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人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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【秘】 風は吹く マウロ → ”再び灯された昼行灯” テンゴ

「よう」

仏頂面の青年が、いつもあなたが見ていた時よりも重ための足取りで近付いて。
ベッド傍の椅子に腰かける。
一度は来たことのある場所だ。勝手知ったりといったところ。

「あんたもリックもおれも、散々な有様だな」
「でも、生きてる」
「変な話だよな」

あなたが聞いていても居なくても、青年は話しかけていただろう。
(-109) 2022/08/28(Sun) 22:51:52

【秘】 ”再び灯された昼行灯” テンゴ → 風は吹く マウロ

「…全くだな。」

面に阻まれて見える事が無かった目が貴方を追い、そっと閉じられてはため息を吐く。

「あれだけのことがあって、これだけの傷を負ってなお生き延びたことは、奇跡であり、不思議な心地だよ。」

「変な話といえば、お前さんが俺の見舞いに来るのもまた変な話ではあるとは思うが。何か用でもあったか?」

なんて軽口を叩く。元気ではあるようだ。
(-110) 2022/08/28(Sun) 22:59:14

【置】 金毛の仔猫 ヴェルデ

>>-17 >>-18 >>-19

うたがきこえる。

おまえなんか生まなければよかった

――Ninna nanna,mio figliuolo!ねんね、ねんね、私の坊や


幸せそうにはにかむ美しいかんばせ。

私を見ないで、その目がいちばん嫌い

――Ninna nanna,occhi ridenti…ねんね、ねんね、かわいい瞳…


石畳の上を踊るステップ。

私を呼ばないで、その声も嫌い

――Canta,canta,rusignolo…歌え、歌え、ナイチンゲール


繋いだ手が揺れる。

おまえも同じ苦しみを知るべきよ

――…che il mio bimbo s'addormenti!私の坊やが眠れるように!
(L14) 2022/08/28(Sun) 23:08:22
公開: 2022/08/28(Sun) 23:10:00

【置】 金毛の仔猫 ヴェルデ

>>-17 >>-18 >>-19

あなたはいい育て親ではなかったのかもしれない。
  ――それでも、その細腕は確かに、ゴミ捨て場の命少年をすくい上げた。
あなたは母親ではなかったのだろう。
  ――それでも、その不器用な愛が、人間少年を育てた。

天使アンジェロ自らを生み落とした女母親を見殺しにした。
だれも、それがわるいことだと教えなかったから。
けれど翠眼の少年ヴェルデは、  ビアンカの手を握ったままでいたかった。
自ら考え、選び、そういう未来がほしかった。



おやすみ、■さんビアンカ
死んでしまってごめんなさい。


少年はあなたのことを愛していたし。
――――死にたくなんて、なかった。

ただそれだけの、ことだった。
(L15) 2022/08/28(Sun) 23:09:11
公開: 2022/08/28(Sun) 23:15:00

【秘】 風は吹く マウロ → ”再び灯された昼行灯” テンゴ

「別に」

それは同じファミリーのよしみ、でもあっただろうし。
死ぬ前に話をしたから、顔を見せたかったのかもしれない。

最後の会議では、どうも落ち着いて互いの顔も見られなかっただろうから。

「あんたの死にぞこなって落ち込んでる様子でも見ようと思ってたんだけどな」

元気そうだし、無駄足だったか?なんて笑って。

犠牲の多い戦いであったから、こうして生きているだけでもほっとする。
ただでさえ、上の者を多く失った。
指導者が減らなかったことは、不幸中の幸いだろうか。
(-111) 2022/08/28(Sun) 23:09:44

【置】 翠眼の少年 ヴェルデ

>>-17 >>-18 >>-19

確証はないけれど、託したものは何となく、届く気がしている。
裸の紙幣をそのまま渡したのは、残るものは少ない方がいいと思ったからだ。
ただでさえ、部屋に荷物を置いたまま。
そう多くないと言えど、処分するにはやはり、手間もかかるだろう。
思い出してしまうかもしれない。悔いてしまうかもしれない。旅行の約束は守れなかった。


