21:51:28

人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


プロローグ

【人】 花瓶  

  

   想いは風となり人を導く。

   風は花弁を散らしてゆく。

  
(0) 2022/08/08(Mon) 0:33:07



到着: ソーネチカ

【人】 ソーネチカ



  
花咲病。

  それは身体に花が咲き、最期には大きな花弁となり
  命を散らすことになる奇病。
  薬などの有効な治療法は確立されていない、
  罹った人もほぼいない、珍しい病。

 
(1) 2022/08/08(Mon) 1:21:33

【人】 ソーネチカ



  
助かりたい?死にたくない?

  心を揺らしていくたびに
  またひとひらの
花弁
が落ちていきます。

  
(2) 2022/08/08(Mon) 1:23:28

【人】 ソーネチカ



  だから彼女は、諦めようとしました。
  静かに、来るはずの終わりを見据えて。
  

  これはそんな彼女の、お話。
     
―――独り、花に取り憑かれた人の、お話。


 
(3) 2022/08/08(Mon) 1:24:16
到着: サルコシパラ

【人】 サルコシパラ




   「命の終わりは美しいものだ。」



      そう信じてやまない男が今日も生を屠る。



(4) 2022/08/08(Mon) 2:02:21

【人】 サルコシパラ



男の周りは
で満ちていた。


(5) 2022/08/08(Mon) 2:07:33

【人】 サルコシパラ




   自分を産み落とすと同時に事切れる母
   妻に取り残された事実に絶望し首を吊る父

   空腹に泣く人を救うために喰われる家畜
   疫病によって命を落とす幼子達

   踏みつけられた花々のように
   男の周りではいつも誰かが枯れている。




(6) 2022/08/08(Mon) 2:10:38

【人】 サルコシパラ



   しかし男だけが死から逃れ
   死に取り込まれる人々を見せつけられる。

   それでいて、その散り際は美しくも儚く、惨く。
   男はいつも怯え、惹かれ、無情を憂いた。


(7) 2022/08/08(Mon) 2:12:12

【人】 サルコシパラ



    男の名はサルコシパラ。


      命の輝きに魅入られ、花を愛した
      孤独で哀れな、たった一人の人間である。



(8) 2022/08/08(Mon) 2:15:30

【人】 サルコシパラ



 ───朝の一幕:自宅───


     「今日もお前は可愛いね。」



   自宅の花瓶に活けられたバラを撫でると
   サルコシパラは口角を高く吊り上げる。

    W人との関係を持とうともせず、
     一心不乱に花を溺愛する青年。W


       W花と結ばれる為に生まれた男。W


   すっかり街では奇人の扱いを受け
   奇異の目で見られることも何処吹く風。
   サルコシパラの一日とは、大体そういうものだ。


(9) 2022/08/08(Mon) 2:18:47

【人】 サルコシパラ



   ただ以前と違うことを
   ひとつだけ挙げるとするならば。


     「おはようございます。
      今日も綺麗ですね。」


   数年前から同居を始めた者がいるということ。
   血縁も何もない。
仮面の中を見せることも滅多に無い。

   それでも身寄りのいないサルコシパラにとって
   それはたった一人の家族のようなものだった。

   
(10) 2022/08/08(Mon) 2:21:38

【人】 サルコシパラ



   サルコシパラに同居人が増えたと
   驚きを隠せない街の人間に
   サルコシパラは笑いながら言う。


   「そんな滅多な関係じゃないですよ。
    毎日口説いて、毎日振られてますから。」


   そう、サルコシパラと同居人…
   ウユニ
との関係とはそういうものだ。**



(11) 2022/08/08(Mon) 2:24:13
到着: ウユニ

【人】 ウユニ



  
「この命が終わるときは独りでいよう」


       
そう決めていたはずなのにね。


 
(12) 2022/08/08(Mon) 15:50:21

【人】 ウユニ



私にとって
は縁遠いものだった。


 
(13) 2022/08/08(Mon) 15:51:10

【人】 ウユニ



もっとも、それも昔の話。
  
(14) 2022/08/08(Mon) 15:52:05

【人】 ウユニ



   愛情深い父母のもとに生まれ
   Wお姉ちゃんWと慕ってくれる弟妹もいた。
   私は、あの子たちに得意な裁縫で
   服や帽子を作ってあげたりして。
   そのたびに大げさなくらい喜んでくれて
   それがたまらなく、可愛いと思ってたの。


