──大浴場──

[風呂に入る前にまたピアス外す時には、カタコトしか話さなくなった空閑の分は俺が外すことにしたと思う。

露天風呂もよかったけど、こっちも広くてちゃんと温泉のお湯だから充分贅沢な風呂ではあって。

身体を流してからお湯に浸かると、昨日ほどは疲れていなくても、無駄に慌ただしかった夕食の疲労も解けていくような気がする。]

　不審な書き置きがあったらしいよ。

[部屋に戻る時に軽く話していた注意喚起の件を空閑に改めて伝えながら、ぐ、と腕を伸ばす。

“こんや　12じ　だれかが“どうなるというんだろう。

日付変更時間ってことは、誰かの誕生日でサプライズ祝いのお知らせとか？

いや、そんな時間は皆部屋に篭ってるし、人によっては寝てるよな。

空閑も何かと謎の現象に遭遇していたみたいだけど、酔っ払ったようになってからは特にそんな様子もないから、注意力散漫くらいの方が平和なのかもしれない。

念の為、まだ少し先の“こんや12じ“には部屋にいた方が良いんだろうな。

“あの時“はもっと早い時間からだったが、夜中は部屋にいないといけないって状況は少し似ているなと思った。

せめて部屋ではおかしなことが起きないといいのだけど。]*

　………………。

[いや、"好きなお菓子選んでいいですよ"のノリで、"好きな指に指輪つけて良いですよ"言われてもな。

興味が無かったからつけることのなかったアクセサリー類は、バングルが増えてピアスが増えてってしても、そんなには邪魔になってない。

セーターみたいな厚手の長袖着てる時のバングルはうっかり落としそうで外してることもあるけど、今みたいなもこもこセーター着てるでもない時はいつもつけるようになったし、指輪も、だから、つけてみれば慣れるだろ？とは。]

　……お前がつけたがってんだから、お前が選べばいーだろ。

[売り言葉に買い言葉的にこう返せば>>310、基本即断即決な俺だけど、判断基準が無いものを決めるのはマジ苦手なんだってことをよくよく知ってるだろう秋月は、"右の薬指"って決めてくれて、それでいいぞと頷いた。

意味、あんのか？左薬指につける以外の意味は俺は知らないし、今はどうにもネットが安定しないしで、気が向いたら調べようかなくらいは思っておくことにした。

いや、貰う当日になって思い出して調べる可能性が高い気もするけどな。]

　………………たのしみにしとく。

[アクセサリー選びに慣れててセンスあるのも秋月だしな、"デザイン探しとく"と告げられて、それで良いよと頷いた。

なんか、ずっと顔は熱いままだったんだけどさ。]*

[リトルグレイを捕縛したNASA職員みたいになってた秋月は、そのまま飼育員にジョブチェンジして、なんか色々ぼやきながらも俺の世話をし続けていた、らしい。あんま記憶にない。悪いな。]

　そういえば、お前とくらしてから、
　変なもんくわなくなった。

[憮然とした顔で俺の手指をごしごししてた秋月に、へらりと脳天気に笑いかける。

パンのカビはちぎったら食える。餅あたりも。
米飯も酸っぱくなったくらいなら、洗って煮れば、まあ食えるよ。
けど深刻にヤバいのは、ほんと、腐った豆腐だから。あれヤバいから。味もだけどマジ腹痛くなるから。
あときゅうりは泥水化する。]

　ふふ、とーふって、くさってるって漢字かくのに、
　くさるんだぜ、……ふふ、はは。

[そして完全無欠の酔っ払いがここにいる。泥水化までもう少しかもしれない。]

　おいしーな！

[食事の最後は、謎のデカボイスで圧をかけつつ、一緒にデザートピザを食ってたらしい。

「おいしーものは笑顔でくうの！」とかなんとか言いつつ、俺にあーんしろと詰め寄ったりもしてたらしい。記憶はない。]

[片付けの時は、何してたんだったかな。

お前は皿やグラスみたいな割れ物に触るなとか言われて、もそもそとスナック菓子のゴミ片付けたり、床にモップかけたりしてて、国生さんや古川たちが不穏なことになってた>>295のは知らなかったし、秋月が何かを聞いてたらしい>>309ことも知らなかった。]

　ひとり、だめなんだ？
　おれといたいんだ？

[秋月に何か言われたけど、すなおでよろしー！と何も理解してない俺は、ぱんつ１枚持って大浴場に向かおうとして秋月に追っかけられて、一緒に風呂入って。

松センとか律とかもいたんかな。いても多分、俺の態度はかわんなかったと思う。]

　あきづき、とおい。
　なんで。

[密着する必要ないけど、それにしても遠くね？なんでずっと対角線上みたいな場所にいんの？とばかり、浴槽の中で距離取ってた秋月>>309の元に、ざこざこと謎の生命体（ほぼ犬）は湯の中、四つ這いで突進しまくってた。

