人狼物語 三日月国


149 【R18身内村】LOVE OR ALIVE

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視点:人

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月が姿を変え、新たな一日が始まった。村人は集まり、互いの姿を確認する。
???が無残な姿で発見された。

伝承は真実だった。異形の刃を持つ魔物“人狼”は、確かに存在するのだ。

もはや村人たちに猶予は無い。早く人狼を見つけ出し、処刑しなければ。罪のない者を処刑してしまう事もあるだろうが、それも村のためにはやむを得ない……。

現在の生存者は、──、瀬里、蓮司の3名

村の更新日が延長されました。

村の更新日が延長されました。

【人】 雨宮 瀬里

 

 その日はすぐにやってきただろう。
 宮々の家に行く車の中では、
 きっといつもよりも会話は少なかった。

 私ね。
 時折貴方を窺っては
 貴方を好きであることを確かめてた。

 貴方の気持ちがなくなったとしても、
 私の気持ちがなくなったとしても、
 一瞬一瞬のことを、思い出せるように、
 流れる景色の内側に、貴方の存在を確かめてた。

 
(0) 2022/05/26(Thu) 13:58:42

【人】 雨宮 瀬里

 

 私が知らなかったのは
 恋矢が抜かれると、恋心を失うだけではなくて
 貴方が記憶を失う可能性もあるということ

 私も貴方も知らなかったのは
 恋矢が抜かれると、
 その恋矢と繋がっていた相手の恋矢も消滅して
 相手の恋心や、記憶にも影響があるかもしれないこと

 恋をしていた間の私自身が、
 いなくなってしまう可能性もあるということ

 
(1) 2022/05/26(Thu) 13:59:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 漠然とわかっていた。
 確かなことは、ひとつだけ。

 恋矢を抜くことで、
 私と貴方の今がなくなってしまうということ。


 
(2) 2022/05/26(Thu) 13:59:41

【人】 雨宮 瀬里

 

   宮々の家に着く。
   私たちを迎えてくれたのは誰だったか。
   貴方の隣で、私は薄紫の翼を揺らす。

   貴方の隣に居られるのは、
   どれくらいの間だったのだろう。

   僅かなひととき。私は貴方と手を繋ぐ。 *

 
(3) 2022/05/26(Thu) 13:59:54

【人】 宮々 蓮司

行きの車内は静かだった。
俺はただ前だけを見つめていた。
どこにも辿り着かなければいいのにと思いながら。


それでも行かなければいけない。
今に留まるのではなく、未来を掴むために。

宮々の家は都内から少し離れた場所にあった。
その町は電車を使えば2時間程度で都心まで出られる位置にある。

囲いのある広い敷地で、武家屋敷を思わせるような平屋建て。

忌まわしい実家だ。
命が掛かってでもなければ戻ることはなかった。


車を停め、エンジンを切っても体が重い。
(4) 2022/05/26(Thu) 19:13:01

【人】 宮々 蓮司

 
 「 瀬里、覚えてるか? 」


あのときに聴こえた美しい歌声。
あのときに聴こえた指を鳴らす音。
二人の幸せを願う音色が二つ。



 「 俺は忘れない。
   あのときの音も、お前のことも。」


たとえ忘れてしまったとしても。
もう一度それを思い出すのだと、強く強く誓う。
(5) 2022/05/26(Thu) 19:13:22

【人】 宮々 蓮司

暫くしてから車を降りると、
手を繋ぎ、家の中へと向かう。

出迎えてくれたのは老人がひとり。
それが蓮司の祖父であり、ただひとり連子の味方であった。

蓮司の祖父は物腰柔らかに家の中へと二人を招き入れた。
二人が通されたのはさほど広くはない和室の客間だった。

中央には小さなテーブル。
しばらく待つように告げると祖父は部屋を後にする。

それからすぐに別の人物が部屋をおとずれたが、それは宮々のお手伝いさんで、二人にお茶を運んできただけだった。
*
(6) 2022/05/26(Thu) 19:15:05

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 もちろん、覚えてるよ。 」


 あの時のふたつの音。
 私たちを結び付けてくれた恋の矢は、
 確かに今もここにあって、
 おかげで、私たちは素敵な恋をすることができた。

 目を閉じれば今でも胸の中で響いている気がした
 澄んだ美しい歌声が。幸せを願って鳴らした指音が。

 
 「 忘れないよ 」


 私にとっての忘れない≠ヘ
 貴方にとってのそれとは重みが違ったけれど
 それでも、きっと、気持ちは同じ。

 
(7) 2022/05/26(Thu) 19:46:15

【人】 雨宮 瀬里

 