それでもヴェルデは幸せだった。
意識を手放すそのときに思い出した、この歌が。
よく眠れるようにと祈ってくれたから。



願わくば、あなたもよく眠れますように。
(L16) 2022/08/28(Sun) 23:09:52
公開: 2022/08/28(Sun) 23:20:00

【人】 銀の弾丸 リカルド

【港の防波堤】

――慌ただしかった1日からいくらか経ったある日。
日参して治療を受けている地下病院から出て、一人、防波堤から海を眺めていた。
今日も忙しく仕事をして、治療後はテンゴに報告ごとを耳に入れたりしていたけれど、この時ばかりは紫煙を昇らせ、静かに波の音に耳を澄ませていた。

居なくなってしまった人たちの、いろんな声が聞こえる気がした。
ラウラの控えめな声や、上司が俺を呼ぶ声。

それから、この海に攫われてしまった少女のこと。
行き場を失っていたその少女を引き取って、育てる、つもりだった。
約束通り独り自由にしないと、約束して。

まるで、あの男に言ってやりたかったセリフみたいだな、なんて思ったりしながらも、差し出した手が届いたのが嬉しかったのに。

亡くなった者の後を追いたい気持ちがわからないわけではない。
自分とて、地獄の果まで上司のお供ができるなら、今すぐにでもあの人のもとに行きたい。
だけど、出来ない。
命など、大事な物のために捨てる事はいつだって出来るし、惜しいわけではない。

自分の大事なものは、たった一人だけではなかった、から。

幼い頃から苦楽を共にした幼馴染を置いては何処にもいけない。
マウロが死んだと思わされた時の、ツィオの顔。
手を伸ばしても決して触れられないと思った、あの時。

気づくのが遅くても、あんな顔をさせるなら駄目だと思った。
俺は、上司を、幼馴染を傷つける者を許さないが、
俺が傷つくことで、あいつらにあんな顔をさせてしまうなら、
俺は
それ
を絶対に許してはならない。
(42) 2022/08/28(Sun) 23:10:53

【人】 銀の弾丸 リカルド



「だから、俺はお前たちとは違うんだ」

「―――――絶対に」
(43) 2022/08/28(Sun) 23:11:31

【秘】 天使の子供 ソニー → グッドラック マキアート

そろそろと息を吐いて、もたれかかる体を急かして起こすようにあちこちにキスをする。
痕がつかないくらいの戯れだけど、後戯を欠かしたくないくらいの感慨はあるらしい。
やたらに派手にではないにしろとくとくと騒ぐ心臓が落ち着いた頃に相手も離れ、
そして叱りつけるような目線と交差したなら、逃れるみたいにぎゅっと目を瞑った。

「ごめんってば。仕事邪魔した分はなんか払う、なんか奢る。
 駅前んとこにあるパン屋でさあ新しいしょっぱい系のデニッシュ出たからそれで許して……」

相手も了承済みの戯れであるとはいえちょっとやりすぎたのは否めない。
ふにゃふにゃと言い訳じみたことを宣いながら、だらけたみたいに腕をだらりと垂らした。
相手が退いてくれれば最低限服を着て片付けはする、ただすぐにそうとは言わないだけ。
気の済むくらいまでもうちょっとくっついていたいことを、わざわざ口にはしないだけ。

「……ここシャワ〜ってどう通ってけるんだっけ……」

余韻もそこそこに口をついて出たのは、色気もなんにもありゃしない質問だった。
相手が全く考えもなしに、対象的に考えなしの話にノッてくれるわけはないので、
多分手頃なところに都合よく身支度を整えられる場所はあった、はず。
萎えた男根が自然と抜けて解放されたなら、ゴムも縛って撤収準備だ。
建物の外、街を囲む喧騒とは一切無縁の、お互いにとってはわりかしありふれたやりとりだ。
何を見るわけでもなくちらりと扉の向こうを見てから、額へのお返しにと肩口にキスをする。