なんなら、ぬーって蹴伸びするみたいにして泳いで追い詰めたりもした。泳ぐのはマジやめろ溺れたら危ないから、って飼育員さんには怒られたけど。]

　かきおき。
　…………おかし？

[それは"おかき"だ。もうやだこいつ、みたいな目で見ないでほしい。動物は大切に！]

　…………ん、がんばる。

[なんか。なんかまた、声が聞こえた気がしたんだ。楽しそうな声。

だから俺は虚空に向かって返事してた。あたりまえみたいに。

何？って眼前の秋月が首傾げてても、なんか言われたから答えといたぞ、なんてへらへらして。

そろそろ上がるかってなって、髪乾かすのめんどくせーって、犬みたいに頭ぶんぶん振った後、タオルで拭いただけで終わらせようとした俺の髪は、秋月がドライヤーかけてくれたと思う。ありがとう飼育員さん。]

　なんか。
　たのしかったな。

[帰れないとか困るじゃんって思ったけど、ゲームしたりピザ食ったり、色々たのしかった。
"秋月プリン"、皆に食わせて、皆がうまいって絶賛してたし。

はうす！と、犬が人間に指図するみたいに、そこに横になれ！と秋月に命じ。
窓際のベッドに横んなった秋月の腹の上、跨がって。

そのままぺたりと上体重ねるみたいにしたら、いつもの体温がそこにあったし、知らないシャンプーだのボディソープだのの匂いがしたけど、着てるシャツからはごくうっすらいつもの匂いがしてることに安堵する。]

　でざーと。

[どうぞ召し上がれ、でもねーんだけど。
"食う"のは俺の側な気もしないではないんだけど。
ともあれ、笑い混じりにそう告げながら、ちゅぱ、と口付けた。

あれ？つーか、つーかさ。

”すけべ語"って、当人にとって何がすけべに相当するのか、直球で聞いた方が早かったりするんか？
酔っ払いは酔っ払いの理論で天啓を受け、ぱちぱちと瞬いて。]

　おまえ、なにがすけべ？

[突然始まった禅問答を許してほしい。
俺は本気だ。]*

──2日目夜──

[変なもんってわかってるなら食うなよとか、1人暮らしの時どんな生活してたんだといろいろ言いたいことはあったが聞いてなさそう（聞いたところで覚えてもないだろう）だから途中で諦めた。

十河に話した苦労話の一端は垣間見えたと思う。
同居の理由が空閑の世話のためだと思われそうだが、そこまで間違えてもない。

空閑の口にピザを突っ込んでても、それこそ餌やりをする飼育員にしか見えなかったんじゃないだろうか。>>314

片付けは余計なことをせずに言われた作業をしていたみたいだから、そこは褒めておいた。]

　そういうことでいいから、1人でふらふらするなよ。

[古川ちゃんからの伝言も正しく理由は伝わってなさそうでも、要は単独行動は控えろというのは伝わってたようだから、まあいいか。>>315]

　だから、広い風呂なんだから広く使った方がいいだろ。泳ぐな。

[距離を離しても近寄ってくる空閑から離れようとすること数回、これを繰り返しているとのんびり浸かることも出来ないからと途中で諦めた。

そんな状況でおかしな気分にもなりようがないから、幸いだったんだろう。

衣代ちゃんが一緒に露天風呂に入れる同性カップルだったらよかったと思っていたなんて話は知らないけど、この現状を知ったらそうでもないなと思うんじゃないかな。例が悪いだけですね。]

　菓子の話はしてない……、
　変な手紙？メモがあったって、いや、いい。

[聞かせたところでその怪文書を空閑が書いたわけじゃないなら答えが出るものでもないし……というか確実に違う。

それなら不安になるようなことをわざわざ伝える必要もないか。
不安になるような思考回路も今はなさそうだけど、1人で出歩かなければ問題ないだろう。]

　頑張るって何を？
　もうこれ以上余計なことするなよ。

[空閑が返事をした“誰か“の声は俺には聞こえなかった。>>317

十河や松っちゃんせんせーがいたとしても、話しているタイミングでもなかったはずだが。

空閑は日中も何か聞こえたとか言ってなかったっけ、と問いかけてもいろんな意味で納得のいく答えはなかっただろうから、酔っ払いの幻聴なのか怪奇現象なのかはわからなかった。]

　水飛ばすなって。
　髪乾かすからそこ座れ。

[空閑の髪を乾かして終われば、勝手に戻ろうとすんなよと釘を刺して。

自分の髪を乾かしてから一緒に部屋に戻った。

途中、背後からついてくる足音が聞こえたりしたから、空閑の手を引くと少し急ぎ足で部屋へと向かうことになったかな。]