［　二人がいい？と聞かれればこくっと頷いた。
　　

　　優しいな、って、それだけで私は
　　“王子様”に惹かれていく。　　　　］
　　

　　　………恋愛の愛に、衣服の衣で、

　　　

　　

［　とっても似合ってる、って言われてしまえば
　　曖昧に、微笑んで誤魔化す。

　　愛されたことなどなかった。
　　姉妹で分かつべき愛は全て妹が持って行った。
　　この体も、目に見える傷はないけれど。

　　

　　そんなこと知られた日には、本当に
　　誰にも、愛されなくなってしまうから。

　　
　　

　　　辛口のお酒は、わたしもあんまり……
　　　甘いお酒、好き……！


［　指差された方を見て値段に目を丸くした。
　　
　　追加料金。そういうお店だと説明されたし
　　理解はしていたはずだけど
　　　　　　　　　　　　
　
　　それでも、すぐにオーダーできるほど
　　裕福なわけではなかったから。
　　悩むそぶりを見せていれば
　　キープボトルにも、などと言われただろうか。
　　少し悩んだ末に、
　　折角来たんだからと頼むことにした。　］
　　

　　　……こういうお店初めてだから

　　　その、モタモタして、


［　申し訳なさそうに、
　　オーダーの後には謝罪を添えて。　］*
　

　　、という言葉には何度か瞬きして。

　　触れる手は、まるで本当に愛されていると
　　思ってしまうかのような気持ちにさせられる。
　　心地よくて、嫌がりなんてしなかった。　］
　

　　　また会いに……


［　ボトルキープの仕組みを説明されて
　　また次回、と言われれば納得してしまう。

　　

　　ソーダで割って欲しい、と言って
　　手際よくドリンクを作っていく様子を眺めた。
　　手渡されれば、ふわ、と笑って。　］
　　

　　　おひめさま……


　　　　　　　　　　　
　　
　　

［　最初の一口を勧められるままに、口にして。　］


　　　美味しい……


［　彼の目を見て、感想を伝えて。
　　こんなふうに、先にどうぞというか
　　行動を尊重されたことがなかったから
　　……新鮮な気持ち。

　　
　　

［　抱き寄せられて距離が近づく。
　　その所作はとても綺麗で。
　　元から嫌がることはなかったけどあまりに自然だから
　　嫌がる暇さえ、ないような気すらしてしまう。　］


　　もっと？うん、わたしも…！


［　
　　
　　スキンケアの話なら、
　　そんなに高いものは使ってない…とか話をして。
　　肌が綺麗と言われたらありがとう、と
　　嬉しそうに笑って見せた。

　　一緒に入ったお姉さんの方を見れば
　　二人でずっと会話をしているのが目に入る。
　　あの人はいつも来るんですか？とか
　　綺麗な人だと思うとか。
　　当たり障りのない反応になったけれど
　　それがいい反応だったのかは、わからない。　］　
　　

［　一時間半はあっという間だった。
　　話すのはとても楽しかったから。
　　それが仕事だから、当たり前だとは分からず。

　　黒服の人がこちらのテーブルに来て
　　どうしたのか、と首をかしげていれば。　］


　　　見送り、してもらえるの……？

　　　
［　指名できるのならしたい、と思った。
　　手の甲に落ちる口付けも
　　手のひらに描かれた♡も、
　　どこか、くすぐったい。
　　

　　立ち去っていく彼の方を目で追えば
　　親し気に指名客と話している姿を目にして。　］
　　

　　　


　　

［　当たり前なのに、そんな事実は胸を刺す。
　　どうすれば、もっとこっちを見てもらえるのかなと
　　どうしても考えてしまって。

　　代わりに、ときたホストに勧められるまま
　　ジュースを頼んだ。
　　名刺は受け取ったし、自己紹介は聞いていたけど
　　どこか、気はそぞろで目線はちらり、と
　　先ほどの彼の方へと向いてしまう。　］


　　　あの……麻央くんって、人気、なんですか…？


［　他のホストのことを話すなんてよくないだろうか
　　失礼だろうか、とは思いながらも
　　気になってしまったから。

　　聞きたい欲を抑えられなくて、聞いてしまった。　］*
　　

［　彼が行った方のテーブルを見ていると
　　聞こえてくる声。>>83

　　独り占めなんて、出来るわけないのに
　　


　　
　

　　
　　

［　隣のテーブルにいる香奈太さん、と呼ばれるホストに
　　次ぐ人気なのだと聞けば、納得したような
　　






　　　あっ、その、ごめんなさい……

　　　わたし、失礼な、ことを……

　　
［　目を見開いた相手に対して眉下げて
　　申し訳なさそうにしつつ。
　　いつ来たらいいのか聞いてみるといいと
　　教えてもらったから、それ以上の質問は避けて
　　普通の会話を楽しもうと。

　　そうして、時間が来れば延長するかどうか　
　　聞かれることになった。
　　持ち合わせをそう持っているわけでもなく
　　今日は帰ります、と伝えた。

　　見送りは、さっきも言われた通り彼を指名して。　］
　　

　　　あの、その……いつなら……

　　　えっと、


［　何時に来たらいいのか、聞いてみたら
　　答えてくれただろうか。

　　答えがどうであれ、その日は帰ることになるし。
　　彼に　会いたい、と会いに行くように
　　なるのも時間の問題で。

　　月に一度が月に二度になって…
　　訪れる回数が増えていくことになる。　］*
　　

［　賑やかさから離れて店を出ることは
　　夢の終わりを意味していて。

　　抱きしめられて与えられる温もりに
　　甘えていく。今まで甘えられなかった分を
　　取り戻すかのように。　］


　　　


［　メッセージだって営業用のはずなのに
　　そんなこと、普通に考えればわかるのに。

　　特別にされているような
　　大切にされているような

　　
　　　　　　　　　　　　
　　
　　夢を終わらせることが、出来ない。　］
　

　　　うん、すごく楽しかった！
　　　

　　　わたしも麻央くんともっと仲良くなりたい！


［　、もっと会いに来たかった。　］
　　

［　帰ってから、メッセージも送ったし
　　
　　夢を見せる場所にのめり込むように通うことに。　］

　　

──────


　　　麻央くん、癒してくれるの……？
　　　今日もね、麻央くんのために頑張った！


［　頻度が上がって、
　　使うお金が増えていけば、犠牲になるのは
　　生活費と貯金。それでは足りなくなるのは
　　

　　恋人に愛されている夢を見ているわたしは
　　
　　　　　　　　　　　　　　　］
　　

　　　アニバーサリー……？

　　　そ、っか……わたしもお祝い、したい！

　　

　　　タワー……、頼んだら……

　　　麻央くんは喜んでくれる？


［　喜ぶに決まってる。

　　
　

　　
　　だから、答えを聞くまでもなく。
　　わたしの答えはYesしか、あり得ない。　］*