「なんか。なんも変わんなきゃいいのにな」

本当はそう言う口の呑気さとは裏腹に、どこかに無力感を抱え続けていて。
けれどこの時間のうちだけは忘れられていた。貴重な時間だったのだと思う。
足首にボトムと下着の引っかかった間の抜けた格好をして、椅子にだらりと体を預けて。
そんないつかの、まだ何も起こっていなかったうちの日々の話だ。
(-112) 2022/08/28(Sun) 23:21:49

【秘】 ”再び灯された昼行灯” テンゴ → 風は吹く マウロ

「ふん、ほざけよ。」

そんな言い草にそう吐き捨てる。

「部下の前で泣きっ面を見せて溜まるものかよ。晒すのはこの無様だけで十分だ。そういうお前さんこそ、多少はマシな顔になったじゃないか、ええ。」

片目だけで貴方を見ては、笑みを浮かべた。
何かを思いついたような顔だ。

「整理がついたとは言い難いが、区切りはつけてきた、といったところか。」
(-113) 2022/08/28(Sun) 23:26:47

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー

掃除屋というものは、依頼者を取り巻く諸般の事情に対して
如何なる理由があったとて、何を言うのも褒められた事ではない。
常ならば当たり障りのない相槌を返して、それで終わる事。
けれど今そうしなかったのは、どうしてだっただろう。

何を仕出かすかわからない、という後ろ向きな信用は続いている。
随分な言い方をしている自覚も。そうなる事も予想はしていた。
さりとて予想していて何になるでもなく。一度、鈍い音の後。
口の中で呟くように、遅れて広がる鈍痛に小さくぼやきを零した。

「……気は済みました?
 他人に知ったような顔をされたくなかったのなら、
 あんたはそれをもっと大事にしまい込んでおくべきだったよ」

「それともあんた、俺に何か期待してたんですか?」

その後にもう一度耳障りな言葉を吐いて、今はそれだけ。
何も死者の眠るすぐ傍で口論をしようってわけじゃない。
それは直接的な暴力も同じ事で、報復に手を出す事もなかった。

わかっている。それがもはや内に抱え切れず分水嶺を越え、
心の内から零れ落ちてしまった苦悩の表出でしかない事を。
摩耗しきった精神や思考に正論は何ら正の影響を及ぼさない。
そこに何を求めていたかなんて、あなたにさえ不明瞭な事だろう。

求めるものも、今よりもう少しましな道も、きっとわかりやしないこと。
それをわかっていて、態とその事を考えさせるような事を言う。
もはや正しさでは救われも納得もできやしないのだとしたら。
そんな思考の袋小路に行き着いた時、あなたは何を選ぶのだろう。
やがては自分と同じような考えに至るのだろうか。或いは、それとも。
(-114) 2022/08/28(Sun) 23:58:47

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


今は取り留めの無い思考に考えを巡らせる猶予も無く。
それから程なくして、配達車は目的地へと辿り着いてしまう。

助手席から降りて、男が腕の中に抱え上げたものを見遣る。
既に幾らかその中身を失ってしまった、華奢な女の上半身。
仮に今ここにあるのが全身であれば、話は違っただろうけれど。
けれど半分だけのそれは、解体するまでもないと判断した。

先に倉庫内に停められていた方の商用バン。
特別用向きもなしに連れて歩くには持て余す道具の最たるもの。
火葬車のバックドアを開け、炉内から火葬台を引き出し、
先に炉に火を入れて、男の抱えた遺体を火葬台に寝かせた。

