人狼物語 三日月国


77 【ペアRP】花嫁サクリファイス 弐【R18/R18G】

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【人】 鬼 紅鉄坊



[ 腕の中の若者の母親は──恐れを知らず強情な娘だった。
 望まぬ許嫁と結ばれる未来を憂い、
 その輿入れにより益を与える家のことも嫌悪していた。

 鬼に懐く程、村に居場所を見つけられなかったのだろう。
 いつしか己に会いに来ることも山に踏み入る目的となってしまい
 何度もこうやって抱え、探しに来た家の者に引き渡したものだ。 ]
(37) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:49:14

【赤】 鬼 紅鉄坊



「でもわたし、どれだけ辛くてもいいの。自由になりたい
  何の苦しみもない世界には、喜びだって存在しないでしょう?」

[ さとは見目も仕草も淑やかな令嬢であったが、
 どこか飄々とした部分があり、その奥に苦しみを抱えていた。

 だが、いつかそう言った時の姿は
 村の外、国すら越えた遥かな世界を夢見ていた彼女は
 ただただ眩しく、強い生き物と映った。
 ──鬼には見ることが出来ない夢だったから、なのかもしれないが。

 それでも、その夢を掲げるのが田舎育ちの若い娘では
 空想家で現実が見えていないと人間は思うだろう。

 そこを支え、さとの知らぬ世界へ手を引いてくれる筈の男は
 鬼が手引きし駆け落ちの手助けをする予定だった恋人らの片割れは
 あの花が咲く頃に迎えに来ると約束し、結局帰っては来なかった。 ]
(*0) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:49:32

【赤】 鬼 紅鉄坊



[ 鬼は二十年近く村人に嘘をつかれていた。

 再び子が山に通い詰め人外と心を通わすことを避けたかったのか、
 はたまた、本当に鬼の子である可能性も見ていたのか。

 訪ねて来なくなったさとを心配し、どうしているのか聞いた時
 さとはあの約束の男──異人の商人の子を孕み、
 結局はどちらも助からなかったのだと、教えられた。

 真実を知ったのは数年前、輿入れの季節。
 想い人がいたらしい花嫁が、
 私ではなく「鬼の子」が選ばれれば良かったのにと泣き出した時。

 花嫁の様子とその普通ではない呼び名が気に掛かり、
 一体誰のことなのか問い詰めれば、
 鬼を恐れる村人は正直に答えるしかなかった。 ]
(*1) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:49:48

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 抱けぬ筈だったあの娘の子供の重みを感じていると、
 やはり鬼などの元に置いてはおけないと強く感じた。

 ──母親が叶えられなかった夢を、継がせてやろう。 ]
(38) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:50:04

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 暴れも嫌がりもせず、大人しく抱えられているのは>>1:139
 この行いが正しいからこそであると、鬼は思っていた。
 繰り返す言葉が何をその胸に与えているのか、気づくことはなく。

 知らぬ過去があれば、その想起は読めまい
 過去を見ていれば、側にいる者の心は分かるまい。

 互いに互いを分かっていたつもりになっていた鬼と鬼子、
 今この時はそこに通い合うものは、失われている。 ]
(39) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:50:18

【人】 鬼 紅鉄坊



さあ……着いたぞ
ほら、此処から先は山の外だ。初めて見たのではないか?

[ どれ程歩いたのか、廃寺のある辺りからは反対側。
 優しく下ろしてやり、口を開く。
 途切れた木々の並びの先に見える開けた世界は、光に溢れていた。 ]

私も実際に見たわけではないのだが、
真っ直ぐに歩いて行けば、半日程で村に着くらしい
山と比べてずっと歩きやすい、思うよりはきっと辛くないさ

そこはお前のことを知らない者達の住む場所だ
誰にも虐げられないところから、新しく始められる

本当はもっと、時間を掛けるつもりだったのだが
……否、きっとこれでいいのだろうな。こうなる定めだったのだ

[ 千太郎と暮らし始めてから鬼は少しは饒舌になった。
 それでもここまで口を挟ませずに一方的に語ることは無かった、
 無論、意図的なものだ。 ]
(40) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:50:34

