「椿屋……大丈夫だったかな」

彼女の悩みこんでる姿に一声かけようとしたものの、
そうこうしてる間に人混みに隠れて、
どこにも見えなくなってしまった。

元より極めて仲がいいというわけでもなかったし、
他の子が気にしてくれていたらいいのだが。

「勢喜はいつも通りだな。食欲の押し売りって感じ。
　朝ご飯しっかり食べても何故かお腹が空くもんで、
　カロリーを気にしつつ頂こうかな……」

食べ盛りだけど体重計は気になる。運動部なもので。

「二年生の食欲は底を知らないんですよ、先輩。
　……ほら、異能使うにもやっぱ食べて体力つけないと」

食いしん坊その二。
でも体型維持は少し気になる。

「大食い勝負で一位をとれるなら、
　俺はそれで構いやしませんとも。
　まあ、ちょっと人より多く食べる程度です」

所詮中途半端なもんでね、なんて言ったりして。

「準備に関しては2-Bは問題なく。
　むしろ張り切ってる奴らが多いからな、ウチは。
　俺は……ほんとに、いつも通ーりでいるんですけど。

　いやあ、いっそ彼女募集とか、
　やってみたいことと言えばやってみたいことですねえ」

「冷静に考えたら俺も、
　賑やかってだけで他クラスの教室に屯してますからね」

ここは少なくともB組ではないだろう。

「怪我……気を付けてるんですけど、
　先輩方に甘えてるのか、擦り傷なり筋傷めたり、
　わりと絶えないのがちょっと申し訳ないところです。

　異能戦闘も出ますしね。なんなら。
　マジになって大怪我だけはしない様にはしますが」

「ま、多少の怪我くらいなら、俺は結構平気ですから。
　健人先輩や養護教諭の目が怖いので、
　最近はしっかり気を遣うようにしてますけど。

　文化祭は他の組に花を持たせる分、
　体育祭までなあなあにやってたら示しがつかないし」

他人の大怪我は自分にとっては中怪我、
中怪我なら小怪我。小怪我なら怪我のうちにも入らない。

だからといって無茶なんかしてしまうと、
人に要らぬ心配をかけさせてしまうのだが。

「生徒会長副会長のコンビなら、
　並大抵の要望は通りそうですよね。
　まるでアニメか漫画くらい圧がありますし」

>>58 勢喜

「もし服のボタン取れたら縫って欲しいよ俺は。
　物はいいよう使いよう。
　実のところ食べた分だけ運動するからいいんだけど」

カロリー過多なら、燃やしてしまえば良いじゃない。
栄養の偏った食事は作らないだろうという信頼もあり。

「ああそう。料理鞄に入れて登校してくるのは流石に変。
　手荷物検査でなんか食べ物のいい匂いしたって話聞いたけど、どう考えてもあんたっぽいし」

苦笑しながら伝えて。
一つの物事に盲目的に打ち込めるのはいいことではあるけども。