そうして遺体を横たえた台は炉内へと収められ、
それきり火葬炉の扉は重く閉ざされて。
それが彼女の姿を見た最後の光景になる。

火葬に掛かる時間は焼かれるものの体格や体重に左右される。
女性の、それも上半身だけであれば、そう長い時間は掛からない。
たとえ既にその遺体が朽ち始めていたとしても、
火葬炉というのは、焼かれる臭いは殆どしないようにできている。

やがて、きっとまだ夜が深まり切らない内に扉は再び開かれる。
炉と焼け残った灰から幾らか熱が去った頃。
(-115) 2022/08/28(Sun) 23:59:26

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


灰と、幾らか残った骨は台の上から容れ物に移される。
骨壷なんて上等なものは無いから、何とも無骨な保存缶の中。
ただ淡々と納められて、あなたの方へ差し出された。

「どうぞ。連れて帰るくらいはするでしょう」

受け取らないなら、掃除屋の方で"処分"されるだけ。
少なくとも、それはあなたの望む事ではないだろう。
未だ目に見えて、あなたの手の内に戻るものだから。

「それで。先に用があった方は済んだわけですが。
 あんたはどうしたいんでしたっけ?」

受け取るにしても、受け取らないにしても。
仕事は済んだとばかりにもう一つの用は切り出される。

あなたは最初に、自分より先に用事がある、と
そう言って彼女の事をこの掃除屋に任せたものだった。
であれば結局、それだけが用向きの全てではないのだろうと。
(-116) 2022/08/29(Mon) 0:00:08

【秘】 風は吹く マウロ → ”再び灯された昼行灯” テンゴ

「まあな」

自分一人ではどうにもならなかっただろう。
同じファミリーの、同じ志を持った仲間がいたから。
喪ったものがあっても、前を向けている。

親代わりボスの事も、部下ラウラの事も。
大事だったものを忘れないで、でも重荷にはしないで。

「アルバとノッテが統合することになるんだってよ」
「在り方も変わっていくのかもな、色々と」
(-117) 2022/08/29(Mon) 0:38:35

【秘】 ”再び灯された昼行灯” テンゴ → 風は吹く マウロ

「ほう。よく上の連中が首を縦に振ったものだな。いや、互いに此処まで疲弊すれば致し方ないか。」

些かの驚きを含みながらも納得した様子で貴方の報告を聞く。
どうあれ考えられた結末だっただけに、現実味が薄い。

「変わらない訳がないだろう。アルバのやり方とノッテのやり方、双方の折り合いをつけねばならないのだから。俺はこの様だからな、暫くは動けそうもない。」

「故に、お前さんたちに先は任せたい。
お前さん自身に任せたい事もあるが。
(-118) 2022/08/29(Mon) 0:51:55

【秘】 天使の子供 ソニー → 風は吹く マウロ

狭い路地の、他人の視線が通わないうち。
遠くに聴こえる花火の音が大気を震わすたびに息を詰まらせる。
担いだ足を揺すって体を合わせるたびに上がった息が混じり合う。
身動きの取れないなりに押し付け合うように擦り合わせて、抱き合った体がぶつかり合う。
時々かつかつと当たる鼻っ柱に浮いた血の気であったり、腹筋を掠る熱の感触だったり。
混ざり合う熱を確かめるたびに荒く息を吐く。夏の夜気に、浮かされたみたいだった。

息を詰まらせ、吐き出して。互いに上り詰めて、その後だ。
余韻の残る内に胴をぴったりと寄せて、名残惜しむみたいに服越しの肌を重ね合う。
視界を奪うためであるなんてのは、今までの様子からしたら想像し辛いかもしれない。
身じろぎして、視界の外で腕を動かす姿もここまでのことがあったら、他にも想像の選択肢があった。
あちこち動く手は貴方の着衣を正す様子もあったし、納得させるに足る理由があってしまった。
少しまだ鼻の天井の方から甘ったれた声で鳴きながら、ぽつぽつと口を開く。

