［──“もちろんそれ以外の事だって…………”
　──“俺は何時だって時雨が欲しいし抱きたいよ。”


　ああ。そうだった。
　αは。Ωに抗えない。
　健人の服に移った、誰かの匂い。
　彼の身体に染みつく日も、


　………駄目だ、頭が痛い。
　腹の奥にじっとりと熱が籠もる。
　］

［健人に首輪の周りを噛まれるようになってから、
　俺は突発的にヒートを起こしやすくなっていた。
　周期も乱れがちになっている。

　それに最近、健人と居ると、フェロモンが
　漏れ出ているのを自覚する時があった。
　例えそれが、健人の自室以外の場所でも。
　図書館で勉強していると、時折αの視線を感じる。

　一人でぼうっとしている時に、実際にαに
　声をかけられることも増えた。
　前から話してみたくて、とか。そうゆう。］

［そろそろ潮時だと、一人で居る時にはいつも思うのに。
　こうして健人を目の前にすると。
　離れられなくなる。
　触れていたい。触れられたい。
　抱き上げられて、ベッドに横たえられた。
　俺に口づけて、覆い被さる健人。
　スーツ姿は、それでも格好良かった。］


　　………、ん。

　　健人も。…もぉ、苦しそう。


［耳元で囁きながら、滑らかな生地の上から、
　膨らんだ彼の性器を爪先で引っ掻いた。］

［健人の頭を抱き寄せて、耳朶を唇で擽りながら、
　喉奥でひっそりと笑う。］


　　俺も、もぅ。 … 中、濡れてる。


　　………早く挿れて？
　　出して。俺の中で。


［早く。健人の匂いに塗りつぶされて。
　何も考えられなくなりたい。］

［健人が性急に、スーツの前を寛げるのを見詰める。
　取り出された赤黒い性器は、すっかり雄の形をしていた。

　彼の手で膝まで引き下ろされた部屋着と下着を、
　片脚をつっと持ち上げ、指先で滑り落とす。
　反対の脚に下着を絡ませたまま、
　膝を立てて下肢の奥を晒し、健人を見上げて微笑んだ。
　息づく秘所から、とろりと溢れ出す体液。

　この頃、健人と居る時はいつも。
　軋む心とは裏腹に、身体は彼に抱かれたがって、
　その準備を止めようとしない**］

［時雨をベッドに横たえると。
彼が囁き声と共に、かりっと俺をひっかいた。>>?126
それだけでぴくりと反応してしまう身体。］


…………もう。


自分も苦しい癖に。
ちゃんと時雨の中に出させてよ……。




［彼の身体が苦しそうだって言うのもある。
それと同時に時雨が覚えて居ないだろう。
彼との約束>>2:?70>>2:?83を守りたかったのも一つ。
大きな理由としてそこにあった。］

［性急に前を寛げた俺に。
時雨は中途半端に俺が脱がせた服を。
自分の指で引き下ろして。片膝を立て。
柔らかな内側を俺に晒して見せる。>>?128

先程抱き寄せられて耳元で囁かれた言葉の通り。>>?127
そこはもうしとどに濡れて。
俺を受け入れるのを待って居るかのようだった。>>?128

妖艶な微笑み。>>?128　冷汗の浮かんだ顔。>> !1
その全てが混じり合って。何かに急かされるように。
奥まで一息に貫いた。
彼の唇を貪りながら。片脚を持ち上げて。
激しく抽挿を繰り返し。間を置かずして最奥で精を吐き出す。］

［精を全て吐き出してから。脚を降ろすと。
両腕で時雨を抱き締めて。口付けをゆったりとした物に変える。
ほぅと息を吐いて。繋がったまま。こつんと額を合わせた。］





待たせてごめんね？


［微笑んでそう告げた後。］

［脱力したように時雨をキツク抱き締めた。］


も〜〜〜〜〜…………。
具合悪いなら連絡してよ。心配するでしょ？？？


［肺から深く息を吐き出して。時雨を見詰めて。
ご不満顔で。頬を膨らませた。］

［それから優しく微笑むと。ゆったりと時雨に口付ける。］


もうちょっとしよ？


時雨今日すごく甘い香りがしてる。
ヒートが近いなら。泊ってきなよ。
そしたら俺もずっと一緒に居られるし…………

ね？


［そう言って微笑みかけると。
スーツの上着を脱いで、シャツのボタンを外してしまう。
するりとシャツを脱ぎ捨てれば。
時雨の部屋着の上も、腕を通して脱がせてしまった。］

［それから再度時雨を抱き締める。
肌と肌の触れ合う感触が心地好い…………］





［甘い声で囁いて。俺はこの世で一番欲しい人を。
腕の中に抱いて。抱きすくめて。彼を見詰めて微笑んだら。
ちゅっと唇に口付けて。そのまま、またゆっくりと。
勝手に育った雄を彼の中で動かし始めた。**］