【人】 鬼 紅鉄坊



心配するな。千太郎は賢いし、怠け者ではない
髪は戻してやれなかったが……もう身体もあの頃とは違う
少しばかり口に気をつければ、働き先は見つけられるさ

お前の母親は、村から出て自由になることが夢だった
彼女の……さとの叶えられなかった夢を、果たしてくれ

[ 寺の外に千太郎を置き、勝手に包んで来た荷
 持ち込んだ品と共にあの書物も入れておいた。
 例え嫌がられても強引にでもしっかり抱えさせ、両肩に触れる。

 常のように加減した力は容易に緩み簡単に離れ、鬼は背を向ける。 ]
(41) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:50:50

【人】 鬼 紅鉄坊




既にあの寺はお前の家ではない
再び山に入れば、私の同胞に殺されると思え

[ 低い声を更に低くし、はっきり聞こえるよう脅しを掛ける。
 望んでいるのは役目を与えた者に求められること
 ならば、ただ死にたいわけではない筈だ。 ]

お前との日々は、とても幸せなものだった
人間たちと共に暮らし、同じ気持ちを感じてほしい

[ 何を見ても何が聞こえても振り返ることなく、
 本来の歩幅と歩調で慣れた山の中に消えて行った。 ]*
(42) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:51:10

【秘】 鬼の子 千 → 鬼 紅鉄坊



[もう一度会いたい。

何かを堪えるように唇を噛み、単純な想いに突き動かされる男の姿は

   最早鬼子などではなく
  
            ただの人間であった。]
(-32) ガラテア 2021/06/23(Wed) 1:53:18

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 仕方なかった。生きる世界が違った。
 最初から理解し目的を定めていた筈なのに、
 脳裏に何度も言い訳のような──自分を慰めるような言葉が浮かぶ。

 これ以上共に在れば、いつか喰い殺していたかもしれない。
 この選択が間違っているわけがない。

 今日からまた独りになる廃寺、不要になる品をどうするか考えねば
 しかし何故か帰る気にはなれなくて、
 大木を背に座り込み、色を変えていく空を見上げていた。 ]
(53) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:55:08

【赤】 鬼 紅鉄坊

[ そういえば、最後にさとに問われた時
 何も返すことが出来なかった────

 遠い記憶が蘇るのは、再びの別れがやって来たからか。 ]
(*2) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:55:21

【人】 鬼 紅鉄坊


[ さとによく似た形の目が、
 呆然とこちらを見上げていたことを思い出す。>>44

 そこまで喰われたかったのか、
 生きたくはないのかと思うと心苦しい。

 共に過ごした時間、幸せだったのは自分だけだったのだろう。
 ならば新しい村で、今度こそ幸せを見つけてくれたらいい。 ]
(54) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:55:52

【人】 鬼 紅鉄坊



なんだ……?

[ 風もないのに森がざわめく。
 同胞たちの気配の幾つかが、同じ場所に集まっている。

 昼間の熱が半端に冷めたような、生暖かい空気の中
 鬼は来た道を戻るように、気配の元を辿っていく。

 本当は暫く独りになりたかったのだが、
 どうしてかとても気になってしまった。 ]
(55) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:56:11

【人】 鬼 紅鉄坊

[ どこぞの娘が一人で山に入り込み、
 奥まで行ってしまった時も確か────

 はっと目を見開いた鬼は歩みを早め、やがて走り出した。 ]
(56) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:56:22

【人】 鬼 紅鉄坊




「捨テタ!捨テタ!紅鉄坊ガ花嫁ヲ捨テタ!」


   「喰ッテモイインダナ!」

            「男ハ美味クナイケドナ」


  「人間ハ中々喰エナイ、ワシハ男ノ肉デモイイゾォ」


[ 興奮した様子の妖怪らは──より異形を持った鬼たちは
 喚くように叫ぶように同胞と言葉を交わし合う。

 一番先に会った一体が、転んだ獲物の上に伸し掛かるように乗り
 手に比べ長細い指の先の鋭い爪を、その首に向けて振り上げ── ]
(57) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:56:43

【人】 鬼 紅鉄坊

やめろ!

