弥勒聖、大学一年。
俺には3人の姉と二人の兄と、一人の妹がいる。
そのうちの一人、二番目の兄の要が両親のことを「人脈オバケ」というのは、言い得て妙だと思う。
　
あの人たちは、いろんな人と知り合いで。
そのつながりを大切にして。
そして、そのつながりの中で得られたパートナーを大事にして。
そして生まれた子供たちである俺たちを、大切にしてきた。…"彼らなりには"。
　

　
でも、責任は取ってくれても、両親は自分の友達だとか仲間だとか知人とかに夢中で。
俺や妹なんかは、もう上が沢山いたからか親と一緒の記憶よりも兄弟たちにお世話された記憶の方が多い。
でもまあ、一番上の姉は結婚して。
一番上の兄は就職。
そうやって家から離れていく。
そもそも勉強だ部活だバイトだ受験だと、それぞれの生活リズムがどんどん変化していったから。
俺も妹も、それに引き摺られないように家事一通りは教わって出来るようにしてきたわけで。
今の俺は、一人暮らし。
あの両親から離れて、キャンパスライフとやらを謳歌している。
　

　
「んん〜、みんな元気かなぁ。」
　
　
今まで、兄弟たちと賑やかに暮らしてたから。
一人暮らし、一人の部屋。落ち着くけど、少し寂しい。
でもせっかく親元を離れたから家に戻る気もなくて。
こんな日は布団を干して、部屋に掃除機かけて。
好きな曲でもかけながら料理でもしよう。**
　

　
要兄の恋人の話？
あ〜、ん〜、一応聞いたけどさ。
まあそういうのもアリかなっていうのが俺の感想。
むしろ本命作る気あったんだ？　っていうやつ。
　
一番上の姉ちゃんはさっさと結婚したしさ。
一番上の兄ちゃんはどうなんだろ。わかんない。
二番目の姉ちゃんは目下就活中。そろそろ最終面接らしい？
あんまりそれぞれの恋愛事情には詳しくない。
ただ、要兄は昔っから人懐っこいって言うか？
結構何でもウェルカムなとこがあって。
良いよ〜、と何でも受け入れる事で、受け入れて貰ってきたとこがあると言うか。
全方位ウェルカムだったから、セフレも複数いたし。
その関係なのか、関係ないのか。
俺のとこにも男も女も来ては誘われたりもしたっけ。
俺がどうしようって戸惑ってると、要兄がそこまで引き受けて引き離してくれたりさ。
だから。
要兄は、大丈夫なんだって思ってた。
ずっとそう言う風に、誰かと肌を重ねる事。
後腐れない関係を好んでそうしてきたんだと思ってたんだけどさ。
　
本気の相手か〜。
へ〜。　ふ〜ん。　赤飯炊いたところで、今は食べるの一人なんだよなあ寂しい。
　

　
まあ、俺の恋愛対象はオトコなんだけどな。
要兄がどうこう以前に、ほら、良心が人脈オバケで？
マイノリティーの方々とも接触が多かった幼少時代。
そんなんだから、普通に受け入れてきたけど、やっぱね〜、世間一般的には違うんだよな。
そんな中で要兄が本気の相手ができて。
恋人がオトコって聞くと、あっ、羨ましいな？なんて思う訳で。
でもやっぱりどんなにマイノリティーを普通に受け入れてきていても。
それが世間一般的には普通じゃない、そう言われがちなのも知っててさ。
　

　
なんて思いながら布団を叩く。
天気が良い休みの日。こんな日にする料理は、時間のかかるやつに限る。
ベランダの布団をそのまま台所へ。
今日はきっちりスパイスからカレー作ろ〜、この辺り一帯の夕飯をカレー気分にさせてしまうのだ。

両親の知り合いのインド人が教えてくれた本格的なやつ！**