［急いた顔した健人自身に、一息に貫かれる。>>?130
　そこに確かに、悦びがあった。
　好きな男に、全身で求められる歓喜。］



　　ひ、ぁぁあっ、！　ぅん、　んむ、ッ…、！！



［唇を熱い舌でまさぐられながら、
　激しく中を蹂躙される。
　片脚を身体に引き付けるように持ち上げられて、
　腰が逃げを打っても、奥まで簡単に届いてしまう。
　Ωを確実に孕ませるための質量と形を具えた、
　αの生殖器が。奥底に突き当たる。］

［息が苦しくて、顔を背けて押し塞ぐ唇から逃れた。
　腰がびくつくのを、止められない。
　健人の律動に、健気に応える身体。］



　　ひぁん、ゃぅっ、！　やぁッッ！！


　　だめ、っ……、はげし……！



［身体を開いたばかりでも、男と睦むのに慣れた胎が、
　ぐちゅ、ぐじゅといやらしい水音を部屋中に響かせる。
　まだ。精を吐き出されてもいないのに。
　自分の体液だけで、音高く。
　恥ずかしくていやいやをしながら、スーツの背に
　皺を刻んで、健人にしがみつく。］

［奥の、いつも酷く感じる場所に押しつけられていた
　熱が、強く弾けて。勢いよく内側を侵食していく、
　自分のものではない、男の体液。
　彼の内側で作られたものが、俺の中に吐き出される。
　ぼうっと頭が霞んで、胸の痛みが麻痺する。］



　　っぁ、はぁ……ん、　ぁぅうん…っ …



［そう。これが欲しかった。
　俺だけの麻薬。健人が抱くのは、今は。俺だけ。
　膝を健人の身体に擦り寄せると、きゅうっと中が窄まり
　張り詰めたままの雄と擦れ合うのが気持ちよくて。
　甘えた喉声を漏らし、きゅぅっと健人の背に縋る。］

［とっぷりと余韻に浸る俺の片脚を、
　健人がシーツへと降ろした>>?131
　それだけで小さく喉が鳴って、背中に爪立てて抗議する。
　抱き締められながら交わす、ゆったりとした口づけ。
　奪うより与えるキス。
　身体を奥で繋げたままで、
　健人が額を重ね合わせる。いつもの仕草。］



　　　… おかえんなさい。


［健人にそう言われたら。
　そう答えるしかなかった。］

［俺をきつく抱き締めた健人が、
　連絡しなかったことを詰る。
　俺の身体を、気遣いながら。］



　　……うん。ごめん。


［謝りながら、不満げに膨れた健人の頬に、
　ちょんとキスをする。
　ごめんね。これからはもう、
　そんなことで連絡したりしないよ。］

［俺の身体を気遣いながらも。
　健人はすぐに、次を求める。>>?133
　今日は匂いが強いと指摘されて、ひっそりと笑った。
　俺の匂いはさぞ甘く、健人に絡みついているんだろう。
　考えなくとも分かる、
　自分のαを引き留めたがるΩのフェロモン。
　場所を選ばず、見境なく溢れ出るようになった匂い。］


　　
　　ん……、そうしようかな。

　　そしたら、いっぱいできるね？



［明日は学校だけど。
　どうせ一人で部屋に帰っても、うまく眠れやしないし。
　他人の匂いをつけて帰ってきた健人と会った後は、
　いつもそうだった。］

［健人がスーツの上着とシャツを脱ぎ捨てる。
　いつもなら。服邪魔、脱いで欲しいと言えるのに。
　今日は言えなかった。
　すごく、嫌だったのに。
　両腕でばんざいをして、フーディーとカットソーを
　まとめて脱がせてもらう。
　二枚重なり合ったまま、ベッドの隙間に打ち捨てられる服。
　裸の胸に抱き締められて、微かに溜息が零れた。>>?134
　隙間なくくっついていられるこの身体が、恋しかった。］



　　…………、……健人。


［彼が俺を呼んだから。
　躊躇いを隠して、彼を呼んだ。
　甘い声と眼差し。優しいキス。
　いつまで、俺達はこうしているんだろうか。
　終わりを、考え始める頃だった。］

［ゆっくりと健人が動き始めて、
　腰がゆらゆらと蠢き、従順についていく。
　身体はすっかり健人に馴染み、
　彼の熱に鋳直されて。
　健人の形にぴたりと添うよう、
　造り変えられていく気すらする。


　俺は。いずれこの人じゃない誰かに抱かれて、
　この人じゃない誰かの子どもを産む。

　どこもかしこも手垢のついた、抱かれる悦びを
　覚え込まされたこの身体で。］

　　んぅ、 健、人………、


　　俺の中、気持ちいい？
　　なか。 … どうなってるか教えて？


［伸び上がり、覆いかぶさる胸に頬をこすりつけて。
　自分じゃわかんない。とはにかむ。］

　　次は、もっとゆっくりして？
　　俺が今、健人に抱かれてるんだって。
　　いっぱい。感じさせて。


　　


［どこか恥ずかしげに。
　甘えた声で、ひそりと耳に囁いた*］