「……オレはさ、昔友達がいたんだ。四年くらい前かな。
 この街で殺された。本当は、行方がわからなくなったって聞いてたけど。
 そんなわけないだろうって調べてる内にさ、誰だかにやられたってわかって。
 しんどかったな。何も知らずに過ごした時間があるのが余計にしんどかった。
 アイツが苦しんだことを無視して生きていたような気がしてさ」

ほんの僅か、眉をひそめて囁くような声で語るのは己のことだ。
この路地を訪れた時にほんの少しだけ話したことの続きなのだろう。
同情に足る話ではあるんだろうが、けれどもどうして今口にしないといけないのだろう。
片足は担いで、壁を背中に押し付けたまま。貴方よりも背の低い男は言う。

(-119) 2022/08/29(Mon) 1:11:51

【秘】 天使の子供 ソニー → 風は吹く マウロ

「数日前、アイツの仇が死んだ」

ありふれた自動拳銃が胸に突きつけられる。貴方の組織が取り扱っているものだ。
一番値段と性能のバランスがよく、下っ端にも持たせるような手頃なタイプ。
言い切る前に銃口が宛てがわれ、言い終わる頃にトリガーが引かれた。
サイレンサーを通した音はやけに滑稽に聴こえた。

「身勝手な話だと思わないか? あの男はジャンニを消したことを清算していないのに。
 アウグストが居なくなったなら誰がそのツケを払ってくれるんだ?」

担いだ膝を相手に押し付けるようにして距離を離す。半ばパワーボムみたいに相手を突き飛ばした。
代わりに反動で路地の向こう側へと後ずさって、相手の様子を確認する。
これだけ見たらそう、一見通りすがりに単純に襲われたように見えるだろう?
酒の匂いも火照った体も、急速に現実感の内へと引き戻される。
少しの時間、手応えを確認したなら手にした銃は元持っていたようにしまい込まれる。

「……ああ。案外気分は晴れないもんだな。……やっぱ本人じゃないとダメだ」

独り言のように呟いた男は、身支度を整えながら路地を出ていく。
今までの親しげな様子が全部別人によるものだったみたいに、淡々とだ。
通りでファイヤーワークスの打ち上がる音が聴こえる。
砂利を踏む足は音も無く、白けた夜闇に消えていく。
(-120) 2022/08/29(Mon) 1:13:42

【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ

貴方は、男が何を失ったと感じていて何が残されていると感じているかなんて、
別段わかりゃしないんだろう。当たり前だ。表層上の情報以外知り及ぶ手段はない。
誰と、どんな関わり合いをしていたかなんてのを探るなんてのは警察の役目だ。
けれどそう、幹部候補であった男やその幼馴染らの事情までは探り当てることは出来なくても、
この数日間のうちに貴方の顔見知りはどれだけ失われたか。
その中にはやけに慣れたような手口で殺された人間がいくらか居たかもしれなかっただろう?

はだかの体は、着せられた男物のジャケットごと火葬車の中へと消えていく。
これ以上誰にも辱められることのないように、世界の目を覆うように彼女の体が消えていく。
もしも、引き渡すに値する誰かが生きていたならば彼に渡すことも出来たろうに。
順番を違えたから、もしくは共に逝くことの出来なかったから、こうするしかなかった。
男は中も見えやしない車をじっと、無防備に思えるくらい只々に見つめていた。
何もかもが灰になってしまうまでは、傍に在ろうとするみたいだった。

やがて、夜にさえなってくれない内にあらわれた残響が容れ物へと移されるのを見たならば。
男は首を横に振った。とはいえ、これから起こることを考えたのなら結局は己で持ち去るのだろうけど。
今は、受け取らない。今は、手を塞いだりはしない。

「……今は、いい。そう、用事が、あるから」

歯切れが悪い。今までだったらもう少し滑らかに言葉を交わし、弄していくらでも誤魔化せたろうに。
火葬車から一歩離れ、倉庫を見渡す。誰もいないのを確認したのか、或いは言葉を探していたのか。
一歩。適切な間合いを取るように横にずれた足は、やはり少しの足音も立てやしなかった。