   
そこにはあたたかで幸せな家庭があった。

 
   手入れされた花壇に咲く花々のように
   私の周りには確かな幸せがあったはずだったのに。


 
(15) 2022/08/08(Mon) 15:56:16

【人】 ウユニ



   そんな一つの家庭の幸せに亀裂が走った。
   原因は……身体に花を咲かせた私だったの。

   当時の私は、それが病だとは知らず。
   家族に忌避されるとも、思っていなかった。


 
(16) 2022/08/08(Mon) 15:57:43

【人】 ウユニ



       家族は、味方でいてくれると。
       そう信じて疑いもしなかった。  


 
(17) 2022/08/08(Mon) 15:58:11

【人】 ウユニ



   太ももに咲いた、まだそう大きくない花を
   家族に見せて、相談したあの日を
   私は今でも覚えている。

   弟妹は異物を見るような目を向けて
   理解が及ばないことへ怯えを見せていたし
   母は見たくない、理解したくないと言わんばかりに
   私から顔を背けていた。

   眉間にしわを寄せて、
   此方を見ていた父が吐き捨てた言葉も
   はっきり覚えているわ。


 
(18) 2022/08/08(Mon) 15:59:41

【人】 ウユニ



    
Wこの家から出ていきなさい。W


  
(19) 2022/08/08(Mon) 16:00:13

【人】 ウユニ



   最初は何を言われたか、わからなかったの。
   どうしてそんなことを言われるのかも。


      今ならわかる。
      家族は皆、異質な存在になった私を
      受け入れがたいと思ってしまったのだ、と。


 
(20) 2022/08/08(Mon) 16:01:10

【人】 ウユニ



   父の言葉をすぐには理解出来なかった私は
   
どうして、
とか聞いたような気がするし
   それに対する答えは、
   
見たくない、気味が悪い、

   と言ったような忌避の言葉だった。

   出て行けという父に、家族は誰も止めなかった。
   
もし、誰か一人でも止めてくれる人が居たなら

   
私はきっと縋ろうとしたと思う。


 
(21) 2022/08/08(Mon) 16:03:05

【人】 ウユニ


 
    
「…今まで、ありがとう。」



   でも、家族の態度から縋れないのだと
   悟った、
悟ってしまった
私は
   震える声で、別れを告げて。
   最低限の荷物を持って、家を出た。

 
(22) 2022/08/08(Mon) 16:04:19

【人】 ウユニ



   そうして、私はふらふらと
   町から町へと彷徨って。
   ただ彷徨うだけではなくて、
   自分の身に咲く花が何なのかを知ろうと
   行く先々で書物を漁った。

   私はW花咲病Wという病気を患っているのだと
   知ったのは、貴方に出会う前の事。


 
(23) 2022/08/08(Mon) 16:04:40

【人】 ウユニ



───朝の一幕:サルコシパラの家───

  
   バラへと声をかける彼の姿を眺めるのは
   ここに来てからの私の日課の一つ。

   彼が街の人から何と言われているか、
   知らないわけではない。

   でも、私は花を溺愛する彼を変だとは思わないし
   優しいのだ、と思っているから。
   私が奇異の目を彼に向けることもない。

 
(24) 2022/08/08(Mon) 16:06:59

【人】 ウユニ



   「おはようございます。
    あら、そんなことを言っては
    貴方の可愛いバラが嫉妬してしまいますよ。」


   いつもの挨拶に、私もいつものように返して。
   小さく口角を上げてみせるの。

   血縁者ではない、家をなくした私を
   住まわせてくれる彼は、優しいと思う。
   彼を家族のようには思わず、W友人Wだと、
   そう思っているのが、彼と私の違いかしら。

 
(25) 2022/08/08(Mon) 16:08:09

【人】 ウユニ



   毎日のように貰う言葉を
   軽く受け流していた理由は、
   ここにいるのも、貴方との時間も、
   期限付きだと決まっていて。
   踏み込まないようにしていたから。


   私と彼の関係は、そういうもの。*


 
(26) 2022/08/08(Mon) 16:09:08

【人】 ウユニ



───出会い───


   花咲病のことを知った後の私は、
   独りで散ることができる場所を探していた。

   誰にも踏み込まず、踏み込ませず。
   一人で静かに、終わりを迎えようと。

   この街に来たのも、そんな経緯。

 
 
(27) 2022/08/08(Mon) 19:47:59

【人】 ウユニ

  