 武家屋敷のような平屋建てに、
 まったく驚かなかったかと言えば嘘になるけれど
 それでもなんとか澄ました顔は出来ていただろうか
 
こんな時に、作りものの顔が得意なのが役立つとは


 通された客間で、机を囲んで貴方と向かい合う
 二人きりになったときには、
 あれがお祖父さん?とでも聞いただろうか
 肯定が返ってきたら、優しそうね、とも。

 
 「 治療、怖い?
   ……病気、良くなるといいね 」


 恋天使の矢を除去する治療。
 どんなことをするのだろうか。
 想像すらつかない私は、そんなことしか言えなくて。
 
恋を失うことからは、目を背けた。
 *

 
(8) 2022/05/26(Thu) 19:47:10

【人】 宮々 蓮司

瀬里に聞かれて、自分がまるでそのことを気にしていなかったと気づいた。
治療がうまく行かないこともある、病気が治らないことも。
でも、そんなことよりも、瀬里を失うことの方がずっと怖かった。


 「 いいや、……いや、すごい怖いな。」


それでも、考えてしまえばそれはよりリアルに感じられる。
うまく行かなければ、それこそ命を失う可能性だってある。
終わりを迎えれざ、瀬里との未来が閉ざされてしまう。
それが何よりも怖かった。



 「 でも、大丈夫だ。
   爺様は宮々でも腕利きなんだ。」


だからこそ。
その見立ては正しいと思えてしまう。
祖父がそう言うのなら、きっとそうなってしまうのだろう。
(9) 2022/05/26(Thu) 21:09:23

【人】 宮々 蓮司

 
 「 瀬里、……もし…… 」


言葉が詰まった。
何を言えばいいのか、何を聞けばいいのか。

刹那の逡巡。


 「 上手くいったら、何がしたい? 」


何がしたい?
何処へ行きたい?

もしも、治療が成功して、
そして何もかもがただの杞憂で終わったとしたら。
そのとき、お前は何を望むのだろう。
俺は何を望むのだろう。

*
(10) 2022/05/26(Thu) 21:10:19

【人】 雨宮 瀬里

 

 上手くいったら

 その言葉は、単に貴方の病が治ったら、
 という意味ではないことくらい、私にもわかる。

 何もかもがただの杞憂で終わったら。
 貴方と私が今のままで、在り続けられるなら。

 
 「 うーん、何かな… 」


 何をしたいか、なんて考えたことなかった。
 何処に行きたいか、なんて考えたことがなかった。

 貴方と一緒だったら、どこでもよかった。
 それが当たり前≠セったから。

 ……結果。私は一つの答えにたどり着く。

 
(11) 2022/05/27(Fri) 7:58:13

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 すぐには無理かもしれないけれど
   私ね。蓮司と一緒に暮らしたい。

   週末デートで突然音沙汰なくなって
   貴方の有事に駆けつけられないとか。
   そんなの、もう嫌だもの。 」


 お互いに生活の拠点を持っているから
 すぐに共に暮らすのは難しいかもしれない。
 だけど当たり前≠ェずっと続くように、
 私は、貴方の傍に在りたい。 *

 
(12) 2022/05/27(Fri) 7:58:33

【人】 宮々 蓮司

それは二人とも望んでいながら、口に出すことのなかったもの。
瀬里には夢がある。
俺はそれを応援したいと思うと同時に、負けられないというくだらない意地があった。

だから、瀬里が卒業した後も二人は生活の拠点を別にした。

でも、離れれば離れているだけ、お互いがお互いをどれほど大切に思っているか、思い知らされた。
お互いの身に何かが起こるのではないかという不安、そして実際に起きた時にそばに居られない焦燥。
瀬里が黒い不安を抱いていたなんて、思いもよらなかったが。



 「 ああ、そうしよう。
   やっぱり、離れているのは嫌だな。」


意地も、都合も関係ない。
上手くいったら
きっと訪れない仮定を前に、ただ純粋な想いと望みだけが残っていた。
(13) 2022/05/27(Fri) 14:02:36

【人】 宮々 蓮司

机を挟んで向かい合っていたせいで、瀬里に触れることが難しい。
それでも身を乗り出して手を伸ばそうとした時。


 
『 蓮司、準備をしなさい。』



ノックと共に届いた声。
祖父の言葉が、二人の時間を終わらせる。


 「 今、……いきます。」


身を乗り出したそのままに立ち上がる。
くらりとした小さな立ち眩みに目の前が揺れる。
改めて、今この身体が病魔に侵されていると自覚する。
(14) 2022/05/27(Fri) 14:03:07

【人】 宮々 蓮司

 
 「 行ってくる。
   待っていてくれるか? 」


治療にかかる時間は半日から1日と聞いている。
待たせるのなら、この家に瀬里を泊めることになるが。


 「 必ず戻るから、待っていてほしい。」


ひとつしかない瞳で瀬里を見つめる。
怖い、こんなにも愛しい人を失うかもしれないと、そう思うだけで身体が震えるほどに怖い。

必死に内なる恐怖と戦い、体の震えを抑えながら、瀬里へ向けた顔の口元には微笑みを浮かべてみせた。
いつだって、男は好きな女には虚勢を張っていたいものだから。

*
(15) 2022/05/27(Fri) 14:03:38

【人】 雨宮 瀬里

 