「ずっと追っていた男が、死んだ。
 仲間も、友達も。おそらくきっと、父さんと母さんも。
 ……ほかの何にも渡したくないくらい、好きだった人も、多分。
 人は前向きに生きろって言うんだろうな。生きていく先に何かを見つけて、ってさ」

(-121) 2022/08/29(Mon) 1:58:06

【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ

やっと語った言葉は結局、己の話だった。けれども説明と言うには端的に過ぎて。
指折り数えて階段を昇るような調子だ。身の回りから、多くが居なくなる。それをカウントする。
薄っすらと思い出されるのは、昨日言葉を交わした人間のこと。けれど、されど。

「どうする? アンタなら。
 オレは、こうすることにした。
 けれどもどんどん取り落としていくだけだった。
 どうする? 何一つ変わるわけじゃなかったなら」

質問は、少なくとも形だけの投げかけではなかった、どうしたらいい、とジェイドの目が訴えていた。
されど答えを貴方から得るよりも前に、男はベルトに手を掛けた。
ジャケットを脱いだ下に纏った服装と装備は、割りかしわかりやすいものだった。
貴方の仕事着が重たいのとおんなじ理由が、そこにはあった。
答えを知りたいのに、なぜ待たないのか。理由は簡単なものだ。もう止まり方さえわからないからだ。

「いつかは気が晴れると思っていた。もうそいつは居ないってのは頭じゃわかってるしさ。
 やりきれない思いが解消されるまでのつもりだった。けど、いつまでも消えないんだよ」

銃口が向けられる。掌に収まるくらいの素朴なデリンジャー。
真正面に向けられたなら避けるのは容易くも思えるし、狙いを定めた威圧感もありはするだろう。
此処で男が貴方を殺さなければならない理由なんてのは無い。無いんだ。けれど。
理由と理屈があれば止められるのだったら、きっともっと早くに誰かの言葉を聞けていた。

(-122) 2022/08/29(Mon) 1:58:39

【秘】 天使の子供 ソニー → 鳥葬 コルヴォ

「怖いんだ、誰かが死なないと止められないんだ。
 もうそれが誰で、何であったなら満足するかも自分じゃわからないのに。
 誰も教えてくれないんだ。
 助けてよ、
パスカル――


目の前の男は掃除屋の烏Corvo Rossoだとわかっているのに、男は教えられた仮の名前を呼んだ。
最初に出会った男の名を、互いを知らないうちに巡り合った人間の名を。
多少の探り合いはあったとしたって、未だ気軽に仲良くなるつもりだった時の貴方を。
助けを求める相手は、仕事人としての人間ではなかったから。
意思を聞きたいのは、答えを求める相手は敵としての貴方ではない、つもりだったから。

誰でもいいのに、誰かでなければいけない。
そんな矛盾を口にしたところで誰も真面には受け取らない。
己の中では確かなのに、己の中でさえ確からしいものはない。

貴方が答えを口にするにしろ、しないにしろ。動くにしろそうしないにしろ。
男は違えなく、迷いなく。烏に向かって、引き金を引いた。
(-123) 2022/08/29(Mon) 1:59:03

【置】 プレイスユアベット ヴィオレッタ

【アルバアジト】

 ――

まだ静けさに包まれた暁闇あかつきやみの中

扉を開く音が響く


こつ……こつ…………こつ


ゆっくりとした足取りが、部屋をめぐる


……罰せられ、ませんでした
引き金を引いた、と思っていたのですが見当違いのようです
黒幕の情報もとうにノッテあちら……
今はもう我々うち、でしょうか……が掴んでいて

