─　現在/星架祭り　 ─


［　去年は友人と来た。
　　焼き鳥に焼きそば、かき氷…………
　　色々食べ歩きながら歩いて。

　　お願い事はうっかり見られてもいいように
　　大した願いは書かなかった。
　　お金が欲しい、とかそんな感じの。

　　小学生の頃は家族と来た。
　　金魚すくいをしたり、
　　その時よく見てたヒーローの尾面を被ったり
　　あの時も、楽しかった思い出は残ってる。

　　あの時のお願いは
　　こんな楽しいことがずっと続きますように、と
　　不変を願ったんだ。



　　

　　

　　

***


［　さっき通った屋台で買ったラムネを飲みながら
　　ぼんやりと考えていたのは、
　　学校で数日前に聞いたパンドラの箱の話。

　　御崎先生は祭りの時期になるたび
　　パンドラの箱の話をする。>>0:12
　　最初は深く考えてなかった。
　　パンドラの箱の希望の意味じゃない、

　　

　　でも、三年間聞いていれば流石に
　　どうしてだろう、と思ってしまう。
　　星の雑学でも祭りの雑学でもなく。
　　パンドラの箱の希望、を選ぶ理由。

　　先生にとってのお願い事が何かも知らない俺には
　　その理由を推し量ることは出来なくて。　］

　　

［　分からないなら、聞けばいい。
　　別にそれは相手が先生でも、先生でなくとも。

　　だから、お祭りの中、
　　先生の姿を見かけたら、声をかけるつもりで
　　時折辺りを見回しながら。　］


　　　何あれ、すげーカラフル。


［　目に付いたレインボー色の綿あめを売ってる屋台に
　　引き寄せられていたものだから。

　　見知った人たちが祭りに来ているとは
　　気づけないまま。>>29>>32　］*

　

　
── 現在/星架祭り ──

［　いつもはぽけっとした男も>>39
　　このときばかりは目ざとく、機会を見逃さなかった。
　　視線の動きを見て、そちらにちらりと目をやる。
　　なるほど……君の要求はわかった。

　　本当にわかったのかそうでないのかは
　　今の男には関係がない。
　　自身の納得行く理由で、目当てのものが手に入るなら
　　目的に対して突き進むのみだ。　］


　　　わかった。

　　　私は突然チョコバナナが食べたくなり、
　　　そしてこの戦いを制した勝者にも
　　　チョコバナナを奢りたくなる。

　　　感激した君は褒美に私に水ヨーヨーをくれる。
　　　そういうことだな？
　

　
［　彼女の発言の意図はただの遠慮であろうに。
　　男はまるで賄賂を隠すかのような理由付けをし始めた。

　　男の思考回路は走り出している。
　　よし、というと立ち上がり。　］


　　　店主、ありがとう。
　　　楽しかったよ。


［　ヨーヨー釣りのおじさんへ挨拶をして
　　チョコバナナの屋台へと向かった。

　　そうして二つチョコバナナを注文すると
　　一つを彼女に渡そうとするだろう。　］
　

　
［　檜枝 絢。一応名前は知っているし
　　話したことも幾度かあったと思うが>>33
　　そこまで深く関わり合ったことは恐らくなかった。

　　農家の方に茶飲み友達がいるから>>0:31
　　そこ経由で少し話を聞くことはあったかもしれない。

　　認識としては、役場勤務の子、くらいのもの。
　　若そうに見えるから、もう働いているなんて
　　偉いなぁ、くらいには思っていた。　］
　

　
［　手が塞がるから、チョコバナナを食べた後に
　　水ヨーヨーは手渡されるかもしれない。
　　もしかしたら彼女が水ヨーヨーを惜しんで
　　渡さない未来もあるのかも。　］


　　　せっかくの祭りの日だし、
　　　浴衣くらい着てもよかったかもしれないな。
　　　持っていないんだが。

　　　日本の風流を楽しむには
　　　雰囲気というものも大切だ。

　　　君も浴衣は持っていない仲間か？


［　祭り、水ヨーヨー、チョコバナナ。
　　これだけ揃うなら、更に揃えれば
　　楽しさも増したのかもしれないな、なんて。
　　
　　甘いお菓子を味わいながら。　］**
　

　
── 祭り当日/昼、食堂にて ──


　　　ああ、大丈夫だ。
　　　ありがとう。


［　以前はカウンター席だったが、テーブル席へと案内された。
　　一度しかまだ来店していないこと
　　察しの悪い男には、それが気遣いとはわからないが
　　案内に礼を述べた>>43
　　
　　つい不躾な視線を送ってしまうのは
　　答え合わせをするか否かを迷っているため。
　　それでも、問いを投げかけられたなら
　　勇気を持って尋ねてみることにしたわけで。　］
　

