人狼物語 三日月国


114 【半突発R-18】Snow white Festival【飛び入り歓迎】

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視点:人


【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 
          ―――― 夕刻/自宅 ――――



 呪いを 使ったことは無い ≠ニいう言葉に
 虚偽も嘘もなにも含まれてはいない。
 ―――― 高位魔術師らしく知識を豊富に持ち、
 一介の術師では手を出そうとも思わないような
 呪いに関することさえ識っている。

    少女の、女に対する認識は
    凡そそんなもので良いだろうと思ったのだ。
    …… それが正解とは呼べずとも。


  だから本当は、この少女に言うべきは ――――

 
(3) 2021/12/14(Tue) 11:58:00

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 ―――――― 魔力を使わずに
    貴方に掛けられた呪いを …… 」


 >>2:358 女がいよいよ露骨に眉を寄せたのは、
 彼女が腕輪を外した途端、
 決して軽くはない呪術のにおいがしたからだ。

 パイ屋で出会った時、強い魔術の気配がしたのは
 恐らくあの腕輪が原因かとアタリを付けて。
 緊張感と得体の知れなさに
 女の瞳がいよいよ強張った ―― ところで。

 
(4) 2021/12/14(Tue) 11:58:22

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 人魚の彼が温かい飲み物を届けに来てくれたなら
 そっと、女は眦を緩めるのだ。
 ありがとう、と微笑んで礼を紡ぎ
 わざわざ用意してくれたのだろう蜂蜜を紅茶へ入れて
 適温まで冷まされた紅茶をこくん ―― と飲む。


  「 …… 美味しい 」


 呪術への防御反応のせいか、すっかり冷えていた指も
 ティーカップのおかげで幾らか温かい。
 二人が知り合いらしき会話を交わし合うのならば
 女は邪魔することなくそれを聴いていよう。
 
 
(5) 2021/12/14(Tue) 11:58:32

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 いや、冗談が分かり辛いのではないだろうか。>>2:364
 物の見事に信じ込んだ少女の気遣いに>>2:366
 女は長いローブの袖で口許を隠し、肩を震わせた。
 

  「 ふふ、…………っ」


 何なら笑い声も噛み殺せてはいないのだが。
 深呼吸をし、なんとか肩を落ち着かせた女は
 は … っと息を呑んでは、ぷるぷると頭を振った。

 依頼主の前では、どんな時も緊張感と
 魔術師らしい威厳が必要である――という持論の元。

 
(6) 2021/12/14(Tue) 11:58:37

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 … テレベルムと知り合いみたいだし
    出来る範囲で、貴方の依頼を受けてあげる。

    そもそもどうして、貴方みたいな子に
    そんな呪いが掛かってるの?
    ―――― 恨みを買ったにしても…… 」


 些かその呪術は古すぎるのではないか、と。
 …… 世間一般が想像する魔術師のように
 つん、とした顔で、女は問いかけてみるのだけれど
 緩んだ顔の後では、手遅れだったかもしれない。*

 
(7) 2021/12/14(Tue) 11:58:45

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


  「 垂れた耳なんて気持ちが悪い。 」
   そう言った同族に後ろ指を指された。
  
  「  こんな子供、扱い切れない。 」
   そう言って両親は私の手を離した。



    同じじゃない存在は恐ろしい。
    ――――  世界に私は必要無かった。


 
(8) 2021/12/14(Tue) 14:09:44

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


       

          ……………… 。



 
(9) 2021/12/14(Tue) 14:09:52

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 最初に魔術を修めた。
 すごいね、と褒めてもらいたくて
 ―― だれかに存在を認めてほしくて。