   道行く人に、この街を見渡せる場所はないか
   聞いてたどり着いたのが、街の奥にある丘。

   ついた頃には日が沈みかけて。
   沈んでいく太陽を、ただ眺めていたの。
   髪を、頬を、風が撫でて
   黒のロングスカートがはためいていく。
   風に揺られる花はこんな気持ちなのかしら、
   なんて、ふと考えて、くすりと笑った。

 
(28) 2022/08/08(Mon) 19:48:56

【人】 ウユニ


 
   
花弁
が一枚、風に乗って飛んでいったのに

   
私が気づくことはなかったけれど。

   もし、見た人が居るのなら、
   少し疑問に思ったのかもしれない。


 
(29) 2022/08/08(Mon) 19:50:40

【人】 ウユニ

  

    「困ったわ。
     今日泊まる場所も決まってないのに。」


   あまり困っていなさそうな口調で
   呟いて苦笑いした頃だったかしら。
   
それとももう少し後だった?



      
―――私以外の人が居るのに、気付いたの。*


 
(30) 2022/08/08(Mon) 19:51:57
村の設定が変更されました。

【人】 サルコシパラ



     「そんなことはありませんよ。
      この子達も貴女を家族と認めている。」


   花々にとって彼女は敵ではない。>>25
   その事はサルコシパラが誰よりも知っている。

   知ってか知らずか
   認めていないのは彼女だけのようだ。


(31) 2022/08/08(Mon) 22:38:39

【人】 サルコシパラ



   認めたくないのか
   認めるわけにはいかないのか>>26

   その御心は
   ただの人間風情には推し量れない。



(32) 2022/08/08(Mon) 22:39:22

【人】 サルコシパラ



   何をもって普通と呼ぶか
   なにをして奇とするか

   ただ一つ確かなことは
   普通などという不安定で曖昧な戯言には
   なんの価値もないということだ。**



(33) 2022/08/08(Mon) 22:39:50

【人】 サルコシパラ



   あの日は珍しく、世界が
に満ちていた。>>27


(34) 2022/08/08(Mon) 22:41:02

【人】 サルコシパラ



   花に魅入られた者の苦悩>>23
   虐げられた過去>>18>>19>>20


   緑丘に芽吹く一輪の竜胆の傷痕など
   何一つ知らない人間が持つ感情は


            美しい。>>28



   ごくごく自然で普遍的なもの。


(35) 2022/08/08(Mon) 22:42:18

【人】 サルコシパラ



   それは
花弁
の導きか
   それとも彼女が導かれたのか。>>29

   何か一つが噛み合わなければ
   出会うことは無く、結ばれなかった縁

   サルコシパラは嗤う。
   生まれて初めて、運命という言葉を信じたのだから。


(36) 2022/08/08(Mon) 22:42:54

【人】 サルコシパラ




  (よもやこの私が運命?
   滑稽だろう?それでいて光栄だ。


         私は貴女に選ばれたのだろうか。
         貴女が私の事を選んだのだろうか。)