　
［　──── どうやら、正解だったらしい>>45
　　当たったことの少しの高揚感を覚えながら
　　嫌そうにしている様子が見られないなら
　　話題に出してよかった話だったかと
　　ほっと安心するところもあり。　］


　　　知人から誘われてな。
　　　あの劇は印象深く、よく覚えている。

　　　今はもう劇はしていないのか？
　　　とても素晴らしい演技だった、と。
　　　ずっと言いたかったんだ。
　

　
［　役者の顔を覚えているくらいには
　　インパクトのあった、心を震わせた演劇。
　　そんな役者が目の前にいるものだから
　　相手のことも考えずに言葉を出してしまう。

　　劇をもしもうやっていないとして。
　　田舎で働いていることには、なにか
　　意味があるのかもしれず。

　　そういったことにずけずけと踏み込んでしまうのは
　　後から振り返ればよくなかったかと
　　思い返したりもあるかもしれない。　］**
　

［けれどあの髪色は人の目を惹くから。>>50
　それが誰かはすぐに分かって、
　もちろん邪魔なんてする気はなかったのに。］
　

　　…ゲーミングわたあめ。


［彼の背中でつい呟いてしまったことだろう。
　挨拶はしといた方が良かったかなんてことには
　呟いた後に気づいたから、ひょっとしたら、手遅れ？］*

　


── 現在：戦利品を手に ──


[　しまった、バレた。>>51
　 そういうこと、がどういうことなのか、
　 イマイチ理解できていなかったけれど、
　 チョコバナナという単語に、バレた、と思った。　]


　　　え。
　　　いや、あの。ちょ。


[　反論が赦されることもなく、
　 ずいずいと？ あれやこれやと？
　 古牧さんは先を進んでいく。>>52

　 そうして今、その結果、
　 私の手には、チョコバナナが握られている>>54
　 大丈夫、ヨーヨーが渡されない未来はない。　]

　

　


　　　すいません。
　　　なんか、いただいてしまって。


[　物々交換。そう、物々交換ですよね、って
　 言い聞かせるように呟いたかもしれないけれど。

　 久しぶりに食べるチョコバナナは甘く、
　 カラフルなスプレーチョコが
　 なんだか自分とちぐはぐなような、そんな感じもした　]


　　　浴衣は。
　　　そうですね、持ってないです。
　　　小さいときは着た気もするんですけど
　　　大きくなってからは、全然。


[　風流さの欠片もない私は、問いかけにそう答える。
　 あたりを見回せば、私服の人ももちろん多かったけれど、
　 それでも華やかな浴衣が人目を惹いた。　]

　

　


　　　風情無いとか言われちゃいそうですけど
　　　あんまり興味、なかったんですよね
　　　可愛い服とか、綺麗な浴衣とか。

　　　ある意味身の丈を知ってるというか、
　　　自分に似合うものを知ってる、なんて言えば
　　　聞こえはいいんですけど

　　　どっちかというと甚平のほうが
　　　私は、着てみたいです


[　そんなことを突然言い出した知人以上友人未満の女に、
　 相手はどんな顔をしていただろうか。

　 突然すみません、なんて頭を下げて、
　 おとなしくチョコバナナにかぶりつく。　]**

　

─　現在/星架祭り　 ─


［　先生が来たとして特に後ろめたいことはないし
　　注意されることもしてない、はず。

　　一年生の時はよく授業中寝てたけど
　　今は寝ずに聞いてるし
　　問題行動とかもしてないし。
　　

　　成績は良くも悪くもないけど目をつぶって欲しい。］

　

［　味は普通のわたあめなんだろう、
　　と思いながらも結局買ってしまったのは
　　好奇心に負けたから。

　　だって、見たことなかったし。

　　そんなレインボーわたあめに目を留めたのは
　　どうやら俺だけじゃなかったらしい。　］

　

　　　……あ、御崎先生。
　　　ゲーミングわたあめ、って……これの事ですよね。



　　

［　無駄に光るパソコンのあれだよな、と
　　思いながら屋台のライトにかざしつつ。



　
　　　先生も買うんですか？
　　　

［　正直俺が持ってるより絵としては似合うと思う。
　　先生自身がどう思うかはさておき。　］

　　

　　　あ、そーいえば。
　　　先生にあったら聞きたいと思ってたことがあって。

　　　勉強の話じゃないんですけど。
　　　先生が昨日話してたパンドラの箱の話。

　　　俺、考えてはみたけど
　　　考えるほどわかんなくなって。

　　　好奇心を授けたなら箱を開けるかも、なんて
　　　神様なら予想できそうなもんなのに、とか。


　　　先生はどう考えてるのかなーって
　　　気になったから、聞きたいと思ったんです。

　　

［　あ、でも。お祭り気分の邪魔になるなら
　　また今度、聞くので、と。

　　あまりいい反応をされなければ
　　そう付け足すつもりで。　］*