    けれどそれが叶わないと知った時、
    私は次に呪いを学んだ。
    自分を捨てた両親も同族も、人間も
    殺してやりたいくらい憎かったから。


  結局呪いも殺すことも出来ずに
  私は、人間を造る魔術を編んだ。


 
(10) 2021/12/14(Tue) 14:09:59

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

   人間になりたいのは、本当。
   ―――― でも私だって理解ってた。
   器を変えても、なにをしても
   …… 愛されなかった過去は変わらない。


   人間になりたかった。
   そんなことをしなくても肯定されたかった。


   人間に為りたくなかった。
   そうしてまで、もう 生きていたくなかった。

 
(11) 2021/12/14(Tue) 14:10:08

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 



   私が、私を肯定されたかったから。
   ――――― 否定されるのは、


      ………… 行き場を失ってしまうから ……


 
(12) 2021/12/14(Tue) 14:10:14

【人】 魔術師 ラヴァンドラ


           ―――― 夕刻/自宅 ――――



  「 …… 魔力を使わずに、自体は。
    出来ると言えば出来るんだけど … 」


 魔術師は基本的に、魔力がなければ何も出来ない。
 そして魔力の行使が身体に根付いているから、
 どんなに意識しても必ず微量な魔力は流れてしまう。

 けれども彼女の――己とは真逆の体質を思えば>>41
 極力使わないようにする、というのも毒だろう。
 微かにやわく笑う彼女を気遣おうとしたけれど、
 結局どれもが慰めにしかならないような気がして
 女は睫毛を伏せた。 ]

 
(69) 2021/12/15(Wed) 10:30:59

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 ――――――― ……  、 」


 気を紛らわせるために紅茶を飲もうとした手が、
 ぴた … と止まる。>>44
 いないことになっている貴族の長女、
 簡単に解かせようとしていないだろう呪い。

 ―――― 記憶と知識の海をどれだけ潜っても
 彼女の呪いの解呪方法は見当たらなかった。
 個人が作り、生み出した呪いなどというものは
 それほど難解で、だから誰も扱いたがらない。

 
(70) 2021/12/15(Wed) 10:31:03

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 …… 貴方の、その呪い自体は
    私でも解呪方法は分からない。
    呪いは、世界を恨んだ人が選ぶ最後の手段で
    だから死ぬまで掛かり続ける。 」


 人を呪わば穴二つ、という言葉があるけれど
 あれは二人分の墓穴を用意する覚悟を持てということだ。
 呪えば相手を殺せる代わりに、
 自分にも同じだけのことが必ず返って来る。

 ―――― 願いには対価を。
 呪いの場合、命に命を捧げるのと全く同じこと。

 
(71) 2021/12/15(Wed) 10:31:07

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 そう、だから ――――
 私がここで彼女に「呪いは解けない」と言い捨てても
 それは当然の話なのだ。

 魔術師は誰かを救うために魔術を修めていないし、
 正しい筋道で解けないものを放り投げようが
 きっと誰も私を責められない。
 …… ……  魔術師としては、正解、だ。


      ローブの裾をぎゅうと握り締める。
      殆ど見ず知らずに等しいこの少女を
      あの方法で助ける義理なんて、――

 
(72) 2021/12/15(Wed) 10:31:21

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 



 『 あんたが他者に与えられるほど魔力を持っていなければ
   俺は死んでいた生き物だ。 』>>2:-87



 ………… …… けれど、魔術師らしからぬ私を
 あんなに疎んでいた私自身を
 肯定してくれた、彼の言葉が頭を過った。

 
(73) 2021/12/15(Wed) 10:31:29

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 ―――― ふ、と息を吐く。


  「 でも、ひとつだけ …… 
    高位魔術師の私にしか解けない方法でなら
    貴方を、助けられるかもしれない 」


 指先が俄かに冷たくなって、
 女は立ち上がり、手近な箱の中へ入れておいた
 空っぽの魔石を取り出した。
 ―――― あまりにも魔力が増えてしまった時は
 ここへ魔力を注ぎ、体内の魔力を調整するのだ。