(37) 2022/08/08(Mon) 22:43:30

【人】 サルコシパラ



     「ごきげんよう。
      この広い場所に一輪の
竜胆

      少しばかり寂しいものですね。」


(38) 2022/08/08(Mon) 22:46:45

【人】 サルコシパラ



   お困りのようなその背中に
   サルコシパラは声を掛ける。>>30


         それが二人の、始まりの日。*



(39) 2022/08/08(Mon) 22:48:03

【人】 ウユニ



    「そうかしら。
     だとしたら、光栄ですけれど……。

         
きっと私には不相応ですよ。」


  
(40) 2022/08/08(Mon) 23:54:38

【人】 ウユニ



   踏み込むまいという私の態度は
   花々にとってどう取られていたものか。
   踏み込まないから、知ることもなく。

   彼のWこの子達もWの意味に気づかないほど
   私は鈍くはなかったけれど
   鈍く、気付いていないふりをしていた。


  
(41) 2022/08/08(Mon) 23:57:22

【人】 ウユニ



   家族だと認めてしまうわけにはいかないだけで。
   認めたくないわけでは、なかったの。


   
終わるときは一人で、と決めていたから。*


 
(42) 2022/08/08(Mon) 23:57:52

【人】 ウユニ



   花を溺愛する貴方と
   花に魅入られた私が出会ったのは
   運命だったのかもしれないし>>36
   お互いの想いの風が導いた結果なのかもしれない。
 
 
(43) 2022/08/08(Mon) 23:59:20

【人】 ウユニ



   人が花を選ぶように
   花だって、人を選んでいいはず。

   言葉を持たない、自ら動けない花には
   それが出来ないだけで。
 
   貴方に頼ろうと思ったのは
   紛れもなく私の意思。 
   それを選んだというのなら、そうかもしれないわ。


 
(44) 2022/08/08(Mon) 23:59:53

【人】 ウユニ

   
   まさか誰かいるとは思っていなかったから
   後ろから声をかけられたときはそうね、
   驚いてしまったから。
   
   一瞬反応が遅れてしまったけれど。
 
(45) 2022/08/09(Tue) 0:00:24

【人】 ウユニ



    「ごきげんよう。
     貴方はご存知かしら。
     
竜胆
は独りで咲く花ですもの。

     寂しさには慣れているのではないかしら。」

 
(46) 2022/08/09(Tue) 0:01:01

【人】 ウユニ


   仮面の彼の方へと向き直った。
   W普通Wなら仮面に驚いたり
   どうして、と聞いてしまったりするのだろうけれど
   踏み込まないと決めている私はそれを聞かず。

   そもそも、疑問に思うこともなかったわ。
  
(47) 2022/08/09(Tue) 0:01:44

【人】 ウユニ



   人は皆、仮面を付けているようなもの。
   いつ、本性を表すかなんて分からない。



   彼の場合は、見える形で仮面をつけているだけ。
   ただ、それだけのことよ。

   それに、私だって本心を見せまいとしているのだから
   仮面を付けているのと同じでしょう?


 
(48) 2022/08/09(Tue) 0:03:04

【人】 ウユニ

   

    「……さっきの独り言も
     貴方には聞かれてしまったのかしら。

     私はウユニ。
     この街には今日来たばかりです。
     行く宛てがなくて、
     どうしようかと思っていたところだったの。

     貴方は、どうしてここに?」


   軽い自己紹介の後に、小さな声で
   
もしかして、貴方の時間を邪魔してしまったかしら

   なんて、聞いてしまったのは……。

   何故でしょうね?
   いつもなら人の話は聞かないのに。**

 
(49) 2022/08/09(Tue) 0:04:24

【人】 サルコシパラ



   サルコシパラがウユニと同居を始めてから
   最低でも1年は経つ。

   しかしサルコシパラが知るウユニなど
   氷山の一角、せいぜい数パーセントの欠片だ。

   それが証拠に、その言葉が紡がれたきっかけ
   過去のしこりをサルコシパラは察することが
   出来ずに、見込みのない憶測を浮かべては
   ひたすらに首を傾けるばかり。



