【ソロール：配達ギルド『Ammut』にて】

*ザワザワ*

『Ammut』の倉庫は、いつもと様子が違っていました。






ブラキウムは、昼餉を食べた後荷物の整理をしていました。
しかし大人たちは、何人かで会議をしているようです。

「どうかしたのだ？　なんだかみんな心配そうだぞ。」

ブラキウムは、周囲に問いかけました。
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>>G57

そのときです。



ギルドマスター、メトセラが倉庫へ降りてきました。
臨時速達という言葉が響いた瞬間、倉庫内の雰囲気が一変します。

「メトセラ、そんなに大変なことが起こったのだ？」

ブラキウムは、慌ててメトセラに駆け寄りました。



こう言われれば、ブラキウムにも緊張が伝わりました。


配達ギルド『Ammut』の構成員が、最初に教わることです。
ブラキウムだって、勿論知っています。

……臨時速達とは、普通の速達と違います。
怪我や病気で大変なときや、赤ちゃんが産まれそうなとき。
災害が起こったときや、犯罪が起こったとき。
または、。

そんなときにだけ許される、特別な配達なのです。
急ぎの連絡ですから、普段なら許されない様々なことが許されます。
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>>G58





倉庫内は大慌てです。いつも臨時速達を担っている配達員が、みんな出払っていたのでした。



「ブラキが？　い、いいのか？」

ブラキウムは、動揺しました。他の大人たちもです。




大人たちはお互いを見ました。そしてブラキウムに視線を落とします。



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>>G59

ブラキウムの肩に、赤いマントがかけられました。
ブラキウムに、ダチョウの羽根が付いた赤い帽子が渡されました。

「え、えっと……。臨時速達だから、屋根の上をいっぱい走っていいんだな？」

ブラキウムは、不安げに問いかけます。
荷物の整理や集荷をしたことはあっても、こんな大役は初めてです。




ブラキウムに、手紙が数通渡されました。
騎士団や憲兵の詰所、そして裁判所など……それぞれ治安維持に関わる施設の住所が記されています。
メトセラは片膝を着き、ブラキウムと目線を合わせます。


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>>G60

「……！　」

ブラキウムは、元気よく駆け出しました。

*タタタ*

屋根から屋根へ飛び移り、誰かのお屋敷の庭を無断で通ります。
『Ammut』の印が入った赤い帽子とマントがあれば、憲兵にだって咎められることはありません。
道を無視して、一直線に目的地へ向かいます。
それはとあるギルドの、とあるギルドリーダーの、とある罪状を記した手紙でした。
しかしブラキウムはそれを知りません。
一刻も早くこの報せを届けることこそが、最も優先すべきことですから。

ブラキウムは、夕日に染まるレムノスの街を駆け抜けます。
……ちょうど街の人々が、夕餉を食べている頃合の話でした。