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人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「はは。いつ以来だ? 最近じゃあお互い間が合わなかったもんな。
 俺も楽しみが一つ増えたな」

その約束もついぞ果たされなかっただろう。チケットを握る事すらなく。


貴方が自分に嘘偽りを騙る事が無い、という事は薄らと勘付いていた。
ここまで一緒に居ればそれはそうだ。
だから信頼して物を勧めたし、受け取ったし、
気持ちでだってそれは同じ事。信じていた。
だから、貴方が繰り返し言ったその言葉もその通りに受け取っていたのだろう。
期待や望みは突き放すけれど、愛は素直に受け取る男だった。

「…………はぁ。まあ」
「サヴィにならいいか……」

軽い溜息が一つ。それから、緩い笑みを浮かべた。
気が抜けている時の笑みだ。
探られているとも取らず、警戒の一つもないのだろう。

グラスの中のワインをくるりと回して、
「ほら、乾杯」と風情も雰囲気もなくグラスを差し出し傾けた。
それから一つ口を付け、そのまま話す。

「あいつを拾ったのは俺だからさ」
「あるだろ。なんか、その。責任って奴とかが」
「……拾ったからには大事にしたいんだよ。大人まで」

「それに、」 
視線が花の栞へと一瞬向いた。

「いや。姪に似てる……それだけだ」
(-113) susuya 2022/08/21(Sun) 1:47:50

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「……なんだよ。ズルい聞き方するな。当然だろ」
「お前もだろうが」

悪戯な問いには拗ねたような言葉を返す。
少し苦笑を浮かべて、わざとふいっと視線を逸らした。
それでも、『当然だ』とは言うのだ。
完全に気を許せる相手というのは少なく、
一緒に居て気が楽なのはやっぱり貴方だから。

カチン、と控えめで軽やかな音。
ワインの味を気に入ったであろう様子を見て、
当たりだったなと自分ももう一つ口を付ける。

「俺なんかに拾われちまってさ。もっと幸せになれたんじゃないか、アイツ」
「出来る事はやるよ。やってるつもりなんだけどな」

「……可愛いよ。そりゃそうだ。俺のあげた花にいちいち喜ぶ」

なんとなく困った様な、この話題がむず痒いような。
頭を掻いて、もごもごとした語り口はそのままに。
……昔から、貴方の前では会話の端々に
自分を卑下するようなことを言う時があった。
自分への評価が低いのも昔からだ。
平素はそんな素振りも見せないが。

「あ〜あ……巻き込まれないといいんだけどな」

ルチアも、あいつも、お前も。
ふとポツリと零した呟きは、今起こっている事に対してだろう。
その呟きに自分は含まれていない。
(-135) susuya 2022/08/21(Sun) 11:03:07

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「子ども扱い」

文句を一言。
けれどその仕草を拒む事も無く、
グラスを置いて広げられた腕に納まった。
少し預けた体重が体温を伝える。

「愛してる、ねえ」
「本当に、欲だらけだよ。何事も無く居て欲しいもんだが、
 そんな訳にも行かないだろ。こんな所に居るんじゃあさ」

「……そんくらいは出来るけどよ」

じと、と貴方の顔を見た。くしゃりと撫でられた髪を整える。
いつもこうやって、なんだか貴方には敵わない。
せめてもの抵抗に、肘で軽く小突いた。

「俺は、……お前みたいに優しくないから 誰でもなんて言えないけどさ」
「本当に嫌なんだよ、今。……はあ、やる気出ねえな」
「…………」

「俺は巻き込まれる気がするんだよな」「はは」

なんとなく、なんとなく。そんな気がする。
(-139) susuya 2022/08/21(Sun) 13:02:09

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「そんな事言って……っ、おい。悪戯が過ぎるぞ」

撫でられるまではまだ大人しくしていたが、耳朶に口付けられれば
背筋を伸ばして少し身を離した。
こんな男とっ捕まえて何がpiccolinoだ、と貴方の額を指で突く。
その上げた手のまま、わしゃわしゃと今度はこっちが貴方の頭を撫でて。

「誰が追い出すかって。……そうなる時は、アイツが自分から離れて行ってからだよ」
「でも、まあ、何も言えなくなる前に、言っておきたい事は」
「……言わなきゃかあ。面倒臭い」

掠め取っていくのが王子ならまだかわいいものだ。
今は、死神に奪われるかもしれないのだから。
そしてそれは今に限らず今までもで、これからも。
だからアベラルドは、この世界の事はやはり好きじゃなかった。
家族は好きだ。それを脅かすのが、本当に嫌なのだ。
脅かされた過去がある故に。

「……見えてたゴールが目の前から急に無くなっちまったみたいだ」
「結局、敵は他の誰かさんが獲ったって訳さ。じゃあさて、
 俺はこれから何をしましょうか、って思ってな」