(50) 2022/08/09(Tue) 1:06:54

【人】 サルコシパラ



   人間に伝えられたことはひとつ
   紛れもない己の強い意志のみ。

   部屋を彩る崇高な花々は
   静かに、寂しげに。
   
   その選択の未来を、見据えていた。>>41>>42**


(51) 2022/08/09(Tue) 1:09:31

【人】 サルコシパラ



   そう、全ては直感だった。

   運命を感じたことも。
   この場所で出会った彼女と
   ここで今生の別れにしてはならないと
   そう思わずにはいられないことも。

   そこには合理性も理性も何もなく
   ただ情動に赴くままの選択。

   己の直感に従った結果だ。


(52) 2022/08/09(Tue) 1:12:23

【人】 サルコシパラ



   どちらがきっかけであったのか。
   それはもう、些細なことなのかもしれない。




(53) 2022/08/09(Tue) 1:13:06

【人】 サルコシパラ



   「えぇ、確かにそうかもしれません。>>46

    しかし『
寂しい愛情
』などという花言葉を
    充てがうような人もいるくらいですから。

    寂しさを受け入れられない
    そんな竜胆がいてもいいと思うんです。」


(54) 2022/08/09(Tue) 1:15:22

【人】 サルコシパラ



   どれだけ精神を研ぎ澄ませようとも
   決して慣れることなど無い孤独の感情を
   サルコシパラは誰よりも知っているつもりだった。

   そして孤独の痛みを紛らわす方法は
   自ら孤独を選び、他者を排除すること。

   喧騒の街から逃げるようにここに来ること。

   他者に踏み込むことをやめ、佇むこと。>>47



(55) 2022/08/09(Tue) 1:38:50

【人】 サルコシパラ



   サルコシパラが彼女を放っておけなかったのは
   ぽつりと湧いて現れた同族意識のせいだったのか。


   「安心してください。
    貴女が住む場所を持たずに
    路頭に迷っていることくらいしか
    聞いてはいませんから。」


   意地の悪い答えを返すと
   サルコシパラは被っていた仮面をずらして
   街の人々には魅せない己の心境を零す。


(56) 2022/08/09(Tue) 1:39:50

【人】 サルコシパラ



     「独りになりたくなくて
      独りになろうとここに来ました。

      この丘の上が、好きなんですよ。」


(57) 2022/08/09(Tue) 1:41:53

【人】 サルコシパラ



   孤独にはなりたくないのに
   いつか自分から人を遠ざけ孤独を選ぶ。

   矛盾に満ちた己の行動を
   孤独を埋める形でひとつの線に繋げてくれた
   彼女はむしろサルコシパラにとっては感謝の相手。

   それが、ウユニのか細い不安への答え。*

(58) 2022/08/09(Tue) 1:42:25

【人】 ウユニ



   奇病のせいで家族に家を追い出されてしまった。
   路頭に迷った理由はそれしか言っていなかった。

   住まわせて貰うのはせいぜい数ヶ月。 
   密かに、貴方の知らないうちに出て行こう。

   当初はそう思っていたから
   過去を話す必要もないと思って。
   思ったよりも貴方の家に長居してしまったのは
   私にとっては誤算だったわ。

   仮住まいだとしても帰る家があることに
   貴方の傍にいることに、居心地の良さを覚えて
   それに甘えてしまっていたのでしょうね。


 
(59) 2022/08/09(Tue) 12:18:06

【人】 ウユニ

   

   だから、なのかしら。
   貴方の過去の断片を聞けば
   より、貴方から離れがたいと思ってしまうの。
   貴方の悲しみに寄り添いたい、と。
   今までそうしてはいけないと思っていたのに
   そうしたい、と思うのは……
貴方のことが…。


 
(60) 2022/08/09(Tue) 12:18:58

【人】 ウユニ



   彼の強い意志に背を押されて。
   私は、最善とは言えない未来を、
   この手で選び取ってしまった。


       
貴方を苦しませると、予想できる未来を。*


 
(61) 2022/08/09(Tue) 12:25:56

【人】 ウユニ



   いいえ、本当はずっと前から。
   選んでしまっていたのね。

   あの日の出会いを始まりにするのでなく
   終わりにするべきだったの。
   今生の別れにするべきだった。

 
(62) 2022/08/09(Tue) 12:26:19

【人】 ウユニ



    「そんな竜胆が咲いているのなら>>54
     きっと、誰かに手折られるのを
     声に出さず待っているのでしょうね。

     
それは、果たして私の事かしら?」


 
(63) 2022/08/09(Tue) 12:26:52

【人】 ウユニ



   寂しさを受け入れられない、という言葉は
   私には当てはまることだったから。
   心を見透かされたような気持ちになってしまうの。

   でも、それだけではなくて……
   まるで彼のことも指しているような
   そんな気もしてしまって、思わず発した言葉に
   貴方はどう思ったのかしら。


 
(64) 2022/08/09(Tue) 12:29:15

【人】 ウユニ



    「全部聞いていたってことじゃないですか。」


   少し意地悪な答えに思わずふふっと笑って。>>56
   でも、その後に見えた貴方の心境に>>57
   私は魅入られてしまったみたい。

 
(65) 2022/08/09(Tue) 12:29:52

【人】 ウユニ



   独りになりたくないのに
   独りを選ぶところが、同じだったから。


 
(66) 2022/08/09(Tue) 12:32:15

【人】 ウユニ



    「私も独りなんです。
     珍しい病気に罹った私を、
     家族は疎んで追い出したから。」


   そう、言った後、冗談のような口調で、


   「ここに、行く宛てのない人が居るんです。
    その人を連れ帰れば、独りじゃなくなりますよ。」

   
   口元に手を当てて、静かに笑った。*

 
(67) 2022/08/09(Tue) 12:33:00

【人】 サルコシパラ



   あの言葉は未だ忘却に至ることがない。>>67
   独りじゃなくなると悪魔のような提案をする彼女の姿に
   僅かばかりの優しい棘を感じたことも。

   つまるところ利害関係でしかないし
   それ以上に至らないための線引き。

   彼女の言葉をサルコシパラはそう解釈していた。


(68) 2022/08/10(Wed) 21:46:48

【人】 サルコシパラ



   珍しい病気だというのに
   寄り添うどころか疎んだという彼女の肉親に
   サルコシパラは内心ささくれ立った。>>59

   その奇病がどんなものであったとしても
   サルコシパラの思う家族の在り方の中では
   誰よりもウユニの味方であるべきなのだから。


   その小さな苛立ちは同情へと変わり
   いつかは彼女を慮る心へと変革を遂げ
   ついには彼女がどれだけ住まうとも構わないと
   明確な意志へと育まれていった。