……ふふっ、ただの道化、ですね 私は


溜息がひとつ、薄闇に零れた
(L17) 2022/08/29(Mon) 4:13:36
公開: 2022/08/29(Mon) 4:45:00

【置】 プレイスユアベット ヴィオレッタ


こつ……こつ……


足音が止まる


薄闇の中、壁に掛けられた額縁に触れる
これは確か家族を題材にした絵、だっただろうか


”家族”を愛し、家族に愛されたひと

私も彼が嫌いでは……いえ、いいえ 好き、でした
最初はそれに面食らって、曖昧な笑顔しか返せなかった私にすら
愛を向けて、与え続けてくれたひと



「……トト―」

虚空に声が 溶けた

――彼の椅子を 見る
(L18) 2022/08/29(Mon) 4:16:37
公開: 2022/08/29(Mon) 4:50:00

【置】 プレイスユアベット ヴィオレッタ

こつ……こつ……


足音が止まる


薄闇の中、花瓶の花が目に入る
色とりどりの花は夜の帳の中でも華やかに


遺された華達を守ろうと誰よりも苦悩したひと

事態に真剣に立ち向かい
絶望の中でも冷静であり続けようと、苦しんでいました
これからは少しでも助けになれるでしょうか



「……ソニーさん」

虚空に声が 溶けた

――彼の椅子を 見る
(L19) 2022/08/29(Mon) 4:18:17
公開: 2022/08/29(Mon) 4:55:00

【置】 プレイスユアベット ヴィオレッタ


こつ……こつ……


足音が止まる


薄闇の中、感じたのは甘い香り
それはほのかに残ったショコラータの甘くて苦い

互いのためと尽くしあった親子


隠すことのない愛情を拾い子に向けたひと
その愛を受け止めて、それ故に尽くそうとしたあの子
誰がなんと言おうと素敵な親子でした



「……アベラルドさん、ルチアさん」

虚空に声が 溶けた

――彼の椅子とその後ろを 見る
(L20) 2022/08/29(Mon) 4:21:27
公開: 2022/08/29(Mon) 5:00:00

【置】 プレイスユアベット ヴィオレッタ


こつ……こつ……


足音が止まる


薄闇の中、聞こえたのは鳥のさえずり
まだ暗い空に自由な歌声が響く

不器用な、でも想いあっていたふたり


誰よりも案じているのに表向きは隠し続けたひと
きっとそれに気が付いて、それ故に去れなかった子
あなたたちに自由をあげられたら、よかったのに



「……ビアンカ、ヴェルデさん」

虚空に声が 溶けた

――未だ暗い空を 見る
(L21) 2022/08/29(Mon) 4:23:02
公開: 2022/08/29(Mon) 5:05:00

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 愚者 フィオレロ

紡がれる言葉をあまさず受け取って聞いている。じい、と目線を外さず、表情はあくまで明るく。きっとそれは人の話を聞くにあたって、この上なく正しい態度。
饒舌の語りはすれ、相手の言葉をかき消すことはしない男だった。会話はキャッチボール。それをよく知って、体現する男だった。

「なるほど」

君の言葉を消化するように頷く。少しの間を置いて、また口を開く。

「教科書じゃないからね。僕だって全ての答えを持ってるわけじゃない。……僕には、そういう願望はないし」
「でも、そうだな。もし僕のせいで、相手が不自由になるようなことがあったら」

その時の言葉は、珍しく。
君に語ると言うよりは、自分自身で何かを確かめているように噛み締められながら。

「不自由だと思わないくらい、全部をあげるんじゃないかな」

先程までの練り上げられた答ではなく、大雑把で曖昧な、答えとも言いづらいような答え。
きっとこれ以上に掘り下げられることもないのだろう。だからこそただの一意見として、男は無責任にそんなことを口に出す。
それから君の話をやっぱり機嫌よく聞いて、時にはその容赦のない形容に笑いを漏らしたのだろう。

