「そう」

迷いなく帰って来る言葉に、じっとあなたの方を見つめる。
さて、空いている距離がどれほどあるかは……此方も知らないが。もしも追い付く時があれば、それを楽しみにしているのも本心だ。

「……ん。精々頑張りなよ、と言っておこうか」

どちらの意味でも、容易ではないよ。そんな挑発めいた色。

「…？」

じっと見つめられれば一瞬不思議そうにするが、直ぐにまたにこにこと笑う。
挑発なら勿論乗ろう。少し強気くらいがきっと丁度いい。

「あぁ、追い抜くくらいの気持ちで頑張るよ」

そう宣言した新人は、帰り次第訓練のペースを上げるつもり。
自分ではいけると思っていても、うっかり許容量を超えてしまったりするかもしれない。けれど、それも良い経験になるだろう。

「油断してたら、全部もらっていくから」


「……なんてね」

「焦って倒れない程度に」

内心を知ってか知らずか、その様に投げかけつつ。
茶を飲み終えたら、改めて出立の支度を整えるだろうか。

聞こえた声には、一つ。笑みだけで返してやろう。