(69) 2022/08/10(Wed) 21:47:54

【人】 サルコシパラ



   だからあの時、静かに笑うウユニに…>>67


(70) 2022/08/10(Wed) 21:49:13

【人】 サルコシパラ



   被っていた仮面をずらして
   サルコシパラは彼女に微笑んだのだった。**


(71) 2022/08/10(Wed) 21:50:12

【人】 サルコシパラ



   しかしサルコシパラには迷いもある。
   手折られるのを待つ竜胆が彼女なのか
   それとも自分なのだろうか。>>63

   あの日から数年が経った今でも
   その答えを導き出すことが出来ないでいた。


(72) 2022/08/10(Wed) 21:50:55

【人】 ウユニ

   

   私はひどい提案をしたと思う。
   
貴方を利用します、
と言っているようなもの。

   勿論利用されるのは構わなかったし
   例えば家事とか、私にできることを頼まれるのなら
   こなすつもりでいたし、たとえ頼まれなくとも、
   何かの形で貴方へ恩を返すつもりでいたの。


 
(73) 2022/08/11(Thu) 0:05:38

【人】 ウユニ



   人は自分の理解を超えた出来事に弱い。
   人であり花になりかけている私を見て
   どうしても理解ができなかったのだろうし

   
―――――感染るかもしれないと。

   
   そんな恐怖があったのだとしたら
   家族を責めることも躊躇ってしまう。>>69


   それでも味方でいて欲しい、なんて
   私のわがままでしか、なかったのよ。
   そうして諦めなければ苦しくて仕方なかった。


 
(74) 2022/08/11(Thu) 0:06:44

【人】 ウユニ



   あの時選び取ってしまった理由の一つはきっと
   心のどこかでは諦めきれなかったから。

  
  
(75) 2022/08/11(Thu) 0:09:13

【人】 ウユニ



   淡く微笑み返して、>>71
   叶うなら、握手をしようと手を差し出したの。**

 
(76) 2022/08/11(Thu) 0:10:22

【人】 ウユニ



   数年たっても秘密を守っていたのは
   そう、最後の線引きのつもりだった。

   花咲病のことは、
   これだけは、知られてはいけない。
   知ってしまえば、病を背負わせること、
   私の心に踏み込ませることと同じだと思うから。

   彼のためだから、そうやって言い訳して
   ずっと言わなかった。


 
(77) 2022/08/11(Thu) 0:10:54

【人】 ウユニ


  ***


   私は、弟妹の世話をしていたこともあって
   家事は一通り、できるつもり。
   掃除は特に、出来るだけ積極的にしていたの。
   何故かって?

   見たことのない花弁が
   いつも床に落ちていたら不自然でしょう?


   だから花咲病の痕跡を残さないように、と
   出来る限り、私が使う部屋、
   出入りする部屋は綺麗にしていた。
   彼が触れて欲しくない物には触れないように
   入ってもいい場所、触ってもいいものは
   事前に確認していたから。
   彼の気を悪くするようなことはしなかった…
   そのはずだけれど、どうだったのかしらね。


   秘密を明かした後も、習慣づいてしまったものを
   変えられなかった、というのはまた別の話。

 
(78) 2022/08/11(Thu) 0:48:45

【人】 ウユニ

   
 
   普段はそうやって家事をするだけではなくて。
   街に出て、布を買ってきては
   服や帽子を作って、
   店に持ち込んで買い取ってもらう。
   私はそんな風に生活にかかるお金を賄って。

   住まわせてもらっている対価のつもりで
   貴方へと稼ぎを渡そうとしていたけれど…
   受け取ってもらえなかったのなら、
   家のどこかに纏めて置いたままにしていたでしょう。


