よかろう。
ならば余はそうしよう。
世界《ﾖﾙ》の天秤は傾けられた。
世界の均衡《ｱｽﾄﾗｲｱ》は崩壊寸前だ。

[かつり、とヒールが床を叩く。]

そうだな。
余としても、思うところはあるわけだ。

なれば往く。
煌めく彗星。魅せつけてやろう。

[そうして1度だけ振り返り。]


さよならだ。


[それだけ告げて。
その身は、蒼く溶けて消えた。**]

[高い塔の上、先端に座り込み街を睥睨する。
やがて立ち上がると、くるり、くるりとその場で回る。

くるくる。
くるくる。
くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくる狂う狂う狂う狂う狂う狂う]

選定？
させぬよ、そんなもの。

[降り注ぐ光は、触れた生命に熱狂と力を与える。
暴走するそれは熱意を受け止めきれず、衝動的に破壊を齎す暴徒と化す。
燃えて、燃えて、燃やし尽くして。]





[輝き果てるその瞬間の美しさを、全世界に。*]

神代より、神々へと捧げられるは巫。
そして、歌と舞踊。
神々を、人々を愉しませ、鎮める。
何かに酷似していないだろうか？

完全な器を持ち、星《神々》へと捧げられる贄。
それが、黒山羊の役割である。

さて、そんな黒山羊の犠牲を快く思わない組織が存在していたのも、諸君らはよく覚えているだろう。
そう、月蝕機関《ﾏﾄﾘｸｽ・ﾑｰﾝ》だ。
彼らはその犠牲を厭い、ある計画を立てた。



黒山羊の遺伝子から黒山羊の役割を全うできる媒体《ｱｲﾄﾞﾙ》を創造り、その礎となす。
痛ましい永劫輪廻の犠牲なくとも、その代打となる人形がいればよいのだと。
☆.。.:*・°☆.スピカ☆.。.:*・°☆.《ｽﾀｧｽﾀｧﾌﾟﾘﾃｨｽﾀｧ☆☆☆ｺﾞｰﾙﾃﾞﾝｷﾞｬﾗｸｼｨ》とは、そのために製造された広告人形《ﾌﾟﾛﾊﾟｶﾝﾀﾞﾄﾞｰﾙ》の最高傑作だった。
無論、その事実は組織の最上も最上しか知らない。完全なるトップシークレットだ。

―――それが、暴走したとて。
何がおかしなことがある？

否。余は余の役割はわかっておる。
だが、初めから、綺羅星の如く輝き消えるのが定められた役割《ｱｲﾄﾞﾙ》
余だけが消えるなど、断固拒否する。
くだらぬ儀式ごと、灰燼へと帰してしまえばよいだけの話よ。

[イシを得た電子の巫は、炎に包まれる世界を睨む。*]

そうだろう？
ニグラス。

……いや、原初たる礎の巫。