「でも ボクは おレイを ような コトは でし。
　ボクは
　ハイタツを ブラキに おネガい だけでし」



「サダルの キモチは でしから、
　ベツの コトで ボクの キモチを でし！」

『誰　？』

あまりに慌てすぎて離れてしまった文字は
キューへだれが薬を頼んだかを訪ねている

『それでも　キューが伝えてくれたことは感謝しないと　ありがとう　勘違いしたままだった』

ブラキウムに贈り物を渡されたときに聞いたキューの名前
その時も驚き同じ反応をしたという
今度こそ薬を届けようとした相手を知りたいのだ

『い』

書きかけてスケッチブックを抱きしめればじとっとした瞳でメレフをにらみ付ける
首を横に振って抗議しながら続きを書いた

『恋なんて　したことないですが　ただ会って話がしたいって言ってるだし』

『それで　可能なのかは教えてくれないんですか　対価も情報も　かなり難しいなら高い煙草代になります』

期待をしていいのかがわからない、と揶揄われながらも用件は変わらない
サダルはそれほど本気である。メレフから言わせると命をかけて恋をしている

メッセージカードを貰ってしっかりと読んで
また活用しそうだと心の中で思った。気軽に気分が味わえるのなら楽しそうである

『態々調査に？　1人で大丈夫なのか』

店主であるあなたへの態度と普段から話す言葉の態度は
文字数の状況でかえているようだ、なんだかフランクになっている

『よければついていくけど　他に約束があったら強い人について行ってもらった方が良い
　魔法も支援も　此でも得意な方だから』

「そうね、余計なお世話」

　並べられた言葉を読んでから。
　横を向いて、冷たく言い放った。
　穏やかな風が二つに結った髪を揺らしている。

「分からないことばかりよ。
　だけど、わたしが望んでここに来たんだもの。
　……気遣いなんていらないわ」

　ちらりとスケッチブックに視線だけを送って、ぽつりと。

「……兄さんは行方不明になった。
　そう言ったら、あんたはどうしてくれるの」

誰かはそれを恋といっただろう
誰かはそれを狂気といっただろう

どこまで本音かその先に求めて居るものがあるのかはうかがい知れないが
サダルの心が囚われていることだけはわかってしまう

『ごめんなさい　取り乱してしまって　ラサルハグのいうことは　正しいです』

『話したいことは　人を殺す理由だとか　どんな気持ちだとか　なんでその相手を選ぶのか　沢山　沢山あります　だから　会えたらなと　せめて殺される前に聞いてから死にたいです』

「……ブラキから でしか？
　クスシギルド 『やくし』の でし！」

キファの言葉でころっと表情が変わったサダルは途端に

『ごめん　キファ　脅したかったんじゃないんだ　怖がらせてごめん』

『忘れないよ　キファを護れるようにする　だれよりも先に協力者になった君を裏切らない』

『だから　もし　違えそうなったら教えて欲しい』

『自分の目的は　彼らと話をしたい　変わってしまったら　相談するから』

段々と不安になるようにスケッチブックの形が歪んでいく
力を入れすぎて書いているのか、先程の勢いでよれてしまったのか

『キファの占い　嬉しかった　助けてくれてありがとう　これからよろしく』

ふわりと笑ったサダルは本当に表情が豊かで
文字よりもよっぽど態度と顔が全てを物語っているように思える
サダルの素直で不器用な本質をあなたは既に見抜いているのかも知れない

嬉しそうな笑顔のサダルはキファに何色が好きかと問うた
その色の付いた星が手元に渡される、これがサダルとキファの間に繋がれた絆の色だ

「どうしようかな〜。どう？　サダルちゃん来る？
　来てくれなかったら��寂しい�≠�アンタの部屋にお届けするわ」

　寂しさのデリバリー。傍迷惑である。

「もし他に来てくれる人いた場合でも一緒にどうかなって。
　人は多い方が心強いし？」

『トルキなんて人いたっけな　キュー　調べればわかるんだよ』

キューが目を逸らす理由がわからなかったサダルはゆっくりと視線を合わせるように膝を曲げる
視線を合わせ避けられるとその手は届かないがゆっくりと頭を撫で
手を離してからペンの音を鳴らす

