……はっ。


　みとれちゃった。
　髪の毛、可愛くしてくれるんだよね。

　たのしみ。


［　普段よりシャンプートリートメントは念入りに。
　　部屋のドレッサーの椅子にお招きします。　]*


　

　
［いつもとまた違う魅力を湛えた
　流歌の目線が、僕の姿をなぞる。

　特に見られたのは首元かな。
　大きくはだけてた訳じゃないけど
　襟元を手で押さえて。］


　　るかちゃんのえっち。


［なんて、見惚れてた彼女を揶揄った。

　というのは褒められたことへの
　照れ隠しだったりするんだけども。
　流歌の前ではいつでも格好良くいたいね。］
　

　
［ドレッサーの前に座った
　彼女の背後に立って髪に触れる。

　いつもサラサラできれいだけど
　今日は特にきれいな気がするのは
　何でだろうね。］


　　その浴衣、似合ってる
　　まるで流歌の為に作られたみたいだね


［想像していた以上に
　浴衣は流歌の可憐さを引き立てていた。
　黒く染められるのが君には似合うね。］
　

　
［そんな話をしながらも
　指は器用に髪を纏め上げていく。

　耳周りの髪を残して
　サイドを後ろに向けて編んでいき
　真ん中で纏めて縛る、三つ編みハーフアップ。

　お嬢様結びとも呼ばれるやつ。
　浴衣に描かれた花と合いそう、の見立てで
　こっそり練習してきてた。

　ゴムで留めた上から
　別の花を模したヘアクリップで飾って仕上げ。
　これも白い花だから喧嘩はしないだろう。

　フランネルフラワー。
　花言葉は「高潔」「誠実」。
　僕だけの流歌に相応しい誕生花。］
　

　

　　どうかな？
　　別の髪型がよければやり直すけど


［鏡越しに目を見ながら確認を待つ。**］
　

［　首筋じってみてたの、ばれちゃった。］


　　ふぁ
　　あわわ、し、しつれいしました


　[　否定しきれないのがまた　なんとも。
　　それ程に浴衣と、
　　それを着てる潮音が魅力的だったのです。

　　普段と違うというのは、それだけで特別感。　]

　

［　髪を誰かに結いて貰うのは好き。
　　友達にも学校で時々おもちゃにされてたり。
　　
　　綺麗な指が拾い上げてく光景を
　　時々鏡越しの潮音をみながらみつめてた。　]


　　似合ってるかな。
　　潮音と、お似合いっていわれたりしちゃうかな


［　かおのにやにやがさっきから収まらなくて
　　困っちゃう。

　　ずっとずっと楽しみにしてたんだ。
　　こっそりてるてる坊主だって作った。

　　晴れますように。］

［　やがて白い花が髪に添えられた。
　　ふわふわしてそうな、可愛い。　］


　　わあ……


［　なんて名前のお花かな。
　　髪型に合わせたら子供っぽさも消してくれるようで
　　でもそれが誕生花だって知ったら騒ぐから
　　お上品なお嬢様にはあと一歩足りないんだけど、ね。　]

　

　　ありがとう潮音。


　　我ながらこれは　花丸もらえる気がします。
　　だいすき。


　　えへへ……


［　浴衣って振り袖があるから
　　顔が隠せてちょうどいいかもしれない。

　　どうして潮音は、
　　日に日に好きを増やしてくのかな、ずるいよ　**]

　

　
［髪型は気に入って貰えたようで良かった。

　君自身がなりたいと望むものがあるなら
　お嬢様だろうと何だろうと応援するけれど
　こうあって欲しいみたいな希望はない。
　］


　　どういたしまして
　　……何もしなくたっていつでも花丸だよ


［ふふって微笑う。
　君が君らしくあれば、それだけで。］
　

　

　　さあ行こっか


［ご両親に挨拶して
　マンションの廊下に出たら手を繋ぐ。
　指輪にわざと触れてきた指を
　絡める前にきゅって掴むのがお約束。］
　

　
［日が沈んでいく空の下を並んで歩く。
　会場である河川敷や向かう道中には
　例年通り屋台が並んでいた。

　花火が上がり始めるまでまだ時間がある。］


　　穴場スポットを見つけたんだ
　　屋台回って食べるものとか買ったら
　　そこに行って見よっか


［個人的にたこ焼きは欠かせないな。*］
　

［　潮音からも花丸貰えたから
　　少しだけ玄関で待ってて貰ってリップをひく。

　　普段お化粧とかしないから
　　せめてこれくらいは、の背伸び。

　　ほんのりオレンジリップをのせて
　　いこっか、って潮音の手に収まる。　]

　

［　繋いだとかがぎゅっ、てしてくれるのが大好き。
　　隣にならんで、暮れてく空を見上げながら
　　慣れない下駄の音をかこかこさせて歩く。

　　潮音はバイトしてたけど
　　私はしたことなかったから、
　　こんな時間に歩くことも滅多になくて。

　　毎年あるのに、
　　それでも屋台のある風景ってなんだか
　　わくわくするし違う世界に来たみたい。　]

　

　あ、だったらりんご飴と、
　チョコバナナと、わたあめと、
　たこ焼き買いたい！


［　水着着たときの誓いはどこへやら。
　　ふたりでわけるからいいんだよー。

　　全部は買えなくたってそれもまた。
　　でもたこ焼きは2人の定番だから、
　　欠かせないよね。　

　　戦利品を手に　いざ穴場スポットへ参りましょうか。*]