「正確ね」
「それだけ彼女に詳しいなら、君の方が余程正確に選べそうだけど。……そうだな」

それでも、この光栄な役割を投げ出すような男ではない。
店先に並ぶ花々をじっと見る。それから君の顔をじっと見る。もう一度花々の方を向いて、紅色の一輪を手に取った。

「これなんか、どうだろう」
「ケイトウだよ。僕は好きだし​、華やかで情熱的だ」
「なにより、アッシュブロンドによく映える」
(-124) 2022/08/29(Mon) 4:23:49

【置】 プレイスユアベット ヴィオレッタ


こつ……こつ……


足音が止まる


薄闇の中、伝う雫の塩辛さが舌を痺れさせる
あの夜にすべて零したと思っていたのに、今も……まだ

誰にでも優しくて、誰よりも眩いひと


遺された手帳には色々なことが書いてありました
努力の跡、誰にも見せなかった悩み……私のことも
私はどれほどのものをあなたに返せたでしょうか



「……先輩。…………せんっ……ぱい」

虚空に声が 涙と溶けた

――彼の椅子を 見る
(L22) 2022/08/29(Mon) 4:24:53
公開: 2022/08/29(Mon) 5:10:00

【置】 プレイスユアベット ヴィオレッタ

こつ……こつ……

扉の前で足音が止まる



窓の外 空が白み始めた

間もなく夜は、暗く長い夜は、明けるだろう

悪夢は終わって、新たな始まりが訪れる



けれど、夜に溶けた者たちが戻ることはない



「Arrivederci.
 皆さま、どうぞ良い夜をお過ごしください」

虚空に声が残る

――部屋を 見回す


そして、扉の閉まる音

もう誰もいない
(L23) 2022/08/29(Mon) 4:27:20
公開: 2022/08/29(Mon) 5:20:00

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 翠眼の少年 ヴェルデ

一つを選びかねるなら、「二つにするかい」。
それでもまだ悩むなら、「三つでもいいよ」。
……なんて、段階を踏みやしないのだ、この男は。
伝える言葉はいつだって、こう。

「どれがいい? ヴェルデ。好きなのを選ぶといい」
「それで足りるの? ほら、これだっておいしそうじゃないか」

うんうんと悩む君の後ろから、男は毎度そんな声をかけた。
それから君が選び終えれば自分の分はさっさと決めてしまって、君の手を制止して二人分の代金を払うのだろう。きっと今だって。

いつだって男は、君に何か与えようとしていて。
いつだって男は、君が何か選ぶのを待っていて。

君が選んだものを否定することは、絶対になかった。
(-125) 2022/08/29(Mon) 4:33:20

【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー


相手の全てなど、語られざる事など、他者に判るはずもなく。
失ったものを数えても、それが掌の中に戻る事は無い。
そしておそらく、今はもう、それらを知った所で手遅れだった。
つまるところ、全てはきっと、何ら意味の無い事で。

けれどこうして何かを選ぶことに、
僅かばかりであったとしても、意味らしきものがあったなら。
そんな届かぬ祈りじみた考えがあったのかも、最早定かではなく。

今はただ、何も言わず、あなたに干渉もしない事だけが確かな事。
軈て亡骸が形を失っても、やはり烏にはあなたに問う罪なんて一つも無かった。
結局の所は、何もかも全ては自己満足であって。
あなたを罪に問うた所で、烏は到底自分が納得できるとは思えなかった。



ああ、そう。
そうして首を振った後の返答に、ただそれだけを返して。
開いたままのバックドアの内側、火葬炉の手前。
その僅かなスペースに遺灰の納められた容れ物を一度置いて。

がつ、ごつ、重たい足音は対照的に。
あなたが訥々と言葉を語る間にも、何歩か火葬車から離れて行く。
掃除屋の仕事着が重たい理由は、数多の死を吸ったから。
そんなフィクションのような理由でなんか、あるわけもなく。
(-126) 2022/08/29(Mon) 4:46:02