 
(79) 2022/08/11(Thu) 0:50:28

【人】 ウユニ



   裁縫が得意だとは彼にも伝えていたから。
   彼の服のボタンが取れていたり
   ほつれていたりするのを見つけたときは


    「それ、直しますよ?
     そのままだと着づらいでしょう?」


   と言って、服を直そうとしたこともあった。
   また、ある日には。

 
(80) 2022/08/11(Thu) 0:50:58

【人】 ウユニ



    「売り物にするには作りが甘くて。
     もしよければ、貴方に貰って欲しいんです。」


   と、もっともらしい理由をつけて
   貴方にひざ掛けを作って渡そうとしたこともあった。
   竜胆の刺繍飾りがついた、
   充分売り物になりそうな、ひざ掛け。

 
(81) 2022/08/11(Thu) 0:51:29

【人】 ウユニ



   住まう場所を提供してくれる彼に
   何かを返したい、そんな思いを形にした贈り物。


    「使わないのなら、私が使いますし
     無理に、とはもちろん言いませんから。」

  
   押し付けるのは本意ではなかったから。
   そう付け加えて、差し出したそれは
   受け取ってもらえたんだったかしら…?*   

 
(82) 2022/08/11(Thu) 0:55:05

【人】 サルコシパラ



   病気は感染るもの。>>74
   我が身可愛さに身内をも切り捨てる。

   それはトカゲの尻尾を切るのと
   同じだとでもいうのか。

   繋がり、応える手はそんな残酷な過去への
   反抗だったのかもしれない。>>76



(83) 2022/08/11(Thu) 8:08:46

【人】 サルコシパラ



   それはウユニがサルコシパラの家に
   住むようになってからしばらくのこと。>>78

   生計を立てるという人間の義務を
   二人が免除されるなんてことはない。>>79

   その代わりということだったのだろうか。
   ウユニは家事を全てこなすようになった。
   サルコシパラが済ませようと腰を上げても
   ウユニが既に済ませてしまっている。

   その度にサルコシパラは妙な罪悪感に
   見舞われることになった。


(84) 2022/08/11(Thu) 8:14:52

【人】 サルコシパラ



   またしばらくすれば
   今度はウユニは自ら生計を立てる術を
   身に付け、その手腕を発揮する。

   裁縫が得意という言葉に嘘偽りなく。
   確かにその力は本物だった。

   なんと頼もしいことだろう。
   そんな感心を抱くサルコシパラには
   彼女の稼ぎを貰おうなどという発想などなく。



(85) 2022/08/11(Thu) 8:15:44

【人】 サルコシパラ



   ウユニがサルコシパラに稼ぎを
   渡そうなどという時には仮面越しにも
   伝わるほどの拒否感を滲ませて。


      「それはあなたのものです。
       もし私に渡そうなどというのなら
       私は今すぐあなたの為に服を買います。」


   なんて言って冗談交じりに
   淑女が着るようなドレスのカタログを
   見せたりもしたことだろう。


(86) 2022/08/11(Thu) 8:16:23

【人】 サルコシパラ



   そんな経緯を経て
   この共同生活も板についてきた頃。

   服がほつれていることに気づかないまま
   過ごしていたサルコシパラに
   ウユニから申し出があり。>>80


     「あ…すみません
      ではせっかくなのでお願いします。」


   お言葉に甘えてと照れくさそうに
   頭を搔くなんてこともあった。

   それはサルコシパラにとって
   ウユニは信頼に値する人であるという証明で
   家族としての絆を育んでいる何よりの証拠。


(87) 2022/08/11(Thu) 8:18:21

【人】 サルコシパラ



   そんな時期にもなれば
   貰い物を遠慮する気持ちよりも
   歓喜の感情が先回りしていくもので。

   差し出されたひざ掛けを>>81


     「ありがとうございます。
      せっかくあなたがくれたんですから
      もちろん、大切に使いますよ。」


   そう言って受け取りもしただろう。>>82
   充分売り物になりそうな仕上がりの
   竜胆が彩るひざ掛けの意味は
   口にするのも野暮というものだ。



(88) 2022/08/11(Thu) 8:18:56

【人】 サルコシパラ



   幸せな日々というものを
   サルコシパラは日々感じるようになった。

   ウユニの存在はそれだけ大きく。
   次第にサルコシパラに強い感情も芽生えて。

   それでもこの関係をより深めなかったのは
   彼女が病に侵されているという事実が
   頭の中にあったからだ。



(89) 2022/08/11(Thu) 8:19:25

【人】 サルコシパラ


   この未来を辿ったきっかけは

         彼女の勇気と──────。**


(90) 2022/08/11(Thu) 8:21:44

【人】 サルコシパラ


   ウユニから病気のことを告げられた日の夜
   サルコシパラは珍しく夜更けになっても
   眠りにつかないまま自室にいた。


   部屋が複数あるサルコシパラの自宅では
   リビングの他にサルコシパラの部屋と
   ウユニの為の部屋、そして空き部屋があり
   夜は特段の用事がなければ
   互いの部屋に入ることも滅多に無い。



