…まあ。　フツーって。　よく分かんないよね。
　
普通はさ、兄弟だって3人くらい？
7人もいると大家族とか特集されたりするし。
まあ親の職業はフツー。…フツー？　あんま興味ない。
ただ、両親は俺たちより自分のパートナーと友人関係と仕事が生き甲斐でさ。
パートナーを大切にしてるから子供が増えたけど。いや、それも、毎年産ませるってどうよ？とも思わんでもない。母体保護的に。
子育てはほぼ外注なとこあったし。
末っ子が産まれて少ししたら、それも無くなってさ。
だから一番目の姉貴は家を早く出たくて。
それを止めなかった。むしろ後押しした。
なんか。家にいても家じゃないみたいなとこあって。
ましてや、俺はバイ。むしろパンセクって言うの？
くるもの拒まずなとこあった。
そんな俺だから。普通の家庭とか。親とか。恋とか。
よく分からなかった。
よくわかっていなかった。
でも。
うん、育夢に恋したのはさ。
　

　
…俺の中の数少ないフツーって言えることじゃないか。
男同士だけど。
好きになって。不安になって。ドキドキして。嫉妬して。喧嘩して。打ち明けられなくて。
でも。
お互いに好きあえた、フツーって名前の奇跡？
フツーに好きになって。
フツーに愛して。
男同士で、でも、フツーに恋して一緒にいる。
そう、思って良いかな。
そう、思いたい。
　

[俺はさ。
自分のことずっとフツーだと思って生きてた。

明るくて元気で、
それなりにみんなと仲良くやれるけど
別にそこまで突出した取り柄もないし。
俺じゃなきゃダメだってことなんて
実際殆どないんだよなって知ったのはいつだったかなあ。

そんな自分が嫌で、悔しくて、何かに抗いたくって。
配信者なんて始めたけど、でもやっぱり俺は俺でしかなくて
どこにでもいるような「フツーの男子学生」の樋爪育夢で。

ちょっと自分にがっかりしてた、そんな時だったんだよな。
お前と出会ったのは。]

[楽しかったよ。お前と一緒に居るのは。
馬鹿やって、ふざけあって、エロイ話とかもして、
そんな他愛ない日々がわくわくしてて
フツーも結構悪くないじゃんって……

ううん、フツーかどうかなんて
なんだ別にどうでもいいことじゃんって思ったんだ。

気づいたんだ。
お前と一緒に居るだけで、日々が輝いて見えること。
お前が傍で笑ってると、幸せな気持ちになること。

お前が俺の世界で特別だってこと。]