 魔力が毒である彼女を、この方法で救うには
 この魔石に全てを注いで ――
 
 
(74) 2021/12/15(Wed) 10:31:41

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


  「 その恨みと憎しみ、全部ひっくるめて
    ―――― 貴女の呪いを私が貰う。 」


 魔術には魔術を、
 ―― より強い魔術師だけが用いる諸刃の剣。
  全てを女の体内で消し去ってしまう =B

 選ぶか選ばないか、
 それとも体の限界まで解呪方法を探すことを望むのか。
 ………… 女は無言で彼女を見詰めた。*

 
(75) 2021/12/15(Wed) 10:32:59

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 
          ―――― 夕刻/自宅 ――――



 幼気な少女の落ち込んだ声音は、存外心を刺した。>>89
 気丈に振る舞うその様を見れば見る程、
 女はなにが正解なのか理解らなくなってしまう。

 現実を突き付けないのが正しかったのか?
 優しい偽りに触れさせれば良かったのか。
 ―― けれど女は、やさしい嘘なんて識らない。


        怖い夢を見たの、と泣く子どもにも
         道に迷ったの、と哭く子どもさえ
         涙を止める方法一つも知らない。



 
(101) 2021/12/15(Wed) 20:32:51

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 …… ………… 別に、何にもならないよ。
    魔術師だもの ―― 
    呪われることには、慣れてるし 」


 箱入りの少女はきっと知らぬことだろうが、
 魔術師というものは敵の多い生業なのだ。
 実際に彼女のような呪いを掛けられたことはないけれど
 そう言った方が、肩の荷も下りるものだろう。

 真実ではないけれど 虚偽でもない。
 躱すように言葉を紡ぎながら、女はちらと視線を彷徨わせ
 知り合いらしき会話を交えていた人魚を探した。
 穏やかでは無いこのやり取りは、
 出来れば彼には聞かせたくないものだから。

 
(102) 2021/12/15(Wed) 20:32:55

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 



   誰かを傷付けてでも生きようとした、
     遠い昔の私とまるで違う 瞳のいろ。>>91



 
(103) 2021/12/15(Wed) 20:32:58

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 …… 例えこの方法で私が傷付いても、
    それは貴方のせいじゃない。

    安心してよ、――――私、強いから 」


 魔力の一切を無くした状態で呪いを取り込めば、
 流石に女とて血くらいは吐くかもしれないが。
 心配性の人魚に幾度も返したのと同じ言葉で
 女は安心させるように微笑んだ。


  「 私の心配より、
    自分のことだけ考えた方が良いと思うな? 」


 そうして、彼女の両頬へ ――やわく手を添わせ。
 
(104) 2021/12/15(Wed) 20:33:10

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


 そう囁くように呟き落とした女は、
 綺麗に澄んだ少女の双眸を見つめて首を傾げた。*


 
(105) 2021/12/15(Wed) 20:34:41

【人】 魔術師 ラヴァンドラ



 魔術師は、少女の吐露を静かに聴いていた。
 言葉を挟めば消えてしまう気がして
 どんな慰めも傷付けるのではと恐れて。


    
偽 欺瞞 絶望 喪失
      後悔 切望 諦観 渇望



 綯い交ぜの感情は嵐に荒れる海さながらで
 少女が溺れてしまわぬか、些か不安だが。
 ―――― けれど女の心配を横目に
 雛鳥は、きちんとその言葉を、口にした。


 
(162) 2021/12/16(Thu) 13:44:20

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


   撒いた種から 花が咲くように
   月が沈んだ後 太陽が昇る様に
   夜が終われば 朝が来るように



       
が解ければ、
           ―――― 
になる



 
(163) 2021/12/16(Thu) 13:44:35

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 少女の唇が確かに紡いだ、その三音。>>155
 パイ屋で出会ったフェレスでも 依頼主のテテルでもない
 その名を拾い上げた女は、小さく呼んだ。

 それから――少女の反応を待つことなく、
 す … と顔を近づける。


  「 …… ごめんね? 」


 謝罪が受け入れられるかは兎も角として、――
 魔術師は、薄い薄桃の唇を
 少女にそうっと重ね合わせ。

 
(164) 2021/12/16(Thu) 13:44:43

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 



    魔術師は彼女の呪いを … ごくん、と
       体内へ収めるように飲み下した。



 
(165) 2021/12/16(Thu) 13:44:51

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 それは、――彼女の名前を呼んだ時点で
 ある程度まで解けていた呪いだったかもしれないし
 過ぎた時間の長さ故に強固で、
 容易には解けてくれないものだったかもしれない。