[ 近付いてきた草を掻き分ける音の正体が、鬼がそれを掴み上げ近くの木に叩きつけたことで阻まれた。]

違う、違う!私は千太郎を捨ててなどいない!
帰れ、お前たちにこの子を喰らう権利はない!
──聞こえないのか、散れ!

私はお前たちを叩き潰す為にあの方に口添えしてもよいのだぞ!

[ 口々に上がる不満の声。繰り返される「捨てた」
 同胞と千太郎の間に立ち塞がりながら、声を荒げ怒り言い争う。

 両者にある隔たり、どちらも互いの言葉を真実と認識している。
 その中で同胞が引くことになったのは、
 実質的な山の主を引き合いに出したが為に。 ]
(58) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:57:02

【人】 鬼 紅鉄坊


何故だ、何故帰ってきてしまったのだ……
私はあれ程言ったではないか

[ 漸く静かになった闇の中。

 膝をつき抱き起こしながら、鬼は嘆く声を上げる。
 夜目の効く紅色が見下ろした顔は、どんな表情をしていたか。 ]**
(59) ガラシア 2021/06/23(Wed) 1:57:17

【秘】 鬼の子 千 → 鬼 紅鉄坊



 ……俺を見ろよ

[その声は齢よりもずっと、幼く鳴った。]
(-61) ガラテア 2021/06/24(Thu) 1:59:05

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 予想外の一言が鬼の思考を停止させ、>>91
 昼間の意趣返しの如く口を挟めなくなる。

 数多の言葉が山の中、大きな身体に降り注ぐ。
 いつか誰かを刺した罵りではない、
 小さな人間の中に溜め込まれ吐き出された想い。
 鬼が知らず置き去りにしてしまった遣らずの雨。>>92
 身を濡らすことはないまま深くに染み渡り、頭を冷ますようだった。

 望みを叶えない鬼との生活は、嫌ではなかったというのか。
 相手のことを考えていたつもりで、自分勝手になっていたのか。
 真にこの若者から自由を奪ったのは、己だというのか。

 軽すぎる拳が、何より重い。]
(94) ガラシア 2021/06/24(Thu) 2:00:18

【人】 鬼 紅鉄坊



そうか、そうか、……

[ 腕に収めていなければ届かない、囁きめいた大きさで
 見目に不似合いな幼い響きが落とされた。
 頷きあやすように背を撫で、叩き付けられた全てを噛み締める。 ]
(95) ガラシア 2021/06/24(Thu) 2:00:58

【人】 鬼 紅鉄坊


すまなかった……千
私たちは互いに、言葉が足りていなかったな

[ 恐ろしい思いをさせてしまった理由も、呼び名も
 きっとこれが正しいのだと、すんなり受け止めることが出来た。

 両親に愛され真っ直ぐに育った可能性の中の千太郎を想い
 親無し子で歪んだ男を哀れむのではなく、あるがままを視る。
 此処にいるのは千であることを受け止める。

 押し潰さず、添えるだけでもない力加減で抱き締める。
 誘われるまま犯しそうになった過ちと近い距離
 今は本能はざわめかず、ただただ胸に満ちるものがあるばかり。

 他者には捨てたようにしか見えない行為をしながら、
 何故あんなにも憂い足を留めてしまったのか、今なら分かる。 ]
(96) ガラシア 2021/06/24(Thu) 2:01:07

【秘】 鬼 紅鉄坊 → 鬼の子 千

[ それはきっと、愛しさという名前の。 ]
(-62) ガラシア 2021/06/24(Thu) 2:01:34

【人】 鬼 紅鉄坊



お前が本当に望んでいるのは、喰われることでは無いな

[ 当人に自覚があるのかは怪しいが、
 思えば最初から、言葉の節々に表れていた。

 人の一生はとても短い。
 何も求められず望まれず、ただただ物のように闇に置かれる十年は
 役目を担う鬼の百数十年より、長く感じるものなのかもしれない。 ]

