[指示を仰ぐ必要がないと判断できる程度には、
あの方との付き合いも長くなった。
こんな末端まで気にかけていただけるのは
ありがたく思っているが。だからこそ、
便利に使われている部分も否定できないので
正直、胸中は複雑だ。

しかし、対価を出し渋る方でもないし。
王国の為に、と仰るからには
事情がおありなのだろう。]


　旅支度をしてくれ。二人分だ。

　今回は君も連れて行こう。
　良い経験になるだろう、……おそらく。


[一つ息を吐いて、そう言った。]
　

　
[手紙は、考えていた用件とは違ったようで。
それに安心していたら、]


　えっ…二人分ですか。


[師匠の声に驚いて。
思わず、聞き返してしまった。

短い旅の支度なら、何度か手伝ったことがある。
けれど、いつも師匠一人分だった。
それに文句を言ったこともないし、
連れて行ってくれと頼んだこともない。
……ないのだけれど。





ちらりと、開けたままの窓を見た。
春の陽気は穏やかだ。]
　

　
[師匠は私の叔父様で。
当然、私の事情も知っていて。
それでも、慰めのために外に連れ出そうとか
そんなことは、今までなかったのだから。

連れて行くというのは、つまり、
弟子として同行させるということ。

しかも、難しいお仕事に、だ。

つまりそれって――

弟子として、少しは当てにしてくれている、
っていうことなのかな。]
　

　

もちろん、そうでなくとも、
弟子としてＮＯと言う選択肢はないのだけど。]


　わかりました。出発はいつですか？
　行き先は？　手持ちの路銀は足りてます？

　ミュラーさんへは連絡しておきますね。
　あとお休みするのは、牛乳の配達と、それから…


[ミュラーさんとは、通いの家政婦さんのことだ。
家政について、私に仕込んだのは
師匠ではなくミュラーさんの方。

師匠は、私の勢いにすっかり押されている。]
　

　

　……あ、ああ。よろしく頼む。

　行き先は…仕事については追々話そう。
　路銀の心配はしなくていい……。


[出発日時など、必要な事だけ伝えると、
オペラは早速動き始めた。

やや呆然と、部屋を出て行く背を見送って。
…いつの間に、あんなに逞しくなったのだろう。


師としても、叔父としても、肩身が狭い。
姪は、私よりしっかりしているのかもしれない。


　

　
[……誰も居なくなった部屋で、
もう一度依頼書を読み返す。

ああ、同行者がいると言い忘れたな――
それも後で伝えなければと、心に留めて。

書かれた名前を指でなぞってから、
他言無用の手紙は、早めに処分してしまう。

　
[家事は多少おざなりになっていても、
仕事については、真面目に取り組んで来たつもりだ。
筆不精の自覚もあるが、私だって、
用があればペンくらいとる。

心配の必要はないだろうが。
私も手紙をしたためた。
薬の調合に必要な条件を考えれば、
向かう先はあそこだろうと
頭に思い描いた地図から、一つの名前を拾い上げて。
紙に記すのは、落ち合う場所と、大体の日時など。
それから　　と
一言書き添えた、簡潔な手紙を出した。

こちらに秘匿事項はないものの、
連絡事項は速やかに。そう思って封をした、
蒼鉛の酸化膜による虹色も、己の魔法も。
アガーテ様とは並ぶべくもないが、
私の手によるものだという事は
あの方ならわかってくれるだろう。

　　何か裏がありそうだけれど
　　正直報酬はとても良いのよね……

　　先生、報酬に釣られるのですか？
　　


　

　　
　　

　　
　　いい？
　　現実的な話をすると
　　こんな山奥に住んでいてもお金はかかるのよ



　　簡単な話
　　お金で解決できることの為に
　　用意しておく、というものよ
　

　　例えば私が集めている
　　紅玉
　　そして貴方の石、金剛石……ダイヤモンドね



　　貴方にも常に持っていなさいと渡したでしょう？
　　謂わば自身の化身
　
　　そしてその宝石は自分達で探すより
　　専門にしている人達から買う方が成果が良いの
　

［　先生が金剛石をくれた時にもらった言葉だ。

　　持っていた金剛石を掌に乗せる

　　　>>38

　　　貴方が原因ではないわ
　　　特別なモノを作ったこの世界
　　　そして特別をに問題があるの

　　　どうして迫害された方が悪いと感じるの？
　　　そんな必要はないわ
　　　ただ普通に生きようとしただけよ

　　　普通より最初に一つ多く持っていただけ

　　　いつも、どんな時も
　　　迫害する方に問題があると私は思うわ
　

　　　

　　　人を愛せとは言わないわ
　　　

　　　


［　リアントの握りしめた手に己の手を重ねる

　　少しでもこの手が力になれたらと思うのよ。　］
　

　　　だから、この依頼は受けるわよ
　　　

　　　宮廷魔道士の大魔女様の報酬が
　　　こ〜んなもんで済まそうとするなんて
　　　

　　　えーーっと
　　　協力者？　

　
　　　　　　　　　　　　　

　　


　

　　　先生？　手紙が落ちた
　　　

［　手紙を拾えば協力者の名前は
　　蒼鉛の魔術師 ヴィスマルトと記されていた。　］


　　　蒼鉛の魔術師
　　　蒼鉛……ビスマス……、珍しいですね


　

　　　あの魔女……







　

　　　
　　　先生って忙しいですよね、


　

　　　
　　　いいわ、アガーテ
　　　受けて立ってあげる

　　　



　　ヴィスマルト……蒼鉛の魔術師という名を貰って>>62
>>43










　

［　ま、まあ？
　　普通に師匠と元弟子として会うのなら
　　何も問題ないんじゃないかしら？
　　


　　平常心なんて私には朝飯前なのだから
　　笑顔で師の威厳を見せつければいいのよね。
　　
　　一人前になった途端
　　ほとんど顔も見せにこなくなった子に>>66
　　ニッコリ笑顔で嫌味の一つでも
　　言ってやろうじゃないの！　］
　

　　　　……おや？　先生！
　　　　また手紙ですよ


［　受け取った手紙を先生へと見せる。
　　先程の手紙とは色が違うけれど

　　虹色の手紙だった>>67　］

　

［　それは今し方の話題の人からの手紙>>67
　　私が貴方の魔法をわからないわけないじゃないの。
　


　　
　　パタン、と綺麗に仰向けに倒れた私は



　　

　　　はー
　　　先生ー、こんなところで寝たら風邪引きますよ
　　　まあ、


［　カツンと頭に小石が当たった。
　　
　
　　じと、と寝転がった人物を見て。　］



　　　風邪引く前に起きてくださいよ
　　　支度はしておくので


［　近くにあった布を先生に掛かるように投げつけ

　　適当に旅支度をすることにした。　］
　

　　　　　　　　　
　

［　その日の夜に自室で一人手紙を開ける>>67
　　こういう行動は素早いのよね。



　　落ち合う場所
　　日時
　　それから一言だけある言葉
　　簡潔すぎてあの子らしい。　］


　 　100点満点
　 　ただ、手紙が仕事向けすぎたので
　　

　　 そうね。一言だけあったから
　　 プラス39点ってところかしら


［　月明かりの窓の下で手紙を楽しそうに読む。

　　でもこうして元気にやっているようだから
　　それだけで100点満点をあげようとは思う。　］