      どちらにせよ魔術師は、
      少女を不安がらせないよう、微笑んで。


  「 …… ね、ほら、
    大丈夫だったでしょ? 」


 そう言ってもみせるのだけれど、
 ―― あまり余裕ぶってもいられないものだから。

 
(166) 2021/12/16(Thu) 13:45:22

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 私の近くにいると、
    …… まだ、呪いの影響 出ちゃう、かも。

    だから、また明日にでも おいで。
    ―――― それで依頼はおしまいだから 」


 少女が頷いてくれるのならば、
 魔術師は冷えた指先をどうにか動かして
 奥に引っ込んだままの人魚へ声を掛けよう。


 
(167) 2021/12/16(Thu) 13:48:03

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 依頼が終わった旨と、
 少女の見送りを頼みたいことを伝えれば
 人魚は果たしてそれを受け入れてくれただろうか。


 魔術師は少女に影響が及ばないよう、
 一定の距離を保ちながら
 生きたいと願った少女のことを、見詰めるのだけれど。*


 
(168) 2021/12/16(Thu) 13:51:00

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 
           ―――― 夕刻/自宅 ――――



 彼が見送りの役割を請け負ってくれたのなら>>171
 魔術師は礼を告げて、柔く微笑もう。
 少女の姿と、人魚の背中も一旦は見えなくなれば
 椅子へ座り直し ――――息を吐く。


 やはり、呪いなんて碌なものではない。
 彼女が長年抱えていたものは、本質的には人の恨みだ。
 怨恨、苦痛、――復讐。
 呪いが当人にどんな効力を齎すにせよ、
 あの小さな体でよく耐えていたものだ。
 ―― いや、魔術師も身長は人のことを揶揄えないが。

 
(199) 2021/12/16(Thu) 22:23:12

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 呪いを体内で解呪するには、
 術者の魔力をぶつけ、調和する以外に道は無い。
 込められた負の感情と、呪った本人の記憶の幾らかを
 ――― その全てを文字通り受け入れ、消し去るのだ。


     はふりと息を零し、冷えた指先を握り締めた。
     愛した人に捨てられた魔女の恨みも
     愛した物を奪われた、魔女の嘆きも
     …… その辛さは痛い程に良く分かる。



 
(200) 2021/12/16(Thu) 22:23:17

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


   傷付けられたら、同じだけ傷付けてやりたい。
   自分の手を離した相手を赦せない。

   故に呪いという道を選んだ魔女のことを、
   魔術師は責め立てる権利を持たない。
   ――――  同じことを考えた過去故に。


 
(201) 2021/12/16(Thu) 22:23:21

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

       「 ねえ、ママ
         私のどこがいけなかった…? 」


       「 ねえ、パパ
         普通の子なら、愛してくれた? 」


  振り払われた手の痛みごと。
  ―――― 思い出しては、眉を顰める。

  復讐がしあわせに繋がると信じてしまうのも
  故に人を呪う気持ちも、 … 理解ってしまうから

  
(202) 2021/12/16(Thu) 22:23:25

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 



    「 こんな世界も、私も、皆も
      …… きらい…… 」



 
(203) 2021/12/16(Thu) 22:23:29

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 …… けれども。


    「 ―――― だからって、
      関係ない子を苦しめるのは、
      …… それは違うでしょ……! 」


 傷付いても、誰も助けてくれない苦しみは
 ―――― 誰だって識っているだろうに。

 魔術師は恨みを訴えてくる呪力を飲み下し、
 文字通り、魔力で呪いを押し込んだ。
 
 
(204) 2021/12/16(Thu) 22:23:53

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 そうしている間に、人魚が役目を終えて帰って来たなら
 おかえり――と迎えようとして。
 許可なく手を取られ、不服を訴える海色の右目を見るに
 女の行いは、説明するまでもなくバレているようで。


  「 …… えへ。
    ごめんね、……怒らないで……? 」


 なんて、可愛い兎の真似事をして許しを乞うけれど
 さしもの彼も、この甘えを受け入れてくれるかは――
 …… あまり自信がない。

 
(205) 2021/12/16(Thu) 22:23:59

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 …… 大丈夫だよ。
    テレベルムのおかげで、……平気だから…… 」