「どうせ今までと変わらないんだろうが。はは」

元々気力の多い方ではない。快活な方でも無ければよく喋る方でもない。
けれど貴方の目には、やっぱりそういう風に見えるのだろうか。
実際、活力は前より無い。宙ぶらりんな気分が、
もともと投げやりだった性格をさらに助長させているようだった。
(-147) susuya 2022/08/21(Sun) 17:37:54

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

思い返せば、貴方に対して大きな拒絶をした事はあまり無いように思える。
指通りの良い髪を、なんとなく指で掬って、梳いて。
また、離して。
些細だろうが、過去との差異はやはり気に掛かるものだ。
それが貴方にとってどんなもので、どんな理由なのか、
アベラルドはまだ知らない。
それが、なんだか引っかかっていた。今もだ。


「言ってろ。……サヴィも見た目はあまり変わらなかったな。
 雰囲気は変わったけどさ。本当に……」

縁は知らぬ間に繋がり、固くなっていくものだなと思った。
運命だと言われたとき、まあ、確かにそうかもしれないな、とも思った。
こんな事もある。あるのだ。
自分を知る者が居て、酷く安心したことを覚えている。


アベラルドはと言うと、やはりそんなに変化があった方ではない。
高校を発ち、一人で暮らして、ここに来るまでの間の事は誰にも話していないけれど、それでもアベラルドは変わっていなかった。
重ねた年月の分は、そりゃあ人並みには変わっているけれど。
強いて変わったと言うのならアルバファミリーに入ってからだろうか。

疲れているのはきっとこっちの方だ。
手首にキスをされたって口だけで振り解きもしない。
貴方から受け取る愛は心地良い。
変わらず与えられるそれに、浸っていたかった。

(-266) susuya 2022/08/22(Mon) 16:41:15
アベラルドは、変化が嫌いだった。これでよかったのに
(c25) susuya 2022/08/22(Mon) 16:41:58

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「なんでだよ。それはまたなんか……違うだろ」
「分かったよ。言うから。言うから……」

掴まれていない方の手を、降参とでも言うように上げた。
撫でられるまま、やっぱりそれは振り解かれずに
貴方の気が済むまで続けられるのだろう。

「無理だよ。だって俺、墓の場所知らねえし。
 探るにしたって、ノッテの奴らに変に思われたくない。特に今は」
「……いいんだ。死んじまったもんは仕方がないだろ。
 俺がやろうと思ってたのに、本当に余計な事─────」

不意に。
撫ぜられていた手を強く握り返した。

「………………………………」

それなのに、何も言わない。
ふと視線を遠くにやって、何かを考え込むかのようだった。
手ばかりが強く握られている。…………引き留めるかのように。
(-267) susuya 2022/08/22(Mon) 16:55:13

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「そうかな……」

またいつもの返事だ。
その返事を聞く度に、少し貴方を案じるような気持ちになる。
……何を案じればいいかもわからないけれど。
そして結局、貴方がそう在るのであればいいか、と落ち着くのだ。
これも、いつもの思考。

なんで褒められるんだ、と言いたげな顔をした。
こうも撫で擦られていると犬にでもなったような気分になる。
今日はあまりやり返すことも無い。

(-309) susuya 2022/08/22(Mon) 21:32:17

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

手首に込める力は緩めない。
ただ、遠くにあった視線は貴方へと再び戻って。

「お前」
「なんでこの世界に来た?」

ようやっと口から出た言葉は、唐突ともとれる問だった。

「………勿体ないな。つくづく思うよ。
 俺の周りの奴らがこんな所に居なければ、こうやって神経擦り減らして命の無事を、毎日祈ることも無い」
「自分からこんな所に来ておいて言う事じゃあないけどさ」

「向こうのボスが死んでから、薄々気付き始めたんだ。
 俺って恨みがましいんだって。」

「思うんだ。何もかも、なんだか憎たらしいよ」


滔々と小さく溢れる言葉の最後は、ほとんど吐き捨てるようだった。
何もかも後手に回り、手を伸ばしても届かず、
掬おうとしては指の間から零れ落ち。
そんな気分をずっと味わっているような気がする。

今この状況が自分の精いっぱいだった。
それが今崩れそうなことが、何よりも嫌で。

『家族』が向けられる銃口や刃に脅かされずに、
普通に暮らしてくれればどんなにいいだろう?
(-310) susuya 2022/08/22(Mon) 21:33:09

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「本当にわからないのか?こんな所に来た理由が?」

貴方の瞳を見つめたまま。
その瞳は揺れていて。

貴方の腕を掴んだまま。
その手は少し震えていて。


「怖い事なんか今まで沢山あった。
『家族』が死ぬのも脅かされるのも誰かの勝手にされるのも
 俺は全部怖い。怖かった」
「だから殺して回ってた。俺たちの邪魔になる奴ら、
 消す必要のある人間、俺は必要なら全員、」