なら、与えることが出来るのかもしれない
帰ってきてくれ、私の花嫁よ

……あの娘やお前の為ではなく、私が望んでそう願いたい

[ 理解していない様子でも教えることはない。
 身を離し、しっかりと目を見つめながら代わりに口にするのは、

 自分の気持ちで自分の言葉で紡ぐ、千を求める想い。 ]
(97) ガラシア 2021/06/24(Thu) 2:01:55

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 散らばる荷を集め、拒まれなければまた抱き上げて
 独りでは見つけられなかった帰り路を、共にしようか。

 要らなくなった物は何も無い。
 明日も廃寺には変わらない朝が来るだろう。 ]*
(98) ガラシア 2021/06/24(Thu) 2:02:11

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 二度と離さまいと手を引いて連れ帰った花嫁の細やかな願い>>102
 叶えない理由は、ありはしない。

 横たわる身体の傍ら、壁に背を預け胡座をかいた。
 眠れぬようなら話でも聞かせただろう。

 さととの思い出、
 自分がどのようにして千を知ったのか、
 何故置き去る程に喰らいたくないのか、
 あの時去ってから何を思っていたのか。

 聞きたくない話もあったのかもしれない。
 しかし、鬼には今の千なら受け止めてくれるような気がした。 ]
(124) ガラシア 2021/06/25(Fri) 3:31:39

【秘】 鬼 紅鉄坊 → 鬼の花嫁 千

確かに娶った理由はさとだ。彼女の子を助けてやりたかった
人間の事情に介入せず連れ出す方法は、これしか無かった

だが、それから私たちが過ごした時間は
確かにお前とのものだったのだ、……千
(-86) ガラシア 2021/06/25(Fri) 3:32:00

【人】 鬼 紅鉄坊



[ やがて黒い眼が閉ざされても、その場に在り続けた。

 いつかは死体と見紛う寝姿に心穏やかではなかったが、
 見つめる先に彼が怪我一つない身体で眠っていることが、
 行灯の光が色の無い髪に仮初の暖かさを宿す光景が
 不思議と気持ちを落ち着かせてくれる。

 その内訪れた目の奥が沈むような感覚に身を任せ、
 座したままの姿勢で、鬼は花嫁の部屋で夜を明かした。 ]
(125) ガラシア 2021/06/25(Fri) 3:32:14

【人】 鬼 紅鉄坊

── 後日 ──


小さく軽いものだからな
転んだ時、合間から落ちたのだろう
風に乗ればもう見つけようはあるまい 

気にするな。元はと言えば私が強引に事を為そうとしたのが悪い

……新しい村で過ごしても、思い出してくれたらなどと
欲を出したのも、うむ。私の責任だ

[ いつか挟んだ花のことを思い出したのはどちらだったか。
 荷は全て回収していた為、確認するまでには数日掛かった。

 その時点で望みの薄さは分かりきっていた。
 あの時千が襲われていた辺りに出向いては見たが、
 やはり見つかることは無く。
 今一度共に部屋の中を確認し、そう結論付けた。 ]
(126) ガラシア 2021/06/25(Fri) 3:32:48

【人】 鬼 紅鉄坊



もう簡単に花を摘み取りはしないだろう?
なら、あれも無意味だったわけでもないさ

それに、全て千が生きていてこそだ

[ 本当に、間に合って良かった。
 そう言い添えた鬼は、太い指で不器用に白色を撫でた。

 幼子を愛でる触れ方とは違う、掬うように慈しむように。 ]

……お前も変わったが、私も以前のままとは言えないな

[ ふ、と短く息を吐き。一時逸れた目線は
 山の深くへと続く方角へと向いていた。 ]
(127) ガラシア 2021/06/25(Fri) 3:33:05

【人】 鬼 紅鉄坊


[ 誰かの意味の為に摘み取られた花が
 この山の何処かで躙られ、潰えてゆく。

 それを理解しながら見ないふりをして、
 忘れぬよう刻むなどという、救いにもならない贖罪を重ねて

 手の中の一輪を、実を結ばない花だけを大切に抱える。

 鬼の両腕の届く範囲は、見目よりずっと狭かった。
 己を挟む二つの存在のどちらも捨てられず、
 選ぶことも出来ずにいた腕が唯一を見つけた。 ]**
(128) ガラシア 2021/06/25(Fri) 3:33:29
 




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