 ―――― あの、猫のような少女は。

 女が誰かを本当に呪ってしまった未来の体現みたいで。
 …… それがどうにも居心地悪くて、
 だからこそ、こんな手段を取ってしまったけれど。

 自分を抱き締める彼が気を病んでしまわないよう、
 そっと背中へ腕を回し返した。
 変わらず命を刻み続ける心音が聞こえるように
 何の隙間も生まれないよう、―― ぎゅう、と。*


 
(206) 2021/12/16(Thu) 22:24:44

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 
         ―――― その後の噺 ――――



 祝祭が終わっても、女は結局人間には成れなかった。
 垂れた兎の耳は変わらず毎日風に揺れて、
 尻尾は驚いた時にぽふんと膨む。
 溢れそうな魔力を消費し、道端の猫と睨み合って
 変わらず誰かの世話を焼いての繰り返し。

 呪いに苦しんでいた子猫の少女は、
 あの後どんな様子で魔術師を訪っただろうか。
 ―――― 無様でもいいから生きたいと叫んだあの願いが
 どうか何の柵も無く叶えばいいと、願って。

 
(282) 2021/12/17(Fri) 21:43:28

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 淫魔の友人がこの街を再び発つ前に、
 女は彼の元を訪って、パイ屋の特大パイを御馳走した。
 もしかすれば彼は驚いたかもしれないし、
 ―― 等価交換ではないと言われたかもしれないが。


  「 メレフ、あのね …… ありがと。
    私は御伽噺の女の子にも、人間にもなれないけど
    あの時助けてくれたの――嬉しかったよ。 」


 唯のラヴァンドラを、友人として慈しんでくれた
 ―― 彼の不器用にも思える優しさは
 けれど確かに、寂しがりの兎を助けてくれたから。

 
(283) 2021/12/17(Fri) 21:43:32

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 ―――― 少し時間を置いてから、魔術師は暫くの間
 人魚を伴って姿を消した。
 目的地は極少数の友人にだけ伝え、
 旅には向かない身の上で、それでも彼と歩くことを選び。

 街から出たことのない女は、あちこちへ興味を示し
 けれど逸れることを恐れて人魚の手は離さなかった。
 「誘拐されたら困る」と本気の顔で告げて、
 そしてその誘拐対象は女ではなく人魚であることも
 付き合いの長い彼には理解るだろう。

 
(284) 2021/12/17(Fri) 21:43:37

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 彼は妹を見つけられただろうか。
 無事に――使命など関係のない、家族の再会を果たせたなら
 その時ばかりは女も彼から手を離し
 家族のみの空間にしてあげようとしただろうけれど。

 …… 本当は。
 女の知らない、温かいだけの家族の形を見るのが怖くて
 妹に再会した彼が どんな道を選ぶのかが分からなくて
 見ないフリをしようとしただけ。


        識らなかった頃には帰れないから。
 
 
(285) 2021/12/17(Fri) 21:43:40

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 けれども結局女の危惧とは裏腹で、人魚は女と共に
 住み慣れたエオスの街へと帰って来てくれた。
 ―― それがどれだけ嬉しいことなのか、なんてこと
 彼はずっとずっと知らない儘で、良いのだけれど。


  「 リル! 」


 兎は月を見て跳ねる、――と東の国では歌われるが
 この街の兎は、訪った親友を見て跳ねる生き物だ。>>262
 ぱっと顔を輝かせ、自宅の扉を開き
 そこに立つ彼女をぎゅうと抱きしめよう。

 
(286) 2021/12/17(Fri) 21:43:44

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 私の大切なお友達。
 人間になりたいという願いも、私の存在も
 初めて肯定してくれたかわいい貴女。

 世界への復讐を希っていたと、もし私が識れたなら
 ―― 私もきっと彼女の全てを受け入れる。
 それが誰かを傷付ける結果になることでも、
 それで彼女の全てが掬われるのならば、と。


