分かる大人がいるのならば、
　　　　　　　　　　　　　　分からぬ僕子供に教えて欲しい。**］
　

　



　

　　──　プロテア：港　──



　　
　　およそ1週間の船旅を終え、
　　潮の香り漂う港の硬い石畳を踏めば
　　誰にも聞こえぬように小さく息を漏らした。



　　無表情のままにくるりと船の方へ
　　身体を向き直せば今まさに
　　降りてこようとしていた女性に手を差し出して。　］
　

　　　　───お手をどうぞ、…ヴィオラ様


［　細くしなやかな手が、差し出した手へと乗せられる。
　　万が一には抱きとめられるように
　　注意を払いながら、下船を終え。


　

　 ｢　ノア。
　　　此度は貴方の休暇も兼ねていると
　　　伝えたでしょう。
　　　





　　申し訳ありません、と頭を下げる。
　　とはいえ彼女も無意識に手を乗せていたようで、
　　少しバツの悪そうな顔をしていたが

　

　　　足元にお気を付けて、
　　　…こちらは"僕"、からの心配です





　　休憩がてら、城下町を見て回りたい
　　という彼女に連れそうよう町中へと進んでいく。
　　周りをきらきらとした瞳で見渡す
　　ヴィオラ様を一歩引いたところから
　　私は見守っていた。　］
　

　　なぜ両面を知られているかと言えば、
　　ひとえに彼女がであり、
　　私がだから、だった。　］**
　

　　───『　MiraggiO　』───


　　　　1000年早いよ。


［　いつもの苦言、口癖か(>>19)
　　こちらもいつも通りの返答をしてさらりと躱す。



　　漂う珈琲の香りは記憶の一部を引き出させられる。
　　霧の晴れた明日を求め続ける
　　長い日常の中でも、彼とは長めの付き合いだ。　］
　

［　いらっしゃい、とでも声をかけた後だったかな

　　酒場に向けられた───
　　町ごと破壊しかねないような魔法。

　　静止の声と同時に手で弾く。

　

　　　　…おいでよ、青年。

　　　　行くところが見つからないのなら、
　　　　暫くここへ居たらいい



　

　　　　
［　ゆるりと目を開けばいつも通りの光景。
　　鼓膜を震わせた出掛けの声に
　　ひらりと手を振って。　］


　　　　いってらっしゃい。ヴィム



　

［　霧夜にだけ開く死の境界。
　　浮き足立つ姿があれば容易に見て取れた。>>33
　　
　　開店の際の口癖のようになっている言葉>>2
　　明日を望める誰かには分からない
　　死の恐怖を知るものにのみ願う人生の光。


　

　　　…想いを伝えられるのは素敵なことだよ。

　　　君は光なんだね
　　　人という…暗闇の中にある光


　　　照らしてくれるのは嬉しいな
　　　ありがとう
　
　

　　そう言ってくすりと微笑えば快美の感覚に身を委ねた。



　　本当に、今の子達は楽しくて
　　目が離せない子ばかりだ。　］**
　

　［　1000年早い。>>52
　　　彼は1000年後に同じ台詞を吐くのだろう。

　　　どこまで本気なのか。
　　　マスターになれるなら好きにしろと
　　　そんなことを言われた暁には




　　　そう、コーヒーカップを見せつけながら
　　　それはそれは丁重にお断りしてみせたものだ。］

　　　


　　今日も何処かで占いでもしようか。
　　あぁ、でもギルドに顔を出すのが先か。
　　思案しながら歩いていれば聞こえてくるのは
　　明日の夜の話で。>>n5

　　霧夜と言えばひとつ、噂があるのだったか。
　　霧の夜にだけあく酒場。
　　ゴーストたちが料理を出すとか何とか。
　　訪れたらあの世へ連れて行かれる、なんて
　　何処までが真実で何処までが虚実か
　　私は知らないけれど。
　
　

　　　「あの世に連れて行かれる、か。」


　　


　　五年前からずっとそう思っている。
　　幾度か機会もあったはずだけど
　　霧夜の酒場に訪れたことはなく。
　　それも私が臆病だという証明になっているのには
　　目をそらし続けていた。　

　　

　　過去から現実へと思考を戻して
　　ギルドへ顔を出すのが先だなと
　　結論を出した私は、ギルドの方へと歩き出す。
　　道中、港の近くも通ったから。
　　どこかの国のお姫様らしき人と
　　その従者を見ることもあったかも。>>51**

　

　＊＊＊

　［　隠すことでもないが自分から言うことでもない。
　　　誰しもそういうことの一つや二つはあるだろう。

　　　青年にとってメルヴェイユに戻る
　　　という用件がそれに当たる。

　　　とはいえ、便利なことに霊体は生きていた
　　　あの頃よりも移動がかなり捗るもので、
　　　プロテアの町を散歩する暇さえあるのだ。

］

　　　悪くない。悪くない町だよ、ここは...。


　［　この町はいつも人が行き交い、入れ替わる。
　　　誰にも聞こえないであろう独り言を
　　　空の雲へと乗せて仰げば、青年は独り、微笑う。



　　　ここに在るということは、それを求める誰かが
　　　今日も此処にいるに他ならないのだから。］

　［　行き交う生者の行進を見据えながら
　　　独り言と共に掲げた指先を鳴らすと

　　　花屋に置かれた青いバラの花弁が突如空を飛び
　　　まだ見ぬ�Wお客さん�Wの元へと舞い降りるだろう。

］**

　　──　城下町　──


［　人の入れ替わり激しい港から
　　中心部へと移動する。

　　活気に溢れるのは港もこちらも同じだったか、
　　一人駆け出して行こうとする彼女に
　　ひやひやとしながらその姿を失わぬように
　　幾度か声をかけ止めながら歩いていた。　］


　　　ヴィオラ様、お一人で行かれては…


［　とまでは
　　口に出来ず、その後は押し黙る。



　　傍目から見れば"少し良い所のお嬢様"
　　とその付き人に見える装いだった筈だ、

　

　　｢　 わたくしももう15です！
　　　　貴方に心配されるような歳ではないでしょう？

　　　　気づく者などおりませんよ。　｣


［　……当の姫様はこの調子だ。


　

　

　　　　───…あまり度が過ぎますと、
　　　　お父上に苦言を呈されますよ。


［　ため息ひとつ着くわけにもいかず、
　　彼女の父…国王に密やかに助けを求めるも
　　また無邪気に駆けていこうとするお転婆姫。




　　ふっと心にを落とせば、苦い顔をして。　］