 それは上手くいったら≠フ話。
 だけど、絶対に訪れないなんて仮定はせずに
 訪れるかもしれない未来を夢見た。

 
 「 うん、約束 」


 もちろん上手くいったって、
 そうするには山ほど課題はあるかもしれないけど
 それでも。夢を見ないよりかは、全然いい。

 
(16) 2022/05/27(Fri) 14:58:08

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 待ってるよ。
   行ってらっしゃい。 」


 あなたの右目を見つめてぎこちなく微笑んで。
 大丈夫だよ、と言うようにひとつ頷いた。

 貴方がそうやって微笑んでくれるなら
 私も、貴方を微笑んで送り出したい。

 貴方に最後に見せる顔は、
 やっぱり笑顔がいい。………なんて。
 そんな言葉が頭を過ぎったら、
 込み上げるものは、あったけれど。

 泣くのは、今じゃない。


 
(17) 2022/05/27(Fri) 14:58:30

【人】 雨宮 瀬里

 


 そうして私を残して扉は、閉じられた。


 
(18) 2022/05/27(Fri) 14:58:42

【人】 雨宮 瀬里

 

 きっとお祖父さんが、
 もしくはお手伝いの人が。

 治療が1日近く掛かることを私に伝えたのは
 それから間もなくのことだったし、
 きっと、私は不自由なく滞在させてもらえたのだろう

 食事も、寝床も、きちんと宛てがわれて
 私はそこで貴方を待つことになる

 
(19) 2022/05/27(Fri) 14:58:57

【人】 雨宮 瀬里

 

 1時間、2時間、
 経過する時間の中で、
 私は常に貴方のことを思い浮かべた。

 まだ、私は貴方のことを愛している。

 そんな言葉を反芻しながら、
涙を流しながら

 恋心を何度も確かめた。

 同時に、恋心を抱いているということは
 まだ、貴方の治療が終わっていないということだ。
 それは、私にもわかること。

 同時に、貴方のことを思い出せるということは
 まだ、貴方の治療が終わっていない可能性があるということ
 それは、私にはわからないこと。


 貴方への恋心を最後に確かに感じたのは、
 私が眠りにつく前のことだった。 *

 
(20) 2022/05/27(Fri) 14:59:50

【人】 宮々 蓮司

瀬里が泣いていた。
わかってる。
あの微笑みが作り笑いじゃないことぐらい。
あれは瀬里の心からの微笑みだ。
でも、そう、泣き顔をかくした顔だった。



瀬里をひとり残して離れへと向かう。
沐浴を済ませ、鎮痛成分のある薬湯を飲んだ。
精神が追いついてきてゆっくりと眠気にもにた浮遊感に包まれる。

思い浮かぶのは瀬里のことばかり。
もしも、俺が変わってしまったら、瀬里は泣くだろうか。
瀬里まで変わってしまうことは思い及ばなかった。

(21) 2022/05/27(Fri) 19:23:54

【人】 宮々 蓮司

 
 「 爺さま。
   瀬里を、連れてきた女の子なんだけど。」


準備をする祖父に向けて話しかける。


 「 もしも、
   俺が彼女のことがわからなくなっても、
   ……彼女に会わせて欲しい。」


恋心が失われて、もしかしたら記憶までなくなって、彼女のことがわからなくなっても、会えばきっと思い出せる。
思い出せるはずなんだ。
(22) 2022/05/27(Fri) 19:24:17

【人】 宮々 蓮司

陽が落ちて、
月が昇り、木々が風に揺れる。

背中に祖父の気配を感じながら、
頭の中は瀬里のことだけで一杯にしていた。


初めて会った時のことも、
恋矢によって結ばれた時のことも、
それから一年の間はずっと瀬里との思い出ばかり。
笑顔も、真剣な顔も、それから……



 
「 泣き顔は、……まだ見たことなかったな。」



そう小さく呟いくと同時に、
意識が段々と小さく希薄になっていった。
(23) 2022/05/27(Fri) 19:24:45

【人】 宮々 蓮司

夢を見た。

とても大切な人と手を繋いでどこかへと歩いている夢。
顔には陰が掛かっていてそれが誰かはわからない。
俺は、その子の名前を呼んでいるのに、それがどんな音なのかわからない。
聞こえない。
自分の声も、彼女の声も。


 
目を覚ました時。
朝の日差しが辺りを包んでいた。

まだ早朝だと言うのに随分と暑く感じられ、季節がもう夏へと移り変わったのだと知った。*
(24) 2022/05/27(Fri) 19:27:10