      復讐に心を堕としても、誰かを殺めても
      …… 貴女は、私の。

 
(287) 2021/12/17(Fri) 21:43:46

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 …… なんて、沢山の手土産を持参してくれた彼女へ
 いたずらっぽく囁いてみせれば。
 あの時のように可愛い反応を見せてくれるのか、
 或いは受け流されてしまったか。


  「 リル、こっちきて!
    一緒にご飯食べよっ 」


 どちらにせよ女は、彼女の腕を逃がさないように抱き締め
 家の中へと招き入れた。
 …… やや過剰に思えるスキンシップの理由は、
 いつの間にか彼女が傍へ置き始めたホムンクルスなのだが。
 そんな子供じみた嫉妬心は隠してしまって。

 
(288) 2021/12/17(Fri) 21:43:56

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 …… ねえ、その子の名前は?
    甘いもの用意してるんだけど、好きかなぁ。 」


 ―― 兎は出来る兎なので。
 そんな風に、可愛いばかりの友人へ尋ねてみては
 恐る恐る交流を計ることも、あっただろう。*


 
(289) 2021/12/17(Fri) 21:44:00

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 ――――― 途中からの記憶が無い。
 いつの間にか気を失っていた女が目を覚ます頃には、
 すっかり身体は清められて
 気に入りの部屋着を着せられていた。
 ( …… 丁寧に下着まで履かせられているのは
      顔をやや赤く染め、思わず俯いたが。 )


 そのままゆっくりとリビングへ足を運べば、
 四角形の匣を――実験中の魔術師めいた真面目な顔で
 見詰める人魚がいるものだから。

 
(316) 2021/12/17(Fri) 23:21:39

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

  「 ………… 、 …… おは、よ? 」


 頭でもぶつけたのかと真剣に心配したけれど
 どうやら魔道具のひとつらしい、と思い至って
 いややっぱり何を……と首を傾いだけれど。

 >>291 視線を流した先、
 テーブルに並べられた昼食へ気付けば
 きょと … と目を見開いた。
 
 
(317) 2021/12/17(Fri) 23:21:43

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 

 それから、すこしだけ照れたように言葉を紡ぐ人魚へ
 女にしては珍しく思考が追い付かないような様子を見せ、
 …… 温められた甘いオムレットと
 不格好に笑う彼を見比べては、へにゃりと眉を下げた。


  「 ―――― … ほんと?
    私と家族になってくれる……? 」


 目覚めれば愛しいひとがいる朝も、
 共にご飯を食べる毎日も、――独りで街を見下ろす夜も
 もう何もかもを諦めなくて、いいのだろうか。

 どこにもいかないで、と縋った私の指先で
 貴方をずっと抱き締めても、許される?

 
(318) 2021/12/17(Fri) 23:21:48

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 



     降り積もった雪と、肌を刺す冷気
     白銀に埋もれた種は未だ芽吹かず
     全てが静寂に呑まれた、この街で 



 
(319) 2021/12/17(Fri) 23:21:52

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


  「 ――――― ありがとう、テレベルム


    貴方に会えて、良かった。 」



 私は愛しいばかりの貴方の頬へ触れ、
 それから重ねるだけのキスを落とした。


 
(320) 2021/12/17(Fri) 23:22:08

【人】 魔術師 ラヴァンドラ

 


   いつか私たちの物語が終わる、その日まで。


   兎は愛しい家族の隣で
   今日も魔法を掛けている。


 
(321) 2021/12/17(Fri) 23:22:13
 




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生存者 (10)

サダル
72回 残 たくさん

 

メレフ
1回 残 たくさん

夕飯

ヘイズ
13回 残 たくさん

オフ

イクリール
67回 残 たくさん

お昼かな 次は

フェレス
45回 残 たくさん

ねむい

ポルクス
34回 残 たくさん

おやすや

ルイージ
13回 残 たくさん

おやすみ

テレベルム
25回 残 たくさん

オフ

ラヴァンドラ
51回 残 たくさん

ねむり

バラニ
23回 残 たくさん

うとうと。

犠牲者 (1)

トラヴィス(2d)
0回 残 たくさん

 

処刑者 (1)

ゲイザー(3d)
0回 残 たくさん

村建て狼

突然死者 (0)

舞台 (0)

発言種別

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舞台
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