの事か。 自業自得とはいえ、ほんの少しばつの悪い気持ちで居たけれど。 暫しの後、ふ、と零されたあなたの吐息と、その笑みに。 やや気が抜けたようにこちらもゆるゆると息を吐いた。 「…そうですね、ちゃんと……生きてます。 正直、これで良かったのかもわからない、ですけど… ……ろ、路上生活」 きっと表沙汰にはならないとはいえ、犯した罪は消えはしない。 自身の抱える歪なものもまた消えて無くなったわけではなく、 何より法や社会はきっと自分を許さないだろう。それでも。 生きる事を望んだ人達が居るから、今こうして生きている。 その事だって確かな事実だから、それは言わずにおいて。 そうして、再び液晶に表示された文章には流石に面食らった。 理不尽に家から追い出された、という事は聞いていたけれど。 この場所で再び会う以前、街中で会った時は、確か。 知り合いの家を転々としている、と聞いていたものだから。 オブラートの下、現実は思ったよりも逼迫しているようで。 (-47) 2022/06/18(Sat) 5:40:04 |
【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ「……見付からなかったら、新しいものを。 ここから出た後に、ゆっくり探せばいいんです。 生きているから……これからが、あるんですから。 …弓日向さんが嫌でなければ、家に来ても良いです、し」 ちょっとぎこちなく笑みを返し、そこまで言って、ふと。 帰った後の事を少し考えて、真っ先に思う事と言えば。 「次の仕事、探さないとなあ……」 あの場所では、もう働きたくはない。 確かに恩義はあるけれど、後ろめたい仕事を続けたくはない。 とはいえ逃げ場はそう多くない事は想像に難くなく、 今後も後ろめたい仕事を続けなければならないのであれば。 毒を食らわば皿までとはよく言うもので。 いっその事、この会社の翼下に入ってしまおうか。 そんな詮無い事を考えながら。 血濡れた白衣を放って、もはやどす黒く染まった上着も捨てて。 仮眠室に置き去りにされていた適当な衣服を拝借して、 惨殺死体宛らの見て呉れを少しばかりましにした後に。 あなたを連れて、あなたの手を引いて、戻って行く。 信じてくれた人の所へ、待っている人の所へ。 これまで通りの、とはいかないだろうけれど。 それでも、きっと悪い事ばかりでもない、そんな日常へ。 (-48) 2022/06/18(Sat) 5:44:16 |
カナイは、望みは叶い、日は巡り、夜を越えて、また朝が来る。 (a39) 2022/06/18(Sat) 5:44:37 |
カナイは、いつか日が沈むまで、いつか月が昇るまで。 (a40) 2022/06/18(Sat) 5:44:46 |
カナイは、ただ日向を目指して、晴の路を歩く。 (a41) 2022/06/18(Sat) 5:44:52 |
カナイは、人がいつかは行き着く西方は、けれど今は未だ遠くの彼方に。 (a42) 2022/06/18(Sat) 5:45:48 |
【秘】 日向の再会 マユミ → 晴の再路 カナイ『即今、当処、自己。 禅に曰く、変えられるのはその3つだけなのです。 今、ここ、自分、その3つ。僕は』 弓禅一如。弓道を修めていた時に習ったのでしょう。 そんな言葉を見せながらそこで一度区切ります。 再び見せた画面には、ほんの少しの血と、少しのヒビが ここで起きた出来事のように、残っています。けれど―― 『少し、急ぎ過ぎていたのかもしれません。 叶様の言う通り、ゆっくりでも。 探して行こうと思うのです。 やるべき事とは別に、僕が変わっていける道を』 その顔は、とても穏やかで、そして晴れやかでした。 それから僅かの間を空けてタブレットをなぞります。 『叶様が、居てもいいと言ってくれるのなら、 御厄介になるのです。 その分荷物持ちでも家事手伝いでも その他なんでもさせて頂くのです。 ですから 不束者ですがこれから、宜しくお願いします。』 深々、頭を下げました。 ポニーテールが零れ落ちて、上がった顔に笑顔をひとつ。 引かれる手を、きちんと握って。 共に、夜明けの道をいくのでしょう。 (-49) 2022/06/18(Sat) 11:25:30 |
マユミは、願いは届き、日は巡り、夜を越えて、また朝が来る。 (a43) 2022/06/18(Sat) 11:26:28 |
マユミは、いつか日が沈むまで、いつか月が昇るまで。 (a44) 2022/06/18(Sat) 11:27:41 |
マユミは、矢のように走るのではなく、人のように歩く。 (a45) 2022/06/18(Sat) 11:29:38 |
マユミは、いつか日が沈む時、いつか月が昇る時も―― (a46) 2022/06/18(Sat) 11:30:38 |
マユミは、あなたを、隣で照らしていたいのです。 (a47) 2022/06/18(Sat) 11:31:38 |
マユミは、いつか月が沈むまで、いつか日が昇るまで。 (a48) 2022/06/18(Sat) 11:32:11 |
