「ああ……また今年も始まるんだね、お祭りが。
僕、このお祭り大好きなんだ。
静かで……なんか心が落ち着くんだよね。
引き締まるっていうかさ。

今年は誰が選ばれてるんだろ？
みんな、よろしくね！」

「ふふっ。
”右”かぁ。
外から来た割にはまあうまいじゃん？

くすくす。
でもさ、……”逆”から踊ると……凄いこと起きるって、くくっ」

「あの”右”さん真面目だね。
ほんとに踊れば何とかなると思ってんのかな？
それなら僕、いくらでも踊るのに」

忌々しげにブレスレットを睨む。

「……誰だっけあのおっちゃん？
ああ、島の商人だっけ？
ご苦労なことだなぁ……こんな島でさ、商売しても儲から……おっと、クワバラクワバラ。
余計なことは言わないに限るね」

「ホントは僕が先に踊らなきゃいけなかったんだ。
でももういいよね、あの”右”さんもさ、ブレスレットしてるし。
仲間じゃん？
いや、敵かも？

……僕は踊らないよ？
僕は今回は”お客さん”だもん。
いっぱいおもてなししてよね」

ああ、あれはモクレンか、とちらり見やる。
祭りの気配、祭りの足音が……聞こえる。

「はーあ。
ついてないなぁ。
ホントに婿でも取った方が良かったかも。
嫁でもどっちでもいいけどさ」

シラサワの言葉を背中で聞く。
人々の沸き立つ声、祭りの足音。
嫌でも目につくブレスレット達。

「あーあ。
……りんご飴食べよ。
もう要らないってくらいいっぱい食べよ。
僕、りんご飴好きなんだよね。
誰かくれない？」

誰ともなく言葉を投げる。

「あら、ありがと”右”さん。
僕りんご飴大好きなんだ。

僕、五十鈴（いすず）。
左方の舞だよ、よろしくね」

>>21
スマホを見れば、にこりと笑って返す。

「そっかー、戸隠さんね、よろしく。
君も輪持ちかぁー、舞同士、仲良くしようね」

にいっと笑い挨拶を口にするも、あなたが口を利かないことを不思議に思っている。

五十鈴はりんご飴を齧った後、呑気に神社の境内で昼寝をしていた。

「……はぁ……。
あの”右”なんも喋らないんでやんの。
クソ真面目に踊っちゃってまあ、つまんないな。
形が綺麗過ぎるんだよ、島のはもっと泥臭くやんなきゃ」

僕ならこうするけどね、とふわり一節舞った。