   脳裏によぎるのはもちろん
   ウユニの抱えている病のこと。

   彼女の家族でありたいと願う者として
   病のことを知るのは責務だと
   サルコシパラはそう考えていた。


(91) 2022/08/11(Thu) 8:39:15

【人】 サルコシパラ



   しかし本を読み漁っても
   有力な話は何も出てこずに

   深夜、サルコシパラは独りで
   落胆し、肩を竦めていたのだった。


(92) 2022/08/11(Thu) 8:39:28

【人】 ウユニ



   家事をこなすことも、
   稼ぎを渡そうとすることも。
   あくまで住まわせてもらっている対価。
   私にとってはすべきこと、払うべきもの。

   そんな認識だったから、
   絶対に受け取らない、という強い態度を見れば>>86
   少し不思議にも思ってしまったことでしょう。
   でも、あなたの服を買う、なんて言われれば
   私の意図するものと違うから
   渡すのをやめざるを得なくて。



    「私だけ着飾っても仕方ないでしょう?
     それに、私はあまり外には出ていないので。」


   ドレスのカタログをちらりと見て
   やんわりと断っていた。

 
(93) 2022/08/11(Thu) 17:14:40

【人】 ウユニ



   貴方が私にどんな服を選ぼうとするのか 
   興味はあったけれど、そんなことを言えば
   本当に買いかねない雰囲気すらあったから
   その想いは心に秘めていたの。


 
(94) 2022/08/11(Thu) 17:15:08

【人】 ウユニ



   彼の性格も少しずつ理解して
   でも、彼の深い部分には
   触れないようにする日々を送っていた頃。

   服を直そうか、という申し出は
   受け入れてもらえた。


    「これくらい、
     さして時間もかかりませんから。
  
     他にも直したほうがいい服があったら
     いつでも言ってくださいね。」


   照れくさそうに頭を掻く彼に微笑みかけて。>>87
   まるで、家を追い出される前、
   あの頃に戻ったみたいだな、と。
   少し懐かしむ気持ちも生まれつつ

   貴方の気持ちはなおも見ないふり。

       
―――自身の気持ちも、見ないふり。


 
(95) 2022/08/11(Thu) 17:17:50

【人】 ウユニ

   

   見ないふりをしていると
   本当に鈍感になってしまうものなのかしら。


   貴方がもしかしたら遠慮するかもしれない、なんて
   不要な気を回して、
   受け取ってもらえなくとも構わない、
   そんな気持ちでいたのに。

   貴方が大切に使う、って受け取ってくれると
   心が弾む。あなたが喜んでくれることが
   たまらなく、嬉しいんだもの。


 
(96) 2022/08/11(Thu) 17:20:37

【人】 ウユニ



   
いけないことだと、わかっていたはずなのに……。**


  
(97) 2022/08/11(Thu) 17:21:52

【人】 ウユニ



   病のことを打ち明けた日の夜。
   私は、少ない自分の荷物の中から
   小さな手帳を取り出して、読んでいた。

   当てもなくふらふらとしていた頃。
   花咲病について調べて、
   わかったことをまとめた手帳。


   貴方の目には決して触れないように
   外出するときには、肌身離さず持って行って
   家にいるときは鞄の中へとしまっていた。


 
(98) 2022/08/11(Thu) 17:49:03

【置】 ウユニ

    

   ・花咲病に罹った者は身体に花が咲く。
   ・最後には大きな花弁となり死んでしまう。

   ・感情が昂ること、人としての自我が薄くなると 
    病の進行が早くなってしまう。
   ・時間が経つと進行が早くなる。

   ・治療法
    
有効な治療法はない。



    
花弁を食べると伝染する。

    
誰かに感染すと……


  
(L0) 2022/08/11(Thu) 17:52:28
公開: 2022/08/11(Thu) 17:55:00

【人】 ウユニ



   綺麗な字で箇条書きに綴られた項目はそう多くない。
   それだけ、わかっていることが少ないという事。
   
私が知らないこともまだあるかもしれない。


   最後の方の文章は一度書いて、その上から
   線を引いて消してしまった。

           誰かに感染すくらいなら
           死のうと思っていたから。


 
(99) 2022/08/11(Thu) 17:53:14

【人】 ウユニ



   何度読んでも書いてあることは変わらない。
   ふ、とため息をついて、手帳をもとの場所に戻すと
   明かりを消して、ベッドに横になった。


 
(100) 2022/08/11(Thu) 17:53:56
 




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