堰を切ったように早口で話し始める。
その声すら少し震えている。


殺しが一番楽だった。引き金を引けばすぐ終わる。
相手は必ず自分たちの敵で、容赦をする必要もないと言われた者たちばかり。
後腐れも無い。気に病む必要も感じなかった。
アベラルドが選んだ、一番『面倒臭くない』仕事だった。


「俺が藻掻いてもお前らが俺の知らない所で死ぬのが怖い」
「奪われんのがもう嫌だから、俺は奪う側に居るのに、」
「……なあ。俺、おかしいこと言ってるか?」

これだって結局は愛の一言に帰結するのに、
なんでこんなに貴方と違うのだろう。

(-364) susuya 2022/08/23(Tue) 1:03:44

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ


「お前が知らねぇ奴に奪われるんなら俺が先に奪ってもいい」


「…………」

「いや」


そこでやっと手を離した。
(-365) susuya 2022/08/23(Tue) 1:05:36
アベラルドは、……アベラルドだって、家族を愛していた。
(c26) susuya 2022/08/23(Tue) 1:08:41

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

放した手が自分の頬に触れて。
少し下がった顔が貴方に向いた時唇に伝わる感触で、口付けられたと分かった。
やっぱりそれは跳ねのけられずに受け入れられて、唇が離れていくまではそのままだ。

唇が離れた時の、「死なない」と言われた時の、
「いくらでもあげる」と言われた時の、その笑顔を見た時の、
自分の顔は。

一体どんなに情けない顔をしていたか。

「お前はそうやっていつも」
「俺の欲しいものをくれるよな」


小さい声。

「お前は? 奪われてもいいって言ってんのか?」

「嫌じゃないのかよ。お前、他にも大切な事とか、あるだろ」
「大切な人も、ものも」「あるだろ」

今までだってそうだ。与えられるだけそれに甘えてきた。
自分が貴方に与えられたものは、貴方がくれたもののどれだけを返せただろうか。
昔から、大事なものを大事にするのが苦手だ。

ただ揺らがずにそこに在って、愛を配る貴方の姿が酷く眩しい。

「……俺もサヴィみたいになれたら」
「こうはならずに済んだかな」

真似して笑ってみたって、やっぱりそれも、滑稽だろうか。
(-402) susuya 2022/08/23(Tue) 12:24:38

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

/*
こんにちは!私もその認識でいます!
この場は一度閉じて、後日迎えに行って殺しましょうという事にしようと思っています。
なのでこの場ではとりあえず何も起こしはしませんね!
(-409) susuya 2022/08/23(Tue) 13:38:23

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

自分には、それが本当にどこまでも、どこまでも甘く感じて。
本当に許された気になってしまう。いや、許しているのだろう。
自分は責めて欲しいのだろうか。受け入れて欲しいのだろうか。
それすら考えるのが怠惰になるほど、貴方に与えられるものが甘くて。
絡め取られている気分になる。

スノーホワイトの髪が貴方の手に分けられて揺れる。
なんだか少し恨めし気な視線が、その間から覗いた。
けれどその表情は、薄く笑んで。

変われない変わらないのは得意だからな」
「……お前の心が俺のものなら」
「付いて来て貰うよ。……地獄まで」

一つ、深く息を吸い込んで。

「明後日。迎えに行く」
「いいかな」

そう伝えた。
あの路地に、夜に来てくれないかと。
そう伝えて、また、手を握る。

「サヴィ。……悪いなぁ」「よかった」

貴方にしてもらったように、手首にキスをする。

「お前の命を貰えたら、俺は何にも寂しくないよ」
「俺と一緒に居てくれるんだ」「よかった……」
(-421) susuya 2022/08/23(Tue) 17:45:35

【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ

「ああ。……はは。行けないかもなぁ、二人で」

それは残念だな、と合わせたように暢気に言う。

「分からないだろ。何があるか、どうなるかも」
「な」

貴方の事は信じている。
絶対に貴方は裏切らないし、どこにも行かないと。
でもそれでも、放しがたくて。
これが貴方の真似なのはそうだ。そして貴方よりも拙いものだろう。
それでも伝えようとするとき、愛したいと思う時、自分は貴方の真似をした。
身近にある、一番明確な愛の形だったから。

「ん? …………、あ」

名前を呼ばれればまた貴方の瞳を見て。
再び重ねられた唇と差し込まれる舌に、薄く口を開けて答えた。
貴方の気が済むか、こちらの気が済むまで、きっとそれは続く。

……やっぱり、甘い。
(-457) susuya 2022/08/23(Tue) 20:41:28
 




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