【置】 暗夜行路 ヌイバリ>>叶 それは、叶の端末に届いたひとつのメッセージ。 いつの間にやら届いたそれを、あなたはそれを読んだかもしれないし、読まなかったかもしれない。 『はばかりさんへ …やっぱり今は叶さんて呼んだ方がいいのかな、 わかんないや。ごめんね。 高校の時、姉ちゃんの周りちょろちょろしてた俺の事、覚えてるかなあ? 俺もようやく思い出したくらいだから、 覚えてなくても当然なんだけど… 直接顔を合わせたら怖がらせちゃいそうだから、 こういう形にしました。 助けてくれてありがとう。 皆を守ってくれてありがとう。 こんなことでお礼を言われるの、嫌かもしれないけど。 辛い思いもたくさんして、悩んで、 これから、たくさん大変なことがあるかもしれないけど。 どうか少しでも怖いことが起こらないように、 平和に過ごせるよう願ってます。 いつかお礼ができるように、 今住んでる住所と連絡先書いておきます。 思い出したくないな、って時は消しちゃってください。 (漢字、覚えてなくてごめんね…) 』 (L2) 2022/06/18(Sat) 19:01:39 公開: 2022/06/18(Sat) 19:10:00 |
ナオアキは、聞こえなくなった声について考えてしまった。 (a49) 2022/06/18(Sat) 19:46:11 |
ナオアキは、死ななければならない。 (a50) 2022/06/18(Sat) 19:46:20 |
ナオアキは、罪の意識はやっぱりないけれど、人が罪と呼ぶものを犯したとは認めている。 (a51) 2022/06/18(Sat) 19:46:25 |
ナオアキは、人に咎められる望みを叶えようとした。が、 (a52) 2022/06/18(Sat) 19:46:37 |
ナオアキは、ここでやり切れなかった。二度とこんな機会なんて訪れないと思っている。 (a53) 2022/06/18(Sat) 19:46:39 |
ナオアキは、後戻りをしない。手を伸ばすことをやめない。これは譲れないこと。だから、 (a54) 2022/06/18(Sat) 19:46:50 |
ナオアキは、思ってしまった。 (a55) 2022/06/18(Sat) 19:47:56 |
ナオアキは、死ななければならない。 (a56) 2022/06/18(Sat) 19:48:09 |
ナオアキは、会議室でお喋り。最期まで。 (a57) 2022/06/18(Sat) 19:48:33 |
ヌイバリは、皆と、自分を傷つけた人のことを、許せない。 (a58) 2022/06/18(Sat) 20:49:52 |
ヌイバリは、許せなくても、理解できなくても、褒められた喜びは忘れられない。 (a59) 2022/06/18(Sat) 20:51:35 |
ヌイバリは、時折うずく痣と一緒に、奈尾さんのことを思い出す。 (a60) 2022/06/18(Sat) 20:54:22 |
【人】 棕櫚の主日 コゴマ>>13 >>-38 伊縫 「結局僕は自分の力でどこまで出来るのか、試したわけでもないしな。 ……土壇場までも楽な航行になるかなんてのは、誰にもわからない」 エマに聞かれれば、そんなことはこちらが心配することではないのだと叱られそうだ。 けれども彼女であっても、或いは他の誰であっても。 素直に聞くようには出来ていないのだから、簡単には楽観視してしまえない。 溜息をついて、わざとらしくどこか迷惑がっているような態度を取って。 そのくせあらかた準備を終えて先を征くための用意ができたなら、 叶や深和、彼ら"背負った"人間が戻るまでの短い時間を、待つことにした。 そう長いことではなく、ここに居座るでもなくて。恐らくはちょっと休憩する程度。 身体を休める、なんてことにも満たないくらいの、ほんのちょっとの話。 指先に灯る熱が重ねられるにしろそうでないにしろ、青年はそこに居た。 (16) 2022/06/18(Sat) 20:54:48 |
【秘】 棕櫚の主日 コゴマ → 暗夜行路 ヌイバリ「……僕は何もしていない。 ただ、怖かっただけだ。 お前があそこで、消えていってしまうのが」 (-50) 2022/06/18(Sat) 20:55:50 |
コゴマは、神の愛とは何のためにあったのだろうと、考える。 (a61) 2022/06/18(Sat) 20:56:35 |
コゴマは、乗せられた掌が違ったなら、掛けられた期待の形が違ったなら、此処にはいなかったのだろう。 (a62) 2022/06/18(Sat) 20:57:16 |
コゴマは、私の全ての労苦と、父の家のすべてのことを忘れさせてくださった者の祝福に祈った。 (a63) 2022/06/18(Sat) 20:58:01 |
【置】 晴の再路 カナイ斯くして悪夢は覚め、けれどその記憶は消えはしない。 癒えた傷も、その傷痕は残り続けるように。 この数日間に起きた事の全ては、たとえいつか記憶は薄れても それはきっと、人の一生を構成する要素の一つとして 自身の一部となり、内に溶け、馴染んでいったのであって。 良くも悪くも、消えて無くなりはしないだろう。 (L3) 2022/06/18(Sat) 20:58:11 公開: 2022/06/18(Sat) 21:00:00 |
【置】 晴の再路 カナイだから、そう。 自分がこの場所でしてしまった事も。 自分がこの場所で誰かに貰ったものも。 自分もそうなっていたかもしれない、誰かの行く末も。 いつの間にか届いていたメッセージも。 何もかも、過ぎた事として、この場所に置いて行きたくはなくて。 だから忘れはしないだろう。向き合い続けるだろう。 いつか自分の一部として、記憶の内に溶けて行くその時まで。 きっと外は、朝日が昇る頃。 斯くして悪夢は覚め、けれど時折それを思い返す者が居る。 傍で歩む誰かと共に、現実という路を歩きながら。 (L4) 2022/06/18(Sat) 20:58:41 公開: 2022/06/18(Sat) 21:00:00 |
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