ウユニの手を引いて
　　　太陽が沈みゆく西へと向かう。

　　　いつかくる夜明けに怯え、
　　　伸びていく影を振り切り
　　　終わりのない道を進む。

　　　太陽の光に見捨てられたくないと
　　　嘆く2つの影法師が
　　　思い出の丘のその先へと足を進め

　　　辿り着いた街で
　　　サルコシパラは未来を静かに憂いた。

　　　何かあるのかと尋ねる彼女を横目に
　　　店先に立ち、すみませんと店主に声をかけると
　　　中から初老の女性が現れる。



　　　女性は二人を見てケラケラと笑い
　　　サルコシパラはといえば
　　　女性に被せるように笑いながら

　　　と、繋いでいた手を女性に見せる。
　　　それを見た女性はといえば




　　　そう言って店の奥に一度戻ると
　　　持ってきた赤い箱をサルコシパラに手渡し
　　　サルコシパラとウユニの顔を見て微笑んでいた。

　　　そう言うサルコシパラは
　　　まるで未練を果たそうとする霊のように
　　　赤い箱を自分の懐へとしまう。


　　　　　「すみません、病気の事を調べないとと
　　　　　　いうのはわかっているんですが……

　　　　　　せっかくなのでデートでも、と。」


　　　逃れられない現実に一旦目を瞑り
　　　サルコシパラはウユニの目を見ると
　　　照れくさそうに笑ってみせた。*

　　　　　　　

　　　成就したからこそ言える台詞を
　　　悪戯な笑みを浮かべて告げる。>>D14>>D15

　　　違和感をなにか感じとったのか
　　　どこか鈍い反応のウユニに
　　　サルコシパラは目を瞑る。

　　　言わず、触れず
　　　今だけは互いにそうあって欲しいと願うのだから。

　　　歯が浮くような言葉がでてくるのは
　　　いつかそれを伝えられなくなる日が
　　　やってくると知っていたからで。


　　　　　　恥じらうなんて、そんな暇はないのだ。**

　　　「行きたい場所、ですか？」


　　　男女二人が出かけるスポットは
　　　大方頭に入っていたが

　　　その中でウユニがどこを選ぶのか
　　　そこまではピンときてはおらずに
　　　手を引かれるままにウユニについていく。

　　　するとたどり着いたのは湖
　　　風に揺れる水面に映るのは
　　　左目の花咲みと、過去の投影。>>D20


　　　湖の中へと入る彼女は
　　　まるで今から水の中に消え入りそうな
　　　そんな儚ささえ醸し出して。

　　　ウユニの話を
　　　サルコシパラは静かに聴いていた。
　　　

　　　だからこそ彼女の過去を
　　　自分の手でなぞるという行いに
　　　一種の希望さえ見い出せてしまう。

　　　水飛沫に舞うウユニに誘われて
　　　吸い込まれるようにその水面に足を踏み入れ
　　　楽しげに笑う彼女に、




　　　そう応えるのだった。