[学祭直前。開け放たれたままの生徒会執務室は絶え間なく人が出入りしており、近付けば会話が漏れ聞こえてくる。]

『…不可っす。自己管理の私物の使用は認められてますけど、企画として当て嵌められた教室の中で収まるようにして下さい。』
『プラネタリウム用の布に穴？あ〜〜〜旧校舎側倉庫の古い方の暗幕ならまだ数あった筈なんでそっち見てみましょ。鍵渡しますねー。』
『いやだからデカいデカい！こんなん置ける訳ないっしょ。
ていうか予算当たり前にオーバーしてるッスよね。
…私物だから問題無い？あんま大人気ない金の使い方を許すと後の代が困るんすよ。気持ちは分かりますけどー！』

[日の近付いてきた今も予算や追加の備品の相談が続いているようだ。]

おいちょっと待てこれどっから持ってきた？？？

[実行委員との打ち合わせもひと段落したし、休憩がてら見慣れた顔を拝みに行こう。>>35
そう思い、2年い組のドアを開くと学校の教室に置かれるには重厚な貫禄を持つカジノテーブルが鎮座していた。

肩に手を置かれ、振り返る。]

[…いい笑顔でサムズアップする漢が、そこにいた。>>0]

何だその満足そうな顔〜〜シンプルに殴りてえ〜〜

あによ、ボドゲ部のOBの好意で寄付？
是非これを機にテーブルゲームの楽しさを広めたい？
カイチョーも二つ返事でサムズアップしてくれたって？

ほんともー。そーいうのオレにも話通せよな〜〜。

[つるりと丁寧に磨き込まれたテーブルを撫ぜる。
カードが吹き飛ばないようにだろう。ふちは机の天板部分より一段高くなっており、一面に緑の羅紗が張られている。
カウンター部分は凹の字になり、ディーラー役の生徒がそこに立てるようになっているようだ。

今回は使用しないルーレット部分には『勝手に回さないでネ！』と書かれた紙が貼り付けられていた。]

いやこれマジのやつじゃん。ぜってースゲー値段するって。

[思わず感心していれば、サカクラが滔々とテーブルの機能と今回の意気込みを語り出す。彼のトレードマークのドレッドヘアーも心なしか普段より元気に揺れている気がした。]

(そーいやカナくんもディーラー役投げられたー、って言ってたっけ。)
[語りの半分は耳に入れ相槌を打ちつつ、最近コソコソと部屋で何かの練習していた同室者の姿を思い出す。

最近は忙しさのあまり消灯時間ギリギリに慌てて戻ってばかりの生活であったが、それでも寝る前にカナモリが何がしたい、どこが面白そうと喋っていたことは記憶している。

むしろそういった楽しんでくれる話を聞かねばやってられない。
全寮制男子高校の生徒会とは妙に権力が集中しており、基本、激務なのだ。]

(……当日何があっても見にいこ。
もーカイチョーや副カイチョーがゲリラで何やろうが知ーらね！)

[内心でのボイコットの覚悟を決めつつ、サカクラのトークに一区切りをつけると、どこかから漂ってくる美味しそうな匂いに引き寄せられるように教室の外へ歩き出した。>>80] *