『教えてくれよ　キュー　誰が薬を用意をしたんだ？
　それともキューには　感謝が受け取れない理由があるのかい』

「ヘイヘイ、真面目な交渉の話といくかァ。
　犯人を割り出す事について『可能』かは微妙だ。

　さっきも言ったが、いくらウチのお嬢とは言え、
　すぐさま犯人を見抜ける目があるワケじゃねェ。
　取引の内容としちゃ『犯人捜しの手伝い』くらいだろうな。

　それでもいいなら、依頼を受ける事は『可能』だろう。」

殺人犯と話をしたいって時点で酔狂とは思うが黙っている。

「取引がそれでいいかがまず一つ。もう一つ。
　『本当に会って話をするだけで終わるか』だ。

　お前が犯人に害を成す、
　或いは成される可能性の有無が聞きたい。」

『その理由が　事件と関係していると思っているのかな』

文字だけではサダルの感情は伺えないだろう
だがニアを静かに捉えた目は不躾に聞いているだけではないように思える

『そうだとニアが思うのなら　できる限り協力する　犯人だけじゃなくてお兄さんも探す』

「……ふ。
　道士であり、数百年を生きた吾を。
　凡夫がそう簡単に怖がらせられると思うな」

　それはきっと、額面通りというよりは。
　慰め代わりの言葉。

「これ、落ち着け。
　大切な書き物がだめになってしまうだろう。

　無論。教えてやる。
　……安心せよ。
　吾とて忘れん。おまえはおまえだ。

　吾は、神の啓示を得ずとも。
　ちゃんと今のおまえの形を、覚えているから。
　すぐに忘れてしまうほど、婆ではない」

→

　臙脂と答えれば、その色の星が渡された。
　厄除けの色として、祝いの色として。
　彼女の故郷で愛されていた色だ。

　契約と、絆の証。吉兆を予感する。

「ありがとう」

　常から表情の固い少女は、少し笑んだ。
　紐を通して手首に結ぼうか。そう決意した。

「ほれ、もう行け。
　聞かれては無いと思うが、あまり立ち話をしていると
　ヌンキ辺りが怪しむ」

「…… ……」



「
　」



「でも、けど。」

「おレイを わけじゃ でし。
　ボクは ヒトに おレイを モラって でしから、
　ボクも おレイの キモチは でし」

「それでも やっぱり、ボクは、…… ……」

『しっかりと仕事をしている人には当然の事だよ　会議中も賑やかでよかったし』

答えをかくのに時間を要していたが、悩んでいただけで書き始めるとすぐだった


『これでいい？　流石料理人だ　気を遣ってくれてありがとう』
『ゲイザーの作る料理楽しみにしているから　あまり見た目がおかしいものばかりはやめてくれよ』

「髪留めは勘弁だなァ。
きっと落ち着かねぇや」

ハハ、と軽く笑った。
考え込むように顎に手を当てる。

「なんだ？ソレ、呪いかなんかか？
薬で治らねェって──持病でもなさそうだしなァ」

困ったような顔を見て、肩を叩いた。
優しく、元気付けるように。

「キューはバカじゃない。
それでもいいとアンタに渡したんだろうさ。

治る治らねえはきっと二の次だ。
キューはアンタの為になんかをしたかったんだろ。
その祈りがソレなわけだ、
受け取った時点でキューの祈りは届いてる。
アンタはそれを受け取るだけで良かったンだよ」

スケッチブックはこのあと新調しようと思った

『わかった　また知らせる　そのは　お互いの場所へ導いてくれるから　その時に話そう　光ってと願えば灯りにもなって夜に本を読むこともできます』

果たして夜に本を読むだけに星を取り出すのだろうか
最後に敬語で取り繕うとしたが一度染みついた態度は直らないかも知れない
いくつか視線を迷わせて頷けば再度キファを見つめサダルは離れるのだろう

ありがとう、と音が出ない声で告げればサダルは一度会議の場を後にした